遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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アニメARC-V完結。凄い駆け足展開を見た、正しくソードマスタートマト。あそこまでやったら最後は不思議パワーで遊矢、柚子シリーズを分裂させても良かったんじゃ。ズァークさぁん。
色々ありましたが今はヴレインズが楽しみ。サイバースルゥースの新作も楽しみです。


第83話 何度も何度も同じ手を

ペガサスの来日より2日が過ぎた。彼はストロング石島の紹介の下、LDSへと招待され、「人々をカード化するなんて許せマセーン」とその知識をカード化を解く為に振るってくれている。聞いた所では遊矢とデニスの師にもなっているらしい。

 

因みに今、ランサーズは交流と実力をアップする為、短期間ながら合宿のようなものをしている。いきなり絆も何もない者達では連携も取れないと考えての事だろう。

 

ランサーズに選ばれたのは10人。榊 遊矢、赤馬 零児、権現坂 昇、沢渡 シンゴ、風魔 月影、赤馬 零羅、セレナ、デニス・マックフィールド、黒咲 隼、そして――アリト。……お気づきだろうか?そう、ランサーズの中にコナミが入っていない事を。実はこれに一番驚いたのはコナミだ。

 

生き残ったデュエリストでランサーズ作るよ!→暗次が自分のせいでカード化されてそんな気になんねぇ!→沢渡さんのぉ!レジェンド励ましデュエルゥ!→トゥーンだからスマイルデース!→カード化もペガサスが何とかしてくれそうだから改めてランサーズに入るぜ!→いやおめぇの席なんて元々ねぇからぁ!の6連コンボである。酷い。

 

無論遊矢達は何故なのかと零児を追求したのだが――曰く、目の前で犠牲を出さずに生き残った者と違い、コナミは助けられて、目の前で犠牲を出してここにいる。ランサーズはランス・ディフェンス・ソルジャーズ。守れない者にその資格は無い。コナミには不確定要素も多い為、ランサーズには入れない、である。

因みに勝鬨や桜樹は最有力候補だったのだが、負傷の為、治療に専念している。刃達はスタンダード次元を守る為、残る選択をした。

だが、コナミには救済措置があった。コナミがランサーズ入りするにあたっての条件、それは――合宿中、1度でも零児にデュエルで勝つ事である。これだけならサンキュー零児、フォーエバー零児となるが――2日過ぎた今でも、コナミは零児に勝利出来ていない。今もLDSのデュエルコートにて、向かい合ってデュエルディスクを構え、デュエルをしているのだが――。

 

「やれ、『DDD双暁王カリ・ユガ』でダイレクトアタック!」

 

コナミ LP1400→0

 

「イワァァァァァクッ!!」

 

玉座に座った漆黒の王者が顎に手を当てたまま、右腕を上げ、人差し指を突き出して雷を放つ。真っ黒に淀んだそれはコナミの身体を頭から爪先まで駆け抜け、まともに受けたコナミは黒煙を纏いながらドサリと倒れ伏す。

これで20戦20敗。連続でデュエルをし、ダメージを受け続けた事で気絶するコナミ。零児は彼を一瞥もせずにデュエルディスクを下げ、背を向けてデュエルコートから退室する。

また負けた――LPがたったの100になるまで追い詰めた事もあった。しかし、決定的な何かがコナミを勝利から遠ざける。

 

「……今日はここまでだ。私としても、強力な戦力は欲しい。だが、今の君は矛となり得ない」

 

その言葉を最後に、零児はデュエルコートを後にする。そんな彼を迎えたのは、意外な人物だった。

 

「……瑠那に零羅か……どうだ、カード化の方は?」

 

「まだ何とも言えないわね。ところで彼は大丈夫なの?」

 

身に纏った白衣を揺らしながら、少女、瑠那が問いかける。その背後では帽子を目深に被り、更にその上からフードを被った、引っ込み思案な性格を見た目からも受け取れる幼い、ショタなのかロリなのか不明だが、零児の弟、もしくは妹である零羅がオドオドとコナミを覗いている。

 

「……兄様……あの人……」

 

「ああ、コナミか……そうだな、お前も話してみると良い。良い刺激となるだろう」

 

そう言って零羅の頭を一撫でし、普段の彼からは想像もつかない優しい表情を見せる。それが余程意外だったのか、当然瑠那は目を見張って零児を見つめる。

 

「……何だ……?」

 

「いえ……失礼だけど、貴方ってそんな顔も出来るのね……」

 

