遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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イカれたランサーズメンバーを紹介するぜ!ハーモニカ、コナミ!草笛、沢渡!口笛、黒咲!ジェットストリームアタックだ!


第87話 痺れる~!

「戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」

 

使い慣れ、闘い慣れた遊勝塾のデュエルコートにて、4人のデュエリストが声高々にアクションデュエルの口上を上げる。

最初に声を上げたのはジュニア3人組の痺れ担当、原田 フトシ。

 

「モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!」

 

フトシの口上を繋ぎ、次なる口上を上げたのはジュニア組の紅一点、赤髪の可愛らしい容姿をした、コナミ曰く、あざとい幼女、あざとい。

鮎川 アユ。そして彼女に続くのは当然――。

 

「フィールド内を駆け巡る!」

 

ジュニア組の頭脳担当、今回の舞網チャンピオンシップ、ジュニアクラスにて準優勝と言う、快挙を果たした山城 タツヤだ。

この3人を同時に相手し、向き合うのは遊勝塾期待のエース、頭にゴーグルをかけ、肩から舞網第2中学の制服を靡かせ、動きやすいカーゴパンツを履いた、ペンデュラムの開祖にしてエンタメデュエルを受け継ぐ少年――榊 遊矢。

 

「見よ、これぞデュエルの最強進化形!」

 

フィールド内が光の粒子に包まれ、騒がしく輝かしい、スポットライトが走るフィールド、『マジカル・ブロードウェイ』へと変わっていき――4人がデュエルディスクを構え、対決する。

 

「「「「アクショーン……デュエル!!」」」」

 

何故こうなったのか、それを説明するには、少しばかり時間を遡る――。

 

――――――

 

それは遊矢がペガサスによる特訓やランサーズの交流デュエルを終え、コナミとセレナ、SALとアリトと談笑していた時だった。

 

「へぇ、コナミもランサーズになったのか……信じていたけど、嬉しいな。一緒に頑張ろうぜ」

 

「うむ、零児に勝ったのなら誰も文句は言わんだろう。よろしく頼む」

 

「ウキ」

 

「まぁ、ランサーズのメンバーが増えるのは良い事だ!余り話した事無いけど、何か懐かしいし、良い奴っぽいしな!」

 

「ああ、こちらこそよろしく頼む」

 

話題はやはり、コナミのランサーズ入り。その後もどうやって零児に勝ったのか、やら、ペガサスの特訓内容やデッキの改良等のデュエリストらしい会話だ。

そんな会話が続いた時だった。彼等の傍、いや――彼等から数メートルばかり離れた柱の影から、小さな子供がおどおどと遊矢達を見つめている事に、遊矢が気づいたのは。

 

「ん?零羅?どうしたんだー?」

 

「……!」

 

その正体は赤馬 零児の兄弟――弟なのか妹なのか分からないが、一般的に妹でも兄弟で通じるだろう、零羅だ。何やらジーッ、と静かに自分達を見つめる零羅を疑問に思い、遊矢が声をかける。

すると零羅はビクゥッ、と肩を震わせ、あわわあわわと言った様子で開いた口に手を当てながらキョロキョロとして――何時の間にか背後に回ったコナミに首根っこを掴まれ、確保された。

 

「残像だ」

 

「――ッ!?――ッ!?」

 

背後を振り向くと突如コナミの顔が現れると言う意味不明な状況に声にならない声を上げる零羅。だがしかし、遥かに遅い。バタバタと打ち上げられた魚のようにもがく零羅を運び、遊矢達の前まで運ぶコナミ。零羅の中ではコナミは確実にいじめっ子である。

 

「……零羅を余りいじめてやるなよ……」

 

「うむぅ……何だか可哀想だな」

 

「キー?」

 

「でもまぁ、何か用があるならこうするしかねぇんじゃ無いか?」

 

遊矢とセレナがコナミを非難し、SALとアリトが肯定する。理性と野生の別れ所と言った所か、セレナが迷っている辺り、彼女も野生みを感じられる。

 

「それで零羅、何か俺達に用かな?」

 

遊矢が人当たりの良い優しい笑みを零羅に向ける。何だかんだでコミュニケーション能力が高く、相手の視線に立って話せる少年だ。

今だって腰を下ろし、零羅と目線を合わせる事で威圧的にならないように気を使っている。

 

「……遊矢に、用があるって、タツヤ達が……コナミは、刃達がデュエルコートで呼んでる……」

 

「タツヤ達が俺を?」

 

「刃達か……あいつ等にも迷惑をかけた。一発位殴られに行くか」

 

