遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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やっぱり書いてて楽しい遊矢君のデュエル。手札を補充しながら展開、防御力も優れているのが要因かなぁ。


第77話 友情ごっこ

開始される遊勝塾の榊 遊矢と、アカデミアの紫雲院 素良のデュエル。先攻は遊矢だ。彼はデッキから5枚のカードを引き抜き、1枚のカードをデュエルディスクに差し込む。

 

「俺は魔法カード、『マジカル・ペンデュラム・ボックス』を発動し、2枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札4→6

 

「そして確認、ペンデュラムモンスターの為、墓地には送られない!『慧眼の魔術師』と『刻剣の魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!『慧眼の魔術師』のペンデュラム効果で自身を破壊し、『時読みの魔術師』をセッティング!」

 

「ペンデュラム……!」

 

彼の背後に2本の柱が昇り、2体の『魔術師』が上空に光の線を結び、魔方陣を描き出す。

最初から手加減無し、全開の遊矢。ペンデュラム召喚、それは遊矢が発現した力であり、素良と出会う切欠となったカードだ。いや、素良だけでは無い。多くの人がこのペンデュラムを中心として出会い、今、遊矢を築く力となっている。

 

「ペンデュラム召喚!『EMセカンドンキー』!『カードガンナー』!」

 

EMセカンドンキー 守備力2000

 

カードガンナー 守備力400

 

遊矢の呼び声に応え、ロバの姿をした『EM』が蹄を鳴らしてフィールドに降り立つ。『EMドクロバット・ジョーカー』や『EMペンデュラム・マジシャン』には劣るものの、墓地落とし、サーチ効果を持ったモンスターだ。

 

「セカンドンキーの効果でデッキから『EMドクロバット・ジョーカー』をサーチし、召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800

 

次に召喚されたのはたった今サーチしたばかりのモンスター。継ぎ接ぎだらけのシルクハットを被り、トランプのマークを燕尾服に散りばめた仮面の道化。

彼は懐から1枚のトランプを取り出し、天空に投げる。トランプが空中で回転し、ポンと煙を上げて変わったのは――

 

「ドクロバット・ジョーカーの効果で『EMペンデュラム・マジシャン』をサーチ!」

 

赤い衣装を纏ったマジシャンだ。彼もまた自身の身を1枚のカードへと変え、遊矢の手元に滑り込む。これで次のターンから強力なサーチが可能となった。

 

「『カードガンナー』の効果でデッキトップの3枚を墓地に送り、攻撃力アップ!」

 

カードガンナー 攻撃力400→1900

 

墓地に落ちたのは『光の御封霊剣』に加え、『スキル・プリズナー』、『仁王立ち』、良いカードが落ちた。素良もそれを見逃さない。

 

「カードを2枚セットし、ターンエンドだ」

 

榊 遊矢 LP4000

フィールド『EMドクロバット・ジョーカー』(攻撃表示)『EMセカンドンキー』(守備表示)『カードガンナー』(守備表示)

セット2

Pゾーン『時読みの魔術師』『刻剣の魔術師』

手札1

 

「僕のターン、ドロー!僕は手札の『ファーニマル・ベア』を墓地へ送り、デッキから『トイポット』をセットする!そしてオープン!手札を1枚捨てて、ドロー!」

 

紫雲院 素良 手札4→5

 

フィールドに巨大なガシャポンが出現し、手札と言うコインを糧にカプセルが飛び出す。このカードこそ紫雲院 素良の扱う『ファーニマル』の肝となるカード。カプセルが割れ、出て来たカードは――。

 

「ドローしたカードは『ファーニマル・ドッグ』!よって『トイポット』の効果で特殊召喚!墓地へ送られた『エッジインプ・チェーン』の効果で『魔玩具融合』をサーチ!」

 

ファーニマル・ドッグ 攻撃力1700

 

フィールドに現れる犬の姿をしたぬいぐるみ。当たりだ。と言っても、遊矢の知る限り、素良が『トイポット』でハズレを引いた所は見た事が無いのだが。

 

「『ファーニマル・ドッグ』の効果で『ファーニマル・オウル』をサーチ!そのまま召喚!」

 

ファーニマル・オウル 攻撃力1000

 

連鎖的に現れたのは梟のぬいぐるみだ。パタパタと慌ただしく飛び回り、素良の左腕に乗り、その嘴で1枚のカードを引き抜いて素良に渡す。受け取ったカードは緑色のフレームの、融合次元を代表するカード。

 

「『ファーニマル・オウル』の効果で『置換融合』をサーチ!そして『ファーニマル・シープ』以外の『ファーニマル』モンスターがフィールドに存在する事で手札の『ファーニマル・シープ』を特殊召喚!」

 

ファーニマル・シープ 守備力800

 

新たに召喚される『ファーニマル』、モコモコとした羊毛で作られた可愛らしい羊が他の2体と並ぶ。遊矢のペンデュラムにも勝る恐ろしい展開力だ。だが未だに素良の武器が発動されない。そろそろ準備が整い、使う所だろうか。

 

「『ファーニマル・ドッグ』を手札に戻し、『ファーニマル・シープ』の効果で墓地の『エッジインプ・チェーン』を特殊召喚!」

 

エッジインプ・チェーン 守備力1800

 

次に現れたのはこれまでの『ファーニマル』とは全く異なり、鎖を束ね、赤い目を妖しく光らせる悪魔。そう、天使族の『ファーニマル』と悪魔族の『エッジインプ』を組み合わせ、融合させる事こそが素良のデッキの真骨頂、天使と悪魔の合体と聞けば、何だか格好良いロマンを感じる。

