エクストラダンガンロンパZ 希望の蔓に絶望の華を 作:江藤えそら
作者のリアルも忙しくてどうなるか微妙なところですが、必ず書き上げますので気長にお待ちいただけると幸いです。
Chapter3 (非)日常編①
◆◆◆
”ふぅん、『この世は絶望』ねぇ。龍雅はそんなことを思ってたのか”
‶そうさ。彼は自分が絶望に対して無力であると知っていた。それでもなお戦い続けた。そしてこの『物語』の中で、彼は絶望に負け、その生涯を終える‶
”本当に負けるのか? アイツが”
‶まだボクの『才能』を信じきれないのか? ボクに見えない未来はないっていつも言ってるでしょ?‶
”まぁ、キミがそう言うならそうなるんでしょうねー”
‶……その言い方、ムカつく‶
”オイラはムカつかれてナンボの人間ですから~”
‶…で、龍雅君が死んで第二の裁判が終わった後、君に一仕事してもらいたい‶
”(スルーかよ……)はいはい、なんでございやしょう”
‶驚かないで聞いてね‶
”てやんでい、オイラがこれまでにいくつの修羅場を切り抜けてきたと思ってんだ!! 腹を割ってドンと言え!!”
‶……………………………‶
”ちょっと待てよぉぉぉぉ!!!!!”
‶清々しいまでに驚いてるね。ご愁傷さま‶
”お前、これマジで言ってんのか??”
‶大マジです。様々な分岐の中で、この選択肢を通るのが一番ボクの思い描く未来にふさわしいと判断したまでだ‶
”お前さぁ、人使い荒いってレベルじゃねーよ? 希望ヶ峰来る前からそれ言われてこなかった?”
‶苦労以上のものを作り上げる、それだけのことさ‶
”さらっと言うけどさあ……”
‶じゃあ頼んだよ、親友。第三幕は今までで最も面白い展開になりそうなんだ。上手くやってくれよ‶
”…………”
”……ひゃー、こりゃ大役だなあ、緊張してきた……”
”でもまあ、やるからには全力でぶつかってやるかぁ!! よぉぉし!! ずっと先のことなのに、なんだか今から燃えてきちまったぜ!!”
”先に逝った奴らの分まで、オイラ頑張ってみんなを絶望させちゃうぜ!!”
”ぎひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!”
◆◆◆
御堂秋音
”超高校級のエンジニア”である女子生徒であり、”モノシリーズ”の内部構造の開発に携わった人物。故人である母親に異常なまでの執着を見せ、アンドロイドとして復活させる願望を抱いている。アンドロイド研究に協力するという名目で”絶望”に服属させることはできたが、”絶望”として必要不可欠な”絶望を快楽と感じる精神”が備わっていないため、離反の恐れもある。今後も十分注意されたし。
釜利谷三瓶
”超高校級の脳科学者”の肩書きをもつ男子生徒。”超高校級の神経学者”と呼ばれる人物と親交があり、ともに研究する仲だったようだ。神経学者が江ノ島盾子様によって殺害されたのは皆の知るところであるが、その後どのような経緯を経てこの男が”絶望”に心服したのかは定かではない。しかし様々な観察結果から、彼が自分の親友であると認めた人物に”試練”として絶望を与えんとする欲求を持っていることが明らかとなった。癖はあるが、神経学者亡き後の記憶・人格制御研究の発達を担う人物として期待されたい。
◆◆◆
気持ち悪い浮遊感の中、俺は一人の少女と対峙していた。
少女は俺を睨みつけ、必死に罵詈雑言を浴びせる。
俺は一言だけ、何かを言った。
その瞬間、少女の表情が凍り付く。
少女が崩れ落ちる。
床に倒れ、もがき苦しむ。
干からびていく。
ミイラが幾千もの群れとなり、俺の足をつかむ。
『おかぁさぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁあああぁぁぁあぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁっぁあああぁぁぁぁああぁぁぁっぁあああっぁぁ!!!!!!』
「っ!!!!!!」
不意に俺の視界に飛び込んできたのは、暗い天井。
「はっ、ふっ、ふひゅう」
はたから見ればおかしな息遣いで呼吸を整えつつ、俺は上体を起こす。
自分の手足を確認し、無事であることを確かめようとするが……
自分の足を見た瞬間、それをつかむミイラの手の幻覚が見えた。
「いひっ!!! ひいっ!!!!」
素っ頓狂な声が出るとともに、俺はその手を振り払おうと足を激しく動かした。
すぐにそれが幻覚と分かっても、心臓を抉られるが如き感覚は一向に収まるところを知らない。
裁判直後は直視しきれずにいた”現実”が、俺の心に相当な重みをもって働きかけている。
最期まで助けを求め続けていた御堂さんの悲痛な叫び声が、今でも鮮明な声色をもって俺の脳内を反響し続けているのだ。
俺は、彼女を殺した。
”自分ではない何か”に取りつかれたかのように、無機質な口調と推理で彼女を死に追いやった。
死に怯え、親の助けを求める哀れで弱い少女を、容赦なく切り捨てたのだ。
俺も、オシオキされてしかるべきではないのか?
