時は進み、コナミと北斗のデュエルによって会場が暖まり、遊矢と沢渡のエンタメデュエル合戦によって会場は更にヒートアップした。
2人のデュエルの内容は何と、沢渡がネオ・ニュー沢渡に進化し、ペンデュラムカードを扱うと言う、夢のようなペンデュラム対決。華々しいペンデュラムのぶつかり合いに会場の選手、観客達の誰もが魅了され、正しく遊矢の目指すエンタメデュエルの体現であった。
着実に成長する自分を噛み締める遊矢。彼は更なる高みを望み、他の選手達のデュエルスタイルを研究し、吸収すべく、次なる試合を観戦するのだが――。
「……何だよ……これ……?こんなものが……これが、デュエルだって言うのかよ!?」
今、遊矢の眼前で繰り広げられる血で血を洗うような凄惨な光景。崩壊した未来都市を舞台に、互いのデュエリストの怒りが、憎悪が、嫌悪が、悲痛が、悲哀が――剥き出しの獣となって、空を紅に染め上げる。
空襲の如く炸裂する焦げ臭い火薬の匂いが立ち込め、絹を裂いて牙を剥く刃が突き立てられ、不快な音色を奏でる。
何より遊矢の耳に届くのは――幼き子供達の、悲鳴のような泣き声、そんな子供達の目を覆う、女性達の悲痛の声、デュエルを観戦する男性の、こんなものを見たいんじゃないと言う、後悔の声。
「……こんなの、まるで……」
ギリッ、奥歯を強く噛み締め、観客席とフィールドを隔てる鉄の棒を強く握る遊矢。どうしてこんな事になる。拭えない疑惑の感情が、床に落ちた染みのように広がり、聞き慣れた少年のあどけない声が、心の底で残っている男のドスの効いた声が、頭の中を過る。
――君のデュエル面白いね!ね、ししょーって呼んで良い?――
――くだらん――
――凄いね遊矢!何時の間に融合が使えるようになったの!?――
――そんなものは所詮、綺麗事だ。デュエルを……人を傷つける為の手段としか使わない奴等には通用しない!――
――どうして遊矢は、エンタメデュエルをしたいって思ったの?――
――……鉄の意志とは言えんが……銅の意志と言った所か――
じくり、胸の奥で僅かな痛みが広がっていく。2人のデュエリストを睨むように目を鋭くし、唇を噛む。拳を血が出そうな位強く握り、胸の奥に、遊矢が抱いたものは――悲しみと、確かな怒り。
その矛先は――紫雲院 素良と、黒咲 隼。融合次元のアカデミアの兵士と、エクシーズ次元のレジスタンスの生き残り。
2人のデュエル、いや、戦争を見て、遊矢はブチギレていた。ハンティングゲームだとか、戦争だとか、そんな2人の事情は、どうでも良い。そんな彼等の事情は、知った事では無い。2人の間で何があったなんかは知らないが、遊矢にははっきりと分かる。
2人は間違っていると。自分が正しいなんて言えないが、絶対に2人は間違っている。これだけは譲らないし、譲るつもりが無い。
何故なら彼等は――自分が大好きなデュエルを、踏みにじったから。友達だから許せないし、そんな事をして欲しく無い。
「デュエルは戦争なんかじゃない……!復讐の道具でも無い……!」
2人のデュエルに決着がついたその時、素良へと歩み寄る黒咲を見て、堪え切れないように遊矢がその身を乗り出し、2人の間に割って入るように現れる。
「ッ!……お前は……」
「……ゆ、う――や?」
「……」
突然目の前に現れた遊矢に、目を見開いてその手を止める黒咲と、虚ろな視線を向け、意識を手放す素良。
会場の観客も、司会のニコでさえも、遊矢と黒咲の動向を伺い、時が止まったかのように静まり返り、唾を飲み込む。
「邪魔だ、そこを退け」
「嫌だ」
「そいつは俺の故郷を、仲間を奪い去った」
「だからって同じように奪うのか?素良は俺の友達だ……!絶対に奪わせない……!」
「そいつはアカデミアの手先、何を守る必要がある!」
「確かに素良は悪い事をしたのかもしれない、だけど友達なんだ!守らない理由が何処にある!」
ギンッ、赤と金の鋭き眼が視線を交わし合い、火花を散らす。押し問答のように言葉の刃をぶつけ合う2人、黒咲の悲痛と憎悪が籠った言葉と、冷徹な視線を受けて尚、遊矢は退く事をしない。
それ所か、食って掛かるように前に出る遊矢が押しているようにも見える。
