遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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アニメでオッドアイズ・ドラゴンが大活躍して作者もニッコリ、スタンダード最強(笑)とか言われてるけどこの作品内では主人公のエースカードにしてるから愛着があるのです。
今まで隠れてた伏線やら真実も分かって来たから多少書きやすくもなりました。ただ明らかにこの作品の覇王先生がハゲの命令違反してカード化とかしてないと言う。設定は生やすもの(震え声)。
そして今回、黒咲さんはこんなキャラじゃない!って感じの描写があります(今までもあれだけど)。黒咲さんファンの方には申し訳ありません。ですが、私としてはこの作品では黒咲さんはこう言う心情をしていた、と言う事は貫きます。あくまでこの作品の黒咲さんとして見ていただければ。



第60話 お前、弱いだろ

始まる榊 遊矢対黒咲 隼の次元を越えたデュエル。先攻は黒咲だ。彼はデッキより5枚のカードを引き抜き、猛禽類を思わせる鋭い目付きで遊矢を睨み、手札を切る。

 

「甘ったれた貴様に見せてやる、レジスタンスのデュエルを!魔法カード、『強欲で貪欲な壺』発動!」

 

黒咲 隼 手札4→6

 

「俺は手札から『RR―バニシング・レイニアス』を召喚!」

 

RR―バニシング・レイニアス 攻撃力1300

 

登場したのは深緑に染まった機械の猛禽。甲高い囀りを天へと響かせ飛翔する。『RR』専用の『切り込み隊長』と言えるカードであり、このカード無しでは『RR』は上手く機能しないだろう。

 

「そしてバニシング・レイニアスの効果発動!手札よりもう1体のバニシング・レイニアスを特殊召喚する!」

 

RR―バニシング・レイニアス 攻撃力1300

 

『レベル4が2体……気をつけろ遊矢!隼のペースだ、『RR』の高速展開が来る!』

 

2体目のバニシング・レイニアスの登場、レベル4のモンスターが並ぶと共に、遊矢の傍にいたユートが注意を促す。歯痒い事に彼の姿に黒咲には見えていない。

友の暴走を自身で止められないからこそ、少しでも遊矢の助けとなって黒咲を救おうとしているのだろう。遊矢も黒咲のデュエルは素良との試合で知っているが、全てを理解している訳じゃない。ユートの言葉に小さく、だが重く頷く。

 

「まだ行くぞ!俺は永続魔法、『RR―ネスト』発動!『RR』が2体以上フィールドに存在する場合、デッキより『RR』をサーチする!俺は3体目のバニシング・レイニアスをサーチし、2体目のバニシング・レイニアスの効果で特殊召喚!」

 

RR―バニシング・レイニアス 攻撃力1300

 

日差しが熱く照らす砂漠の上空に、3羽の猛禽が舞う。同名モンスターの連続召喚、群れなして飛翔するその姿は確かに鳥類らしい。

 

「同じモンスターが3体……もっとサービスして欲しいぜ……!」

 

『真っ先にそんな言葉が出る辺り、君は本当にエンタメ馬鹿だな』

 

「そんなに見たいのか?地獄を!3体目のバニシング・レイニアスの効果で『RR―トリビュート・レイニアス』を特殊召喚!」

 

RR―トリビュート・レイニアス 攻撃力1800

 

皮肉を飛ばす遊矢に対し、黒咲がカッ、と目を見開きながら右手を振るい、デュエルディスクに1枚のカードを叩きつける。

ソリッドビジョンによって淡い光の粒子が集束し、青い機械鳥が羽ばたく。青白い火を吹かせ、6機のレーザービットを浮かせたモンスターの登場に遊矢は口元に笑みを描く。

 

「トリビュート・レイニアスの効果発動!このカードが召喚、特殊召喚したターンのメインフェイズ、デッキの『RR』カード1枚を墓地へ送る。俺は『RR―ミミクリー・レイニアス』を墓地に送り、除外してその効果発動!デッキの『RR―レディネス』をサーチ!さぁ、行くぞ!2体のバニシング・レイニアスでオーバーレイ・ネットワークを構築!冥府の猛禽よ、闇の眼力で真実を暴き、鋭い鉤爪で栄光をもぎ取れ!エクシーズ召喚!飛来せよ!『RR―フォース・ストリクス』!」

