遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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遊矢対デニスを見て、モチベーションがアップしまくり、チャレンジャーにホープとゼアルのオマージュも良かったです。だからEmの未OCGカードを……(絶望的)。



第79話 アニキ

「ふざけんじゃねぇぞテメェ!!」

 

LDS内の長い廊下にて、少年の憤怒が籠った怒声が響き渡る。それと同時にガンッ、と1人の少年が壁に叩きつけられ、力無く背を預ける。

 

何故こんな事になってしまったのだろう?と2人の少年の固い絆を知っている3人は、怒り狂う少年、刀堂 刃を何とかして押さえつけ、もう1人へと目を向けるが――そこにいた赤帽子の少年、コナミはまるで燃え尽き、残りカスとなったかの如く気力の欠片も感じさせず、俯くのみ。何時もの彼の姿はそこには無い。

 

何故こんな事になってしまったのだろう?再び目を伏せ、歯軋りを鳴らすのは光津 真澄、志島 北斗、光焔 ねね。

 

全ては――舞網チャンピオンシップが閉幕してからに遡る。長きに渡るアカデミアとの闘い、彼等はスタンダード次元のデュエリスト達に数多くの犠牲を出し、その侵略から手を引いた。

カード化される者もいれば、負傷した者もいた。だが生き残った者達もいた。遊矢やコナミ達だ。

大会主催者である赤馬 零児はその残った数人で対アカデミアのデュエル戦士、ランサーズの結成を表明。生憎刃達はスタンダード次元の守りに徹する為、辞退したが――その時刃は気づいたのだ、暗次の姿が無い事に。

彼は焦りを覚え、暗次の居場所を問い、コナミがそれに答えたのだ。

 

暗次はコナミを庇い、カード化された事を。それに激昂し、今に至ると言う訳である。尚、今こうしているコナミと同じように、遊矢も最早再起不能となっており、権現坂と黒咲が何とかしようとはしているが――。

 

「……殴るなら殴れ、罵倒するなら好きにしろ。オレが暗次を救えなかった事には変わらん……こんな事で償えるとは思ってないがな」

 

「ッ!テメェェェェッ!!上等だ!ぶっ殺してやる!」

 

「やめろ刃!おい光焔!誰か呼んで来てくれ!」

 

「はっ、はいぃぃぃぃっ!」

 

「アンタ良い加減にしなさいよ!コナミも何で挑発みたいな事するのよ!」

 

ハンッ、と自嘲気味に笑うコナミに対し、刃が額に青筋を浮かべ、コナミにありったけの殺気をぶつける。このままでは意外と喧嘩早い刃は本当に殴りかかるだろう。

北斗達は刃を何とか制するが、怒りのせいか止まらない。

 

「うるせぇ!俺だって分かってんだよ!本当にぶん殴りてぇのはアカデミアだ!こいつは暗次の、俺の恩人だ!だけど、だけどよ!暗次に守られておいてふてくされてるコイツが、腐っちまったコイツが気に食わねぇ!こんな腐った奴を、暗次は救いたかった訳じゃねぇだろうが!」

 

八重歯を剥き出しにし、怒号を放つ刃。そう、刃とて暗次をカード化したのはアカデミアだと理性では分かっている。

だが感情がそれを否定する。コナミが暗次を救えなかった。そしてこうして腑抜けとなっているコナミを暗次が救った。そう考えるとやってられないのだ。暗次が余りにもバカみたいじゃないかと。そんな、時だった――。

 

「退け」

 

突然1人の男が刃の肩を掴んで退かせ、コナミの前に現れたのは。先程の北斗の頼み通りに、ねねが連れて来たのであろう。その割には男の後ろで、はわわはわわとどこぞの軍師の如くねねが慌てているが。

現れた男を見て、目を丸くして驚く刃達。しかしコナミは最早どうでも良いとばかりに俯いているが――。

 

ガンッ、と固い握り拳を男はコナミへと真横に叩きつけ、いきなりの衝撃にコナミは吹き飛ばされて近くの壁にぶつかる。身体を逆さにし、ズルズルとジャケットを引き摺りながら、コナミが目にした者は――。

 

「こう言う奴は、ぶん殴ってでもデュエルで何とかするに限るんだよ」

 

そう言いながら、赤くなった拳にイテテとぼやく、沢渡 シンゴの姿だった――。

 

「おい柿本、山部、大伴、こいつ持て。デュエルコートに行くぞ」

 

「「「分っかりましたー!沢渡さぁんっ!」」」

 

「おっ、おい沢渡!一体何を――!」

 

男前な顔をして、自らの子分にコナミを運ばせながら、ふてぶてしく歩いていく沢渡。そんな彼へと、北斗が疑問を投げかける。

すると沢渡は「あぁん?」と振り向き、――その表情に、不敵な笑みを浮かべる。

 

「さっき言っただろうが、沢渡 シンゴのエンタメデュエル――開演だ――!」

 

「「「フゥー☆沢渡さん最高ッスよー!」」」

 

「よせやい」

 

ニヤリ、と内心決まったな、と思いながらも子分達に応え、もっと言えもっと言えと念じる沢渡。しかし――。

 

「クサッ」

 

「光津ぅ!」

 

結局、しまらない所が彼らしかった――。

 

