遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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漫画版ARC-V見ました。
ユート君が相変わらず胃痛そうでニッコリ。
やはり奴はナストラル……エリファスさん呼ばなきゃ(使命感)


第5話 デュエルの匂い

「コナミお兄ちゃーん、この問題教えてー!」

 

「……ここは……こうして、こう」

 

コナミの入塾より数日がたったある日、遊勝塾の一室でコナミが子供達に勉強を教えていた。意外と言うかやはりと言うか、彼は頭が良い。しかも教え方が上手いので遊勝塾の子供達はすぐ彼になついた。

 

「へー、何だか意外ねぇ、一度寝ると起こすまで寝てるのに」

 

「それはどうなんだろう……?」

 

感心した様にほう、と口を開ける柚子とコナミの普段の生活に呆れるタツヤ。一方遊矢はと言うとそわそわと落ち着きなくコナミ達の様子を見ている。

 

「?遊矢、どうしたの?」

 

「コッコナミ!!俺の宿題も手伝ってくれ!!」

 

「あんたもかい!!」

 

宿題と思われるプリントの束を両手に掴み、笑顔でコナミにすり寄る遊矢。エンタメデュエリストとは思えない悪い笑みである。

 

「数学か……方程式さえ分かれば後は自分でも解ける筈だ。」

 

「サンキュー!コナミ!!」

 

そう言って肝心な所だけ遊矢に教え、あくまで遊矢自身の力で解かせていく。分からない所はいくつかのヒントを出すのみに留める。宿題を教えるコナミに成程と頷く遊矢、2人の様子はまるで仲の良い兄弟のようで自然と柚子の口元も緩む。

 

「おーいコナミ!投影装置の様子がおかしいんだ、ちょっと見てくれないか?」

 

「お父さんまで!?大体そんな事コナミに分かるわけ……」

 

「……簡単な造りだから、何とかなりそうだが……」

 

「うそぉ!?」

 

決してソリッドビジョン投影装置は簡単な造りで出来ていないのだが、そこはコナミ。メ蟹ックに匹敵する技術を持つ彼にとってこの手の物は得意中の得意分野である。流石オゾンより上でも問題ない問題だらけの空飛ぶ巨大Dーホイールを自作した男である。何故飛行機能を付けた。

 

「……私も勉強教えてもらおうかな……?」

 

着実に遊勝塾の面々を攻略する赤帽子の男、本人にその気があるのかは疑問ではあるが。そんな、穏やかで暖かい日常、その危機はすぐ傍まで迫っていた。

 

――――――

 

食事を済ませ昼を過ぎた頃、コナミは遊勝塾の子供達と買い出しに出掛けていた。コナミの肩には肩車をせがんだフトシが乗っている。

 

「すっげぇー!高ーい!!」

 

「次っ!次、私だからねっ!コナミお兄ちゃん!」

 

タツヤ、フトシ、アユの順番で肩車するコナミ。最初は遠慮していたタツヤもコナミが強引に乗せると静かになった。フトシを下ろし、アユを肩車して遊勝塾まで歩いて行く4人、すると。

 

「あれ?何だあの車?」

 

見慣れた遊勝塾の前に黒塗りの高級車が止まっている。客人だろうか?

 

「……デュエルの匂いがする」

 

「えっ?」

 

理解不能な言葉を呟いた後、アユを下ろし歩を早めるコナミ。そんな彼の後ろ姿を子供達は不安を抱きながら追う。

 

――――――

 

LDS、レオ・デュエル・スクール、大企業レオ・コーポレーションが経営する世界最大規模を誇るデュエル塾である。今日の昼頃、ちょうどコナミ達が買い出しに出掛けた後、レオ・コーポレーション社長、赤馬零児の母赤馬日美香の率いるLDSのエクシーズ、融合、シンクロのトップエリート達が乗っ取りの為遊勝塾に乗り込んだのだ。

 