どうやら遊矢にはタツヤ達ジュニア3人組が、コナミにはLDSの3人組が用があるらしい。零羅は伝言を頼まれたと言う事だろう。2人は立ち上がり、遊矢は零羅の頭にポンと手を置き、歩を進める。

 

「ありがとな、零羅」

 

「オレからも礼を言う」

 

「……ん……」

 

そう言って、2人は場を離れ、互いに別れ、3人の下へと急ぐ。そして遊矢はジュニア3人組と合流し、開口一番、アユがこう切り出して来たのだ。

 

「フフン、来たね遊矢お兄ちゃん!私達といざ、じんじょーにデュエル!」

 

こうして――訳も分からぬまま、遊矢はジュニア3人組に遊勝塾まで連れられ、今に至ると言う事である。

 

――――――

 

「ルールはバトルロイヤル!先攻は私だよ!私のターン!」

 

アクションフィールド、『マジカル・ブロードウェイ』にて始まった遊矢対遊勝塾ジュニア3人組のデュエル。

先攻は紅一点、アユだ。彼女のデッキは『アクアアクトレス』と名のつく水族のモンスターを『アクアリウム』と言う永続魔法で強化してひたすらに殴るビートダウン志向のデッキだ。単純ながら侮る事は出来ない。手札次第では1ターンキルも可能となるからだ。

 

「私はフィールド魔法、『湿地草原』を発動!フィールドのレベル2以下の水属性、水族モンスターの攻撃力は1200アップするよ!」

 

アユのフィールドだけが変化し、ボウボウと草が生い茂る草原へと変わる。対応するモンスターはステータスが貧弱だが、これによって1200と言う破格の強化が受けられる。厄介なカードだ。

 

「そして『アクアアクトレス・グッピー』を召喚!」

 

アクアアクトレス・グッピー 攻撃力600→1800

 

空中を泳ぎ、アユの周りを漂うはリボンにステッキと遊矢の『EM』にも似た出で立ちのピンク色で尾が身体の半分以上を占めるグッピー。『湿地草原』の恩恵を受け、攻撃力1800、優秀な下級アタッカー足り得る数値だ。

 

「グッピーの効果!手札から『アクアアクトレス・テトラ』を特殊召喚!」

 

アクアアクトレス・テトラ 攻撃力300→1500

 

グッピーの隣に並ぶように現れたのは、ひらりと長い尾を翻す青いネオンテトラ。『アクアアクトレス』に必須の『アクアリウム』をサーチする優秀なモンスターだ。

 

「テトラの効果で『水舞台』をサーチし、発動!」

 

アユのフィールドが海中に沈み、亜熱帯へと変化して幻想的な光景を作り出す。これでアユのフィールドの水属性モンスターは同じ属性でしか戦闘破壊されず、相手モンスターの効果を受けなくなった。まずは耐性を与え、防御を固めると言う事だろう。

 

「カードを1枚セットし、ターンエンド!」

 

鮎川 アユ LP4000

フィールド『アクアアクトレス・グッピー』(攻撃表示)『アクアアクトレス・テトラ』(攻撃表示)

『水舞台』セット1

『湿地草原』

手札1

 

「次は俺のターンだよ!ドロー!俺は『エヴォルド・オドケリス』を召喚!」

 

エヴォルド・オドケリス 攻撃力500

 

アユのターンが終了し、ターンプレイヤーがフトシに移る。彼がデッキから勢い良くカードを引き抜き、召喚したのは今まで彼が使っていた『らくがきじゅう』では無く、見慣れぬ爬虫類のカード。このカードはオレンジ色の亀のようだ。今までのフトシとは違うデッキに遊矢は僅かだが瞠目する。

 

「デッキを変えたのか……!?」

 

「へへっ!驚くのはまだ早いさ!オドケリスの召喚時、手札の『エヴォルダー・ケラト』を特殊召喚!」

 

エヴォルダー・ケラト 攻撃力1900→2100

 

オドケリスの背が輝き、『マジカル・ブロードウェイ』のビルへと黒いシルエットが投影される。口を大きく開き、鋭い牙を見せ、長い尾を振るって咆哮するその姿は正に太古の恐獣。シルエットはそのまま実体を持って浮かび上がり、小さな翼と角を伸ばした肉食恐竜、ケラトサウルスが現れる。巨大な体躯を唸らせ、天へ咆哮する姿は大迫力、とんでもない威圧感だ。

 

「『エヴォルド』モンスターの効果で特殊召喚されたケラトは攻撃力が200アップするんだ!カードを2枚セットしてターンエンド!」

 

