遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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BB(バトルビースト)のアルターエゴがいるとしたらきっと乳首サスペンダーと股間にブブゼラを装着したヤンホモな変態なんだろうなと思うここ最近。疲れてるな、うん。喉が痛い。


第93話 僕だ!

「モォォォォォメントッ!」

 

扇のような髪型に眼鏡、高い鼻、白衣を纏った男が自身の身体をさながら『サイクロン』の如くくるくると回転させ、割りと高い声で叫び回る。

彼の名は阿久津。コナミの知る限りではある大手の会社の社員であり、この通り、ベラベラと喋りながら回転すると言う奇行を行う頭のネジが2、3本外れた変人である。

見た目からは想像もつかないが、有能だったりする。そんな彼が宇宙をバックにくるくる回る。回って叫ぶ、当然――。

 

「うるせぇ……」

 

コナミがこう思うのも無理は無い。と言う事である。だが話しかけねばここが何処なのかは分からないだろう。恐らく別に放って置いても話が進むような奴だろうが、手早くここから脱出する為だ。コナミは嫌そうな表情を剥き出しにして目の前の阿久津の肩を叩こうとして――とんでもない回転力で弾かれた。

 

「……えぇ……?」

 

こうなるのも無理は無い。何なのこの人と珍しくコナミが狼狽える。どうしたら正解なのだろう、ドリルでも見つけて逆回転で応戦すべきかとコナミが考えた時、阿久津は漸くコナミに気づいたのか、「おや、おやおやぁ?」と呟きながら回転を止める。

 

「おや?貴方は……誰です?」

 

「……むかつくなぁ、まぁ良い、オレはコナミだ。ここの出口を探しているんだが」

 

「あぁ!貴方がコナミさんですか!待ってましたよ!」

 

「話を聞け」

 

どうにも掴みにくい男だ。あのコナミが阿久津のペースに巻き込まれている。しかし、今の台詞で気になる所があった。待っていた、コナミの事を。つまりは――彼がコナミをここに呼んだのだろうか。

 

「お前がオレをここに呼んだのか?」

 

「いえ?」

 

「……むかつくなぁ……」

 

だったら何だ。イラッとしながらコナミは溜め息を吐く。聞いた自分が馬鹿だったと反省する。一介の研究者である筈の彼に、そんな力がある筈が無いのに。

 

「もしかしてここがシンクロ次元なのか?」

 

「いえいえ、ここは試練の間ですよ」

 

「試練?」

 

ここで初めて阿久津がこの宇宙を模した空間について言及する。試練の間、何やら修行パートに入りそうな場所だ。面倒事の匂いがプンプンする。

頭に?マークを浮かべるコナミに対し、阿久津が彼のデュエルディスク、更に言うならばエクストラデッキを指差してニヤリと口元を吊り上げる。

 

「アクセルシンクロ……まだ出来ないんでしょう?」

 

「ッ!?」

 

ゴクリ、その場の空気を180度変える言葉を受け、コナミが息を詰まらせる。アクセルシンクロ、それはシンクロモンスターとシンクロチューナーで行う、スピードの境地、クリアマインドによって発現される、シンクロのその先。

コナミはシンクロチューナーを白コナミとのデュエルで得たにも関わらず、肝心要のアクセルシンクロモンスターを召喚出来ないでいた。否、その前にクリアマインドに入る事も出来ない。あの時のデュエルでは乗っているものがD-ホイールでは無く、馬だからと判断したが――それ以前の問題だったのだ。

 

「原因は貴方の弱体化、そして――『閃光竜スターダスト』のマリッジブルーです」

 

「……は?」

 

この男、今何と言ったのか。マリッジブルー、確か嫁入り前の女性が本当に結婚して良いのかと悩む的なものだったが――。それをコナミのシンクロモンスター代表、『閃光竜スターダスト』がかかっている。意味が分からない。

カードには精霊がつくと言うし、『スターダスト』もそうだとしても、コナミは『スターダスト』と婚約した覚えが無い。そう言うのは七皇の銀河眼使いの役目だ。

 

「貴方は強力なシンクロ使いとデュエルした……その際、『スターダスト』は思ったのでしょう、主がこの男よりも弱く、しかも相手の『スターダスト』の方が幸せそうだと……つまり、貴方は真に『スターダスト』には認められていないのです。そのカードは元々決闘竜の1柱、試練も無しに扱えていた今までが不思議だったのですよ。しかも貴方は本来の担い手でも無い」

