明日に波動拳   作:路傍の案山子

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大変お待たせいたしました。

いやー、まさか戦闘の書き出しでこんなに詰まるとは思わなかったです。
ブランクもあるのでしょうけど、主人公を周囲に男として認識させるのが凄くめんどくさい!というか、いい感じの展開が全く思い浮かばず結局ありふれた感じに。
あっ、あとこの話仕上げたのがいつものごとく深夜(といよりむしろ朝)なんで、誤字チェックとか出来てないですすみません。文章でおかしなところとかあったら指摘とかお願いするっす!うっす!感想批評も随時大募集中です!!(深夜テンション)

それにしても誰だよ主人公に男の娘属性とかつけた奴は!!......おのれ白澤!!(責任転嫁)

それではどうぞ!


15話 2ラウンド目 天邪鬼な風破刃

 どうも。日向涼、英名だとアルトリウス・(エリオット)・ヒューガーです。韓国で無事にダンと合流することができたけど、『見込みがある奴』というのが原作キャラであるハン・ジュリで只今困惑中です。しかもそのジュリにいきなり不意打ちで顔面を蹴られそうになりました。殺意高い『はじめまして』ですね!それにしてもなんだかとっても好戦的な雰囲気で戦闘は避けられそうにない雰囲気がビンビンしています!ダンからの依頼な時点で厄介そうな予感はしてたけどここまで殺伐とした展開はさすがに予想外です。

 

「ほらほらぁ!さっさと来なよ?こっちとらあんたらが来るまでずいぶん長いこと待たされてたんだ...そのぶん楽しませて貰わねえとなぁ?」

「アル!私が行くよ!こっちだって最近溜まってたんだから!それじゃあ行くy「その試合待ってもらおうか!」 ほわ!?い、いきなり何!?」

 

 挑発的にこちらを急かすジュリにサクラがすかさず立候補しようとしたが、いきなり大きな声で遮られてしまった。戦闘態勢に移行しようとしているところに邪魔が入って変な声を上げてたたらを踏んだ。......飛びかかる気満々だったんだねサクラ。なぜこんなバトルジャンキーになってしまったんだろうか。

 遮った乱入者の方というと、声を発した人物以外にも何人かが後から現れて現在は5人になっている。全員がジュリと同じようなテコンドーの道着を着ていて、歳はジュリと同じくらいかちょっと上くらいかな?その中のおそらく一番年上だと思われる少年が更にこちらに話しかけてきた。

 

「俺達はジュリ(ソイツ)と同じ道場の者だ!お前たちが何者か知らないが勝手な他流試合は師範代に禁止されているんだ!そうだよなぁ?ジュリぃ!」

「......チッ!これからそっちのカワイコチャンと楽しいことおっ始めようって時によぉ!邪魔すんじゃねーよ!!」

「俺は師範代から門下生の指導も任されているんだ!認めるわけにはいけないなぁ!なあ!そうだろ皆!」

 

「そうだそうだ!」「(パク)さんに従えよジュリ!」「これだから女は!」「でも相手の子達可愛くね?」

 

 おそらくさっきから喋っているやつがリーダー格のようだ。彼の発言にすかさず取り巻きの4人が同意するように囃し立ててるし。取り巻きの言葉から察するにパクという名前らしい。どうやらジュリとはあまり仲が良くないらしく、その高圧的な言葉の端々にジュリに対する悪感情を滲ませている。簡単にいうと、すげー厭味ったらしい。言ってることはそんなに間違ってなさそうなのになんという小物臭。

 今こいつらに同意しておけばジュリとの戦闘は避けられるかもしれない。......でもなー、なんか同意するの嫌だなぁ。こっちまで小物臭くなりそうだし。そんな風に悩んでいるとまた違う人物がその場に現れた。

 

「こらこらお前たち、一体何をしているんだ?」

「これは師範代!ジュリがそこの奴らと勝手に他流試合をしようとしていたのでそれを注意していたのです!」

「何!?他流試合だって!?それはいけないなジュリ!この前も問題を起こしたばかりだろう!いつまでもそのような勝手な行動ばかりしていると、こちらとしてはご両親に報告をしなくてはいけなくなってしまうよ?」

 

 歳は30くらいだろうか?こちらもパク達と同じくテコンドーの道着を着ている。それにしてもなんだこのやり取り。びっくりするくらい白々しいぞ。お前ら絶対打ち合わせとかしてただろ。どうやらこの師範代もあまりジュリにいい感情を持ってはいないようだ。ダンが言っていた『ジュリちゃんボッチ説』が真実味を帯びてきてしまった。なんということだ!