――――――

 

こうして場所は変わり、デュエルコート。互いに沢渡とコナミは向かい合ってはいるが――、デュエルディスクを構える沢渡に対し、コナミはだらりと力無く両腕を垂らし、覇気も無くただ立っているだけの状態。

しかしブーイングも声援と受け取る沢渡はそんな事関係無いとばかりに笑みを浮かべている。

 

「……ご苦労な事だな、オレなんかの為に」

 

「あぁん?誰がテメェなんかの為にここまでするかよ。デッキ調整ついでに、テメェには負けた借りもあんだよ。かっ、勘違いしないでよね!俺様のデュエルで楽しませて、帰りにステマさせてやるだけなんだから!」

 

「「「沢渡さんマジ萌え萌えッスよー!」」」

 

そう、沢渡はコナミの為等更々思ってない。彼の中にあるのは、コナミに対するリベンジと己の存在の誇示。自分自身の為のみ。誰かの為等では決して無い。沢渡 シンゴは、そう言う我が儘な少年だ。

 

「面倒臭い奴だ。オレなんかに勝って何の意味が――」

 

「柿本、山部、大伴!アクションフィールドの準備ぃ!」

 

「話を聞け」

 

コナミの言葉も聞く耳持たず、遮って子分にアクションフィールドを展開させる。ブォン、デュエルコートが光の粒子に包まれ、その姿を変えていく。味気の無い何も無い場に轟音を響かせ、そびえ立つのは――巨大な、門。その瘴気が漏れ出る門を見て、僅かながらもコナミが帽子の奥で瞠目する。

 

「『暗黒界の門』……」

 

『暗黒界の門』。暗次の操る、『暗黒界』のフィールド魔法。それがほんの砂粒程度だが、コナミの心を動かせる。

 

「さぁ、行くぜ!やっぱアクションデュエルは口上が無くちゃなぁ!戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」

 

「……」

 

「かぁーっ!辛気くせぇ!柿本、山部、大伴!」

 

「はい!モンスターと共に地を蹴り、宙を舞い!」

 

「フィールド内を駆け巡る!」

 

「見よ、これぞデュエルの最強進化形!」

 

口を閉ざし、黙り込むコナミを見て、沢渡が呆れながら子分に口上を分担させ、紡ぐ。久し振りのアクションデュエルの口上だと言うのに、何とも締まらないでは無いか。しかしこの程度では沢渡は折れない。1度デュエルをするとなれば、最後まで突き通す。

 

「アクショーン……デュエル!!」

 

「……デュエル……」

 

大声で口火を切る沢渡に対し、コナミも静かにだが応じる。まだ彼にはデュエリストの火種は残っている。沢渡は鼻を鳴らし、5枚のカードを手札に加え、フィールドを駆け出しながら1枚のカードをデュエルディスクに叩きつける。

 

「まずはコイツだ!『魔界劇団―エキストラ』を召喚!」

 

魔界劇団―エキストラ 攻撃力100→400

 

現れたのは投影機のような円盤状の物体から姿を見せる3体の悪魔達。ハットを被り、単眼を鈍く輝かせるその姿はどこか愛嬌がある。

 

「コイツをリリースし、デッキから『魔界劇団―ダンディ・バイプレイヤー』をペンデュラムゾーンにセット!そして『魔界劇団―ワイルド・ホープ』をセッティング!」

 

2枚のカードが沢渡のデュエルディスクの両端に設置され、その間に虹色の光が宿る。更に彼の背後に柱が2本伸び、その中に銃を構えたガンマン風のモンスターとシルクハットを被り、ラッパを吹かせた老人が現れ、上空に光の線を結び、魔方陣を描き出す。

ペンデュラム召喚。沢渡が渇望し、漸く手に入れた力が振るわれる。

 

「ペンデュラム召喚!『魔界劇団―サッシー・ルーキー』!」

 

魔界劇団―サッシー・ルーキー 攻撃力1700→2000

 

現れる『魔界劇団』の新人。モジャモジャとした天然パーマの青髪に、だらりと力無く垂らした手が特徴的な単眼のモンスターだ。

『暗黒界の門』の恩恵により、攻撃力が2000まで引き上がる。下級にしては破格のラインだ。

 

「ペンデュラム召喚時、ダンディ・バイプレイヤーのペンデュラム効果でエクストラデッキの『魔界劇団―エキストラ』を手札に、カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

沢渡 シンゴ LP4000

フィールド『魔界劇団―サッシー・ルーキー』(攻撃表示)

セット1

Pゾーン『魔界劇団―ダンディ・バイプレイヤー』『魔界劇団―ワイルド・ホープ』

手札2

 

1ターン目終了、沢渡のフィールドには攻撃力2000となったサッシー・ルーキーが1体、バックは1枚にペンデュラムカードが存在する。無難の出だしと言った所か。これを見て管制室の者達が顎に手を当てそれぞれの思いを口に出す。

 

「沢渡にしては無難な手だな。対するコナミはどうするか――あんな状態だけど、あいつのデュエルタクティクスは高い、あの程度の布陣だと直ぐ様突破されるだろう」

 

「って言うかどうするつもりなのよ沢渡の奴。こんな状態でデュエルなんて逆効果じゃ……」

 