 

「ああ、そう言う意味か、で、『スターダスト』に認めてもらうように試練を受けると」

 

「その通り!順序があれですが、このデュエルでアクセルシンクロも修得すれば良いと」

 

「分かった。相手は誰だ?D-ホイールは?」

 

ようするに『スターダスト』に認められるデュエルをすればアクセルシンクロへの道も見えて来ると言う事らしい。その為のデュエルをする相手を探し、キョロキョロと辺りを見渡すコナミ。まさかこの阿久津ではあるまい。

そんな事を考えていると――ドシュウ、コナミの遥か背後で光輝く太陽の中から炎が吹き出し、一筋の閃光が駆け抜け、コナミの隣へと停止する。

 

白いローブ、竜を思わせるように紋様を走らせ、修正テープのような近未来的なD-ホイールに登場したその男は――。

 

「君の相手は――僕だ!」

 

「ブルーノ、お前だったのか!」

 

「僕は決闘神官ジョニー!皆大好きブルーノちゃんでは無い!」

 

現れたその男――どこか懐かしい気配を感じるのは勘違いなのだろうか、ジョニーと名乗った男は凛々しい声でコナミに言葉を投げ掛ける。

ジョニー、一体何ーノで何チノミーなんだ……!

 

「ジョニー、お前がオレの相手か、で、オレのD-ホイールはどこだ?」

 

「安心しろ、今送る。持って来るのに少々苦労したが――君が使うべきD-ホイールは、これだ――」

 

ジョニーがD-ホイールのパネルを操作すると光の粒子がコナミの眼前で流線状のボディを形成していく。重厚な漆黒のボディ、それでいて美しい流線状を保ち、ヘッドに当たる部分には雄々しき角が天に向かって突き立っている。この、D-ホイールは――。

 

「グラファ号、R……!」

 

「フッ、中々良い子ちゃんじゃないか、見ただけで分かったよ。このD-ホイールは、友情の証、2人分の想いが詰まっていると」

 

グラファ号R、元々はコナミの子分である暗次のものであるバイクのようなものをコナミが改造し、D-ホイールにしたものだ。ああ、確かに今のコナミの相棒として、これ以上のものは無い。良いファンサービスだ、謎のD-ホイーラー、ジョニーの気配りに感謝し、コナミはグラファ号Rに跨がる。

 

「準備は良いな、行くぞ!」

 

ニヤリ、ジョニーは口元を吊り上げ、コナミの様子を見た後、互いにブロロロ、とD-ホイールの駆動音を響かせ、マフラーから煙を吹かせる。準備は万端、覚悟はとっくに完了している。さぁ、行こう――。

 

「「ライディングデュエル、アクセラレーション!!」」

 

宇宙にかかった橋を駆け、一気に飛び出す。先行したのはジョニーだ。ライディングの腕はコナミが鈍っており、D-ホイールの性能も彼が上、こうなるのも仕方無いだろう。コナミは舌打ちを鳴らし、ジョニーの背を見つめる。さぁ、一体どんなデュエルをするのか。

 

「僕のターン、魔法カード、『強欲で貪欲な壺』を発動!デッキから10枚を除外し、2枚ドロー!」

 

ジョニー 手札4→6

 

「僕は手札のモンスターを墓地に送り、魔法カード、『ワン・フォー・ワン』を発動!デッキからレベル1、チューナーモンスター、『TGサイバー・マジシャン』を特殊召喚!」

 

TGサイバー・マジシャン 守備力0

 

ジョニーのフィールドに登場したのは小さな身体に科学的な法衣、黒いマントを靡かせた魔法使い。レベル1、チューナー、光属性、攻守0、ステータスは貧弱だが、だからこそ恵まれたモンスターだ。

『TG』、コナミの友も使っていた、未来からのカード、何故彼がそれを使えるのかは分からないが――警戒するにも充分だ。

 

「レベル4以下のモンスターが特殊召喚に成功した時、手札の『TGワーウルフ』を特殊召喚!」

 

TGワーウルフ 攻撃力1200

 

次に登場したのは左腕がメカメカしいアームとなった人型の狼だ。手軽な特殊召喚条件を持ち、シンクロ、エクシーズ共に活躍出来る素材だ。この手軽さはデニスの持つ『Emハットトリッカー』と似ている。

