遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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何時もよりちょっと早いですが、土日が忙しくなりそうなので暇なこの日の内に更新。最近三者三葉のopを流しながら作業してます。


第44話 邪魔しに参った

気に入らない。八雲は複雑そうな表情をして心の中で舌打ちを鳴らす。それもこれも目の前で場違いにも笑っている奴等のせいだ。

榊 遊矢、ユートと似た顔をした、彼が警戒しろと言っていたデュエリスト。確かに厄介だ、こんな状況でもデュエルを楽しむ精神のお陰で冷静さを失っていたユートまで笑っている。

全くもって気分が悪い。だが依然として自分の有利は変わらない。相手のペースを乱すつもりで自分のペースが乱されてしまっては元も子も無いと不快感を振り払う。

 

「その余裕がどこまで続くかな?僕のターン、ドロー!」

 

これで手札が8枚まで膨れ上がった。フィールドのカードはほぼ失っているが充分に巻き返せる。強力な効果を持つダーク・リベリオンも今は守備表示、牙を抜かれたも当然、ORUも使えないなら宝の持ち腐れだ。

 

「僕は魔法カード、『シャッフル・リボーン』発動!墓地の『サクリファイス・スパイダー』を特殊召喚!」

 

サクリファイス・スパイダー 守備力500

 

現れたのは黄金色に輝く球体を背負った小蜘蛛。チカチカと点滅するその珠はまるで――爆弾だ。

 

「『サクリファイス・スパイダー』はリリースして効果発動!君達のフィールド上の表側守備表示のモンスターを全て破壊する!この効果は墓地で発動する効果!『幻影霧剣』でも止められない!」

 

「罠発動!『幻影翼』!遊矢の『EMギッタンバッタ』に1ターンに1度の破壊耐性を与える!更にブレイクソードの効果により、フラジャイルアーマーとクラックヘルムのレベルを1つ上げ、特殊召喚する!」

 

「サンキュー、ユート!」

 

幻影騎士団フラジャイルアーマー 守備力2000 レベル4→5

 

幻影騎士団クラックヘルム 攻撃力1500 レベル4→5

 

幻影の翼を得て、爆発を回避するギッタンバッタとブレイクソードの魂より生まれたる騎士達。ダーク・リベリオンを失ってしまったが今はパートナーの方が優先だ。己の魂より大事なものがあるとユートはあの男に教わったのだ。

 

「『幻影騎士団』は倒れない!」

 

「格好良い事言ってる所悪いけど、そのモンスター利用させて貰おうか!『EMギッタンバッタ』と『幻影騎士団フラジャイルアーマー』を墓地へ送り、手札の『マザー・スパイダー』を特殊召喚!」

 

マザー・スパイダー 攻撃力2300

 

ギッタンバッタとフラジャイルアーマーが蜘蛛の糸に捕らえられ、2体を生け贄に巨大な女郎蜘蛛が現れる。紫の体躯に身体を支える8本の脚は刃物のように鋭利で攻撃的だ。

 

「更に魔法カード、『ワン・フォー・ワン』!手札のモンスターを墓地へ送り、デッキのレベル1モンスター、『ハチビー』を特殊召喚!」

 

ハチビー 守備力400

 

フィールドに現れたのは槍を手に持った小さな蜂型のモンスター。

 

「『ハチビー』と『マザー・スパイダー』をリリースし、2枚ドロー!」

 

八雲 興司 手札4→6

 

「更に『死者蘇生』を発動!墓地の『電子光虫―センチビット』を特殊召喚!」

 

電子光虫―センチビット 攻撃力1500

 

「『電子光虫―コクーンデンサ』を召喚!」

 

電子光虫―コクーンデンサ 攻撃力0

 

「墓地のウェブソルダーを対象にコクーンデンサの効果発動!このカードを守備表示に変更し、対象としたモンスターを蘇生する!」

 

電子光虫―ウェブソルダー 守備力1500

 

フィールドに芋蔓式に並ぶ3体の電子光虫。虫、そしてバグの名を持つに相応しい繁殖力だ。しかしまだ――終わりではない。

 

「センチビットを対象にウェブソルダーの効果発動!センチビットを守備表示に変更し、手札の『バチバチバチ』を特殊召喚!更にセンチビットの表示形式が攻撃表示から守備表示に変更された時、デッキからレベル3の昆虫族を特殊召喚する!2体目のセンチビットを特殊召喚だ!」

