遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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何となくこの作品の今までの遊矢君を振り返ってみると色んなキャラを攻略してて笑った。特に男からの信頼が熱い事。
権ちゃんに黒咲さん、沢渡さん、ユート、アリト、勝鬨、九庵堂、暗黒寺、素良、コナミ、黒コナミ。女性では柚子ちゃんにミエルちゃんとまだ正確には攻略してないキャラもいるもののファンの多さと濃さときたら。なぁにこれぇ。
アニメも遊矢君に頑張って欲しいなぁ、と思っては中断やらでメンタルが……うごごごご。
デュエルがもういらないものになってるのが悲しいです。

まぁ、私情は置いといて、今回からは遊矢君とコナミ君以外のキャラの活躍が多くなります。つーか思った以上に2章が長い。



第63話 やっつけてやる!

時は少し遡る。コナミと神楽坂、遊矢と隼の激闘が続く中、赤馬 零児はスタジアムへと足を運び、観客達を守る為、外から襲い来るアカデミアと闘い続けていた。

彼としても遊矢達、参加者と共に闘いたいし、あの場に現れたセレナの事も気にかかる。しかし、これも立派な闘い。仕方無いと溜め息を吐き、零児は耳につけたインカムで通信室の中島へと連絡を取る。

 

「中島、彼等を会場へ向かわせろ――」

 

――――――

 

一方、白い冷気が漂う氷山エリアにて、2人の少女が対峙していた。

1人は紫の髪を黄色いリボンでポニーテールに括り、赤いジャケットを纏い、肩に猿を乗せた少女、セレナ。

彼女の勝ち気な、猫科の動物を思わせるような眼の先で佇む少女は、セレナとはまた違った、色素の薄い紫の髪を2つのリングでツインテールに結んでいる。アカデミアの軍服を纏い、タイトスカートにストッキングと堅めの服装に身を包んでいると言うのに、どこか色気を放つ彼女は頭に被った軍帽を押さえつけながら、その鳶色の眼でセレナと視線を交差させ、クスリと艶のある笑みを向ける。

 

「全くイケない子ねぇ、セレナちゃん。アカデミアを脱走するなんて、お仕置きが必要かしら?」

 

「ふん!おおおお仕置きなんて怖くないが、何故スタンダード次元に貴様等がいる!私とバレットを連れ戻す為か!雪乃!」

 

黒い革手袋に包んだ右手の人差し指を形の良い唇に当て、微笑を溢す少女、藤原 雪乃。彼女はお仕置きと聞いて激しく動揺するセレナを見て、更にその笑みを深める。

 

「ウフフ、それもあるんだけどね。でもやっぱり、そっちに勲章おじ様がいるのね。先生がいて良かったわ、もし敵対したら、あの人位じゃなきゃ勝てないもの」

 

「先生……!?だ、だが今、コナミと闘っているのは偽物だろう!奴は誰だ!?」

 

「キキー!」

 

バッ、とデュエルディスクを装着した左腕を振るい、その指先で眼下にいるコナミ達を差すセレナ。促した場にはデュエルを行うコナミと、そしてコナミと同じ姿をした紫帽子のデュエリスト。

雪乃がセレナの指先をなぞるように視線を移し、「ああ」と頷き、ニコリと微笑む。

 

「気づくなんて、流石ね。ええそうよ、彼は先生じゃない。神楽坂の坊やよ」

 

「……は?神楽坂って、あのバカか!何であいつが先生の格好を……バカなのか!?」

 

「彼はコピーデッキの使い手、コピー先であるデュエリストと同じ姿になる事でその戦術をトレースする……らしいわ。……ごめんなさい、私にも良く分からないわ、うん」

 

「ふん、やはりバカか!」

 

正直に頷けない理由に対し、一笑にふすセレナ。だが実際の所、これによって実力が上がっているのだから仕方無い。

形から入る男、神楽坂。一見あれだが、今の彼はアカデミアの中でも高い実力を持ち、コピーデッキや戦術に独自の視点を加える事でオベリスク・フォースの部隊長にまで昇格したのだ。

だが彼の恐るべき所は2戦目にある。1戦目で負けはしても、即座に相手のデュエルを吸収し、対策を取る。優れた観察眼、そしてコピーデュエリストだからこそ出来る芸当である。

 

「さて、お喋りはここまで。アカデミアに戻って貰うわ」

 

「……それは……出来ん」

 

「……何故かしら?」

 

