遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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アニメ最終回に覇王紫竜と覇王白竜が出ていてワーイワーイと盛り上がっています。でももうちょっと早く出して良かったんじゃない?何にせよアニメは次回で最終回かぁ、と思うと何だか変な気分です。
賛否両論ありますし、批判されるARC-Vですが寂しいものです。て言うかデュエルで白竜と紫竜出して人型の銀河眼っぽいの出してレイラに笑顔を与えて柚子を救うとか尺大丈夫なのん?
ハードスケジュールじゃん。

そして何だかんだ言ってヴレインズにワクワクしてます。


第82話 遊矢ボーイ

ペガサスには、2人の弟子がいた。まだサーカス団を結成していない、旅を始めたばかりの時である。彼は金銭を稼ぐ為、マジックショーやソリッドビジョンを使ったサーカスをやっていたのだが――それがとある者の目に止まった。

 

それこそが榊 遊勝ともう1人の男である。彼等はペガサスの技術に感銘を受け、頭を下げて弟子にさせてもらいたいと申し込んで来たのだ。勿論騒がしいのが嫌いではないペガサスはそれを了承し、2人を面白おかしくふざけながら鍛えた。

 

ペガサスのビックリ箱のような面白い、何が起こるか分からないデュエルと鋭い観察眼は遊勝に。強さと技術はもう1人へと受け継がれた。

それぞれの求めていたものは違っていたと言う訳だ。結果――強くなり、増長したもう1人の弟子はペガサスが大事に持っていた、ある1枚のカードを奪い、逃亡しようとした。ペガサスはそれを見抜き、彼の態度を改めさせようとデュエルを行ったが――結局得られたものは、勝利のみ。

 

彼の心までは救えず、彼は姿を消した。弟子を闇の道へ進ませてしまった。苦悩するペガサスに遊勝はある言葉をかけた。その言葉は僅かであるが、ペガサスの心を救った。自分1人で悩むペガサスの心を軽くした。

後悔は今だってしている、だけど――その言葉を思い出す度に、ペガサスはそれを胸に抱き、前に進めるのだ。そしてその言葉は、ペガサスにサーカス団を結成する、と言う目標を与えるのだが――それはまた、別の話。

 

――――――

 

「私のターン、ドロー!」

 

続く遊矢とペガサスのデュエル。ターンはペガサスへと移り、彼はデッキトップを勢い良く引き抜き、遊矢のフィールドを確認する。

攻撃力3000の『ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』と攻撃力2500の『EMスライハンド・マジシャン』、セットモンスターが1体。そして直接攻撃を無効にし、デッキの『EM』を呼び出す永続罠、『EMピンチヘルパー』と中身の分からないセットカードが1枚。

セットカードが気になる所だが、あれさえ無視すればピンチヘルパーでダイレクトアタックを1度無効にされても充分射程圏内だ。

 

だがそれでも油断は出来ない。デュエルは何が起こるか分からないのだ。

 

「『トゥーン・ブラック・マジシャン』の効果により、手札の『トゥーン・リボルバー・ドラゴン』を捨て、デッキから『シャドー・トゥーン』をサーチしマース!そのまま発動!『ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を対象とし、その攻撃力分のダメージを与えマース!」

 

「カウンター罠、『ダメージ・ポラリライザー』!効果ダメージの発動と効果を、無効にし、互いに1枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札0→1

 

ペガサス・J・クロフォード 手札2→3

 

『ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』の影が伸び、トゥーン化した黒いルーンアイズとなって遊矢の前に現れて熱線を放つ。3000のバーンダメージ、これを食らえば敗北確定。

直ぐ様遊矢は罠で凌ぐ。

瞬間、彼の周囲を障壁が覆い、熱線を打ち消した。

 

「バトルに移りマース!トゥーン・ダーク・リベリオンでルーンアイズへ攻撃デース!」

 

榊 遊矢 LP2600→1850

 

「ぐ――!」

 