 

「サイバー・マジシャンは『TG』シンクロモンスターの素材とする場合、手札の『TG』も素材に出来る!僕は手札のレベル4、『TGラッシュ・ライノ』にレベル1のサイバー・マジシャンをチューニング!リミッター解放、レベル5!レギュレーターオープン!スラスターウォームアップ、OK!アップリンク、オールクリアー!GO、シンクロ召喚!カモン、『TGハイパー・ライブラリアン』!」

 

TGハイパー・ライブラリアン 攻撃力2400

 

ジョニーの手札から青いゴム質の鎧、背にブースターを取りつけたサイが現れ、サイバー・マジシャンが光のリングとなって弾け飛び、包み込む。更に一筋の閃光がリングごとサイを貫き、光が晴れたそこに現れたのはタブレットを手に持ち、黒いマントを靡かせた知性溢れる司書。シンクロ召喚を扱うデッキではその凶悪さを充分に発揮する強力なシンクロモンスターだ。

 

「そして速攻魔法、『緊急テレポート』を発動!デッキからレベル3以下のサイキック族モンスター、『クレボンス』を特殊召喚!」

 

クレボンス 攻撃力1200

 

次は近未来的な衣装に身を包んだピエロのようなモンスターだ。サイキック族の中でも優秀な効果を持っており、自身を維持する事に長けている。

 

「レベル3のワーウルフにレベル2の『クレボンス』をチューニング!リミッター解放レベル5!ブースターランチ、OK!インクリネイション、OK!グランドサポート、オールクリアー!GO、シンクロ召喚!カモン、『TGワンダー・マジシャン』!」

 

TGワンダー・マジシャン 攻撃力1900

 

「ハァッ!」と野太い男性の声を上げ、現れたのはその逆、可愛らしい少女の姿をした、4枚の羽を伸ばしたサイバー魔導師。

コナミがそのギャップを越えた声に反応し、「ッ!?」と見つめると今度は少女の声でウフ、と笑いウィンクする。空耳だったのだろうか?

このモンスターはコナミの『アクセル・シンクロン』と同じく、シンクロモンスターにしてチューナーモンスター、つまり――アクセルシンクロの素材である。

 

「ライブラリアンの効果で、シンクロ召喚に成功した為、1枚ドロー!」

 

ジョニー 手札1→2

 

そしてこれがハイパー・ライブラリアンの恐るべき効果、自分、相手を問わず、フィールドに存在し、シンクロ召喚時に1枚ドローする効果。単純ながらもターン制限の無いこのカードは大量展開、手札の消費がかさむシンクロとは相性が良い。素材に制限が無いのも拍車をかけている。

 

「カードを2枚セット、ターンエンドだ」

 

ジョニー LP4000

フィールド『TGハイパー・ライブラリアン』(攻撃表示)『TGワンダー・マジシャン』(攻撃表示)

セット2

手札0

 

相手フィールドにはシンクロモンスターとシンクロチューナー、早速アクセルシンクロの準備が整ったようだ。

コナミとしても望む所、見れば出来る、学習能力が高いコナミだが、アクセルシンクロは目にも止まらぬ為、何度か観察しなければならないのだろう。自身が弱くなっている事も原因であるが、手本があるのと無いのではやりやすさも違う。何としてでもコツを掴むべく、ジョニーからアクセルシンクロを引き出す。

 

「オレのターン、ドロー!魔法カード、『マジカル・ペンデュラム・ボックス』!2枚ドローし、ペンデュラムモンスター、『慧眼の魔術師』を手札に!残りを捨てる!オレは『賤竜の魔術師』と『慧眼の魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!慧眼のペンデュラム効果で自身を破壊し、『貴竜の魔術師』をセッティング!」

 

「来たか……ペンデュラム……!」

 

コナミの背後から2本の柱が伸び、その中から2体の『魔術師』が出現、音叉と扇を振るい、宇宙に魔方陣を描き出す。ペンデュラム召喚、未知なる召喚を見てもジョニーの顔色は変わらない。

 

「揺れろ、光のペンデュラム、虚空に描け魂のアーク!ペンデュラム召喚!『慧眼の魔術師』!『E・HEROフォレストマン』!」

 

慧眼の魔術師 攻撃力1500

 

E・HEROフォレストマン 守備力2000

 