その原因はコナミにある。彼はLDSの生徒である沢渡シンゴを故意ではないが負傷に追い込み、更にLDSの中でもエリートである制服組20人が帽子の少年に襲われたと証言した。その少年がややこしい事にコナミと酷似していたのだ。レオ・コーポレーションは直ちにコナミの居場所を探しだし、特定した。そう、遊勝塾である。これを榊 遊矢の操る新たな召喚法を手にする好機と考えた赤馬日美香。勿論沢渡シンゴ襲撃を見ていた柚子はコナミを庇い、制服組の件についても遊勝塾の面々は否定した。議論の結果、遊勝塾の経営を賭けた決闘三本勝負が行われた。

 

一戦目はジュニアユースエクシーズコース所属、志島 北斗対榊 遊矢 星座をモチーフとした『セイクリッド』モンスターを操り、エースカードであるエクシーズ・モンスター『セイクリッド・プレアデス』のバウンス効果により、得意のペンデュラム召喚の1ターンに1度しか使えないという弱点をつかれ、苦戦する遊矢であったが相手がエクシーズでありレベルを持たない事を逆手にとった遊矢の機転により見事逆転を果たした。

 

続いて二戦目、ジュニアユース融合コース所属、光津 真澄対柊 柚子 宝石の輝きを放つ『ジェムナイト』達を次々と展開する真澄に対して音楽をモチーフとした『幻奏』モンスターで反撃の手をとる柚子、しかし真澄は奥の手である融合モンスター『ジェムナイトマスター・ダイヤ』の強力な効果により敗北してしまう。

 

残る三戦目、ジュニアユースシンクロコース所属、刀堂 刃対権現坂 昇 本来なら遊勝塾所属の生徒が出るべきであったが、コナミと子供達は買い出し、残る素良は気が乗らずその場に居合わせた権現坂が助太刀したいと言いこのような形となった。内容は引き分け。圧倒的な展開力を持つ刃の『Xセイバー』とデッキ全てがモンスターカードの所謂『フルモン』かつ守備表示で戦闘を行う『超重武者』という珍しいカテゴリを使う権現坂の戦いは熾烈を極め最終的に『超重武者装留ビッグバン』の効果によりこの結果となった。

 

そして勝負はもつれ込み赤馬日美香が四戦目を提案したその時、LDSは最強の刺客を放った。レオ・コーポレーションの若き社長にして天才デュエリスト、赤馬零児、彼に対抗する為遊矢が名乗り出ようとしたその時。

 

「――何を――している?――」

 

遊勝塾最凶の化物が帰還した。

 

――――――

 

「コナミ――?」

 

子供達を引き連れ戻って来た赤帽子の少年、この短い間で遊矢にとって親友とも言える程親しくなった彼の声に反射的に振り返る。

 

「……君が、コナミか?」

 

赤馬零児がコナミに振り返る。だが今の遊矢には周りが見えない。何故ならコナミの様子がおかしかった。一見すると何時もの口数も少なく大人しいコナミだろう、だが何かが違う。彼が纏う空気と言うのだろうか、それがおかしい、まるで――。

 

(怒ってる……?)

 

「今、君が原因で遊勝塾の経営を賭けたデュエルが行われている。四戦目で相手は私、赤馬零児だ。君はどうする?」

 

零児の言葉にピクリと動き、遊矢に視線を合わせるコナミ。

 

「……遊矢、オレに任せて貰っていいか?」

 

「あっああ、……ははっ、心配かけたくなかったんだけどな……」

 

目を伏せ、自嘲する様に笑う遊矢の頭をポンと優しく叩き、デュエルフィールドへ降りるコナミ、早くしろとばかりに零児を顎で急かす。その様子を見ていた遊矢は違和感を覚える。

 

「何だか……コナミらしくないな……」

 

「彼、大丈夫かしらね?」

 

挑発する様に笑みを浮かべる真澄、しかし。

 

「負けないわ」

 

その言葉を否定したのは柚子。成程、彼女ならコナミの実力を知っている。

 

「どうかなぁ、相手は天才デュエリストだぜ?」

 

先程まで膝を抱え落ち込んでいた北斗が真澄の言葉に便乗するような形で会話に混ざる。

 

「……何でかは分からないけど」

 

「?」

 

遊矢の言葉にLDSの三人組が首を傾げる。

 

「コナミは、負けない気がする。」

 

