遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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もうライフ計算の間違いはしたくない……
アクションマジックって便利って言う話。
あんまり頼りたくはないけど。


第6話 悪の召喚法

LDSジュニアユース融合コース所属、光津 真澄はその美貌に驚愕を貼り付けていた。原因は言わずもがな、今現在赤馬 零児と相対する赤帽子の少年、コナミだ。彼の赤馬 零児に匹敵する実力を見て、ではない。確かにコナミは強い。たった3ターンで分かってしまう程に、しかし融合召喚においては自分が上だ……うん上だ。と自分に言い聞かせる。多少は認めてやってもいいだろう。話が逸れた。彼女が驚いた訳は。

 

「目に……一点の曇りがない……」

 

そう、コナミの赤帽子に隠された眼、そこには何のくすみも汚れもない、だからこそ怖い。普通、人とはどんな事をしていても雑念の1つや2つ現れる筈だ。だが彼にはそれがない。そんなデュエルが自分にできるだろうか?あんな輝きを放てるだろうか?彼の思考が読めない眼が怖い、だけど――。

 

「どうした?真澄?」

 

「ーっ!?」

 

不意に背後の北斗から声を掛けられる。彼は眉を八の字にして真澄の顔色を伺っている。心配してくれたのだろう、何故かそれが気に喰わなくて何時ものムスッとした顔で辛辣な言葉を吐いてやる。

 

「別に何でもないわ。貴方こそ負けたばかりなんだからあのデュエルを見て勉強したらどう?」

 

真澄の毒の入った言葉に涙を目尻に溜め「どうせ僕は……」と地面に「の」の字を書き始める北斗。そんな彼を面倒くさそうな表情で励ます刃、昔から刃は世話好きと言うかフォローが上手い、北斗の事は彼に任せようと再びデュエルに集中する。

 

確かに――コナミは怖い、だけど何故だろう?彼が――羨ましい――。

 

――――――

 

「どうした?お前のターンだぞ?」

 

光り輝く夜の街『マジカル・ブロードウェイ』にコナミの声が響く。煽っている訳ではない真剣で無機質なコナミらしい声音である。そんな彼の言葉に眼鏡をかけ直しながら口元に笑みを作り、零児も答える。

 

「何――君の実力に少々驚いただけだ。侮っていた訳ではないが――私も本腰を入れよう」

 

そう言ってデッキトップのカードを手札に加える零児。

 

「私は再び魔神王の契約書を発動し、墓地の『DDD神託王ダルク』と『DDパンドラ』を除外し、融合召喚!」

 

「墓地融合!?」

 

遊矢達が墓地での融合に目を見開く。一方でコナミは成程そういった効果か、と舌を巻く。

 

「神の威光伝えし王よ!災い封じ込めし坩堝に融け込み今一つとなりて新たな王を生み出さん!融合召喚!生誕せよ!『DDD烈火王テムジン』!」

 

DDD烈火王テムジン 攻撃力2000

 

聖女の名を持つ王と災いの壺が融合し、生まれたるは真紅の炎を纏う剣と盾を持つ鍜冶師を思わせる王、しかしこれ程の気を放つ王も零児にとっては通過点に過ぎない。

 

「更に私は『DDバフォメット』を召喚」

 

DDバフォメット 攻撃力1400

 

零児が場に呼び込んだのは山羊の角、獅子の鬣、白と黒の羽を持つ三本腕の異形、異形は不気味に蠢きテムジンを指差す。

 

「『DDバフォメット』は一ターンに一度、他の『DD』モンスターのレベルを1~8の任意のレベルに変更できる。私はテムジンのレベルを4に変更する。」

 

DDD烈火王テムジン レベル6→4

 

テムジンの体にまとわりつく炎の勢いが減っていく。恐らく星が落ちた影響だろう。

 

「レベル4のモンスターが2体……」

 

「ほう、この召喚方法にも精通しているか」

 

視線を交錯させる零児とコナミ、コナミが僅かばかりだが目を見開く。もしや――と1つの考えがよぎる。

 

「2体のモンスターで、オーバーレイ・ネットワークを構築」

 

零児の背後に黒き渦が現れ、炎の王と異形を一つにする。そして。

 

「この世の全てを統べるため、今世界の頂に降臨せよ!エクシーズ召喚!生誕せよ!『DDD怒濤王シーザー』!」

 

DDD怒濤王シーザー 攻撃力2400

 