「さぁな、あいつの考えなんてどうやっても分かんねぇよ。だけどな――」

 

「?何ですか、刃君?」

 

それぞれが同じ考えを抱き、刃が呟く。沢渡の考えなんて分からないが――今のコナミを救う方法は、ただ1つ。

 

「俺達は今まで、デュエルで語って、答えを出して来たんだ。それに――あいつは、決める時は決める奴だぜ……!」

 

その沢渡へと視線を移し、確かな信頼を見せる刃。それは北斗や真澄とて同じ。沢渡は何時も自己中心的で我儘、大言壮語で鼻につく男だ。

だが、何だかんだで相手の事を見ているし、目的の為なら努力を惜しまず、文句一つ言わずに足を止める事なく一直線に進んでいく。

 

だからこそ目の前でエールを送る3人に慕われているの等の謎のカリスマ性があるのだろう。馬鹿にしてはいるが、結局彼等もまた、信頼しているのだ。馬鹿にする事はやめないが。

 

「……オレのターン、ドロー。オレは『貴竜の魔術師』と『曲芸の魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング。揺れろ、光のペンデュラム、虚空に描け魂のアーク。ペンデュラム召喚。『竜脈の魔術師』、『E・HEROブレイズマン』」

 

竜脈の魔術師 攻撃力1800

 

E・HEROブレイズマン 守備力1800

 

コナミのフィールドに姿を見せる『魔術師』と『HERO』、デッキを支える2柱のカテゴリ。彼のデッキに大きく貢献しているカード達であり、デッキ構築によってその相性を大きく引き上げている。

一見訳の分からぬ組み合わせだが、コナミが扱う事で数々の強敵を打ち破って来た事を考えると充分脅威だろう。

 

「ブレイズマンの効果で『置換融合』をサーチし、発動。フィールドのブレイズマンと竜脈で融合。融合召喚、『E・HEROガイア』」

 

E・HEROガイア 攻撃力2200

 

暗い断崖の地を砕き、大地の力を宿した黒い巨人が降臨する。身体の各所で紅玉が輝き、その巨腕が地を鳴らす。コナミの持つ融合モンスターの中でも素材、効果共に扱いやすく、強力なカードだ。

 

「ガイアの効果でサッシー・ルーキーの攻撃力を半分にし、その数値分、このカードの攻撃力を上げる」

 

魔界劇団―サッシー・ルーキー 攻撃力2000→1000

 

E・HEROガイア 攻撃力2200→3200

 

「『クリバンデット』召喚」

 

クリバンデット 攻撃力1000→1300

 

続けてコナミが召喚したのは毛むくじゃらの小さな1頭身ボディに眼帯と頭巾を被った、鋭い目付きの『クリボー』系列のモンスター。墓地発動を主軸としたコナミのデッキでは強力な墓地肥やしとなるカードだ。悪魔族である為、フィールド魔法の効果も受ける。

 

「バトル、ガイアでサッシー・ルーキーへ攻撃。コンチネンタルハンマー」

 

コナミがゆらりと右腕を突き出し、指示を出した途端、ガイアが凄まじい脚力で地を蹴り砕き、一瞬でサッシー・ルーキーに肉薄する。そしてその巨腕を合わせ、ハンマーのように降り下ろし、サッシー・ルーキーを潰そうとしたその時、沢渡がニヤリと口元を吊り上げ、リバースカードで攻撃を遮る。

 

「甘いぜ!速攻魔法、『揺れる眼差し』!互いのペンデュラムゾーンのカードを全て破壊し、3つの効果を適用!まず1枚目により、お前に500のダメージ!」

 

コナミ LP4000→3500

 

発動されたのはコナミや遊矢も頻繁に使うペンデュラムゾーンを割りつつ、他のアドバンテージを稼ぐ強力なカード。勿論沢渡が『魔界劇団』と相性の良いこのカードを見逃す筈も無く、デッキに投入している。

1つ目の効果でコナミの背後で輝く柱が硝子のように粉砕し、その破片がコナミのLPを削る。更に沢渡のダンディ・バイプレイヤーがラッパを吹き、1枚のカードが沢渡のデッキから飛び出してその手におさまる。

 

「2枚目の効果でデッキから『魔界劇団―プリティ・ヒロイン』をサーチ!更に3枚目の効果でガイアを除外するぜ!」

 

続いてワイルド・ホープが砕け散った柱の破片に飛び乗り、銃を構え、弾丸を放ってガイアを異次元へと飛ばす。だがまだ沢渡の手は終わらない。期待のホープは沢渡の手に1枚のカードを与え、颯爽と去る。

 

「ワイルド・ホープが戦闘、効果で破壊された事で『魔界劇団の楽屋入り』をサーチ!」

 

コナミのモンスターを除去しつつ、2枚のカードをサーチする。ここら辺は流石と言うべきか。

 

「『クリバンデット』でサッシー・ルーキーに攻撃!」

 

「サッシー・ルーキーは1ターンに1度破壊されない!」

 

沢渡 シンゴLP4000→3700

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンド。この瞬間、『クリバンデット』をリリースし、デッキの上から5枚を捲り、魔法、罠を1枚手札に加え、残りを墓地に送る。『マジカルシルクハット』を手札に加え、墓地に送られた『E・HEROシャドー・ミスト』の効果で『E・HEROエアーマン』をサーチ」