原田 フトシ LP4000

フィールド『エヴォルダー・ケラト』(攻撃表示)『エヴォルド・オドケリス』(攻撃表示)

セット2

手札2

 

「僕のターン、ドロー!僕は『ゴールド・ガジェット』を召喚!」

 

ゴールド・ガジェット 攻撃力1700

 

フトシのターンが終了し、次は当然タツヤのターン。彼はニッ、口端を持ち上げてドローし、手札から1体のモンスターを召喚する。ソリッドビジョンによって出現したのはキラキラと黄金に輝く歯車を組み込んだ優秀な機械族のモンスター。堅実な性格の彼らしいカードだ。LDSにおいてもこのカードの評価は高い。

 

「『ゴールド・ガジェット』の効果で手札の『グリーン・ガジェット』を召喚!」

 

グリーン・ガジェット 攻撃力1400

 

手札のレベル4、機械族を特殊召喚する効果。これによって緑色の『ガジェット』が並び立つ。

 

「『グリーン・ガジェット』の効果で『レッド・ガジェット』をサーチ!そして永続魔法、『補給部隊』を発動。カードを1枚セットしてターンエンドだよ」

 

山城 タツヤ LP4000

フィールド『ゴールド・ガジェット』(攻撃表示)『グリーン・ガジェット』(攻撃表示)

『補給部隊』セット1

手札2

 

召喚するだけでアドバンテージを稼ぐ『ガジェット』モンスターにモンスターが破壊されれば1枚ドローする『補給部隊』。彼の性格を表すようなカードだ。消費を抑えてコツコツと。この3ターンだけで3人の性格が分かってしまう。クスリと笑みを溢し、遊矢はデッキからカードを引き抜く。

 

「俺のターン、ドロー!俺は『EMチアモール』と『EMドラネコ』でペンデュラムスケールをセッティング!揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!『EMセカンドンキー』!『EMインコーラス』!」

 

EMセカンドンキー 守備力2000

 

EMインコーラス 守備力500

 

いきなり全力、同門だろうが後輩だろうが、女子供でも容赦なく、問答無用で笑顔にする。遊矢のエンタメデュエルの象徴、ペンデュラムが炸裂する。

背に2本の柱が上り、キリンと銅鑼を抱えた猫が天空に線を描いて魔方陣を作り出し、振り子が揺れ、孔が開いて中から2本の光が落ちる。光の粒子を散らし、現れたのは2体の『EM』モンスター。目を大きく開いたロバと3色の鮮やかなインコだ。

 

「セカンドンキーの効果で、そうだな、『EMペンデュラム・マジシャン』をサーチし、カードを2枚セットしてターンエンド」

 

榊 遊矢 LP4000

フィールド『EMセカンドンキー』(守備表示)『EMインコーラス』(守備表示)

セット2

Pゾーン『EMチアモール』『EMドラネコ』

手札1

 

全てのターンプレイヤーのターンが終了し、攻撃可能な5ターン目へ。これから3人の攻撃を3ターンも防がねばならない。ジュニア組とて油断は出来ない。

 

「私のターン、ドロー!テトラの効果で『水照明』をサーチし、発動!」

 

『水舞台』が淡い光を帯びた泡に包まれる。このカードは厄介だ。『アクアアクトレス』の戦闘時、攻守を倍にする凶悪極まりないカード。可愛らしい癖に師であるセレナやコナミと同じく殺意が高くて困る。

 

「バトル!グッピーでセカンドンキーに攻撃!」

 

アクアアクトレス・グッピー 攻撃力1800→3600

 

グッピーが宙をまるで海のように自由に漂い、その巨大な尾ひれでセカンドンキーをビンタして吹き飛ばす。ブロードウェイのビル群に激突し、破壊されるセカンドンキー。とんでもない威力だ。

 

「更にテトラでインコーラスに攻撃!」

 

アクアアクトレス・テトラ 攻撃力1500→3000

 

追撃がかけられ、テトラが口から巨大な泡を作り出してインコーラスを閉じ込める。インコーラス達が何とか抜け出そうと嘴で突いたその時、ピカリと光が泡を覆い、泡が爆発してインコーラスを焼き鳥にする。

 

「インコーラスの効果で『EMギッタンバッタ』を特殊召喚!」

 

EMギッタンバッタ 守備力1200

 

フィールドががら空きになる事を避ける為、インコーラスが囀り、最後の力で仲間を呼ぶ。現れたのは、シーソーのように揺れる2つの顔を持つバッタのモンスター。特殊召喚される事で1ターンに1度の戦闘耐性を得るモンスターだ。