アカデミアへの帰還、それをセレナは断る。目を伏せ、ギュッ、と胸元を掴む。それは、知ってしまったから。アカデミアの実態を、その恐るべき行いを。もう無知な自分じゃない、だからこそ立ち向かう、立ち向かわなければいけない。大切な人を守る為に、この次元で共に過ごした大好きなものを守る為に、セレナは誇り高きデュエリストとなる。もう2度と、間違わない。

 

「私は知った、本当に悪いのはアカデミアだと、だからもう、アカデミアには戻らん、ここで出来た仲間が私の力になってくれるかは分からない。だけど私は、皆と一緒に、アカデミアを変えて見せる!私1人じゃ無理だが、皆と一緒なら出来る筈だ!お前も……私と来てくれないか?」

 

「それこそ無理ね。確かに、アカデミアは間違っているのかもしれない。だけど、間違いの先にも答えはある!」

 

大切なものがあり、間違ったものを変えたい。そんなセレナの想いは尊重されるべきものなのだろう。だがそれでも、雪乃は退かない、互いに譲れないものがある。ならば――。

 

「平行線か……ならデュエルで想いをぶつけるまでだっ!」

 

「そのようね!」

 

互いに盾型のデュエルディスクより剣型のプレートを展開し、胸の前に構える。今までセレナは雪乃に負け越している。だが可能性は0じゃない。今までの自分の全て、そしてスタンダード次元で得た想いを抱き、セレナは闘う。

 

「「デュエル!!」」

 

先攻はセレナだ。彼女はデッキから5枚のカードを引き抜き、1枚のカードを翳す。

 

「私は手札の『月光黒羊』を捨て、デッキから『融合』をサーチ!そして魔法カード、『ダーク・バースト』を発動し、墓地の『月光黒羊』を回収!ここで魔法カード、『融合』!手札の『月光黒羊』と『月光紫蝶』で融合!漆黒の闇に潜む獣よ!紫の毒持つ蝶よ!月の引力により渦巻きて新たなる力と生まれ変わらん!融合召喚!現れ出でよ!月明かりに舞い踊る美しき野獣!『月光舞猫姫』!!」

 

月光舞猫姫 攻撃力2400

 

現れたのは月をバックに赤い毛を揺らした猫の獣人。踊り子のような艶やかな衣装で舞い、ナイフを両手にくるくると回る。早速姿を見せたセレナのエースモンスター。その登場に雪乃はクスリと笑う。

 

「融合素材となった黒羊の効果で紫蝶を回収!そしてカードを2枚伏せ、ターンエンドだ!」

 

セレナ LP4000

フィールド『月光舞猫姫』(攻撃表示)

セット2

手札1

 

「私のターン、ドロー。私は手札の『ヴィジョン・リチュア』と『シャドウ・リチュア』を捨て、デッキから儀式モンスター、『イビリチュア・ソウルオーガ』と儀式魔法、『リチュアの儀水鏡』をサーチ!そして魔法カード、『サルベージ』により、墓地の『ヴィジョン・リチュア』と『シャドウ・リチュア』を回収、もう1度捨て、デッキからソウルオーガと儀水鏡をサーチ。そして『リチュアの儀水鏡』発動!手札のソウルオーガをリリースし、儀式召喚!『イビリチュア・ソウルオーガ』!」

 

イビリチュア・ソウルオーガ 攻撃力2800

 

儀式召喚。スタンダード次元において、方中 ミエルも操る召喚法を使い、雪乃は最上級モンスターを降臨させる。

魚を思わせる顔に屈強な肉体、水掻きを持った手に、堅牢な鱗、ヒレを伸ばした長い尾を振るい、その脚は鳥類を連想させる程力強い。

フィールドに現れた大海獰猛者。喉を唸らせ、セレナの舞猫姫に狙いを定める。

 

「さぁ、その効果を見せなさい、手札の『リチュア・マーカー』を墓地に送り、『イビリチュア・ソウルオーガ』の効果発動!舞猫姫をデッキにバウンスする!」

 

「させるか!罠発動!『ブレイクスルー・スキル』!ソウルオーガの効果を無効にする!」

 

「ふぅん、対策は取ってるのね。ならバトルといきましょう。ソウルオーガで舞猫姫を攻撃!」

 

「甘い!罠発動!『幻獣の角』!舞猫姫へ攻撃力800アップの装備カードとして装備する!」

 

月光舞猫姫 攻撃力2400→3200

 

藤原 雪乃 LP4000→3600

 

『イビリチュア・ソウルオーガ』が舞猫姫目掛けて襲いかかる。その野太い腕を振るうも、舞猫姫の額から鋭い角が伸び、同時に両手に持っていたナイフが淡い輝きを放ち、捻れた刃を伸ばす。