 

バチバチバチ 守備力800

 

電子光虫―センチビット 守備力500

 

ついに八雲のフィールドに5体のモンスターが揃う。ペンデュラム召喚も使ってないのにこの展開力は恐ろしいものがある。しかもユートに対するメタを入れながら、である。

遊矢が今まで闘ってきた中で1番の強敵は黒コナミだ。しかし彼のデュエルスタイルはカードのパワーを活かす荒々しく力任せなデュエル。

そして八雲はその反対に1つずつカードの効果を繋げていくコンボ重視、メタ中心のテクニカルで緻密に練り上げた策のデュエル。

 

「5体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『電子光虫―スカラジエータ』!」

 

電子光虫―スカラジエータ 攻撃力1800

 

「複数体の素材でもエクシーズ召喚可能なモンスターか……!」

 

「さぁ、守備表示になって貰うよ!」

 

幻影騎士団クラックヘルム 守備力500→0

 

「更に!スカラジエータのORUを2つ取り除き、ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!エクシーズ召喚!『電子光虫―コアベージ』!」

 

電子光虫コアベージ 攻撃力2200

 

スカラジエータの背中が青白く輝き、蛹のようにひび割れ、開いた中より機械の蝶が羽ばたく。その雷を帯びた羽が光り、ボルトの眼がユート達を捉える。

 

「ランクアップまで……!」

 

「まだ終わってないよ!コアベージのORUを2つ取り除き、ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!エクシーズ召喚!『電子光虫―ライノセバス』!」

 

電子光虫―ライノセバス 攻撃力2600

 

地で伏せていたスカラジエータの甲殻が再びコアベージの身を包み、変形していく。電光を纏い、生まれたのは4枚の羽、2本の雄々しき大角を唸らせた最強の電子光虫。

2回連続のランクアップ、その豪快な登場を見て遊矢は目を輝かせる。

 

「すげぇ……!」

 

「ここで止める!永続魔法、『幻影霧剣』!これで――」

 

「速攻魔法、『コズミック・サイクロン』!対策は取ってるんだよ!1000LPを払い、『幻影霧剣』を除外する!」

 

八雲 興司 LP4000→3000

 

「バトルだ!ライノセバスでクラックヘルムを攻撃!そしてライノセバスは守備表示モンスターを攻撃する場合、貫通ダメージを与える!」

 

ユート LP4000→1400

 

「ぐっ、う――!」

 

雷を帯びた角がクラックヘルムを砕き、ユートをも貫く。ソリッドビジョンでも無いのに実体化した痛みが駆け抜け、思わず膝をつくユート。

これこそが自分達が味わってきた戦い。冷たい脂汗が額を伝い、地面に落ちる。そのただならぬ様子に遊矢はハッとなり、ユートを心配する。考えてなかった訳ではないが、やはりこれは――ダメージが実体化するデュエル――。

 

「ユート!大丈夫か!?」

 

「……安心しろ……この程度でくたばる程やわじゃない……!」

 

ぐっ、と腹に力を入れて立ち上がる。痛みは治まった。まだ闘える。まだデュエルは出来る。レジスタンスの名は伊達ではない。

気を引き締め、再びデュエルディスクを構える。ここで折れては、デュエリストではない。

 

「どこまでもつかな?僕は墓地の『シャッフル・リボーン』を除外し、1枚ドロー!」

 

八雲 興司 手札3→4

 

「フィールド魔法、『光虫基盤』を発動!自分フィールド上の昆虫族モンスターの攻守は300上がる!」

 

電子光虫―ライノセバス 攻撃力2600→2900

 

時計台のある広場が一瞬で電子回路が張り巡らされた機械的なフィールドに変わり、光が蜘蛛の巣のように伸びていく。

随分派手な演出だが攻撃力の上昇値は僅か300。彼がそれだけのフィールド魔法を使うとは思えない。と、言う事はつまり、まだ効果はある。

 

「ライノセバスを対象に『光虫基盤』の効果発動、手札の『レベル・スティーラー』をORUとする!僕はカードを2枚伏せ、ターンエンド」

 

八雲 興司 LP3000

フィールド『電子光虫―ライノセバス』(攻撃表示)

セット2

『光虫基盤』

手札0

 