 

RR―フォース・ストリクス 守備力2000→3000

 

鋭い鉤爪を閃かせ、薄暗い遺跡の中より眼が妖しく光り、1羽の梟が飛翔する。ついに現れた黒咲のエクシーズモンスター、小さくも存在感を放つその姿に遊矢の額から汗が伝う。

 

『あれが隼の『RR』デッキの要となるエクシーズモンスターだ。早々に除去しなければ厄介な事になるぞ……!』

 

「フォース・ストリクスのORUを1つ取り除き、効果発動!デッキからレベル4、闇属性、鳥獣族モンスター、『RR―ファジー・レイニアス』をサーチ!更にバニシング・レイニアスとトリビュート・レイニアスでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『RR―フォース・ストリクス』!」

 

RR―フォース・ストリクス 守備力2000→2500×2

 

現れる2体目のフォース・ストリクス。成程、サーチ効果を有しているのなら確かに手早く除去しておきたいモンスターだ。見逃していると次のターンもサーチされ、除去しても補充した手札で直ぐにリカバリーされるだろう。

 

「2体目のフォース・ストリクスのORUを1つ取り除き、『RR―シンギング・レイニアス』をサーチ!そしてこのカードはフィールドにエクシーズモンスターが存在する場合、特殊召喚出来る!」

 

RR―シンギング・レイニアス 守備力100

 

RR―フォース・ストリクス 守備力2500→3000×2

 

次々と現れる『RR』モンスター、漆黒の身体を持つ小さな猛禽の登場に、流石の遊矢も焦りを覚える。

 

「まだだ!フィールドに『RR』モンスターが存在する場合、手札の『RR―ファジー・レイニアス』を特殊召喚する!」

 

RR―ファジー・レイニアス 守備力1500

 

RR―フォース・ストリクス 守備力3000→3500×2

 

紫の翼を翻し、次の『RR』が姿を見せる。またもレベル4のモンスターが2体、ここまで来れば次の展開も手に取るように分かると言うものだ。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『RR―フォース・ストリクス』!」

 

RR―フォース・ストリクス 守備力2000→3000×3

 

3体目のフォース・ストリクスの登場。最早笑いしかない布陣が遊矢の前で敷かれる。サーチ効果を持ったモンスターが3体等、乾いた笑いしか出ない。しかも『RR―ネスト』まであるのだ。とんでもないの一言に尽きる。

 

「おいおいマジかよ……」

 

『相当恨まれているようだな』

 

「他人事かよ……」

 

「3体目のフォース・ストリクスのORUを使い、デッキの『RR―ミミクリー・レイニアス』をサーチ!更に墓地に送られたファジー・レイニアスの効果発動!同名カードをサーチする!俺はカードを2枚セットし、ターンエンド。さぁ、貴様のデュエルで崩せるものなら崩してみろ!」

 

黒咲 隼 LP4000

フィールド『RR―フォース・ストリクス』(守備表示)×3

『RR―ネスト』セット2

手札3

 

とんでもない回転ぶりだ。5枚の手札からモンスター3体、魔法、罠が3枚、手札が3枚も残っているのだからおかしいにも程がある。数があってない。

正しく大会出場者最強に相応しい実力。だがこの程度で遊矢は折れる程、やわじゃない。不利な状況、磐石の布陣、何度も覆して来た。

その経験は確かに遊矢の力となり、血肉となり、自信と余裕に繋がっている。さぁ、見せようではないか、黒咲 隼に、榊 遊矢と言うデュエリストを。

 

「俺のターン、ドロー!『王立魔法図書館』を召喚!」

 

王立魔法図書館 攻撃力0

 

「今度はこっちが見せてやるぜ!エンタメデュエリストのデュエルを!魔法カード、『カップ・オブ・エース』!コイントスは……表だ、2枚ドロー!更に『王立魔法図書館』に魔力カウンターが1つ乗る!」

 

王立魔法図書館 魔力カウンター0→1

 

榊 遊矢 手札4→6

 

「速攻魔法、『魔力の泉』!1枚ドローし、1枚捨てる!」

 

王立魔法図書館 魔力カウンター1→2

 

榊 遊矢 手札5→6→5

 

「魔法カード、『モンスター・スロット』!フィールドの『王立魔法図書館』を選択、墓地の同じレベル4モンスターを除外、カードを1枚ドロー!」

 