 

「ここで発動!魔法カード、『置換融合』!『エッジインプ・チェーン』と『ファーニマル・シープ』で融合!融合召喚!現れ出ちゃえ!自由を奪い闇に引き込む海の悪魔!『デストーイ・ハーケン・クラーケン』!」

 

デストーイ・ハーケン・クラーケン 攻撃力2200

 

絹を裂き、現れたのは刃の冠を被り、脚の先端に鋭く光る鎌を持った海の魔物、クラーケン。目の間から開いた口より、本物の赤き眼が遊矢を射抜く。

 

「その効果でセカンドンキーを墓地送りに!」

 

「チッ――!」

 

「まだだよ!魔法カード、『融合回収』発動!墓地の『置換融合』と『ファーニマル・シープ』を回収!フィールドの『デストーイ・ハーケン・クラーケン』と『ファーニマル・オウル』で融合!悪魔宿りし非情の玩具よ!煉獄の眼よ!今神秘の渦で1つとなりて、新たな力と姿を見せよ!融合召喚!現れ出ちゃえ!全てに牙剥く魔境の猛獣、『デストーイ・サーベル・タイガー』!!」

 

デストーイ・サーベル・タイガー 攻撃力2400→2800

 

融合モンスターを使っての融合。素良も最初から本気で遊矢を狩ろうと奥の手を見せる。『デストーイ・ハーケン・クラーケン』と『ファーニマル・オウル』の綿を使い、現れたのは深い青に染まった、文字通り、赤く鈍く輝くサーベルを腹、頭、口より伸ばした古代の猛獣。

飛び出た眼球とは違い、本来の眼はその口から覗く赤い眼。不気味に輝かせ、遊矢のフィールドを睨み、狙いを定める。

 

「『デストーイ・サーベル・タイガー』の融合召喚時、墓地の『デストーイ』モンスターを特殊召喚する!もう1度フィールドに!『デストーイ・ハーケン・クラーケン』!」

 

デストーイ・ハーケン・クラーケン 攻撃力2200→2600

 

たった今素材になったばかりの『デストーイ・ハーケン・クラーケン』が再びフィールドに姿を見せる。融合後のリカバリーが豊富な点は『ファーニマル』や『エッジインプ』、『デストーイ』の大きな利点だ。

 

「そしてサーベル・タイガーが存在する限り、僕の『デストーイ』モンスターの攻撃力は400ポイントアップする!続けるよ!魔法カード、『魔玩具融合』!墓地の『エッジインプ・チェーン』と『ファーニマル・ベア』を除外し、融合召喚!現れ出ちゃえ!全てを封じる鎖のケダモノ!『デストーイ・チェーン・シープ』!」

 

デストーイ・チェーン・シープ 攻撃力2000→2400

 

ぬいぐるみが引き裂かれ、真綿が締め付けられる。そして誕生したのはソーサーの翼を伸ばし、眼球が飛び出した羊のぬいぐるみ。序盤から終盤まで活躍できる優秀なアタッカーだ。

 

「1ターンに3回も融合を……流石だな、素良」

 

「これが僕の本気さ!アカデミアの紫雲院 素良として、君を倒してあげるよ!」

 

遊矢の心から素直な称賛に、素良が歪んだ笑みを向け、答える。だが遊矢にとって、それは何故か無理をしているようにしか見えない。

態々アカデミアの人間である事を強調して自分に言い聞かせ、闘おうとしているようにしか思えない。迷う遊矢を見て、傍のユートが声をかける。

 

『遊矢、友だからと言って手心を加えるな。友だからこそ、真剣に向き合え、そうすればデュエルが自ずと答えを見せてくれる』

 

「……そうだな……!良し!来いよ素良!全力だ!本気でぶつかり合えば、何とかなる!」

 

「ッ!呑気に言うじゃないか……!ハーケン・クラーケンの効果で『カードガンナー』を墓地に!バトル!」

 

「この瞬間、永続罠、『闇の呪縛』、チェーン・シープの攻撃力を700ダウンし、攻撃を封じる!」

 

「チッ、『デストーイ・ハーケン・クラーケン』で『EMドクロバット・ジョーカー』を攻撃!」

 

榊 遊矢 LP4000→3200

 

「『デストーイ・サーベル・タイガー』でダイレクトアタック!」

 

「永続罠発動!『EMピンチヘルパー』!攻撃を無効にし、デッキから『EMインコーラス』を特殊召喚!」

 

「手札の『増殖するG』を切る!」

 

EMインコーラス 守備力500

 

紫雲院 素良 手札3→4

 

だがこの程度で終わる遊矢ではない。毎度お馴染みのピンチを救うピンチヘルパーにより、攻撃を無効にした上で、後続の攻撃を防ぐ3羽のカラフルなインコが遊矢の右腕を止まり木にし、超音波で『デストーイ・サーベル・タイガー』を退ける。

 

「ふぅん、やるじゃないか。それ位してくれなきゃ面白くない!危うく拍子抜けする所だったよ、『デストーイ・ハーケン・クラーケン』で『EMインコーラス』を攻撃!」

 

「2回攻撃出来たのか……破壊されたインコーラスの効果で『EMロングフォーン・ブル』を特殊召喚!」

 

EMロングフォーン・ブル 守備力1200

 

紫雲院 素良 手札4→5

 