振り子の軌跡で現れる2体のモンスター、先程、ペンデュラムスケールに存在した、銀髪を靡かせ、秤を持った瑠璃の『魔術師』と樹木の肉体を持った『HERO』だ。上々の出だし、コナミは更にその手を打つ。

 

「チューナーモンスター、『ジェット・シンクロン』を召喚!」

 

ジェット・シンクロン 攻撃力500

 

ここでコナミもシンクロへ繋げる為、チューナーモンスターを召喚する。青と白のカラーリング、ジェット・エンジンを模したモンスター。レベル1で自己蘇生効果を持っており、チューナーの中でも重宝している1枚だ。

 

「レベル4の慧眼にレベル1の『ジェット・シンクロン』をチューニング!シンクロ召喚!『ジェット・ウォリアー』!」

 

ジェット・ウォリアー 攻撃力2100

 

シンクロ召喚、コナミもジョニーに対抗し、シンクロモンスターの切り込み役を召喚する。黒い重厚なボディ、肩から伸びる鋭い翼、背より火炎を吹かせ、D-ホイールにやすやすと並び立つ。

 

「『ジェット・シンクロン』の効果で『ジャンク・コレクター』サーチ!『ジェット・ウォリアー』の効果でライブラリアンバウンス!」

 

「罠発動!『スキル・プリズナー』!このターン、ライブラリアンを対象とするモンスター効果を無効にし、ライブラリアンの効果でドロー!」

 

ジョニー 手札0→1

 

「賤竜の効果で慧眼を回収、バトルだ!『ジェット・ウォリアー』でワンダー・マジシャンを攻撃!」

 

「構わない、ワンダー・マジシャンが破壊された事で1枚ドローさせて貰うぞ……!」

 

ジョニー LP4000→LP3800 手札1→2

 

「何……?アクセルシンクロしない……?」

 

ジョニーの行動を訝しみ、疑問の声を上げるコナミ。おかしい、バトルに入る前にワンダー・マジシャンの効果でシンクロ召喚しておけば態々モンスターを破壊されず、ダメージを受ける事も無かった筈だ。しかし、彼はそれをしなかった。それは――。

 

「手数を増やす為か……」

 

「その通りだ。ライブラリアンがいる限り、シンクロ召喚する度にドローし、ワンダー・マジシャンが破壊されればドロー出来る。手札がないままではアクセルシンクロしても処理されては困る上、リカバリーも出来ないからな」

 

ライブラリアンによりドローは出来る限り維持しておきたいと言う事か。これならばホープを出していればまだマシだったか。

 

「カードを2枚セットし、ターンエンドだ」

 

コナミ LP4000

フィールド『ジェット・ウォリアー』(攻撃表示)『E・HEROフォレストマン』(守備表示)

セット2

Pゾーン『貴竜の魔術師』『賤竜の魔術師』

手札2

 

「僕のターン、ドロー!装備魔法、『妖刀竹光』をライブラリアンに装備!『黄金色の竹光』を発動!2枚ドロー!もう1枚だ、2枚ドロー!最後に1枚発動!」

 

ジョニー 手札1→3→4→5

 

「頭おかC」

 

コナミですら戦慄する竹光ターボでジョニーの手札が急速に回復する。これで『黄金色の竹光』を使い切り、手札は5枚、戦慄のジョニーである。

 

「僕は『TGカタパルト・ドラゴン』を召喚!」

 

TGカタパルト・ドラゴン 攻撃力900

 

ジョニーの隣に並び飛行するのは頭部が射出機のように伸びたドラゴンだ。高レベル、高ステータスが多いドラゴン族の中では珍しく低レベル、低ステータスのモンスターだ。

 

「カタパルト・ドラゴンの効果!手札のレベル3以下の『TG』モンスター、『TGジェット・ファルコン』を特殊召喚!」

 

TGジェット・ファルコン 攻撃力1400

 

カタパルト・ドラゴンに射出され、宇宙を飛行するのは背にブースターを取りつけた荒鷲だ。レベル3、カタパルト・ドラゴンと合わせるとレベル5となる。

 

「レベル2のカタパルト・ドラゴンにレベル3のジェット・ファルコンをチューニング!シンクロフライトコントロール!リミッター解放、レベル5!ブースター注入120%!リカバリーネットワークレンジ修正!オールクリアー!GO、シンクロ召喚!カモン、『TGパワー・グラディエーター』!」

 

TGパワー・グラディエーター 攻撃力2300

 

