遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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希望の光とかプラスのイメージがつく言葉を片仮名や平仮名で書くとちょっとホラーっぽくなると思うのは僕だけでしょうか。そんな回。


第68話 キボウノヒカリ

激しい攻防が続く黒コナミとユーリ、レジスタンスとアカデミア、最強格同士の一騎討ち。黒コナミの嵐のような攻撃を防ぎ、ユーリがデッキより1枚のカードを引き抜く。

 

「僕のターン、ドロー!僕は魔法カード、『サイクロン』を発動し、『DNA移植手術』を破壊、そして魔法カード、『シャッフル・リボーン』を発動し、墓地の『捕食植物スキッド・ドロセーラ』を特殊召喚!」

 

捕食植物スキッド・ドロセーラ 守備力400

 

「そして魔法カード、『融合』を発動!フィールドのスキッド・ドロセーラと手札の『捕食植物フライ・ヘル』を融合!融合召喚!『捕食植物キメラフレシア』!」

 

捕食植物キメラフレシア 攻撃力2500

 

ついに姿を見せる、ユーリ本来が持つ『捕食植物』の融合モンスター。悪臭を放つ毒々しい赤の花弁を咲かせるラフレシアが牙を剥き、蔦より生えたハエトリグサのような不気味な顎がグルルと唸る。氷上に咲き誇る巨大な花を前に、柚子が僅かな怯えを見せる。

 

「何……あのモンスター……!?」

 

「まだだよ、永続魔法、『プレデター・プランター』を発動し、墓地のモーレイ・ネペンテスを特殊召喚」

 

捕食植物モーレイ・ネペンテス 攻撃力1600

 

「魔法カード、『融合回収』を発動し、『融合』とスキッド・ドロセーラを手札に加え、再び発動!手札のスキッド・ドロセーラとフィールドのモーレイ・ネペンテスで融合召喚!『捕食植物キメラフレシア』!」

 

捕食植物キメラフレシア 攻撃力2500

 

「2体目か……!」

 

「まだまだ!もう1枚『融合回収』を発動!スキッド・ドロセーラと『融合』を回収し、発動!フィールドの2体のキメラフレシアを融合!魅惑の香りで虫を誘う二輪の美しき花よ!今一つとなりて、その花弁の奥の地獄から、新たな脅威を生み出せ!融合召喚!現れろ!飢えた牙持つ毒龍。『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』ッ!!」

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン 攻撃力2800

 

天が裂け、雷が大地を焦がす。2輪の『捕食植物』を糧とし、おぞましき竜がその目を覚ます。額、肩、首、腰、そして尾には赤く輝く宝玉を。腕、指、脚には黄色い宝玉を抱き、巨大な角を唸らせ、背より2つの大口を開き、グチャリと獲物を狙い、唾液を垂らす。

紫の体躯持つ飢えた竜。その美しくも恐ろしい姿に、黒コナミと柚子が息を飲む。これが――ユーリの切り札。最強の僕となるカード。

 

「それがお前の切り札か……!」

 

ニヤリ、ユーリの持つ竜が現れた事により、黒コナミが獰猛な笑みを描く。この時を待っていたとばかりに笑みを深める彼に対し、ユーリは自慢するように醜悪に笑う。

 

「そう、これが僕の切り札!『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』の効果!融合召喚に成功した場合、相手フィールド上のモンスター1体を選び、その攻撃力をターン終了時までこのカードに加える!僕はホープレイ・ヴィクトリーの攻撃力を奪う!」

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン 攻撃力2800→8000

 

スターヴ・ヴェノムが背より根を伸ばし、天空に赤い実が輝く。攻撃力8000、LPが初期値でも2倍となる凄まじい数値だ。

 

「攻撃力8000……!?」

 

「どうだい?かぁっこ良いだろぉ?僕のドラゴンは!」

 

「優れているのはデザインだけか?その程度の攻撃力で私を倒せると思っているなら舐められたものだ」

 

「……君、ほぉんと生意気だよね。ノリが悪いって言うか。もう良いよ、終わらせてあげるから!」

 

芝居がかった口調でスターヴ・ヴェノムを披露するユーリに対し、ただ淡々と皮肉気に答える黒コナミ。

全くもって癪に触る。苛立ちしか覚えない、ユーリは眉根を上げ、唇を噛んでつまらないと舌打ちを鳴らす。だがそれもこれで終わり、デュエルは中々楽しめたよ、と呟き、ユーリは切り札に命を下す。

 

「手札のスキッド・ドロセーラを墓地に送り、効果発動!このターン、スターヴ・ヴェノムは捕食カウンターが置かれたモンスター全てに攻撃出来る!やれ!スターヴ・ヴェノム!ホープを攻撃ィ!」

 

「罠発動!『聖なる鎧―ミラーメール―』!ホープの攻撃力を攻撃モンスターと同じ数値にする!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー 攻撃力5200→8000

 

「なっ――!」

 

スターヴ・ヴェノムがその翼を広げ、桜色に輝く光線を放った瞬間、突如ホープの身体に眩い光を照らす鎧が纏われ、その光線を跳ね返す。しかし光線の威力も高かったのか、スターヴ・ヴェノムが光に貫かれ、断末魔を上げると同時にホープの鎧が砕け散り、その装甲がボロボロと崩壊する。

相撃ち、切り札同士のぶつかり合いは意外な形で幕を下ろした。

 