形勢逆転、攻撃力で上回った舞猫姫はソウルオーガの顎を蹴り上げ、ナイフを振るい、連撃を畳み掛ける。

 

「あらら、セットカードはそれだったのね……」

 

「『幻獣の角』の効果で1枚ドロー!」

 

セレナ 手札1→2

 

「なら私はモンスターとカードを1枚伏せ、ターンエンド。ふふっ、楽しめそうね」

 

藤原 雪乃 LP3600

フィールド セットモンスター

セット1

手札1

 

「私のターン、ドロー!バトルだ!舞猫姫でセットモンスターに攻撃!この瞬間、舞猫姫の効果で100ダメージを与える!」

 

藤原 雪乃 LP3600→3500

 

「『リチュア・エリアル』のリバース効果発動。デッキから『ヴィジョン・リチュア』をサーチ!」

 

「だが私も『幻獣の角』の効果で1枚ドロー!」

 

セレナ 手札3→4

 

「モンスター1体とカード1枚を伏せてターンエンドだ」

 

セレナ LP4000

フィールド『月光舞猫姫』(攻撃表示) セットモンスター

『幻獣の角』セット1

手札1

 

「私のターン、ドロー!墓地の儀水鏡をデッキに戻し、墓地のソウルオーガを回収、そして魔法カード、『トレード・イン』を発動し、ソウルオーガを捨て、2枚ドロー!」

 

藤原 雪乃 手札2→4

 

「更に罠カード、『儀水鏡の瞑想術』を発動!手札の儀水鏡を公開し、墓地の『ヴィジョン・リチュア』と『シャドウ・リチュア』を回収!『ヴィジョン・リチュア』を捨て、デッキの『イビリチュア・ジールギガス』サーチ!そして『リチュアの儀水鏡』を発動!手札の『シャドウ・リチュア』をリリースし、儀式召喚!『イビリチュア・ジールギガス』!!」

 

イビリチュア・ジールギガス 攻撃力3200

 

2回目の儀式召喚。雪乃がその手札より降臨させたのは『リチュア』モンスターの中でも最も高い攻撃力を持った1枚だ。

悪魔のような顔をし、その額と後頭部からカブトムシを思わせる角が伸び、両肩からもクワガタの角が赤い血色の輝きを見せている。更にはこれも甲虫をイメージしたのか、4本の野太く、屈強な腕、背からは頑強な羽が生えている。鎧を身に包んだ甲虫の悪魔。強化した舞猫姫に並ぶ強力なモンスターだ。

 

「『リチュア・チェイン』を召喚!」

 

リチュア・チェイン 攻撃力1800

 

雪乃の更なる手が打たれる。現れたのはペンデュラムを手にした海竜。このモンスターが雪乃の戦術を盤石なものとする。

 

「『リチュア・チェイン』の召喚時、デッキの上から3枚を確認し、儀式モンスター、または儀式魔法1枚を手札に加える。私は儀式魔法、『リチュアに伝わりし禁断の秘術』を手札に、残りの2枚を好きな順番で戻し、LPを1000払い、ジールギガスの効果発動!1枚ドローし、そのカードが『リチュア』モンスターの場合、フィールドのモンスター1体をデッキバウンスする!」

 

藤原 雪乃 LP3500→2500

 

運に任せた強力な効果。しかし雪乃は既に『リチュア・チェイン』によってデッキの操作を行っている。必ず成功しない限り、こんなリスキーな事はしないだろう。

つまりはこの効果は――成功を約束されている。

 

「当然引いたモンスターは『リチュア』モンスター、リヴァイアニマ!よって舞猫姫をバウンス!」

 

舞猫姫の耐性は戦闘での破壊のみだ。モンスター効果を受けない等の耐性では無い以上、容易く突破されてしまう。しかもこれで『幻獣の角』と合わせた大量ドローも狙えない。

 

「さぁ、バトルよ。『リチュア・チェイン』でセットモンスターを攻撃!」

 

「セットモンスターは『月光蒼猫』!破壊された事でデッキから『月光虎』を特殊召喚し、罠カード、『月光輪廻舞踊』を発動!デッキから『月光黒羊』と『月光狼』をサーチ!」

 

月光虎 守備力800

 

セレナを守るべく現れたのは小柄な体躯の虎の獣人。氷のフィールドで跳躍し、片膝をつき、両腕をクロスさせてジールギガスの前に降りる。

セレナがこのフィールドで手にしたペンデュラムモンスターの1体、その効果も折紙つきだ。

 

「ならジールギガスで『月光虎』を攻撃!」

 

「『月光虎』の効果で墓地の『月光黒羊』を蘇生!」

 