「……そう、だな。私も社長やプロデュエリストとして張りつめているが……流石に家族と呼べる者には甘い。友人と呼べる者もいないから余計に、な。ただ――彼とのデュエルは楽しめた……後は頼む」

 

少しだけ、ほんの少しだけ彼らしからぬ弱音……だろうか。を吐き出し、ツカツカと廊下を突き進む零児。彼も一応は少年と言う事だろうか。ままならないものだと考えながら、瑠那はコナミへと視線を移す。さて、まずは彼を運ぶ所からか。

ロンググローブをしっかりと着け直し、ふんすと鼻を鳴らす瑠那の姿と、それをきょとんと見つめる零羅の姿が、そこにあった――。

 

――――――

 

混濁し、微睡む意識。最初に目に写ったのは、暗い暗い、光が全くない空間。ああ、これは夢だ、と即座に理解する。酷い悪夢、思わず溜め息をついてしまう。こんな場所には夢であろうと1秒たりともいたくない。そんな事を考えていると、眼前に一筋の光が差し込む。

光はふわふわと粘土のように形を変え、不恰好な人型となり、こちらへ手を伸ばす。

彼はそれを――受け取って――ムニュリと、柔らかい感触に手が包まれた。……ムニュリ?はて、何なのだろうか?この掌をも覆うような質感は。ずっと触っていたいような――瞼を、開けると――山があった。高くそびえ立つ山岳。それを掴んだ自分の手。視線を更に上に向けると――頬を上気させ、ハァ、と艶やかな息を吐き、ピクリと肩を震わせる瑠那――ではなく、赤馬 日美香と目が合った。

 

「……駄目、ですわ。私には、夫と息子が……っ!」

 

「……り、立派なものをお持ちで……」

 

エロい状況なのだが、酷い目眩を覚えるのは何故。コナミは直ぐ様手を放し、膝枕してくれていたであろう日美香から離れる。日美香が何故か名残惜しそうに「あっ……」と声を漏らすが聞かなかった事にしておく。

立ち上がり、帽子を被り直すと――今度はニヤニヤとコーヒーカップを持ちながらこちらに笑みを向ける瑠那と、その背後に隠れ、ビクビクと怯えながら目を向ける零羅と目が合った。

 

「……」

 

「……」

 

「こら、零羅を睨んでんじゃないわよ。マナーモードみたいに震えてんじゃないの」

 

「何故お前じゃないんだお前じゃ。しかし零羅……?ああ、赤馬の」

 

何故膝枕をしているのが瑠那じゃないのかとぶつくさと言いながら、コナミはじっ、と零羅を見る。すると零羅がビクゥッと肩を震わせ、3歩程後退する。……どうやら怯えられているようだ。権現坂や月影達に対する態度とは全く違う。少し面白くなって来た。コナミはジリッ、とゆっくり零羅に近づく。

 

「ッ……!」

 

すると零羅もゆっくりと後退する。面白い。猫か何かの小動物のようだ。

 

「……」

 

「ッ……!」

 

「……何をしているんだ貴様等は……」

 

するとコナミの背後から呆れたような声がかけられる。反射的にコナミが振り向くと、そこにいたのは――。

 

「ユ○黒咲……」

 

「誰がユ○黒咲だ」

 

何時ものコートとスカーフのレジスタンススタイルではなく、ラフな衣装に身を包んだ、黒咲 隼だった。

 

「どうしたの隼?こんな所で」

 

「ああ、沢渡とのデュエルが終わったから少し休憩にな。お前は……今日も赤馬とデュエルか。それで、結果は?」

 

「今日も全敗よ。良いトコまで行っても勝ちまではどうしても漕ぎ着けないって感じね」

 

「やはりか……おい、赤いの」

 

今日もコナミが零児に全敗したと聞き、溜め息をつく隼。どうやら彼なりにもコナミの事を心配してくれているようだ。接点は余りないように見えるが。

 

「丁度沢渡の相手には飽きていた所だ。俺としても赤馬には一泡吹かせてやりたいしな。お前を鍛えてやる」

 

「……何……?」

 

突然コナミに挑戦を叩きつけ、ついて来いと促す隼。しかしコナミには何故彼がコナミにそこまでしてくれるのか、見当もつかない。すると隼はコナミの表情から察したのか、ムスッとした表情となる。

 

「……勘違いするな、お前がランサーズに入らないと、遊矢が悲しむ。それに――仲間には手を差し伸べるのは、当然だ」

 