インコ達の囀りを下に、頭に受話器をかけた牡牛が姿を見せる。これこそが遊矢の実力の一端、守りにおいて突出した力を誇っている。

 

「ロングフォーン・ブルの特殊召喚時、デッキの『EMスライハンド・マジシャン』をサーチ!」

 

「バトルフェイズ終了時、ハーケン・クラーケンを守備表示に、カードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

紫雲院 素良 LP4000

フィールド『デストーイ・サーベル・タイガー』(攻撃表示)『デストーイ・チェーン・シープ』(攻撃表示)『デストーイ・ハーケン・マジシャン』(守備表示)

『トイポット』セット2

手札3

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『マジック・プランター』!『闇の呪縛』をコストに2枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札1→3

 

「まずはペンデュラム召喚!『降竜の魔術師』!『EMペンデュラム・マジシャン』!『EMスライハンド・マジシャン』!『EMドクロバット・ジョーカー』!」

 

降竜の魔術師 攻撃力2400

 

EMペンデュラム・マジシャン 攻撃力1500

 

EMスライハンド・マジシャン 攻撃力2500

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800

 

ここで活かされるペンデュラム召喚の大量展開。4体のモンスターが召喚され、5体のモンスターが並び立つ。だが戦力面で言えばまだ素良が上と言って良いだろう。

ならばここから盛り返すのがエンタメデュエリスト。素良がアカデミアとして闘うなら、こちらは遊勝塾として迎え撃つ。

 

「ペンデュラム・マジシャンの効果!ペンデュラムゾーンの2枚を破壊し、『EMギタートル』と『EMリザードロー』をサーチ!そのままセッティング!ギタートルのペンデュラム効果でドロー!リザードローのペンデュラム効果で自身を破壊し、もう1枚!」

 

榊 遊矢 手札1→2→3

 

ペンデュラム・マジシャンでスケールを破壊しながら『EMギタートル』と『EMリザードロー』のコンビをサーチし、そのままセッティングして効果を発揮する事で実質手札交換となる。遊矢得意の手だ。

 

「そして『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』をセッティング!さぁ行くぞ素良!まずは『降竜の魔術師』を自身の効果でドラゴン族に変更!フィールドの『降竜の魔術師』と『EMロングフォーン・ブル』をリリース!出でよ!野獣の眼光りし獰猛なる龍!『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

 

ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力3000

 

ここからが本番、そう言わんばかりに遊矢の更なる手が炸裂する。遊矢の背後に青とオレンジの渦が広がり、ドラゴン族となった『降竜の魔術師』と獣族の『EMロングフォーン・ブル』が飛び込み、混じり合って1体のモンスターへと生まれ変わる。

巨大な体躯に纏った獣骨に青い体毛、両の眼とは別に、額に金色に輝く獣の目を持った野性の竜。遊矢の融合モンスターが登場し、素良の融合モンスターを睨む。

 

「融合モンスター……!」

 

「そうだ!お前と柚子がいたからこそ、俺はペンデュラムの先を見つける事が出来た!融合召喚を会得出来た!そしてもう1つ、見せてやるぜ素良!俺の新しい仲間を!」

 

『フ……2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!』

 

「漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!」

 

『エクシーズ召喚!現れろ!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』ッ!!』

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力2500

 

遊矢とユート、2人の少年が声を合わせて右腕を突き出し、地面に星を散りばめたような渦が発生し、『EMペンデュラム・マジシャン』と『EMドクロバット・ジョーカー』が光の線となって飛び込む。そして圧縮した渦は小爆発を起こし、黒煙を上げる。

その中より鋭き刃物の如き両翼と尾が振るわれ、赤き稲妻が駆け抜ける。雄々しき咆哮が黒雲を引き裂き、その姿を見せたのは鋭いアギトを閃かせ、全身に赤く光る血流を迸らせた漆黒の竜。

ユートのエースカードが今、牙を剥く。

 

「それは……ユートとか言う奴のエクシーズモンスター……!?何で君が……!?」

 

「色々あってね。本当に話したい事がいっぱいある。語り尽くせない程の事を、デュエルで語ろう!まずは『EMスライハンド・マジシャン』の効果!手札を1枚捨て、『デストーイ・チェーン・シープ』を破壊!」

 

仮面を被り、下半身が青い水晶となっており、純白の翼で包み込んだ赤いマジシャンがステッキから雷を放ち、『デストーイ・チェーン・シープ』を黒焦げにする。

『サンダー・ブレイク』を内蔵したモンスター。度々遊矢を救って来た効果だが――。

 

「残念だったね!『デストーイ・チェーン・シープ』は戦闘、効果で破壊された場合、攻撃力を800アップして蘇生するよ。サーベル・タイガーも合わせて1200のアップだ!」

 

デストーイ・チェーン・シープ 攻撃力2000→2800→3200

 

ズタズタになった綿が再び蠢き、より凶悪な羊となって蘇る。1ターンに1度蘇生し、強化される効果。防御も出来るアタッカーとしてこれ程優秀なモンスターはいない。だが遊矢とて何も考えずに破壊した訳じゃない。

 

「それを待っていた!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』のORUを2つ取り除き、『デストーイ・チェーン・シープ』の攻撃力を半分にし、その数値分、攻撃力をアップする!」

 

『トリーズン・ディスチャージ!』

 

デストーイ・チェーン・シープ 攻撃力3200→1600

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力2500→4100

 

「しまった――!」

 