王立魔法図書館 魔力カウンター2→3

 

榊 遊矢 手札4→5

 

「引いたカードはレベル4!特殊召喚出来る!来い、『召喚僧サモンプリースト』!」

 

召喚僧サモンプリースト 守備力1600

 

遊矢のフィールドに現れたのは魔法使いの翁。ローブに身を包み、威厳溢れるこのカードはコナミから譲り受けたカードだ。優秀な効果を持つ為、多くのデッキで採用されている。

 

「『王立魔法図書館』の効果発動!3つの魔力カウンターを取り除き、1枚ドロー!」

 

王立魔法図書館 魔力カウンター3→0

 

榊 遊矢 手札4→5

 

「手札の魔法カードを捨て、サモンプリーストの効果発動!デッキの『EMペンデュラム・マジシャン』を特殊召喚する!」

 

EMペンデュラム・マジシャン 攻撃力1500

 

サモンプリーストが魔方陣を描き、開いた瞬間に中より飛び出す赤いマジシャン。振り子を手にし、シルクハットを被り直すこのモンスターこそ、遊矢の『EM』のキーカード。黒咲のフォース・ストリクスとなるカードだ。

 

「ペンデュラム・マジシャンの効果発動!このカードとサモンプリーストを破壊する事でデッキの『EMギタートル』と『EMリザードロー』を手札に!そして2体でペンデュラムスケールをセッティング!ギタートルの効果で1枚ドロー!そしてリザードローを破壊し、もう1枚ドロー!」

 

王立魔法図書館 魔力カウンター0→1→2

 

榊 遊矢 手札4→5→6

 

「そして『EMラクダウン』をセッティング!」

 

王立魔法図書館 魔力カウンター2→3

 

「カウンターを取り除き、ドロー!」

 

王立魔法図書館 魔力カウンター3→0

 

榊 遊矢 手札5→6

 

「揺れろ、魂のペンデュラム!天空に描け光のアーク!ペンデュラム召喚!『EMボットアイズ・リザード』!『EMリザードロー』!『曲芸の魔術師』!」

 

EMボットアイズ・リザード 攻撃力1600

 

EMリザードロー 攻撃力1200

 

曲芸の魔術師 守備力2300

 

遊矢のフィールドに降り注ぐ3つの光の柱、紫、オレンジ、赤とカラフルな色彩を放つそれは地に落ちた瞬間に霧散する。

登場したのはシルクハットを被り、義眼をつけたおどけた蜥蜴とカードの襟巻きを巻いたオレンジの蜥蜴。そして派手な衣装の『魔術師』だ。

 

「まずはボットアイズ・リザードの効果!デッキの『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を墓地に送り、このターン、ボットアイズ・リザードは『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』として扱う!そして俺は魔法カード、『置換融合』を発動!」

 

「『融合』……ッ!」

 

王立魔法図書館 魔力カウンター0→1

 

遊矢の発動した魔法カード、黒咲にとっての因縁の『融合』がデュエルディスクのプレートに乗る。そのカードに黒咲は目付きを更に鋭くし、唇を噛み締める。

だが遊矢は何も挑発している訳ではない。確かに彼にとって『融合』は仲間達の仇かもしれないが、遊矢にとって『融合』は素良や柚子との絆の証なのだ。

力自体に罪は無い。その事を知って欲しいからこそ、敢えて遊矢は『融合』を使う。

 

「フィールドの『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』となったボットアイズ・リザードと『曲芸の魔術師』を融合!融合召喚!秘術ふるいし魔天の龍!『ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

 

ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力3000

 

上空に巨大な魔方陣が浮かび上がり、その中より甲高い咆哮と共に深紅の竜が姿を見せる。背に満月の黄金の輝きを放つリングを負い、隠れた片目に魔力を封じた竜。

その胸に抱いた青の宝玉が陽光を反射し、眩い光を閃かせる。

 

「ルーンアイズはペンデュラム召喚したモンスターを素材として融合召喚したターン、相手の効果を受けず、レベル5以上の魔法使い族モンスターを素材とした為、3回攻撃を得る!」

 

「だが俺のフォース・ストリクスの守備力は自分以外の鳥獣族モンスターの数×500アップし、3000!その融合モンスターでは倒せない!」

 