月光黒羊 守備力600

 

更に登場する新たな壁。漆黒の燕尾服に身を包み、両肩に捻れた角を伸ばしたモンスター、『月光黒羊』がフィールドに蘇る。融合素材となった場合、直ぐ様次の手を補充出来る優秀なカードだ。

 

「成長したみたいね、次の素材を用意した上、手札も補充するなんて。私はカードを2枚伏せ、ターンエンドよ」

 

藤原 雪乃 LP2500

フィールド『イビリチュア・ジールギガス』(攻撃表示)『リチュア・チェイン』(攻撃表示)

セット2

手札2

 

「私のターン、ドロー!手札の『月光黒羊』を捨て、『置換融合』を手札に!そして魔法カード、『月光香』を発動!墓地の『月光黒羊』を蘇生!」

 

月光黒羊 守備力600

 

「魔法カード、『置換融合』を発動!黒羊2体を融合!融合召喚!『月光舞猫姫』!!」

 

月光舞猫姫 攻撃力2400

 

「そして黒羊の効果でエクストラデッキの『月光虎』と『月光蒼猫』を回収!」

 

「エクストラデッキ……?」

 

「まだ行くぞ!私は『月光虎』と『月光狼』でペンデュラムスケールをセッティング!これでレベル2から4のモンスターが同時に召喚可能!」

 

セレナのデュエルディスク、剣型のプレートの両端に2枚のカードが設置され、中心に向かって虹色の光が放たれる。瞬間、彼女の背後に2本の柱が天へと伸び、その中に『月光虎』と『月光狼』が姿を見せ、天空に輝く線が結ばれ、巨大な魔方陣が描かれる。美しき振り子の軌跡、初めて見る幻想的な光景に雪乃は両目を見開く。

 

「ペンデュラム……!?」

 

「墓地の『月光香』を除外し、手札の『月光紫蝶』を捨て、デッキから『月光紅狐』をサーチ!更に魔法カード、『融合回収』を発動!墓地の『融合』と『月光黒羊』を回収!『融合』を発動!フィールドの舞猫姫と手札の黒羊を融合!月明かりに舞い踊る美しき野獣よ!漆黒の闇に潜む獣よ!月の引力により渦巻きて新たなる力と生まれ変わらん!融合召喚!現れ出でよ!月光の原野で舞い踊るしなやかなる野獣!『月光舞豹姫』!!」

 

月光舞豹姫 攻撃力2800

 

現れたのは『月光舞猫姫』の進化形、目が隠れる程度に切り揃えられた艶のある黒髪には豹の獣耳が生えており、肘からは黄金の刃が伸びている。手首では三日月と鈴が鳴り、その手、そして足に伸びた猛獣の野太い腕がこのモンスターの強力さを物語っている。

 

「黒羊の効果で紫蝶回収!まだだ!『月光狼』のペンデュラム効果発動!墓地の『月光黒羊』2体で融合!融合召喚!『月光舞猫姫』!!」

 

月光舞猫姫 攻撃力2400

 

更なる融合召喚。2体目の舞豹姫も出す事は出来るが、この2枚は互いに耐性が異なる。舞豹姫は効果破壊耐性を、舞猫姫は戦闘破壊耐性を持っている。

攻撃、効果で1度に破壊される事を警戒しての手だ。尤も、バウンス等では効果は無いが。切り札も出す事は出来たが、今はまだ温存するべきと判断してだ。

 

「墓地の『置換融合』を除外し、同じく墓地の『月光舞猫姫』をエクストラデッキに戻し、1枚ドロー!」

 

セレナ 手札3→4

 

「そしてこれが私の新しい力!ペンデュラム召喚!『月光蒼猫』!」

 

月光蒼猫 守備力1200

 

振り子の軌道を描き、セレナのフィールドに青い毛並みの猫の獣人が現れる。これで準備は万端、ジールギガスを真正面から打ち破る。

 

「蒼猫が特殊召喚に成功した事で、舞豹姫の攻撃力を倍にする!」

 

月光舞豹姫 攻撃力2800→5600

 

攻撃力5600、『リチュア・チェイン』を攻撃すれば一気に勝負が決まる射程範囲だ。ペンデュラム召喚を得た事で『月光蒼猫』の効果を以前よりも使いこなせている。

 

「永続罠、『デモンズ・チェーン』発動。舞豹姫の攻撃の効果を封じるわ」

 

