「オレはスケール2の『賤竜の魔術師』とスケール8の『竜穴の魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング」
コナミの手札より2枚のカードがデュエルディスクの両端に置かれ、同時に異次元の空に光の魔方陣が描かれる。準備は整った――。コナミは右手を掲げ、上空の振り子を揺らす。
「揺れろ、光のペンデュラム。虚空に描け魂のアーク」
ピタリ、振り子の軌道が止まり、コナミが右腕を下ろす。地面を差したそれに呼応するように穴は開き、1本の輝く柱が凄まじい勢いでコナミの前方の船を震わせる。
現れたのは白い衣を纏った若い『魔術師』。
「ペンデュラム召喚!『竜脈の魔術師』!」
竜脈の魔術師 攻撃力1800
コナミの手より繰り出されたのは攻撃力の高い下級モンスターだ。あくまで高いと言っても下級、しかし刃の目には油断などない。
相手はコナミだ。何かしらの手を取ってこちらに反撃してくる筈だ。その証拠としてコナミの顔には不安の欠片もない。
「手札より『ジェット・シンクロン』を召喚」
ジェット・シンクロン 攻撃力500
青と白のカラーリングのジェットエンジンを模したモンスターが火炎を上げてコナミの前に降り立つ。随分と小さく愛らしいモンスターだ。
その能力は低い、だからこそ刃は『ジェット・シンクロン』の正体を見抜く。
「……チューナーモンスターか……!」
「ご明察だな。オレはレベル4の『竜脈の魔術師』にレベル1の『ジェット・シンクロン』をチューニング!シンクロ召喚!『ジェット・ウォリアー』!」
ジェット・ウォリアー 攻撃力2100
『ジェット・シンクロン』が1つのリングとなって弾け、『竜脈の魔術師』がその中をくぐり抜ける。その姿は『魔術師』から戦士へと。
黒いボディーを輝かせ、背のエンジンを吹かせ、空より流星のように船の甲板を抉るのはジェット機を思わせる機械の戦士。ウィンッと独特の機械音を鳴らし、空中でターンして拳を突き出す。
「『ジェット・シンクロン』の効果で『ジャンク・シンクロン』をサーチ、『ジェット・ウォリアー』がシンクロ召喚に成功した場合、相手フィールド上のカード1枚を対象にし、そのカードを手札に戻す。俺が対象にするのは『XX―セイバーガトムズ』だ」
「罠発動!『ガトムズの緊急指令』!『フィールドにX―セイバー』モンスターが存在する場合、墓地の『X―セイバー』モンスター、ボガーナイトとフラムナイトを対象にし、特殊召喚する!」
XX―セイバーボガーナイト 守備表示1000
XX―セイバーフラムナイト 守備表示1000
『ジェット・ウォリアー』の拳圧により風が吹き荒び、火の粉を織り混ぜた烈風がガトムズの巨体を飛ばし、光となって刃のエクストラデッキに戻る。しかし刃もただでは転ばない。直ぐ様リバースカードをオープンし、壁を用意する。
「カードを2枚伏せ、ターンエンドだ」
コナミ&志島 北斗 LP2300
フィールド『ジェット・ウォリアー』(攻撃表示)
『セイクリッドの星痕』セット3
Pゾーン『賤竜の魔術師』 『竜穴の魔術師』
手札1(コナミ) 手札1(北斗)
「ペンデュラム……そう言えば初めて相手するのかしら。私のターン、ドロー。魔法カード、『吸光融合』発動!デッキより『ジェムナイト・ラピス』を手札に加え、このカードと手札の『ジェムナイト・ガネット』を除外し、融合!神秘の力秘めし碧き石よ。今光となりて現れよ!融合召喚!『ジェムナイトレディ・ラピスラズリ』!」
ジェムナイトレディ・ラピスラズリ 攻撃力2400
