遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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これから忙しくなりそうなので投稿が遅くなってしまう可能性があります。
楽しみに待ってくださってる人はすいません。ただ、できる限りは週一投稿をしたいと思ってます。後ごめんユート君。先に謝っておく。君の扱いだけは変えない。それが俺のプライド!(王様


第7話 限界バトル

「決まりましたわね」

 

今までコナミと零児の試合を見守っていた赤馬 日美香が口を開く。確かにあの赤帽子の少年は強い。LDS最強のデュエリストを前にここまで食い下がり、テスト段階のペンデュラムまで引き出したのだから。もしもペンデュラムがなければ負けていたかもしれないと考えるとゾッとするが。

 

「まっまだ終わってないよ!」

 

そんな彼女に声を出して食って掛かったのは遊勝塾の少年、フトシだ。彼は両手を強く握り日美香を睨み付ける。

 

「まだデュエルは終わってない!コナミ兄ちゃんは絶対に勝つ!」

 

唇を噛み締め、日美香の言葉を否定する。まだデュエルは終わってない。まだ可能性は残っている。とその瞳は物語っている。

 

「いいえ、無理よ。零児さんのモンスターはどれもあの少年のモンスターの攻撃力を上回っていて、ペンデュラム召喚した制覇王カイゼルの効果で彼のモンスターの効果は無効化し、しかも制覇王カイゼルは最大3回の攻撃を可能とするモンスター効果まである。それでも希望があると?」

 

「あるよ!」

 

日美香の説明を聞いても尚フトシは諦めない。いや、フトシだけじゃない。

 

「コナミお兄ちゃんは勝つよ!」

 

声を上げたのはアユ、彼女の目にも絶望の色はない。

 

「コナミお兄ちゃんは負けない!私の後輩は負けない!」

 

「話しにならないわね。何を根拠に……」

 

やれやれと溜め息を吐く日美香。そんな彼女に

 

「コナミは勝つ」

 

ペンデュラム召喚の祖である榊 遊矢は異を唱える。目をキッと吊り上げ、両の拳を握りしめ、彼は言う。

 

「俺はまだアイツとは知り合ってばかりでアイツの事は何も知らない。だけど、アイツが任せろって言ったんだ。口数が少ない、大人しいアイツが。だから――俺はアイツを信じる」

 

何故、こんなにも彼等は希望を捨てないのだろう?何故、彼を信じられるのだろう?

 

「いいでしょう。なら見るといいわ。彼が惨めに負ける姿を」

 

そうすれば彼等も諦めるだろうと日美香は考える。

 

(どうしてこんな逆境なのに安心出来るんだろうな)

 

何故、これ程までコナミが負ける姿が想像できないのだろうと考えコナミに視線を移す。答えはすぐにわかった。

 

(あ……)

 

答えは簡単な事だった。何故気付かなかったと笑ってしまいたい程に、シンプルで遊矢が最も信じる事。

 

(泣きたい時は笑え……そうだったな……父さん)

 

こんな逆境でも苦しい顔一つせず、むしろ口の端を吊り上げ不敵に笑うコナミ。その姿が、その背中が、どうしようもなく父と似ていた。

 

――――――

 

「『DDD制覇王カイゼル』はペンデュラム召喚に成功した場合、相手フィールド上の表側表示のカードの効果を無効化する。そして『DDD制覇王カイゼル』の更なる効果!魔法、罠ゾーンの『地獄門の契約書』とセットしたアクションカードを破壊し、3回の攻撃を可能とする!バトルだ!『DDD制覇王カイゼル』で希望皇ホープに攻撃!」

 

凄まじい速度で希望皇ホープの懐まで肉薄し、その曲刀を振るう制覇王カイゼル。ホープは自らの翼を盾にしようとするも、黒き雷が展開を阻み、砕け散る。

 

コナミ LP1900→1600

 

