予めご了承ください。
「……変身」
『Standing by』
『Complete』
三原修二は一人孤独になりながらも戦い続けた。白いラインの入った黒い機械の鎧ーーデルタの鎧に身を包み、突如として現れた寄生生物ガストレアと。
「ハァッ、セェイッ!」
この場に複数体いるガストレア達は三原に群がっていくが、それらに対して三原は拳打や蹴りを打ち込んで突き飛ばしていき、距離を離した。
「Fire」
『Burst Mode』
さらに、三原は拳銃に似たツールーーデルタムーバーに単語を一つ吹き込むと、それからは電子音声が返ってきた。そして、彼は前方にいる複数体のガストレアに向かってトリガーを数回引いた。一度トリガーを引くと、デルタムーバーからは三発の青白い光弾が連続で飛んでいく。ガストレア達はそれらが突き刺さると、当たった箇所から段々灰と化していき、一瞬の内に絶命していった。
「はぁはぁ……ウォォォッ!」
彼は今の攻撃を受けてもまだ息のあるやや大きめガストレアーーステージⅡのガストレアを確認すると、すぐさま駆け出していく。彼は走っていった勢いをそのまま生かして体を捻り回し蹴りをガストレアの腹に叩き込む。
ーー現在、使用可能なライダーズギアとして残っている物はデルタギアとファイズギアの二つのみ。カイザギアはアークオルフェノクとの最後の戦いで塵となってこの世から消えてしまっている。そして、ファイズに変身できる者ーー乾巧はもうこの世にいない。つまり、三原と共に戦ってくれる者は誰一人としていないのだ。それでも、彼は戦った。家族のため、戦えない他人のため、今は亡き戦友のため。
『Ready』
三原はガストレアとの格闘戦をある程度行って、怯んだと判断した段階で一度ガストレアから離れる。その後、ベルトの中央部にあるΔの字が刻まれたミッションメモリーを取り出して、デルタムーバー上部にセットする。
「……Check」
『Exceed Charge』
それから、さっきとはまた別の単語を三原が吹き込むと、それに応じるかのように電子音声は返ってきた。それと同時に体の中心から青紫色の光が白いラインを通って右手のデルタムーバーに集約されていく。
チャージが終えたことを確認し、トリガーを引くと、青紫色の光はデルタムーバーから解き放たれた。青紫色の光はガストレアに当たると、三角錘の形状へと変わり、その場でガストレアを完全に拘束した。
「セェイッ……ヤァァァッ!」
そして、三原は空中に大きく跳び上がると、右脚で跳び蹴りを三角錘の光を目掛けて叩き込んだ。三原が着地すると、蹴りを受けたステージⅡのガストレアは灰と化して、脆く崩れていった。
この場にいたガストレアは三原によって全て葬り去られたが、はるか彼方からは自衛隊とガストレアの戦闘が続いているようで、爆発音やそれとは別の轟音が鳴り響いていた。
「
『Jet Sriger Come Closer』
巨大なジェットエンジンを積んだバイクに近い形をした乗り物ーージェットスライガーを自分の元へ呼び寄せると、三原はそれに乗った。そして、いまだに戦闘が続いているであろう、戦火があがっている場所に向かっていき、この場所を後にした。
◼◼◼
「……ッ!これは!?」
三原はジェットスライガーから飛び降り、目の前の光景を見て驚愕した。自分がさっきいた戦場よりも死体の山がより積まれており、ガストレアも大きな個体の数が明らかに多いのである。
「おい、二人とも!早く……逃げろ!」
そして、逃げ遅れた母親と子供に今にも襲い掛かろうとしていた蜘蛛型のガストレアに掴みかかり、その動きをギリギリのところで制して、そのまま誰もいない方向へと投げ飛ばした。
投げ飛ばしたガストレアに向かって、三原はすぐさまデルタムーバーのトリガーを引こうとするが、今度は別のガストレアによる死角からの奇襲にあい、光弾を撃つことはできなかった。
「……ッ!この野郎!」
我武者羅に体を強引に突き動かし、ガストレアの拘束を振り払った三原だったが、周囲にいるガストレアの数は2体だけだったものが3、4、5体とあっという間にぞろぞろと増えていった。このままでは分か悪いと判断したのか、三原はついさっき降りたジェットスライガーに再び跨がって、前方に映るコンソールパネルを馴れた手つきで次々に叩いていく。ガストレアも本能的に三原を追いかけるようにして、5体とも同じ一ヵ所に向かって進撃を開始するが、それは既に手遅れだった。
「食らえ!」
ジェットスライガー後部のコンテナがスライドして開き、そこからは複数発のフォトンミサイルがこの場にいる全てのガストレアに向かって発射されていった。
そして、ガストレアの群れにフォトンミサイルが直撃すると、激しい爆音が鳴ったと同時に強烈な光を発し、その場には灰のみを残して荒れ地にしていくのだった。
「よし、これで一通り片付いたか。あとは怪我人を助けにーー」
ジェットスライガーからゆっくりと降りて、仮面の下では安堵の表情を浮かべる三原。彼はデルタムーバーからグリップのみを引き抜き変身を解除させようとするが、大きな地面の揺れと地響きを感じて、結局その行為は中断させていた。
「……ッ!まだいるのか!?」
大きな物影に自身の体が覆われていくことに、背筋が凍るような寒気を感じた三原は、そのまま腰にホールドされているデルタムーバーを構えながら後ろを振り向いた。
「クソッ!……なんて大きさだ!」
振り向いたその視線の先には体長が100メートルを裕に越している、巨大なガストレアの姿があった。あまりにも大きなその体は、さながらフィクション映画にでも出てくるような、まさしく怪獣と呼ぶに相応しいほどである。
三原は躊躇うことなくデルタムーバーの引き金を連続で次々に引いていくが、巨大なガストレアは三原の方を見向きもしなければ、良い効果も全く見られない。光弾が当たった箇所は灰になっていくものの、それはすぐさま再生、修復されていったのだった。
そして、三原の攻撃に続くようにして自衛隊の戦闘機からも対空ミサイルが撃ち込まれていくが、その攻撃も全くの無意味で意図も簡単に戦闘機が撃墜されていく。
「…………里奈、巧人」
その様子を見て何か悟ったのか、三原は不意に二人の家族の名前を呟きだす。そして、ただ一言だけ最も簡単な言葉で謝った。
「ーーごめんな」
『Ready』
ベルトからミッションメモリーを取り出して再度デルタムーバーの上部にセットし、
『Complete』
左手首に巻かれているリストウォッチらしき物ーーファイズアクセルからも同様にΦの字が刻まれているアクセルメモリーを引き抜いて、ベルトの空いた箇所に装填した。すると、スーツを張り巡っていた白いラインは、全てシルバーに変わり、オレンジ色だったバイザーも赤く変化した。
「……ここからは一歩も通さない!」
そして、ついに覚悟を決め、三原はファイズアクセルのスタータースイッチを押した。
『Start Up』
その電子音声が鳴った10秒後。巨大ガストレアがいた半径約100メートル圏内には大量の白い灰が降った。それこそ火山噴火直後に火山灰が積もるのを連想させるほどの量だったと後々語られていくのだった。
颯爽と戦場に姿を現しては人命を救助し、ガストレアを撃滅するその姿を見て、人々は
こうして西暦2021年、人類はガストレアに敗北した。日本は国土の大半を侵略され、大量の死者とそれを遥かに上回る数の行方不明者を出した。その行方不明者の中には三原修二の名前も連なっていた。
とりあえず一巻の内容まで書いて、それでそこから先更新を続けるかどうかを決めます。