 というかこの師範代、このあたりで一番大きいテコンドー道場の師範代にしてはあんまり強くなさそうなんだが、本当に師範代なのだろうか?もしかしたら隠しているだけかもしれないが、強者特有のオーラというか雰囲気というか、そういったものが全然感じられないな。なんか言動もさっきのパクって人と同じく小物っぽいし。

 

「他流試合禁止ぃ!?なんだそりゃあ!?他の流派と闘って強くなっていくのが普通だろうがよ!意味わかんねー事ぬかしてんじゃねーよ!やっぱジュリはお前らなんぞにはもったいねーな!ということでコイツはサイキョー流がもらってくぜ!!」

「サイキョー流?聞いたことが無い流派だが......ふむ。まあ君たちとジュリの試合をみとめてやってもいいぞ」

「ホント!?じゃあ早速仕切り直しだね!いっくy「ただし!条件があるがね」ってまたなのぉ!?」

 

 ダンの言うとおり、この世界では基本的にどの格闘技の道場でも他流試合を受け入れている。ストリートファイトが法的に認められている世界ですよ?むしろ『他流試合だとぉ?...ウェルカム!!』ってところが多いと思う。やはり試合というのはいい経験になるしね。あっ、2回も勢いをくじかれたサクラがちょっと拗ねてる。少しは大人しくしていてほしいのでそれは放置の方向でいくとしよう。それにしても条件ってなんだろうか?あまりいい予感はしないが。

 

「条件だぁ?」

「うちの道場から門下生を引き抜こうと言うのでしょう?ならこちらが条件をつけるのも当然といううものです。なあに簡単なことですよ。試合をこのような路上ではなくうちの道場でおこなってほしいのです。なにぶん門下生の中に納得のいっていないものが多くいるのでね。このようなところで勝手に試合をされると困るのですよ」

「......むぅ。まあ確かにそれぐらいなら仕方ねえか。だが!ちゃんとこっちが勝ったらジュリはサイキョー流に入門だからな!あとでこの誓約書にサイン貰うからな!」

「おい!オッサン共勝手に話を進めてんじゃねーよ!」

 

 ジュリから抗議の声があがったが、結局は(一応)俺達の代表であるダンが、あちらの代表である師範代に同意してしまったので彼らの道場へと向かうことになった。パクだっけ?最初に絡んできたリーダー格の無駄に偉そうな態度の奴の先導で移動することになった。が、途中でジュリが「こっちの方がちけーよ」と違う道を進み出したので俺達はそちらについていったところ見事に道場に先に着くことができた。パクは非常に悔しそうにしていたが「...いきがっていられるのも今のうちだ」と吐き捨てながら道場に入っていってしまった。そういうところが小物っぽいんですよ。

 

 到着したテコンドー道場は確かにかなりの大きさで、中ではその規模に見合った何人もの門下生が稽古をしていた。その門下生の多さにダンが羨ましそうな目をしていたり、サクラが強そうな人は居ないかとキョロキョロしていたが俺はどうにも他のことが気になった。......ここって本当にジュリが通ってる道場なのだろうか?俺達はともかくジュリに向けられる視線が険しすぎるんですが。部外者である俺達よりもはるかに敵意が含まれている。それにこの道場、どうにも男女間で軋轢のようなものがあるようだ。

 というか、端的に言うと女性蔑視的な気配がビンビンします。アリス母さんたちにより常日頃から女性に優しい紳士たれと教育された俺の直感がそう囁いている。門下生の男女比は8:2といったところだろうが、女の子達は少数派であるにしても、明らかに何かに怯えるように細々と隅の方で練習している。逆に男の門下生の方は殆どのスペースを堂々と占領している。この広さの道場だとどう考えてももっとスペースはとれるだろうし、実際男の門下生の方には殆ど使ってないスペースもかなりある。『違和感』が確信に変わるくらいにはわかりやすい光景だ。