そう言ってコナミから視線を外し、ツカツカとデュエルコートまで歩んでいく隼。彼も、遊矢とのデュエルで変わったと言う事だろう。誰かを信頼し、手を差し伸べる。それは今までの彼では想像もつかない事だ。良い方向に変わった仲間を見て、瑠那がフッ、と微笑む。

 

「……隼、貴方疲れてるのよ」

 

「どう言う意味だ」

 

どうにも瑠那には、綺麗な黒咲と言うのは気味が悪かった。だからと言ってこの態度は無いだろうが。

 

――――――

 

「……そう言えば、お前とデュエルをするのも、こうして話すのも初めてか」

 

「……フン、俺は初めてと言う気分では無いがな」

 

そんなこんなでLDSデュエルコート。コナミはまたこの場所に舞い戻っていた。眼前にはデュエルディスクを構える隼。

見た目的にはラフな姿に加え、眉根の皺も取れ、張りつめた空気も無い。正に綺麗な黒咲。だが――実力はむしろ、上がっている。やらなきゃいけない事をやる人間と、やりたい事をやる人間では心の有り様が違うだろう。

 

「お前とは1度デュエルがしたかった」

 

「そうか、俺もだ……!」

 

たがいに歯と闘志を剥き出しにして、デュエルディスクを構える。準備は万端、管制室に待機した瑠那はそれを見てアクションフィールドを展開させる――その前に、背後でちょこんと白衣の裾を掴む零羅へと視線を移し、優しく微笑みかける。

 

「見ていなさい零羅。きっとコナミのデュエルは貴方のデュエルの良い刺激になる筈よ」

 

「……うん」

 

「良い子ね。じゃあ、アクションフィールド、展開!」

 

カチリ、瑠那がボタンを押すと共にリアルソリッドビジョン投影器が起動し、音を立てて光の粒子がフィールドを塗り替え、球状のドームが出現する。アクションフィールド、『エクシーズ・テリトリー』。隼にとって有利に働くフィールドだ。

 

「闘いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」

 

「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」

 

「フィールド内を駆け巡る!」

 

「見よ、これぞデュエルの最強進化形!」

 

互いにアクションデュエルの口上を紡ぎ、その闘志を燃やしていく。早くデュエルがやりたくて堪らない。その表情からもそれが窺える。

 

「「アクショーン……デュエル!!」」

 

先攻はコナミだ。トレードマークの赤帽子を被り直し、上から装着したゴーグルをバチリとゴムを引っ張り、手を離す。デッキから5枚のカードを引き抜き、直ぐ様戦術を練る。相手は零児に匹敵する実力者だ。警戒を抱きながらも1枚のカードを翳し、デュエルディスクに叩きつける。

 

「魔法カード、『強欲で貪欲な壺』!デッキトップから10枚のカードを除外、2枚ドロー!」

 

コナミ 手札4→6

 

「魔法カード、『手札抹殺』!互いに手札を捨て、その枚数分をドロー。オレはここにアクションカードを加える。オレは『クリバンデット』を召喚」

 

クリバンデット 攻撃力1000

 

召喚されたのは黄色いスカーフを頭に巻き、眼帯を装着した、鋭い目付きの小さな毛むくじゃらの悪魔。コナミのデッキではキーとなるカードだ。初手で引き込めたのは大きい。

 

「まだだ、手札から2枚の『慧眼の魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

お次は得意のペンデュラム。しかも自身をエクストラデッキに溜めつつデッキから異なる『魔術師』に変化出来る強力なカードだ。この3枚が来ただけで良い手札だが――。

 

「2枚の慧眼を破壊し、デッキから『貴竜の魔術師』と『賤竜の魔術師』をセッティング!揺れろ、光のペンデュラム!虚空に描け魂のアーク!ペンデュラム召喚!2体の『慧眼の魔術師』!『E・HEROシャドー・ミスト』!」

 

慧眼の魔術師 攻撃力1500×2

 

E・HEROシャドー・ミスト 攻撃力1000

 

コナミのデュエルディスクの両端に、紅玉と翠玉の『魔術師』が設置され、その中心へ向かうように虹色の光が灯る。同時に背後に2つの柱が昇り、中にいる2体の『魔術師』が扇と音叉を振るい、上空に光の線が幾重も結ばれ、魔方陣が描かれる。そして振り子が揺れると共に魔方陣に孔が開き、3本の光が地に降りる。光の粒子が舞い散り、現れたのは2体の秤を持った銀髪の『魔術師』と美しい青髪を靡かせた黒い鎧の『HERO』だ。