『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』の両翼に嵌め込まれた紅玉より赤き稲妻が迸り、『デストーイ・チェーン・シープ』から力を奪っていく。

『フォース』内蔵効果、普段ならばしないであろう失態だ。他の事に気を取られ、忘れてしまっていた。

してやったりと笑みを浮かべる遊矢に、素良がガリッ、とキャンディーを噛み砕く。

 

「バトルだ!『EMスライハンド・マジシャン』で『デストーイ・チェーン・シープ』へ攻撃!」

 

「罠発動!『マジカルシルクハット』!」

 

「ッ!そのカードは――!」

 

再びスライハンド・マジシャンの手によって『デストーイ・チェーン・シープ』が破壊されようとした時、素良が発動した罠から3つのシルクハットが出現し、素良の投擲した2枚のカードと『デストーイ・チェーン・シープ』に覆い被さり、シャッフルされる。

別段何の変哲も無いカードだが――このカードは、コナミのデッキでキーとなるカードだ。

 

「そう、コナミも使っているカードだよ。良いよねこれ、『おろかな副葬』と違ってワンテンポ遅れるし、バトルフェイズしか発動出来ないけど、『トイポット』や融合カードを落とす事が出来る。見た目も面白いしさ」

 

「……そっか……!」

 

思わぬ反撃を食らった筈なのに、遊矢の表情は緩む。それを見て、想定していた反応と違ったのか素良が目を丸くするが――途端に遊矢の顔は引き締まり、凛とした指示が浮かぶ。

 

「真ん中のシルクハットに攻撃!」

 

「ハズレだよ!」

 

「く――『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』で『デストーイ・サーベル・タイガー』に攻撃!ヘルダイブバースト!」

 

「ぐ――!」

 

紫雲院 素良 LP4000→3800

 

獣の竜の口より火炎が溢れ、放たれる。強力な一撃に思わずたたらを踏む素良。だがまだ追撃が残っている。本当に堪えなければいけないのはここからだ。

 

「ビーストアイズの効果により、素材となったロングフォーン・ブルの攻撃力、1600のダメージを与える!」

 

紫雲院 素良 LP3800→2200

 

更なる火の粉が降りかかり、素良の身体を焦がしていく。

 

「『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』でハーケン・クラーケンに攻撃!」

 

『反逆のライトニング・ディスオベイ!』

 

ダーク・リベリオンが翼を広げ、その身を翻し、鋭いアギトを地に突き立てる。その勢いのまま一直線、圧倒的な切り味を披露しながら突き進み、漆黒の竜は大きく跳躍して海の魔物を切り裂いた。

 

「バトルフェイズ終了時、シルクハットに入れた『トイポット』が墓地に送られる事で『エッジインプ・シザー』をサーチ!」

 

「カードを1枚セットし、ターンエンド。この瞬間、『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』のペンデュラム効果で自身を破壊し、『慧眼の魔術師』をサーチ!」

 

榊 遊矢 LP3200

フィールド『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』(攻撃表示)『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』(攻撃表示)『EMスライハンド・マジシャン』(攻撃表示)

『EMピンチヘルパー』セット1

Pゾーン『EMギタートル』

手札2

 

「僕のターン、ドロー!罠カード、『融合準備』を発動!エクストラデッキの『デストーイ・シザー・ベアー』を公開し、その素材となる『ファーニマル・ベア』をデッキから、そして墓地の『置換融合』を回収!『デストーイ・チェーン・シープ』を反転召喚!そして『エッジインプ・ソウ』を召喚!」

 

エッジインプ・ソウ 攻撃力500

 

あらゆるカードで手数を増やし、素良が召喚したのは鋸の悪魔。ステータスは低いが、『ファーニマル』にとっては円滑油となるモンスターだ。

 

「召喚時、手札の『ファーニマル・ドッグ』を墓地に送り、2枚ドロー!」

 

紫雲院 素良 手札5→7

 

「その後、手札を1枚デッキトップへ戻す。そして『トイポット』の効果で手札を1枚捨て、ドロー!」

 

紫雲院 素良 手札5→6

 

『エッジインプ・ソウ』のデッキへカードを戻すデメリットをデッキトップ操作と言うメリットへと変え、『トイポット』の効果の発動条件を満たす。これが素良のデュエルだ。

一見して運任せに見えるが、計算された強かな戦術。当然ドローカードは――。

 

「ドローカードは『ファーニマル・ベア』!よって特殊召喚!」

 

ファーニマル・ベア 攻撃力1200

 

素良のデッキトップ操作により、カプセルの中から現れたのは純白の翼を広げた熊のぬいぐるみ。中々ファンシーな外見だが、このカードは『ファーニマル』のエンジンとなるカードだ。

 

「そして『ファーニマル・シープ』を特殊召喚!」

 

ファーニマル・シープ 守備力800

 

「その効果でフィールドのベアを手札に戻し、『エッジインプ・シザー』を復活させる!」

 

エッジインプ・シザー 攻撃力1200

 

ここで登場したのは鋏を何本も重ねた悪魔。『エッジインプ』の中でも特に重要なモンスターだ。ジャキジャキと音を鳴らすその姿は不気味ですらある。

 

「魔法カード、『置換融合』!フィールドのシープと『エッジインプ・ソウ』で融合!融合召喚!現れ出ちゃえ!全てを切り裂く百獣の王!『デストーイ・ホイールソウ・ライオ』!」

 

デストーイ・ホイールソウ・ライオ 守備力2000

 