「スターヴ・ヴェノムの効果により、フィールドに特殊召喚されたモンスター全てを破壊!」

 

「破壊された『ZW―極星神馬聖鎧』の効果により、墓地の『希望皇ホープ』を蘇生!マエストロークはORUを取り除く事で破壊されない!」

 

「ッ――!」

 

No.39希望皇ホープ 攻撃力2500→3100

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター2→3

 

交響魔人マエストローク 攻撃力2200→2400

 

あっと言う間に形勢逆転。スターヴ・ヴェノムの最後の効果もホープを破壊するだけとなり、黒コナミのフィールドだけにモンスターが残る事になった。

正に油断大敵、己の無警戒さを呪いながら、ユーリは黒コナミを睨む。今更ながら自分が相手をしているデュエリストの実力を認め、ユーリは次の行動に移る。

 

「僕は魔法カード、『一時休戦』を発動し、1枚ドローする」

 

ユーリ 手札0→1

 

黒コナミ 手札2→3

 

「そして『シャッフル・リボーン』を墓地から除外し、『プレデター・プランター』をデッキに戻し、1枚ドロー」

 

ユーリ 手札1→2

 

「カードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

ユーリ LP8500

フィールド

セット2

手札0

 

「私のターン、ドロー!」

 

「この瞬間、キメラフレシアの効果で『再融合』を2枚サーチ!」

 

「もっとだ、もっと私を楽しませろ!この1秒1秒毎に私は強くなる、どうしようも無い程の逆境が進化を促す!私は魔法カード、『死者蘇生』を発動!来い、ホープ!」

 

No.39希望皇ホープ 攻撃力2500→3300

 

希望郷-オノマトピア- かっとビングカウンター3→4

 

「魔法カード、『エクシーズ・トレジャー』発動!場のエクシーズモンスターの数だけドロー!」

 

黒コナミ 手札2→4

 

「この瞬間、永続罠、『便乗』を発動!」

 

「『ZW―荒鷲激神爪』を特殊召喚!」

 

ZW―荒鷲激神爪 攻撃力2000→2800

 

雄々しき魂の叫びが木霊する。更に高みへ、限界を突き破る道を。求道者の如き言葉を放ち、黒コナミがその手札よりホープの新たな神器、2頭の荒鷲を天へと飛翔させる。だがまだまだ、黒コナミの手は尽きない。

 

「マエストロークをリリースし、『ZW―風神雲龍剣』をアドバンス召喚!」

 

ZW―風神雲龍剣 攻撃力1300→2100

 

更なる『ZW』が夜空を昇る。赤い東洋の龍の姿をしたそのモンスターはホープの剣となるカードだ。だが黒コナミの狙いはこのカード達をホープに装備する事では無い。狙いはレベル5のモンスターを2体揃える事――次のエクシーズだ。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『ZW―獣王獅子武装』!」

 

ZW―獣王獅子武装 攻撃力3000→3800

 

鋭き爪が大地を駆る。雄々しい遠吠えが天を裂く。黄金の鬣を伸ばし、白と赤の体躯を見せるのは『ZW』、最強の王。百獣を統べし獅子の姿をしたエクシーズモンスターが今、フィールドに降臨する。

 

「獣王獅子武装のORUを1つ取り除き、デッキから『ZW―阿修羅副腕』をサーチ!更にホープ1体でオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!現れよ、CNo.39、混沌を光に変える使者!希望皇ホープレイ!!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ 攻撃力2500→3500

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター4→5

 

ZW―獣王獅子武装 攻撃力3800→4000

 

ホープがカタカタと音を立て、塔の形へと変形し、突如発生した星空を思わせる渦に吸い込まれ、その中で更に姿を変えていく。

金の鎧を漆黒に、その翼も烏の羽のように黒く、鋭利なものへと。丸みのあったパーツも攻撃的に変化し、黒騎士皇へと進化する。

希望皇ホープレイ、光の使者が咆哮し、フィールドに降り立つ。

 

「『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』の効果発動!」

 

黒コナミ LP1600→1100 手札3→4

 

「『便乗』の効果でドロー!」

 

ユーリ 手札2→4

 

「そして3枚目の『エクシーズ・ギフト』発動!2体のエクシーズモンスターからORUを2つ取り除き、2枚ドロー!」

 

黒コナミ 手札3→5

 

ユーリ 手札4→6

 

連続エクシーズからの連続ドロー。強力なモンスターを召喚した上で黒コナミは更に手札を増やす。手札は5枚、見事なプレイングだ。

 

「そして獣王獅子武装の効果発動!ホープレイへと装備する!闘志が纏いし、その衣。轟く咆哮、大地を揺るがし。たばしる迅雷、神をも打ち砕く!獣装合体ライオ・ホープレイ!!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ 攻撃力3500→6500

 

ガキィィィィンッ、甲高い鉄の音が響き渡る。獅子の身体が変形し、次々とパーツがホープレイへと重なっていく。真紅の鎧に巨大な手甲、光輝く黄金の翼が背より伸び、3倍近く巨体を誇るライオ・ホープレイが闇夜を照らす太陽と化す。

 

「が、合体ロボ……!?」

 

先程のターンのホープレイ・ヴィクトリーもそうだが、このホープを見てしまえば最早そうとしか思えない。メカメカしい男のロマンを詰め込んだようなライオ・ホープレイを見て、柚子が呆れたように呟く。