 

『随分と殺意の高い後輩だな、遊勝塾……恐るべし』

 

「いきなり出て来てそれはないだろ……」

 

アユの高い猛攻を見て、今まで引っ込んでいたユートが表に出て驚愕の声を上げる。

 

『俺の出る幕はあるか?』

 

「……あるかもしれないけど……出来れば俺1人で相手をしてあげたい」

 

『……そうか……まぁ、今回は命がかかって無いしな』

 

チラリと遊矢を横目で見て、心配するユート。しかし遊矢としては先輩として、榊 遊矢として後輩達に最後まで自分のデュエルを見せてあげたいと思っている。後輩思いの先輩だ。彼の優しさを見て、ユートもフ、と微笑み背後で見守る。

 

「ターンエンドだよ」

 

鮎川 アユ LP4000

フィールド『アクアアクトレス・グッピー』(攻撃表示)『アクアアクトレス・テトラ』(攻撃表示)

『水舞台』『水照明』セット1

『湿地草原』

手札2

 

「俺のターン、ドロー!『エヴォルド・カシネリア』を召喚!」

 

エヴォルド・カシネリア 攻撃力1600

 

現れたのは胴の長い爬虫類のモンスター。成程、フトシのデッキは爬虫類族から恐竜族へと進化させるデッキなのだろう。遊矢は冷静に分析し、その方向性を見抜く。

 

「オドケリスを守備表示に変更!そして永続魔法、『進化の代償』を発動し、バトルだ!ケラトでギッタンバッタへ攻撃!」

 

「特殊召喚されたギッタンバッタは1ターンに1度、戦闘では破壊されない!」

 

「だけどカシネリアの攻撃が残ってるよ!」

 

迫る追撃。ケラトでギッタンバッタのガードを崩し、カシネリアが破壊する。これで遊矢のモンスターは0、フィールド、ががら空きとなってしまった。

 

「バトルフェイズを終了するこの瞬間、モンスターを破壊したカシネリアをリリースし、デッキから『幻創のミセラサウルス』を2体特殊召喚!」

 

幻創のミセラサウルス 攻撃力1800×2

 

「モンスターを2体も……!?」

 

フィールドに登場したのはティラノサウルスをベースとし、トリケラトプスの兜、プテラノドンの腕、ステゴサウルスの背骨、アンキロサウルスの尾を組み合わせたような骨の恐竜。正に寄せ集めの幻の生物。フィールドに並ぶ2体を見て、遊矢の表情が驚愕に染まる。

 

「『進化の代償』の効果!『エヴォルド』モンスターの効果でモンスターが特殊召喚された場合、フィールドのカードを1枚破壊する!遊矢兄ちゃんのペンデュラムゾーンの『EMドラネコ』を破壊!」

 

「くっ――!」

 

「そして2体のミセラサウルスでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『エヴォルカイザー・ラギア』!!」

 

エヴォルカイザー・ラギア 攻撃力2400

 

「エクシーズ召喚ん!?」

 

フトシの眼前に星を散りばめた渦が広がり、2体のミセラサウルスが光となって吸い込まれ、集束、小爆発を引き起こし、現れたのは恐竜をも進化させた6枚の翼を広げ、炎の渦に包まれたミントグリーンのドラゴン。まさかのエクシーズモンスター。突如現れたその黒いカードに遊矢が目を丸くして驚愕する。

 

『やはりか……このモンスターは厄介だぞ遊矢。アクションカードを積極的に拾え』

 

「ん?ああ……って言うかエクシーズかぁ……何時の間に……」

 

「へへっ、勝鬨兄ちゃんにね!痺れるだろ?」

 

「あの野郎……!」

 

どうやら勝鬨にエクシーズを教わったらしい。その事実に遊矢は悔しいやら嬉しいやら複雑な表情でフトシを見る。自分だけでは無い。フトシ達もまた――成長している。

 

「ターンエンドだよ」

 

原田 フトシ LP4000

フィールド、『エヴォルカイザー・ラギア』(攻撃表示)『エヴォルダー・ケラト』(攻撃表示)『エヴォルド・オドケリス』(守備表示)

『進化の代償』セット2

手札1

 

「僕のターン、ドロー!僕は『レッド・ガジェット』を召喚!」

 

レッド・ガジェット 攻撃力1300

 

ガキン、『グリーン・ガジェット』の上に赤い歯車が降り立ち、音を鳴らして噛み合う。緑、赤と来て次は――。

 

「『レッド・ガジェット』の効果で『イエロー・ガジェット』をサーチ!」

 

