お待たせ致しました。
今回は一応短編を書くつもりで頑張ってみました。
結果、七千字くらいという微妙に短編と言い切れない文字数に。色々と削ったりしたんだけどなぁ。
それではどうぞ。
~この話は、日向涼が『特になにごともない普通の一日』だったと表現する日常の光景である~
――チュンチュン、チュンチュン
「うぅ......虎がぁ......う、腕を......っは!?」
最近よく見る悪夢にうなされながら目が覚める。時刻を確認してみれば4時半である。悪夢は見たが寝起きは良いので『いつも通り』の時間に起きることができたらしい......寝覚めは最悪だったが。早くリュウさんサガット倒してくれないかな。そうしたら多分安心して眠れると思うんだけど。
あ、どうもおはようございます。日向涼、もしくはアルトリウス・エリオット・ヒューガーです。現在自宅にてちょうど起床したところです。え?ちょっと起きるのが早い?そんなことないと思うよ?ほら、雀だって鳴いてるじゃないですか。これから朝のトレーニングしないといけないんで、大体いつもこの位の時間には起きるようにしてるいるのだ。この後普通に学校もあるから、このくらいの時間に起きないと朝練出来ないしね。
布団から出て稽古着に着替えて道場へと向かう。途中にある倉庫から今使っている地蔵シリーズの一つ『帰ってきたおぶさり地蔵君』を持ち出すことも忘れない。
「さて、今日も始めるとしますか」
朝なので『軽く』腹筋と背筋、あと腕立て伏せを100回と基本の動きの反復練習かな。あとは地蔵を背負ってのランニングだけだ。おじいちゃん達が居たり、休日だったりすると倍くらいにはなるからな。腕立てとかはそれでもまあ問題はないんだけど、地蔵がなぁ。
「くっ!?またいつの間にか重くなっていやがるっ。あ!よく見たら名前のタグに『獄』って文字が足されてる!」
地獄を味わえとでもいうのだろうか。製作者の悪意が透けて見えるようだ。一応トレーニング用の器具に『獄』はないだろう、『獄』は。どうやら『帰ってきたおぶさり地蔵君』シリーズにはアタッチメントで錘を追加できるようになっているらしい。どおりで地蔵は変わってないはずなのに段々と重くなっていくと思った。子泣きじじいみたいな妖怪に進化したんじゃないかとちょっと本気で心配してたんだぞ。
「......ふぅ。こんなところかな」
朝のトレーニングを終えて一息つく。さて、汗を流すためにお風呂場に移動しよう。学校に汗臭いまま登校するわけにはいかないからな。
「ふぃ~。サッパリした」
やっぱり朝シャンは気持ちがいいね!シャワーを浴び終えたのでキッチンのあるリビングへと移動する。現在時刻は6時、だいたいこの時間にはアリス母さんが朝食やウル父さんの弁当とかを作っているのでその手伝いをするためだ。これでも前世では自炊していた経験があるのでそれなりに料理は出来たが、手伝うようになってからかなり料理の腕が上がったと思う。アリス母さんは料理の腕だけでなく教えるのも上手かったのだ。
「おはよう、アル。今日も手伝ってくれるのかしら」
「おはようお母さん。もちろん手伝うよ。何すればいい?」
キッチンで朝食を作っていたアリス母さんが俺に気づいて挨拶をしながら微笑みかけてくる。うん、相変わらず10歳の子供がいるとはとても思えない若々しい容姿だ。いまだに街に出るとナンパとか普通にされるらしい。もしかしたら波紋の呼吸でも習得しているのかもしれない。
「じゃあ、お父さんのお弁当をお願いしようかしら。今朝食を作ってるから手が離せないの」
「うん、わかった」
ウル父さんの苦手なピーマンをそれとわからないようにして大量に混ぜ込んでおこう。この前俺が作った弁当の野菜の部分だけ残しやがったからな。お残しは許しまへんでぇ!
「よし、出来た」
フフフ、我ながらなかなかの出来だ。これならばウル父さんも気づかないだろう。まさか大好きなハンバーグの8割が野菜だとは夢にも思うまい。
「あら、もう出来たの?だいぶ早くなってきたわね。きっと良いお嫁さんになれるわよ。うふふ」
そういう冗談はやめてください母上。去年のクラスで、女子を抑えて『いいお母さんになりそうな人ランキング』で一位になってしまったトラウマが疼くんです。俺はアナタの息子であって娘じゃありませんからね?うふふじゃないからね?