ふと後ろについた手に意識を向けると、ベッドのシーツがびしょびしょになっているのをはっきりと感じた。
単に寝汗と呼ぶには説明がつかない量だ。
顔を拭うと、べっとりと汗が付着した。
『 死に た く な い 』
「ひっ!!」
幻聴。
もうやめてくれ。
俺が悪かった俺が悪かった俺が悪かった俺が悪かった俺が悪かった俺が悪かった俺が悪かった!!!!!!
『お か あ さま 』
「!!!!!」
寝巻のまま、俺は靴も履かずに部屋を飛び出した。
部屋にいたら、確実にノイローゼになる。
正気を保つためには、一度違う空間に出るほかないと思った。
廊下に出ると、冷や汗にまみれたまま壁に体を押し付ける。
前に進もうとするが、何度も体勢を崩してよろよろとふらつく羽目になった。
特に目的もないまま、俺は休憩室のドアを開ける。
真っ暗な部屋の奥で、煙草を吸う”彼”の姿が……
「わっ、あっ、あっ!!!!」
幻想だ。
よくよく目を凝らしてみれば、真っ暗な休憩室の中には誰もいないではないか。
『メンドクセー』
また幻聴。
ビクッ、と体が大げさな反応をする。
幻聴、幻覚、あらゆる偽の感覚が俺の精神を襲う。
何をやっているんだ俺は。
彼らはみんなもう亡くなったじゃないか。
昨日のこの時間あたりに龍雅君と釜利谷君が、半日前には御堂さんが、それぞれ還らぬ人となった。
彼らはもう、存在しないんだ。
そんな人たちを恐れてどうする。
『それは違うよ』
「…………!!??」
次に聞こえた幻聴は、驚くべきことに自分の声だった。
『君になら犯行は可能だよね』
ねっとりと、耳に残る忌々しい語調。
裁判の時の俺………なのか…?
『これが事件の真相。真実という名の脚本だ』
確かにどの言葉も、俺自身の口から発せられた言葉であることに間違いはない。
しかし、あの時の俺と今の俺は何かが違う。
記憶ははっきりと存在するけど、その時自分が何を考えていたのかは全く分からない。
記憶はあるけど人格が異なるという状態はいわば、山村さんのような感じだろうか。
分からない。
怖い。
またいつか、このような事件が起きてしまいそうな気がして。
そして、その事件を起こした犯人を、俺が無情に追い詰めてしまいそうな気がして。
怖くてたまらない。
俺は、どうすればいいんだ?
結局、休憩室ではろくな休みも取れないまま、俺は再び廊下を歩きだす。
食堂は締まっており、他の人の個室にも入るわけにはいかない。
こんな気分のままトラッシュルームにも当然行きたくはない。
どこへ向かうあてもなく、俺はエレベーターに乗り込んだ。
「…………あ」
思わず声が漏れていた。
階層を示すボタンのうち、『3F』と表記されたボタンが新たに点灯していたのだ。
代わりに、ホール階のボタンは消灯しており、『修理中につき一時閉鎖』のシールが貼られている。
チーン、と無機質な音が鳴る。
一切の光も差さぬ暗い廊下が俺を出迎える。
教室がいくつか並んでいるが、真っ暗なその空間に足を踏み入れる気にはなれなかった。
目に映ったのは、廊下の奥から差す小さな光。
その光に向けてゆっくりと歩を進める。
辿り着いたのは、天井の高い広々とした空間だった。
扉はなく、ゆえに廊下と隔てられていない。
青々とした木々が生い茂り、様々な種類の華が四季関係なく咲き誇り、鮮やかに周囲を彩る。
天井には丸くて大きい電灯がまるで太陽のようにこの空間を照らしており、暗黒ばかり見てきた俺の目にはとても眩しい。
端の方にある噴水からは小川のように部屋を横切る細い水路ができあがり、植物たちに水分を供給しているようである。
まるで桃源郷が忽然と目の前に現れたかのようだった。
およそ学校の施設とは思えぬ唐突な風景に、俺は息をのんで立ち尽くすほかはなかった。
しかし、一瞬の後、俺はさらに驚くべき光景を目の当たりにした。
この空間の奥の方に佇む女性。
小清水さんの姿があったのだ。
横向きに立つ彼女の姿は、周囲の風景に劣らぬほど幻想的で、先ほどまで俺が見てきた幻覚とさして変わらぬ存在なのではないかとすら思える。
ゆったりとした赤い長髪がおぼろげに光を反射し、純白の白衣との対比が美しい。
彼女は手を前にかざしており、そこには一匹の蝶が止まっていた。
その手を花か何かと勘違いしたのか、指に止まったその個体はしばらくそこに止まっていた。
そして少し後、余韻を残さず一気に飛び去っていく。
それを小清水さんは優しげな、しかしどこかもの悲しげな表情でそれを見送った。
飛び去った蝶から微かに鱗粉が落ち、夜空に浮かぶ星々のようにきらめいた……ように見えた。
これも、俺が疲労によって見えてしまった幻覚なのだろうか?