トゥーン・ダーク・リベリオンがその翼を広げて身体を翻し、赤き血流を閃かせて鋭いアギトを地に突き立てる。そのまま猛スピードで地面のページを破りながら突き進み、バネのように大きく跳躍、ルーンアイズを破壊する。

対象を取れない、攻撃力3750のモンスター。一番攻撃力が高いモンスターでも3000しかない遊矢には手に余る。

 

「更に『トゥーン・ブラック・マジシャン』でスライハンド・マジシャンを攻撃!デッキトップを除外して破壊を逃れマース!『トゥーン・サイバー・ドラゴン』でセットモンスターへ攻撃!」

 

「セットモンスターは『EMインコーラス』!破壊された事でデッキから『EMソード・フィッシュ』を特殊召喚!」

 

EMソード・フィッシュ 守備力600

 

破壊された3羽のインコの囀りに応え、フィールドに飛び出したのはリーゼントにサングラスと不良のような太刀魚のモンスターだ。

 

「ソード・フィッシュが召喚、特殊召喚に成功した事で相手フィールドの全てのモンスターの攻守を600ダウンする!」

 

トゥーン・ブラック・マジシャン 攻撃力2500→1900

 

トゥーン・サイバー・ドラゴン 攻撃力2100→1500

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力3750→3150

 

ソード・フィッシュが分身し、弾丸のようにその身を撃ち出してペガサスのモンスターを弱体化させる。しかし遊矢のモンスターもソード・フィッシュのみとなってしまった。どうやら今回はモンスターへ攻撃を絞り、堅実な戦法で来たらしい。

遊矢のフィールドにはピンチヘルパーと『EMドラネコ』があった為、2回までダイレクトアタックを無駄撃ちさせられたのだが……良い勘をしている。

 

「カードを2枚セットしてターンエンドデース!さぁ、エンタメボーイ!ユーのちょっと面白い所、見せちゃってクダサーイ!」

 

ペガサス・J・クロフォード LP2700

フィールド『トゥーン・ブラック・マジシャン』(攻撃表示)『トゥーン・サイバー・ドラゴン』(攻撃表示)『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』(攻撃表示)

『コミックハンド』セット2

手札1

 

何とか勝機が見えて来た。対象に取れず、破壊も出来ない。ダイレクトアタックが可能なモンスター。それでもトゥーンはトゥーンだけでしか破壊出来マセーンじゃないだけマシだ。それに戦闘ダメージまでは防げない。対象を取らない効果も通用する。

一見無敵に見えるトゥーンにも――弱点はある。攻撃力をアップするのは『EM』の得意分野、エースカードの『オッドアイズ』もダメージ倍増効果がある。それならば遊矢のペースに持ち込める。

他のカードで出来ない事も、力を合わせれば――。

 

「ん――?」

 

『?どうした遊矢?』

 

ふと、違和感を感じた。何か、大事なものを見つけ、通り過ぎたような感覚。当たり前じゃない事を、当たり前だと思って、忘れてしまっているような、疑問を浮かべる遊矢に、ユートが心配の声をかける。

 

「いや、何でもない。俺のターン、ドロー!墓地の『置換融合』を除外し、『ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』をエクストラデッキに戻して1枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札2→3

 

「魔法カード、『金満な壺』を発動!墓地の『EMドクロバット・ジョーカー』、『慧眼の魔術師』、そしてエクストラデッキの『EMリザードロー』をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札2→4

 

「ペンデュラム召喚!『EMインコーラス』!『EMセカンドンキー』!『EMウィップ・バイパー』!」

 

EMインコーラス守備力500

 

EMセカンドンキー 攻撃力1000

 

EMウィップ・バイパー 攻撃力1700

 

ペガサスのトゥーンモンスターに対抗し、次々とコミカルで愛らしい『EM』達がフィールドに揃う。カラフルな3羽のインコと頼もしいロバ。そして毒々しい紫であるが、どこか愛嬌のある蛇だ。トゥーンと『EM』が威嚇し合う姿は何とも微笑ましい。

 

「セカンドンキーの効果でデッキの『EMドクロバット・ジョーカー』をサーチし、ソード・フィッシュの効果で相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力をダウン!」