 

「そして魔法カード、『モンスターゲート』!シャドー・ミストをリリースし、モンスターが出るまでデッキの上からカードを墓地に送る!1枚目!『スキル・サクセサー』!2枚目!『ギャラクシー・サイクロン』!3枚目!『スキル・プリズナー』!4枚目!『光の護封霊剣』!5枚目!『ダメージ・ダイエット』!6枚目!『光の護封霊剣』!7枚目!『相克の魔術師』!」

 

相克の魔術師 攻撃力2500

 

6枚ものカードを墓地に落とし、7枚目に選ばれた大剣を持った『魔術師』が現れる。とんでもない豪運だ。しかしここまでやらなければ隼を倒すなど、到底出来ない。

 

「シャドー・ミストの効果でデッキの『E・HEROエアーマン』をサーチ。2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!我が戦いはここから始まる、白き翼に望みを託せ、現れろ!No.39!エクシーズ召喚!希望皇ホープ!」

 

No.39希望皇ホープ 攻撃力2500

 

コナミの眼前の地に渦が広がり、星々の輝きを見せるその中へと『慧眼の魔術師』が光の線となって飛び込み、渦は集束、小爆発を起こし、1体のモンスターが姿を見せる。

純白の翼を広げ、黄金の鎧を纏い、左肩に39の紋様を刻んだ希望の皇。彼は腰に携えた2刀を引き抜き、自らの名を高らかに叫ぶ。

 

「ホープ……」

 

「更にここで魔法カード、『光の護封剣』を発動し、ターンエンドだ。この瞬間、『クリバンデット』をリリースし、デッキの上から5枚を捲り、『ブレイクスルー・スキル』を手札に。墓地に送られた『妖刀竹光』の効果で『黄金色の竹光』をサーチ」

 

コナミ LP4000

フィールド『No.39希望皇ホープ』(攻撃表示)『相克の魔術師』(攻撃表示)

『光の護封剣』

Pゾーン『貴竜の魔術師』『賤竜の魔術師』

手札3

 

フィールドには攻撃力2500のモンスターが2体、その内1体は攻撃を2回まで防ぎ、『光の護封剣』まである。消費した手札も3枚まで回復。しかも墓地には大量の墓地発動が可能なカード。今回は何時もに増してデッキが回りに回っている。

 

「俺のターン、ドロー!やるな……!魔法カード、『強欲で貪欲な壺』を発動!」

 

黒咲 隼 手札5→7

 

「『ネクロフェイス』を召喚!」

 

ネクロフェイス 攻撃力1200

 

「召喚時、互いに除外されたカードをデッキに戻し、その数×100攻撃力をアップ!」

 

ネクロフェイス 攻撃力1200→3200

 

「墓地の『シャッフル・リボーン』を除外、『ネクロフェイス』をデッキに戻してドロー!」

 

黒咲 隼 手札6→7

 

「魔法カード、『二重召喚』を発動。新たに得た召喚権で俺は『RR―バニシング・レイニアス』を召喚!」

 

RR―バニシング・レイニアス 攻撃力1300

 

隼のターンに移り、手札から現れたのは深緑に彩られた機械鳥。『RR』専用の『切り込み隊長』と言えるカードであり、その重要性も然りだ。天へ羽ばたくと同時に囀り、仲間を呼び込む。

 

「バニシング・レイニアスの効果で手札の『RR―トリビュート・レイニアス』を特殊召喚!」

 

RR―トリビュート・レイニアス 攻撃力1800

 

次は青いボディ持ち、ファンネルを周囲に待機させた機械鳥。これでレベル4のモンスターが2体。相変わらずの手腕である。

 

「トリビュート・レイニアスの効果でデッキの『RR―ミミクリー・レイニアス』を墓地に送り、ミミクリー・レイニアスの効果で自身を除外し、『RR―レディネス』をサーチ!そして永続魔法、『RR―ネスト』を発動!デッキから『RR―ファジー・レイニアス』をサーチ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実を暴き、鋭い鉤爪で栄光をもぎ取れ!エクシーズ召喚!飛来せよ!『RR―フォース・ストリクス』!」

 

RR―フォース・ストリクス 守備力2000

 

2体のモンスターが光となって天上で交差し、新たなモンスターを生み出す。姿を見せたのは梟型の『RR』。小さな体躯だが、その効果は実に優秀だ。

 

「フォース・ストリクスのORUを1つ取り除き、デッキから『RR―シンギング・レイニアス』をサーチし、特殊召喚!」

 