 

「カードを3枚伏せ、ターンエンドだ」

 

黒コナミ LP1100

フィールド『CNo.39希望皇ホープレイ』(攻撃表示)

『ZW―獣王獅子武装』『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』セット3

『希望郷―オノマトピア―』

手札2

 

「僕のターン、ドロー!手札の『黄金の天道虫』を公開し、LPを500回復」

 

ユーリ LP8500→9000

 

「罠カード、『貪欲な瓶』を発動!墓地の『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』と『一時休戦』、『融合回収』2枚と『レインボー・ライフ』をデッキに戻し、1枚ドロー!」

 

ユーリ 手札7→8

 

「魔法カード、『暗黒界の取引』。手札を交換、墓地の『シャッフル・リボーン』を除外、『便乗』をデッキに戻し、1枚ドロー!」

 

ユーリ 手札7→8

 

「そして2枚の装備魔法、『再融合』を発動!LPを1600払い、墓地のキメラフレシア2体を特殊召喚!」

 

ユーリ LP9000→7400

 

捕食植物キメラフレシア 攻撃力2500×2

 

再びクレバスより蔦を伸ばし、フィールドに咲き誇る真紅の花弁。不気味に蠢き、悪臭を撒き散らす『捕食植物』。しかしこれでも黒コナミには届かない。

どこまで巨大になっても、植物は太陽に届く前に焼き尽くされてしまうのだ。

 

「そして魔法カード、『置換融合』発動!2体のキメラフレシアで融合!融合召喚!『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』!!」

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン 攻撃力2800

 

「スターヴ・ヴェノムの効果により、ライオ・ホープレイの攻撃力を吸収!」

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン 攻撃力2800→9300

 

「ライオ・ホープレイの攻撃力を越えた……!」

 

再びスターヴ・ヴェノムがフィールドに舞い戻り、ライオ・ホープレイの力を奪い尽くす。これで一気に形勢逆転。だがそれでも――黒コナミは動じない。

どこまでも余裕の笑みを崩さず、自分を睨むその堂々たる姿を見て、ユーリは一瞬、ほんの一瞬だがたじろぐ。何だこいつは、何故こうまで――。まるでその姿は蛇。こちらが弱っていく様を淡々と見つめ、機を待つかのような――。

ゾッ、と、背筋に冷たいものが走る。今すぐに倒さねば、LPは圧倒的に勝っている。だがそれでも焦りがユーリを急かす。早く、速く、疾く。目の前の化物を倒さねば安心出来ない――。

 

「ッ!バトル!スターヴ・ヴェノムでライオ・ホープレイに攻撃ィッ!僕の前から消えろぉっ!」

 

カラカラに乾いた喉から、ありったけを振り絞るようにユーリが叫ぶ。1分1秒でも早くこの男を視界から消し去りたい。そうでないと自分がおかしくなってしまいそうで堪えられない。すがりつくかの如く自らの切り札に指示を飛ばし、天上の太陽を打ち砕こうとする。

 

「罠発動。『エクシーズ・リベンジ・シャッフル』!墓地のホープを選択し、攻撃対象となったホープレイをエクストラデッキに戻し、選択したホープを特殊召喚し、このカードをORUとする!」

 

No.39希望皇ホープ 守備力2000→3200

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター5→6

 

だがそれでも届かない。LPは1100、風前の灯火だと言うのに、息を吹きかければ消えてなくなる淡く小さな炎だと言うのに、目の前の希望は決して光を失わない。ギリッ、歯軋りがなる。ガリッ、両の拳を血が滴り落ちる程に力強く握り締める。

 

「スターヴ・ヴェノムでホープを攻撃!」

 

「罠発動!『攻撃の無敵化』!ホープを戦闘から守る!」

 

「ッ、墓地の『置換融合』を除外し、『古代の機械混沌巨人』をエクストラデッキに戻して1枚ドロー!」

 

ユーリ 手札5→6

 

「カードを3枚伏せ、ターンエンド……!『シャッフル・リボーン』の効果で手札を1枚除外」

 

ユーリ LP7400

フィールド『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』(攻撃表示)

セット3

手札2

 

「薄ら笑いはどうした?」

 

「……何?」

 

長く続くデュエルの最中、不意に黒コナミがユーリへと口火を切る。余裕が無くなり、息を切らし、睨むユーリを見ての事だろう。すっかり笑みの無くなったその様子を指摘する黒コナミ。それが――更にユーリを苛立たせる。

 

「ハッ!君とのデュエルに飽きちゃっただけだよ。何度もホープホープと見栄えも無いしね」

 

「ほう、しかし悪いがこれが私の戦術でな、最後まで付き合ってもらおう。私のターン、ドロー!」

 

「キメラフレシアの効果で『融合回収』と『再融合』をサーチ!」

 

「私は魔法カード、『オーバーレイ・リジェネート』発動!このカードをホープのORUとし、ホープ1体でオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!『CNo.39希望皇ホープレイ』!!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ 攻撃力2500→3900

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター6→7

 

「またそれか……!」

 

「またこれだ!『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』の効果でドロー!」

 

黒コナミ LP1100→600 手札2→3

 

「手札を1枚伏せ、永続魔法、『王家の神殿』発動。罠カード、『エクシーズ・リボーン』!墓地の『ZW―獣王獅子武装』を特殊召喚し、このカードをORUに!」

 