「なら次はモンスターの効果を融合させる!ルーンアイズを対象に、『EMラクダウン』のペンデュラム効果発動!相手フィールド上のモンスター全ての守備力を800ダウンし、ルーンアイズに貫通効果を与える!」

 

RR―フォース・ストリクス 守備力3000→2200×3

 

『上手い……これならフォース・ストリクスを破壊し、ダメージを与える事が出来る。だが――』

 

黒咲の強固な要塞とも言える布陣に対し、正解と思える手段で立ち向かう遊矢。その大胆にして豪快な戦術にあのユートでさえ舌を巻く。

だが――ユートは知っている。この正解でも、黒咲のLPには届かない事を。

 

「バトル!ルーンアイズで3体のフォース・ストリクスに攻撃!連撃のシャイニーバーストッ!」

 

「その程度で勝ったつもりか!罠発動!『RR―レディネス』!このターン、『RR』は戦闘破壊されない!」

 

「だがダメージは――」

 

「受けない!墓地のレディネスを除外し、ダメージも0にする!」

 

そう、このカードこそが黒咲 隼、最強の防御札。その効果によってフォース・ストリクスは戦闘破壊を逃れるが、それはあくまでおまけに過ぎないだろう。

墓地で発動する、ダメージを0にする強力な効果。しかも『RR』の名を冠している事でサーチ手段もある。このレディネスをどうにかしなければ、遊矢の意志は黒咲には届かない。

 

『これが隼の力だ。レディネスでフォース・ストリクスを守る事で、サーチを確実なものにしている』

 

「……ならレディネスが尽きるまで攻めるだけだ。面白くなって来たじゃないか……!」

 

『そう言うと思っていた。俺もサポートする。必ず届かせるぞ、遊矢』

 

黒咲の力を前にしても、前向きに闘おうとする遊矢に対し、ユートもまた、フ、と溜め息にも似た笑みを溢し、両腕を組む。有難い申し出だ。

遊矢は頷き、デュエルディスクを構え直す。

 

「魔法カード、『一時休戦』を発動!互いにドローし、次のターン終了までダメージを0に!」

 

王立魔法図書館 魔力カウンター1→2

 

榊 遊矢 手札2→3

 

黒咲 隼 手札3→4

 

「装備魔法、『ワンダー・ワンド』を図書館に装備!」

 

王立魔法図書館 魔力カウンター2→3

 

「図書館の効果でドロー!」

 

王立魔法図書館 魔力カウンター3→0

 

榊 遊矢 手札2→3

 

「『ワンダー・ワンド』と図書館を墓地に送り、2枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札3→5

 

『残る手札は5枚、ここは5枚全てセットしよう。あいつに対して有効なカードもある。使わない手はない』

 

「ああ!俺はカードを5枚セットし、ターンエンドだ!」

 

榊 遊矢 LP4000

フィールド『ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』(攻撃表示)『EMリザードロー』(攻撃表示)

セット5

Pゾーン『EMギタートル』『EMラクダウン』

手札0

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「罠発動!『貪欲な瓶』!墓地のカードを5枚戻し、ドロー!」

 

榊 遊矢 手札0→1

 

「そう来たか……フォース・ストリクスの効果発動!」

 

「永続罠、『手違い』!互いにドロー以外でカードを手札に加えられない!更にチェーンして罠発動、『撹乱作戦』!お前の手札を入れ換える!」

 

「チッ、魔法カード、『エクシーズ・ギフト』!残る場のORUを2つ取り除き、2枚ドロー!」

 

黒咲 隼 手札4→6

 

「魔法カード、『エクシーズ・トレジャー』!3枚ドロー!」

 

黒咲 隼 手札5→8

 

「魔法カード、『ポルターガイスト』!『手違い』をバウンスする!そしてネストの効果でトリビュート・レイニアスをサーチ!」

 

「速攻魔法、『相乗り』発動!このターン、相手がサーチ、サルベージをする度にデッキから1枚ドローする!」

 

榊 遊矢 手札2→3

 

遊矢の発動したカード、『相乗り』を視界に入れ、舌打ちを鳴らす黒咲。それもその筈、主にサーチをして戦術を整える『RR』にとって、このカードは天敵とも言えるカードだからだ。完璧に見えるが、つけ入る隙は充分にある。遊矢はデッキからカードを手札に加え、新たに戦術を練り始める。