 

トゥーン・ブラック・マジシャン 攻撃力1900→1300

 

トゥーン・サイバー・ドラゴン 攻撃力1500→900

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力3150→2550

 

ソード・フィッシュの効果により、ペガサスのモンスターが大きく弱体化する。自身を召喚し、他のモンスターを特殊召喚しただけで1200のダウン。それが全てのモンスターに降り注ぐのだ。惜しむらくはペンデュラムモンスターでない事か。

分身して切り刻まれるトゥーンモンスター。漫画の中の住人だからか、刃物を恐れてフィールドを駆ける。

 

「クッ、私のモンスターが……!」

 

『これでダーク・リベリオンの攻撃力は元々の数値まで近くなった……』

 

「ドクロバット・ジョーカーを召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800

 

「召喚時、『EMペンデュラム・マジシャン』をサーチ!そしてウィップ・バイパーの効果でセカンドンキーの攻守を入れ替える!」

 

EMセカンドンキー 攻撃力1000→2000

 

「カードを1枚セット、装備魔法、『魔導師の力』!セカンドンキーの攻撃力を2500アップ!」

 

EMセカンドンキー 攻撃力2000→4500

 

「バトルだ!ウィップ・バイパーで『トゥーン・サイバー・ドラゴン』に攻撃!」

 

「『トゥーン・キングダム』の効果は使いマセーン!」

 

ペガサス・J・クロフォード LP2700→1900

 

ウィップ・バイパーが『トゥーン・サイバー・ドラゴン』に絡み付き、締め上げる。ここで戦闘破壊しなければサンドバックになっている所だ。冷静な判断でダメージを防ぐ。

 

「ドクロバット・ジョーカーで『トゥーン・ブラック・マジシャン』を攻撃!」

 

「罠発動!『亜空間物質転送装置』!『トゥーン・ブラック・マジシャン』をエンドフェイズまで除外しマース!」

 

「ならセカンドンキーでダーク・リベリオンを攻撃!」

 

「罠カード、『ガード・ブロック』!ダメージを0にして1枚ドローしマース!ついでにデッキトップを除外し、戦闘破壊も防ぎマース!」

 

ペガサス・J・クロフォード 手札0→1

 

セカンドンキーが蹄を鳴らし、飛び上がってダーク・リベリオンを踏みつけ、ペラペラの紙のようになったダーク・リベリオンは元に戻り、目を白黒させて『トゥーン・キングダム』の中に逃げ込む。

 

「HAHAHAHAHA!面白いデース!」

 

「はは……っ!俺はこれでターンエンドだ!」

 

「この瞬間、『トゥーン・ブラック・マジシャン』はフィールドに戻りマース」

 

榊 遊矢 LP1850

フィールド『EMドクロバット・ジョーカー』(攻撃表示)『EMウィップ・バイパー』(攻撃表示)『EMセカンドンキー』(攻撃表示)『EMインコーラス』(守備表示)『EMソード・フィッシュ』(守備表示)

『魔導師の力』『EMピンチヘルパー』セット1

Pゾーン『EMギタートル』『EMドラネコ』

手札2

 

『EM』とトゥーンによる、面白くて微笑ましい戦闘。それを見てツボに入ったのか、ペガサスが腹を抱えて笑い、それにつられて遊矢も笑う。漸く――遊矢に明るさが戻って来た。

 

「フフ……やっと笑いマシタネ……エンタメボーイ……」

 

「え?あ……」

 

「ユーに何があったのかは分かりマセーン……デスガきっと、どうにも出来ない困難にぶつかったのデショウ。或いは――自分1人では処理しきれない多くの問題を突き出されたか……」

 

「……」

 

当たっている。素良を救えず、柚子を連れ去られ、バレットがアカデミアの人間だった。他にもカード化された人達や、怪我を負った人がいる。

遊矢の身体は1つだけだ。見えない所まで、手は届かない。どれだけ手を伸ばしても、その手の届かない範囲はきっとある。そんなどうしようも無い、どうすれば良いのか分からない事が遊矢を苦しめる。