ZW―獣王獅子武装 攻撃力3000→4400

 

「ORUを1つ取り除き、荒鷲激神爪をサーチ!」

 

「速攻魔法、『手札断殺』!互いに手札を2枚捨て、2枚ドロー!」

 

「チッ、獣王獅子武装をホープレイに装備!獣装合体ライオ・ホープレイ!!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ 攻撃力3900→6900

 

まるで先のターンの焼き回し、漆黒の騎士皇の身体に真紅の鎧が纏われる。夜空に輝く希望の化身。太陽の眩き光がフィールドを飛翔する。

 

「そしてホープレイの効果発動!LPが1000以下の場合、ORUを1取り除き、このカードの攻撃力を500アップし、相手フィールド上のモンスター1体の攻撃力を1000ダウンする!私はORUを3つ取り除く!オーバーレイ・チャージ!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ 攻撃力6900→8400

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン 攻撃力2800→0

 

ライオ・ホープレイの周囲で回転する3つのORUが弾け飛び、その背がバキリと鳴り響く。両肩から伸びる巨大な腕が背に差された大剣を鞘から引き抜き、赤き稲妻がバチバチと迸る。これこそがライオ・ホープレイの力、逆境の中でこそ輝く希望の光。

 

「ライオ・ホープレイでスターヴ・ヴェノムに攻撃!ホープ剣・トリプル・カオススラッシュ!!」

 

眩き閃光が駆け抜ける。閃く2刀の白刃、そして背の大剣が振るわれ、激しき剣戟の嵐が降り注ぐ。圧倒的攻撃力、一撃必殺の魔剣が毒竜を切り裂こうとした時――ユーリの口角が、グイッ、と不気味に持ち上げられ、歪な笑みを描く。

 

「手札を1枚捨て、罠発動!『レインボー・ライフ』!」

 

「え――?」

 

「『王家の神殿』の効果で伏せていたカウンター罠、『ギャクタン』発動!その効果を無効にし、デッキへ戻す!」

 

「カウンター罠、『魔宮の賄賂』!更にその効果を無効にし、相手は1枚ドローする!」

 

黒コナミ 手札2→3

 

発動された最悪のカード。虹色の輝きが希望の光を染め上げる。ダメージを回復に変換するカード、スターヴ・ヴェノムの攻撃力は0、つまり――8400の攻撃力が、丸々LPと変わる。

その光景に柚子が言葉を失う。そしてユーリは――顔を俯かせ、小刻みに肩を震わせ――ガバリ、喜色に満ちた表情で高らかに笑い始める。

 

ユーリ LP7400→15800

 

「クククッ……ハハハハハ!ヒヒャハハハッ!!どうだい!?君のLPはたった600、そして僕のLPは15800!しかもスターヴ・ヴェノムの効果で君のホープは砕け散った!もう勝てない!どうしようも無いだろう!?」

 

黒コナミのLPは600、対するユーリのLPは15800。しかも頼みの綱のホープも消え失せた。流石に込み上げる笑いを堪え切れない。これで終わり、ここまでどうしようも無い状況を見せてやれば心も折れるだろう。もう駄目だと諦めるだろう。そう、ユーリを希望を抱いていたのだが――。

 

「魔法カード、『貪欲な壺』!墓地の『No.39希望皇ホープ』、『ガガガマジシャン』、『ZW-獣王獅子武装』、『ZW-阿修羅副腕』、『ZW-荒鷲激神爪』をデッキに戻し、2枚ドロー」

 

「――は?」

 

「シャイニング・ドローッ!」

 

黒コナミ 手札2→4

 

「待て、待てよ。何をやっているんだ君は……!?答えろ!その手を止めろ!」

 

ユーリの問いを無視し、黒コナミはひたすらにデッキより光輝くカードを引き抜く。シャイニング・ドローの連続、カードの創造の連発。この逆境も何でもないと言わんばかりの態度に、ユーリの笑みが引っ込み、青筋を立て、黒コナミを睨む。すると、彼は顔を上げ、透明感溢れる声音で、淡々と答える。

 

「何をやっている……?決まっている」

 

――デュエルを、続けている――

 

瞬間、ユーリの背筋に堪え難い悪寒が駆け抜ける。何だ、この怪物は。何だ、この化け物は。諦めないと言う言葉を越えた、おぞましき勝利への執念、いや、違う。これは確信だ。自分が必ず勝利すると信じて疑わない、揺るぎ無き盲信。絶対的な、絶望を喰らい尽くす希望の光。

 

「魔法カード、『ガガガドロー』、墓地の『ガガガガンマン』、『ガガガザムライ』、『ガガガクラーク』の3体を除外し、2枚ドローする。シャイニング・ドローッ!」

 

黒コナミ 手札3→5

 

限界を越え、このデュエル、4回目のシャイニング・ドローが炸裂する。視界を覆い尽くす黄金は放たれる度にその輝きを増し、絶望を塗り潰していく。

 

「オノマトピアのかっとビングカウンターを2つ取り除き、デッキから『ゴゴゴゴースト』を特殊召喚!」

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター7→5

 

ゴゴゴゴースト 攻撃力1900→2900

 

「そして効果で『ゴゴゴゴーレム』を特殊召喚!」

 