フィールドに押し寄せる波、丸いフォルムの所々に刺々しい鎧を纏い巨大な剣を構える水の王。しかしまだ風の英雄には及ばない、天空に座す者に届かないと言うならば――。

 

「アクションマジック『ティンクル・コメット』発動!GreatTORNADOの攻撃力を1000ポイントダウンさせ、500ポイントのダメージを与える!」

 

打ち落とせばいい。赤い彗星が英雄を天空から地に落とす。いかに自然の力を操ろうとも相手の規模は更に上、容易く英雄から飛行能力を奪い去る。

 

E・HEROGreatTORNADO 攻撃力2800→1800

 

コナミ LP4000→3500

 

「怒濤王シーザーでGreatTORNADOを攻撃、斬刑に処す」

 

シーザーの巨大な剣により風の英雄の体は2つに別たれる。そのスプラッターな光景に子供達は悲鳴を上げ、他の者も顔を歪める。

 

コナミ LP3500→2900

 

「ターンエンド」

 

赤馬 零児 LP1800

フィールド 『DDD怒濤王シーザー』(攻撃表示) 手札3

 

まさに一進一退、激しい攻防に観戦する遊矢達も息を飲む。当のコナミはと言うと。

 

「……面白いッ!」

 

口を弧に吊り上げ笑う。赤帽子の奥に潜む闘志に烈火の如く火が灯り、燃える。やがてコナミが左手をデッキに添え――赤き閃光を走らせた――。

 

「ドローッ!!」

 

珍しく大きな声を上げ、この状況を打破できる可能性を持つカードに目を向ける。引いたカードは『カメンレオン』。墓地の守備力0のモンスターを釣り上げるモンスターだ。瞬時にそのカードを叩きつける。

 

「『カメンレオン』を召喚し効果発動!」

 

カメンレオン 攻撃力1600

 

「君の墓地に守備力0のモンスターは……まさかっ!?」

 

零児が先程のコナミのターンを思い返す。そう見つけたのだ。1度だけ守備力0のモンスターが墓地に送られる可能性を。

 

「『調律』……ッ!」

 

『カメンレオン』が渦を作り出し、その長い舌で掴んだものを引き上げる。出てきたのはおもちゃの飛行機に乗ったゴブリン。ニヤリと笑いながら夜の街を旋回する。

 

「『ゴブリンドバーグ』を特殊召喚!」

 

ゴブリンドバーグ 攻撃力1400

 

「どう出てくる……?」

 

「オレは『ゴブリンドバーグ』に『カメンレオン』をチューニング!」

 

「そう来るか……!」

 

『カメンレオン』の体が弾けリングへと変わる。『ゴブリンドバーグ』が光のリングをくぐり抜け姿を変えていく。

 

「星海を切り裂く一筋の閃光よ!!魂を震わし世界に轟け!!シンクロ召喚!!『閃光竜スターダスト』!!」

 

閃光竜スターダスト 攻撃力2500

 

星屑の竜はその雄々しき翼を広げ、自らの主に寄り添う。

 

「バトルだ『閃光竜スターダスト』で怒濤王シーザーに攻撃!流星閃撃(シューティング・ブラスト)!!」

 

スターダストの光のブレスが水の王へと迫る。そうはさせまいと零児はその場を跳躍し、フィールドに浮かぶカードを拾いデュエルディスクに叩きつける。

 

「アクションマジック『ハイダイブ』!『DDD怒濤王シーザー』の攻撃力を1000ポイントアップする!」

 

DDD怒濤王シーザー 攻撃力2400→3400

 

一瞬で攻撃力が逆転し、竜のブレスを剣で迎え撃とうとする王、しかし。

 

「アクションマジック『ハイダイブ』!スターダストの攻撃力を1000アップする!」

 

閃光竜スターダスト 攻撃力2500→3500

 

「ッ!?」

 

コナミの手により威力を増したブレスがシーザーを呑み込む、いかに押し寄せる波であろうと竜の放つ光の波には抗えず王は消え去る。

 

赤馬 零児 LP1800→1700

 

「……アクションデュエルは初めてなのでは?」

 

「二回も見れば充分だ」

 

口を一文字に引き締め零児が不満気な視線をコナミにぶつける。が、コナミは零児の行動を絶えず観察していた。1度目は突風でうまく見えなかったが2度目ははっきりと見た。零児がフィールドに散らばるカードを拾うのを、見ればできる。揺るぎなき境地や荒ぶる魂で通った道だ。加えてカードを拾うのには慣れている。