 

「デスガ……何もその問題をユー1人で抱え込まないでクダサーイ。人1人出来る事等、限られていマース」

 

「だったら……だったらどうすれば……!」

 

「……かつて――私の弟子、遊勝はこう言いマシタ。人1人で出来る事は限られている。どうしても自分が出来ない事があれば、仲間を頼れば良い……と」

 

「とう、さんが――?」

 

突然ペガサスの口から行方不明の父、遊勝の名が出た事で遊矢がフリーズする。この男が、ペガサスが父の師。いや、今はそんな事よりも、その言葉。

 

「仲間を、頼る……」

 

「ええ、ユーにも友人がいるデショウ?あそこでユーのデュエルを見ている者達……諦めない事はきっと悪い事じゃありマセーン。デスガ、ユーが手を伸ばした事で、救われた人がいる。そしてその救われた人がまた、別の人に手を伸ばす。そうやって、バトンは渡り、輪は広がっていく。それはきっと――素晴らしい事デショウ?」

 

まるで、枝分かれする樹のような。遊矢が自分の手いっぱいに誰かを救い、その救った者達がまた、誰かを救う。広がっていく手。ああ、そうだ、遊矢はこの答えを、ずっと前から出していたのだ。

バレットとのデュエルの時、自分の力で誰かを笑顔に出来ないなら、誰かの力を借り、困難を乗り越えようと思ったように。自分1人で隼を救えないからこそ、ユートと力を合わせたように。疲れきった時、アリトを頼ったように。

 

忘れてしまった大事なものが、遊矢の胸に広がっていく。そう、何も1人で悩む事は無かった。自分にかかっていた霧が晴れ、ゴーグルを外してその視界に写ったものは――。

 

「権現坂……隼、母さん、塾長、タツヤ、フトシ、アユ、ミエル、沢渡、コナミ……ユート、ストロング石島、ペガサスさん……!」

 

この場にいない仲間達もいる。大事な仲間達を胸にし、この場にいる友の名を呼んでいく。皆、遊矢に頷き、笑顔を見せながら応えてくれる。

ああ、そうだ、こうして絆を繋いだのは、デュエルの力。デュエルでぶつかり合ったからこそ、互いの想いを吐き出すからこそ、デュエルは答えを出してくれる。

 

「皆……俺1人じゃアカデミアに立ち向かって、全員にデュエルの楽しさを知ってもらって、止める事は出来ない――だから!俺と一緒に!闘ってくれ!一緒に行けない人も、俺に、不甲斐ないこんな俺だけど、勇気を分けてくれ!」

 

『任せとけ!!!』

 

遊矢が言葉と言う名の、伸ばした手を取り、間髪入れずその場全員が合わせて叫ぶ。力を与え、支え合う。広がる輪はきっと、1人1人を強くしていく。今遊矢が強くなれば、皆もまた、強くなる。それが嬉しくて――笑ってしまう。

 

「ペガサスさん……皆、ありがとう……!」

 

「フフ、感謝するのは早いデース!ありがとうと言うならば、私にユーのエンタメデュエルを見せてクダサイ!遊矢ボーイ!」

 

「ッ――はいっ!」

 

「私のターン、ドロー!手札の『トゥーン・バスター・ブレイダー』を捨て、『トゥーン・ブラック・マジシャン』の効果でデッキより『レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン』を特殊召喚しマース!」

 

レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン 攻撃力2400

 

現れたのは『トゥーン・ブラック・マジシャン』に続き、それに比肩する、今は忘れられた伝説のデュエリストが使った、紅き眼の黒竜がトゥーン化したカード。トゥーン化して尚、その放つ気迫は劣らない。

 

「魔法カード、『貪欲な壺』を発動しマース!墓地の『トゥーン・バスター・ブレイダー』、『トゥーン・リボルバー・ドラゴン』、『トゥーン・サイバー・ドラゴン』、『トゥーン・マーメイド』、『トゥーン・仮面魔道士』をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

ペガサス・J・クロフォード 手札1→3

 