オレンジと青の渦が真澄の背後で発生し、その中へと宝玉の少女と赤い騎士が吸い込まれていく。真澄が両手を合わせると同時に姿を見せたのは瑠璃色の巫女。首に鏡をかけ、遥か昔の装束に身を包んだ、ナイトと言うには余りにも華麗なモンスターだ。
「『ジェムナイトレディ・ラピスラズリ』の効果発動!デッキから『ジェムナイト・アイオーラ』を墓地に送り、フィールドに特殊召喚されたモンスターの数×500のダメージを与える!」
「速攻魔法、『神秘の中華なべ』。『ジェット・ウォリアー』をリリースし、攻撃力2100ポイント、ライフを回復する!」
コナミ&志島 北斗 LP2300→4400→2900
コナミが即座に『ジェット・ウォリアー』を中華鍋に捧げ、調理する事によってダメージを減少させる。だが依然ピンチなのには変わらない。真澄は2体の『X―セイバー』を攻撃表示に変更し、バトルへと移る。
「『ジェムナイトレディ・ラピスラズリ』で攻撃!」
「罠発動!『ピンポイント・ガード』!『セイクリッド・アクベス』を蘇生!」
セイクリッド・アクベス 守備力2000
これだ。どうにものらりくらりとかわされ、決定打を入れる事が出来ない。マルコや沢渡はこんなデュエリストを相手にしていたのかと改めて実感する。
何とも敵に回すと厄介だ。期を待つだけでは勝てない。多少、いや、どんなに強引だろうと、リスクを背負っても勝負に出るべきだろう。
「私はカードを1枚伏せ、ターンエンド」
光津 真澄&刀堂 刃 LP4000
フィールド『ジェムナイトレディ・ラピスラズリ』(攻撃表示) 『XX―セイバーボガーナイト』(攻撃表示) 『XX―セイバーフラムナイト』(攻撃表示)
セット1
手札3(真澄) 手札1(刃)
「僕のターン、ドロー。魔法カード、『暗黒界の取引』を発動し、手札を入れ替える……」
北斗が緊張で固くなりながらもデッキよりカードを引き抜く。無理もない、実質このドローに全てがかかっているようなものだ。加えて今の北斗は不調、自分自身に疑心暗鬼になっているのだ。果たして勝てるのだろうか?と。
そんな彼をつまらないものを見るように唇を尖らせるコナミ。
「……もう少し胸を張ったらどうだ?今のお前は見えもしないものに怯えているように見える」
「……見えないから怖いんだろう?」
「せめて見えてから怯えろ。見えもしない内にあーだこーだと決めつけると疲れて損をするだけだ」
疲れて損をする。確かにコナミの言う通りだ。全てが納得出来る訳でも無いが、荷物が軽くなったようにしっくり来る。
今までは負けてきた。だが今は負けていない。自然と落ちていた肩を鳴らし、胸を張る。見えないものより今は見えるものを。
「お前は沢渡と似ていると思ったが……似ていないな、あいつは負けようが直ぐ次に進む。立ち直るんじゃ無い、膝をついて無いんだ。お前ももう少しバカになってみろ。自信を持て、先攻プレアデス立てられなかったマン」
「傷を抉るな!僕を立ち直らせたいのか、そうじゃないのか!?」
プスー、と口元に手を当てて此方を笑うコナミに対し、怒り、歯軋りをする北斗。この少年は一体何なのだろう?折角感謝しようと思ったのにこれでは台無しだ。
はぁ、と呆れを含んだ溜め息をつき、引いたカードに目を配らせる。レベル5のモンスター、攻撃力もラピスラズリより低く、どうしたものかと思い悩む。と、そこでふと上を見上げる。
見えないものより見えるもの。ああ、忘れていた――。これなら、何とかなる。
「僕は、スケール2の『賤竜の魔術師』とスケール8の『竜穴の魔術師』でペンデュラム召喚!『セイクリッド・エスカ』!」
セイクリッド・エスカ 攻撃力2100
北斗がペンデュラム召喚によってフィールドに繰り出したものは天秤を模したモンスターだ。線が細く、腕や爪は随分と長い。手に当たる部位には手甲のように秤がついており、中には翡翠の宝玉が嵌め込まれている。