「ふぅぁ~~あ。おはようさん」
「おはようウル。朝ごはんはできてるからまず顔を洗ってきてね」
「お~う」
眠気の残る声で挨拶をしながらウル父さんがリビングに入ってきたが、アリス母さんに言われてそのまま洗面所へとフラフラと移動する。そのだらしない姿からは想像もつかないが、無茶苦茶強いんだよなぁ、
「アル、アナを起こしてきてくれない?ウルに起きてくる時は一緒に起こしてねって頼んでるのに、また忘れちゃったみたいだから」
「うん」
返事を返して手を洗ってから妹が寝ているであろう両親の部屋へと向かう。扉を開けると予想通りまだ妹は可愛らしい寝息を立てて眠っていた。
「アナ、起きて。朝ごはんの時間だよ」
「......う~?あ!おにいちゃんだ!わ~い!」
妹のアナスタシアは俺の呼びかけで目を覚ますと布団から飛び出して抱きついてくる。何この可愛い生き物。だが、もう朝食の準備はできているしアリス母さんたちも待っている。ここで甘やかすわけにはいかない。
「......こら。お母さん達が待ってるんだから早く行くよ」
「もうすこしだけ......だめ?」
なんだ、ただの天使か。それなら仕方ないね。......ハッ!?一瞬で意識を持っていかれた。なんという......アナ、恐ろしい子っ!!
「......しょうがないな。このまま運んであげるから暴れるんじゃないぞ?」
「うん!えへへ~、おにいちゃんだ~いすき!!」
くはぁっ!?お、恐ろしい破壊力っ!!物理に換算するとバーディーのブルヘッドを喰らった位の衝撃がぁ!!あまりの威力にちょっとふらついてしまったが、日頃の精神鍛錬のおかげかなんとか持ち直してリビングまで運ぶことが出来た。ふぅ、手強い相手だった。
「あら、アナったらまたアルに運んでもらったの?」
「ほら、いつまでもしがみついてねぇで席につきな。まったく、アナは甘えん坊だなぁ」
父さん達は既に席についている。どうやらアナに抱きつかれた際に少しばかり意識が飛んだせいで少し待たせてしまったようだ。アナを椅子の上に降ろして俺も自分の席に座る。
「よし、皆揃ったな。んじゃ、手を合わせてっと」
「「「「「いただきます」」」」」
ん?今声が一人分多かったような?
「美味しい~~!やっぱりアリスさんの料理はサイキョーだね!」
ああ、やっぱりサクラか。余りにも家の食卓に馴染みすぎてて普通に気づかなかった。ホント当然のようにいるからなコイツ。あとさりげなく俺のおかずを食べようとするんじゃない。めっ!
「あいたっ!?うぅ、バレちゃったか」
「やあサクラ、おはよう」
「あ、あはは~!おはようアル!」
盗み食いが見つかってサクラは少し気まずいのか誤魔化すように元気よく挨拶を返してきた。サクラが1人でしっかりと起きることが出来た日は大抵こんな感じで家の朝食に混ざっている。バスで一緒に通学するからこの方が都合がいいし、おじいちゃん達が来てる日なんかは朝のトレーニングにサクラも参加するので自然とこうなったのだ。
まあ、そんな感じでいつも通りの朝食を終えて、現在学校へ行く準備中である。といっても昨日の内に用意してるからあとはカバンを持っていくだけなんだけどね。
「アリス~、今日の弁当って中身なんだ?」
「ハンバーグよ」
「お!やったぜ!それじゃあ行ってくるな!」
「ええ、いってらっしゃいウル」
ウル父さんはもう家を出るらしい。あ!またいちゃついてる!『いってきますのチュー』とか玄関先でやらないでほしんだけどな。......ハンバーグの中身を知って絶望するがよいわ!
「アルー、私達もそろそろ行こうよ~!」
「そうだな。サクラ、忘れ物はないよね?」
「大丈夫だよ!」
そう言ってこの前カバンごと忘れてただろうが。教科書を見せてあげたのは誰だと思ってるんだ。
「それじゃあアリスさん!いってきまーす!!」
「いってきます、お母さん」
「はい、いってらっしゃい。二人共、車とかに気をつけてね」
アリス母さんに見送られて出発する。その後、いつもの様にバス停までの途中でケイと合流し、バスでカリンと一緒になった。ケイの方は違う時間のバスに乗ったりするので会わないこともあるが、カリンは『絶対に』俺達が乗るバスに乗ってくるので確実に遭遇する。それはもうコーラを飲んだらゲップが出るくらい確実に遭遇する。多分、うちの前とかを監視して待ち伏せてるんじゃないかな。実害がないから良いけど普通に犯罪だと思う。
「オーホッホッホ!今日の体育は持久走!負けませんわよ!」
「望むところだよ!カリンちゃん!」
授業中(特に体育)もこんな感じで隙あらば勝負を仕掛けてくる。そしてサクラが勝負に乗って何故か俺まで巻き込まれるのがいつものパターンだ。ちなみに今日の持久走では俺が勝ちました。持久力ではそう簡単に負けませんよ!伊達に毎日地蔵を背負ってランニングしてないんでね!