根拠はない、コナミのデュエルは一度も見た事がない、だけど――

――それでもコナミの負ける姿が想像出来なかった。

 

――――――

 

「塾長、デュエルフィールドを」

 

「あっ、ああ」

 

コナミが修造を促す。勿論コナミはアクション・デュエルはやった事はない、彼の得意とするフィールドが分からない修造はフィールドをランダム設定とする。様々なパネルが光り、やがてパネルがあるフィールドで止まる。

 

「っ!?これは……!?」

 

フィールドに次々とビルが立ち並び空を閉ざしていく、味気ない夜の街にネオンの光が照らされる。まさに摩天楼、そのフィールドはかつて榊 遊勝が得意とした奇跡の街。

 

「『マジカル・ブロードウェイ』……!?」

 

――――――

 

「先攻は譲ってやる。」

 

「……何?」

 

コナミらしからぬ上からの物言いに眉をひそめる零児。しかしそんな彼の背筋を気味の悪い感覚が襲う、まるで得体の知れない怪物にその身が掴まれたような吐き気すら覚える、不快感。

 

「勝ちはオレが貰う。」

 

その正体は眼前で光のプレートを展開する赤帽子の少年。珍しく頬に冷や汗を垂らす零児、全身が警報を鳴らす。だが逃げる訳にはいかない。

 

「戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」

 

「!?」

 

急に修造が叫んだ事により驚くコナミ。無理もない彼はアクション・デュエルは初めてなのだ。その様子を見ていた零児は先程までの緊張を解く。

 

「気にするな、様式美のようなものだ。」

 

「……そうか」

 

「モンスターと地を蹴り、宙を舞い!」

 

続くように口を開いたのは赤馬日美香、意外にノリノリである。しかし彼女の事を知らないコナミは頭の上に幾つもの?マークを浮かべている。

 

「私の母だ」

 

「……そうか」

 

何故だろうか先程と同じ台詞なのに哀れのようなものを感じる。

 

「フィールド内を駆け巡る!」

 

「見よ、これぞデュエルの最強進化形!」

 

初めて聞くアクション・デュエルの口上だがライディング・デュエルの時と同じようなものか、と一人で納得しうんうんと頷くコナミ。良く聞くと良いじゃないか、決闘の最強進化形、楽しみだ。と結構気に入っている様だ。

 

「「アクショーン!!」」

 

「「デュエル……!」」

 

ノリノリで口上を紡ぐ2人とは対照的な二人のデュエリストは静かに、戦いの火蓋を切った。

 

「私のターン、永続魔法『地獄門の契約書』を発動し、効果により、『DD』モンスター1体をデッキより手札に加える。……スタンバイフェイズに1000のダメージを受けるがね、私は『DD魔導賢者ケプラー』を手札に加え、召喚する」

 

DD魔導賢者ケプラー 攻撃力0

 

現れたのは機械の身体を持つ青い賢者。所々内部の機械が剥き出しになっており何処か不気味さを感じさせる。コナミはこのカードに他とは違った違和感を感じるが……気のせいかと頭を振る。

 

「『DD魔導賢者ケプラー』の効果、召喚成功時、2つの効果の内、1つを発動する。私は2つ目のデッキより『契約書』を手札に加える効果を選ぶ、私は『魔神王の契約書』を加え、発動。このカードは1ターンに1度、手札、フィールドの悪魔族のモンスターを素材とし融合召喚が出来る。これもスタンバイフェイズに1000のダメージを受ける。」

 

淡々と丁寧にカードの説明をする零児、後ろで色々と喋っている面々とは違いコナミは無感情に零児の一挙一動を観察する。それがどうにも零児には気持ち悪さを感じさせられる。

 

「っ!私はフィールドの『DD魔導賢者ケプラー』と『DDパンドラ』で融合!融合召喚!!出でよ!神の威光伝えし王『DDD神託王ダルク』!」

 

賢者は災いの壺と重なりその姿を大きく変える。悪魔の翼を広げ、天空より舞いしは鎧を纏った闇の聖女。自らの身体の前に剣を構え、零児の傍に降り立った。

 

DDD神託王ダルク 攻撃力2800

 

