ウチの真姫がファーザー・コンプレックスを患ってしまった件について   作:うなぎパイ

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高卒の私には大学の事も医大の事も分からないので指摘ありましたら教えて下さい


第1話 私はとても有名な人に告白されたらしい

東京都内にある医科大学

二限終了のチャイムが鳴り響き

私、『辰宮 楓』は女友達3人でいつものように学食で昼食を取り始める

 

「はぁ………」

 

昨日の事を思い出し思わずため息を漏らしてしまう

そんな私を2人の友人

『忍崎紫信』おしざき しのぶ、『大獄和泉』おおたけ いずみが珍しそうな目を向けて声を掛けてくる

紫信ちゃんはいつも笑顔で少し男勝りな女の子。ついでに頭はちょっと残念だ

和泉ちゃんはファッションに詳しくて今時?の女の子。ついでに頭は何故か良い

 

「どったの

 ため息なんて珍しい」

「本当に珍しいね

 楓がため息って」

 

私のため息一つはそれほどにまで珍しいのだろうか

これでも今をときめく華の女子大学生

悩みの一つくらいはある

 

「だって楓がため息なんて吐くの数ヶ月に一回程度でしょ?」

「む、私だって色々あるんだよ?」

「色々あってもため息吐く前に甘いもの食べて機嫌直るからね

 どんだけリセットしやすいなのよ、アンタの頭の中」

「あんまり甘いもの食べてるとまた太るよ~」

「ふ、太らないよ!!」

 

太らない

太らないはず

絶対

いや、きっと

そう自分に言い聞かせながらテーブルに置かれたショートケーキをフォークで切り取り口に運ぶ

あぁ甘い、美味しい

人生もこういう風に甘く、上手くいけばいいのに………

はっ!今の我ながら巧い!

 

「……また下らない事考えてたね、アンタ」

「く、下らなくないよ!」

「つまり何かは考えてたってことでしょ?」

「少し拗ねた顔でケーキ食べてたのに口に食べて少し考え込んで『はッ!?』みたいに閃いたみたいな表情をしたら誰でも分かるよ」

「楓は天然なんだから気をつけなよ?

 変な男に捕まったりとか」

「はぅ…ッ!!」

 

男という発言に思わず昨日の事を思い出して反応してしまう

若干涙目になってしまった

やはり私は変な男に会いやすいのだろうか………

まぁ未だに年齢=彼氏いない暦だから過去の話は何一つ無いのだろうけど

 

告白はされたことは幾らかあるが皆断っている

男性にはどうしても恐怖心を抱いてしまうからだ

こらまで何人もの女友達のそういった話を聞いてきたが羨ましいという感情よりも怖いという感情が勝ってしまう

やれ強引だの、やれ無理矢理だの、やれ苦しいだの

そんな恐ろしい事をしてくる相手をつくろうとは思えない

 

「………あんたのそれ

 天然だから凄いよ」

「現実に居るんだね

 こういう娘」

「これで可愛くなかったら思わずしばき倒してたところだよ」

「………?」

「……それで今までよく騙されて来なかったね」

「それは、その……男の人ってなんか………怖いし」

「どんだけ発想がお嬢様なのさ

 そんな娘、100人に1人いるかどうかも分からないよ」

「だ、だって皆の経験談聞いたら怖くもなるよッ!

 いつも優しくないとか痛いとかいってるしッ!!」

 

あまりの責めに思わず大声で反論してしまう

そして大声を上げてしまった事で周りの何人かが此方を不思議そうな眼で見てきていた

それに気づいた私は顔を真っ赤にしてバッとすぐに椅子に座った

良かった、学食が騒がしくて

これで授業みたいに静かな所だったらとんでもない恥を掻くところだった

って、目の前の2人はニヤニヤと楽しそうにこっちを見て笑ってるし

この2人、私を弄んで楽しんでいるな

いつか私の溢れる知謀で一泡吹かせてみせるんだから

 

「今度はどんな下らないこと考えてるか知らないけど止めときなよ

 天然のアンタがそのドヤ顔で考えた事なんて大抵空回りして終わりになるだけなんだから」

 

なぜバレた

そこまで私は分かりやすいのだろうか

その事に付いて問い詰めたいところだが本題に入ろう

 

「あのさ……相談したい事があるんだけど………」

「相談?」

「お、何々?

 まさか恋愛相談!?」

「遠からず近からず……かな?」

「……え、マジで?