「何も分からないからそう言える!お前の前に、そいつが敵として現れた時、お前は本当にそいつが友だと言えるか!?」
「分かってないのはそっちだ!仲間だろうと敵だろうと、友達をやめる理由にはならない!友達じゃ無くなった時は、自分からやめた時だろ!?俺は絶対にそんな事しない!」
「綺麗事を……」
「そっちが汚い事に逃げてるんだろ!?」
「ッ!?」
「何が力をつけろだ!怒りに任せて簡単な方向に逃げて!俺は絶対に負けない!勝負だ黒咲!お前に本物のデュエルを教えてやる!」
互いに譲れぬ想い、確固たる意志をぶつけながらも次第に遊矢が押している。子供のような、分からないからこそ真理を突くような鋭い言葉、遊矢のその銅の意志を前に、思わずあの黒咲も押し黙る。
だがそれでも遊矢の怒りはおさまらず、腰元よりデュエルディスクを取り出し、その右腕にジャキリと音を立てて装着する。
「素良が悪い事をしたのは分かる!だけどそれがデュエルでやり返して良い理由にはならない!何よりデュエルをお前達の戦争ごっこに使うんじゃない!!」
「戦争ごっこだと……!?俺達の誇りを!戦いを戦争ごっこと言ったのか貴様は!?」
「戦争ごっこだろ!デュエルで傷つけ合って、見てる人が悲しくなるようなものが誇り?笑わせんな!そんな事ばっかして何になる!?」
「失った仲間達の仇を取って何が悪い!?」
「お前の頭が悪いんだよ!自分がされて嫌な事をするな!」
止まらない、止まる事の無い、感情の発露。鼻息を荒くして睨み合う2人のデュエリスト。今にもデュエルを始めようと2人がデュエルディスクからソリッドビジョンのプレートを展開したその時。
ガシリ、2人が振り上げた腕を止める者が現れる。
「止まれ遊矢!お前が熱くなってどうする!?」
「貴方もよ隼。あまり私の手を煩わせないでくれるかしら?」
仲裁に入ったのは、遊矢の親友である権現坂と、白いマントに身を包んだ、桃色と毛先が紫に変わった髪の美女だ。
彼等は遊矢達の口喧嘩を見かね、飛び出したのだ。
「放せよ権現坂!この馬鹿一回ガツンとやってやらないと分からないんだよ!」
「馬鹿はお前だ!今のお前は感情的になり過ぎている!怒りに任せるなと言ったのはお前だぞ!それに素良を医務室に運ばねばならん!」
「放せ瑠那!邪魔をするなら貴様も倒す!」
「どうしてあいつと貴方は暴走するの!止める身にもなりなさい!そのせいで死にそうな奴もいるってのに!」
1人で突っ走り、暴れる2人を必死で押さえつける権現坂と瑠那。闘争心を剥き出しにして火花を散らす2人に溜め息を吐き出し、2人は仕方無いと言った様子で互いの身内を引き摺る。
と、そこで、ギャーギャーとうるさく騒ぎ立てる2人の口を抑えながら、2人の保護者は振り向き――。
「黒咲、と言ったな。確かに、遊矢も感情的になって正しいとは言えんが――それは、お前にも言える事だ」
「榊君、どうしてもこの馬鹿に言う事を聞かせたいなら、貴方のデュエルで隼を倒して見せなさい」
その言葉を最後に、2人は押し黙り、幕を閉ざす。その瞳に、闘志を宿しながら――。
――――――
「……何だ、デュエルしないのか……」
遊矢と黒咲が権現坂と瑠那に引き摺られる中、観客席で一部始終を見ていたコナミは、つまらなそうにひとりごち、席を立つ。
その表情は目深に被られた赤帽子で良く見えないが、残念そうな、落胆して見える。
そんなコナミの背をキョトンと見つめる暗次の肩を、刃が軽く揺する。
「おい暗次。今日の試合は終わったぞ、帰ろうぜ」
「ん、ああ……でも兄貴の様子が何か……」
「何だよ。あいつがおかしいのは何時もの事だろ」
「いや、そうなんだけどさ」
何を言っているんだとばかりに目を細め、怪訝な眼差しを向ける刃と、首を傾げ、うぅむと唸る暗次。
確かに、彼は見たような気がしたのだ。素良と黒咲が激闘を繰り広げる中――歪んだ笑みを向ける、コナミの横顔が――。
「……何でもねぇ。きっと気のせいだろ」
そうだ。彼が、自分達を救ってくれた恩人が、あの憎悪に彩られたデュエルを見て、楽しそうに笑う訳が無い。
頭を左右に振り、その場を立ち上がる暗次。そう、彼は自分の尊敬する兄貴分で、この場にいる皆の助けになった凄い人なんだと、暗次は信じる。