「2回目の攻撃!セットモンスターを破壊しろ!」

 

再び曲刀を構え、コナミの前に浮遊する黒き球体に向け容赦なき斬撃が繰り出される。破壊されたモンスターは『ジェット・シンクロン』。

 

「止めだ!3回目の攻撃!制覇王カイゼルでダイレクト・アタック!」

 

瞬時にコナミの眼前に移動し、2体のモンスターを葬った鈍く輝く曲刀がコナミに降り下ろされる。

 

「ッ!アクションマジック『回避』!攻撃を無効にする!」

 

傍に浮遊するカードを掴み、すかさずプレートに叩きつけるコナミ。間一髪。しかしまだバトルは終わってない。

 

「『DDD覇龍王ペンドラゴン』で攻撃!」

 

すぐさま零児の指令が飛ぶ。黒き体躯の龍王が翼を広げコナミの前に現れ、丸太のような太い剛腕を、鋭い爪を降り下ろす。

 

「罠発動!『ガード・ブロック』!ダメージを0にして1枚ドロー!」

 

龍王の強大な力をコナミの前に現れたバリアが防ぐ。まだ希望は残っている。

 

「……君なら防ぐと思っていた。だが!これで終わりだ!行けッ!『DDD死偉王ヘル・アーマゲドン』!!ダイレクト・アタック!」

 

巨大な悪魔がコナミに向かって振り子の軌道を描き迫る。その姿はまるで希望を根こそぎ刈り取るギロチン。風を切り、空気を引き裂き、ブオンッと音を刈り取りながらコナミに迫る。これで全てが終わる。そして――直撃した。

 

激しい破壊音が辺りに響く。ビルが破壊され、ガラガラと崩れていく。土煙が上がり、晴れたその先には――――無傷のコナミが立っていた――――。

 

「馬鹿な……ッ!」

 

両の眼を見開き、今まで以上に激しく動揺する零児。

 

「オレは手札より『クリボー』の効果を発動していた」

 

コナミが墓地より一枚のカードを見せる。毛むくじゃらの小さな悪魔の姿が描かれたモンスターカード。1度だけ、たった1度だけ戦闘ダメージを0にするカード。そのカードがコナミを救った。

 

「『ガード・ブロック』の時に引いたのか……っ」

 

つくづく運の良い奴だ。いやここまで来ると実力か。だが結果は変わらない。次のターンに全てが終わる。そう考え、冷静さを取り戻す。

 

「ターンエンドだ」

 

赤馬 零児 LP1700

フィールド 『DDD死偉王ヘル・アーマゲドン』(攻撃表示) 『DDD制覇王カイゼル』(攻撃表示) 『DDD覇龍王ペンドラゴン』(攻撃表示)

Pゾーン『DD魔導賢者ガリレイ』 『DD魔導賢者ケプラー』

手札0

 

ピンチを逃れはしたが圧倒的不利は変わらない。それどころかこのターンで何とかしなければ、次のターン再びあの圧倒的な力を誇る王達が牙を剥き、敗北してしまうだろう。しかし現在、コナミの手札は1枚、フィールドはがら空き。正真正銘ラストターン。だと言うのに、口がにやける。武者震いが止まらない。これ以上なく心臓がドクドクと脈打つ。楽しい――だけどまだ足りない。もっと、もっとだ。この状況から1枚のドローで逆転してみろ。そう考えるとコナミは楽しくて堪らない。そんな中――

 

「コナミ!」

 

観客席から声が上がる。ふと視線を動かすとそこには遊勝塾の面々がコナミに向かいエールを送る。

 

「負けるなー!!コナミ兄ちゃああああん!!」

 

子供達が。

 

「男を見せる時だコナミ!」

 

権現坂が。

 

「うおおおぉぉぉぉ!!勝てぇぇぇぇ!!コナミぃぃぃぃ!!」

 

塾長が。

 

「勝って!コナミ!!」

 