RR―シンギング・レイニアス 守備力100

 

RR―フォース・ストリクス 守備力2000→2500

 

次に現れたのは黒い猛禽。特殊召喚が容易な為、重宝するカードだ。

 

「そして『RR―ファジー・レイニアス』を特殊召喚!」

 

RR―ファジー・レイニアス 守備力1500

 

RR―フォース・ストリクス 守備力2500→3000

 

お次は紫の翼を翻した猛禽。これで再びレベル4が2体。しかし隼は手を止める事なく次に繋げていく。

 

「シンギング・レイニアスを対象に手札の『RR―ペイン・レイニアス』の効果発動!対象の攻撃力分のダメージを受け、このモンスターを特殊召喚し、レベルをシンギング・レイニアスと同じにする!」

 

黒咲 隼 LP4000→3900

 

RR―ペイン・レイニアス 守備力1000 レベル1→4

 

RR―フォース・ストリクス 守備力3000→3500

 

100のダメージを受ける代わりに、更なるモンスターを特殊召喚、そして――。

 

「ダメージを受けた事で手札の『RR―アベンジ・ヴァルチャー』を特殊召喚!」

 

RR―アベンジ・ヴァルチャー 守備力100

 

RR―フォース・ストリクス 守備力3500→4000

 

天上で羽ばたく4体目の『RR』。禿鷲をモチーフとしたモンスターだ。これでレベル4が4体。とんでもない展開力、『RR』の扱いにおいて、この男の右に出るものはいない。

 

「シンギング・レイニアスとファジー・レイニアスでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『RR―フォース・ストリクス』!」

 

RR―フォース・ストリクス 守備力2000→3500×2

 

「まだだ!残るペイン・レイニアスとアベンジ・ヴァルチャーでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『RR―フォース・ストリクス』!」

 

RR―フォース・ストリクス 守備力2000→3000×3

 

天空に並ぶ3体のフォース・ストリクス。群れなして現れる梟を前に、コナミがゴクリと喉を鳴らす。ワンターンスリーストリクス。毎回の如く初めのターンでこの布陣を敷くこの男はやはり手強い。しかも手札にはレディネス。余りのガチッぷりに瑠那が引く。

 

「何度も何度も初手フォース・ストリクス3体……他の手を知らないの?あいつは」

 

「2体のフォース・ストリクスの効果発動!ORUを取り除き、デッキから『RR―バニシング・レイニアス』と『RR―ミミクリー・レイニアス』をサーチ!更に墓地に送られたファジー・レイニアスの効果で同名カードをサーチ!」

 

サーチに次ぐサーチ。何かがおかしい。フィールドに3体のエクシーズモンスターを召喚しておいて全く手札が減っていない。コナミも相当だが、流石にここまではしていない。一体何がこの男をこれ程までにサーチに駆り立てるのだろうか。

 

「カードを2枚セットし、ターンエンドだ。『シャッフル・リボーン』の効果でアクションカードを除外」

 

黒咲 隼 LP3900

フィールド『RR―フォース・ストリクス』(守備表示)×3

『RR―ネスト』セット2

手札4

 

長いターンが終了し、コナミへと移る。隼のフィールドは万全と言って良い。せめてもの救いはほとんどが公開されている手札と言う事か。恐らくはセットされたカードの1枚はレディネスである事と4枚の手札の内、3枚はサーチを重ねた、『RR―バニシング・レイニアス』、『RR―ファジー・レイニアス』、『RR―ミミクリー・レイニアス』の3枚。今の布陣が崩されてもリカバリー出来るように展開出来るカードを引き込んだのだろう。

 

「オレのターン、ドロー!まずは墓地の『ギャラクシー・サイクロン』を除外し、『RR―ネスト』を破壊!そして『E・HEROエアーマン』を召喚!」

 

E・HEROエアーマン 攻撃力1800

 

『ギャラクシー・サイクロン』でサーチ、サルベージを潰し、コナミが召喚したのは背にファンの翼を伸ばした青い『HERO』モンスター。『HERO』モンスターの中でもシャドー・ミストと並んで優秀、かつ必須となるカードだ。

 

「エアーマンの召喚時、デッキから『E・HEROブレイズマン』をサーチ!ホープに『妖刀竹光』を装備し、魔法カード、『黄金色の竹光』でドロー!もう1枚だ!2枚ドロー!」

 

コナミ 手札2→4→5

 

「ペンデュラム召喚!『E・HEROブレイズマン』!」

 