ゴゴゴゴーレム 守備力1500→2500

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『No.39希望皇ホープ』!!」

 

No.39希望皇ホープ 攻撃力2500→3700

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター5→6

 

「更に往くぞ!これがもう1つの可能性!魔法カード、『RDM―ヌメロン・フォール』を発動!」

 

「ランクダウン……!?」

 

次なる希望がユーリを襲う。黒コナミが度重なるシャイニング・ドローで発動したカードは『RUM』では無く、『RDM』。進化では無く、原点への帰還を促す、とある少年が友を取り戻す為、新たに創造した希望のカード。

 

「私はその効果により、希望皇ホープをランクダウンする!オーバーレイ・ネットワークを再構築!ランクダウン・エクシーズ・チェンジ!現れろ!No.39!希望の光……進化へと突き進む!原初の記憶を解き放て!天衣無縫の力、希望皇ホープ・ルーツ!!」

 

No.39希望皇ホープ・ルーツ 守備力100→1500

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター6→7

 

ホープが起源の力を解き放ち、その白い身体を光輝く水色のアストラル体へと変化させる。原型を留めながらも、新たな、いや、元の姿を取り戻し、自身の名に刻まれた「ルーツ」を叫ぶ。幻想的な光を帯びたその姿はまるで月。太陽が沈み、次は月が天を照らす。

 

「『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』の効果発動!シャイニング・ドロー!」

 

黒コナミ LP600→100 手札4→5

 

そして対に、黒コナミのLPが100となる。吹けば飛ぶようなLP、『火の粉』1枚で敗北する絶望的な状態。ユーリと天と地程の差があるにも関わらず、それでもこの男は笑みを絶やさない。状況を知らない誰かが見れば男がおかしくなったと考えるだろう。勝つのはユーリだと断言するだろう。だがそれが出来ないからこんな馬鹿げた光景があるのだ。何度攻撃しても通らないからユーリは苛立っているのだ。

 

「カードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

黒コナミ LP100

フィールド『No.39希望皇ホープ・ルーツ』(守備表示)

『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』『王家の神殿』セット2

『希望郷―オノマトピア―』

手札3

 

「僕のターン、ドロー!魔法カード、『貪欲な壺』!墓地の『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』、『ギガプラント』、『イービル・ソーン』、『ローンファイア・ブロッサム』2体をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

ユーリ 手札3→5

 

「速攻魔法、『魔力の泉』!3枚ドローし、1枚捨てる!」

 

ユーリ 手札4→7→6

 

「永続魔法、『プレデター・プランター』を発動!スキッド・ドロセーラを蘇生!」

 

捕食植物スキッド・ドロセーラ 守備力400

 

「そして永続魔法、『超栄養太陽』発動!スキッド・ドロセーラをリリースし、そのレベル+3以下の植物族モンスターをデッキから特殊召喚する!『捕食植物サンデウ・キンジー』を特殊召喚!そしてスキッド・ドロセーラの効果でホープ・ルーツに捕食カウンターを置く!」

 

捕食植物サンデウ・キンジー 守備力200

 

No.39希望皇ホープ・ルーツ 捕食カウンター0→1

 

スキッド・ドロセーラが成長し、現れたのは苔や植物が生えた爬虫類のようなモンスター。その姿は他の『捕食植物』同様、不気味でグロテスクな外見をしたカードだ。

 

「墓地の『シャッフル・リボーン』を除外、『プレデター・プランター』をデッキに戻し、ドロー!」

 

ユーリ 手札4→5

 

「サンデウ・キンジーが存在する限り、自分が融合素材とする捕食カウンターが置かれたモンスターは闇属性として扱い、このカードと自分の手札、フィールド及び、相手フィールドの捕食カウンターが置かれたモンスター1体を墓地に送り、融合召喚する!」

 

「――ほう」

 

驚くべき超効果。スキッド・ドロセーラの効果を合わせる事で、相手モンスターを喰らい、更に成長すると言う、正に『捕食植物』の名に相応しい、おぞましい効果だ。

流石にこれに対する手立ては無い。ユーリのフィールドのサンデウ・キンジーがその頭を肥大化させ、ホープ・ルーツを丸呑みにする。

 

「僕はサンデウ・キンジーとホープ・ルーツを融合!融合召喚!『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』!!」

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン 攻撃力2800

 

3度姿を見せるユーリの切り札、毒々しい溶解液を背の大口から滴り落とし、飢えた竜が咆哮する。希望を喰らい尽くし、圧倒的な絶望が天へ飛翔する。

 

「まだだよ!魔法カード、『融合回収』!墓地のモーレイ・ネペンテスと『融合』を回収!そして発動!手札のモーレイ・ネペンテスとサンデウ・キンジーで融合!融合召喚!『捕食植物キメラフレシア』!」

 

捕食植物キメラフレシア 攻撃力2500

 

「装備魔法、『再融合』!800LP払い、2体目のキメラフレシア蘇生!」

 

ユーリ LP15800→15000

 

捕食植物キメラフレシア 攻撃力2500

 

怒濤の展開、続く効果発動。自らの全てを振り絞り、ユーリはフィールドに3体の融合モンスターを召喚する。

氷上には巨大な花が2本咲き誇り、花が折れ曲がるような悪臭を放つ光景は阿鼻叫喚、そこに恐ろしい姿の竜までいるのだから地獄がついて来る。

絶望、暗き闇の如き、一筋の光も見えない世界が広がっている。

 