 

「チッ、トリビュート・レイニアスを召喚!」

 

RR―トリビュート・レイニアス 攻撃力1800

 

RR―フォース・ストリクス 守備力3000→3500

 

「効果でミミクリー・レイニアスを墓地に送り、除外してレディネスサーチ」

 

榊 遊矢 手札3→4

 

「1体のフォース・ストリクスを対象に『RUM―スキップ・フォース』を発動!フォース・ストリクスよりランクが2つ高い『RR』を上に重ね、エクシーズ召喚する!」

 

「ランクアップ……!」

 

『来るぞ遊矢!』

 

ついにデュエルディスクに叩きつけられる、黒咲 隼の真骨頂、『RUM』により、その背後に星が浮かぶ渦が広がり、冥府の梟が囀りを響かせ突入する。

進化する猛禽、新たに現れる黒き影はその両翼を翻し、空高く飛翔する。

 

「1体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを再構築!誇り高きハヤブサよ。英雄の血潮に染まる翼翻し革命の道を突き進め!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!現れろ!『RR―レヴォリューション・ファルコン』ッ!!」

 

RR―レヴォリューション・ファルコン 攻撃力2000

 

炎が燃え上がり、灰となって降り注ぐ。雄々しき翼を広げ、気高き猛禽が姿を見せる。革命の名を持つモンスター。素良とのデュエルでフィニッシャーとなったモンスターだ。

当然、遊矢は警戒を示し、気を引き締める。

 

『気をつけろ、あのモンスターでも、まだ黒咲 隼と言う男の通過点に過ぎない』

 

「……上等だ……!」

 

「バトル!レヴォリューション・ファルコンで『ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を攻撃!特殊召喚されたモンスターと戦闘を行う場合、その相手モンスターの攻撃力を0にする!レヴォリューショナル・エアレイドォ!」

 

ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力3000→0

 

黒咲の怒号と共に、レヴォリューション・ファルコンがその両翼から爆弾を投下する。流星の如く降り注ぐ爆撃、現代の兵器が魔術の竜に襲いかかる。

だが遊矢も負けてはいない。手札より1枚のカードを突き出す。

 

「『一時休戦』でダメージは0に……!」

 

「防いでいられるのも今の内だ。トリビュート・レイニアスでリザードローを攻撃!そしてメインフェイズ2、トリビュート・レイニアスの効果で速攻魔法の『RUM』カード、『RUM―デス・ダブル・フォース』をサーチ!」

 

「『相乗り』の効果でドロー!」

 

榊 遊矢 手札4→5

 

「カードを3枚セットし、ターンエンドだ!」

 

「罠発動!『デビル・コメディアン』!コイントスをし、効果を適用……裏だ、俺はお前の墓地のカードと同数のカードをデッキから墓地に送る……!」

 

黒咲 隼 LP4000

フィールド『RR―レヴォリューション・ファルコン』(攻撃表示)『RR―フォース・ストリクス』(守備表示)×2『RR―トリビュート・レイニアス』(攻撃表示)

『RR―ネスト』セット4

手札5

 

「俺のターン、ドロー!手札の『サンダー・ドラゴン』を捨て、同名カードを2枚サーチ!速攻魔法、『リロード』!アクションカードと共に手札を入れ換える!墓地の『置換融合』を除外、『ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』をエクストラデッキに戻して1枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札7→8

 

「ペンデュラム召喚!『EMロングフォーン・ブル』!『EMペンデュラム・マジシャン』!『EMカレイドスコーピオン』!『EMヘイタイガー』!」

 

EMロングフォーン・ブル 攻撃力1600

 

EMペンデュラム・マジシャン 攻撃力1500

 

EMカレイドスコーピオン 守備力2300

 

EMヘイタイガー 攻撃力1700

 

振り子の軌道を描き、4体のモンスターが姿を見せる。深い青色に染まり、角に電話をかけた牛のモンスターに、赤い衣装の振り子のマジシャン。

そして万華鏡の尾を持つ蠍のモンスターとデフォルメされた虎の兵士。見るも鮮やかなモンスター達が、このデュエルを更に盛り上げようと奮起する。

 