「目、覚めちゃった?」
その声は幻聴ではないと、はっきり確信した。
ぼんやりと宙に浮きかけた意識が体内に戻り、俺の感情を現実に引き戻した。
思えば、木に隠れるでもなく、少し離れたところから見ているだけだったのだ。
早々に気付かれてもおかしくはなかった。
「ここ、植物園なんですって。虫さんもいろいろいるらしいのよ」
なんと答えていいか分からず言葉を詰まらせる俺をよそに小清水さんは言った。
「綺麗でしょ?」
俺はただ頷いた。
言葉とは裏腹に、彼女の表情は薄暗い。
当然だろう。
つい半日前、三人の犠牲者を出して第二の事件が終わったのだ。
あの絶望を目前に体験してもなお笑っていられる余裕などあろうはずもない。
彼女も俺と同じく、快眠することができなかったのだろうか。
「こっち、おいで」
囁くような小さく、しかし母親のような柔和さを秘めた声で彼女は言った。
自然と、足が彼女の方へ歩き出していた。
彼女のそばまで寄ると、どちらからということもなく周囲の風景に目をやる。
「怖かったね」
小清水さんが呟くように言ったが、「うん」としか答えられなかった。
「怖かったけど、それ以上に『可哀想だな』って思っちゃった」
少しうつむきながら、彼女は静かに告げる。
「…可哀想…だったね」
狂った親に愛されようと必死になり、親の死してなおその愛を我が身に浴びようとするその姿は、”絶望”と呼ぶにふさわしかった。
だがそれ以上に、そのような人生を送らざるを得なかった境遇に同情の意を隠しきれない。
「私たちは普通の家庭に生まれて普通に過ごしてこられたってだけなのよね」
そう、”たまたま”。
たまたま普通の家庭に生まれてこられたから、彼女のような苦しみは背負わずに済んだ。
だが、運悪く彼女のような親のもとに生まれていたら…?
俺はどんな人生を歩んでいたのだろうか?
「虫さんが羨ましい…」
疲労のこもったため息とともに小清水さんは呟いた。
「虫さんには良い親も悪い親もないもの。親のためとか弟のためとか、そんなことは何も考えず、ただ目の前にある餌を運べばいい。ただ目の前の蜜を吸えばいい。私もそう生きてみたいものね」
「……………」
彼女の昆虫への愛情話はいつも話半分に聞いていたが、今ばかりはそうはいかなかった。
彼女の言葉が確かな説得力をもって俺の心に働きかけてきたからだ。
「私、昆虫を研究し始めてからずっと思ってることがあるの」
「…ずっと?」
「そう、ずっと。……人間が他の生き物より優れているところって何だと思う?」
その質問に、俺は鈍っていた頭脳を回転させる。
「”感情”……?」
一つ一つ挙げればきりがないが、それが一番大きいような気がした。
「そうよね」と小清水さんは柔らかな笑みを浮かべる。
「でも、感情があるからリャンちゃんは私たちを助けようとしたのよ」
その言葉が一瞬にして俺の表情を固めた。
「感情があるから土門君は彼女を救おうとした。……結果、二人とも死んだ」
「御堂さんも……」
「そうよ」と彼女は俺と視線を合わせた。
「だから私は思うの。人間にとって、感情は本当に必要な機能だったのかしらって。何も考えずに機械のように生きていけた方が幸せだったんじゃないかって……」
何も言えなかった。
感情があるから助け合えるんだとか、仲良くなれるんだとか、上辺だけの綺麗事を語ることならできただろう。
だが、学級裁判という地獄を見てきた俺たちにとって、そんな綺麗事など風塵の如く儚く脆いものであることは百も承知だ。
ゆえに俺は、彼女にかける言葉を見つけることができなかった。
”ゴキブリさんのように強く生きたい”。
捜査の時に彼女が言っていた言葉は叶わない。
俺達は、人間なのだから。
感情を持ち、憎しみ、殺し合う人間なのだから。
◆◆◆
翌朝。
「………おはよう」
呟くような小声で挨拶を発しながら、俺は食堂へ入った。
結局、あの後俺と小清水さんはほとんど会話を交わすこともないまま部屋に戻り、一夜を明かした。
絶望を抱え込んだまま、気分のすぐれない夜を。
「おはようだぞよ~」
唯一、いつもと変わらない声で挨拶を返してきたのは安藤さんだった。
前回の事件で大切な親友を失った彼女は食事にも来られないほど傷つき落ち込んでいたが、その経験故か今回は俺達を元気づけようとしているようにも見える。
「なんと今朝は吾輩が朝食を振る舞って差し上げるのだ!!感謝して食べるのだぞよ!!」
え、ご飯まで作ってくれるなんて……申し訳なさでいっぱいだ。
あ、でもよく考えたら安藤さん、今までご飯作ったことなかったような……
「それはゆっきー殿も同じであろうぞ!!」
「ひゃっ!!??」
ビクッと体をすくめてしまった。
なんで俺が思ったことが分かるんだ……!!