「これで、これで終わりだ!君の希望も、ここで消え去る!全てのモンスターで攻撃ィッ!!」

 

3体の融合モンスターがフィールドに押し寄せ、勇者を葬り去る津波として黒コナミに襲い来る。これで終わり、これで終わらせる。強迫観念に駆られたようにユーリの頭にはこのデュエルを一刻でも早く終わらせる事しか無い。

それだけ黒コナミには得体の知れないものがある。この男は一瞬でも早く視界から消し去りたい。その黒き衝動に応えるように、スターヴ・ヴェノムがその牙を突き立てようとした時――。

 

「罠発動――!『ピンポイント・ガード』!墓地の極星神馬聖鎧に耐性を与え、特殊召喚する!」

 

ZW―極星神馬聖鎧 守備力1000→2400

 

希望が、舞い降りる。たった一筋の希望が、ほんのちっぽけな希望が、ユーリの前に立ち塞がり――その力を、絶望を希望に書き換える。

 

「ッ!クソッ!クソクソクソォッ!!ふざけるな……!そんな、そんなたった1枚のカードで……ッ!僕はメインフェイズ2に移行し、キメラフレシアの効果で極星神馬聖鎧を除外ィッ!消えろぉっ!」

 

最早最初にあった余裕の笑みも全てかなぐり捨て、ユーリが怨差の籠ったドスの効いた声で叫ぶ。喉が渇く、カラカラに、額より冷たい汗が流れ落ち、地面に染み込む。苛々する。何故自分の思い通りにいかない。

こんなデュエル、アカデミアでいた頃には味わった事が無い。何故なら自分は最強だから、最強たる自分は負けないから。状況はユーリの圧倒的優勢、なのに焦りがちっとも消えない。何だ、何だこの男は――。

 

「カードを2枚セット……ターンエンド……ターンエンドだ……!」

 

ユーリ LP15000

フィールド『スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン』(攻撃表示)『捕食植物キメラフレシア』(攻撃表示)×2

『再融合』セット2

手札0

 

必死に深呼吸を繰り返し、何度も何度も自分を落ち着かせる。大丈夫、大丈夫だ。LPは1万越え、対する相手はたった100。

次のターン、次のターンで確実に消す。幾ら奴でもこのLPは削り切れない。大丈夫、大丈夫。息を整え、ユーリは殺意の籠った眼で黒コナミを睨む。このターンを堪えれば勝てる。そう思わないと、自分と言う存在がどうにかなってしまいそうになる。

そんな時だった――黒コナミが、堪え切れないように、高笑いを始めたのは――。

 

「ククク……ハハハハハ!ヒヒッ、クハハハハッ!感じる!感じるぞ!今この瞬間、私の進化を!更なる高みへのランクアップを!だがまだだ!まだ届かない!限界を振り切っても足りない!もっと力を寄越せ!もっと、もっとぉぉぉぉぉっ!!」

 

激しき力への渇望が、終わり無き欲望が、絶望を食い潰す、狂気の希望を乗せた叫びが木霊する。

何だ、これは、ユーリと柚子が、呆然と立ち尽くす。果たして目の前にいるのは、本当に人間なのか。自分の目がおかしくなったのかと疑いたくなる。ここまで来て更に上にいくのか、いや、ここまで来たからだろう。

黒コナミはユーリとのデュエルを繰り広げ、1ターン1ターンを越える度に成長している。脅威的な速度で進化している。だがそれは、あくまで人間の範囲でだ。

これ以上は無理、無茶、無謀。ならば――その枷を、外せば言い。瞬間――黒コナミの身体が、青白く輝き、眩き光を放つ。

 

「かっとビングだ!私は私自身でオーバーレイ・ネットワークを再構築!熱き情熱が勝利を導く!エクシーズ・セカンドチェンジィィィィィッ!!」

 

激しきスパークと共に、黒コナミの肌が全体的に青白く輝くアストラル体となり、左目に緑色のフレームを持つバイザーが装着される。更に腰からは漆黒に煌めくアーマーとマントが靡き、左肩から腕にかけて、黄金のデュエルディスクが盾のような形状に進化を遂げる。

エクシーズ・チェンジ、それは遠き2人の魂が重なって1つとなった姿。黒コナミはそれを力づくで、強引に限界を壊す事で、1人でランクアップを果たしたのだ。

常識を壊す超常の力、シャイニング・ドローの非常識を塗り潰す光景に、ユーリと柚子が時が止まったようにフリーズする。

 

「どう言う……事……!?」

 

漸く絞り出せた台詞が疑問と戸惑いを隠せぬ言葉。それ程までに凄まじき衝撃、あり得ない光景が目の前にある。しかしそんな事、黒コナミには関係無い。彼はその身に纏う光を右手に集束させ、夜空に浮かぶ月へと翳す。

 

「これが最強を越える最強!必然を超然に変える力!想像を創造に書き換えろ!希望の光、我が右腕と化す!シャイニング・ドロォォォォォッ!!」

 

今までのシャイニング・ドローの光がちっぽけに思えてしまう程の光が2人の視界を覆い尽くす。ランクアップを遂げたカードの創造、それは翳された右手に集束し、1枚のカードとなる。

 

「魔法カード、『シャッフル・リボーン』!墓地の『サンダー・ドラゴン』を特殊召喚!」

 