絹を裂き、体の中心、そして鬣が丸鋸の不気味な獅子。顔が真っ二つに割れ、赤く染まった鋸状の爪が伸びた手足に包帯を巻いており、その凶悪さが全面に押し出されたモンスターだ。

 

「墓地の『置換融合』を除外し、サーベル・タイガーを戻してドロー!」

 

紫雲院 素良 手札4→5

 

「永続魔法、『デストーイ・ファクトリー』発動!墓地の『魔玩具融合』を除外し、フィールドの『エッジインプ・シザー』と手札の『ファーニマル・ベア』を融合!悪魔の爪よ!野獣の牙よ!今神秘の渦で一つとなりて新たな力と姿を見せよ!融合召喚!現れ出ちゃえ!全てを切り裂く戦慄のケダモノ!『デストーイ・シザー・ベアー』!」

 

デストーイ・シザー・ベアー 攻撃力2200

 

熊のぬいぐるみが鋏の悪魔に切り刻まれ、ボロボロとなって姿を見せる。可愛らしいピンクの毛並みをした、恐ろしい熊の手、そして胸部を鋏で繋いだ猛獣。

遊矢が見た最初の融合モンスターであり、その厄介さは良く知っている。

 

「そして『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を対象に『デストーイ・ホイールソウ・ライオ』の効果発動!そのモンスターを破壊し、元々の攻撃力分のダメージを与える!」

 

「罠発動!『スキル・プリズナー』!このターン、『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を対象に発動するモンスター効果を無効にする!」

 

『デストーイ・ホイールソウ・ライオ』が鬣の丸鋸を1枚、獣の竜に向かって弾丸の如く撃ち出す。地面に火花を散らし、抉り取りながら猛スピードで進む丸鋸。

このままでは竜が真っ暗に引き裂かれ、3000ものダメージが遊矢を襲おうとした時、遊矢の発動したカードによって障壁が出現し、丸鋸を弾き、くるりと宙を舞って鬣に戻る。

鬣に丸鋸が刺さった事で悶えるホイールソウ・ライオ。しかし良く良く考えれば元々刺さっていたので胸を撫で下ろす。何とも愛嬌のあるカードだ。

 

「やるね……!なら装備魔法、『魔導師の力』を『デストーイ・シザー・ベアー』に装備!カードを1枚セット!」

 

デストーイ・シザー・ベアー 攻撃力2200→4200

 

「ダーク・リベリオンの攻撃力を越えて来たか……!」

 

素良のフィールドの魔法は『トイポット』、『デストーイ・ファクトリー』、『魔導師の力』とセットカードの4枚、よって2000の攻撃力アップだ。これでダーク・リベリオンの攻撃力を僅か100であるが越えた。

 

「バトル!『デストーイ・シザー・ベアー』で『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』に攻撃!パンメリング・バウ!」

 

「墓地の『仁王立ち』を除外し、攻撃対象をダーク・リベリオンに絞る!」

 

榊 遊矢 LP3200→3100

 

「ぐっ――!」

 

シザー・ベアーが自らの左腕を振り、鋏で繋がれた腕をもいで投げる。くるくる回転しながら襲い来るそれはダーク・リベリオンを切り裂き、ブーメランの要領でシザー・ベアーの下に戻る。そしてシザー・ベアーの下に来たのは腕だけでは無い。

 

「シザー・ベアーの効果により、戦闘破壊したダーク・リベリオンを攻撃力1000アップの装備カードとしてシザー・ベアーに装備!『魔導師の力』も合わせ、1500アップだ!」

 

デストーイ・シザー・ベアー 攻撃力4200→5700

 

ダーク・リベリオンが光となってシザー・ベアーの下へ向かい、捕食される。そしてこの効果を見て、遊矢の傍で浮くユートが表情を歪ませ怒りを露にする。

 

『ダーク・リベリオン……!これ程の屈辱を味わったのは初めてだ……!』

 

「ユート!?」

 

ああ悲しいかな、これがドラゴン使い、それもエクシーズ次元では宿命と言える悲劇。ドラゴン族をエースカードとする者にとって、ドラゴンの装備カード化は凄まじい屈辱、遊矢とて分からない訳ではないが、キャラ崩壊を起こすユートを見て、動揺する。

 

――全くだ……!早くダーク・リベリオンを解放しろ、このウスノロ!――

 

「ええ!?誰!?」

 

何故か遊矢の頭の中に声が響き、誰だか分からない者に罵倒される始末である。余程頭にキたのか、相当先の出番を早まらないで欲しい。

 

「僕はこれでターンエンド」

 

紫雲院 素良 LP2200

フィールド『デストーイ・シザー・ベアー』(攻撃表示)『デストーイ・ホイールソウ・ライオ』(攻撃表示)『デストーイ・チェーン・シープ』(攻撃表示)

『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』『魔導師の力』『トイポット』『デストーイ・ファクトリー』セット1

手札1

 

「俺のターン、ドロー!装備魔法、『ワンダー・ワンド』をスライハンド・マジシャンに装備!」

 

EMスライハンド・マジシャン 攻撃力2500→3000

 

「この2枚を墓地に送り、2枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札3→4

 

「魔法カード、『魔力の泉』!4枚ドローし、3枚捨てる!」

 

榊 遊矢 3→7→4

 

「『EMダグ・ダガーマン』をセッティング!ギタートルのペンデュラム効果でドロー!」

 

榊 遊矢 手札3→4

 