 

コナミ LP3500

フィールド

セット1

手札2

 

「俺様のターン、ドロー!どうした赤帽子!ちゃんと盛り上げやがれ!『魔界劇団―エキストラ』を召喚!」

 

魔界劇団―エキストラ 攻撃力100→400

 

「リリースし、2枚目のダンディ・バイプレイヤーをセッティング!もう1枚はこいつだ!『魔界劇団―プリティ・ヒロイン』をセッティング!ペンデュラム召喚!現れろ!俺様のダンディでプリティなモンスター!『魔界劇団―ワイルド・ホープ』!」

 

魔界劇団―ワイルド・ホープ 攻撃力1600→1900

 

ダンディでプリティなのかは兎も角、沢渡が新たに召喚したのはワイルドなモンスター。サッシー・ルーキーと並び立つ期待のホープ。新人コンビは互いをライバル視して闘志を燃やす。

 

「ダンディ・バイプレイヤーの効果でエキストラ回収!ワイルド・ホープの効果で『魔界劇団』モンスターの種類×100攻撃力をアップ!」

 

魔界劇団―ワイルド・ホープ 攻撃力1900→2100

 

「バトルだ!2体でダイレクトアタック!」

 

「墓地の『光の護封霊剣』を除外し、ダイレクトアタックを封じる」

 

2体の新人によるコンビネーションアタック、しかしそれもコナミの眼前に飛び出した光の剣によって止められる。だが沢渡は渋い顔1つせず、むしろ好戦的な笑みを浮かべる。

 

「安心したぜ、デュエルする気はあるようだな」

 

「……さぁな……」

 

全くと言って良い程やる気が無かったコナミが自身の負けを認めない事を見て、沢渡が快活に笑う。

コナミ自身、何故自分が沢渡の攻撃を止めたのかは分からない。恐らくはデュエルに対してだけは嘘をつきたくない、背を向けたくない、デュエリストの血が手を動かしたのだろう。まだ――可能性は残っている。

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

沢渡 シンゴ LP4000

フィールド『魔界劇団―ワイルド・ホープ』(攻撃表示)『魔界劇団―サッシー・ルーキー』(攻撃表示)

セット1

Pゾーン『魔界劇団―ダンディ・バイプレイヤー』『魔界劇団―プリティ・ヒロイン』

手札3

 

「オレのターン、ドロー。『E・HEROエアーマン』を召喚」

 

E・HEROエアーマン 攻撃力1800

 

コナミの手から召喚される新たな『HERO』モンスター。青いボディを煌めかせ、背中のファンが回転して風を逆巻き飛翔する。『HERO』をサーチする強力なモンスターだ。

 

「エアーマンの効果でブレイズマンをサーチ、永続魔法、『補給部隊』を発動し、カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

コナミ LP3500

フィールド『E・HEROエアーマン』(攻撃表示)

『補給部隊』セット2

手札1

 

モンスターを召喚し、カードを伏せただけでターンエンド。やはり何時ものキレが無く、コナミらしくない大人しいターンだ。『揺れる眼差し』でペンデュラムカードが失われたとは言え、未だにまともに攻撃が出来ていない。

 

「チッ、俺様がデュエルしてやってんだからもっと盛り上げろってんだ……!ああ苛々する!俺のターン、ドロー!罠発動!『魔界劇団の楽屋入り』!デッキから『魔界劇団―ビッグ・スター』と『魔界劇団―デビル・ヒール』をエクストラデッキに加える!魔法カード、『魔力の泉』!1枚ドローし、3枚捨てる!捨てた中には『暗黒界の狩人ブラウ』2体!2枚ドロー!更に門の効果を使ってブラウを除外し、手札を交換、捨てたのは3枚目のブラウ!俺ってカードに選ばれスギィ!」

 

沢渡 シンゴ 手札3→4→1→3→4

 

「魔法カード、『ダーク・バースト』墓地のエキストラを回収し、ペンデュラム召喚!『魔界劇団―ビッグ・スター』!!そして『光帝クライス』!」

 

「帝ですって!?」

 

魔界劇団―ビッグ・スター 攻撃力2500→2800

 

光帝クライス 攻撃力2400

 

真澄が驚愕の声を上げた瞬間、沢渡のフィールドに2本の柱が轟音と共に降り立ち、光の粒子を散らし、中よりモンスターが飛び出す。

1体は『魔界劇団』の大スターにして沢渡の新たなエースモンスター。渦巻く赤髪をメタリックに固め、黒き衣装に身を包んだ単眼の悪魔。

そしてもう1体は真澄が驚いた原因、以前沢渡が扱っていた帝の1体、金色の鎧を煌めかせた『光帝クライス』。何もおかしくは無い話だ。このカードとペンデュラムは相性が良く、沢渡の手元にあったカードなのだから。考えてみれば投入していてもおかしくは無い。

 

「ダンディ・バイプレイヤーのペンデュラム効果でエクストラデッキのデビル・ヒールを回収!そしてクライスの効果でこいつとワイルド・ホープを破壊して2枚ドロー!」

 

沢渡 シンゴ 手札4→6

 