「これぞ吾輩の真奥義・読心術よ!! 吾輩はエスパーなのでな~」
そう言って安藤さんは上機嫌に厨房へ入っていった。
「朝から元気だね、みーちゃん」
亞桐さんが背伸びをしながら言った。
「その健気な背中を抱きしめたくなるよね」
夢郷君の真顔の呟きは無視するとして。
事件後ということもあって不穏な空気ではあったが、いつも通り朝食会は行われた。
安藤さんの壊滅的な料理センスをなんとか小清水さんがサポートしたようで、ギリギリ食べられる程度の味の朝食を味わうこととなった…。
やっぱり彼女は家事は得意な方ではなんだな…。
そんなんじゃお嫁さんに行けないぞ、という心配は野暮だろうか。
見回してみると、昨日あれだけの悲劇を目の当たりにしたにもかかわらず、食事を欠席している人はいなかった。
喋っていたのはほとんど安藤さんと夢郷君だけだったけど、全員の顔を見ることができてひとまず安心。
ただ、みんなが心に負った傷の度合いが分からない以上、下手に声をかけることもできないのが現状だ。
山村さんと入間君は完全に憔悴しており、食事のペースも非常に遅かった。
さらに不安なのは伊丹さんだ。
彼女と御堂さんは、初めは犬猿の仲と言ってもいいほどギクシャクしていたが、時と交流を経るうちに驚くほど距離を近めていった。
その矢先に、あの様だ。
津川さん……いや、それ以上かもしれない。
醜く悲惨な本性を晒した御堂さんは、俺達には想像もつかない苦しみを背負って死んでいった。
学級裁判でも既に涙を流して苦しんでいた伊丹さんが今、どれほどの傷を負っているのか、俺には分からない。
「……何?」
急に伊丹さんが声を発したので俺はびっくりして肩をすくめた。
そんなにジロジロ見ていただろうか。
「私は平気よ。あなたに心配されるまでもないわ」
いつも通りのクールな表情で返されてしまい、俺は何も言えなかった。
その後、「ごちそうさま」と挨拶して彼女は皿を下げた。
きちんと完食していた。
……杞憂だったのだろうか。
しかし、変に声をかけるのも憚られる。
ここは彼女と仲がいい亞桐さんに任せた方がいいだろう。
「グッモーーニーーン!!!」
不意に、あの耳障りな声がした。
突然の登場にももう慣れっこだ。
「やあやあオメーラ! 人も少なくなってちょっと寂しくなったけど、元気かー??」
相変わらず底抜けの明るさと幼稚な邪悪さとを併せ持った口調でモノパンダは呼びかけてきた。
「愛妻の手料理を食べているんだ。邪魔をしないでいただきたいね」
愛妻というのが安藤さんのことなのか小清水さんのことなのか分からないが、普段と全く変わらない様子で夢郷君は答える。
「んー? 夢郷殿は吾輩の亭主となったのかえ? ならば夫のために毎日食事を作らねばならぬのう」
「勘弁してくれ…」
恐らく男女の契りなどほとんど知らないであろう安藤さんの何気ない一言に、前木君がぼそっと悲痛な声を上げる。
「まあまあ、さっさとすませるから例によって食いながら聞いてても構わないぜ?」
そんな俺達の様子を嘲笑うように上機嫌に告げるモノパンダ。
だが、奴が本題を口にせずとも、大体用件は分かっている。
「”新エリアの開放”……でしょ」
亞桐さんが敵意のこもった表情でモノパンダを睨みながら呟く。
『オメーラには裁判をクリアするたびに、”校舎内の新エリアを探索する権利”が与えられるぜ!』
とは、一回目の裁判が終わった次の日の朝食会で奴に告げられた言葉。
裁判を勝ち抜いた俺達への報酬…のつもりらしい。
胸糞悪い話だ。
「っひゃー! 流石は希望ヶ峰に選ばれた生徒だぜー! 一回言った言葉をちゃんと覚えてるなんて優秀だなー!」
「もう言うこともないでしょう…。さっさとお帰りください」
疲れたように入間君が言うと、「親不孝ならぬ教師不孝は非行少年の始まりだぜ!!」などと不平を言う。
「オイラは絶望を経て成長していくオメーラのことを何よりも大切に思って……うう……」
なぜか涙ぐむモノパンダ。
「だからこそ、オメーラにはここで何よりも美しい”絶望を演出”してもらわないと困るんだぜ!」
……?