「俺のターン、ドロー!『EMドラネコ』をセッティング!『EMギタートル』のペンデュラム効果で1枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札2→3

 

「いくぞ!ペンデュラム召喚!『EMドクロバット・ジョーカー』!『EMペンデュラム・マジシャン』!『EMリザードロー』!『EMオオヤヤドカリ』!『時読みの魔術師』!」

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800

 

EMペンデュラム・マジシャン 攻撃力1500

 

EMリザードロー 守備力600

 

EMオオヤヤドカリ 守備力2500

 

時読みの魔術師 守備力600

 

天空に再び出現した魔方陣より紫、赤、オレンジ、緑、黄の色とりどりの光が発生し、混ざり合って1本の柱となってフィールドに轟音と共に降り立つ。

5体同時召喚。八雲に負けず劣らずの展開力がユートと八雲、2人の眼前を覆う。そのモンスターも奇術師、マジシャン、派手な衣装に身を包んだ蜥蜴、宿である貝に5つの部屋を持つヤドカリ、そして黒い『魔術師』と見ていて飽きない。

 

「ペンデュラム・マジシャンの効果!ギタートルと時読みを破壊し、デッキより『EMオッドアイズ・ライトフェニックス』と『EMオッドアイズ・ユニコーン』を手札に!更にドクロバット・ジョーカーを対象にオオヤヤドカリの効果発動!ドクロバット・ジョーカーの攻撃力はフィールドの『EM』の数×300アップする!」

 

「甘いよ遊矢!その効果にチェーンしてライノセバスのORUを1つ取り除き、効果発動!相手フィールドの守備力が1番高いモンスターを破壊する!」

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800→2700

 

ライノセバスの効果によりオオヤヤドカリが破壊され、攻撃力の上昇値が900ポイントにダウンする。僅か200の差が溝を開き、遊矢の攻撃の手を止める。

シンプルながら今の盤面では効果的だ。しかし、この程度では遊矢の歩みを止める事は出来ない。打点を上げて届かないなら、届くまで上げれば良い。持ち前のエンタメを今、ここで披露する。

 

「Ledies and Gentlemen!ここからが本番!私、榊 遊矢のエンタメデュエルをご覧差し上げましょう!」

 

「……これが君のデュエル……見せてもらうぞ、遊矢……!」

 

「エンタメデュエル……彼から気をつけるように言われているが……面白そうじゃないか……!」

 

遊矢の突然の口上に2人のデュエリストが興味を示すように釣られる。掴みは上々と言ったところか、ならば冷めない内に次へと繋ぐ。エンタメは鮮度が大事なのだ、大仰な仕草でフィールドのドクロバット・ジョーカーを指差す。

 

「オオヤヤドカリの効果でドクロバット・ジョーカーの攻撃力を上げても未だにその差は埋まらず、その差は僅か200!しかし、この状況を打破する種は既に仕込んであります!さあ、ペンデュラム・マジシャンをリリースし、不死鳥となって蘇れ、アドバンス召喚!『EMオッドアイズ・ライトフェニックス』!」

 

EMオッドアイズ・ライトフェニックス 攻撃力2100

 

フィールドのペンデュラム・マジシャンがボックスに閉じ込められ、ドクロバット・ジョーカーが次々とボックスに剣を刺していく。全ての剣を刺し終え、誰もが助からないと思ったその時、ボックスが開き、そこにはペンデュラム・マジシャンの姿は無く、代わりとして赤き不死鳥が上空へと羽ばたく。

 

「さぁてお次はこの効果!攻撃力を上げても届かないなら、届くまで上げるまで!ライトフェニックスを、リリースし、ドクロバット・ジョーカーの攻撃力を1000アップする!」

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力2700→3700

 

「バトル!ドクロバット・ジョーカーでライノセバスに攻撃!」

 

八雲 興司 LP3000→2200

 

「ぐうっ……!」

 

赤き不死鳥の翼が奇術師に宿り、炎の輪を潜り抜けてその輪を使ってライノセバスの身を燃やす。機械の身体を持つカブトムシは液体状となって溶け、電子のフィールドに消えていく。

これで八雲のフィールドはがら空きとなった。今までダメージを与えられなかったLPを削ったのも大きいだろう。遊矢とユートの士気も大きく上がった筈だ。

 