イエローカラーの歯車がタツヤの手札におさまる。これこそが『ガジェット』の利点だ。召喚時、対応した『ガジェット』をサーチする事で手札を減らさず回り続ける。グッドスタッフにも投入される事もあり、初心者も扱いやすく、玄人でも唸らせるデッキだ。それに加え、『ガジェット』を使ったデッキには様々な型がある事を考えると幅も広い。タツヤの使う『ガジェット』はどの型かと遊矢はジッと観察する。

 

「魔法カード、『融合』!フィールドの『レッド・ガジェット』と手札の『ヴォルカニック・バレット』を融合!燃え上がり飛翔せよ!融合召喚!『重爆撃禽ボム・フェネクス』!!」

 

重爆撃禽ボム・フェネクス 攻撃力2800

 

「融合モンスター……!」

 

どうやらタツヤは融合を使うらしい。摩天楼の上空に業火を纏った不死鳥が飛翔する。しかし――タツヤは誰に融合を教わったのだろう。フトシと同じく勝鬨か、それとも柚子か素良、はたまた真澄だろうか。しかし、タツヤが口にした師は、意外な人物だった。

 

「大会には間に合わなかったけど……バレットさんに教わったんだ!」

「バレットさんが……!?」

 

『……』

 

バレット。それは遊矢を導いてくれた男であり、ユートに強さを示してくれた男でもあり――素良と同じく、アカデミアのデュエル戦士だった男――。

その事実に遊矢は驚き――しかし、同時にやっぱりと安心する。確かにバレットは敵だった。それでも彼は――悪い人では無いと。

 

「そっか……!」

 

「さぁ、バトルだよ!ボム・フェネクスで、ダイレクトアタック!」

 

「させない!アクションマジック、『回避』!これで――」

 

『いや、まだだ!』

 

「ここで『エヴォルカイザー・ラギア』のORUを2つ取り除き、効果発動!相手が発動した魔法、罠を無効にし、破壊する!」

 

「なっ、ぐぅぅぅぅぅっ!?」

 

榊 遊矢 LP4000→1200

 

ラギアが顎を開き、咆哮すると同時に大気が震撼してソニックブームを巻き起こし、遊矢の前に投影されたソリッドビジョンの『回避』が砕け散る。

盾が破壊された事でボム・フェネクスが真上を通り過ぎ、投下していった爆弾が遊矢のLPを削り取る。一気に2800の大ダメージ。3対1でこれは痛い。

 

「『ゴールド・ガジェット』で攻撃!」

 

「永続罠、『EMピンチヘルパー』!効果でデッキから『EMジンライノ』を特殊召喚!毎回助かります!」

 

EMジンライノ 守備力1800

 

迫る追撃、『ゴールド・ガジェット』の攻撃より遊矢を守ったのは毎度おなじみ、ピンチヘルパーとジンライノ。何時も遊矢の危機を救ってくれるカードだ。その信頼も厚い。

 

「『グリーン・ガジェット』を守備表示に変更し、魔法カード、『一時休戦』。全てのプレイヤーはカードを1枚ドローし、次のターン終了までダメージは0になる」

 

山城 タツヤ 手札0→1

 

榊 遊矢 手札1→2

 

鮎川 アユ 手札2→3

 

原田 フトシ 手札1→2

 

「ターンエンド。やっぱりこのターンじゃ決められなかったか……!」

 

山城 タツヤ LP4000

フィールド『重爆撃禽ボム・フェネクス』(攻撃表示)『ゴールド・ガジェット』(攻撃表示)『グリーン・ガジェット』(守備表示)

『補給部隊』セット1

手札1

 

「俺のターン、ドロー!流石にこんなに早く負けちゃうと、先輩の威厳が台無しだしね!俺は『EMブランコブラ』をセッティング!ペンデュラム召喚!『EMペンデュラム・マジシャン』!『EMインコーラス』!」

 

EMペンデュラム・マジシャン 攻撃力1500

 

EMインコーラス 守備力500

 

この窮地をどうにかする為、遊矢がペンデュラム召喚したのは2体のモンスター。先程の攻撃を防ぎ、後続の壁モンスターを呼び出したインコーラスと赤い衣装を纏った振り子を手にしたマジシャンだ。『EM』のキーカードと言えるこのモンスターにより、状況を乗り越える。

 

「ペンデュラム・マジシャンの効果でペンデュラムゾーンの2枚を破壊し、『EMドクロバット・ジョーカー』と『EMギタートル』をサーチ!ドクロバット・ジョーカーを召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800