柚子が。

 

「コナミ!」

 

そして遊矢が。

 

「任せた!!」

 

皆それぞれが声を上げ、コナミに声援を送る。こんな状況でも誰一人コナミの勝利を疑わない。何故だか分からないが、胸がどうしようもなく熱くなる。負けられない、負けたくない。――だから――未来を信じてドローした。

 

「任せろ!!」

 

ドローしたカードに視線を移す。それは確かに勝利へのピース。だがこれだけじゃ足りない。そう思い、ビルとビルの間を蹴り、空中に浮かぶカードを手に取る。これで――。

 

「勝利の方程式は完成した」

 

「何?」

 

コナミの勝利宣言に目を吊り上げる零児。それもそのはず。この圧倒的不利を覆すと言うなら正しく奇跡なのだから。だがこのデュエリストは。

 

「手札を1枚捨て、魔法発動」

 

容易く奇跡を起こす。

 

「『ペンデュラム・コール』!!」

 

「何!?」

 

コナミが発動したカード。『ペンデュラム』の名を持つそのカードに驚愕の声を上げる零児。まさかこの男は、と脳裏にある光景が過る。

 

「オレも、オレと同じく3つの召喚法を操るお前に面白い物を見せてやる」

 

先程の零児の焼き回しのような台詞に眉をひそめ、歯を食い縛る零児。

 

「カード名が異なる2体の『魔術師』モンスターを手札に加える!オレは『竜脈の魔術師』と『竜穴の魔術師』を手札に加える!」

 

コナミの手札に通常モンスターと魔法カードが合わさったようなカードが加えられる。それは正しくペンデュラムカード。コナミが興味を示したコナミも知らないカード。だからこそ、使い方が分からなかった。

 

「お前のお陰で使い方は分かった」

 

「ッ!!」

 

見れば、できる。

 

「オレはスケール1の『竜脈の魔術師』とスケール8の『竜穴の魔術師』でペンデュラムスケールにセッティング!!」

 

2枚のカードが光のプレートの両端に叩きつけられ、デュエルディスクが七色に光る。

 

「お前の先程の言葉を聞く限り、スケールとスケールの間のレベルのモンスターが特殊召喚できるようだ。つまり俺が召喚できるのはレベル2からレベル7までのモンスター」

 

ならば手札のこのモンスターは召喚できる。

 

「揺れろ光のペンデュラム!虚空に描け魂のアーク!ペンデュラム召喚!」

 

夜空に巨大な光の魔方陣が現れ、一筋の閃光がコナミの前に降り立つ。その姿は竜、赤と緑のオッドアイを輝かせ、胸に青の球体を抱く真紅の竜。背の二本角を唸らせ咆哮する、その竜の名は。

 

「世にも珍しい二色の目を持つ龍!『オッドアイズ・ドラゴン』!!」

 

オッドアイズ・ドラゴン 攻撃力2500

 

コナミの前に現れた真紅の竜、その存在にこの場全員が驚愕し注目する。しかし。

 

「『オッドアイズ・ドラゴン』……?残念ながらそのモンスターでは私のモンスターを倒す事など」

 

「倒せないなら、届かせる」

 

その言葉に誰よりも早く反応したのは榊 遊矢、かつてこの竜を使役した少年。

 

「『オッドアイズ・ドラゴン』の効果は相手のモンスターを破壊し、墓地に送った場合、その攻撃力の半分のダメージを与える。でも……」

 

「『オッドアイズ・ドラゴン』の攻撃力は2500……これでは……」

 

遊矢に続くように言葉を紡ぐ権現坂。そんな彼等に。

 

「1つだけあるわ」

 

柚子が1つの可能性を見つけ出す。

 

「だが、どうやって!?」

 

「あるじゃない!一発逆転の、この逆境を覆すそんなカードが!アクションマジックが!」

 