「”絶望を演出”……?」
亞桐さんが呟く。
「はっ! オイラとしたことが、口が滑ってしまった! 校長センセーに怒られるぅぅぅぅぅ!!!」
モノパンダは顔を真っ赤にしながら一目散に逃げだしていった。
「全く彼の頭の中身が分からないね」
「アンタほどじゃねぇよ」
夢郷君の呟きに速攻でツッコむ亞桐さん。
意外とこの二人も相性いいんじゃないだろうか…?
「さあさ! あんな奴の言うこと気にすることないわよ! 新しいエリアをみんなで見て回りましょう!」
手を叩きながら小清水さんが呼びかける。
彼女が全体に何かを言うなんて珍しいな…。
今までの事件を経て成長したということなのだろうか。
「だって、三階には植物園があるのよ!? みんなに見てもらいたい虫さんがいすぎて困っちゃうくらい!!」
違いましたね。ご愁傷さまです。
「僕も実は虫が好きでね。何といったって触手があるからね」
いい加減黙れスケベ哲学者。
「えっ!? 夢郷君も触手の美しさが分かるのっ!?」
顔を紅潮させて夢郷君に詰め寄る小清水さん。
「小清水殿……触手……ぅぅううっ!!!」
何悶えてるんだ丹沢君。一体君の頭には何が広がっているんだ?
「はっ! いけませぬ…こんなはしたない妄想を繰り広げては清いオタクになど……」
謎の葛藤。
「収拾つかねーなアンタら!!」
亞桐さんの怒号が飛ぶ。
こんな状況下でも平常運転の奴らは平常運転なんだな…。
他の人たちのことも気になるけど。
◆◆◆
昨晩は植物園しか見ることができなかったが、みんなで協力して三階にある教室を探索した。
どうやら一階以外の全ての階には同じ場所に一つ巨大な部屋があり、ホール階なら大ホール、二階ならプールという具合で、三階は植物園がそれにあたるようである。
その他には3―A、3‐B教室、図書室、図書準備室、そして……
「娯楽室……?」
と、書いてある表札に目がいった。
こんな教室があるのか。
ガラリ、とドアを開けると、そこにはビリヤードを突く前木君と横に立つ丹沢君がいた。
コーン、とボールをつく音が響く。
「あ、ここ、ビリヤードなんてあるん」
「しっ! 集中しているのですぞ!!」
丹沢君にたしなめられて俺は口をつぐむしかなかった。
前木君の表情は真剣そのものだ。
コーン、と放たれた白い球が隅の穴に入りこむ。
「ぃよっし!! 入ったぁぁ」
いや違うよね。番号書かれたボールを入れなきゃダメだよね。
突く球を直接穴に入れるとか簡単すぎてゲームにならないよ?
「くそぅ負けたかっ!!」
いやいやいや。なんで悔しがるんだよ丹沢君。
「…君達、ビリヤードのルール分かってる?」
「俺達がルールだ!!」
そうきたか。
「知らないルールは作ればよい。ないものは作ればよい。フィギュア作りと同じですな」
鼻高々にそんなこと言われても。
「…話変わるけど、こんな部屋が学園にあるんだね」
「生徒を退屈させないための施設なのかね。あのパンダが何考えてるか知らねーけどよ」
前木君が頭を掻きながら呟く。
「しかしここにはビリヤードにダーツにボードゲームが一通りそろい、いかがわしいものも含めて雑誌も豊富にそろえておりまするな! しばらく退屈はしのげるでしょう!」
丹沢君の言う通り、この部屋にはいろんなものが置いてある。
後でみんなを読んで何かをするのもいいかもしれないな。
それにしても……。
「前木君、元気そうでよかったよ」
その言葉が口をついて出ていた。
だって単純に心配だったんだ。
立て続けに親友を二人も失って、彼がどれくらい苦しんでいるか、俺なんかには想像もつかないから。
「何言ってんだ!!」と前木君は自分の胸を叩く。
「俺を誰だと思ってんだ! 超高校級の幸運だぞ!! 俺がドーンと構えてなきゃあ、運が逃げていっちまうぜ!」
明るい笑顔でそう高らかに告げる。
「確かに辛いけどよ…でも、俺にはまだまだたくさん親友がいるから大丈夫だ! ゆっきーもそうだし、お前もそうだぜ出雲!じゃなかった讃岐!」
「駿河です」
丹沢君の真顔のツッコミが飛んだ。
俺は深いため息をついた。
もちろん、安堵の意味で、だ。
「今度遊ぼうな!」と約束を取り付けられた俺は、図書室へ向かった。
前木君が平気そうで本当に良かった。
昨晩幻聴や亡霊に怯えていた俺の方がよほど精神的には参っていたのかもしれない。