「ぐっ、それがどうしたぁ!?罠発動!『ダメージ・ダイエット』!これでこのターン、僕が受けるダメージは半分になる!」

 

サンダー・ドラゴン 攻撃力1600→3000

 

「罠発動!『希望の光』!墓地の光属性モンスター、『No.39希望皇ホープ』と『CNo.39希望皇ホープレイ』をデッキに!そしてオノマトピアのかっとビングカウンターを2つ取り除き、デッキから『ガガガマジシャン』を特殊召喚!」

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター7→5

 

ガガガマジシャン 攻撃力1500→2500

 

「『ガガガガール』を召喚!」

 

ガガガガール 攻撃力1000→2000

 

黒コナミが召喚したのは『ガガガマジシャン』と対になるカード、金髪赤目に可愛らしい顔立ちをした、三角帽と黒いレオタードを纏った、携帯電話を手にした女子校生風のモンスター。

 

「ガールの効果で『ガガガマジシャン』のレベルをコピー!」

 

ガガガガール レベル3→4

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『No.39希望皇ホープ』!!」

 

No.39希望皇ホープ 攻撃力2500→3700

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター5→6

 

現れる希望の使者。その何度も何度も蘇り、目の前に立ち塞がる皇の姿にユーリが怯む。また、まただ。この希望が復活し、ユーリの希望を奪い、絶望を与える。

希望の皇が絶望の化身とは何とも皮肉な話だ。この姿を見るだけで鳥肌が立ち、身体が震える。

そう、これは恐怖だ。執拗なまでに輝くこのカードが、ユーリに恐怖を植えつけている。LPはユーリが勝っているのに、怖くて怖くて仕方無い。

 

「ガールの効果でスターヴ・ヴェノムの攻撃力を0に!」

 

「墓地の『スキル・プリズナー』を除外し、それを防ぐよ!」

 

「更にぃオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!『CNo.39希望皇ホープレイ』!!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ 攻撃力2500→3900

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター6→7

 

「ORUを2つ使い、キメラフレシアの攻撃力をダウン!このカードの攻撃力をアップ!」

 

「永続罠、『デモンズ・チェーン』!ホープレイの効果を無効!」

 

「魔法カード発動!『RUM―アストラル・フォース』!!」

 

そしてこれが――ユーリを絶望に叩き込む、希望の化身を誕生させるカードとなる。

 

「その効果により、ホープを2つ上のランクのモンスターへとランクアップさせる!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!現れろNo.39!人が希望を越え、夢を抱く時、遥かなる彼方に、新たな未来が現れる!限界を越え、その手に掴め!希望皇ビヨンド・ザ・ホープ!!」

 

黒コナミの発動したカードにより、黒き鎧を捨て、ホープレイの進化前である希望皇ホープとなったモンスターの周囲に、今までコナミが扱ったホープの派生となるモンスター達が天へ剣を掲げる。

『CNo.39希望皇ホープレイ』、『CNo.39希望皇ホープレイV』、『CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー』、『No.39希望皇ホープ・ルーツ』。輝く星空を背景に、ホープに新たな装甲が纏われる度、そのシルエットが重なっていく。光を、儚さを、勝利を、原初を、5つの影を集束し、ここに希望を越える使者が降臨する。

 

No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ 攻撃力3000→4600

 

希望郷―オノマトピア― かっとビングカウンター7→8

 

ビヨンド・ザ・ホープ、それは奇しくも、絶望を体現する名であった――。

 

「何だ……このモンスターは……!?」

 

「このカードがエクシーズ召喚した時、全ての相手モンスターの攻撃力は0となる!」

 

「なっ――!」

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン 攻撃力2800→0

 

捕食植物キメラフレシア 攻撃力2500→0×2

 

エクシーズ召喚と共に相手モンスター全ての攻撃力を無へ帰す効果。それによりユーリのモンスター達の攻撃力が奪われる。

だが、だがそれでもユーリのLPには届かない。

 

「だけど僕のLPには――」

 

「届かせてやる。魔法カード、『ガガガドロー』!墓地のカイザー、ガール、シスターを除外、2枚ドロー!」

 

黒コナミ 手札0→2

 

「まだまだぁ!墓地の『シャッフル・リボーン』を除外し、『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』をデッキに戻し、1枚ドロー!」

 

黒コナミ 手札2→3

 

「私は装備魔法、『ガガガリベンジ』を発動!墓地の『ガガガマジシャン』を特殊召喚!」

 

ガガガマジシャン 攻撃力1500→3100

 

「レベルを5に変更!」

 

ガガガマジシャン レベル4→5

 

「更に『サンダー・ドラゴン』と共にオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『ZW―獣王獅子武装』!」

 

ZW―獣王獅子武装 攻撃力3000→4900

 

No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ 攻撃力4600→4900

 

「リベンジの効果でエクシーズモンスターの攻撃力を300アップ。そして装備魔法、『ストイック・チャレンジ』をビヨンドに装備!攻撃力をフィールドのORUの数×600アップし、モンスターとの戦闘ダメージを倍にする!」

 

「ッ――!」

 

No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ 攻撃力4900→7300

 

「獣王獅子武装のORUを1つ取り除き、『ZW―阿修羅副腕』をサーチ!そして『ZW-荒鷲激神爪』を特殊召喚!」

 