しかしそうは問屋が下ろさない。雪乃とてアカデミアの中でも高い実力を誇るデュエリスト。神楽坂同様、部下の指揮を取る女性だ。

仕掛けた罠に飛び込んだ獣目掛けて鎖を射出し、その腕ごと胴体を縛り付ける。舞豹姫も何とかしようともがくが、動く度に逆に鎖が身体を締め上げる。

どう言う事か、この世界ではモンスターとは言え、女性が拘束プレイされる事は稀有である。

 

「ッ!なら手札の『月光紫蝶』を墓地に送り、舞猫姫の攻撃力を1000アップ!」

 

月光舞猫姫 攻撃力2400→3400

 

「あら、早まったかしら……!」

 

「バトル!舞猫姫でジールギガスを攻撃!」

 

藤原 雪乃 LP2500→2400→2200

 

ジールギガス撃破。貴重な戦力である舞豹姫の自由を奪われた事は大きいが、それで黙るセレナでは無い。ならばこちらも相手の戦力を削ぐまで。これで強力なデッキバウンスを封じた。

 

「私はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

セレナ LP4000

フィールド『月光舞豹姫』(攻撃表示)『月光舞猫姫』(攻撃表示)『月光蒼猫』(守備表示)

セット1

Pゾーン『月光虎』『月光狼』

手札1

 

「私のターン、ドロー!『デモンズ・チェーン』を墓地に送り、魔法カード、『マジック・プランター』発動。2枚ドロー!」

 

藤原 雪乃 手札2→4

 

「私は儀式魔法、『リチュアに伝わりし禁断の秘術』を発動。貴方のフィールドの『月光舞豹姫』をリリースして儀式召喚を行う!」

 

「何っ!?」

 

雪乃が発動したのは相手フィールドのモンスターをリリースすると言う異色の儀式魔法。正しくその名の通り、禁断の秘術と言えよう。

儀水鏡がセレナのフィールドの『月光舞豹姫』を写し、鏡の中へと吸収する。効果破壊耐性を持っていても、リリースされては敵わない。

 

「儀式召喚!『イビリチュア・リヴァイアニマ』!」

 

イビリチュア・リヴァイアニマ 守備力1500

 

最悪の儀式を経て現れたのは赤髪を風に靡かせ、ヒレのような翼を広げた恐ろしい竜。その手に剣を持った竜は儀式元であった人間の理性を失い、本能に任せて暴れ狂う。

 

「ただし、この儀式を行えば儀式モンスターの攻撃力は半分になって、このターン、私は攻撃出来ないわ。私は罠カード、『儀水鏡の反魂術』を発動。『イビリチュア・リヴァイアニマ』をデッキに戻し、墓地の『ヴィジョン・リチュア』と『シャドウ・リチュア』を回収。更に魔法カード、『儀式の準備』発動。デッキのレベル7以下の儀式モンスター、『イビリチュア・マインドオーガス』と墓地の儀式魔法、『リチュアの儀水鏡』を回収。そのまま発動!手札の『シャドウ・リチュア』をリリースし、儀式召喚!『イビリチュア・マインドオーガス』!」

 

イビリチュア・マインドオーガス 攻撃力2500

 

このデュエル4回目の儀式。現れたのは下半身が昆虫のような脚を持ち、蝶の如くヒレを広げた恐ろしい魚となった『リチュア・エリアル』の姿。

正しく異形の怪物と化した少女は儀水鏡の杖を振るう。

 

「マインドオーガスの儀式召喚時、互いの墓地のカードを合計5枚までデッキに戻す。私は私の墓地の『デモンズ・チェーン』と『儀水鏡の反魂術』、そして『儀水鏡の瞑想術』と貴女の墓地の『ブレイクスルー・スキル』、『月光舞豹姫』を回収!そして『リチュア・ビースト』を召喚!」

 

リチュア・ビースト 攻撃力1500

 

雪乃の手はまだ終わらない。その手より放たれたのは緑の体躯を持った禍々しい獣。その額より二股に別れた角と鬣を伸ばしている。それはグルルと唸り、雄々しい遠吠えを放つ。

 

「『リチュア・ビースト』の効果発動!墓地の『リチュア・マーカー』を特殊召喚!」

 

リチュア・マーカー 攻撃力1600

 

次に登場したのは頭がタコになっている魚人だ。8本の足で槍やカットラスを掴み、ビーストの遠吠えに応えるべく降り立つ。

 

「『リチュア・マーカー』の効果で墓地の『リチュアの儀水鏡』を回収。はい、これでレベル4のモンスターが2体」

 

「ッ、何――!?」

 