「俺はカードを1枚セットしてターンエンドだ」

 

榊 遊矢 LP4000

フィールド『EMドクロバット・ジョーカー』(攻撃表示)『EMリザードロー』(守備表示)

セット2

Pゾーン『EMドラネコ』

手札2

 

「フッ、良いデュエルだ……俺も続こう!俺のターン、ドロー!俺は墓地のフラジャイルアーマーを除外し、手札の『幻影騎士団ラギッドグローブ』を捨て、1枚ドロー!」

 

ユート 手札1→2

 

「俺は『クレーンクレーン』を召喚!」

 

クレーンクレーン 攻撃力300

 

「『クレーンクレーン』の召喚時効果により、墓地のレベル3モンスター、ラギッドグローブを特殊召喚する!」

 

幻影騎士団ラギッドグローブ 守備力500

 

鶴の形をしたクレーンが現れ、墓地に繋がる渦を作り出し、青いデッサン人形のようなモンスターを吊り上げる。

これでユートのフィールドにレベル3のモンスターが2体揃った。ユートも遊矢に負けじと声を張り上げ、電子の空へと手を翳す。

 

「俺は2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!3体目のブレイクソードッ!」

 

幻影騎士団ブレイクソード 攻撃力2000→3000

 

黒馬を駆けさせ、現れたる首無しの黒騎士。折れた剣を振るい、主人を守るように前に出る。これで全てのブレイクソードを使いきった。早めにケリをつけたい所だ。

 

「ラギッドグローブを素材としたエクシーズモンスターは攻撃力が1000アップ効果を得る。更に墓地の『幻影翼』を除外し、同じく墓地のブレイクソードを特殊召喚する!」

 

幻影騎士団ブレイクソード 攻撃力2000

 

「何度も何度もブレイクソードばかり……他の芸が無いのかい?」

 

「何、お前程器用では無いが……今回は自信があるぞ?俺はブレイクソードのORUを1つ取り除き、素材が無いブレイクソードと右のセットカードを破壊する!」

 

「馬鹿の1つ覚えだなぁ!君が対象としたカードは『エクシーズ・リボーン』!フリーチェーンの罠カードだ!墓地のライノセバスを特殊召喚し、このカードをORUにする!君を相手取るのに不発になるような罠を積む訳が無いだろう!?」

 

電子光虫―ライノセバス 守備力1800→2100

 

再びフィールドに舞い戻るカブトムシ。ここまでは八雲の読み通り、どんなに攻撃力を上げようとユートのモンスターは1体、ライノセバスの効果でブレイクソードは破壊され、墓地に適したカードがない以上、ユートのフィールドはがら空きになる――筈だった――。

 

「馬鹿を舐めるな!俺のデュエルは不屈のデュエル!今こそ立ち上がれ!その牙で圧政を断ち切れ!墓地で眠るダーク・リベリオンを選択し、魔法カード、『エクシーズ・リベンジ』発動!相手フィールドにORUを持ったエクシーズモンスターが存在する場合、選択したモンスターを特殊召喚し、相手フィールドのORUをダーク・リベリオンのものとする!」

 

ユートのデュエルはその先へと往く。おかしな話では無い。八雲がユートのデュエルを知っていても、完全に封じられる訳ではない。

それにこれこそがユート本来の力、どれだけ圧政を敷いても、仲間達と共に反逆する不屈のデュエル。

 

「ッ!ライノセバスのORUを使い、ブレイクソードを破壊する!」

 

「だが『エクシーズ・リベンジ』は特殊召喚を行った後にORUを奪う効果!よって特殊召喚自体は出来る!降臨せよ!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力2500

 

反撃の狼煙と共に、暗き闇より飛翔する漆黒の竜。闇をも引き裂く咆哮が響き、電子のフィールドに雷が走る。期は熟した、今こそ反逆の時。ユートは八雲を出し抜いた事で皮肉気な笑みを見せ、遊矢はその姿に心を震わせる。

 

「不屈のデュエル……!これがお前のデュエルか、ユート!」

 

「そうだ。これが俺の、レジスタンスのデュエル!かっとビングだ!」

 

「かっとビング……勝鬨が言っていた……」

 

「勇気を持って、挑戦し続ける不屈の精神!受けてみろ八雲!ダーク・リベリオンでライノセバスへ攻撃!反逆のライトニング・ディスオベイッ!!」

 