そう、俺達は曲がりなりにも”超高校級”の生徒なんだ。
みんな、俺なんかよりもずっと強いに決まってる。
みんななら、絶望はきっと乗り越えられる。
そう信じて……
『なぜそんなことが言えるんだッ!!!』
図書室の扉を開いた瞬間、聞いたこともないような甲高い怒号が飛んできた。
そして、目の前にはとんでもない光景が映しだされていた。
少し広めの図書室の真ん中の少し開けた空間に、その二人はいた。
鬼のような形相の入間君が、伊丹さんの両肩をつかんで床に押し倒していたのだ。
入間君の腕はブルブルと震え、今にも肩を握りつぶしてしまいそうだ。
しかし、そんな状況下でも伊丹さんの表情は平然としていた。
二人とも俺が着たことに気付いていないようだ。
俺はあまりの衝撃に言葉を失い、立ち尽くしてしまった。
「あなたの言うことを否定しているわけじゃないわ。あの子だけに非があるとは私も思ってないから。でもね入間君。あの子のしたことは罪なのよ」
「そんなことは分かっているっ!! だからこそ、彼女の仇を討たなければ気が済まないんだ!!!」
「それがあなたなりのあの子への罪滅ぼし? あの子の言葉を借りるなら、”実に滑稽”ね」
「なんだと!!!」
と、入間君が腕を振りかぶった瞬間。
パン、と伊丹さんの手が入間君の頬を打った。
「あなたにリュウ君ほどの強さがあるの? 断言されてもらうけど、あなたは弱いわ。身も心も、圧倒的に。それで黒幕に立ち向かったところで、何ができるのかしら?」
伊丹さんは入間君を押しのけながらゆっくりと立ち上がった。
「あなたに何が分かる!!! わたくしがあの方をどれだけ強く慕っていたか、どれだけ皆さんと打ち解けさせようと尽力したか!!! その気持ちも知らず、そんなことを」
「あなたも私を知らないでしょう?」
真顔で伊丹さんは入間君に顔を近づける。
それに呼応するかのように、入間君は一歩後ろに下がる。
「人に他人の心を知るなんて無理な話だわ。でも私は私のことを知っている。自分がいかに弱いかを知っている。だから私にできることをするのよ。あなたは辛さのあまり、自分を見失っているの。分かる?」
「わたくしは見失ってなど」
「思い出して」
伊丹さんは入間君の頬を両手で抑え、静かに額を触れさせた。
「リャンは私に『仲直りの仕方』を教えてくれた。土門君は『辛い時こそ仲間を頼れ』と言ってくれた。釜利谷君は『物事を深く考えるな』と助言をくれた。リュウ君からは『強さが全てではない』と言われた。秋音は、『己こそが自分にとって絶対の存在である』ことを教えてくれた。きっと、あなたにも大切なことをたくさん教えてくれたはずよ。それを思い出して。みんななら、今のあなたになんて言うと思う?」
「……そんなこと、分かるわけないですよ」
「…そう。そうね。死んでしまった人がどう思うかなんて、考えるだけ無駄よね…」
そう言って伊丹さんは入間君から顔を離し、くるりと後ろを向いた。
「あっ……」
そう、彼女が後ろを向いたことで、入口に立ち尽くしていた俺と目があったのだ。
「あら」とだけ言って彼女は俺から目を背ける。
「ふふ…せっかくみんなが明るい雰囲気になっていたのに、ごめんなさいね」
伊丹さんは静かにそう言った。
自嘲のこもった投げやりな笑みを浮かべていた。
「……………」
俺は何と声をかけてよいのか分からず、ただじっと二人を見つめることしかできなかった。
なんで二人の争いを止めてやれなかったんだろう。
「ふーっ、ふーっ……」
虚ろ気な目つきで息を整える入間君。
彼は今何を思い、何をしようと考えているのだろうか。
「私は馬鹿だから……不器用だから……いつもこういう言い方でしか、人に忠告することができないの。それでいままでどれだけの人に嫌な思いをさせてきたことか……」
伊丹さんはうつむいてそう呟いた。
気弱になっている彼女の姿なんて本当に珍しい。
「いえ……あなたのおかげで変な行動を起こさずに済みました。感謝します」
そんな彼女に入間君はそう声をかけた。
「…みんなで、黒幕の正体を暴こう」
雑なまとめ方かもしれないが、俺は二人にそう告げた。
「なんでこんなことをさせたのかを問いただして……そして罪を償わせる。”強さ”なんてなくても…俺達にはできるよ。きっとできるさ!」
「お心遣い感謝します、葛西さん」