「オーホッホッホ!それではお二人共、ご機嫌よう!また明日お会いしましょう!」
「こらぁー!神月さん今日掃除当番でしょ!!ちょっと待ちなさいよ~!!」
相変わらずカリンは授業が終わるとすぐに帰っていく。ケイがなにやら叫んでいるが、既にヘリに乗り込んだカリンにはプロペラの音でかき消されて届かなかったようだ。まあ、カリンが掃除当番の時は従者である石崎とかがやらされてるし、聞こえてても余り意味は無いんだけどね。
「よし!じゃあ私達も帰ろう!!じゃあねー!ケイちゃんーー!!」ガシィッ!!
「......はぁ。今日もいつもどおrアッーーーーー!!」
「サクラーーーー!!いい加減に学習しなさいよーーー!!手をつなぐなぁーー!」
修業によってサクラの身体能力が更に上昇したことによって腕を掴んで引っ張る力も凄いことになっている。この俺の腕を掴んで行動する癖は成長しても消える気配がない。むしろなんか悪化してさえいる。......ただ、もう、なんというか最近慣れてきてしまったというか......俺の頑丈さがかなり鍛えられたせいである程度平気になってきてるんだよね......。いや、Mじゃねえから。断じてMとかじゃないから。慣れてきただけで痛いのは大嫌いです。
「ただいまアリスさん!道場借りるね!!」
「...ただいまお母さん」
「あら、サクラちゃんにアル、おかえりなさい。いつも熱心ね。今日はクッキーを焼いたから修行が終わったら一緒に食べましょうね」
「クッキー!?やったーー!!」
そしてテンションの上がったサクラに引きずられてそのまま道場に到着。ランドセルを置くと着替えもせずにそのまま組手に突入した。
「おいサクラ、せめて着替えてからにしよう、な?」
「いっくよーー!!波動拳ー!!」
「うおぁっ!?ええい!しょうがない奴め!!......来い!!」
サクラのいきなりの波動拳を回避して構えをとる。今日はもともと模擬戦をする日だったからしょうがないが、せめて着替えてからにして欲しかった。......だって今日、サクラスカートだし。
「コレで決めるよ!!春風脚!!でやぁっ!!」
数分ほど打ち合った後、サクラは勝負を決めるために春風脚を放つ。それを俺がガードして受けると、サクラは着地と同時に鋭い蹴り上げを放ってきた。いわゆる『春風連脚』というやつである。追加入力や、EX技で出した時に出るあれだ。だが、その技はこの世界では俺のアドバイスから発生した技だ。タイミングは見切っているぜ!
「見えたっ!ウサギ!」
「え!?はわわっ!?」
「隙ありぃ!『閃空脚(せんくうきゃく)』!!」
「うはぁ!!?」
『何故か』俺の言葉に隙を見せたサクラを、ダンの『断空脚』をアレンジして生み出した技『閃空脚』で叩き伏せる。ふっ、どうやら最低限の恥じらいは持ち合わせていたようだな。え?ウサギってなんのことかって?......ご想像にお任せします。とりあえず今回も俺の勝ちのようだ。
この『閃空脚』という技は、断空脚の『気』を推進力として利用して蹴りを放つことを応用している。簡単に言ってしまえば、気で推進力をつけて射程を伸ばした回し蹴りである。もっと簡単に説明すると、見た目はジョー・ヒ◯シのスラッシュキ○クです。断空脚よりも最初の踏み込みに気を集中させて放つことにより蹴りの回数自体は1回だけに減ってしまったが、その分その一発の飛距離と威力は断空脚よりも優れている。
ただ、例のごとく距離に比例して気を溜める隙が生じるんだけどね。更に気合を込めれば断空脚のように3回くらいなら連続で蹴りを叩き込めるとは思う......が、その場合いまの俺の実力では物凄い隙を晒してしまうが。今回は至近距離だったので、実際はちょっと気で勢いをつけただけの回し蹴りである。あ、ちゃんと断空脚も使えますよ。
「むぅ~~」
「何むくれてるんだよ。今回はサクラが勝負を急ぎすぎてただけでしょうが」
実際今日はサクラが短期決戦に持ち込もうとして技を不用意に出しすぎたからいつもより早く終わったしね。
「ね!アル、もう一回勝負しようよ!」