 

「……私は『DDD怒濤王シーザー』の効果によりデッキより『地獄門の契約書』を手札に加える」

 

「メインフェイズ2に入り墓地の『ギャラクシー・サイクロン』を除外し効果発動『魔神王の契約書』を破壊しターンエンド」

 

コナミ LP2900

フィールド 『閃光竜スターダスト』(攻撃表示)

セット1

手札2

 

「私のターン、ドロー、私は『DDナイト・ハウリング』を召喚」

 

DDナイト・ハウリング 攻撃力300

 

零児の前に鋭い牙を見せる巨大な顎が現れる。その不気味な悪魔にコナミが警戒を示す。

 

「『DDナイト・ハウリング』の効果発動、墓地の『DD』モンスターを攻撃力、守備力を0にして特殊召喚する。私が選択するのは『DDバフォメット』」

 

再び零児の前に異形の悪魔が現れる。

 

DDバフォメット 攻撃力1400→0

 

「『DDバフォメット』の効果を使いランク4のエクシーズを……?」

 

「それもいいがね、折角君が2つの召喚法を見せてくれたのだ。私も見せるべきだろう」

 

そう言うと巨大な顎が弾き飛び三つのリングとなる。

 

「シンクロ召喚を!」

 

コナミが、いやこの場にいる全員が息を飲む、コナミとしては先程のターンで頭をよぎった事が的中した。と言った所であろう。

 

「やはりそう言うカテゴリか」

 

「ほう、見抜いていたか、君の思う通り私の『DD』は異次元を意味し、『DDD』は異次元を支配せし王!融合もエクシーズも、シンクロさえも!」

 

零児がそう言った途端、三つのリングに異形が飛び込む。

 

「『DDバフォメット』に『DDナイト・ハウリング』をチューニング、闇を切り裂く咆哮よ。疾風の速さを得て新たな王の産声となれ!シンクロ召喚!生誕せよ!『DDD疾風王アレクサンダー』!」

 

DDD疾風王アレクサンダー 攻撃力2500

 

風が吹き荒れ銀の輝きが切り裂く。現れたのは翡翠の宝玉があしらわれた銀の鎧を身につけ緑のマントをなびかせ、風の王が現れた。

 

「バトルだ『DDD疾風王アレクサンダー』で『閃光竜スターダスト』に攻撃」

 

「相討ち狙いか『閃光竜スターダスト』の効果1ターンに1度自分フィールドのカード1枚に破壊耐性を与える。スターダストを選択、波動音壁(ソニック・バリア)!」

 

竜の周りに球体状のバリアが出現する。しかし――。

 

「相討ち?違うな、アクションマジック『エクストリーム・ソード』!アレクサンダーの攻撃力を1000ポイントアップする!」

 

DDD疾風王アレクサンダー 攻撃力2500→3500

 

「ッ!スターダストは効果により破壊を免れる!」

 

「だが切れ味は受けてもらう」

 

アレクサンダーの放った風の剣閃が音の壁の僅かな隙間を切り裂く、しかしすかさず両翼を盾のようにする事で身を守る白き竜。

 

コナミ LP2900→1900

 

コナミのライフが確実に削られていく。ソリッドビジョンによる刺すような痛みに顔をしかめるコナミ。しかし同時に互いを削り合う攻防に思わず笑ってしまう。成程、アクションデュエル、悪くない。

 

「私はこれでターンエンド、さぁ君も見せてくれ」

 

赤馬 零児 LP1700 フィールド『DDD疾風王アレクサンダー』手札3

 

「オレのターン、ドロー……勝負に出るか『閃光竜スターダスト』の効果スターダスト自身に耐性を与え、バトル『DDD疾風王アレクサンダー』を攻撃、流星突撃(シューティング・アサルト)」

 

翼を折り畳み疾風の王へと矢のごとく突撃する竜。バリアを纏い、フィールドを一直線に突き進む竜はまさしく流星。王も自らの剣技を放つがその剣はバリアを切り裂いたのみ、竜には、届かない。

 

「ッ!ぐっ!」

 

「メインフェイズ2魔法発動『シンクロキャンセル』『閃光竜スターダスト』をエクストラデッキに戻し、シンクロ召喚に使用したシンクロ素材一組を特殊召喚する。来い『カメンレオン』、『ゴブリンドバーグ』」

 