 

「さて、ここが俺たちの道場です。おい!そこのお前ら!さっさと場所を開けないか!まったくこれだからのろまな女は。......それでどちらの娘からジュリと対戦するんですか?出来れば俺たちとしては男性に闘っていただきたかったのですがねぇ。どちらとも女性のようですし。いやなに、こちらとしてはどちらでもかまわないのですがね?ジュリは常々『男なんて相手にならない』と言っていましてね?どうせならばそちらのほうがいいと思われるでしょう?」

「...ハッ。よく言うぜ。相手にならないのは男じゃなくてお前らだってーの」

「...何か言ったかジュリ?」

「べつにぃ~?何も言ってねーよパク」

 

 先に入っていったパクが当たり散らすようにスペースを空けるように大声で指示を出した......どう考えても圧倒的に広いスペースを使っている男子ではなく、女子の方に。

 

 この世界では格闘技だけに関していうなら男女での優劣は殆ど無い。男性の方が力が強く、女性の方が素早いといった傾向は確かにある。が、努力次第では覆すことが出来てしまう世界なのだ。例えばガイやバルログのようにニンジャの素早い身のこなしを身につけることや、レインボーミカのようにメスゴr...力強い!力強いプロレスのような格闘スタイルを身につけることも決して不可能ではないのだ!え?ポイズン?......その、ノ、ノーコメントで。

 

 しかし、だからといって女性蔑視のような考え方がないかというと...実はそうでもない。というのも格闘家を目指すのは女性より男性の方が、圧倒的に多いからだ。女性はどこぞの足が逞しいことを気にしているらしい中国人女性格闘家のように『普通の女の子』として暮らしたいという願望がある人が多いらしく、男性と比べて格闘技を始める人がそもそも少ないのだ。サクラ?いやいやアレを普通の女の子として扱っちゃ駄目ですよ。一応女の子だけどなんていうかあれは例外だから。だって普通の女の子は突然、「あーー!闘いが、ファイトが足りないぃーーー!!」とか叫んだりしないでしょ?

 

 あと、毎度のことだけど訂正しとかないとな。なんか何度めかわからない嫌な予感がするけど。

 

「あの、俺は男なんですが」

「「「 ああ!?(なにぃ!?) 」」」

「......そ、それなら是非君から闘ってもらおう!」

 

 ジュリやパク、その取り巻き達が驚きの声をあげる。...いいんだ、もう慣れっこさ。というか悪い予感の方も的中しちゃいましたね。できれば俺としてはサクラに闘ってほしかったんですけど。あちらの道場の師範代がいち早く俺を対戦相手に指名してしまった。そんなにジュリに嫌がらせしたいのか。自分で言うと悲しくなるが、もう少し躊躇しそうな外見だと思うんですけど。あと、後ろから凄い恨みがましい気配が発生してるのどうにかしてくれませんかね?俺のせいじゃないんだからそんなに睨まないでほしいなサクラ!

 

「えーと、どうしましょうかダンさん?」

「そうだなぁ...あちらさんがご指名みてーだし、ここはアルが出るべきじゃねえか?」

「え~~~!!なんでーー!?私だって闘いたいよー!」

 

 ごねるサクラはダンになんとかしてもらうとして、どうやら俺がジュリと闘わないといけないようです。相手側の師範代がすごく『計画通り』みたいな顔してて殴り飛ばしたくなる。

 

「話は決まったようだな!それじゃあそっちの...ええと?」

「日向涼、もしくはアルトリウス・E・ヒューガーです。アルでもリョウでもどうぞお好きに」

「日向君と闘ってもらうぞジュリ!まさか男に敗けるのが怖いからって嫌とは言わないよなぁ?」

「......ふん。どっちが相手だろうが関係ねえ。さあ!()るんならさっさと始めようぜ!」

 

 日向君って呼ばれ方は新鮮だし男扱いは嬉しいけど、俺の性別をジュリを追い詰める道具みたいに使われるのはいい気がしないな。......そうだ、いいこと思いついた!