 冗談で言ったつもりだったんだけど」

「ついにこの時が楓にも来たか……」

 

何故か和泉ちゃんは明後日の方向を向いて昔を懐かしむような表情をしている

あまり分かってはいないがその表情は同い年の私の事でつくるものではないという事だけは分かった

彼女がそんな表情をするのは彼女なりの理由があるのだろう

そんな彼女を無視して話を続ける

 

「昨日さ、都心の方にショッピング行ったでしょ?」

「あぁ~行ったね

 いやぁいいもの一杯買えてよかったよ」

「アンタはスポーツ用具買っただけでしょうが

 何で態々都心にまでスポーツ用品店に行くのさ」

「いやぁ流石都心だね

 品揃えはそこらの比じゃないよ」

「だからってワン○ーコアは無いでしょワンダー○アは

 女子大生が買う買い物じゃないよ」

「総長もビックリなワ○ダーコアだからね

 鉄球にぶっ飛ばされても無事だったし」

「宇梶剛○を総長と呼ぶのは止めなさい」

 

何故か私の相談事はワンダ○コアと宇○剛士に消し潰されていた

ちょっとショック

 

「あの……相談は………」

「あぁゴメンゴメン話逸れちゃったね

 ついワン○ーコアと宇梶○士の話を」

「ちょっと脳筋は黙ってな」

「じゃぁ続けるよ……?」

「あぁ」

「うん」

 

今度は身をこちらに乗り出して聞き始める

なんとか修正は出来たらしい

また意を決して話を始める

 

「その……私、電車に乗って最後の一人になったでしょ?」

「なっちゃったね」

「それで、そのすぐ後に……その、痴漢に会っちゃって………」

 

『はぁぁぁぁぁッ!!!??』

 

「ひぅ…ッ!?」

 

私の痴漢発言に2人が大声を上げた

やめて!

ちょっと止めて!

回り見てる!!

さっきより多い人に見られてるから!!

 

「ア、アンタ大丈夫だったの!?

 なななな、何されたの!?

 まさか最後まで……ッ!?」

「最後までって……ッ!?」

「ま、待って待って!!

 されてない!されてないから!!

 ちょっとお尻触られたくらいだから!!」

「尻ぃッ!?

 クッソ誰だ!!

 楓の大きくて柔らかい安産型の尻を撫で回したのは!!」

「楓はお尻は勿論!

 唇すらまだ穢れを知らないって言うのに!!」

「なななな、何言ってるのッ!?

 ちょっとホントに止めて!!

 周りの人見てるから!!!」

 

もう止めてよ!

本当に周りの人がこっち見てるから!!

しかも男の人何人か頬若干赤らめて私のお尻見て『大きいんだ……』みたいな視線を送ってきてるから

 

「安心しろ、楓!」

「な、何を……?」

「楓は着やせするタイプだって知っているからおっぱいも実は大きいことも知っている!」

 

「もうやだぁぁぁぁぁあッ!!!!」

 

皆の視線はお尻と胸の二つに別れてた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう学食でご飯食べられないよぉ……」

「ごめんごめん

 ちょっとノリにノっちゃってさ」

「だって楓ってイジりやすいんだもん」

 

次の3限の授業の為に教室で待機することにした

私は先程の恥ずかしい事を思い出しながら机に顔を伏せて悶えていた

そんな私に申し訳なさそうに謝罪をしてくる

……若干笑っていると感じるのは気のせいだろうか?

後、紫信ちゃんは謝ってないよね?

ねぇ?

 

「それで、痴漢がどうかしたの?」

「今無事にここに居るって事は大丈夫だったてことでしょ?」

「うん……その、触られてる時にね男の人が助けてくれたんだ」

「え、何?

 いきなりドラマ展開?」

「昨日T○UTAYAにDVDでも借りたの?」

「違うよ!本当に起きたの!!」

「どうどうどう、落ち着いて落ち着いて」

「早く本題に入らせてよ!!」

 

もう本題が言い終わるまでツッコミや反応をするのは止めよう

話がまったくと言っていい程に進まない

これじゃぁ痴漢されたという不幸自慢をしているだけだ

 

「それでその男の人にね……その、あの…………をされたの」

「え、何されたって?

 何?ナニ?………え、ナニ?痴漢?」

「痴漢を助けた娘に痴漢するってどんだけ上級者なのよ」

「ち、違う!違う!!