E・HEROブレイズマン 守備力1800

 

振り子の軌跡を描き、フィールドに現れたのは炎の鬣を靡かせた真紅の『HERO』。コナミが最も重宝している『HERO』だ。彼の融合召喚の中核を担っていると言っても過言では無い。

 

「ブレイズマンの効果で『置換融合』をサーチ!そのまま発動!フィールドの『E・HEROエアーマン』と『E・HEROブレイズマン』で融合!融合召喚!『E・HERO Great TORNADO』!」

 

E・HERO Great TORNADO 攻撃力2800

 

コナミの背後に青とオレンジ、2色の渦が広がり、2体の『HERO』が混じり合う。そして中より荒れ狂う突風が吹き、竜巻となって隼のフィールドを呑み込む。風を引き裂き、姿を見せたのは黒いマントを揺らした風の『HERO』。コナミの持つ融合モンスターの中でも使用率の高いカードだ。最近では『スターダスト・チャージ・ウォリアー』と共に見事な連携を見せている。

 

「Great TORNADOの効果でお前のモンスターの攻守を半減する!タウンバースト!」

 

RR―フォース・ストリクス 守備力3000→1500×3

 

Great TORNADOが風を巻き上げて束ね、天空に並ぶ3体のフォース・ストリクスへと食らわせる。1つになり、巨大な竜のアギトと化したそれはフォース・ストリクスの羽をボロボロに傷つかせ、地へと降り落とす。見事な打開方、自身の効果で守備力を上げたフォース・ストリクスを弱体化させたが――。

 

「魔法カード、『ホープ・オブ・フィフス』!墓地の『E・HERO』5体をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

コナミ 手札3→5

 

「バトル!ホープでフォース・ストリクスへ攻撃!」

 

「罠カード、『RR―レディネス』を発動!このターン、『RR』は破壊されない!」

 

隼にはこの防御札がある。これがある限り、攻撃は隼には届かない。

 

「チッ、カードを3枚セットし、ターンエンドだ」

 

コナミ LP4000

フィールド『No.39希望皇ホープ』(攻撃表示)『E・HERO Great TORNADO』(攻撃表示)『相克の魔術師』(攻撃表示)

『妖刀竹光』『光の護封剣』セット3

Pゾーン『貴竜の魔術師』『賤竜の魔術師』

手札2

 

コナミのターンが終了すると同時に3体のフォース・ストリクスの傷が修復され、再び天へと羽ばたく。Great TORNADOの全体弱体化効果は1ターンしか続かない。次のターンは別の手を取らなければならないと言う事だ。勝負を急ぎ過ぎた。

 

「俺のターン、ドロー!3体のフォース・ストリクスのORUを取り除き、効果発動!デッキから『RR―バニシング・レイニアス』、『RR―ブースター・ストリクス』、『RR―トリビュート・レイニアス』をサーチする!魔法カード、『闇の誘惑』!カードを2枚ドロー!」

 

「罠発動、『撹乱作戦』!相手の手札を交換させる!」

 

黒咲 隼 手札7→9

 

「その後手札の闇属性モンスター、『ダーク・クリエイター』を除外、そして『RUM―レイド・フォース』を発動!フォース・ストリクスをランクが1つ上のモンスターへとランクアップさせる!」

 

「ッ!手札から『増殖するG』を捨てる!」

 

「構わん!1体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを再構築!勇猛なるハヤブサよ。激戦を切り抜けしその翼翻し寄せ来る敵を打ち破れ!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!現れろ!『RR―ブレイズ・ファルコン』!」

 

RR―ブレイズ・ファルコン 攻撃力1000

 

フォース・ストリクスが天高く羽ばたき、その翼を炎が舐めるように燃え上がる。その小さな身体を成長させ、赤い尾を伸ばして一筋の閃光がフィールドを駆ける。灼熱の炎を散らし、姿を変えるフォース・ストリクス。その名はブレイズ・ファルコン。新たなカードが、コナミの前に立ち塞がる。

 

「『増殖するG』で1枚ドロー!」

 

コナミ 手札1→2

 

「ブレイズ・ファルコンのORUを1つ取り除き、お前の特殊召喚されたモンスターを全て破壊!そしてその数×500のダメージを与える!」

 

「罠発動!『ブレイクスルー・スキル』!ブレイズ・ファルコンの効果を無効にする!」

 

「ならば魔法カード、『RUM―スキップ・フォース』を発動!ブレイズ・ファルコンを対象に、ランクが2つ高い『RR』へとランクアップする!1体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを再構築!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!『RR―アーセナル・ファルコン』!」