ユートの指示を受け、ダーク・リベリオンがその体躯を空中で翻し、その鋭いアギトで電子のフィールドを抉り抜く。様々な部品が飛び散り、激しい火花を上げ、ダーク・リベリオンはバネの如くジャンプしてライノセバスを貫く。バギィィィィィッ!耳をつんざくような破壊音、赤き電光が八雲のモンスターを切り裂いた。

 

「ッ……!ユートォ……!」

 

ギリッ、ここに来て始めて八雲の顔色が変わる。先程までの余裕のある表情ではなく、苦虫を噛み潰したような険しい目付きでユートを睨み、ギリギリと歯軋りをしている。それ程までにユートの手が八雲の上を行っていたと言う事だろう。

 

「俺はこれでターンエンドだ」

 

「罠発動!『光虫異変』!墓地のウェブソルダーとコクーンデンサの効果を無効化し、特殊召喚する!」

 

電子光虫―ウェブソルダー 守備力1500→1800

 

電子光虫―コクーンデンサ 守備力2000→2300

 

八雲のフィールドに現れる2体の昆虫族モンスター。これで再びレベル3のモンスターが揃った。

 

ユート LP1400

フィールド『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』(攻撃表示)

手札0

 

「僕のターン、ドロー!上等じゃないか、叩き潰してあげるよ……!魔法カード、『貪欲な壺』!墓地の『ハチビー』、『バチバチバチ』、『増殖するG』、『飛翔するG』、『夢蝉スイミンミン』をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

八雲 興司 手札0→2

 

「『ハチビー』を召喚」

 

ハチビー 攻撃力500→800

 

「『ハチビー』とコクーンデンサをリリースし、2枚ドロー!」

 

八雲 興司 手札1→3

 

「更に僕はウェブソルダーを選択し、魔法カード、『サザンクロス』を発動!ウェブソルダーのレベルを10にする!」

 

電子光虫―ウェブソルダー レベル3→10

 

「コクーンデンサのレベルを1つ下げ、墓地の『レベル・スティーラー』を特殊召喚する!」

 

電子光虫―ウェブソルダー レベル10→9

 

レベル・スティーラー 守備力0→300

 

ウェブソルダーのレベルを1つ奪い、フィールドに現れたのは天道虫。奪った星をかじり、その背中に浮き上がる。

 

「更に魔法カード、『タンホイザーゲート』により、2体のレベルは合計のレベル10となる!」

 

電子光虫―ウェブソルダー レベル9→10

 

レベル・スティーラー レベル1→10

 

「レベル10が2体……!?」

 

八雲のフィールドに揃うのはレベル10、最上級のモンスター。それを素材に要求する大型のエクシーズモンスターが今、呼び出される。八雲は背後に星の渦を作り出し、翳した手の甲に35の紋様が焼きつくように走る。

 

「2体のモンスターがオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『No.35ラベノス・タランチュラ』!!」

 

No.35ラベノス・タランチュラ 攻撃力0→3500

 

『光虫基盤』に青白い光の線が何本も走り、蜘蛛の巣を作り上げる。その上にズゥゥゥゥゥンッ!と黒い渦より這い出た巨大な何かが重々しい轟音と土煙を上げて登場する。

一体何だ――2人が目を凝らしたそこには不気味に蠢く毛の生えた何か。本能的にゾワリと背筋に冷たいものが駆ける。

 

脚だ。巨大な昆虫の脚、それが素早く動き、オレンジの体躯が現れ――ギョロリ、翡翠の1つ眼が、ユート達の目と合う。まるで蛇に睨まれた蛙。いや――蜘蛛の巣に捕らえられた蝶。2人の眼前に、巨大なタランチュラが姿を見せた――。

 

「攻撃力――3500……!」

 

「ラベノス・タランチュラがいる限り、僕のモンスター全てのステータスは僕と君達のLPの差分アップする!これはバトルロイヤル、『裁きの天秤』と同じく、君達のLPを合計したものとする。更にORUとなったウェブソルダーの効果で君達のモンスターは守備表示になり、守備力は0になる!」

 

EMドクロバット・ジョーカー 守備力100→0

 

EMリザードロー 守備力600→0

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 守備力2000→0

 

「ここで僕は『強欲で貪欲な壺』を発動!デッキの10枚を除外し、2枚ドロー!」

 