「このカードが特殊召喚に成功した時、デッキから『セイクリッド』モンスターを手札に加える!僕は『セイクリッド・ソンブレス』を手札に加え、召喚!」
セイクリッド・ソンブレス 攻撃力1550
天空から姿を見せたのは『セイクリッド』の起点となるカードだ。山羊のように捻れた角、蝙蝠の羽に蝶の模様を足したような翼、周りには仲間の武器を浮かせ、その手には強大な力を持つ短剣が握られている。
「ソンブレスの効果!墓地の『セイクリッド・スピカ』を除外し、墓地の『セイクリッド・スピカ』を手札に加える。更にこの効果を適用したターン、ソンブレスのもう1つの効果発動!『セイクリッド』モンスター1体を召喚する!『セイクリッド・アクベス』をリリースし、『セイクリッド・スピカ』を召喚!」
セイクリッド・スピカ 攻撃力2300
次なる『セイクリッド』は乙女座だ。白地の鎧に金の装飾の他よりも豪奢なものを纏い、背には1対の翼を浮かべている。これでレベル5のモンスターが2体、汚名を返上する時が来た、と北斗は不敵に笑い、左手を突き出す。
「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!星々の光よ!今大地を震わせ降臨せよ!エクシーズ召喚!『セイクリッド・プレアデス』!」
セイクリッド・プレアデス 攻撃力2500
星々を散りばめた黒き渦が広がり、2体の『セイクリッド』が飛び込んでいく。次の瞬間、渦は収束し、爆発が轟く。
現れたのは北斗のエースカードである白騎士。フルフェイスの兜で顔を隠し、肩や肘には牡牛の角のような金色のパーツを持っている。胸に刻まれたのは『セイクリッド』の紋章。左手には大剣を握り、背には『セイクリッド』エクシーズモンスター特有の銀河を思わせるマントを靡かせている。
「『セイクリッドの星痕』の効果で1枚ドロー!サルガッソの効果でダメージを受ける!」
コナミ&志島 北斗 LP2900→2400
志島 北斗 手札0→1
「『セイクリッド・プレアデス』のORUを1つ取り除き、フラムナイトを対象として発動!手札に戻す!」
プレアデスが自らの周囲で回転するORUを握り潰し、左手に持った剣を振るい、斬撃を飛ばす。鋭い衝撃は少年剣士の鳩尾に直撃し、苦悶の表情を見せ、カードは真澄の元へと跳ねる。これで攻撃無効は消えた。後は厄介なバーン効果だ。
「さぁ、バトルだ!『セイクリッド・プレアデス』で『ジェムナイトレディ・ラピスラズリ』を攻撃!」
ダンッ、と力強く船の甲板を蹴り、瑠璃の巫女へ向かって駆ける騎士。手に持った大剣が振るわれ、その胸を穿つ。その、寸前。
「罠発動『輝石融合』!フィールドのラピスラズリと手札の『ジェムナイト・エメラル』で融合!神秘の力秘めし碧き石よ!幸運を呼ぶ緑の輝きよ!光渦巻きて新たな輝きと共に一つとならん!融合召喚!現れよ!幻惑の輝き、『ジェムナイト・ジルコニア』!」
ジェムナイト・ジルコニア 攻撃力2900
『ジェムナイト・ラピスラズリ』がいる空間がグニャリと歪む。まるで水面に剣を刺したかのような不気味な感触。プレアデスは思わず剣をぬるりと抜き、瞬間、瑠璃の少女は模造ダイヤの大男となる。
攻撃対象となったモンスターを失った事で攻撃は巻き戻る。
「残念だったね!罠発動!『エクシーズ・リボーン』!効果は知ってるね?墓地のビーハイブを蘇生する!」
セイクリッド・ビーハイブ 攻撃力2400
再びフィールドに舞い戻る蟹座を司る『セイクリッド』。右腕の鋏をガチガチと鳴らし、ジルコニアを威嚇するようにプレアデスの隣に並び立つ。その効果は新たに現れたモンスターを打破するには充分なものだ。