――誰もがそう思い、そう信じる。――それが――間違いだと、知らずに。
――――――
舞網チャンピオンシップ、一回戦前半が終了し、日が暮れ、空に闇の帳が下りた後、更なる嵐が舞網市に吹き抜ける。
ギャリギャリと獣の唸り声のような音色を奏で、駆け回る白いバイク――いや、デュエルディスクと一体化したバイク、D-ホイールに跨がる、遊矢と似た顔立ちの少年、シンクロ次元からのアカデミアの手先、ユーゴ。
そしてエクシーズ次元のレジスタンスの一員、遊矢とそっくりの少年、ユート。
暗き闇夜で紅い血流を妖しく輝かせる『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』と、薄いミントグリーンの両翼を翻した青と白、空色の竜、『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』の、2人と2竜の激突。
事の発端は素良の医務室からの脱走だった。エクシーズ次元のデュエリスト、黒咲に敗れた事でプライドを大きく傷つけられた彼は、リベンジを果たすべく、同じくエクシーズ次元の人間、ユートにデュエルを挑んだのだが、そこに元々先の試合の事で苛々していた遊矢が参戦し、ブチギレながらも2人を止めようとするが、突如素良の姿が消え、ユートに融合次元、エクシーズ次元、シンクロ次元、そしてスタンダード次元の事、彼等の身に何があったのかを聞かされる。
ユート曰く、平和に過ごしていたエクシーズ次元に、突如として融合次元のアカデミアが攻め込み、街を、人々を傷つけられ、それに立ち向かうべく、レジスタンスを結成し、アカデミアに対抗する為にスタンダード次元に来た、と。
そんな中、素良と入れ替わり現れたユーゴがユートに敵意を見せ、デュエルが始まったのだ。
互いの竜を召喚した2人は、我を忘れたかのように共鳴し、獣の如く理性を無くし、デュエルを続け――不意に、ユートの意識が戻った、その瞬間。
「『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』の効果ァ!『SRシェイブー・メラン』の効果を無効にして破壊ィ!そしてその攻撃力をクリアウィングに加える!ダイクロイック・ミラー!」
クリアウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力2500→4500
三日月のような刃を持つ、ブーメラン型の『SR』モンスター、シェイブー・メランの輝きを翼に吸収し、クリアウィングの翼に基盤のような紋様が走り、より一層その輝きを増す。
対効果モンスター、そしてモンスターに対して発動する効果を無効化する強固な耐性が攻撃に転じる。
そう、ユートの意識は戻ったが――ユーゴは未だに、その戦意を失わない。
「戻ってない……!?ユート、危ない!」
ヤバい、いち早く危険を察知した遊矢は直ぐ様駆け、ユートの元へと急ぐ。早く、速く、疾くしなければ――友達が危険なのだ。
助けなきゃ守らなきゃとそれだけを一心に走る。間に合え、間に合う――その右手を伸ばし、ユートの手を掴むも――トンッ、その手は空を切り、ユートは遊矢を巻き込むまいと、突き放した――。
「ユート――」
「ありがとう――遊矢――」
「旋風のォ、ヘルダイブスラッシャーッ!!」
遊矢が名を呼ぶも――既に遅く、彼本来の優しい笑顔を浮かべ――ユートとダーク・リベリオンは、ミントグリーンの翼で、風を逆巻くクリアウィングの前に――敗れた――。
ユート LP1200→0
「ユートォォォォォッ!!」
伸ばした手は、届かずに、それでも、諦めたく無くて、認めたく無くて、歯を食い縛り、急いで立ち上がり、ユートへと駆ける。
そんな中、ユーゴは意識を取り戻したのか、キョロキョロと辺りを見回したと思いきや――不意にその姿を消す。
だが今の遊矢にはそんな事関係無い。今は友達の方が優先だ。遊矢はユートを抱き起こし、必死にその名を呼びかける。
「ユート!大丈夫かユート!?」
「遊矢――君を、巻き込んですまない……」
「そんな事構わない!友達なんだから迷惑かけてくれて良いんだ!」