『リチュア・マーカー』を特殊召喚した雪乃はその鳶色の目を細め、クスリと革手袋に包まれた指先を唇に当て、妖艶に微笑む。

レベル4のモンスターが2体、まさか――セレナは両の眼を見開き、警戒心を引き上げる。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『フレシアの蟲惑魔』!!」

 

フレシアの蟲惑魔 守備力2500

 

突如雪乃の背後の空間が引き裂かれ、宇宙を凝縮したかのような渦が発生する。2体の『リチュア』モンスターはその身体を光へと変え、流れて渦の中へと飛び込む。

瞬間、激しき閃光が爆音と共に響き渡る。超新星爆発を背に、雪乃の、アカデミアの操るエクシーズモンスターが誕生する。

桜色の長髪をラフレシアのカチューシャで留め、トロンと溶けるような、それでいて吸い込まれてしまいそうな眼をした少女。露出度の高いドレスを纏ったその幼い少女は妖しく、その身に似合わぬ妖しき色気を纏い、巨大なラフレシアの花の上で静かに眠る。

 

「エクシーズモンスター……!そんなモンスター、前にデュエルした時には……」

 

「フフ、可愛いでしょう?貴女がペンデュラムを得たように、私もエクシーズを身につけただけよ」

 

そう、このエクシーズはセレナがアカデミアから去った後、雪乃が新たに得た力。しかしセレナがアカデミアを出てからそこまで日は経っていない、この短い間にエクシーズを習得したと言うのだ。何と言う学習能力の高さだろうか。やはり、一筋縄ではいかない。

 

「手札の『ヴィジョン・リチュア』を捨て、デッキの『イビリチュア・ガストクラーケ』をサーチ!そして『リチュアの儀水鏡』を発動!フィールドのマインドオーガスをリリースし、儀式召喚!『イビリチュア・ガストクラーケ』!」

 

イビリチュア・ガストクラーケ 攻撃力2400

 

マインドオーガスと入れ替わるように姿を見せたのは下半身が黒いタコになった赤毛の少女。その額に赤い線を走らせ、人外となった彼女は脚の1本をセレナに向け、滑るように突き出す。

 

「ガストクラーケの効果!貴女の手札の『月光紅狐』をデッキに戻す!」

 

「ぐっ!」

 

デッキに戻すハンデス効果。これでは紅狐の効果も使えない。正確で素早い対処だ。思わずセレナは舌を巻く。

 

「更に『フレシアの蟲惑魔』のORUを1つ取り除き、効果発動!デッキの『狡猾な落とし穴』を墓地に送り、その効果を使う。貴女のフィールドのモンスター、『月光舞猫姫』と『月光蒼猫』を破壊!」

 

「く――『月光蒼猫』の効果発動!デッキから『月光虎』を特殊召喚!」

 

月光虎 守備力800

 

「私はこれでターンエンドよ」

 

藤原 雪乃 LP2200

フィールド『イビリチュア・ガストクラーケ』(攻撃表示)『フレシアの蟲惑魔』(守備表示)

手札0

 

デッキから『落とし穴』を墓地に送り、その効果をコピーする効果。『狡猾な落とし穴』は『落とし穴』カードの中でも特に強力な効果を持っている。発動の代償として、墓地に罠カードが存在しない事が条件だが、その為にマインドオーガスで罠を回収したのだろう。

『リチュア』と『蟲惑魔』を合わせたデッキ、彼女の武器と彼女のキャラクターを表したようなカテゴリの合成は思った以上に厄介だ。

手札0、しかしフィールドにはモンスターと蘇生効果、そして融合効果を持つペンデュラムカードがある。まだ巻き返す事は充分可能だ。

 

「私のターン、ドロー!『月光狼』のペンデュラム効果発動!墓地の『月光舞猫姫』と『月光紫蝶』を融合!融合召喚!『月光舞豹姫』!!」

 

月光舞豹姫 攻撃力2800

 

「甘いわね、『フレシアの蟲惑魔』のORUを取り除き、デッキの『深黒の落とし穴』を墓地に送り、コピーするわ。レベル5以上のモンスターの特殊召喚時、そのモンスターを除外!」

 

「ッ、私はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

セレナ LP4000

フィールド『月光虎』(守備表示)

セット2

Pゾーン『月光虎』『月光狼』

手札0

 

「私のターン、ドロー。フフ、もう終わりかしら?私は魔法カード、『サルベージ』を発動。墓地の『ヴィジョン・リチュア』と『シャドウ・リチュア』を回収、墓地の儀水鏡をデッキに戻し、イビリチュア・ジールギガスを回収。更に『ヴィジョン・リチュア』と『シャドウ・リチュア』を捨て、ジールギガスと儀水鏡をサーチ。そして発動。手札のジールギガスをリリースし、儀式召喚!『イビリチュア・ジールギガス』!!」

