遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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ディメボも押さえられず、入荷もしない。近くのショップで目当てである調弦がシングルで売ってるのを見て「おお!」と思ったのも束の間、お値段2000ちょっと。……足元見やがって……!財布の魔術師に改名しろ!とショーケースを蹴りたくなった。今は値が落ちるのを待つのじゃ。


第73話 行くしかあるまい!

天に輝く太陽が沈み始め、山吹色に燃える頃、榊 遊矢はその背にスヤスヤと眠るアリトを背負い、火山エリアを駆けていた。

その傍には隼の姿。彼等はオベリスク・フォース達を見事倒し、仲間達の下へと急いでいる途中なのだ。

 

「……しかし、本当に気持ち良さそうに寝てるな。アリト、だったか?叩き起こしてやりたくなる。ところで重くないか遊矢?何なら俺が変わるが……」

 

「うん、そうしたいんだけどさ……」

 

アリトを背負う遊矢を心配し、隼が交代の申し出をかけるも、遊矢はそれを渋る。一体どう言う事だろうか、首を傾ける隼に、まぁ、こう言う事だけど。と遊矢がアリトを近づけた瞬間、アリトの鼻がひくひくと動き、その顔色が変わる。

 

具体的に言えば、にへらとだらしなく口元を緩め、涎を垂らし幸せそうな表情から、異臭を嗅いだような、しかめっ面となり、豚の如く「フガッ」と鼻を鳴らすものへと。

明らかに態度が違う。その変貌っぷりに隼が額に青筋を浮かべ、アリトの肩を掴んで激しく揺する。

 

「貴っ様ぁ!何だその顔は!?俺に背負われるのが嫌なのか!?ええおい!臭いのか!臭いと言うのか俺が!そりゃエクシーズ次元でアカデミアと闘っていた頃は風呂に入れない時もあったがなぁ!今はLDSで世話になっているから臭くない筈だ!匂ってみろ!もう1度匂ってみろ!」

 

「ちょっ!?隼、やめっ、背負っ、ているからっ、俺も揺れるっ!」

 

その表情を憤怒に変え、ひたすらにアリトを揺する隼。当然彼を背負っている遊矢にもとばっちりが来る。ここまでされてもアリトは眠ったまま、それどころか遊矢から離れまいと両腕を巻き付け、両足を腰へと回し、所謂逆だいしゅきホールドをかける。男同士なので遊矢にとっては何の得にもならず、むしろ腰にナニか固いものが当たって気が気でない。

 

「貴っ様ぁ!何を遊矢にだいしゅきホールドをしているんだ!ナニを押しつけているんだ貴様はぁ!?当ててんのよして良いのは乳だけだこの馬鹿めぇっ!」

 

「ぐえっ、ちょっ、苦しい……っ!首、絞めてる絞めてるっ!うひぃ腰にも当たってりゅぅ!た、助けっ、ユート!」

 

慌ただしく、騒がしく、ギャーギャーと叫ぶ2人。隼がアリトを引き剥がそうとすれば、アリトの腕が遊矢の首を絞め、更に腰に当たるナニかの感触が強くなる。阿鼻叫喚の地獄絵図。そこから何とか脱出しようと本来触れる事が出来ないユートにまで助けを求める遊矢。するとユートは薄い笑みを溢し、遠い目をしながら空を見上げる。

 

『夕日が、綺麗ダナァ……』

 

「ユゥゥゥゥゥトッ!!ヘルプ!ヘルプミーッ!」

 

『うるさいっ!もう面倒事は御免だ!俺は休暇を取るんダァーッ!』

 

ユートに助けを求めるも、肝心の本人が現実逃避し始めた。いきなりのキャラ崩壊に思わず「ええ……」と呟く遊矢。

すると、こんな馬鹿なやり取りをしている内に、一陣の風を吹かせ、1つの影が遊矢の下に現れる。黒髪を後ろで一括りに結び、青いマスクにマフラー、忍装束に身を包んだその少年は、ボロボロに傷ついた姿で息を切らし、遊矢達の前で膝をつく。

 

「っ、月影!?どうしたんだその姿!何があった!?」

 

「ゆ、遊矢殿……!すまぬ、今すぐに拙者について来て下さらんか!兄者や権現坂殿が危ないのだ!」

 