 

RR―アーセナル・ファルコン 攻撃力2500

 

コナミ 手札2→3

 

「召喚時、オレは永続罠、『安全地帯』を発動!アーセナル・ファルコンを選択!」

 

ブレイズ・ファルコンの効果が無効化され、隼が次に取った手は更なるランクアップ。それによってブレイズ・ファルコンの姿が淡く輝き、真紅の双翼が巨大化し、大型の猛禽へと進化する。現れたのはランク7、攻撃力2500と『RR』では珍しいモンスターだ。

 

「アーセナル・ファルコンのORUを1つ取り除き、効果発動!デッキから『RR―ネクロ・ヴァルチャー』を特殊召喚!」

 

RR―ネクロ・ヴァルチャー 守備力1600

 

RR―フォース・ストリクス 守備力3000→3500×2

 

コナミ 手札3→4

 

アーセナル・ファルコンの翼から弾丸のような物が撃ち出され、空中で分解して中から紫色の機械鳥が羽ばたく。ORUを使い、デッキからレベル4の鳥獣族を特殊召喚する強力な効果。召喚権を使わない展開だけで美味いのだが、デメリットが無い為、更に扱いやすい。

 

「そしてネクロ・ヴァルチャーをリリースし、墓地の『RUM―レイド・フォース』を回収し、フォース・ストリクスに発動!1体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを再構築!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!『RR―ブレイズ・ファルコン』!」

 

RR―ブレイズ・ファルコン 攻撃力1000

 

コナミ 手札4→5

 

「ブレイズ・ファルコンのORUを1つ取り除き、効果発動!」

 

「墓地の『ダメージ・ダイエット』を除外し、効果ダメージを半減する!」

 

コナミ LP4000→3250

 

ブレイズ・ファルコンの双翼よりミサイルが撃ち出され、コナミのフィールドのモンスターに襲いかかる。折角『ブレイクスルー・スキル』で1度防いだのにこれでは水の泡だ。

 

「墓地に送られた『妖刀竹光』の効果、『黄金色の竹光』をサーチ」

 

「墓地の『RUM―レイド・フォース』と手札の『RR―バニシング・レイニアス』を除外し、『RUM―スキップ・フォース』を回収し、発動!ブレイズ・ファルコン1体でオーバーレイ・ネットワークを再構築!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!『RR―アーセナル・ファルコン』!」

 

RR―アーセナル・ファルコン 攻撃力2500

 

コナミ 手札6→7

 

このターン、4回目のランクアップ。とんでもない速度でランクアップしていく男だ。一体何がそうさせるのか、ネクロ・ヴァルチャーのデメリットでさえ、彼を拘束出来ない。しかもアーセナル・ファルコンで再びネクロ・ヴァルチャーを出せば5回目のランクアップも可能となる、が――。

 

「安心しろ、このターンはここまでだ。あまり貴様に手札を渡したくもないしな。俺はこれでターンエンドだ」

 

黒咲 隼 LP3900

フィールド『RR―アーセナル・ファルコン』(攻撃表示)×2『RR―フォース・ストリクス』(守備表示)

セット1

手札5

 

「オレのターン、ドロー!」

 

これでコナミの手札は8枚。余り手札を渡したくないと言ったが、これでは1枚増えた所で変わらない。これだけあれば充分巻き返せるだろう。

 

「墓地の『置換融合』を除外し、Great TORNADOをエクストラデッキに戻し、ドロー!」

 

コナミ 手札8→9

 

「ペンデュラム召喚!『竜脈の魔術師』!『刻剣の魔術師』!『E・HEROブレイズマン』!『E・HEROフォレストマン』!」

 

竜脈の魔術師 攻撃力1800

 

刻剣の魔術師 攻撃力1400

 

E・HEROブレイズマン 守備力1800

 

E・HEROフォレストマン 守備力2000

 

3度目のペンデュラム召喚。コナミのフィールドに4本の柱が降り注ぎ、轟音を鳴らしてその姿を現す。剣を持った青年と少年、2体の『魔術師』に炎と樹、2体の『HERO』。計4体のモンスターだ。

 

「ブレイズマンの効果で『置換融合』をサーチ!そして刻剣とORUを持ったアーセナル・ファルコンを除外!」

 

「チッ!」

 