「『レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン』の効果で手札から『ブルーアイズ・トゥーン・ドラゴン』を特殊召喚しマース!」

 

ブルーアイズ・トゥーン・ドラゴン 攻撃力3000

 

並び立つ3体目の伝説。決闘王と互角に渡り合ったライバルの使った最強のドラゴン。その者曰く、惨めな姿、ペガサス曰く、愛らしい姿となった青き目の白龍が『ゲシシ』と笑いながらフィールドに登場する。『ブラック・マジシャン』、『ブルーアイズ』、『レッドアイズ』。トゥーン化しているが、この3体とその主を知っている者からすれば、この光景は夢のようであろう。

 

「何だろうな……何だかあのモンスター達、懐かしい……」

 

現れる3体を見て、遊矢の胸から、何故か懐かしいと言う想いが込み上げる。

 

「フフ、私も何だか懐かしい……!ではこのカードで皆を笑顔にして見せマショウ!魔法カード、『スマイル・ワールド』!」

 

「『スマイル・ワールド』……?」

 

ペガサスの手より、1枚の魔法カードがデュエルディスクに置かれる。何の変哲も無い、様々な表情が描かれたイラストのカード。何処かで見た事があるそのカードにより、フィールドに光の粒子が散り、笑顔が花咲き、敵味方問わず、フィールドのモンスターが笑顔になる。

 

「その効果により、フィールドのモンスターの攻撃力はその数×100、攻撃力をアップしマース!」

 

「俺のモンスターも……!?」

 

トゥーン・ブラック・マジシャン 攻撃力2500→3400

 

ブルーアイズ・トゥーン・ドラゴン 攻撃力3000→3900

 

レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン 攻撃力2400→3300

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力2550→3450

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800→2700

 

EMウィップ・バイパー 攻撃力1700→2600

 

EMセカンドンキー 攻撃力3500→4400

 

EMインコーラス 攻撃力500→1400

 

EMソード・フィッシュ 攻撃力600→1500

 

笑顔笑顔、笑顔の連打。これでもかと言う位にフィールド上に笑顔が咲き誇り、モンスター達が楽しそうに笑う。敵も味方もお構い無し。問答無用で笑顔にする。

 

『互いに攻撃力を上げるカード……何とも使い道に困ると言うか……微妙なカードだが……』

 

「トゥーンモンスターはダイレクトアタックが出来る……!」

 

「さぁ、バトルデース!『トゥーン・ブラック・マジシャン』でダイレクトアタックデース!」

 

「『EMドラネコ』のペンデュラム効果で防ぐ!」

 

「かわしマスカ……!ならダーク・リベリオンでセカンドンキーに攻撃デース!アクションマジック『ハイダイブ』を使い、攻撃力を1000アップ!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力3450→4450

 

榊 遊矢 LP1850→1800

 

「踏み止まりマシタカ……メインフェイズ2!魔法カード、『簡易融合』を発動!LPを1000払い、エクストラデッキからレベル5以下の融合モンスターを融合召喚しマース!融合召喚!『サウザンド・アイズ・サクリファイス』!!」

 

ペガサス・J・クロフォード LP1900→900

 

サウザンド・アイズ・サクリファイス 攻撃力0

 

現れたのはペガサスの切り札。これまでのトゥーンモンスター達とは全く異なる恐ろしい容貌のカード。長い首に甲虫のような身体。野太い腕を持ち、身体中に千の眼を宿した邪神。醜悪でおぞましいそのモンスターはペガサスのフィールドに降り立ち――即座に『スマイル・ワールド』の影響を受けてか、仲間の笑顔にあてられてか、全ての眼をニッコリと笑わせた。

 

「キモッ!?」

 

『千の眼が全て笑顔に……『スマイル・ワールド』、恐るべし……!』

 

「HAHAHAHAHA!これがやりたかっただけデース!さて、『サウザント・アイズ・サクリファイス』の効果でこのカード以外のモンスターは表示形式を変更出来ず、攻撃も出来マセーン!そしてソード・フィッシュを装備カードとして吸収!攻守をコピーしマース!」