「権現坂と日影が!?隼!」

 

息も絶え絶え、全速力で駆けていたのか、胸をおさえ、危機を知らせる月影。遊矢はそんな彼に応える為、小さく頷き、隼へと視線を投げ掛ける。すると彼も話を聞き、やるべき事を理解したのか頷き返し、口火を切る。

 

「行くしかあるまい遊矢!」

 

「応!」

 

――――――

 

一方、俺より強い奴に会いに行く。と言った様子で火山エリアを駆けていたコナミと、その子分である暗次は2人のデュエリストと相対していた。

 

軍帽を被り、白い制服を纏った金髪の男女。

男の方は帽子のつばを抑え、どこかスカした印象が残り、日系では無いのか、長身だ。

女の方も日本人では無いのか、服の上からでも分かる程美しいプロポーションをしている。

 

突然立ちはだかる2人組、その表情はお世辞にも友好的なものでは無い。ニヤニヤとこちらを見下したような態度を取る2人に、焦りを覚え、先に進みたいコナミは苛立つ。

 

「……何の用だ?オレは急いでいるんだ、そこを退け」

 

「ハッ、そりゃあ酷いんじゃない?ケナミ。Me達をあれだけボコボコにしてその態度はさぁ、折角人がリベンジに来たって言うのに。ねぇ、マック、マッケンジー、そうだろう?」

 

ギロリ、コナミにしては珍しく、敵意を隠す事無く、2人を睨み、ドスの効いた声音で威嚇する。しかし男はどこ吹く風、鼻を鳴らし、首をすくめてやれやれと両手を参ったのポーズにする。

それに同意するように、男にマッケンジーと呼ばれた女はクスリと右手を口に当て笑い、小さく頷く。

 

「そうねデイビット。私達はエクシーズ次元でYouに負けた事を1度たりとも忘れた事なんて無いのに……ところでパートナーは何処?確か、ウートと言ったかしら、ケナミ?」

 

「……何を勘違いしているか知らんがオレはコナミだ。ケナミ、なんて頭の悪そうな名じゃない、別を当たるんだな」

 

「ん、ああソーリー、日本人の名前は発音が難しいね、ケナミ」

 

「……」

 

こいつ、態とか、名を訂正したにも関わらず、それでも小馬鹿にしたようにケナミ、と間違える男、デイビットへと視線を移し、舌打ちを鳴らすコナミ。

 

この手の奴は無視するに限る。コナミが暗次にチラリと目で合図し、多少強引にでもこの場を突っ切ろうとした瞬間、ヒュンッ、と言う空気を裂く音と共に2本の細い線がコナミと暗次、それぞれのデュエルディスクに絡み付く。

 

しまった――油断していた。そう考えた時には既に遅い。絡み付いたワイヤーがクイッ、と引っ張られ、ジャリジャリとコナミ達の足が地を削る。

 

「これ、便利だよね。プロフェッサーにお願いしてつけてもらったんだ。これで逃げられないよ、そこのYouでも良いから2対2のデュエルをしよう」

 

「デイビット、残念ながらここではタッグじゃなくてバトルロイヤルルールになるみたいよ」

 

「ガッデム、なんて事だ!でもまぁ良いか!兎に角デュエルをしよう!ケナミ?」

 

言いたい放題、やりたい放題とコナミと暗次を拘束し、デュエルを挑みにかかるデイビットとマッケンジー。2人のアカデミアからの使者。こうなっては仕方無い。コナミは諦めた様子でデュエルディスクを構える。

 

「暗次、速攻で終わらせるぞ」

 

「え、りょ、了解ッス!」

 

暗次に視線を移し、強気の台詞を飛ばすコナミ。彼らしく無い言動に暗次は違和感を覚えるが――とは言え、自らの慕う兄貴分と組んでデュエルが出来るのだ。暗次はニカッと笑い、D-ホイールからデュエルディスクを外し、アカデミアの2人組の前へと出る。

 

「「「「デュエル!!」」」」

 

チャンピオンシップ終盤戦、先攻は暗次だ。彼はデッキから5枚のカードを引き抜き、戦術を整える。手札は悪くない。バトルロイヤルルールでは1ターン目は誰もが攻撃が不可能な為、ここは臆さず行くべきだろう。