「更にダグ・ダガーマンのペンデュラム効果で墓地の『EMペンデュラム・マジシャン』を回収!そして速攻魔法、『揺れる眼差し』により、スケールを破壊し、まずは500ポイントのダメージを与える!」

 

紫雲院 素良 LP2200→1700

 

「次にデッキから『曲芸の魔術師』をサーチ!そのまま慧眼と共にセッティング!慧眼を破壊し、『相生の魔術師』をセッティング!ペンデュラム召喚!『EMペンデュラム・マジシャン』!『EMダグ・ダガーマン』!『刻剣の魔術師』!雄々しくも美しく輝く二色の眼!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力2500

 

EMペンデュラム・マジシャン 攻撃力1500

 

EMダグ・ダガーマン 攻撃力2000

 

刻剣の魔術師 攻撃力1400

 

相も変わらぬ大量展開、手数やエクストラデッキを増やしつつ、見事なカード捌きだ。遊矢のフィールドに降り立ったのはペンデュラム・マジシャンにナイフを持ったマジシャン風の戦士に剣を持った『魔術師』、そして目玉となるエースカード、2色の虹彩の真紅の竜。

『EM』、『魔術師』、『オッドアイズ』、3大カテゴリの揃い踏みだ。

 

「ペンデュラム・マジシャンの効果でスケールの2枚を破壊し、『EMギッタンバッタ』と『EMドラネコ』をサーチ!そしてダグ・ダガーマンの効果でギッタンバッタを墓地に送り、1枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札3→4

 

「『EMドラネコ』をセッティングし、刻剣の効果で『デストーイ・シザー・ベアー』とこのカードを次の自分のスタンバイフェイズまで除外する!」

 

「速攻魔法、『神秘の中華なべ』!『デストーイ・シザー・ベアー』をリリースし、フィールド上での攻撃力5700を回復にあてる!」

 

紫雲院 素良 LP2200→7900

 

攻撃力で敵わないなら効果による除去を。遊矢は正攻法で攻略しようとするも、素良は攻撃力の上がったシザー・ベアーをリリースする事で大量のLPを得る。

しかしこれで攻勢となったのは遊矢。直ぐ様押せ押せの攻めで1枚のカードをデュエルディスクに差し込む。

 

「魔法カード、『置換融合』!フィールドの『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』と『EMペンデュラム・マジシャン』で融合!融合召喚!出でよ!秘術ふるいし魔天の龍!『ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」

 

ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力3000

 

魔術の力を瞳に宿し、現れたのは固い金属で左目を覆い、背に満月のような金色のリングを負った真紅の竜。宙を駆り、喉を鳴らすこのカードは初めて遊矢が使用した融合モンスターだ。

 

「ルーンアイズはペンデュラム召喚したモンスターを素材として融合召喚したターン、相手の効果を受けず、レベル4以下の魔法使い族を素材とした為、モンスターへの2回攻撃が可能!行くぞ素良!これが俺とお前の絆の力だ!バトル!ルーンアイズで『デストーイ・ホイールソウ・ライオ』と『デストーイ・チェーン・シープ』に攻撃!連撃のシャイニーバースト!」

 

紫雲院 素良 LP7900→6900

 

ルーンアイズが背負ったリングが2ヶ所輝きを放ち、2体のモンスターへと一直線に光線が突き進む。熱線で刃が溶かされて絹を貫き、破壊する。

 

「くっ――!『デストーイ・チェーン・シープ』の効果で復活!」

 

デストーイ・チェーン・シープ 守備力2000

 

「ビーストアイズでチェーン・シープを攻撃!戦闘破壊した事で1600のダメージを与える!」

 

紫雲院 素良 LP6900→5300

 

「ぐあぁぁぁぁっ!」

 

復活させればこうなる事は分かっていたが、復活させなければダイレクトアタックでもっとダメージを食らってしまう。苦渋の決断、肉を切らせて骨を断つ。少しでもダメージを減らす為、素良は仕方無くチェーン・シープを復活させたのだ。

 

「ダグ・ダガーマンでダイレクトアタック!」

 

紫雲院 素良 LP5300→3300

 

「――っ!」

 

続く連撃、畳み掛ける遊矢の手に大量に回復したLPが半分近く削り取られる。これが成長した遊矢の力。前回のデュエルで素良が本気を出していなかったのならば、この時まで遊矢もまた、大きく成長したのだ。だからこそ互角以上に渡り合う事が出来る。

 

「刻剣で攻撃!」

 

紫雲院 素良 LP3300→1900

 

激しい猛攻により、一気に素良を追い詰める。これが遊矢の成長の証、削り取られていくLPがそれを物語っている。一瞬たりとも気は抜けない。

 

「墓地の『ADチェンジャー』2体を除外し、ダグ・ダガーマンと刻剣を守備表示に、カードを2枚セット、ターンエンドだ」

 

榊 遊矢 LP3100

フィールド『ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』(攻撃表示)『ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』(攻撃表示)『EMダグ・ダガーマン』(守備表示)『刻剣の魔術師』(守備表示)

『EMピンチヘルパー』セット2

Pゾーン『EMドラネコ』

手札0

 

状況は遊矢の優勢、しかし、油断は出来ない。『ファーニマル』にはピンチだろうと、容易く覆す手段があるのだ。

 

「僕のターン、ドロー!」

 

「罠発動、『ダメージ・ダイエット』!このターンのダメージを半分に!」

 