登場したのは新たなレンジ5のシンクロモンスター。金色の鎧を纏い、右手には斧が握られている。貫通効果と破壊された時、ドローするリカバリー効果を持ったカードだ。

 

「ライブラリアンの効果でドロー!ジェット・ファルコンの効果で500のダメージを与える!」

 

ジョニー 手札3→4

 

コナミ LP4000→3500

 

「バトル!パワー・グラディエーターでフォレストマンに攻撃!マシンナイズ・スラッシュ!」

 

「くっ――!」

 

コナミ LP3500→3200

 

パワー・グラディエーターがその手に持った斧を振るい、フォレストマンから伸びる樹木を狩って狩って狩りまくり、その斬撃をお見舞いする。スタンバイフェイズに『融合』をサーチ、サルベージするこのカードは維持しておきたかったが仕方無い。

 

「ライブラリアンで『ジェット・ウォリアー』に攻撃!」

 

「罠カード、『マジカルシルクハット』!」

 

だが『ジェット・ウォリアー』は別だ。このカードを使えばもしも生き残ってもフォレストマンがセット状態となる為使わなかったが、『ジェット・ウォリアー』は融合、シンクロ共に使っても先が優秀な為、ここで残しておきたい。お得意の罠が炸裂し、フィールドに3つのシルクハットが飛び出し、コナミの投げる2枚のカードと『ジェット・ウォリアー』を覆い、シャッフルされる。

 

「左のシルクハットへ攻撃!」

 

「外れだ!」

 

「これで終わりと思ったか?まだだ!永続罠、『リビングデッドの呼び声』!ワンダー・マジシャンを蘇生!」

 

TGワンダー・マジシャン 攻撃力1900

 

「ここで追撃か……!」

 

「真ん中のシルクハットに攻撃!」

 

ライブラリアンに続き、ワンダー・マジシャンの魔力球がシルクハットに激突する。確率は2分の1、しかしコナミはそれを――外して見せる。

 

「魔法カード、『手札抹殺』。手札の『D.D.クロウ』を捨て、君の墓地から『ブレイクスルー・スキル』を除外。カードを1枚セットしてターンエンドだ」

 

ジョニー LP3800

フィールド『TGハイパー・ライブラリアン』(攻撃表示)『TGワンダー・マジシャン』(攻撃表示)『TGパワー・グラディエーター』(攻撃表示)

『リビングデッドの呼び声』セット1

手札1

 

「オレのターン、ドロー!」

 

ターンプレイヤーがコナミに移り、デッキよりカードを引き抜く。引いたカードは『V・HEROヴァイオン』。召喚時、デッキから『HERO』を墓地に落とし、墓地の『HERO』を除外し、『融合』をサーチするモンスターだ。

 

「『V・HEROヴァイオン』を召喚!」

 

V・HEROヴァイオン 攻撃力1000

 

戦術を固め、手札より召喚されたのは頭部がカメラとなった『HERO』モンスター。優秀な効果を持つが、一部残念なのは『E・HERO』で無い事位か。

 

「召喚時、『E・HEROシャドー・ミスト』を墓地へ、シャドー・ミストの効果で『E・HEROエアーマン』をサーチ!そしてヴァイオンの効果でシャドー・ミストを除外し、『置換融合』をサーチ!」

 

一気に『HERO』と『融合』の2枚を手札に。これこそがヴァイオンの優秀な所だ。『HERO』をサーチするにはシャドー・ミストを落とさなければならないが、それでも1枚で墓地肥やしとサーチを行えるこのカードはデッキ圧縮として優秀だ。

 

「ペンデュラム召喚!『慧眼の魔術師』!『E・HEROエアーマン』!」

 

慧眼の魔術師 攻撃力1500

 

E・HEROエアーマン 攻撃力1800

 

再び揺れるペンデュラム、コナミのフィールドに現れたのは1体の『魔術師』と『HERO』モンスターだ。青いボディにファンの翼を伸ばしたエアーマンは『E・HERO』の中でも特に強力な1枚だ。

 

「エアーマンの召喚時、デッキから『E・HEROブレイズマン』をサーチ!そして魔法カード、『置換融合』を発動!フィールドのエアーマンと『ジェット・ウォリアー』で融合!融合召喚!『E・HEROノヴァマスター』!」

 

E・HEROノヴァマスター 攻撃力2600

 