「ロングフォーン・ブルの特殊召喚時効果で『EMスライハンド・マジシャン』を、ペンデュラム・マジシャンの効果でこのカードとペンデュラムゾーンのラクダウンを破壊して『EMシール・イール』と『EMドクロバット・ジョーカー』をサーチ!そして『EMドクロバット・ジョーカー』を召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800

 

遊矢の手より現れるのは、ペンデュラム・マジシャンと共に『EM』の重役を担うモンスター。継ぎ接ぎだらけのシルクハットを被り、黒いマスクにトランプのマークを散りばめた燕尾服を纏った道化師は、その指で不格好な魔方陣を描き、中より1枚のカードを取り出す。

 

「ドクロバット・ジョーカーの効果でデッキの『EMジンライノ』をサーチ!そして『EMシール・イール』をセッティングしてギタートルの効果で1枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札8→9

 

次々と遊矢のフィールドで繰り広げられるカード効果。それでも遊矢の手札は一向に減らず、フィールドのカードだけが増え続けると言う、マジックのような信じられない光景が見える。

 

「まだまだ行くぜ!俺はロングフォーン・ブルをリリースし、『EMスライハンド・マジシャン』を特殊召喚!」

 

EMスライハンド・マジシャン 攻撃力2500

 

次に現れたのは『EM』の最上級モンスター、真紅の衣装に身を包み、白い仮面を被ったマジシャン。

左手にはステッキ、右手には4つのボールを掴み、下半身は青の輝きを放つ水晶になっており、純白の翼が優しく包んでいる。

 

「手札を1枚捨て、レヴォリューション・ファルコンを対象にスライハンド・マジシャンの効果発動!対象のモンスターを破壊する!そしてシール・イールの効果で1体目のフォース・ストリクスの効果を無効に!」

 

RR―フォース・ストリクス 守備力3500→3000

 

RR―フォース・ストリクス 守備力3500→2000

 

『サンダー・ブレイク』を内蔵したモンスター。その効果に革命のハヤブサが撃ち抜かれ、墜落する。厄介なモンスターは倒した。効果破壊である為、『RR―レディネス』の効果も及ばない。後は強固な壁であるフォース・ストリクスも除去しておきたい所だ。

 

「俺はスライハンド・マジシャンを対象にカレイドスコーピオンの効果発動!このターン、スライハンド・マジシャンは相手フィールド上に特殊召喚されたモンスター全てに攻撃出来る!カードを1枚セット!バトルだ!ヘイタイガーでトリビュート・レイニアスを攻撃!この瞬間、アクションマジック『オーバー・ソード』によりその攻撃力を500アップ!」

 

EMヘイタイガー 攻撃力1700→2200

 

「――通す」

 

『何――?』

 

黒咲 隼 LP4000→3600

 

RR―フォース・ストリクス 守備力3000→2500

 

「ヘイタイガーの効果で『EMオッドアイズ・ユニコーン』をサーチ!」

 

レディネスを使用せずに遊矢の攻撃を受ける黒咲。吹き荒れる風にバサバサとスカーフとコートを靡かせ、仁王立ちする黒咲の姿に違和感を感じるユート。しかし遊矢は好機と取り、その攻撃の手を進める。

 

「よし、効果を無効にしたフォース・ストリクスにスライハンド・マジシャンで追撃だ!そしてそのまま2体目も攻撃!」

 

『待て、遊矢それは――』

 

ユートが注意を飛ばすももう遅い。遊矢の宣言を受けたスライハンド・マジシャンがその身を翻し、ステッキから光線を放ち、2体のフォース・ストリクスを破壊する。そしてその、瞬間――。

 

「速攻魔法――『デス・ダブル・フォース』発動!戦闘破壊されたフォース・ストリクスを特殊召喚し、その倍のランクのエクシーズモンスター1体へとランクアップさせる!」

 

「倍だって!?」

 

『くっ……!』

 

黒咲のフィールドにセットされていたカードがオープンし、フォース・ストリクスが蘇って天高く舞い上がる。更なる高みを目指し進化する猛禽。

レヴォリューション・ファルコンを越えるランクのエクシーズモンスターが今、砂漠の上空に姿を見せる。

 

「1体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを再構築!勇猛果敢なるハヤブサよ。怒りの炎を巻き上げ、大地をも焼き尽くす閃光となれ!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!飛翔しろ!『RR―サテライト・キャノン・ファルコン』!」