 痴漢じゃなくってその……くをされたの……」

「声小さいよ、聞こえないって」

 

駄目だ

いざ言おうとすると顔が熱くなって紅くなるのが分かる

 

「言うよ……?」

「だから言ってよ」

「ちゃんと聞いてよ……?」

「だったらちゃんと言えって」

 

酷い

救いの手の様なものは差し伸べられないのだろうか

ただ返ってくるのは催促の言葉だけ

もう少し優しさが欲しい

しょうがない、意を決して話そう

 

「こっ、こここここ……ッ!」

 

「……………………」

 

「こく、こくッこくは……ッ!!」

 

「……………………」

 

 

 

 

 

「告白……ッ!」

 

 

 

 

 

やった

言い切った

言い切ったよ、私

今年一番の頑張りだよ

昔マクド○ルドのバイトでお客さんから『スマイルお持ち帰りで』と言われた時の対応並みに頑張ったよ

 

『おおぉぉぉ~っ』

 

私の頑張りが通じたのか2人から拍手喝采が生まれた

思わずドヤ顔を作ってしまた

しかし拍手していた2人だが何故かいきなり固まった

 

「………え?」

 

「………え?」

 

「………………え?」

 

その『………え?』とは何に対しての『………え?』なのだろうか

思わず私も『………………え?』で返してしまった

意味が伝わらなかったのだろうか?

 

「え、告白?

 恋愛の?」

「そ、そうだよ?」

「犯罪を犯した告白じゃなくて?」

「ち、違うよッ!」

 

まったくもうッ!と頬を膨らましていると和泉ちゃんがいきなり頬を両手で押さえて空気を抜いてきた

そしてそのまま頬を両側から引っ張られた

痛い痛い痛い

 

「ふぁにふるの~(何するの~)」

「一々行動が可愛いんだよお前は!

 天然度数が高過ぎるんだよ!!」

「いふぁいよ~(痛いよ~)」

 

 

 

「後ッ!!」

 

 

その言葉の瞬間、手に入れる力の威力が上がった

痛い痛い痛いッ!!!

この威力は遊びのソレじゃないよね!?

 

 

「どこが『遠からず近からず』だ!

 近いどころかまさしくそれそのものじゃないか!!

 辞書で赤線引いて来いッ!!」

 

「いふぁぁぁあいッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛ぁいよ、和泉ちゃぁぁん………」

「自業自得だよ」

「まぁまぁまぁ」

 

痛みが走り続ける頬を両手で擦る

そんな私を見て和泉ちゃんは然も当然かのように言葉を返してくる

解せない

そんな2人を紫信ちゃんが笑いながら宥めてくれる

 

「それで?

 楓の悩みはその返事をどうしたら良いか分からないから一緒に考えて欲しいって事?」

「うん………

 さっき紫信ちゃんが言ったみたいに変な、その……男の人?に当たったらどうしようかなって………

 私、男の人と話すこと自体あんまりないから分からないんだ」

「まぁなぁ~

 痴漢助けてくれるからそれなりに良いところはあるんだろうけど楓を助けたっていうアドバンテージを使って無理に迫ってくるってのも考えられるかな

 それともそれを見越して助けた可能性だってあるし」

「うぅぅ………」

「でも結局の所、その人見てみないと分からないからなぁ~

 本当に厚意でやってくれたのかもしれないし」

「確かに、出来ることなら見てみたい

 欲を言うなら話してみたい、かな?」

「そうだよね………」

 

会わせるかぁ………

でも、それってあの人から見てどうなんだろう

やっぱり疑い掛かってる様であんまり良く思われないんじゃないかな………

 

そんな風に落ち込んでいる私を見ながら二人は何故かニヤニヤとし始めた

何かあるのだろうか?

 

「それで。

 その人カッコよかった?

 イケメン?」

「イ、イケメン………?」

「やっぱり相手を見定めるなら顔からでしょ

 そこから次は内面的な?」

「で、どうなの?

 その答えによっては私達のモチベーションも変わるからさ」

「私はそこまで外見は気にしないけど………」

「まぁまぁまぁ

 客観的にだけで良いからさ」

 

何故か顔の話題に入った途端グイグイ来始めた二人

怖い

怖いよ

目が若干血走ってるから

………顔か、そう思いながら昨日の記憶を思い返す

印象的だったので結構細部まで覚えている

 

「結構カッコ良いと思うよ?