 

「...申し訳ありません、試合前にちょっと電話を貸してもらってもいいですか?両親にまだダンさんと合流できたことを報告してなかったのを思い出してしまいまして、一度連絡を入れておきたいのです」

「む?ならあちらの電話を使うといい。出来るだけ早くしてくれると助かるがね」

 

「だから今回はアルに譲っとけって!ほら、俺が今回の旅で編み出した新必殺技を教えてやっからよ!なっ?」

「......それってどんな技なの?」

「ふっ!聞いて驚けその名も挑は「うがーーーー!!」ぬわぁー!?」

 

 サクラを宥めようとして失敗しているダンを見捨て(スルー)してこの道場の固定電話の前まで移動する。また挑発のレパートリーが増えたんですね。......それにしても調べておいたこの連絡先を使うことになろうとは思わなかった。ストリートファイターの原作キャラ達の情報を集めている時に偶然見つけたんですけどね。えーと、確か番号はこれでよかったよな?ピポパポっと。

 

『はいこちら───です!どのようなご用件ですか!』

「あ、私は日向涼と申します。そちらに───さんはいらっしゃいますか?できればお取り次ぎいただきたいのですが」

『おや!それならちょうどいい私が───です!それでいったいどうしたので?』

「実はですね、◯◯という街の◯◯というテコンドー道場で......」

『なんと!!そのようなことが!?それはなんとしても正さねば!!教えてくれてありがとう!すぐにそちらに向かうとしよう!それではっ!!』

 

 これで良しと。さて、戻るとしますか。なんだかんだと言っているけど、俺だって強い人と闘うのは嫌いじゃないし、それが原作キャラともなれば尚更だ。

 

「随分と焦らしてくれんじゃねーの。それで?愛しのママへの電話は終わったのかい?カワイコくん?」

「お待たせしてすいませんでした。...カワイコくんってなんですか?」

「ぴったりだろ?まあそんなことよりいい加減おっ始めようぜ?」

 

 既に道場の中心近くの試合場にジュリが待ち構えていた。そしてその試合場を囲むようにして他の門下生たちがほとんど全員集合していた。さっきまで稽古をしていた人も全員である。どうやらあの師範代とパクが俺の電話中に号令をかけて集めていたらしい。中央に移動したら一斉に視線が集まって見世物にされていることを強く感じてしまった。パンダってこんな気持ちなのかな。

 

「それでは私が審判を務めます。勝敗はどちらかが戦闘不能になるか負けを認めることとします。それでは位置につきなさい」

 

 どうやら師範代が審判をするようだ。アウェーの俺に不利な判定は多分しないだろうけど、逆にジュリに不利な判定をしそうで怖いよね、この人。まあ他に審判できそうな人はダンくらいしかいないしね。しょうがないか。

 

「男のくせにキレーな顔してて嫐りがいがありそうだなぁお前。目も左右で色が違うとかイカしてんじゃねーか。それはそうとこんだけ待たせたんだ。あんま簡単に終わんなよ?」

「...日向流格闘術、あと一応サイキョー流の日向涼、英名はアルトリウス・E・ヒューガーです。推して参ります!」

 

 

「それでは始め!」

 

 

 Fight!!

 

 

「ヒャハッ!いくぜっ!!そらぁ!!」

「───!っと!」

 

 開始の合図とほぼ同時、ジュリは急速に距離を詰めると軽く跳躍しながらミドルキックを放ってきた。こちらの意表を突くような速攻だったが、事前にそういう可能性もあるかなと身構えていたので躱すことができた。いや、だってあのジュリですよ?いきなり仕掛けてきても不思議じゃないでしょう。実際、さっきも不意打ちで蹴られそうになりましたね。あまりあてにならない原作知識だが、やはり初めて戦う相手の事を僅かでも知っているというのは一定のアドバンテージであるといえる。こういうところで地味に役に立ったりするから無視できないんだよね。

 