カメンレオン 攻撃力1600

 

ゴブリンドバーグ 攻撃力1400

 

竜が光となって弾け、2体のモンスターへと姿を変える。

 

「やはり君も私と同じか」

 

「そのようだな、オレは2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、我が戦いはここから始まる、白き翼に望みを託せ、現れろNo.39、エクシーズ召喚!希望皇ホープ!!」

 

No.39希望皇ホープ 攻撃力2500

 

零児とコナミが視線を交わすと同時にコナミの背後に黒き渦が発生し、2体のモンスターを取り込む、そして渦よりいでしは白き身体、黄金の装飾の希望の皇、純白の翼を広げコナミの前に見参した。

 

「モンスターをセットしターンエンド」

 

コナミ LP1900 フィールド 『No.39希望皇ホープ』 セットモンスター セット1 手札1

 

「私のターン、ドロー……私と同じ三つの召喚法を自在に操る君に敬意を表して面白いものを見せよう」

 

「……面白いもの?」

 

零児の言葉にピクリとコナミが反応する。コナミが感じた零児の印象は堅実で冗談など言いそうにない自分と似たような人間と言った所だ。そんな彼が面白いもの、衝撃の真実でも明かされるのだろうか、と少し身構える。

 

「魔法カード発動『貪欲な壺』墓地の『DDD怒濤王シーザー』、『DDD疾風王アレクサンダー』、『DDD烈火王テムジン』、『DDナイト・ハウリング』、『DDバフォメット』をデッキに戻し二枚ドロー」

 

赤馬 零児 手札3→5

 

「永続魔法『地獄門の契約書』を発動し、『DD魔導賢者ガリレイ』を手札に加え……そうだな、アクションカードをセット……さて準備は整った。私はスケール1の『DD魔導賢者ガリレイ』とスケール10の『DD魔導賢者ケプラー』でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

零児のデュエルディスクの両端に2枚のカードが設置され、2人の賢者が天空に浮かび上がる。その光景を見てコナミが激しく狼狽する。

 

「ッ!?ペン……デュラム……!?」

 

スケールと言う聞き慣れない言葉、そしてデュエルディスクの両端に存在するペンデュラムスケール、そこに設置された効果モンスターと魔法カードが合わさったようなカード、2枚の内の1枚は1ターン目に零児が召喚したカードだがあの時はよく見えなかった。

 

「これでレベル2からレベル9のモンスターが同時に召喚可能」

 

零児のこの行動に驚いたのはコナミだけではない。

 

「ペン……デュラム……?」

 

その中でも特に驚いたのは榊 遊矢。目は大きく見開かれ額から汗が伝う、開いた口が塞がらない声がかすれ呼吸が荒くなる。心臓が早鐘を打つ。

 

「遊矢……」

 

そんな彼を心配そうに表情を曇らせる柚子、そんな彼等を一瞥し、零児は新たなる王を呼ぶ。

 

「我が魂を揺らす大いなる力よ、この身に宿りて闇を引き裂く新たな光となれ!ペンデュラム召喚!」

 

瞬間、空に光の渦が発生し閃光が闇夜の街を引き裂いた。黒き巨体がコンクリートの地に降り立ち凄まじき地響きを轟かせる。漆黒の翼を広げ、鋭き牙が並ぶ顎を開き雄叫びを上げるのは龍、狂喜を宿らせた赤き目を輝かせ龍が喉を鳴らす。

 

「『DDD覇龍王ペンドラゴン』!」

 

DDD覇龍王ペンドラゴン 攻撃力2600

 

龍とは逆にふわりと体を浮かせ現れたのはねじ曲がった曲刀を持つ、異国の戦士を思わせる銀の王、真紅の外套を風になびかせ静かに地に降りる。

 

「『DDD制覇王カイゼル』!」

 

DDD制覇王カイゼル 攻撃力2800

 

そして龍よりも巨大な手足のない、振り子を模したような姿のモンスター、圧倒的な存在感を放ちながら、それは零児の背後に浮遊した。

 

「全ての王をも統べる超越神!『DDD死偉王ヘル・アーマゲドン』!」

 

DDD死偉王ヘル・アーマゲドン 攻撃力3000

 

コナミの眼前立ち塞がる3体の魔王、そしてそれを従えしペンデュラム召喚の担い手赤馬 零児、強大な敵を前にコナミは――笑っていた――。




次回で赤馬戦は終了です。コナミ君のエースカードも出るよ!


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