力無く倒れるユートを担ぎ、ズルズルと足取り重く歩き始める遊矢。早く治療をしなければ、焦る気持ちを抑え切れず、それでも自分に出来る事をしようとする遊矢を見て、ユートはフッと薄い笑みを浮かべ、自らのデッキより2枚のカードを取り出し、遊矢へ差し出す。
「君に、頼みがある」
「何だよ、今会場に向かうからな、あそこならここから近いし、設備も揃ってる……!」
「君は言った。誰もが笑顔になれるデュエルがしたいと、君なら出来ると、俺は信じている。だから――俺の故郷にも――エクシーズ次元にも――」
「それ位やってやるさ!だけど、そこにお前がいなきゃ、意味が無いだろ!?」
「……俺は良いんだ。君のデュエルで――皆に、笑顔を――」
その言葉に、遊矢は思わずハッとなる。だってその言葉は――父の、教えであったから。次第にユートの身体は透明になり、その重さも軽くなっていく。
明らかに異常で、手の出しようが無い状態、遊矢は自分の無力さに歯軋りを鳴らし――悲痛を隠さずに、ユートから2枚のカードを受け取る。
1枚は『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』、そしてもう1枚は――。遊矢は2枚を強く握り締め、ユートへ誓いを立てる。
「約束する。絶対に、絶対にこんな馬鹿げた事を止めてやる。皆を――笑顔にして見せる」
もう誰も、デュエルで傷つけさせない。消え行く友の願いを胸に抱き、遊矢は決心する。その言葉を聞いたユートは、満足したのか、安心した表情で白い光となって消えていく。涙は――流さなかった。
――――――
少年、桜樹 ユウは自らの所属するLDSから帰路へつく道筋を歩いていた。先程までLDSにて社長である赤馬 零児から次元戦争の事やアカデミアに対抗する為の勢力結成の説明を受け、遅くなってしまった。
疑っている訳では無いが、この話が本当ならば、確かに大変な事になりかねない。少しでも腕を磨かねばならないだろう。
何せ敵の実力は未知数、自分が昨年の舞網チャンピオンシップの優勝者だとしても油断は禁物だ。
少し前までならば慢心していただろうか、とふと苦笑する。自分がここまで力に貪欲になったのは何時以来だろう。昨年のチャンピオンシップは何とか優勝しようと努力を惜しまなかったが、優勝してからは目標を無くし、デッキ構築も怠っていたと考える。
それが変わったのは本当に最近、突然家に居候する事になった者の影響だ。
彼は類稀なデュエルセンスと直感的なプレイングを駆使し、桜樹をいとも容易く下したのだ。それが悔しくて、何度もリベンジを挑み、敗北してはまたデッキを見直すと言う事を続けている。それ程に彼は強く、それに楽しそうにデュエルをする。そうだ、彼に協力してもらえないだろうかと思い至り、急いで自宅の鍵を刺してドアノブを回し、扉を開く。そこには――。
「あ……お、おかえり……ユウ……」
家の中である筈なのに、白いバイクに跨がり、ヘルメットからバイザーを伸ばし、白を基調としたライダースーツに身を包んだ少年――ユーゴが気不味気に苦笑いし、パッシングしていた――。
「お前家から出てけ」
「MA☆TTE!」
急激に冷めていく桜樹の視線と態度を見て、何とか抵抗しようとチカチカとデュエルディスクとバイクが一体化したD-ホイール、そのライトを点滅する居候、ユーゴ。
逆効果では無いだろうか。何とか家に居座る為に、ユーゴは必死に弁明を始める。
「いや違うんだよ!何かドライブしてたらクリアウィングが急に光って俺そっくりの奴と遭遇して、そんで気を失って、そっくりな奴が消えてると思ったら俺も消えてここに居て……ああ良く分かんねぇ!それもこれもクリアウイングって奴のせいなんだ!フフ、コイツメ☆」
「荷物はそれだけだよな」
「ちょっと本当に待ってゴメン俺にも良く分かんないんだって!ここ追い出されたら美味い飯にありつけないんだよ!エアコンあるし卵焼き美味いし……ん?エアコン……あっ」
「おいちょっと待て、まさかエアコンつけっぱなしって事は……」
最早子供の言い訳となって来たユーゴに対し、D-ホイールをジッ、と冷たい目で見つめる桜樹。