「やっぱ俺、カードに選ばれスギィ!破壊されたワイルド・ホープの効果で2枚目の楽屋入りサーチ!」

 

一気に3枚もの手札を得、更にその手を進める沢渡。大量展開が可能なペンデュラムだからこそ出来る芸当だ。左手で頭を掻きながらニヤリと笑みを深め、自分に酔う。確かに、カードに選ばれていると言われれば頷かざるを得ない。

 

「魔法カード、『マジカル・ペンデュラム・ボックス』を発動!カードを2枚ドローし、確認、ペンデュラムカードは1枚だ。もう1枚は捨てる。永続魔法、『魔界大道具「ニゲ馬車」』発動!ビッグ・スターを対象とし、このターン、相手は対象のモンスターを効果の対象に出来ない!更に1ターンに1度、『魔界劇団』モンスターはそれぞれ戦闘で破壊されねぇ!そしてビッグ・スターの効果でデッキの『魔界台本「火竜の住処」』をセットし、発動!このターン、ビッグ・スターがモンスターを破壊した場合、相手はエクストラデッキからモンスター3体を除外する!」

 

フィールドに現れたのは巨大な単眼の白馬2頭と白馬が引く馬車。『魔界劇団』員達は直ぐ様、馬車に飛び込み、手綱を握ってコナミのフィールドへと突撃する。

 

「バトルだ!ビッグ・スターでエアーマンへ攻撃!」

 

「罠発動、『マジカルシルクハット』」

 

しかしコナミも反撃を取る。デッキから2枚のカードをフィールドに投擲し、天より巨大な3つのシルクハットが2枚のカードとエアーマン目掛けて落ち、被さり、シャッフルされる。これで確率は低くなったが――。

 

「あめぇんだよ!カードに選ばれた俺様は!シャッフルされたカードも的中させる!右のカードだ!シャイニング沢渡チョイス!」

 

選択したシルクハットへ方向を変え、凄まじい土煙と共に突き進むビッグ・スター。答えは――正解、見事的中し、エアーマンが吹き飛ばされる。

 

「「「流石ッスよ、沢渡さぁーんっ!」」」

 

「フゥー☆」

 

「ッ……オレは『E・HEROジ・アース』、『E・HEROノヴァマスター』、『E・HEROエスクリダオ』を除外……!『補給部隊』で1枚ドロー」

 

コナミ 手札1→2

 

とんでも無い強運。流石はカードに選ばれた、いや、選ばれ過ぎた男か。管制室の子分3人がエールを送り、沢渡がポーズを取ってそれに応える。手痛い効果だ。コナミの顔色も変わる。

 

「バトルは中断だ。攻撃しても無駄だからな、俺様は引き際も弁える男なのよ」

 

「……ならばオレは墓地に送られた『妖刀竹光』の効果で『黄金色の竹光』をサーチ」

 

「メインフェイズ2、墓地の『シャッフル・リボーン』を除外し、サッシー・ルーキーを戻して1枚ドロー。俺様はモンスターとカード3枚を伏せ、ターンエンド。この瞬間、手札を1枚除外するぜ」

 

沢渡 シンゴ LP4000

フィールド『魔界劇団―ビッグ・スター』(攻撃表示)セットモンスター

『魔界大道具「ニゲ馬車」』セット3

Pゾーン『魔界劇団―ダンディ・バイプレイヤー』『魔界劇団―プリティ・ヒロイン』

手札1

 

「オレのターン、ドロー!」

 

「罠発動!『魔界劇団の楽屋入り』!デッキから『魔界劇団―ファンキー・コメディアン』と『魔界劇団―ティンクル・リトルスター』をエクストラデッキに!」

 

「オレは『E・HEROブレイズマン』を召喚」

 

E・HEROブレイズマン 攻撃力1200

 

「ブレイズマンの効果で『置換融合』をサーチ。そして『妖刀竹光』を装備、『黄金色の竹光』で2枚ドロー」

 

コナミ 手札2→4

 

「『慧眼の魔術師』と『相克の魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング。慧眼を破壊し、『竜穴の魔術師』をセッティング。ペンデュラム召喚、『竜脈の魔術師』、『慧眼の魔術師』、『貴竜の魔術師』、『曲芸の魔術師』」

 

竜脈の魔術師 攻撃力1800

 

慧眼の魔術師 攻撃力1500

 

貴竜の魔術師 守備力1400

 

曲芸の魔術師 守備力2300

 

振り子の軌跡で現れるコナミの『魔術師』モンスター。これで5体のモンスターが出揃った。これがコナミと言うデュエリストの恐ろしい所だ。追い詰めたと思ったら息を吹き返し、その牙を突き立てる。少しはらしくなって来た。そうでなくては張り合いが無いと沢渡が笑みを深める。

 

「レベル4の『竜脈の魔術師』にレベル3の『貴竜の魔術師』をチューニング、シンクロ召喚!『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』!!」

 

オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン 攻撃力2500

 

『貴竜の魔術師』の身体が弾け飛び、3つの光のリングとなって『竜脈の魔術師』を包み込む。更に一筋の閃光が竜脈ごとリングを貫き、眩き光が沢渡の視界を照らす。

バキリ、暗き大地を踏み砕き、火柱が何本も天に昇る。炎の海の中で獰猛な唸り声を上げるのは真っ赤に燃える二色の眼の竜。

沢渡にとっては因縁の敵が扱うエースカードで似たカードだ。舌打ちを鳴らし、忌々しいとばかりに表情を歪める。

 