「『セイクリッド・プレアデス』で『ジェムナイト・ジルコニア』を攻撃!この瞬間!ビーハイブのORUを1つ取り除き、プレアデスの攻撃力を1000上げる!」
セイクリッド・プレアデス 攻撃力2500→3500
ビーハイブのORUがプレアデスへと譲渡される。光輝く星はプレアデスの大剣へと宿り、光を纏った刃はダイヤモンドをも砕く。
光津 真澄&刀堂 刃 LP4000→3400
「まだだ!ビーハイブでボガーナイトを攻撃!」
北斗の指示を受け、ビーハイブがボガーナイトの真横へと瞬時に移動する。ボガーナイトも手に持ったレイピアで刺突を繰り出し応戦するも、ビーハイブの堅い鎧には傷一つつける事は許されず、右腕の重々しい殴打によって地面を突き破り、異次元の海へと叩き落とされる。
バキィィィィィィッ!激しい音を立て、船にぽっかりと穴が空く程の衝撃。
光津 真澄&刀堂 刃 LP3400→3100
「ソンブレスで攻撃!」
「ッ!アクションマジック、『回避』!」
「くっ……魔法カード、『名推理』」
「レベル4を選択だ」
「1、2……『エフェクト・ヴェーラー』を特殊召喚」
エフェクト・ヴェーラー 守備力0
「墓地の『シャッフル・リボーン』を除外、ビーハイブを戻してドロー」
志島 北斗 手札0→1
「永続魔法、『補給部隊』を発動。僕はこれでターンエンド……サルガッソの効果で500のダメージを受ける」
コナミ&志島 北斗 LP2400→1900
またもや電流による痛みが北斗を襲う。まだ余裕があるがかなり痛い出費だ。短期決戦を望みたいが、この2人を前に上手くいくか。
コナミ&志島 北斗 LP1900
フィールド『セイクリッド・プレアデス』(攻撃表示) 『セイクリッド・ソンブレス』(攻撃表示)『エフェクト・ヴェーラー』(守備表示)
『セイクリッドの星痕』『補給部隊』
Pゾーン 『賤竜の魔術師』 『竜穴の魔術師』
手札1(コナミ) 手札0(北斗)
「俺のターン、ドロー!魔法カード、『貪欲な壺』!ガトムズ、ボガーナイト、フラムナイト、フォルトロール、アイオーラを戻し、2枚ドロー!」
刀堂 刃 手札1→3
「魔法カード、『ブラック・ホール』発動!フィールド上の全てのモンスターを破壊する!」
「『補給部隊』の効果でドロー!」
志島 北斗 手札0→1
刃の手より発動されたのはフィールドのモンスターを一掃する協力な制限カード。異次元の古戦場に巨大なブラックホールが発生し、星の騎士を吸い込み、粉々に砕く。いくら星々を司る者達であろうと相手はその星をも食らい尽くす宇宙の魔王だ。何の抵抗も出来ずにモンスターを失う。
「『XX―セイバーエマーズブレイド』を召喚!」
XX―セイバーエマーズブレイド 攻撃力1300
羽音を立てて現れたのは鎧を纏ったイナゴのモンスター。脚につけた羽が刃のように鋭く研ぎ澄まされており、口元からはキチキチと昆虫特有の不気味な鳴き声を立てている。また、首には真紅のマントが伸びていて、自身が昆虫である事もあいまってヒーローにも見える。
「装備魔法、『パワー・ピカクス』!テメェの墓地から『ジェット・シンクロン』を除外し、攻撃力を500アップ!」
XX―セイバーエマーズブレイド 攻撃力1300→1800
「バトル!エマーズブレイドでダイレクトアタック!」
エマーズブレイドがその脚を振るい、4刀流の刃が北斗へと突き刺さる。ザンッ、傷口を広げるように刺突からの薙ぎ払いが北斗の身体を撫でる。ソリッドビジョン特有の痛みが駆け抜け、堪らず膝をつく。
コナミ&志島 北斗 LP1900→100
「これでエクシーズは封じたぜターンエンドだ」
光津 真澄&刀堂 刃 LP3100