 

フィールドにステップを刻み、現れたのは継ぎ接ぎだらけのハットと黒いマスクを被り、トランプのマークを散りばめた燕尾服を纏った道化師だ。ここから遊矢の黄金パターンが始まる。

 

「ドクロバット・ジョーカーの効果で『EMリザードロー』をサーチ!ギタートルと共にセッティングし、ギタートルのペンデュラム効果でドロー!更にリザードローのペンデュラム効果で自身を破壊し、もう1枚!」

 

榊 遊矢 手札1→2→3

 

「良し!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!エクシーズ召喚!現れろ!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力2500

 

遊矢の眼前に星を散りばめた漆黒の渦が広がり、その中に2体のモンスターが光となって吸い込まれ、小爆発を引き起こす。立ち込める黒雲を引き裂き、中より現れたのは刃のように鋭く、妖しく輝く牙と翼を広げた黒竜。

優秀な効果を持った召喚しやすいエクシーズモンスターだ。当然遊矢のデッキでも活躍している。最近は装備カードとなったりトゥーン化したりと散々な扱いでユートの胃がキリキリと痛んでいるが。

 

「ダーク・リベリオンのORUを2つ取り除き、効果発動!ラギアの攻撃力を半分にし、その数値分、攻撃力をアップ!トリーズン・ディスチャージ!」

 

エヴォルカイザー・ラギア 攻撃力2400→1200

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力2500→3700

 

ダーク・リベリオンの両翼より赤い雷が迸り、ラギアの翼を穿ち、力を奪う。強き者の力を得て圧政を打ち破る強力な効果。強化が永続なのも強みの1つだ。

 

「バトル!ダーク・リベリオンでボム・フェネクスを攻撃!反逆のライトニング・ディスオベイ!」

 

ダーク・リベリオンが天高く飛翔し、急降下して大地を抉りながら猛スピードで突き進む。響き渡る破壊音。そしてダーク・リベリオンは大きく跳躍してボム・フェネクスを牙で貫く。

 

「くっ――だけど『補給部隊』の効果で1枚ドロー!」

 

山城 タツヤ 手札1→2

 

「『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』をセッティング、カードを1枚セットしてターンエンド。この瞬間、『オッドアイズ』を破壊し、『EMラディッシュ・ホース』をサーチ!」

 

榊 遊矢 LP1200

フィールド『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』(攻撃表示)『EMインコーラス』(守備表示)

『EMピンチヘルパー』セット2

Pゾーン『EMギタートル』

手札2

 

ダーク・リベリオンの背に飛び乗り、遊矢は騒がしい夜の街の空を飛翔する。相手が子供とは言え3対1、出来る限り伏せたカードを温存し、アクションカードで凌ぎたい。それに彼等は強い。油断は出来ない。

 

「私のターン、ドロー!テトラの効果で『水舞台装置』をサーチし、発動!水属性モンスターの攻守を300アップし、『アクアアクトレス』は更に300アップする!」

 

アクアアクトレス・グッピー 攻撃力1800→2400

 

アクアアクトレス・テトラ 攻撃力1500→2100

 

アユのフィールドに最後の『アクアリウム』が発動される。水中に突如として現れたのはお伽噺に登場する竜宮城だ。3枚の『アクアリウム』が揃った事で幻想的に輝き、その美しさを増す。

 

「グッピーの効果で手札の『アクアアクトレス・アロワナ』を特殊召喚!」

 

アクアアクトレス・アロワナ 攻撃力2000→2600

 

グッピーの導きで現れたのは豪華な衣装を纏った巨大な魚の婦人。手に持ったパイプからはプクプクと泡が立っている。これでアユの『アクアアクトレス』は揃った。後は――新たに得た力を披露するだけだ。

 

「アロワナの効果で2体目のテトラをサーチ!そして『フィッシュボーグ―アーチャー』を召喚!」

 

フィッシュボーグ―アーチャー 攻撃力300→600

 

ここで登場したのはカワウソとアシカが入った2つの水槽を組み合わせ、ケンタウルスのような構造をした弓を引くチューナーモンスター。そう、チューナーだ。フトシがエクシーズ、タツヤが融合と来ればこうなる事は分かっていたが――やはり驚愕は隠せない。

 

「レベル2のグッピーとレベル1のテトラにレベル3の『フィッシュボーグ―アーチャー』をチューニング!シンクロ召喚!『瑚之龍』!!」

 

瑚之龍 攻撃力2400→2700

 