「メテオバーストの効果でペンデュラムゾーンの『竜穴の魔術師』を特殊召喚!」

 

竜穴の魔術師 守備力2700

 

コナミの右背後に設置された光の柱が炎に包まれ、硝子の如く粉々に砕け散る。そして炎より飛び出す錫杖を構えた『竜穴の魔術師』。彼はくるりと宙で身を翻してメテオバーストの背に降り立つ。

 

「これでレベル7のモンスターが2体……!」

 

「ッ!まさか……!?」

 

ギン、敵意を剥き出しにして沢渡を睨み、小さく呟くコナミの一言を聞き、管制室の北斗が驚愕を露にする。失意の底に沈んでも、コナミのデュエルタクティクスは落ちていない。

いや、恐らくは沢渡がちまちまと脇をつつくような真似をしたせいで早くこのデュエルを終わらせようと本腰に入ったのだろう。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン』!!」

 

オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン 攻撃力2800

 

『竜穴の魔術師』がくるりと杖を回転させ、目を閉じる。瞬間、彼の姿が水となって溶け、メテオバーストの身体を濡らす。そして水は1秒もたたず氷となってメテオバーストの体躯を覆い、ピシピシと凍結させる。完全に竜の動きが止まった――そう誰もが思った時、竜の眼が鈍く輝き、雄叫びを上げて氷を砕き、新たな竜となって生まれ変わる。

 

青銀の結晶を鎧として纏い、絶対零度の息吹を放つ極寒の竜。コナミの怒りによって生み出されたカードが、エクシーズ召喚された。

 

「ペンデュラムからシンクロ、シンクロからエクシーズ……!?」

 

「ハッ!それがどうしたよ!」

 

「魔法カード、『置換融合』発動!」

 

「速攻魔法、『エネミーコントローラー』!ビッグ・スターをリリースし、アブソリュートを奪うぜ!」

 

「ッ!フィールドの『E・HEROブレイズマン』と『慧眼の魔術師』で融合!融合召喚!『E・HERO Theシャイニング』!」

 

E・HERO Theシャイニング 攻撃力2600→3800

 

続け様にコナミが発動するカードにより、青とオレンジの渦が彼の背後で広がり、その中へと2体のモンスターが飛び込む。中より現れたのは白地のスーツの『HERO』。そのスーツに黄金のラインが引かれ、背に日輪を模した翼が形成される。

コナミと沢渡、1回目のデュエルでフィニッシャーとなった1体だ。

 

「チッ、そいつか……!」

 

「不味い、火竜の住処が利用された……!」

 

Theシャイニングは除外されている『E・HERO』の数×300攻撃力を上げる効果を持つ。先のターン、沢渡がエクストラデッキを削った事が仇になったようだ。

いや、今回は逆手に取ったコナミが賞賛されるべきか。真澄が息をつまらせる。

 

「墓地に送られた『妖刀竹光』の効果で『黄金色の竹光』サーチ、手札を1枚捨て、墓地の『ジェット・シンクロン』を蘇生!」

 

ジェット・シンクロン 守備力0

 

息つく暇すら与えない。容赦無し、機械染みた淡々とした動作で次のモンスターを呼び出すコナミ。しかもこのモンスターは――刃がその額から汗を垂らし、小さく呟く。

 

「おいおい……まさかあいつ……」

 

「レベル5の『曲芸の魔術師』にレベル1の『ジェット・シンクロン』をチューニング!星雨を束ねし聖翼よ!魂を風に乗せ世界を巡れ!『スターダスト・チャージ・ウォリアー』、シンクロ召喚!」

 

スターダスト・チャージ・ウォリアー 守備力1300

 

シンクロ召喚、このターン、2度目のそれにより、コナミのフィールドに突風が吹き荒れ、竜巻が起こる。そしてその中より煌めく刃が顔を見せ、竜巻を引き裂いてその主の姿を露とする。閃光の竜を象った兜と鎧を纏った戦士。その腰からは鋭い刃が閃いている。

 

「融合、シンクロ、エクシーズ……3種のモンスターを1ターンで……!」

 

「俺様より目立つんじゃねぇー!」

 

「チャージ・ウォリアーの効果で1枚ドロー!」

 

コナミ 手札1→2

 

「魔法カード、『手札抹殺』で手札を交換、墓地の『シャッフル・リボーン』を除外し、『相克の魔術師』をデッキの戻し、ドロー!」

 

コナミ 手札1→2

 

「カードを2枚伏せ、ターンエンド。この瞬間、アブソリュートのコントロールは戻る」

 

コナミ LP3500

フィールド『オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン』(攻撃表示)『E・HERO Theシャイニング』(攻撃表示)『スターダスト・チャージ・ウォリアー』(守備表示)

『補給部隊』セット3

手札0

 

襲い来る高度なプレイングに脅威的なモンスター達。それらを支える強運。しかしそれは沢渡の脅威となり得ない。何故ならば今の彼の全ては沢渡のプレイングを、モンスターを、強運を引き立てる為のものに過ぎないからだ。少なくとも沢渡はそう考えている。この程度では自分に傷1つつけられないと自負しているのだ。