 

イビリチュア・ジールギガス 攻撃力3200

 

この逆境に更なる大型モンスターが姿を見せる。『イビリチュア・ジールギガス』、最上級の『リチュア』モンスターがフィールドに舞い戻り、再びセレナに牙を剥く。

 

「LPを1000払い、ジールギガスの効果発動!」

 

藤原 雪乃 LP2200→1200 手札0→1

 

ジールギガスのデッキバウンス。その決定を別つ審判が下される。もしもこれが決まれば、セレナのフィールドの『月光虎』がデッキにバウンスされ、壁モンスターも打ち砕かれる。ゴクリと息を呑むセレナ、下された判決は――。

 

「残念、『リチュア・ビースト』よ」

 

「――!」

 

最悪の答え。雪乃の手札に死神が宿り、セレナのフィールドの『月光虎』に鎌を振り下ろす。これでセレナのフィールドはがら空き、頼れるカードは2枚のセットカードのみ。

しかも雪乃が手札に加えたのは更なる展開の布石。

 

「『リチュア・ビースト』を召喚!」

 

リチュア・ビースト 攻撃力1500

 

「効果で『リチュア・マーカー』を蘇生!」

 

リチュア・マーカー 攻撃力1600

 

再び揃うレベル4のモンスター、並ぶ2体の魚人にセレナはその額から一筋の汗を垂らし、唇を噛み締める。最悪、最悪の展開だ。

 

「『リチュア・マーカー』の効果で墓地の『リチュアの儀水鏡』回収。そして2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『フレシアの蟲惑魔』!!」

 

フレシアの蟲惑魔 守備力2500

 

2体目のフレシア。罠が見えてもその中身まで見えないカードが仕掛けられる。『落とし穴』カードは多く存在し、その効果も多岐に渡る。効果破壊も通さない『深黒の落とし穴』等は特にセレナの天敵だ。例えこのターンを乗り切っても、その先まで見据えた対策をする彼女の手腕は見事としか言えない。

 

「さぁ、バトルよ!『イビリチュア・ジールギガス』で攻撃!」

 

「罠発動!『ガード・ブロック』!ダメージを0にして1枚ドロー!」

 

セレナ 手札0→1

 

「『イビリチュア・ガストクラーケ』でダイレクトアタック!」

 

「永続罠、『闇次元の解放』!除外されている『月光舞猫姫』を特殊召喚!」

 

月光舞猫姫 攻撃力2400

 

「ッ、ターンエンドよ」

 

藤原 雪乃 LP1200

フィールド『イビリチュア・ジールギガス』(攻撃表示)『イビリチュア・ガストクラーケ』(攻撃表示)『フレシアの蟲惑魔』(守備表示)×2

手札1

 

激しい猛攻を何とか堪え抜いたセレナ。『リチュア』で攻め、『蟲惑魔』で守る。単純ながらも効果的な戦略。だがこれを越えなければ勝利は不可能。何より――ここで躓いていては、アカデミアを変える等、笑われるだろう。

笑われる、違う、笑わせるのだ。今までセレナは、それを身近で見てきた。

遊勝塾のエンタメデュエル。コナミの何が起こるか分からない、ドキドキワクワクのデュエルを。遊矢のどんな逆境でも楽しむデュエルを。柚子の一途に突き進むデュエルを。

今までセレナは、スタンダード次元で様々なデュエリストのデュエルを見てきた。その度に彼等は笑い、楽しそうにデュエルをするのだ。

頭の中で駆け巡る大事な仲間達のデュエル、そして笑顔。セレナはそれを守りたい。かけがえのない日常を守りたい。胸に抱いた小さな想い、皆と育んだこの想いを守りたい。皆と一緒に笑っていたい。だからセレナは諦めない。この想いを、アカデミアの皆にも知って欲しいから、師に教わったデュエル、その楽しさを纏い、セレナは進む。

 

「Ledies and Gentlemen!お楽しみは、これからだ!」

 

両手を咲き誇る花のように広げ、セレナは笑う。遊勝塾所属、セレナのエンタメデュエル。その初舞台の幕が上がる。

 

「何を……」

 

「ふふん、見せてやろう!エンタメデュエルを!」

 

「エンタメ……?」

 

腰に手を当て、得意気な表情で胸をそらせるセレナ。そのどこか可愛らしい姿にポカンと呆ける雪乃。一体何を始めようと言うのだろうかと疑問を浮かべる。

 

「このどうしようも無い逆境、私のドローで覆す!私のターン、ドローッ!!」

 