そう、アクションデュエルだけの、デュエリストの希望とも取れる可能性のカード。もしもそのカードを見つけ出し使う事が出来たなら。

 

「攻撃力を500、500だけ上げれば」

 

「ペンドラゴンを破壊し、戦闘ダメージと合わせて1700のダメージを与え勝利できる……!」

 

コナミが掴み取った一発逆転の可能性、勝利の方程式に色めき立つ遊勝塾。彼等の期待に応えるべく、コナミは真紅の竜に跨がり移動を始める。

 

「くっ!させるか!」

 

そんな彼の邪魔をするべく、漆黒の龍の背に乗りコナミを追う零児。彼等の前には1枚のカード。あと10㎝

 

「いっけー!コナミお兄さーん!!」

 

あと7㎝

 

「零児さんっ!!」

 

あと5㎝

 

「コナミ!頑張って!」

 

あと3㎝

 

「コナミ!」

 

あと1㎝、コナミがカードを掴もうとしたその時。

 

 

 

 

 

カードが光となって消えた。いやカードだけじゃない『マジカル・ブロードウェイ』が、零児の王達が、『オッドアイズ・ドラゴン』が光となって消えていく。

 

「これは……一体……?」

 

目の前で起こる出来事に目を瞬かせ、動揺するコナミ。その原因は直ぐに分かった。

 

「うおおおぉぉぉぉ!?ソリッドビジョン投影装置が煙を上げてるぅ!?」

 

ソリッドビジョン投影装置の故障。それによりデュエルが中断されたのだ。ならば普通のスタンティングデュエルで決着を着けよう、そうコナミが考えた時。

 

「なんですって!?」

 

観客席の日美香が声を上げる。どうやら通信機器で連絡を取っているようだが、それにしては様子がおかしい。

 

「零児さん!!」

 

日美香の呼び掛けに軽く頷く零児。彼はコナミと遊矢を一瞥した後。

 

「決着は舞網チャンピオンシップでつける」

 

そう言って踵を返し、マフラーをふわりと靡かせ帰っていく。しかしふと何を思ったのか立ち止まり。

 

「その時には君達のペンデュラムのその先を、見たいものだ」

 

その言葉を最後に零児は、LDSは遊勝塾を立ち去った。彼の言うペンデュラムのその先が何なのかは今は分からない。ただ、今は遊勝塾の皆と仲間と危機が去った事を喜びたいと思った。

――ただ2人、コナミを観察するかのような紫雲院 素良と複雑な表情をした遊矢を除いて――

 

――――――

 

「終わったか……」

 

コンテナが並ぶ湾岸、男はそこにいた。口元にスカーフを巻きサングラスで自らの鋭き目を隠し、コートを着た男。男の周りには何人ものデュエリスト達が呻き声を上げながら伏せていく。正に死屍累々と言ったところか。男はサングラスを外し、その猛禽類のごとき眼でデュエリスト達を一瞥し、相棒に語りかける。

 

「何故、カード化しない」

 

男の視線の先にはコンテナの上でカチャカチャと自分のデュエルディスクをいじる、重々しいヘッドフォンを首に下げた黒い帽子の少年が座り込んでいる。

 

「……そんな事をやってみろ、もう、そいつ等とデュエルができない」

 

男の方を見向きもせず答える黒帽子の少年。少年にとってデュエルこそが全て、そう言うように。

 

「……甘いな……しかしユートの奴め……あれ程単独行動は控えろと言っておいて……」

 

「全くだ」

 

眉をひそめ苦々しい顔で舌打ちする男、黒帽子の少年も表情こそ変えないが同意する。

 

「さて……次はどうする?」

 

――コナミ――

 

 




と言う訳でコナミ君のエースカードはオッ素です。書き換える可能性はなきにしもあらず。

オッ素「えっ」

リミテッド・バリアンズ・フォース「俺で慣れておけ……」

ドン千「書き換える?書き換えちゃう?」うずうず

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