それに対しユーゴは更に食い下がり、捲し立てるが――途中である事に気づき、ダラダラと脂汗を流す。
そんなユーゴを見て、何かを察した桜樹は背筋に冷たい汗を垂らしながら、急いで家に上がり、自分の部屋の扉を開く。
そして、視線の先には――緑色のランプを光らせ、冷たい風を吹かせるエアコン。桜樹はカッ、と見開いた目をユーゴに向け、対するユーゴは、デッキから1枚のカードを取り出し。
「コイツメ☆」
「ユーゴォォォォォォォォォォッ!!」
「融合じゃねぇ!ユーゴだ!」
「うるせぇ!」
そのまま取っ組み合いの喧嘩となり、「表に出ろテメェ!」の声を皮切りにデュエルを始める2人の少年。
桜樹家は今日も平和である。――因みに、仲直りをした後、家に戻り、エアコンを消して無かった事を思い出し、再びデュエルを始めるのは1時間後の事であり、これこそが恐るべきエアコンループの始まりであった――。
――――
ユートの消失から2日後――舞網チャンピオンシップの第1回戦全ての試合が終了した。今日からは2回戦が始まり、3回戦へのふるい落としがかけられる。
ここで勝たねば進めない、ユートの仲間である黒咲とも闘えない。遊矢は気を引き締め、会場へと続く選手入り口の道を進む。
2回戦第1試合、相手のデュエリストは強敵だ。だがそれで引き下がる遊矢では無いし、むしろ望む所、暗い道を歩み、光差す方向へと遊矢は進む。そして――。
『さぁ、ペンデュラム召喚の使い手、榊 遊矢選手の入場です!』
ニコの声と共に、会場中の観客が沸き立ち、遊矢はその歓声の嵐を身に受ける。どうやら予想以上に期待してくれているようだ。全霊を持って応えようと笑みを深め、意気込む。
そんな遊矢の眼前にいるのは、浅黒い肌に学ランを纏い、左手にバンテージ、右手に3つのリングを嵌めた、好戦的な笑みを向ける少年――。
「へへ、待ってたぜ!遊矢!」
「俺もだ!アリト!」
ボクシングデュエルジム所属、アリト。つい最近遊矢と知り合い、友人となった快活な少年だ。まさかこんなにも早く彼とデュエルをするとは思って見なかった遊矢だが、同時に彼と闘いたくもあった。
熱い闘志を互いに剥き出しにし、デュエルディスクからソリッドビジョンのプレートを展開する。
『では2回戦第1試合、遊勝塾所属、榊 遊矢選手対ボクシングデュエルジム所属、アリト選手のデュエルを始めます!アクションフィールド、発動!』
淡き光に侵食されるスタジアム、濃密な闘気が空を閉ざし、観客席が近代のものから古く原始的なコロッセオに剥がれ落ちるように変化し、歓声が雨の如く降り注ぎ、2人の身体を焦がさんばかりに熱を抱かせる。
この場にいるのはデュエリストと言う名のカードの拳で凌ぎを削る拳闘士。2人は熱に浮かされながら『サベージ・コロシアム』にて口上を紡ぐ。
「さぁ、行くぜ遊矢!戦いの殿堂に集いしデュエリスト達が!」
「モンスターと共に地を蹴り宙を舞い!」
「フィールド内を駆け巡る!」
「見よ、これぞデュエルの最強進化形!」
さぁ、往こう。まだ見ぬデュエルの地平線、未だに終わらぬその道を、追い求める答えを、遊矢が自身に課したエンタメデュエルのその先を見る為に。
望むのは戦争では無く決闘。ドクドクと脈打つ血流、高鳴る鼓動に身体を委ね、2人は互いに駆け出す。
「「アクショーン……デュエル!!」」
2人の表情は、天上に輝かしい光を照らす太陽のように、光に満ちていた。
人物紹介5
志島 北斗
所属 LDS
LDSエクシーズコースに所属する優秀なデュエリスト。1度は遊矢に敗北する事でスランプに陥ったが、黒咲さんと真澄と刃、ついでにコナミの助けにより、前回以上の実力を手に入れる。
多くの連勝記録を築いて来ただけあり、その実力は高く、LDSの模範となっており、先攻プレアデス絶対立てるマンの通り名をものにしている。
因みに名づけたのはマルコ先生と黒咲さん。
黒咲さんの事をエクシーズコースの先輩として尊敬しており、彼にランクアップを教わったりした。LDSに入ったのも黒咲さんに憧れて、それ所かデュエリストになった切欠も黒咲さんだったりする。
使用デッキは『セイクリッド』、エースカードは『セイクリッド・プレアデス』。