 

「俺のターン、俺は『クリバンデット』を召喚!」

 

クリバンデット 攻撃力1000

 

現れたのはコナミもデッキに投入している、黄色いスカーフを頭に巻き、眼帯を着けた小さな毛むくじゃらの悪魔だ。優秀な墓地肥やし、『暗黒界』と同じ悪魔族の為投入したカードだ。

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンド。この瞬間、『クリバンデット』をリリースし、デッキの上から5枚を捲り、『手札抹殺』を手札に!」

 

黒門 暗次 LP4000

フィールド

セット1

手札4

 

『クリバンデット』の効果で『手札抹殺』を手札に加えられた上、墓地に落ちたカードも悪くない。これならば次のターンから暴れる事が出来そうだ。

ターンは暗次から回り、マッケンジーへ。彼女は暗次のプレイングに「ふぅん?」と小さく呟き、デッキからカードを引き抜く。

 

「私のターン、ドロー!私は手札の『ヘカテリス』を捨て、永続魔法、『神の居城―ヴァルハラ』をデッキからサーチし、発動!自分フィールドにモンスターが存在しない場合、手札から天使族モンスターを特殊召喚出来る!『光神テテュス』を特殊召喚!」

 

光神テテュス 攻撃力2400

 

自分フィールドにモンスターが存在しない事を条件とした、モンスター特殊召喚効果。それによりいきなり上級天使族モンスターが現れる。天使族において優秀なドローソースとなるモンスターだ。

 

「『勝利の導き手フレイヤ』を召喚」

 

勝利の導き手フレイヤ 攻撃力100→500

 

光神テテュス 攻撃力2400→2800

 

現れたのは豊穣の女神の名を持ち、手足に光輪、首飾り、ポンポンを握ったチアリーダー風のモンスター。その姿は伊達では無く、フィールドにの天使族の攻撃力を400アップする。

 

「カードを2枚伏せ、ターンエンドよ」

 

レジー・マッケンジー LP4000

フィールド『光神テテュス』(攻撃表示)『勝利の導き手フレイヤ』(攻撃表示)

『神の居城―ヴァルハラ』セット2

手札1

 

「オレのターン、ドロー!オレは『慧眼の魔術師』2体でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

コナミが2枚のカードを翳した後、デュエルディスクの光輝くプレート、その両端に叩きつける。瞬間、彼の背に2本の柱が伸び、その中に全く同じ姿の『魔術師』が現れる。虹色の光を放つデュエルディスク、突如視界を覆う見た事も無いカードにデイビットとマッケンジーが驚愕の表情を浮かべる。

 

「ペンデュラム……!?」

 

「その反応は飽きた!慧眼のペンデュラム効果発動!このカードを破壊し、デッキの『竜穴の魔術師』と『刻剣の魔術師』をセッティング!揺れろ、光のペンデュラム!虚空に描け魂のアーク!ペンデュラム召喚!エクストラデッキより2体の『慧眼の魔術師』!『相克の魔術師』!」

 

慧眼の魔術師 攻撃力1500×2

 

相克の魔術師 攻撃力2500

 

柱の中の『魔術師』がそれぞれ錫杖と剣を翳し、上空に光の線を結び、巨大な魔方陣を描き出す。更にその中心より孔が開き、3本の線が轟音と共に地に落ち、突風を吹き荒らす。光の粒子が粉となって散り、フィールドに現れたのは3体のモンスター。

秤を持ち、衣装に瑠璃の珠を散りばめた美しい銀髪の『魔術師』2体と上下両刃を持った大剣を構えた最上級の『魔術師』。

いきなり3体も、それも上級モンスターを含めた召喚に2人が目を見開く。

 

「ワオ!?凄い召喚だね!ペンデュラム召喚……それ位やって貰わなきゃ、Me達も強くなった甲斐が無いって奴かな?」

 

「オレは『ジェット・シンクロン』を召喚」

 

ジェット・シンクロン 攻撃力500

 

デイビットの言葉も無視し、コナミが更にその手を進める。火炎を吹かせ、青と白のカラーリングの小さなジェットエンジンを模したモンスターがフィールドに降下する。弾丸にも似たそのモンスターはコナミの持つチューナーの中でも優秀なカードだ。

 