 

「俺のターン、ドロー!2枚目の『マジカル・ペンデュラム・ボックス』だ!2枚ドロー!2枚共ペンデュラムモンスター!ペンデュラム召喚!『魔界劇団・ビッグ・スター』!!『魔界劇団―ワイルド・ホープ』!『魔界劇団―ティンクル・リトルスター』!『魔界劇団―サッシー・ルーキー』!」

 

魔界劇団―ビッグ・スター 攻撃力2500→2800

 

魔界劇団―ワイルド・ホープ 攻撃力1600→1900

 

魔界劇団―ティンクル・リトルスター 守備力1000→1300

 

魔界劇団―サッシー・ルーキー 攻撃力1700→2000

 

華々しい閃光が沢渡のフィールドに降り立ち、轟音が震撼する。中より現れたのはワイルド・ホープとサッシー・ルーキー、ビッグ・スターに似た少女だ。

 

「魔法カード、『強制転移』を発動!セットモンスターを送り込む!」

 

「ならオレはチャージ・ウォリアーを送る――この、モンスターは……?」

 

沢渡が発動したのはコントロールを扱う系統でも代表的なカード。それによって沢渡のフィールドにチャージ・ウォリアーが、コナミのフィールドにたった今セットされたモンスターが送り込まれるが――それを確認し、コナミの表情が微妙なものになる。

 

「沢渡の奴、何を……?」

 

「ワイルド・ホープの効果発動!」

 

魔界劇団―ワイルド・ホープ 攻撃力1900→2300

 

「そしてビッグ・スターの効果で『魔界台本「魔王の降臨」』をデッキからセットし、発動!モンスターゾーンにいる攻撃表示の『魔界劇団』モンスターの種類までフィールドの表側表示のカードを破壊!アブソリュートとシャイニング、『補給部隊』を破壊!」

 

「破壊されたシャイニングで効果で『E・HEROエスクリダオ』と『E・HEROガイア』をエクストラデッキに戻し、アブソリュートの効果でエクストラデッキの『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』を特殊召喚!!」

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン 攻撃力2500

 

天が鳴き、雷と竜巻が地へ駆け抜ける。轟音が炸裂し、アブソリュートの姿が深緑に染まる。3体目の『オッドアイズ』モンスター、天候を操る翼竜が咆哮する。

 

「チッ、順序を間違えたか……!」

 

「ボルテックスの効果でビッグ・スターをバウンスする!」

 

「上等!ティンクル・リトルスターとサッシー・ルーキーをリリースし、アドバンス召喚!ビッグ・スター!!」

 

魔界劇団―ビッグ・スター 攻撃力2500→2800

 

「ビッグ・スターの効果で火竜の住処をセット!ビッグ・スターでボルテックスに攻撃!」

 

コナミ LP3500→3200

 

コナミも応戦するが、沢渡はそれを嘲笑うかのように飛び越える。自身のミスも巻き返し、追撃をかける。これでコナミのフィールドには沢渡の送り込んだセットモンスターのみ。

 

「ワイルド・ホープでセットモンスターへ攻撃!セットモンスターは『アブソーブポッド』!」

 

「リバース効果で全てのセットカードが破壊され、互いにその数だけドロー……」

 

「更に!相手によって『魔界台本「オープニング・セレモニー」』と火竜の住処が破壊された事で手札が5枚になるようにドローし、お前のエクストラデッキの『E・HERO GreatTORNADO』を除外する!『アブソーブポッド』で2枚ドロー!」

 

コナミ 手札0→3

 

沢渡 シンゴ 手札2→5→7

 

これこそが沢渡の狙い。『アブソーブポッド』を送り込む事で相手の効果で破壊される事となる事態を活かし、沢渡が一気に手札を増強した上でコナミの戦力を削る。

GreatTORNADOを選んだのはこのカードが頻繁に使用されるからだ。単純に考えても強力な効果を持つこのカードは逆転の引き金になりかねない。

 

「カードを3枚伏せ、ターンエンドだ」

 

沢渡 シンゴ LP4000

フィールド『魔界劇団―ビッグ・スター』(攻撃表示)『魔界劇団―ワイルド・ホープ』(攻撃表示)『スターダスト・チャージ・ウォリアー』(守備表示)

『魔界大道具「ニゲ馬車」』セット3

Pゾーン『魔界劇団―ダンディ・バイプレイヤー』『魔界劇団―プリティ・ヒロイン』

手札4

 

たった1ターンでコナミの布陣が崩れてしまった。圧倒的な力に対する反骨精神、自我を通す事に関し、彼は予想以上に強い。次第に追いつめられる事に焦りを覚え、コナミは更にデュエルに臨む。少しずつ、少しずつだが――コナミがデュエリストとして、復活しようとしている。

 

「オレのターン、ドロー!魔法カード、『アメイジング・ペンデュラム』!エクストラデッキの『慧眼の魔術師』と『曲芸の魔術師』を回収!墓地の『置換融合』を除外、『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』をエクストラデッキに戻し、ドロー!」

 

コナミ 手札5→6

 