「……絆の力だって……?笑わせるよ!あんなの所詮……所詮……ッ、友情ごっこじゃないか!僕は『トイポット』の効果で手札を捨て、ドロー!」

 

紫雲院 素良 手札1→2

 

ニィッ、と口元を歪ませ、嘲笑う素良。これが心からの言葉なら遊矢も多少は心が折れただろう。だがそれが無かったのは、一瞬、一瞬だけ素良が辛そうな表情を浮かべたから。一瞬ではあるが、隙はある。遊矢は気を引き締め、改めて素良と言う友人と、デュエリストと向き合う。

 

「ドローカードは『ファーニマル・オクト』!特殊召喚!」

 

ファーニマル・オクト 守備力800

 

現れたのはタコのぬいぐるみ。登場した途端、地面に黒い渦が発生し、8本の脚を突き刺し、1枚のカードを素良へ渡す。

 

「オクトの効果で墓地の『ファーニマル・ベア』回収!手札から墓地に送り、デッキの『トイポット』セット!更に墓地の『ファーニマル・ウィング』と『ファーニマル・ベア』を除外し、1枚ドロー!その後『トイポット』を墓地へ送り、1枚ドロー!まだまだ!『トイポット』の効果で『ファーニマル・ドッグ』サーチ!」

 

紫雲院 素良 手札2→3→4

 

『ファーニマル・ウィング』と『トイポット』による大量の手札補充により、素良の手札が一気に3枚回復し、4枚に膨れ上がる。恐ろしい爆発力だ。やはりこの少年は侮れない。

 

「そして手札を1枚デッキトップに戻し、墓地の『エッジインプ・シザー』を特殊召喚!」

 

エッジインプ・シザー 守備力800

 

「『トイポット』オープン!手札を1枚捨て、ドロー!」

 

紫雲院 素良 手札2→3

 

「ドローカードは当然『ファーニマル・ドッグ』!特殊召喚!」

 

ファーニマル・ドッグ 攻撃力1700

 

「ドッグの効果で『ファーニマル・オウル』をサーチ!召喚!」

 

ファーニマル・オウル 攻撃力1000

 

「オウルの効果で『置換融合』サーチ!発動!フィールドの『エッジインプ・シザー』と『ファーニマル・オクト』で融合!悪魔の爪よ!悪魔の使徒よ!今神秘の渦で1つとなりて、新たなる力と姿を見せよ!融合召喚!現れ出ちゃえ!全てを引き裂く密林の魔獣!『デストーイ・シザー・タイガー』!」

 

デストーイ・シザー・タイガー 攻撃力1900→2800

 

最早恒例の毎ターン融合召喚。現れたのは『デストーイ』の中でも特に凶悪な効果を持った虎のぬいぐるみに鋏を切り込んだモンスターだ。

 

「まずはオクトの効果で除外された『エッジインプ・チェーン』と『ファーニマル・ベア』を墓地へ戻し、『デストーイ・シザー・タイガー』の融合召喚時効果で融合素材となったモンスターの数だけフィールドのカードを対象として破壊する!ピンチヘルパーとドラネコを破壊!」

 

「墓地の『スキル・プリズナー』を除外し、ピンチヘルパーを対象に発動する事でその効果を不発とする!」

 

「分かっていたさぁっ!魔法カード、『融合回収』!『置換融合』と『ファーニマル・シープ』を回収!『ファーニマル・シープ』を特殊召喚!」

 

ファーニマル・シープ 守備力800

 

デストーイ・シザー・タイガー 攻撃力2800→3100

 

「シープの効果で『ファーニマル・ドッグ』を手札に戻し、墓地の『エッジインプ・チェーン』を特殊召喚!」

 

エッジインプ・チェーン 守備力1800

 

「『デストーイ・ファクトリー』の効果で墓地の『融合準備』を除外し、フィールドの『エッジインプ・チェーン』と『ファーニマル・オウル』で融合!融合召喚!『デストーイ・ハーケン・クラーケン』!」

 

デストーイ・ハーケン・クラーケン 攻撃力2200→3100

 

「墓地へ送られた『エッジインプ・チェーン』の効果でデッキの『デストーイ・マーチ』をサーチ!そしてハーケン・クラーケンの効果で刻剣をエクストラデッキへ送る!」

 

「くっ――!」

 

「まだだよ!魔法カード、『置換融合』!更にチェーンし、『非常食』!フィールドの『置換融合』、『トイポット』、『デストーイ・ファクトリー』を墓地に送り、3000回復!フィールドの『デストーイ・ハーケン・クラーケン』と『ファーニマル・シープ』を融合!融合召喚!『デストーイ・サーベル・タイガー』!!」

 

紫雲院 素良 LP1900→4900

 

デストーイ・サーベル・タイガー 攻撃力2400→3400

 

デストーイ・シザー・タイガー 攻撃力2500→2900

 

「サーベル・タイガーの効果で『デストーイ・チェーン・シープ』を特殊召喚!『トイポット』と『デストーイ・ファクトリー』の効果で『ファーニマル・シープ』サーチ!除外されている『魔玩具融合』回収!」

 

デストーイ・チェーン・シープ 攻撃力2000→3300

 

デストーイ・サーベル・タイガー 攻撃力3400→3700

 

デストーイ・シザー・タイガー 攻撃力2900→3200

 

再び素良のフィールドに並ぶ3体の融合モンスター。しかも今回はサーベル・タイガーとシザー・タイガーの効果により、強化蘇生を行っていないチェーン・シープまでも攻撃力3000越え、容易く遊矢のモンスターを壊滅出来る布陣だ。