「まずはレベル7の『相克の魔術師』にレベル1の『ジェット・シンクロン』をチューニング!星海を切り裂く一筋の閃光よ!魂を震わし、世界に轟け!シンクロ召喚!『閃光竜スターダスト』!」

 

閃光竜スターダスト 攻撃力2500

 

『ジェット・シンクロン』の身体が弾け、グリーンカラーのリングとなって『相克の魔術師』を包み込む。するとその姿から色素が抜け落ち、7つの星が並び、光が貫く。星はその並列を変え、竜の星座を作り、現実となってその美しい体躯を見せる。

白き翼に鋭角なシルエット、星屑を纏ったその竜は両腕を組、空気を裂くような咆哮を放つ。

 

「シンクロ……ねぇ」

 

「『ジェット・シンクロン』の効果で『ジャンク・コレクター』をサーチ、次だ2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!我が戦いはここから始まる、白き翼に望みを託せ、現れろ!No.39!エクシーズ召喚!希望皇ホープ!」

 

No.39希望皇ホープ 攻撃力2500

 

スケールの間のモンスターを召喚するペンデュラム、レベルを足すシンクロ、そしてその次はレベルを合わせ、重ねるエクシーズ。コナミは2体の『慧眼の魔術師』を素材に、背後で渦巻き発生する星空に飛び込ませ、一気に集束させる。

火花を散らす小爆発、荒ぶ土煙を切り裂き、現れたのは金色の鎧を纏い、白き翼を広げた希望の皇。その腰から引き抜いた2刀の剣を煌めかせ、自身の名を高らかに叫ぶ騎士を視界におさめ、デイビットとマッケンジーがニヤリと笑う。

 

「ホープ……!待っていたわそのモンスターを!そのモンスターを倒してこそ、私達のリベンジが達成される!」

 

「……何でこう、お前達はホープに対してオーバーリアクションなんだ……いやまぁ、恐らくはそう言う事だろうが。……恨むぞもう1人のオレ……カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

コナミ LP4000

フィールド『閃光竜スターダスト』(攻撃表示)『No.39希望皇ホープ』(攻撃表示)

セット1

Pゾーン『竜穴の魔術師』『刻剣の魔術師』

手札2

 

「やっとMeのターンか、ドロー!Meは『マシンナーズ・ギアフレーム』を召喚!」

 

マシンナーズ・ギアフレーム 攻撃力1800

 

巡り巡って最後のターンプレイヤー、デイビットがデッキよりカードを引き抜き、手札から1枚のモンスターカードをデュエルディスクに叩きつける。

現れたのはオレンジ色の人型ロボット。そのモノアイがグリグリと動き、コナミ達を捉える。

 

「『マシンナーズ・ギアフレーム』のエフェクトにより、Meはデッキの『マシンナーズ・フォートレス』をサーチする!更に『マシンナーズ・メガフォーム』を捨て、『マシンナーズ・フォートレス』を特殊召喚!」

 

マシンナーズ・フォートレス 攻撃力2500

 

ギアフレームの隣にギャリギャリとキャタピラの擦れる音を響かせ、新たなモンスターが現れる。巨大な銃を装備し、戦車のような姿をした青き機体。

機械族では簡単に特殊召喚、自己蘇生能力を持つ小回りの効くカードだ。ステータスこそ劣るものの、暗次の持つ『暗黒界の龍神グラファ』と同系統のモンスターと言える。

 

「永続魔法、『機甲部隊の最前線』と『補給部隊』を発動。カードを1枚伏せ、ターンエンドさ」

 

デイビット・ラブ LP4000

フィールド『マシンナーズ・フォートレス』(攻撃表示)『マシンナーズ・ギアフレーム』(攻撃表示)

『機甲部隊の最前線』『補給部隊』セット1

手札1

 

全てのプレイヤーのターンが終了し、戦闘可能な2ターン目に。この1ターンでコナミは目の前の2人のデッキを見抜く。

デイビットは後続を呼び、安定した戦線を維持する『マシンナーズ』デッキ、マッケンジーはどのような型かは分からず、少々不気味だが、特殊召喚が容易な天使族モンスター主体のデッキのようだ。