 ゲーム上でのジュリはテコンドー使いだけあって足技を中心に闘うキャラクターだった。一部の通常攻撃ではパンチボタンでキックを繰り出すくらいだ。そのため見た目以上に通常技とかのリーチが長かったりする。必殺技もほとんどが足を使ったものであり、タイミングを調整可能な飛び道具や空中からの突進技等、トリッキーかつ攻撃的な技を持っている。多段ヒットする攻撃が多いのも特徴の1つで、何気に当身技を所持していたりもする。そして最大の特徴はウルトラコンボ(超必殺技)の1つである『風水エンジン』である。発動中は制限はあるが"通常攻撃を通常攻撃でキャンセルできる”状態になり、通常時は繋がらないような連続技を決めることが可能になる。使いこなすことが出来れば、相手を翻弄しながら一方的になぶることも可能な性能となっていた。

 ......まあ、使いこなせれば、だったけどね。飛び道具は打つ前に蹴り上げのワンアクションが入るため弾の発生自体は非常に遅い。当身技自体にはダメージがない回り込むタイプで追撃の猶予時間は短め。突進技などはガードされたりスカされると隙きが大きいので反撃を受ける危険性が高い。最大の特徴としてあげた『風水エンジン』も連続技を決めることが出来るだけの技量がなければただのゲージの無駄遣いである。あと、体力や気絶値も若干低めに設定されているうえに切り返しに向いた性能の技が少ない。以上のことから、ジュリは中級者、もしくは上級者向けのキャラクターであった。まあ、通常技やセービングアタックの性能は良いし、もう1つのウルトラコンボ『回旋断界落』は風水エンジンと比べて使いやすい部類なので初心者が使えないこともないのだけど。

 

「じっ!はっ!ぜあ!...オラァ!!どうしたよ!!随分と縮こまってんじゃねーか!ほらほらぁ!好きなとこ攻めてきなよぉ!!キャハッ!」

「ふっ、ぐっ...!」

 

 そう言う割には堅実な攻撃が多いですねアナタ!?ジュリが繰り出した連撃をガードしたりいなしながら思考を巡らせる。台詞は挑発的だが、おそらく様子見をしているようだ。繰り出された連撃も、ゲームで言うならば弱攻撃と中攻撃といったところでスキが少なく、台詞でこちらの攻撃を誘っている。俺の実力を測ろうとしているのかもしれない。まあ、闘い方自体は俺とは初めて闘うわけだしね。初手としては極めて有効な戦法である。それにしてもさすがはジュリである。牽制とはいえ蹴りの間隔が非常に速い。威力よりも手数を重視しているのだろうが、基本的にパンチよりもリーチと威力に優れる蹴りの連打はテコンドーの恐ろしいところだな。───さて、どうするか。

 

「降魔覆滅!」

「っ!?やりゃあ出来んじゃねえか!っよぉ!!」

 

 とりあえずはこちらも様子見である。俺が使える技の中ではスキも少なめで連撃でもある降魔覆滅を繰り出す。ジュリは回避しつつも反撃を繰り出してきたが、戦闘の"流れ”を多少は引き戻すことはできたと思う。攻められっぱなしはあまりいい展開とはいえないからね。

 

 それにしても問題は、()()ジュリがどれくらいの強さであるか、ということだ。確実なのはウルトラコンボの1つである『風水エンジン』は使えないだろうということだ。あれはゲームでのジュリが()()に仕込んでいる風水エンジンという『装置』を作動させることによって行使しているのだ。どういった仕組みかは詳しくは知らないが、両目がちゃんとあり、装置自体がない今のジュリが使うことは絶対にない......はず!ケンの時の昇龍裂破もその時点では使えないはずだったって?なんのことかな?それと年齢もかなりゲーム時より若いので、身体能力も若干低いと予想される。まあ、だからといって俺より弱いってことにはならないんですけどね!ダンは俺達なら大丈夫だなどと無責任に言っていたが、今の蹴りの鋭さや言動に反したクレバーな闘い方といい楽な相手でないことだけは確実である。まあ、ダンは自分に対する評価は甘くなりすぎるけど他の人の実力を見抜く目はそれなりにあるので、ここは俺なら勝てるというその言葉を信じたいところだ。

 

「いいぞ!そのままその生意気な女を倒しちまえヒューガーとかいう奴!」

「ジュ、ジュリちゃん頑張っt「ああ!?」ひぅ...」

「.........」

 

 ギャラリーの男子門下生からなぜか本来敵側であるはずの俺に声援が送られてくる。応援してもらって悪いのだけれどまったく嬉しくないです。それとジュリを応援しようとしていた女子門下生は周囲の男子門下生たちに威圧され、最後まで言い切ることが出来なていなかったな。感じ悪いなぁ、全く。......それはそれとして、さっきからサクラがやけに大人しいというか、声も聞こえないんだけど。普通なら俺の対戦相手であるジュリの実力に興奮してワーキャー騒いでいそうなものなんだが。...これは少しヤバイんじゃ「これでどう!!」ってこっちがヤバイ!?