「2体の『慧眼の魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!破壊して『竜穴の魔術師』と『刻剣の魔術師』をセッティング!ペンデュラム召喚!2体の『慧眼の魔術師』!『竜脈の魔術師』!『刻剣の魔術師』!『E・HEROフォレストマン』!」

 

慧眼の魔術師 攻撃力1500×2

 

竜脈の魔術師 攻撃力1800

 

刻剣の魔術師 攻撃力1400

 

E・HEROフォレストマン 守備力2000

 

コナミのターンに移り、反撃の狼煙が上がる。現れる5体のモンスター。先程の『魔術師』に加え、剣を持った少年『魔術師』と自然の代行者たる英雄が姿を見せる。

 

「2体の慧眼でオーバーレイ・ネットワークを構築!我が戦いはここから始まる!白き翼に望みを託せ、現れろNo.39!エクシーズ召喚!希望皇ホープ!」

 

No.39希望皇ホープ 攻撃力2500

 

ペンデュラムからのエクシーズ。コナミがエクストラデッキから黒い枠のカードをデュエルディスクに叩きつけた途端、フィールドに金色の鎧を纏った白い皇が、雄々しき咆哮を上げて登場する。赤い39の紋様を左肩に描き、純白の翼を広げ、片刃の剣を2本握ったこのモンスターもまた、沢渡にとっては因縁の相手だ。

 

「刻剣の効果でこのカードとビッグ・スターを除外!バトル!ホープで『スターダスト・チャージ・ウォリアー』に攻撃!ホープ剣・スラッシュ!」

 

「罠発動!『ダーク・アドバンス』!墓地の『光帝クライス』を回収、そしてチャージ・ウォリアーをリリースし、アドバンス召喚!」

 

光帝クライス 攻撃力2400

 

ホープが剣を閃かせ、鋭い斬撃を『スターダスト・チャージ・ウォリアー』へと放つ。襲い来る白刃、星屑の戦士の喉元に突き立てられようとしたその瞬間、戦士の身体を竜巻が覆い隠し、眩き閃光が炸裂する。視界を覆い尽くす光、それが晴れた時、フィールドには既にホープの姿は無く、代わりとしてクライスが腕を組み、コナミを睨んでいた。

 

「クライスの効果でホープとペンデュラムゾーンのプリティ・ヒロインを破壊だ」

 

コナミ 手札2→3

 

沢渡 シンゴ 手札4→5

 

「くっ!カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

コナミ LP3200

フィールド『竜脈の魔術師』(攻撃表示)『E・HEROフォレストマン』(守備表示)

セット2

Pゾーン『竜穴の魔術師』『刻剣の魔術師』

手札1

 

ぶつかり合う2人のデュエル。コナミも何とかその実力を見せ、反撃に出ようとするが、やはり踏ん切りがつかないのか、どうにも終始沢渡のペースが続く。そんな中、沢渡は自分が押しているにも関わらず、苛立ったように表情を歪ませ舌打ちを鳴らす。

その理由は明白、それは――。

 

「ふざけんじゃねぇぞ赤帽子ぃ!」

 

ダンッ、沢渡が堪え切れず地を蹴り、激昂する。最早我慢ならないとばかりに歯を剥き出しにしてコナミを睨み付ける。対するコナミは息をつまらせ、呆然とするが――。

 

「それがテメェの全力か!それがテメェのデュエルか!こんな生温い奴に俺様は負けたのか!お前みたいな奴の為に黒門は犠牲になったのか!だったらあいつはその程度の奴だったって事だなぁ?えぇおい!?」

 

「ッ――!お前――!」

 

沢渡の暗次を陥れる言葉にコナミの顔色が変わる。が、しかし――。

 

「悔しかったら勝ってみろよ!ムカついたなら必死になってかかって来いよ!それすら出来ねぇ奴に俺様が負けるかよ!少なくとも俺の知ってる馬鹿はみっともなくても、ボロボロになっても立ち上がって来たぜ?立ち上がっても無いテメェが、黒門から目を背けてるテメェが、言い返す資格なんざねぇ!」

 

コナミの言葉を遮り、沢渡が矢継ぎに言葉を放つ。普段の彼とは違い、確かな重さが籠ったその台詞に、コナミは言葉を失う。そうだ――自分には、何も言う資格なんて無い。

だけど、それでも――。

 

「迷うならカードを取れ、デュエルは答えてくれるってな!良い面になってきたぜ……!本気のテメェをぶっ倒してこそリベンジが果たせるってもんだ。さぁ、沢渡 シンゴのエンタメデュエル――特と味わえ!」

 

迷い、戸惑いながらもデュエルディスクを構え、デュエルに臨むコナミ。その表情はまるで――暗次のように。

 

「お楽しみは、これからだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




と言う訳でコナミ君と向き合うのはスーパーウルトラ何とかデュエリスト沢渡さんです。流石ッスよぉっ!
書いていた時は雨に降られたコナミと遊矢が怒りのままにデュエルする……とか、黒咲さんがかっとビング入れとく予定だったけど後者は兎も角前者は暗くなりそうなので没。後者は最近黒咲さん出番が多いし、後の話でも出るので沢渡さんになりました。コナミ君を殴り飛ばしているのはその名残。
で、書いてると『魔界劇団』の強さにびっくり、魔王の降臨連打で終わっちゃいそうで苦労しました。

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