 

サウザント・アイズ・サクリファイス 攻撃力0→600

 

「ターンエンド。この瞬間、『簡易融合』の効果で『サウザンド・アイズ・サクリファイス』は破壊されマース!さぁ、遊矢ボーイ!ユーのターンデース!」

 

ペガサス・J・クロフォード LP900

フィールド『トゥーン・ブラック・マジシャン』(攻撃表示)『ブルーアイズ・トゥーン・ドラゴン』(攻撃表示)『レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン』(攻撃表示)『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』(攻撃表示)

『コミックハンド』

手札0

 

強力なモンスター達と恐ろしい戦術、それら全てが見事に融合し、遊矢を追いつめていく。

だけどそれが――遊矢を熱くさせる。どうしようも無い逆境に、遊矢は堪え切れず嬉しそうに叫ぶ。

言っている、遊矢のエンタメデュエリストの本能が、もっと楽しめと。言っている、遊矢のカード1枚1枚が。力を合わせて闘おうと。ゴーグルはもう、視界を覆わない目に見える全てを、このワクワクを、自分の目で確かめたいから。

 

「Ladies and Gentlemen!さぁ!お楽しみは、これからだぁっ!!」

 

デッキトップよりカードを勢い良く引き抜き、虹色のアークが宙に描かれる。もう雨は降り止んだ。後には虹がかかり、その橋を進むのみ。

 

「ペンデュラム召喚!『EMペンデュラム・マジシャン』!『時読みの魔術師』!」

 

EMペンデュラム・マジシャン 攻撃力1500

 

時読みの魔術師 攻撃力1200

 

「その効果でペンデュラムゾーンの2枚を破壊し、デッキから『EMラフメイカー』と『EMバリアバルーンバク』をサーチ!そして時読みとペンデュラム・マジシャンをリリースし、アドバンス召喚!来てくれ。誰もを笑顔にしてくれる楽しい仲間。『EMラフメイカー』!」

 

EMラフメイカー 攻撃力2500

 

現れたのは遊矢の最後のモンスター。ハットを被り、ステッキとトランプを持つ『EM』が降り立った途端、その背後から笑顔が咲き誇る。

 

「そして魔法カード、『マジカル・スカイ・ミラー』を発動!このカードは1ターン前に発動された相手の魔法カードを発動出来る!俺が発動するのは――『スマイル・ワールド』!!」

 

EMラフメイカー 攻撃力2500→3400

 

EMインコーラス 攻撃力500→1400

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800→2700

 

EMウィップ・バイパー 攻撃力1700→2600

 

トゥーン・ブラック・マジシャン 攻撃力1300→2200

 

ブルーアイズ・トゥーン・ドラゴン 攻撃力3000→3900

 

レッドアイズ・トゥーン・ドラゴン 攻撃力2400→3300

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力2550→3450

 

今度は遊矢の手から発動される『スマイル・ワールド』。その効果にで再びフィールドに笑顔が咲き、笑い合う。何の変哲も無い、大した効果もないこのカード。だけど、このカードだけでなく、どんなカードにだって人を笑顔にする可能性はある。

1枚だけじゃそれは遠い事かもしれない。だけど――デュエルは1枚だけのカードじゃ闘えない。他のカードと組み合わせる事で、無限の可能性を引き出すのだ。

それは人とて同じ、1人じゃ無理でも――皆となら、何だって出来る。

 

「バトル!ラフメイカーで『トゥーン・ブラック・マジシャン』を攻撃!この瞬間――ラフメイカーの効果発動!このカードの攻撃力は、このカードと相手フィールドの元々の攻撃力より高い攻撃力を持つモンスターの数×1000アップする!この条件に当てはまるのは4体、よって――」

 

EMラフメイカー 攻撃力3400→7400

 

相手の力も借り、遊矢は更に進化を果たす。ラフメイカーより放たれる雷、それはペガサスに襲いかかり――激突、大爆発を起こす。

 

「ラフィングスパーク!!」

 