フィールド『XX―セイバーエマーズブレイド』(攻撃表示)
『パワー・ピカクス』
手札3(真澄) 手札0(刃)
LPの差は2500。エクシーズ召喚は封じられ、動く事もままならない。また負けてしまうのか――?ギリッ、歯を食い縛り、拳を握り締める。
どうしてだ。どうして自分はこんなにも落ちぶれたのだ。LDSエクシーズコース、トップクラスであり、華々しい勝利の道を刻んできたのに。悔しくて堪らない。友達は前に進んでいると言うのに、どうして自分は――。
「考えすぎるなと言っただろう」
「――え?」
「負けたから何だ。次は勝とうと気概を見せろ。それにまだ負けてないぞ。考えるなら負ける事より、この盤面をどう引っくり返すか、勝つ事を考えろ。受け売りだがな、諦めると人の心は死んでしまうんだ」
あの時、少年の全てが始める日に少年が放った台詞だ。どこまでも前向きで、何度だって立ち上がってきた彼らしい力強い言葉が北斗の背中を押す。諦めると人の心は死ぬ。
ポチャリと水滴が落ち、波紋が広がるような衝撃が北斗の淀んだ心を浄化し、満たしていく。
そうか――ならば、自分は死んでいたんだろうと、苦笑を溢し、憑き物が落ちた表情で正面を見る。ここから先は――新たな自分が生まれるのだろう。
「コナミ」
「……どう勝つ?」
「僕のターンまで、回してくれ。絶対に、勝つから」
北斗はその口元に笑みを浮かべ、コナミを見つめる。彼本来の不遜で、自信過剰な笑顔だ。だが、それ以上に頼もしい。
コナミもニィッ、と口の端を吊り上げ、不敵とも言える笑みで答える。男が覚悟が決めたのだ。コナミも、その道を開く。
「構わんが――別に倒してしまっても、問題なかろう?」
「やっちゃって!と言いたいけど、それは困るな」
「オレのターン、ドロー!魔法カード、『打ち出の小槌』。手札を入れ替え、魔法カード、『貪欲な壺』を発動!墓地の『セイクリッド・ポルクス』、『ジェット・ウォリアー』、『セイクリッド・プレアデス』、『セイクリッド・スピカ』、『エフェクト・ヴェーラー』をデッキに戻し、2枚ドロー!」
コナミ 手札0→2
「ここへ来てドローブーストかよ……!」
「ペンデュラム召喚!エクストラデッキから『竜脈の魔術師』!手札より『E・HEROブレイズマン』!」
竜脈の魔術師 攻撃力1800
E・HEROブレイズマン 攻撃力1200
コナミの場に2体のモンスターが降り立つ。1体はペンデュラムモンスターである『魔術師』。もう1体は炎の鬣を伸ばした赤い『HERO』だ。どちらもコナミのデッキでは優秀なモンスターと言えよう。
「『E・HEROブレイズマン』の召喚時効果により、デッキから『融合』を手札に加え、発動!場のブレイズマンと『竜脈の魔術師』で融合!融合召喚!『E・HEROガイア』!」
E・HEROガイア 攻撃力2200
異次元の古戦場に融合の渦が発生し、英雄と『魔術師』の姿が重なる。コナミが両手を合わせると共に土煙が舞い、竜巻を起こす。ブオンッ、中より黒き巨腕が砂嵐を払う。
フィールドに顕現したのは黒い巨人。コナミの融合モンスターが今、戦場に立つ。
「『E・HEROガイア』の効果!『XX―セイバーエマーズブレイド』の攻撃力を半分にし、このターン中、その数値分、ガイアの攻撃力をアップする!」
E・HEROガイア 攻撃力2200→2850
XX―セイバーエマーズブレイド 攻撃力1300→650
「バトルに移る!ガイアでエマーズブレイドに攻撃!コンチネンタルハンマー!」
『E・HEROガイア』はコナミの指示を受けると共にその巨体に似合わぬ速度でエマーズブレイドの元へと移動する。頭上に影が差した事で危機を察したのか、4枚の羽を重ね、防御体制を取るエマーズブレイド。