八雲 興司 手札0→2

 

「魔法カード、『モンスター・スロット』を発動!墓地のウェブソルダーを除外し、ドローする。そしてそのカードが除外したモンスターと同じレベルの場合、特殊召喚する。ドローしたカードはコクーンデンサ、よって特殊召喚する!」

 

電子光虫―コクーンデンサ 攻撃力0→3500

 

「更に墓地のセンチビットを対象とし、コクーンデンサを守備表示に変更する事で対象としたセンチビットを特殊召喚する!」

 

電子光虫―センチビット 守備力500→4000

 

「更に墓地の『光虫異変』とライノセバスを除外し、効果発動!このターン、僕の電子光虫のレベルは除外したライノセバスに対応する!ライノセバスのランクは7!よって全ての電子光虫のレベルは7となる!」

 

電子光虫―コクーンデンサ レベル3→7

 

電子光虫―センチビット レベル3→7

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『電子光虫―ライノセバス』!」

 

電子光虫―ライノセバス 攻撃力2600→6100

 

八雲のフィールドに再び羽ばたく白銀のカブトムシ。2体の大型エクシーズモンスターが遊矢とユート、それぞれを捉えて獰猛に唸る。状況は最悪。それでも、諦める訳にはいかない。燃え盛る闘志が2人が膝をつく事を許さない。

 

「これなら『No.』を出すまでも無かったかな。これで終わりだよ。ユート、遊矢」

 

「まだだ……!まだ終わってない……!俺はまだ、諦めない!」

 

拳を強く握り締め、遊矢は八雲に向かって咆哮する。尽きぬ闘志、折れない心。このどうしようも無い逆境でも遊矢は笑顔を崩さない。自分のエンタメデュエルを、諦めない。

 

「なら!この状況で何が出来るか見せて貰おうか!ライノセバス!全てのモンスターへ攻撃し、2人に止めを刺せぇ!」

 

八雲の指示を受け、2人に襲いかかる電子光虫の王者。しかし、これに対抗する手段は無い。今のライノセバスにはモンスター、魔法、罠の効果を封じる効果がある。それでも――2人の闘志は消えない。

 

そして――その闘志が、不屈のデュエリストを、呼び起こす。

 

「ちょぉぉぉぉぉっと待ったぁぁぁぁぁっ!墓地の『仁王立ち』を除外し、そのラウンド、俺が貰うぜぇ!」

 

『乱入ペナルティ、2000ポイントダメージ』

 

LP4000→2000

 

「「「な――」」」

 

突如、騒がしい声と共に現れた乱入者より待ったがかかる。バチバチと電撃が迸り、見えないバリアが遊矢達とライノセバスの間に割り込み、遊矢達を守る。3人は驚愕の声を漏らし、電子の空を割り、その場に降り立った乱入者へと視線を向ける。

 

浅黒く健康的な肌、右目を隠し、跳ねた髪、舞網第3中学の学ランに炎の刺繍が走った赤いシャツ、左手にはボクシング等で使われるバンテージが巻かれ、右手の指には3つのリングを嵌めている。

熱い意志を感じさせる翡翠の左目を遊矢へと向け、ニッ、とあどけない笑みを浮かべる少年と、首枷で拘束され、ジャラジャラと鎖を引き摺った拳闘士は――。

 

「へへっ、お前の熱い想い、確かに俺に届いたぜ!マイエンジェル!」

 

「……君は――?」

 

「ははっ、ワリィワリィ、紹介が遅れたな。ボクシングデュエルジム所属、アリト!榊 遊矢!お前のファンさ!」

 

この場を引っくり返せる程の闘気を纏った、皇の力を持つデュエリスト。遊矢のファンを名乗る少年、アリトが、激闘の渦に参戦する。

遊矢、ユート、アリト、八雲、1人が増え、4人となったこのデュエルの結末は――まだ、どうなるか分からない。

 

「さぁ、最終ラウンド、始めようぜ!」

 

「……誰だか分からないけど、邪魔をするなら、君も倒す!」

 

ゴングが今、鳴り響く。




と言うわけでアリト参戦。先にモンスターとか展開してるけどデュエルチェイサーよりマシな筈……あんまりやりたくないんですけどここで登場させとかないとタイミングが無いので。許しておくれ……。

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