炎属性モンスター、『ジェット・ウォリアー』と『HERO』であるエアーマンが融合し、その場に突風と共に火柱が吹き、中より赤と金、炎を思わせる鎧を纏った『HERO』が登場する。

 

「更に慧眼とヴァイオンの2体でオーバーレイ・ネットワークを構築!我が戦いはここから始まる!白き翼に望みを託せ、現れろNo.39!エクシーズ召喚!希望皇ホープ!」

 

No.39希望皇ホープ 攻撃力2500

 

融合に続きエクシーズ、コナミの隣に渦が広がり、この場の星々と2体のモンスターを吸収し、小爆発を引き起こす。突風と爆煙が辺りに立ち込め、それを切り裂き、金色の鎧を纏った白き翼の皇が雄々しい咆哮と共に現れる。肩には39の赤い紋様が浮かび上がり、腰から2刀の剣が引き抜かれる。

 

「エクシーズにペンデュラム……フ、やはり誰にも未来と言うのは分からないな……僕はこの瞬間、ワンダー・マジシャンの効果でシンクロ召喚を行う!」

 

「来るか!」

 

相手ターン中、それもシンクロモンスターとシンクロチューナーによるシンクロ召喚が今ここで放たれる。ジョニーのD-ホイールが風を受け、段々と空気の壁をずらしていく。靡く外套、スリップストリーム、ジョニーは1人でそれを行い、空気の抵抗を減らしているのだ。そしてこの究極、心を静かに落ち着かせ、境地へ至ったものこそ――。

 

「クリアマインド!」

 

「アクセルシンクロ……!」

 

「リミッター解放、レベル10!メイン・バスブースター・コントロール、オールクリアー!無限の力、今ここに解き放ち、次元の彼方へ突き進め!GO、アクセルシンクロ――」

 

「消え……た……!」

 

ドシュウ!ジョニーの姿が風の中に溶けるように消え、空気の輪が広がっていく。そして――コナミの背後から、ジョニーが新たなモンスターを引き連れ、コナミを抜き去る。引き連れたモンスターは緑色とオレンジのカラーリングを基調とした人型ロボット――。

 

「カモン、『TGブレード・ガンナー』!!」

 

TGブレード・ガンナー 攻撃力3300

 

現れるアクセルシンクロモンスター、やはりこれも、あの男と同じ――。何故この男が『TG』を、アクセルシンクロを使えるのかは分からないが――コナミとしては望む所だ。

 

「ライブラリアンの効果でドロー!」

 

ジョニー 手札1→2

 

「バトルに入る!確かにアクセルシンクロモンスター、ブレード・ガンナーは強力だが……ライブラリアンは別だ!ここで切る!ノヴァマスターでライブラリアンへ攻撃!」

 

ノヴァマスターがその手に火炎を逆巻き、灼熱の大剣を作り出す。そのままライブラリアンに接近、撃ち出される魔法弾を弾き、赤いエネルギーがライブラリアンを貫き、剛炎が消し炭にする。

 

ジョニー LP3800→3600

 

「ぐっ――ライブラリアンが……!」

 

「ノヴァマスターの効果でドロー!」

 

コナミ 手札2→3

 

相手の手札補充カードを削り、今度はコナミが手札を補充する。これで厄介なライブラリアンを倒した。ブレード・ガンナーも強力だが、戦線を強化していくライブラリアンの除去が優先だ。

 

「ターンエンドだ」

 

コナミ LP3200

フィールド『No.39希望皇ホープ』(攻撃表示)『E・HEROノヴァマスター』(攻撃表示)

セット1

Pゾーン『貴竜の魔術師』『賤竜の魔術師』

手札3

 

「僕のターン、ドロー!フッ、楽しいな……久々の感覚だ。罠発動!『TGX3―DX2』発動!墓地の『TGハイパー・ライブラリアン』、『TGワーウルフ』、『TGサイバー・マジシャン』の3体をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

ジョニー 手札3→5

 

「手札をデッキトップに戻し、『ゾンビキャリア』を蘇生!」

 

ゾンビキャリア 守備力200

 

ライブラリアンをエクストラデッキへと回収しながら2枚ドロー。そして増えた手札を活用し、現れたのは優秀なアンデット族チューナーだ。恐らくは『ワン・フォー・ワン』の時に墓地へと送っていたのだろう、抜け目の無い男だ。

 