ZW―荒鷲激神爪 攻撃力2000→3600

 

「仕上げだ!手札の阿修羅副腕、フィールドの荒鷲激神爪、そして獣王獅子武装をビヨンドに装備!」

 

No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ 攻撃力6100→12100

 

「攻撃力……」

 

「12100……!?」

 

『ZW』てんこ盛り、これでもかと言う位にビヨンドを強化し、ユーリのLPの1万台に入る。これでダメージが倍の為、24200。しかも阿修羅副腕の効果で全てのモンスターに攻撃し、合計戦闘ダメージは72600。『ダメージ・ダイエット』で半分になろうと食らい尽くす。余りに馬鹿げた数値がユーリを恐怖に駆り立てる。

 

「……やめろ……やめてくれ……!」

 

ガチガチと歯が鳴り響く。身体の震えが止まらない。こんな、こんな、こんな――おぞましいデュエル、知りたくも無かった。思わずユーリがやめてくれと何度も懇願するが――。

 

「――ビヨンドで攻撃――!ホープ剣・ビヨンド・スラッシュッ!!」

 

死神の手は止まらない。天へ飛翔し、その剣でユーリのモンスターを切り裂くビヨンド。これで終わり――希望の刃がユーリのモンスターを全て破壊し、危機を関知したデュエルディスクが途中でダメージを防ぐ為、セーフティがかかる。

 

ユーリ LP15000→0

 

「――ッ!」

 

それでも、一部のダメージが抑えられた訳では無い。身体を焦がさんばかりに熱が駆け巡り、暴れ狂う。白目を剥き、吹き飛ばされるユーリ。そんな、時だった。柚子のブレスレットが突如輝き、ユーリの姿が消えたのは。

 

「え――?」

 

「――!」

 

しかしそれだけでは無い。黒コナミが柚子へと振り向き、その視線の先には――ユーリに似た顔立ちの、D-ホイールに乗ったライダースーツを纏った少年と、柚子がまた、光に包まれる姿。

 

「何――?」

 

瞬間、ユーリと同じように、2人の姿も弾かれるように消え去る。後に残された黒コナミは、直ぐ様ランクアップを解き、デュエルディスクを操作して2人の反応を追う。そして彼が一瞬だけ息をつまらせ――彼もまた、光となって消える。歪んだ笑みを描きながら――。

そして、誰もいなくなった――。

 

――――――

 

同じ時をしてアカデミア。厳かな雰囲気を放つ赤い絨毯の上にて、ボロボロになったユーリが息を切らせ、両の手と膝をついていた。

思い返すのは先程まで闘っていた、つばの欠けた黒帽子の少年。

負けた――アカデミア最強である自分が――そんな事は、有り得てはならないのだ。カッ、と熱が頭に上り、歯軋りを鳴らし、ユーリはその拳を地へとぶつける。

 

「――クソォッ!クソクソクソクソォッ!!」

 

粉々に砕かれたプライド、今まで培った実力、全てが台無しにされ、少年は叫ぶ。悔しい、屈辱で大粒の涙が頬を伝う。ふざけるな、こんな理不尽があって堪るか――。敗北感で胸を満たされながらも、最後に残った一筋のプライドがユーリを奮い立たせる。

力が、欲しい。奴を、いや、全てを壊し、最強足り得る圧倒的な力が。

 

「――壊してやる――」

 

瞬間、ユーリの表情から全ての感情が抜け落ちる。グッ、と足に力を入れて立ち上がり、ユーリは長く続く廊下を、ゆっくりと歩み出す。まるで、幽鬼のようにフラフラと。

今ここに――1人の修羅が、目覚めた――。

 

――――――

 

夜空に輝く月が沈み、空が白く染まり、太陽が昇る。遺跡エリアの一角にて、アリトがボロボロの姿で膝をつく。無理も無い、今の今までオベリスク・フォースとのデュエルを続けて来たのだ。長い連戦を勝利して来た事自体が奇跡に等しい。しかしそれでも、オベリスク・フォース達を全員倒した訳では無い。土を鳴らし、近づくオベリスク・フォース。もうアリトは闘えない、しかし――闘う必要も、無くなった――。

 

「……後は、任せたぜ」

 

その言葉だけを言い残し、アリトは前のめりに倒れ、眠りにつく。その背後には――完全に体力を回復した、榊 遊矢と黒咲 隼の姿。

 

「「任せろ!!」」

 

陽はまた、昇る――。




ヘルユーリフラグが立ちましたー。
ユーリ君はまだ超越融合も超融合もグリーディーも持ってません。って言うか超越融合裁定どうなってんだろ。スターヴじゃ使えないって聞くけど。
黒コナミのランクアップですが、本来ZEXALは情熱が重なったりぶつかったりするからZEXALらしいですから、1人でやらかした黒コナミのあれは例えるならZEALです。しかも何気にセカンド。と言っても本家セカンドには負けます。正確に言えば1.5なのです。バリアルフォーゼの方が近いかもしれません。こっちはアストラル体ですが。
気になる能力はシャイニングドローの回数が増えたり連発出来たりするだけです。書き換えは出来ません。
そして黒コナミ君はもう瑠璃とかどうでも良くなってます。クソ野郎です。
この闘いを機に、ユーリ君は超強くなる予定、優等生デッキも使いません。途中でユーリ君が可哀想になって心の中で応援した人もいた筈。

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