「カードを1枚伏せターンエンド、さぁ君の番だ」

 

赤馬零児 LP4000

フィールド『神託王ダルク』(攻撃表示)

『地獄門の契約書』 『魔神王の契約書』 セット1

手札2

 

零児のターンが終了する。コナミはカードを1枚引き、状況を整理する。

 

(相手の場には攻撃力2800の『DDD神託王ダルク』、そして1ターンに1度『DD』モンスターを制限無しでサーチする『地獄門の契約書』、悪魔族専用の融合魔法『魔神王の契約書』、そしてセットカードが1枚、ケプラーや『地獄門の契約書』と言ったサーチで堅実に場を固めて来た事を考えればダメージ回避のカードか……)

 

相手の出方を分析しセットカードを警戒するコナミ。『契約書』カードには決して軽くないデメリットが約束されている。ならばそれをカバーする手は既に打たれているとコナミは考えたのだ。

 

「……オレは魔法カード『ギャラクシー・サイクロン』を発動。お前のセットカードを破壊する。」

 

「っ!罠発動『契約洗浄』、契約書を破壊しその数だけドローし、更にドローした数だけ1000ポイントライフを回復する!」

 

赤馬零児 手札2→4 LP4000→6000

 

コナミの目の付け所は悪くはなかった。その証拠に零児は僅かながらだがコナミの打った手に目を見開く。しかし選択したカードは所謂フリーチェーンのカード、破壊はされども効果は発動されてしまう。軽く眉をひそめながらもバックを気にしなくても良くなったのはまだマシかと持ち直す。

 

「魔法カード『調律』を発動、デッキより『ジェット・シンクロン』を手札に加えデッキトップを墓地に送り、『E・HEROブレイズマン』を召喚」

 

火柱を上げ、登場したのは炎の鬣を持つ赤の戦士。攻撃力は低いがその効果は実に優秀。

 

「ブレイズマンの効果、デッキから『融合』を手札に加え、発動。手札の『デブリ・ドラゴン』とフィールドの『E・HEROブレイズマン』を融合、吹き荒れろ『E・HEROGreat TORNADO』」

 

炎の戦士と小さなドラゴンが融合し、暴風を纏いて現れしは黒き外套を纏った風の英雄。その力は豪快にして強力。

 

「Great TORNADOの効果、融合召喚時、お前のフィールドのモンスターの攻撃力、守備力を半分にする。タウン・バースト」

 

吹き荒れし嵐によりダルクの翼はボロボロになっていく、まるで天空に存在せしは自らのみと誇示するように。

 

『DDD神託王ダルク』攻撃力2800→1400

 

「バトル、Great TORNADOで『DDD神託王ダルク』を攻撃、スーパーセル」

 

雷雲が発生し、大量の竜巻をダルクに向かい発射する。余りの突風に零児は眉をひそめながらも風に吹き飛ばされたカードを拾い上げる。

 

「アクションマジック『回避』、モンスターの攻撃を無効とする!」

 

自然に害され、自然に救われる。ほっと息をつき安心するのも束の間。

 

「速攻魔法『ダブル・アップ・チャンス』、攻撃が無効にされた時、そのモンスターの攻撃力を倍にして、もう1度攻撃する」

 

その程度では天災は止まらない、竜巻は幾重にも重なり巨大化し襲い来る。その様はまるで竜、その無条理なる顎が異次元の王を噛み砕いた。

 

「ぬっうぐっ!?」

 

赤馬零児 LP6000→1800

 

吹き飛ばされた身体を翻し何とか着地する零児。恨めしげにコナミを睨めつけるが、彼は帽子を被り直し無感情に零児を見るのみ。

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

コナミ LP4000 フィールド『E・HEROGreat TORNADO』(攻撃表示)

セット1

手札2

 

視線を交わす二人のデュエリスト、彼等が何を思っているのかは分からない、しかしまだ戦いは始まったばかり――。




いよいよデュエル回、しかし書いた後思った。
タッグフォースなのにタッグデュエルしてない。
このままじゃタイトル詐欺になる。
VS零児が終わったらタッグデュエルやる筈(震え声)

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