「『チューニング・サポーター』を召喚!」

 

チューニング・サポーター 攻撃力100

 

ここで登場したのは鍋を頭に被った小さなモンスター。その名の通り、シンクロ召喚に使う事で後のサポートとなるカードだ。

 

「魔法カード、『機械複製術』!『チューニング・サポーター』を選択し、デッキから同名カードを2体特殊召喚!」

 

チューニング・サポーター 守備力300×2

 

非常に不味い流れとなった。コナミはその額から汗を垂らす。このままでは――折角握りかけたペースが、ジョニーに戻る。

 

「レベル1の『チューニング・サポーター』3体にレベル2の『ゾンビキャリア』をチューニング!シンクロ召喚!『TGハイパー・ライブラリアン』!」

 

TGハイパー・ライブラリアン 攻撃力2400

 

再びフィールドに戻るライブラリアン。そして――。

 

「シンクロ素材となった『チューニング・サポーター』の効果で3枚ドロー!」

 

ジョニー 手札2→5

 

加速、『ゾンビキャリア』のデメリットを物ともせず、また5枚の手札を握る。そしてここまで手札を回復したのだ。これで終わりとはいかないだろう。

 

「魔法カード、『二重召喚』!もう1度得た召喚権で『TGラッシュ・ライノ』を召喚!」

 

TGラッシュ・ライノ 攻撃力1600

 

「そして手札の『TGギア・ゾンビ』を特殊召喚!ラッシュ・ライノの攻撃力を1000ダウン!」

 

TGギア・ゾンビ 守備力0

 

TGラッシュ・ライノ 攻撃力1600→600

 

更なる展開。ラッシュ・ライノの攻撃力を糧とし、現れたのは歯車を頭に装着したアンデット。これでまたレベル5のシンクロモンスターへ繋げる。

 

「レベル4のラッシュ・ライノにレベル1のギア・ゾンビをチューニング!シンクロ召喚!『TGワンダー・マジシャン』!」

 

TGワンダー・マジシャン 攻撃力1900

 

「ワンダー・マジシャンの効果で君のペンデュラムゾーンの賤竜を破壊し、ライブラリアンの効果でドロー!」

 

ジョニー 手札2→3

 

「片方のペンデュラムゾーンから『魔術師』が無くなった事で貴竜も破壊される」

 

「当たりを引いたようだな、僕は更に永続魔法、『TGX300』を発動!自分フィールドの『TG』1体につき、自分フィールドのモンスターの攻撃力は300アップする!」

 

TGブレード・ガンナー 攻撃力3300→4200

 

TGハイパー・ライブラリアン 攻撃力2400→3300

 

TGワンダー・マジシャン 攻撃力1900→2800

 

ジョニーのフィールドには『TG』が3体、つまり900のアップとなる。複数の種族で構成された『TG』では『一族の結束』の代わりとなるカードだ。打点の低い『TG』には有り難い効果だ。

 

「バトル!ワンダー・マジシャンでホープへ攻撃!」

 

「ホープのORUを使い、攻撃を無効に!ムーンバリア!」

 

先行するジョニーが機体を真横にし、ワンダー・マジシャンに指示を出してホープへ攻撃をかける。当然コナミはこれを回避するしか無い。ホープの周囲で回転するORUが1つ弾け飛び、皇は自らの翼を盾とし、ワンダー・マジシャンが作り出す魔力球の嵐を防ぐ。

 

「ライブラリアンで追撃!」

 

「ホープの効果で無効!」

 

続く追撃、ライブラリアンがタブレットを操作し、ワンダー・マジシャンと同じく魔力で作られた砲弾をホープへ飛ばし、無論コナミはそれも防ぐ。襲い来る嵐を回避し、ホープの盾が崩れ落ち、晴れたコナミの視界にあったのは――光輝く剣。

 

「ブレード・ガンナーで攻撃!シュート・ブレード!」

 

「――ORUの無いホープが攻撃対象になった場合破壊される!」

 

「ならばノヴァマスターへ攻撃!」

 

「罠発動!『ダメージ・ダイエット』!このターン中のダメージを半分に!」

 

コナミ LP3200→2400

 

ブレード・ガンナーの光の剣線がノヴァマスターに襲いかかる。ノヴァマスターも負けじと炎の剣を作り出し、鍔迫り合いに持ち込むも、ブレード・ガンナーは光の剣を銃へと変形させてノヴァマスターの脳天を貫く。