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『手札抹殺』!互いに手札を捨て、その分だけドローする!そして手札から捨てられた『暗黒界の尖兵ベージ』、『暗黒界の武神ゴルド』を特殊召喚!」

 

暗黒界の尖兵ベージ 攻撃力1600

 

暗黒界の武神ゴルド 攻撃力2300

 

これこそが『暗黒界』の強み。手札から捨てる事で様々な効果を発揮する。フィールドに召喚されたのはベージュ色の骨格の鎧を纏い、槍を構える悪魔と刺々しい体躯に巨大な翼、斧を握った屈強な黄金の悪魔。一気に2体の特殊召喚だ。

 

「俺はフィールドのベージを手札に戻し、墓地の『暗黒界の龍神グラファ』を特殊召喚!!」

 

暗黒界の龍神グラファ 攻撃力2700

 

早期決着を望み、暗次がエースカードを召喚する。漆黒の体躯に、恐竜の頭蓋の兜を被り、山羊のように捻れた角を伸ばした竜。その全身は凶器かと見間違う程、攻撃的で刺々しく、その背には紫電を放つ翼が広がっている。

『マシンナーズ・フォートレス』と同じく、自己蘇生能力を内蔵したモンスター。コストはカテゴリ内に限定されるものの、手札に戻す為、再度使いやすく、そのステータスも高い。

 

「チューナーモンスター、『魔轟神レイヴン』を召喚!」

 

魔轟神レイヴン 攻撃力1200

 

次に暗次が召喚したのはこのデッキで活躍するもう1つのカテゴリ、『魔轟神』の代表的なチューナーモンスター。

烏の仮面を被り、腕に赤黒い羽を生やした神の名を語る光の悪魔。『暗黒界』と同じく、手札を捨てる事で効果を発揮するカードが多い為、共存が出来るテーマだ。

 

「フィールド魔法、『暗黒界の門』を発動!」

 

暗黒界の龍神グラファ 攻撃力2700→3000

 

暗黒界の武神ゴルド 攻撃力2300→2600

 

魔轟神レイヴン 攻撃力1200→1500

 

ゴゴゴゴと激しく地響きが轟き、地中より巨大な門がそびえ立つ。パラパラと被った砂が溢れ落ち、ギィィィィィッ、悪魔の断末魔の如く門が開く。この火山エリアには良く似合った恐ろしい門だ。中より溢れ出る瘴気を受け、暗次のモンスターが強化される。

 

「これで思う存分やれるってもんだ!バトル!グラファでテテュスを攻撃!」

 

「罠発動、『光子化』!その攻撃を無効にし、次のターンの終了時までグラファの攻撃力をテテュスに加える!」

 

光神テテュス 攻撃力2800→5800

 

「何ぃ!?」

 

グラファがその巨大な翼で羽ばたき、野太い剛腕を振るい、テテュスを引き裂こうとした瞬間、眩き光がグラファの視界を覆い、堪らず両腕をクロスさせ目を閉じる。光はグラファより力を奪い、テテュスの身体へと宿る。攻撃無効に加え、強化、それによりテテュスの攻撃力が5800まで膨れ上がる。

 

「ッ、ならゴルドでフォートレスに攻撃!」

 

デイビット・ラブ LP4000→3900

 

「ハッハァ!そう来ると思ったよ!永続魔法、『機甲部隊の最前線』のエフェクトでフォートレスより攻撃力の低い同属性の機械族モンスター、『マシンナーズ・スナイパー』を特殊召喚!フォートレスのエフェクトで『暗黒界の門』を破壊!『補給部隊』で1枚ドロー!」

 

マシンナーズ・スナイパー 攻撃力1800

 

デイビット・ラブ 手札1→2

 

回る回る、デイビットのカード効果の数々、その様は正しく部隊。『機甲部隊の最前線』で次のモンスターを特殊召喚して戦線を維持し、『補給部隊』で次の手を整え、フォートレスで戦力を削る。お手本通りの精密なデュエル。本人の言動とは違って至って真面目で正確な戦術だ。

 

「ッ、強い……!オベリスクなんちゃらとは比べ物になんねぇ……!」

 

「だって当然だろう?Me達はオベリスク・フォースを率いるスペシャルなクラスなんだから。同じにされちゃ堪らないよ」

 