 

「また3体の融合モンスターを……!」

 

『それだけじゃない……!LPと手札も回復した……!』

 

「同じ展開じゃ飽きちゃうからアクセントを入れないとね!『魔玩具融合』発動!墓地の『エッジインプ・シザー』、『ファーニマル・ベア』、『ファーニマル・シープ』、『ファーニマル・ドッグ』の5体で融合!融合召喚!『デストーイ・シザー・ウルフ』!」

 

デストーイ・シザー・ウルフ 攻撃力2000→3600

 

デストーイ・サーベル・タイガー 攻撃力3700→4000

 

デストーイ・シザー・タイガー 攻撃力3200→3500

 

デストーイ・チェーン・シープ 攻撃力3300→3600

 

もう一手間、アクセントの言葉通りに4体目の融合モンスターがフィールドに降り立つ。青い毛並みの狼のぬいぐるみに鋏を切り込んだ『デストーイ』モンスター。

このカードの前にシザー・タイガーの効果で活路を開くのが定石だが、強化を受けた今、それも必要無い。このカードの効果は素材となったモンスターの数だけ攻撃、つまり攻撃力3600で5回攻撃すると言う事だ。

 

「バトル!チェーン・シープでルーンアイズを!サーベル・タイガーでビーストアイズを!シザー・ウルフでダグ・ダガーマンを攻撃!」

 

榊 遊矢 LP3100→2800→2300

 

「ぐぉぉぉぉぉぉっ!?」

 

『デストーイ』による猛攻が魔術の竜、野性の竜、短剣使いを次々と切り裂き、ダメージが少ないにも関わらず、遊矢の身体を焦がさんばかりの熱を与える。

熱い、まるで炎の中にいるような錯覚に陥り、思わずたたらを踏む遊矢。これが素良の本気。これ程までの強者だったとは。しかし遊矢とて数多くの強者と闘って勝利を掴み取って来た。乱れる息を整えながら、果敢に挑む。

 

「負け……ないぞ……ぉ……!」

 

「ッ、シザー・ウルフでダイレクトアタック!」

 

「『EMピンチヘルパー』の効果ぁっ!攻撃を無効にし、デッキから『EMオッドアイズ・ユニコーン』を特殊召喚!」

 

EMオッドアイズ・ユニコーン 守備力600

 

「ッ!何で諦めてくれないんだ……!何で沈んでくれないんだ……!シザー・ウルフでユニコーンを攻撃!ダイレクトアタック!」

 

「沈んで来たから今があるんだ!太陽は昇る!何度でも!墓地の『光の御封霊剣』を除外し、ダイレクトアタックを封じる!」

 

相次ぐカード効果の応酬、互いの譲れぬ想いが交差するようにそれは飛び交い、魂の叫びが木霊する。圧倒的な攻撃、それら全てを防ぎ切る遊矢。

これが、榊 遊矢と言う少年、彼は今まで挫ける事もあったし、膝をつく事だってあった。だけど魂の奥底までは折れなかった。だからこそ、立ち上がってこられた。まるで――振り子のように。

その理由は、友が、いたから。背を押してくれる友が、支えてくれる人がいるから、遊矢はここまで来られたのだ。その中には――素良もいる。

 

「何なんだ君は……何で君はそこまで……!」

 

遊矢の武器はペンデュラムだ。その無限の可能性から派生する力を含め、遊矢の武器。しかしこの呆れる程の固い防御力もまた、遊矢の誇れる武器だ。

防御力だけを見ればこの大会の中でも1、2を争うだろう。しかし素良が戦慄しているのはその根底にある、折れない魂。必死にしがみつき、綺麗事を信じて疑わない一途さ。改めて実感する――榊 遊矢と言う、デュエルバカを。

 

「へへっ、やっぱり素良は凄いな……!こんなにも楽しくて、面白いデュエルが出来る!だけど俺だって負けないぜ!お楽しみは、これからだ!」

 

鼻の頭を擦り、ボロボロに傷ついた姿で不適に笑う遊矢。その姿はどうしても、素良を苛立たせる。

 

「能天気だねぇ、君って奴は……!羨ましいよ、本当に……本当にねぇ!」

 

ガリッ、またもや素良がその口に含んだキャンディーを噛み砕き、音を響かせる。その言葉の通り、確かに遊矢への嫉妬心が垣間見える。

それを見逃す遊矢ではない。この少年の中に潜む闇を、いや、素良と言う少年を知るキーワードを拾い集めていく。それがきっと、このデュエルの答えなのだろう。

 

「僕はカードを伏せ、ターンエンド!さぁ、来なよ!笑えるものなら笑ってみろ!その笑顔――噛み砕く!」

 

紫雲院 素良 LP4900

フィールド『デストーイ・サーベル・タイガー』(攻撃表示)『デストーイ・シザー・タイガー』(攻撃表示)『デストーイ・シザー・ウルフ』(攻撃表示)『デストーイ・チェーン・シープ』(攻撃表示)

セット1

手札3

 

暴かれていく、紫雲院 素良の本性、だがこれでも彼の一端に過ぎない。嘘か真か、幾つもの顔を持つ彼に対し遊矢は――彼を知り、救う事が出来るのか――。

 




ガシャポンなのかガチャポンなのかガチャガチャなのか。地域によって違うこれ。私はガチャポン派です。カプセルと言えば昔ダイナデバイスと言う知る人ぞ知るゲームがあってじゃな。

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