入間君は俺に歩み寄り、肩に手を置いて告げた。
その目はまだ虚ろで疲労と困惑が感じられるが、少なくともさっき伊丹さんを押し倒していた時のような憎悪のような感情は込められてはいないように感じられた。
「わたくしは少し頭を冷やしてきます。また後ほど」
それだけ言うと彼は足早に去っていった。
「ぶっちゃったわ、彼のこと」
入間君が去ると、伊丹さんが重苦しく呟く。
「知ってる。…見てたから」
「秋音の時も同じだった。手が出ちゃうのは悪い癖ね」
伊丹さんは疲れたように近くにあった椅子に腰かけた。
「本当に、不器用だね」
俺はそう言って苦笑した。
「でも、それが伊丹さんの強みでもあるよ。どんな時でも嘘をつかないで自分の意見をはっきり言う。理系らしいや」
「そうかもね」
クスッと彼女も笑った。
「私はこういう人間だから。こんな私でもできることをするだけよ。暇ができたら精神安定剤でもつくろうかしらね」
俺はぐっすり眠れるよう、安眠薬が欲しいかな。
と、言おうとした直後だった。
バン、と図書室の扉が乱暴に開いた。
「ぬぉぉぉぉぉおお!!!!! 大変だぞよー!!! 長年主人公と苦楽を共にしてきた親友が黒幕だった系バトル漫画のクライマックスと同じくらいヤバいぞよー!!!!」
安藤さん…!?よく分からない例えを引っさげてどうしたんだろう。
「葛西!!巴ちゃんが大変なの!!!」
…と、亞桐さん!??
そして、二人に引っ張られてきたのは。
「離してください離してください私はどうせワラジムシみたく石の下で一生ジメジメ過ごしてるのがお似合いなんですみなさんみたいな眩しい存在と一緒にいちゃいけないんです皆さんが汚れます離してください」
……やけに饒舌な山村さんだった。
袖を破ったあの特徴的な道着から普通の制服姿に戻った彼女は性格も一転、少女漫画のように大きな瞳から涙をきらめかせ、ひたすら自虐の言葉を呟いていた。
「私がこうしている間にも世界で幾多の植物様が一生懸命光合成を為されているのに私ごときが呼吸してしまってごめんなさいごめんなさいこの酸素は皆様に譲りますどうか私ごときのために地球の貴重な資源を割かないでくださいゲホッゲホッやっぱり苦しいから息しますその代わり食事をいたしません皆様どうか」
「朝食の間ずっと元気なかったから、大丈夫?って話しかけたらこうなっちゃったんだよー!! ゆきみん、診察してよー!!」
必死に山村さんの腕を引っ張りながら亞桐さんが訴える。
「一時的な”第三の人格”といったところかしらね」
伊丹さんが下した結論はそれだった。
「この一週間余りであまりにも大きな精神的苦痛を負った結果、防衛反応として第三の人格が生まれてしまったと考えるのが妥当だわ」
「え、じゃあ巴ちゃんは一生三つの人格を背負って生きていくってこと…?」
亞桐さんが顔を青くして尋ねる。
「いえ、心理学的には異なる人格に逃げ込むのは一時的なものでしかないから、時間が経てば元の二つの人格に戻るはずよ。もとからある二つ目の人格がなぜ定着しているのかは分からないけどね」
つまり、放っておけばいつもの山村さんに戻るってことか…。一安心。
「へえ、そうなんだ…。何とかして今すぐいつもの人格に戻せればいいのになー」
「亞桐殿、そういう時はクシャミをさせれば人格が入れ替わると相場が決まっておるぞよ」
「クシャミ!? なぜにクシャミ!?? そんなんで人格が入れ替わるわけねーだろ!! それで入れ替わる奴がいるなら見てみたいわ!!」
いるんじゃないかなあ。世界は広いって言うし。
「皆さんどうか私ごときのために言い争わないでくださいどうしても皆さんが争うなら私は潔く屋上から身を投げますあっやっぱり身投げは痛いのでデコピンでお願いします」
…卑屈は卑屈だけど、さっきよりちょっと図太くなってないか??
「早くも回復の兆候が見られているわね」
そういう解釈でいいんだろうか……。
と、まあ、こんな感じでいつの間にか時間は過ぎ、新エリアの探索結果を報告しよう、という流れになったのだが……。
小清水さんは植物園で見つけた虫の種類を語り出すし、丹沢君と前木君はオリジナルビリヤードの戦果自慢をするし、夢郷君は相変わらず安藤さんにナンパしてるし(そして亞桐さんにどつかれるところまでワンセット)、君ら本当に探索する気あったのか!?