 運動帰りだったらしいから質素な格好だったけど」

「運動………?

 何かやってるの?

 もしかして社会人?」

「ううん

 同い年って言ってたし都心の医大に在籍してるんだって

 ボクシングのグローブ持ってたから多分クラブ活動か何かやってると思うよ」

「うっわ、玉の輿じゃん

 都心の医大にいる人間なんて金持ちしか居ないし」

「別にお金持ちかどうかは問題じゃないんだけど………」

「医大名分かる?」

「うん、教えて貰ったから」

 

携帯を取り出した和泉ちゃんに私は医大の名前を伝えた

その名前は偏差値がとても高いことで有名な所だ

 

「え、マジ?

 ここって全国の医大のほぼトップじゃん」

「これまた凄いね………」

 

そうブツブツ言いながら和泉ちゃんはHPを開きサークルの検索を始める

紫信ちゃんもそれを私の反対側から覗き込むような形になった

しかしサークル一覧表の部分で和泉ちゃんの手が止まった

 

「あれ、ボクシング部って無いじゃん」

「え?本当?」

「………もしかして嘘つかれたんじゃないよね?」

「あ、あの人はそんな事しないと思う………」

「でもここに無いって事はなぁ」

 

手詰まりになってしまった私達

あそこまで堂々と告白してきた人間がそんな嘘をつくとは思えない

何とかして手がかりを手に入れようと考え込む

そこで和泉ちゃんが首を掻きながら聞いてきた

 

「そうだ、楓

 その人の名前とか分かる?

 大会とかで小さくても一つくらい功績残してればネットで引っ掛かるかも」

「はッ!

 そうだね

 ちょっと待ってて

 連絡先交換したから」

 

確かに確立は高い

それに拳一つで窓ガラスにヒビを簡単に入れてしまう程の彼だ

一つや二つ功績をたてていても何ら不思議は無い

和泉ちゃんの言葉を聞いてバックに入れていた携帯を探り始める

 

「これで見つからなかったら直接会うしかないかなぁ」

「一番簡単なのは楓に会わさせて私達は影でこっそりと見てるかだな」

「それはそれで楽しそうだね~」

「………あ、あった!」

 

携帯を開いて電話帳の中から彼の名前を見つけた

いやぁ~、やっぱり私の携帯だとすぐに見つかるね

連絡先に入ってる男の人なんてお父さんと彼だけだし

 

「これ、この人」

「どれどれ」

「この宇梶剛○って人?」

「そんな人、入ってないよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この『西木野 宗一郎』って人ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が彼の名前を言った瞬間2人が固まった

え、何?

どうかした?

私何かマズイこと言ったかな………?

 

「………ぇ?」

 

「にしき、の?」

 

まるで信じられない様な顔をして此方を見てくる

どうしたらいいか分からないので取り合えず頷いてみる

もしかして2人の知り合いだったのかな

それだと簡単で良いなぁ

2人を仲介役として気を楽にして話せるし

そう考えていると和泉ちゃんが私の肩をバッと掴んだ来た

痛いッ

 

「あ、ああアンタ!

 あの『西木野 宗一郎』に告白されたのッッ!!!?」

「あの?ってのは分からないけど……『西木野 宗一郎』さんにその、告白されたよ……?」

 

何故だか和泉ちゃんが情緒不安定になってきた

いつも冷静な彼女にしたら珍しい

何故こんな事になっているかは分からないが

 

「ボクシング………医大………

 確かにあの人の条件的にピッタリ………

 いや、でも………」

 

紫信ちゃんは何故か私の携帯を睨みながらブツブツと言っている

そこまで2人にとって重要人物か何かだったのだろうか?

っていうか和泉ちゃんのあまりの大声に周りの人が凄い見てるんだけど

ちょ、声量下げて!

 

「………もしかして知り合い?」

「バッ!知り合いな訳無いでしょ!?

 本当にこんな有名な人知らないの!?」

「そ、そんなに有名なの……?」

「東京の医大生なら知ってて当たり前!

 聞いたこと無い!?」

 

「な、何を?」

 

 

「東京の医大で『神の子』とまで言われている『西木野 宗一郎』って人の事ッ!!」

 

 

 

 

 

私はとても有名な人に告白されたらしい

 

 

 

 

 

 

 




真姫ママは若干アホの子になりました

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