 

「外野がうるせーのはわかるけどよぉ?今はアタシと事の真っ最中だろうが!!よそ見してんじゃねえぞ!当てるよっ!!」

 

 強烈な両の足を使った蹴り上げ。周囲にほんの少し気を取られたスキに急接近していたジュリに反応が遅れてしまう。ガードはなんとか間に合ったが宙返りするように勢いをつけて放たれた一撃に少し身体が浮いてしまった。これは、まずいな...!

 

「ほらほらぁ!!」

 

 側転のような体勢で繰り出されたサマーソルトのような蹴りがガードに使用した腕に叩きつけられる。ジュリの必殺技である穿風車を単発にしたような一撃だった。

 

「まだまだぁっ!!『風破刃』!!」

 

 たまらずよろけながら後ろに下がった俺に、ジュリは追撃で気を纏った足を振り上げ気弾を放つ。俺の波動拳やナッシュさんのソニックブームとは違い、妙にフワフワとしたような、それでいて確かな危険性を孕んだ紫がかった気弾が迫る。この時点でも風破刃は使えるんですね!

 

「くっ!波動拳!!」

「へぇ...っ!おもしれーじゃねえの!」

 

 なんとか踏ん張って正面に出来得る限りの最速で波動拳を繰り出し相殺することが出来た。あ、危なかった。風破刃が弾速遅めで助かった。ゲームだと弾速が遅いほうが避けづらかったり動きを制限されたりするんだけど、今回は助かった。

 

「コラァ!アルゥ!お前が勝たないと困るんだからな!サクラが保険でいるからって油断してんじゃねえぞ!集中しろ!集中ぅ!!」

 

 サクラが後に控えているから油断したわけではなく、そのサクラの様子がおかしいから気がそれてしまったのだが。......しかし、確かにダンの言うとおりだよな。俺の馬鹿!未熟なくせに対戦中に気を逸らすなんて!!ケンと闘ったときも同じようなミスをしたというのに。───そうだ集中しろ、集中!確かにサクラの様子は気になる。でも、今はいい。ここで勝たなきゃダンが困るとかも、どうでもいい。今は目の前の相手(ジュリ)と闘ってるんだ。ならこっちもベストを尽くさなければ失礼だよ...ねっ!

 

「波動壁ッ!!」

「おっと!?...さっきから器用な真似してくれんじゃんねーか!ここの道場じゃアタシくらいしか『そういうの』使えないんだ...ぜっ!!」

 

 波動壁は躱されてしまったが距離を開くことは出来た。が、すぐさまジュリは距離を詰めて蹴りを放ってくる。さて、さっきは良い一撃も貰ってしまったことだし───反撃といきましょうか!!

 

「───ぜりゃあっ!!」

「な、何っ!?ああっ!?」

 

 繰り出された蹴りをあえてこちらから接近することによって勢いを殺して受け、そのまま拳での一撃をジュリへと叩き込む。要は前回のケンとの組手でも使った攻撃を喰らってからのカウンター戦法である。あの時は昇龍裂破に文字通り叩き潰されてしまったが、本来はこういう風に相手にもダメージがあるのが正しいのだ。あれはケンが異常なだけです。普通あの状態から反撃とか有り得ないから。いやマジで。

 

 それと今回は前回と違い、一矢報いるためではなくて『堅実な』と言ってもいいくらいの一手なんだけどね。こう言ってはなんだがケンの一撃と比べれば余裕を持って対応できるレベルだし、前に出ることで勢いを殺しているので本来の威力はない。『肉を切らせて骨を断つ』って感じかな?でもどっちも様子見の攻撃だったから、『皮を切らせて肉を断つ』といったほうがいいかも。まあ、とにかくこういった耐久力勝負は(不本意ながら)得意なのですよ、俺。

 

「...くぅっ!良いモン持ってんじゃねーか...っ!───キャハ♪楽しくなってきやがったぜぇ!!タマんねーじゃねーの!もっとだ!さあて!本番いくよ!!」

 

 攻撃を受けたというのになんだかジュリは嬉しそうである。......まあ、その感覚はわからなくはないな。......嗚呼、これじゃああまりサクラのことをバトルジャンキーだなんて言えないかもしれない。やはり実力が近い相手とのファイトって───楽しい!!