「アカデミア特記戦力、覇王、ジューリ、総司令官、バレット教官、BB、タイラー姉妹、響姉弟と数あれど、私達のデュエルの正確さは常にNo.1!更に昇華したこのデュエルでケナミ!Youは不様にカードとなるのよ!」

 

成程、今までの敵とは一味も二味も違うと言う事か。確かにオベリスク・フォースよりも実力は高く、また率いているとだけあってオベリスク・フォース達のカード1枚1枚を組み合わせて闘う戦略も似通っている。

意外性や爆発力は神楽坂が上だが――単純に実力を見るならば、もしかすると、こちらの方が上かもしれない。

 

「メインフェイズ2、俺はレベル8のグラファにレベル2のレイヴンをチューニング!シンクロ召喚!『魔轟神レヴュアタン』!!」

 

魔轟神レヴュアタン 守備力2000

 

シンクロ召喚、暗次がグラファへとレイヴンをチューニングし、新たなモンスターを呼び起こす。

フィールドに姿を見せたのは銀色の玉座に腰掛ける真っ赤な悪魔。金色の装飾を交えた真紅の鎧を纏い、ワインレッドの翼を広げた朱髪の神。残念ながらテテュスの攻撃力が上の為、守備表示での登場だが、それでも彼が放つ威圧感は凄まじい。

 

「ゴルドを手札に戻し、墓地のグラファを蘇生!!」

 

暗黒界の龍神グラファ 守備力1800

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンドだ!」

 

黒門 暗次 LP4000

フィールド『暗黒界の龍神グラファ』(守備表示)『魔轟神レヴュアタン』(守備表示)

セット2

手札3

 

「私のターン、ドロー!この瞬間、テテュスの効果により、ドローカードである天使族モンスター、『緑光の宣告者』を公開し、!もう1枚ドロー!ドローカードは『アテナ』!もう1枚ドロー!『紫光の宣告者』!ドロー!『シャイン・エンジェル』!ドロー!『崇高なる宣告者』!ドロー!『コーリング・ノヴァ』!ドロー!ここで打ち止めね」

 

レジー・マッケンジー 手札2→3→4→5→6→7→8

 

とんでもないドローブースト。このターンの通常ドローも合わせて7枚のドローか。公開された情報とは言え、とんでも無い枚数になってきた。『暗黒界』のスーパードローやコナミのディステニードローも真っ青である。

 

「フィールド魔法、『天空の聖域』を発動し、フレイヤを守備表示に変更、『コーリング・ノヴァ』を召喚!」

 

コーリング・ノヴァ 攻撃力1400→1800

 

マッケンジーのフィールドが光満ち溢れる雲の上の神殿へと変化し、厳かで神聖な空気を醸し出す。そこに現れたのはリング状となったものに翼が生えた一見、無機物に見える天使族モンスター。

 

「バトルよ!テテュスでホープに攻撃!」

 

「ホープのORUを1つ取り除き、効果発動!その攻撃を無効に!ムーンバリア!」

 

ホープが翼を前に差し出し、盾とする事でテテュスの攻撃を防ぐ。どれだけ攻撃力を上げたとしても、無効にされてはそこで終わり。この皇は自らが殺意を持つのは構わないが、殺意を向けられるのは嫌いなのだ。

 

「『コーリング・ノヴァ』で『マシンナーズ・スナイパー』へ攻撃!」

 

「ッ、仲間割れ……!?」

 

「いや、これは――」

 

「スキンシップみたいなものさ!」

 

突如『コーリング・ノヴァ』が『マシンナーズ・スナイパー』へ突撃し、狙撃によって迎撃、相討ちとなる。いきなりパートナーに牙を剥ける行為を見て、暗次が目を見開くが、これも戦略の内。

 

「戦闘破壊された『コーリング・ノヴァ』の効果でデッキの『天空騎士パーシアス』を特殊召喚!」

 

天空騎士パーシアス 攻撃力1900→2300

 

現れたのは青い鎧を纏った金髪の騎士。その下半身は白馬となっている。

この為に自爆特攻をした訳か、成程、コナミに仕掛けたのならホープか罠によって避ける可能性がある。しかしデイビットに仕掛けるならそれを通すのは分かる上、コナミもホープの効果を使うのには躊躇う。そして――。

 