コナミからすれば最も攻撃力が高く、展開効果が残っているモンスターを除去したに過ぎないが、隼にとっては少し事情が異なる。アーセナル・ファルコンはORUを持った状態で墓地に送られればエクストラデッキの自身以外の『RR』を特殊召喚する効果がある。これで『RR―サテライト・キャノン・ファルコン』か『RR―アルティメット・ファルコン』を特殊召喚しようとしたのだが――これでは不発だ。

 

「『ジェット・シンクロン』を召喚!」

 

ジェット・シンクロン 攻撃力500

 

次は青と白のカラーリングのジェットエンジンを模したチューナーモンスターだ。優秀なレベル1チューナーであり、『ジャンク・コレクター』をサーチする為の手段としてデッキに投入している。

 

「レベル4の『竜脈の魔術師』にレベル1の『ジェット・シンクロン』をチューニング!シンクロ召喚!『ジェット・ウォリアー』!」

 

ジェット・ウォリアー 攻撃力2100

 

重厚な漆黒のボディを煌めかせ、コナミのフィールドにジェット機を模した機械戦士が足のブレードで地を削りながら降り立つ。更に背部より火炎を吹かせ、アーセナル・ファルコンへと向かい、猛スピードで突進する。

 

「『ジェット・ウォリアー』の効果でアーセナル・ファルコンをバウンス!そして『ジェット・シンクロン』の効果で『ジャンク・コレクター』をサーチ!更に『置換融合』を発動!フィールドの『E・HEROフォレストマン』と『E・HEROブレイズマン』で融合!融合召喚!『E・HEROノヴァマスター』!」

 

E・HEROノヴァマスター 攻撃力2600

 

ここで登場したのは赤と金の鎧に身を包み、マントを揺らした炎の『HERO』。融合『HERO』の中でもコナミが余り使用していないカードだ。理由はその属性と効果にあるのだろう。何とも不憫である。

 

「バトル!ノヴァマスターでフォース・ストリクスを攻撃!そしてノヴァマスターがモンスターを戦闘破壊した事で1枚ドロー!」

 

コナミ 手札5→6

 

ノヴァマスターがその手に炎を集束し、灼熱の剣を生成、フォース・ストリクスを切り裂く。これで隼のフィールドはがら空き。即座に2体目の炎の戦士に指示を出そうとしたその時――。

 

「速攻魔法、『RUM―デス・ダブル・フォース』を発動!破壊されたフォース・ストリクスを、倍のランクを持つエクシーズへとランクアップする!1体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを再構築!勇猛果敢なるハヤブサよ。怒りの炎を巻き上げ、大地をも焼き尽くす閃光となれ!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!飛翔しろ!『RR―サテライト・キャノン・ファルコン』!」

 

RR―サテライト・キャノン・ファルコン 攻撃力3000

 

まさかのランクアップ。天空より飛翔し、翡翠の光を放つ純白の猛禽がコナミの行方を遮る。攻撃力3000、これでは迎撃は出来ない。しかも――。

 

「サテライト・キャノン・ファルコンの効果でお前の魔法、罠カードを破壊する!」

 

「ッ!ペンデュラムと『光の護封剣』、……持っていってくれる……!」

 

チェーン発動を許さぬ『ハーピィの羽帚』。サテライト・キャノン・ファルコンの放つ熱戦により、全ての小細工は焼き尽くされ、焦土と化す。コナミの武器を破壊されてしまった。

 

「クッ……!カードを2枚伏せ、ターンエンドだ」

 

コナミ LP3250

フィールド『E・HEROノヴァマスター』(攻撃表示)『ジェット・ウォリアー』(攻撃表示)

セット2

手札4

 

息もつかせぬ熱きデュエル。互いに譲れぬカードの応酬を見て、管制室の零羅が本来の幼い子供としてキラキラと目を輝かせる。どちらが勝つのか分からない激闘に、彼もやはりデュエリストだからか無性にワクワクしているのだろう。

そんな零羅を見て、瑠那もまた微笑む。彼女とてこのデュエルを楽しんでいる。それと同時に、隼の変化にも驚いている。今までの隼ならば、ムスリとした表情で坦々とデュエルをしていただろうが、今は口元を吊り上げ、好戦的な笑みを貼りつけ、幼子のように楽しんでいる。

 

コナミの猛攻を凌ぎ、次は隼のターン、彼はデッキより1枚のカードを勢い良く引き抜く。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

勝利の女神が微笑むのは、どちらか。

 




4月から忙しくなるので次の更新は不定期です。早くなるか遅くなるか、どちらにせよ一週間投稿は続けたいと思っています。多分今まで通りだと思いますが何とも。

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