 

サテライト・キャノン・ファルコン 攻撃力3000

 

現れたのは今までの『RR』とは全く異なった、純白の翼を持つ鳥獣。炎の赤が燃え上がり、翡翠の輝きが随所で光る。

 

「サテライト・キャノン・ファルコンがエクシーズ召喚に成功した場合、相手フィールドの魔法、罠を全て破壊する!」

 

「――!」

 

青白い炎が遊矢のフィールドを焦土と化す。チェーン発動を許さない『ハーピィの羽箒』。その強力な効果はペンデュラムゾーンのカードさえ焼き払う。

迂闊だった。黒咲 隼程のデュエリストがレディネスを使わないには訳がある。まんまと罠に誘い込まれ、飛び込んでしまったのだ。遊矢は眉根を伏せ、歯を食い縛って猛省する。

 

「悪いユート……俺があの時、お前の言葉を聞いていれば」

 

『反省するのは後だ。まだ負けた訳じゃない、君らしく無いぞ』

 

「そうだな……っし!破壊された『リ・バウンド』の効果でドローする!」

 

榊 遊矢 手札7→8

 

「俺は『EMキャストチェンジ』により、手札を交換し、1枚ドロー!『星読みの魔術師』と『慧眼の魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!慧眼を破壊し、デッキより時読みをセッティング!カードを5枚セットし、ターンエンドだ!」

 

榊 遊矢 LP4000

フィールド『EMスライハンド・マジシャン』(攻撃表示)『EMヘイタイガー』(攻撃表示)『EMカレイドスコーピオン』(守備表示)『EMドクロバット・ジョーカー』(攻撃表示)

セット5

Pゾーン『時読みの魔術師』『星読みの魔術師』

手札1

 

ユートの叱咤の台詞に両手で頬をパンッ、と叩き、ジンジンと熱を抱いて気を取り直す遊矢。彼の言う通りだ。まだデュエルは終わってない。失敗したのなら次に取り返せば良い。

 

「さっきから何を……まぁ良い、俺のターン、ドロー!魔法カード、『強欲で金満な壺』を発動!エクストラデッキから6体のモンスターを除外し、2枚ドロー!」

 

黒咲 隼 手札5→7

 

「ファジー・レイニアスを特殊召喚!」

 

RR―ファジー・レイニアス 守備力1500

 

「速攻魔法、『地獄の暴走召喚』!特殊召喚されたファジー・レイニアスをデッキ、手札、墓地から可能な限り特殊召喚する!」

 

「俺のモンスターは1枚ずつ……よって特殊召喚はしない」

 

RR―ファジー・レイニアス 攻撃力500×2

 

「『RR―ネスト』の効果でミミクリー・レイニアスをサーチ!」

 

「速攻魔法、『捕違い』!ターン終了まで互いにドロー以外でデッキからカードを手札に加えられない!」

 

これで再びレベル4のモンスターが3体、しかし既にフォース・ストリクスは使い切った。となると、次の手は――。

 

「3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!雌伏のハヤブサよ。逆境の中で研ぎ澄まされし爪を挙げ、反逆の翼翻せ!エクシーズ召喚!現れろ!『RR―ライズ・ファルコン』!」

 

RR―ライズ・ファルコン 攻撃力100

 

3体のモンスターを素材に現れたのは、攻撃力がたった100のモンスター。4枚の翼を広げ、大きく発達した脚の爪を遊矢へと向ける。

これ程の威圧感を放ち、攻撃力がたった100。しかし遊矢は既に素良との試合を見て、このカードの脅威を知っている。

 

「ライズ・ファルコンのORUを1つ取り除き、スライハンド・マジシャンを対象に効果発動!ライズ・ファルコンの攻撃力を対象のモンスターの攻撃力分アップする!」

 

「罠カード、『デストラクト・ポーション』!」

 

「カウンター罠!『ギャクタン』!その効果を無効にしてデッキへ戻す!」

 

RR―ライズ・ファルコン 攻撃力100→2600

 

ライズ・ファルコンの周囲で回転するORUが1つ弾け飛び、スライハンド・マジシャンより力を奪う。

 