「Meも、『機甲部隊の最前線』で『マシンナーズ・ピースキーパー』を特殊召喚し、『補給部隊』でドロー!」

 

マシンナーズ・ピースキーパー 守備力400

 

デイビット・ラブ 手札2→3

 

こう言う事も出来ると言う訳だ。デッキ圧縮に手札補充、パートナーのサポートにもなる。確かにこれは良いスキンシップだ。

 

「HAHAHA!どうだい?You達とは違うのさ!」

 

「何ぃ!?どう言うこったガイコクジン!」

 

右手で顔を抑え、高らかに哄笑を上げるデイビット。You達とは違う、それは恐らくコンビネーションの事だろう、その台詞に暗次が犬歯を剥き出しにして食って掛かる。彼としては兄貴分であるコナミと息が合わないと言われればそうなるのだろう。

 

「気がついてないの?Youは『手札抹殺』でケナミの『ジャンク・コレクター』を墓地に送ったのよ」

 

「ッ!そりゃあ……!兄貴、俺……!」

 

確かにそうだ。あの時、暗次は自分のデュエルを行う余り、折角コナミがサーチした『ジャンク・コレクター』を捨ててしまったのだ。

その事実に暗次がグッ、と唇を噛み、申し訳なさそうにコナミに振り向く。

タッグじゃないからこそ、バトルロイヤルだからこそ、そのプレイングに気をつけねばならない。1つのプレイングが味方を不利にする可能性があるからだ。

 

「気にするな、確かに少しは考える事も必要だが――オレは勢いに任せたお前のデュエルの方が好きだ。敵の言葉に惑わされず、思い切りやれ」

 

だがコナミは暗次に檄を入れる。暗次の本来の武器は思い切りの良さや大胆極まりないプレイングだ。流石にウイルスカードは我慢して欲しいが、暗次の長所を潰す方が痛手だ。

 

「兄貴……分かりました!ウイルスばらまいてハンデスさせます!」

 

「それはやめて。オレまでハンデスしちゃう」

 

ウイルスカードは本気でやめてもらわなければならない。

 

「続き、良いかしら?パーシアスでグラファに攻撃!パーシアスは貫通攻撃を持っているわ!」

 

黒門 暗次 LP4000→3500

 

パーシアスにより光の斬撃がグラファを切り刻み、破壊して砕け散った欠片が暗次に襲いかかる。微量なダメージだ。グラファもフィールドに戻る為、大した痛手では無いが――

 

「パーシアスの効果!戦闘ダメージを与えた場合、1枚ドロー!」

 

レジー・マッケンジー 手札6→7

 

ここで更にドローブーストがかかる。確かに彼女の扱うデッキには手札が必要だろう。だからと言ってここまで必要では無い筈だが。手札と言うものは1番分かりやすいアドバンテージだ。こうまで増やされるとコナミは暗次にウイルスカードの許可を与えたくなる。

 

「メインフェイズ2、私は魔法カード、『打ち出の小槌』を発動!手札の3枚をデッキに戻し、3枚ドロー!ドローしたカードは『朱光なる宣告者』!もう1枚ドロー!ドローカードはテテュス!もう1枚ドロー!」

 

レジー・マッケンジー 手札3→6→7→8

 

ここでまさかの手札交換カード、これでは折角の公開情報も一気に役に立たなくなってしまった。しかも『打ち出の小槌』の分も確保する始末である。

 

「永続魔法、『天空の泉』を発動。カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

レジー・マッケンジー LP4000

フィールド『光神テテュス』(攻撃表示)『天空騎士パーシアス』(攻撃表示)『勝利の導き手フレイヤ』(守備表示)

『神の居城―ヴァルハラ』『天空の泉』セット2

『天空の聖域』

手札6

 

襲い来る舞網チャンピオンシップ、最後のアカデミアからの刺客、恐ろしいまでのコンビネーションを誇る2人を前に、焦るコナミ。早くしなければ、奴まで辿り着けない。

そんな彼を――暗次は心配そうに見つめていた――。

 

 

 

 




と言う訳で今回の相手はMeとマッケンジーちゃん。デッキはマシンナーズと宣告者軸の天使です。融合体をおくれ(無茶ぶり)。
Me君は強キャラ臭がして好きです。尚使用カードの数とOCG化率と性能。

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