巻き起こる黒煙。決まった――誰もがそう思った時――黒煙が爆風に引き裂かれ、中より空気を読まぬ笑い声が木霊する。

 

「アクションマジック――『大脱出』!バトルフェイズを終了させマース!」

 

「――ははっ!」

 

ぱんぱかぱーん、両手を広げ、ペガサスがニヤリと口元に笑みを浮かべながら奇跡の『大脱出』を果たす。ああ、強い。思わず遊矢が笑いを溢す。この人は何て――何て楽しそうにデュエルをするのだろうと。

 

「ドクロバット・ジョーカー、ウィップ・バイパーを守備表示に変更し、カードを1枚セットしてターンエンドだ!楽しい、楽しいよペガサスさん!」

 

榊 遊矢 LP1800

フィールド『EMラフメイカー』(攻撃表示)『EMインコーラス』(守備表示)『EMドクロバット・ジョーカー』(守備表示)『EMウィップ・バイパー』(ジョーカー表示)

『EMピンチヘルパー』セット2

手札1

 

「私も楽しい、遊矢ボーイ。素晴らしいエンタメデュエルをありがとう――ドロー!魔法カード、『ハーピィの羽帚』!さぁ!決着を!全てのトゥーンモンスターで、ダイレクトアタック――!」

 

コミックの世界から、ダーク・リベリオンが、『レッドアイズ』が、『ブルーアイズ』がそのアギトから光輝くエネルギー球を『トゥーン・ブラック・マジシャン』の杖へと集束させていく。先程のラフメイカーにも勝る凄まじい魔力弾。『トゥーン・ブラック・マジシャン』は『ギヒヒ』と、特徴的な笑い声を漏らし、遊矢へと撃ち出し――魔力弾が弾け、クラッカーとして鳴り響く。

 

榊 遊矢 LP1800→0

 

勝者、ペガサス・J・クロフォード――。

 

――――――

 

「遊矢ボーイ、素晴らしいデュエルデシタ。やはりこのカードは、ユーが持つべきデース」

 

デュエル終了後、アクションフィールドが光の粒子へ消える中、ペガサスは遊矢へと近づき、1枚のカードを渡して来た。そのカードはやはり、想像通りのカード。

 

「『スマイル・ワールド』……」

 

「これはユーの母が持っていたカードデース!ちょっとくすねマシタガ……恐らく遊勝のカードデショウ」

 

「父さんの……!?って言うか父さんの知り合いなの!?」

 

そう言えば、と遊矢は『スマイル・ワールド』を受け取りながらペガサスに問いかける。デュエル中にも彼は遊勝の事を知っているような口調をしていた。一体彼は何者かと今更ながらに尋ねると、彼は少し困ったような表情を浮かべ、悪戯っ子のように微笑む。

 

「積もる話もあるデショウが……まずは私の目的を話しながらでも応えマショウ」

 

「目的……?」

 

彼は語る。彼が舞網市に来た、その理由を。いや、ここに来て、遊矢とデュエルをすると言う他に、新たに出来た目的、それは――。

 

「カード化された人達――それを、戻せるかもしれマセーン」

 

その言葉に、ドクン、とコナミの胸が脈を打つ――。

 

 

 

 

 

 




人物紹介16

ペガサス・J・クロフォード
所属 ペガサスサーカス団
元カードの制作者と言う噂のあるサーカス団団長。本作では過去に遊勝の師をやっており、現在はおっさんばっかでワイワイとサーカス団をやっている。陽気な性格でデースマースと胡散臭い日本語で喋る。流行りのちょっとズレた外国人女子の大本なのかもしれない。英国生まれのペガサスデース。
根は善人だが良く人をからかう傾向にあり、何時も団員達を振り回している。高いカリスマを持っており、何処か人を惹き付ける。Rではそのせいでクレイジーサイコヤンデレホモに女子校生にされそうになった。やはりペガサスは外国人女子の大本……(確信)。クレイジーサイコヤンデレホモが出るかは不明。
使用デッキは『トゥーン』。エースカードは『トゥーン・ブラック・マジシャン』。

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