まあなんにせよ、前回よりも明らかにみんなの立ち直りが早くて安心した。
肝心の俺自身がしっかりしなくちゃあ、話にならないな……。
御堂さんの悲痛な人生も、釜利谷君の友達への思いも、リュウ君の強い覚悟も、俺達は忘れはしない。
失った分だけ前に進む。
そして、希望への脚本を築きあげてやるんだ。
夜時間の前、俺はふと休憩室に足を運んだ。
何故か、と言われるとはっきりした理由は分からない。
ただ、しばらく行ってなかったせいか、どことなく懐かしい感じがしたんだ。
「あ」
そこには先客がいた。
「やあ、葛西君か」
他ならぬ、夢郷君だ。
珍しいことに、彼しかいなかった。
「まあ座ってくれ」
彼の言葉に従い、俺はソファーに座る。
「……何、してたの?」
俺は思わず問いかけた。
俺が入った時、彼は雑誌を読むでもなく、室内カラオケを歌うでもなく、ただ一人でじっと座っていたのである。
「何って、哲学者がすることは一つしかないだろう?」
夢郷君はにこやかに答えた。
「考え事…?」
「そうさ」
そう言うと夢郷君は両の手を組んで顔の前に持ってきて、深く考え込むような姿勢をとった。
「この一週間余り、僕はとてつもなく身近で”死”というものを見た。死がいかに無残であるかということ、死がその人の全てを奪ってしまうということを僕は学んだ。しかしそれだけに、死というものについて再考する余地ができたんだ」
彼はゆっくりこちらを向いた。
「”死”とは”絶望”なのか?」
「………?」
俺は首をひねるばかりだった。
「死ぬって、人生が終わることだよ? 絶望でしょ?」
「終わることが唯一の希望となる例もある」
夢郷君は毅然とした声で反論してきた。
「御堂君を思い返したまえ。彼女の人生が長続きしたところで、果たして彼女に希望は訪れただろうか?」
「……!!」
俺は言葉を詰まらせた。
愚かで哀れな少女。
叶うかどうかも分からない夢のために同級生を犠牲にし、この学園を出ようとした少女。
苦しんで苦しんで苦しみ抜いて、そして死んだ少女。
もし、彼女が俺達を完全に欺き、この学園を後にしていたなら?
彼女は自分の夢を叶えられただろうか?
幸せになれたのだろうか?
「無理だろうね」
夢郷君の静かな言葉が、俺の脳裏に浮かんだ問いに冷徹な回答を突きつけた。
「もし、自分の理想通りの母親をアンドロイドとして生み出せていたとしても、それは本当の母親とは違う。いずれどこかで積もり積もった違和感が爆発し、彼女は自らが作ったアンドロイドを信じられなくなったはずだ」
そう、なのだろうか。
本当に彼女には、幸せになる方法はなかったのだろうか。
「あれが彼女にとって最良の結末だったとは思わない。だが、彼女が生きながらえることで失われる命もあっただろう。僕たちがその最たる例だ」
彼女が生きていたら、俺達は死んでいた。
そんなことはわかっているんだが…。
「だから俺はもう、誰もそんな目に合わせたくないよ」
死ぬのがベストだなんて、そんな目に遭う人はもう見たくない。
絶対に、俺はみんなを助けたい。
「その気持ちは僕も同じさ。だからこうして考えているんじゃないか」
夢郷君は組んだ両手を腰元に下ろし、ゆっくりソファーにもたれかかりながら言った。
「そのためにも、まずは”絶望”がなんであるかを知らなければならない。それが分かればおのずと彼…”モノクマ”の目的も分かってくるはずだ」
狂乱な笑みで俺たちを嘲笑い、手のひらで躍らせた二体のヌイグルミ。
龍雅君の戦いで頭数は減ったが、それでも俺たちの手に負える相手でないことは確かだ。
「僕は僕なりに、哲学者としてできることを模索している。だから葛西君、君も君のできることを探したまえよ」
「……うん、分かってるよ」
……なんだか、諭されちゃったな。
「葛西君」
夜時間が近づいたので部屋に戻ろうとした俺の背中に、夢郷君の声がかけられた。
「信じているよ」
彼が投げかけた笑みはとても穏やかで仲間としての確かな信頼と期待が感じられた。
だがその良心的なイメージの陰に、わずかだが不気味さ、何を考えているかわからない不透明さが垣間見える。
この念を押すような発言は、何を意味しているのだろう。
頭によぎったそんな邪念を振り払うように、俺は夢郷君の方に振り向いた。
「俺も、信じてるよ」
相変わらず穏やかな表情の夢郷君の笑みが見えた。
仲間を疑うなんてもってのほか。
彼はただ純粋に、俺に期待してくれているだけなんだ。
そう信じて、俺は自室に戻った。
夜の廊下を歩いても、もう俺の視界に亡霊は出てこない。
これは、成長と言えるのだろうか。
俺は。
死ぬわけにはいかない。
「最高の脚本を作るまでは」