 

「カードを1枚セットし、ターンエンドだ。これで君のフィールドのカードは0、さぁ、どう出る?」

 

ジョニー LP3600

フィールド『TGブレード・ガンナー』(攻撃表示)『TGハイパー・ライブラリアン』(攻撃表示)『TGワンダー・マジシャン』(攻撃表示)

『TGX300』『リビングデッドの呼び声』セット1

手札0

 

「オレのターン、ドロー!墓地の『ギャラクシー・サイクロン』を除外し、『TGX300』破壊!魔法カード、『貪欲な壺』!墓地の『No.39希望皇ホープ』、『慧眼の魔術師』、『V・HEROヴァイオン』、『E・HEROエアーマン』、『ジェット・ウォリアー』をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

コナミ 手札3→5

 

「魔法カード、『アメイジング・ペンデュラム』!エクストラデッキの貴竜と賤竜を回収し、セッティング!ペンデュラム召喚!『竜脈の魔術師』!『E・HEROブレイズマン』!」

 

竜脈の魔術師 攻撃力1800

 

E・HEROブレイズマン 守備力1800

 

「ブレイズマンの効果で『置換融合』をサーチ!」

 

再びコナミの振り子が揺れ、天空に描かれた魔方陣に孔が開き、中より2本の柱が降り立つ。今度は剣を持った若い『魔術師』と炎の鬣を伸ばした『HERO』だ。

 

「魔法カード、『置換融合』を発動!フィールドの竜脈とブレイズマンで融合!融合召喚!『E・HEROガイア』!」

 

E・HEROガイア 守備力2600

 

宇宙空間へとまた新たな『HERO』が登場する。漆黒のボディに紅く輝く珠を散りばめた剛腕を振るうモンスター。今回は相手の布陣もあって守備表示だ。

 

「ガイアの効果でライブラリアンの攻撃力を半分にし、その数値分、このモンスターの攻撃力をアップ!」

 

「無駄だ!レベル5のライブラリアンにレベル5のワンダー・マジシャンをチューニング!アクセルシンクロ!『TGブレード・ガンナー』!!」

 

TGブレード・ガンナー 攻撃力3300

 

ジョニーの姿がまたも消失し、コナミの背後から登場する。攻撃力吸収もサクリファイスエスケープの要領で回避し、強力なアクセルシンクロモンスターを召喚する。これもアクセルシンクロの強みと言える。だがここまではコナミの読み通り、彼はジョニーがこうするように仕向けたのだ。

 

「焦ったなジョニー。オレはガイアを守備表示で召喚した。お前はオレがガイアで攻撃力を奪い、次のモンスターで攻撃して来ると思ってたんだろうが……それは次のモンスターを確認してからでも遅くなかった。『スキル・プリズナー』もあるしな、『クリバンデット』を召喚!」

 

クリバンデット 攻撃力1000

 

「――しまった……!」

 

ここでコナミが召喚したのは攻撃用のモンスターでは無く、サポート向けのモンスターだ。これでジョニーはアクセルシンクロモンスターを2体、フィールドに揃えはしたが、ライブラリアンによるドローブーストを望めなくなった。

 

「だがそれでも僕の優勢は変わらない……!」

 

「何とかするさ、オレはこれでターンエンド!この瞬間、『クリバンデット』をリリースし、デッキの上から5枚を捲り、『HEROの遺産』を手札に!墓地に送られた『妖刀竹光』をサーチ!」

 

コナミ LP2400

フィールド『E・HEROガイア』(守備表示)

Pゾーン『貴竜の魔術師』『賤竜の魔術師』

手札3

 

宇宙空間の中で繰り広げられる、スピードの世界のデュエル。激しく、そして速い攻防の中、ジョニーは自身に挑む赤帽子の少年を見て、クスリと笑う。

やはり――彼とのデュエルは何が起こるか分からない、ワクワクがある。だがまだだ、このままではコナミはジョニーには勝てない。そして――これから闘うであろう、数多くの強敵にも。

だから今、彼を導き、彼が新たな力を、スピードの境地に足を踏み入れねばならない。それがきっと――ジョニーが、コナミに出来る恩返しなのだから――。

 

「行くぞコナミ!」

 

「来い、ジョニー!」

 

 

 




次回、2章最終回、謎のD-ホイーラー、ジョニーの正体が明らかに……!?

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