 

「───ハハッ!ならこっちも行きますよ!!」

 

 さっきも考えたけれど、ジュリではなく俺を応援する男の門下生とか、様子がおかしいサクラの事は今は置いておくとしよう。ジュリが言うようにここからが本番だ!実力差のない相手との一対一でのファイトってすっごい久々な気がするし、今はこのファイトをとことん楽しませてもらうとしますか!

 




きりが良かったのでジュリ戦を分割いたしました。決して予定より前置きが長くなりすぎたせいじゃないよ!ほんとだよ!
あと後半のアルは久々になんの縛りもない闘いに若干テンションがあがっておりますが、結構(バトルジャンキー的な意味での)サクラ色に染まってきています。

ちなみに深い意味はないけどそのサクラちゃんの今の状況をおさらいしておくと、
最近カリンと闘えなくて欲求不満。

強いやつ(ジュリ)がいるというので遥々韓国へ。

おあずけ✕3回

男子門下生の女性蔑視的な雰囲気。

目の前で凄く楽しそうにファイトする二人(いまここ)


そしてアルが電話をしたさきはいったい何処なんでしょうね?(ヒント:正義)

~~ おまけのミニコーナー 勝手に勝利セリフ ~~

春日野さくらVS春日野さくら(オリジナル)

戦闘前会話
「ねえそこのおねーさん!!私とファイトしようよ!」
「うん!良いよ...ってあれ?なんだか凄く見覚えがあるような?と、とにかくファイトを挑まれたからには受けなくちゃ!それじゃあ」
「「いっくよ~!!」」

(こっちのサクラが)
勝利時「おねーさんもリュウさんのファンなの?アタシと一緒だね!!でもファイトも気持ちも負けないよ!!あ、アル~!!勝ったよー!!え?どっぺるげんがー?なにそれ?ポ◯モン?」

敗北時「やっぱり見覚えがあるような...というかもしかして?...ん?君はこの子の友達なの?...ええっ!?この子って私のファンなの?そ、そっか~!だから技とかソックリだったんだね!なんだか照れちゃうなぁ。でもその年でそんなに強いなんて、これは私もウカウカしてられないなー。───よし!もっと頑張らなくちゃね!その子の"お手本”として恥ずかしくないようにね!」

火引弾VS火引弾(オリジナル)
戦闘前会話
「「しゃーーっ!!いくぞコラァ!!どっからでもかかってきやが...って何ぃ!?ちょ、超イケメンで強そうじゃねーか!?これは激戦になるかもしれねえ!!」」

(こっちのダンが)
勝利時「よく見たら俺様より生え際も後退してるし腹も出ってんじゃねーか!この俺様を真似したくなる気持ちはよーーーーくわかる。わかるけどな?もう少し似せる努力というやつをだな...何?未来の俺だぁ?ちょ、不吉なこといってんじゃねーぞコラァ!!こっちはいつまでもフサフサだっつーの!!」

敗北時「おいお前!この俺様を真似るとはひじょーーーにいい発想だっ!!しかし我道拳の撃ち方が全然なってねーじゃねーか!あとでその撃ち方を詳しく教えるんだ!いや、ほら悪いところとかを指摘してやるためであって別に羨ましいとかそういんじゃねーからな!それはそれとして!見どころもありそうだし物真似じゃなくてサイキョー流に入門すればもっといい男になって俺様に近づけるぞ!!さあそうと決まれば早速契約書にサインをだな...」

さ~て次回の明日に波動拳は、
「ジュリ戦決着!」
「サクラちゃんご乱心」
「正義執行!」
の三本でお送りいたします!それでは次話も見てくださいね!(栄螺さん風)

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