アーチャーが2つの光輪となって弾け飛び、グッピーとテトラを包み込む。そして閃光がリングを貫き、現れたのは竜宮を漂うオレンジ色の巨大な海龍。タツノコが進化したのような雄々しく、この舞台に相応しいモンスターだ。

 

「栄太お兄ちゃんに教えてもらいました!悔しいでしょうねぇ」

 

「アユ!メッ!悔しいでしょうねぇはメッ!お兄ちゃん許しません!」

 

どうやらシンクロを教えたのは九庵堂のようだ。フフンと胸をそらし、最早この塾では本家よりもおなじみとなった彼の台詞を放つアユに遊矢が悪影響を受けていると思って注意する。

無邪気で可愛らしい幼女が顔芸をすると思ったら大変である。早い内にその可能性を消しておきたい。意外と過保護な遊矢であった。

 

「えー、面白いのにー!」

 

「ダメったらダメ!フトシも勝鬨ったらダメだぞ!」

 

「何!?師匠が勝鬨兄ちゃんなら勝鬨っても良いのでは無いか!?」

 

「早速しない!」

 

「勲章ものだね……」

 

「全員余計な事も教えてマース!」

 

全員師匠の影響受けまくりである。子供は人の真似をして学ぶとは言うが、どうしてこう特徴的過ぎる部分を受け継ぐのか。師匠が個性的なのがいけないのかもしれない。

 

「でも遊矢兄ちゃんだって真似するじゃん」

 

「俺は良いの!」

 

「沢渡の真似?」

 

「違う!」

 

かと言って遊矢の言い分も理不尽ではある。可愛い後輩には真っ直ぐ育って欲しいのかもしれないが、少々過保護だ。プンスカと沢渡のように怒る遊矢に、ユートが苦笑する。

 

『案外似ているぞ』

 

「ユートまで……」

 

「おっと、デュエルの途中だったね!私は手札を捨て、『瑚之龍』の効果でピンチヘルパーを破壊!」

 

「罠発動!『スキル・プリズナー』!ピンチヘルパーを守る!」

 

「ならバトル!アロワナでダーク・リベリオンへ攻撃!」

 

「アクションマジック、『回避』!」

 

ダーク・リベリオンに騎乗している事で空中に浮かぶアクションカードを掴み取り、デュエルディスクに叩きつける。『水照明』がある限り、アロワナは戦闘時に攻撃力が5600に跳ね上がる。そうなれば大ダメージは避けられないだろう。

 

「『瑚之龍』でインコーラスに攻撃!」

 

「インコーラスの効果で『EMロングフォーン・ブル』を特殊召喚!」

 

EMロングフォーン・ブル 守備力1200

 

『瑚之龍』がそのアギトから巨大な泡を作り出し、インコーラスを閉じ込め、爆発させる。しかしその犠牲は無駄にならない。3羽の囀りは電波となって次のモンスターに届き、頭にかけた受話器を鳴らしながら牡牛が登場する。

 

「ロングフォーン・ブルの効果で『EMバリアバルーンバク』をサーチ!」

 

「私はこれでターンエンド!」

 

鮎川 アユ LP4000

フィールド『瑚之龍』(攻撃表示)『アクアアクトレス・アロワナ』(攻撃表示)

『水舞台』『水舞台装置』『水照明』セット1

『湿地草原』

手札2

 

「俺のターン、ドロー!ラギアを守備表示に変更!俺はオドケリスをリリースし、罠発動!『突然進化』!デッキから『エヴォルダー・ウルカノドン』を特殊召喚!」

 

エヴォルダー・ウルカノドン 攻撃力1200

 

オドケリスが脱皮し、中より進化し、姿を見せたのは青い鱗の巨大な竜脚類。これでまたレベル4のモンスターが揃ったが――今はまだエクシーズする時では無い。彼のデッキにはラギアは1枚しか入ってないのだ。

 

「バトル!ケラトでロングフォーン・ブルへ攻撃!」

 

ドスドスと地鳴りを響かせ、肉食恐竜がその脚でロングフォーン・ブルを踏みつけて捉え、口から炎のブレスを放つ事で丸焼きにする。

 

「ケラトの効果で『エヴォルド・ラゴスクス』をサーチ!メインフェイズ2、2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『エヴォルカイザー・ドルカ』!」

 

エヴォルカイザー・ドルカ 攻撃力2300

 

第2の皇帝は鰐のように鋭い歯を持つ純白のドラゴン。ラギアが炎の渦を纏っているのに対し、このカードは身体中から火の粉を降らせている。

 

「モンスターをセットしてターンエンド!」

 