「ダメです。あんまりやり過ぎると身体に負担がかかるから、組手は3日に1回までって決まってるでしょ?」
「ちぇ......。ケチ」
「はいはい。ケチですよ。さあ、基本トレーニングに入ろうな」
その後各種体力トレーニングを(俺だけ錘をつけて)500回ずつくらいしてから、(俺だけ地蔵を背負って)朝の時の3倍ほどの距離をランニングをこなした。今日はウル父さんは帰りが遅いらしく、トレーニングだけで終了した。本当は技の確認とかもやるんだけど今日はサクラがクッキーを待ちきれなかったようだ。
「美味しいーー!アリスさんの作るお菓子はサイキョーだね!ねー、アナちゃん!」
「うん!おいしいねサクラおねいちゃん!!」
修行を終えてシャワーで汗を流して着替えてから現在ちょっと遅めのティータイム中。ちなみにサクラの着替えも普通に俺の家に常備してあります。
「サクラちゃん今日は夕飯どうするの?食べていく?」
「今日はお家で家族で鍋なんだ!だから今日はもうすぐ帰るよ!」
「え~~、サクラおねえちゃんもうかえっちゃうの~?」
「アナちゃんは可愛いなぁ~。
アナが可愛いのには全面的に同意するが絶対に交換は許さんからな。絶対にだ!
「それじゃあアル!また明日ね!アナちゃんもばいば~い!」
「じゃ~ね~サクラおねえちゃん!」
クッキーを食べ終えて暫くアナと遊んだ後サクラは帰っていった。ふぅ、今日は普通に帰ったな。この前はアナに引き留められて結局泊まっていったからな。アナと一緒に俺の部屋で寝ると言い出したのでベットを二人に明け渡して床で布団を敷いて寝ていたら、何故か最終的に二人共俺の布団に潜り込んできて抱きまくらにされたからな。寝苦しかったし、ベットを譲った意味なかったじゃないか。
サクラが帰った後、夕食を終えて自分の部屋に戻った。宿題を終わらせ、明日の教科書などを用意するとお風呂までは多少自由な時間が出来る。となるとやることは一つだな。俺は本棚のある場所に隠したとある本を引っ張りだす。さて、始めるとしますかね......『ザンギエフ式筋力増強トレーニング~ブリザードに負けない肉体美の為に~室内編』をなっ!!
「ふぅ、はぁ、はぁ。やっぱり午後の修行の後だと疲れるなぁ。筋肉モリモリマッチョマンへの道は遠いぜっ!」
「アルーー!お風呂の用意出来たから入っちゃってね」
「はーい!今行きまーす」
アリス母さんに呼びかけられたのでトレーニングを切り上げて風呂に入った。その後、部屋で少し読書をして現在午後10時半である。さて、明日も早いしそろそろ寝るとしますかね。観たいテレビとかも今日はないしね。
「......今日はわりと平穏だったな。明日もこんな感じで無事に過ごせたら良いなぁ......」
電気を消して布団に入りながらそんな事を呟く。いや、わりと切実な願いなんですよ、コレ。それじゃあおやすみなさい......スヤァ。
ちなみに翌日、ハンバーグに仕込んでいた野菜がバレてウル父さんに気絶するまでしごかれたので、この願いは叶わなかったことを報告しておく。人生は諸行無常です。チクショウ。
妹のアナスタシアはシャドウハーツ2に出てくる同名の人物がモデルとなっています。主人公にとっては史上最強の弟子でいう美羽さん的な役割。殺伐とした修行のなかの最大の癒し要素です。サクラがそのポジションじゃないのかって?いいえ、彼女はアパチャイのポジションです。
今回の話を書いてて思ったことは一つ、「俺って短編書けないかもしれない」ってことです。いや、今回の話途中までいつもの感覚で書いてたら話の途中なのに文字数がえらいことになりまして、後半かなり駆け足になってしまいました。なんというか、描写したりなくてちょっと不完全燃焼な感じです。
次回の話は外伝の長編を何回かに区切って投稿します。次回はちゃんと新しい原作キャラが登場しますよ!なぜ外伝なのかはそのあたりが関係してたりします!
ただ、非常に申し訳ないのですが、もう一つ資格を取らなくちゃいけなくなったのでまた少し投稿は遅れそうです。今回と同じくらいお待たせしてしまうかもしれません。ほんと申し訳ない。