「サテライト・キャノン・ファルコンのORUを1つ取り除き、スライハンド・マジシャンの攻撃力を自分の墓地の『RR』モンスターの数×800ダウンする!これがレジスタンスの力だ!散り行く仲間達の想いを背負った俺は、負ける訳には行かない!」

 

EMスライハンド・マジシャン 攻撃力2500→0

 

サテライト・キャノン・ファルコンの背後に黒咲の墓地に眠る『RR』達が羽ばたき、弾となって装填され、スライハンド・マジシャンを何度も、何度も撃ち抜く。

怒りが、悲痛が籠ったそれは遊矢のフィールドに降り注ぎ、大地を焼き焦がす。思いの丈をぶつける黒咲、そんな彼の一撃に、遊矢は唇を噛み締め、眉をひそめる。

 

「これが黒咲の想い……だけどこんな事続けたら、何時かお前、壊れちまうよ……!そんなの誰も救われない、仲間達だってそんな事望んでる筈がない!」

 

『遊矢……』

 

「知った風な口を利くな!お前に俺達の何が分かる!」

 

「だってデュエルが泣いてる!お前のデュエル、ちっとも笑ってないんだ!」

 

「デュエルが……泣いている……?」

 

訳が分からない。黒咲を心配し、痛む胸を掴んで叫ぶ遊矢に対し、黒咲が動揺する。デュエルが泣いている。遊矢にはそうとしか考えられないのだ。

本当に凄くて、上手いプレイングなのに、カード達の力を引き出しているのに、そのカード達が辛そうに見えるのだ。ずっと黒咲の周りで土砂降りの雨が降り注ぎ、傘もささずに打たれているように見えて、胸が張り裂けそうになる。

 

「お前、本当はデュエルが大好きなんだろ!?考え込まれて作ったデッキ、凄いプレイング、誰だって分かる!だけど、だけど何で笑ってないんだよ!」

 

「――ッ!!」

 

遊矢の想いが、砂塵舞う遺跡に木霊する。遊矢には分かっているのだ。黒咲が自分なんかよりずっと強い事に、だけど、だからこそ大好きなデュエルに怒りや憎悪を乗せる黒咲の姿が嫌なのだ。

遊矢にとってデュエルはデュエリスト同士の対話。それが想いのぶつけ合いなら納得も出来る。だけど遊矢には黒咲が無理をしているように見えて、目の前の自分に想いをぶつけているようには思えないのだ。

好き好んで怒りや憎悪する人間には見えない。だからこそ、今の彼の姿は見るに堪えない。

 

「『融合』の時だってそうだ!確かにアカデミアは間違ってるんだろう!だけど力には、カードには何の罪もない!デュエリストがカードに憎しみを抱くなんて、そんなの絶対におかしい!」

 

「俺は……」

 

遊矢だってデュエルと言うものが大好きだ。だからこそ同じくデュエルが大好きな黒咲の現状に手を伸ばす。

そう、遊矢には重なって見えるのだ。昔、臆病者の息子と呼ばれ、蔑まれた自分と、今の黒咲が、そう思ったのは、気づいてしまったから。

 

黒咲と言う男が本当は誰よりも――誰よりも弱くて、優しい事を。

 

「お前、本当は弱いんだろ!?優しいからそうやって自分が何とかしなきゃって辛い事を我慢して、背負い込んでいる!だけどそんなの間違ってる!」

 

「今更……今更戻れるかぁっ!傷つくのはもう俺1人で良い!汚れるのは、もう俺だけで充分だ!仲間を救う為なら、俺は――修羅にもなる!」

 

まるで、勝鬨のような台詞。だけど遊矢には分かる。彼と黒咲には、大きく違う点がある。1つは勝鬨は例え修羅になろうと、デュエルを嫌いになる事だけは絶対にしない事、そしてもう1つは――遊矢はそれは伝える為、強さを履き違えた彼を救う為に、デュエルを続ける。

果たして――遊矢のデュエルは、彼の心に届くのか――。




速報 黒咲さん、弱かった。
他の作品では黒咲さんは精神的に強い人になっているものが多いので、本作品では真逆のアプローチを取ってみました。
元々皆を楽しませるプロデュエリストを目指していたと言われていたので、次元戦争でそれが変わらざるを得なかった、みたいな感じです。
そして思った以上に文字数が多くなってしまったので3つに話を分けます。次回はちょっと文字数が少なくなりそうですが許しておくれ。

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