原田 フトシ LP4000

フィールド『エヴォルカイザー・ラギア』(守備表示)『エヴォルカイザー・ドルカ』(攻撃表示)セットモンスター

『進化の代償』セット1

手札3

 

「僕のターン、ドロー!僕は『イエロー・ガジェット』を召喚!」

 

イエロー・ガジェット 攻撃力1200

 

タツヤのフィールドに現れたのは黄色い身体を持ち、側部と下半身から歯車を回したモンスターだ。これで『ガジェット』モンスターは一周した事になる。

 

「効果で『グリーン・ガジェット』をサーチ!そして500LPを払い、墓地の『ヴォルカニック・バレット』の効果で同名カードをサーチ!」

 

山城 タツヤ LP4000→3500

 

「魔法カード、『手札抹殺』!これで手札を交換!そして魔法カード、『融合回収』で『ヴォルカニック・バレット』の『融合』を回収し、発動!フィールドの『イエロー・ガジェット』と手札の『ヴォルカニック・バレット』で融合!融合召喚!『起爆獣ヴァルカノン』!」

 

起爆獣ヴァルカノン 攻撃力2300

 

現れたのは鋼鉄の肉体に爆弾を抱いた竜のようなモンスター。因みに起爆獣だと名乗っているが、地属性だ。恐らくは地雷のようなモンスターなのだろう。

 

「ヴァルカノンの効果でダーク・リベリオンを対象とし、このカードと共に破壊!」

 

「墓地の『スキル・プリズナー』を除外し、ダーク・リベリオンを守る!」

 

「惜しい――!僕は『ゴールド・ガジェット』を守備表示に変更し、ターンエンド」

 

山城 タツヤ LP3500

フィールド『起爆獣ヴァルカノン』(攻撃力)『ゴールド・ガジェット』(守備表示)『グリーン・ガジェット』(守備表示)

『補給部隊』セット1

手札3

 

子供とは思えない見事な戦略と攻防、それは徐々に遊矢を追い詰めていく。額に汗を浮かべ、不適に笑う遊矢。そう言えば――まだ、彼等が何故自分にデュエルを挑んだのかを聞いていない。尤も――察しはついているが。

 

「なぁ、何でいきなりデュエルを挑んで来たんだ」

 

「……それは……」

 

言い淀むアユ。彼女にしては暗い表情だ。言い辛い事なのだろう、フトシも顔を伏せる中、タツヤが覚悟を決めた表情で語り出す。

 

「遊矢お兄ちゃんを止める為だよ」

 

「タツヤ……!」

 

表情を歪ませ、泣きそうな顔で、唇を噛みながら彼は言う。遊矢を止める為だと。ああ、やはりそうなのだろう、予想通りだ。だからこそ、辛い、彼等にこんな表情をさせてしまう自分が嫌になってしまう。

 

「アカデミアって奴等はこの街に侵略して、暗次お兄ちゃんをカード化したって!柚子お姉ちゃんを拐っていったって!だから、だから……!遊矢お兄ちゃん達もそうなっちゃうんじゃないかって!そんなの嫌だから!勿論コナミお兄ちゃんや権現坂お兄ちゃん、セレナお姉ちゃんにも行って欲しくない!行かなくて良いじゃないか!態々遊矢お兄ちゃん達が行かなくたって、他の人が何とかしてくれる筈だから……だから――僕達は遊矢お兄ちゃん達を止めるんだ!」

 

大切な人が傍にいなくなってしまったから、遊矢も、と不安に駆られてしまったのだろう。込み上げる涙を堪え、覚悟をした表情で遊矢を見つめる子供達。仕方ない事だ。犠牲者が出てる今、自分もそうなってしまう可能性は確かにある。それが怖くて、彼等は遊矢をこの遊勝塾に留めようとする。

 

だけど――遊矢は嬉しいと思うと同時に、嫌だと感じる。折角成長した彼等とデュエルするのに、泣き顔なんて嫌だから。先輩として教えて上げよう。遊勝塾の信条を。笑顔で、見送って欲しいから――。




ただでさえミスが多いのに更にミスりやすいバトルロイヤルを行う無謀な挑戦。
と言う訳で今回から遊矢君とコナミ君、スタンダード最後のデュエルに入ります。この2戦が終わったらバトルロイヤルは当分ありません。もうやだ!小生バトルロイヤルやだ!
アユちゃんに瑚之龍を使って欲しかったから召喚法はバラけさせました。バハシャ?餅カエル?ははは、何それ(白目)。
タツヤ君のデッキがブンボーグじゃないけど許してね。あの話より早く作っちゃってたから。

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