火花舞い散るセレナのドロー。空を裂くその光景は煌々と光を降らせ、まるで三日月のようなアークを描く。

 

「まずは速攻魔法、『月の書』を発動!私は舞猫姫を裏側守備表示に!」

 

「自分のモンスターを……!?」

 

「これで『闇次元の解放』のデメリットは無くなった。魔法カード、『マジック・プランター』!『闇次元の解放』を墓地に送り、2枚ドロー!」

 

セレナ 手札0→2

 

「速攻魔法、『異次元の埋葬』!除外されている舞豹姫と紫蝶、そして黒羊を墓地に戻し、『月光狼』のペンデュラム効果でフィールドの舞猫姫と墓地の舞豹姫、そして紫蝶で融合!月光の原野で舞い踊るしなやかなる野獣よ!月明かりに舞い踊る美しき野獣よ!紫の毒持つ蝶よ!月の引力によりて渦巻きて新たなる力に生まれ変わらん!融合召喚!現れ出でよ!月光の原野の頂点に立って舞う百獣の王!『月光舞獅子姫』!!」

 

月光舞獅子姫 攻撃力3500

 

フィールドに舞う、セレナの切り札。装着した仮面を砕き、その美貌を露にした百獣の女王。白い鬣を靡かせ、左腕に三日月を装着し、右手に妖しき閃きを放つ剣を握ったそのモンスターは、デュエルに決着をつけるべく、降臨する。

 

「出て来たわね。貴女の切り札……でも残念だけど、退場して貰うわ!『フレシアの蟲惑魔』のORUを1つ取り除き、『深黒の落とし穴』をコピー!」

 

『月光獅子姫』は相手の効果の対象にならず、効果破壊への耐性を持つが、『落とし穴』カードの多くは対象を取る効果では無い。加えて『深黒の落とし穴』は破壊を介さず除外する。しかし、セレナはそれを飛び越える。

 

「速攻魔法、『禁じられた聖杯』!『フレシアの蟲惑魔』の効果を無効にし、攻撃力を400アップする!」

 

フレシアの蟲惑魔 守備力2500

 

そう、いくら強力な『落とし穴』をコピーしても、その効果は『フレシアの蟲惑魔』、つまりモンスターによる効果だ。で、あるならば、対策は容易い。先のターン、『イビリチュア・マインドオーガス』でセレナの墓地より『ブレイクスルー・スキル』を回収したのが証拠だ。

 

「これで決める!舞獅子姫で『イビリチュア・ジールギガス』を攻撃!」

 

藤原 雪乃 LP1200→900

 

舞獅子姫が手に持った剣を煌めかせ、目にも止まらぬ速度で剣閃を走らせる。空を裂き、鋭い刃がジールギガスの強固な甲殻を突き破り、赤く迸る爆発が巻き起こって、雪乃のフィールドのモンスターに降りかかる。

 

「舞獅子姫の効果により、お前のモンスターは全て破壊され、そして――舞獅子姫は2回攻撃が出来る。」

 

カチャリ、その刃を雪乃の喉元に突き立て、静かに主の命を待つ月光の王者。その美しくも凛々しい剣士の姿を視界におさめ、雪乃は目を見開いた後、薄い笑みを浮かべる。

 

「聞かせてもらおうか、アカデミアの、目的を」

 

「……貴女を連れ戻す事、そして――貴女と似た少女、柊 柚子を拐う事よ。……強く、なったわね」

 

「……そうか、……友がいてくれたからな」

 

まるで姉妹のように互いを認め、笑う2人、勝敗は決まった。セレナは自らの切り札に命を下し、舞獅子姫はその剣を振るう。

 

藤原 雪乃 LP900→0

 

デュエルディスクの強制帰還機能が作動し、光の粒子となってアカデミアへと消える雪乃。

勝者、セレナ。その結果は、少女の成長を表していた。

 

 

 

 

 




人物紹介13

藤原 雪乃
所属 アカデミア
TFシリーズから参戦。皆大好きゆきのん。エロい。
神楽坂と同じく、アカデミアに所属し、オベリスク・フォースを指揮する部隊長。エロい。
神楽坂やセレナと同じ先生の下で教育を受け、高い実力を誇る。エロい。
セレナの事は実の妹のように可愛がっており、からかっている。何だかんだでセレナの方も雪乃の事を慕っており、ライバル視している。エロい。
あとエロい。
使用デッキは『蟲惑魔リチュア』。何とかして蟲惑魔を使わせたくて探したらこのデッキがあってびっくりした。エースカードは『フレシアの蟲惑魔』。


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