しかしその防壁は余りにも薄い。両手を合わせ、猛スピードで振り下ろす大地の英雄。ブチィ、と嫌な音を鳴らし、容易くエマーズブレイドを叩き潰す。
光津 真澄&刀堂 刃 LP3100→900
「エマーズブレイドが戦闘破壊され、墓地に送られた時、デッキから星4以下の『X―セイバー』モンスターを特殊召喚する!現れな!エマーズブレイド!」
XX―セイバーエマーズブレイド 守備力800
再びフィールドに飛翔するイナゴのモンスター。コナミとしては予測していた事だがやはりリクルーターとは厄介なものだ。
眉をピクリと動かしながらもバトルフェイズを終了する。
「カードを1枚伏せ、ターンエンド」
コナミ&志島 北斗 LP100
フィールド『E・HEROガイア』(攻撃表示)
『セイクリッドの星痕』 『補給部隊』セット1
Pゾーン 『賤竜の魔術師』 『竜穴の魔術師』
手札0(コナミ) 手札1(北斗)
「私のターン、ドロー!私は魔法カード『ジェムナイト・フュージョン』を発動!手札の『ジェムナイト・アンバー』と『ジェムナイト・クリスタ』で融合!融合召喚!現れよ!『ジェムナイト・プリズムオーラ』!」
ジェムナイト・プリズムオーラ 攻撃力2450
雷と共にフィールドへ姿を見せたのはオーラクリスタルの騎士だ。メイルから伸びたクリスタルの角と刀身を持つレイピア。
もう1つの手には強固な盾を握り、背からは赤いマントが風に吹かれている。
「墓地の『ジェムナイト・アンバー』を除外し、『ジェムナイト・フュージョン』を加えるわ。続いて『ジェムナイト・フュージョン』を墓地に送り、『E・HEROガイア』を対象として『ジェムナイト・プリズムオーラ』の効果発動!破壊する!」
「『補給部隊』の効果でドロー!」
コナミ 手札0→1
プリズムオーラのレイピアより紫電が迸り、ガイアの黒く厚い鎧を砕く。胸にぽっかりと巨大な孔を空け、その場に崩れ落ちるガイア。
これでフィールドはがら空き、真澄は更なる追撃をかける為、行動に移る。
「私は『XX―セイバーフラムナイト』を召喚!」
XX―セイバーフラムナイト 攻撃力1300
「バトルよ!プリズムオーラで攻撃!」
「罠発動!『ピンポイント・ガード』!『セイクリッド・ソンブレス』を蘇生!」
セイクリッド・ソンブレス 守備力1600
「くっ……!ターンエンドよ」
光津 真澄&刀堂 刃 LP900
フィールド『ジェムナイト・プリズムオーラ』(攻撃表示) 『XX―セイバーフラムナイト』(攻撃表示) 『XX―セイバーエマーズブレイド』(守備表示)
手札0(真澄) 手札0(刃)
何とか猛攻を凌ぎ切った――。コナミは安堵の息をつく。北斗にあれだけ言っておいて自分のせいで負けました。等とは情けないだろう。
しかしこれでコナミは確信する。この勝負、勝ち以外無いと。それは北斗とて同じだ。
確かに、状況は絶体絶命。しかし、“あのカード”を引けば、勝つ。確率は低い、だが、引く。引けるか引けないかじゃない。引く。絶対に、何としても、何故ならば――それが志島 北斗なのだがら。
「僕のターン!ドロォォォォ!」
渾身の力を振り絞り、勢い良くドローする。負けられないのだ。ここまでしてくれたコナミや刃、真澄の為だけではない。自分の為だ。自分のプライドの為だ。
友は先に進んでいる――置いていかれる訳にはいかない。ありったけのプライドが、今の北斗を支えている。諦めずに、生きている。だからこそ――デッキは、応える。
「ッ!来た!僕は『セイクリッド・カウスト』を召喚!」
セイクリッド・カウスト 攻撃力1800
北斗のフィールドに射手座の『セイクリッド』が現れる。これでレベル4のモンスターが2体。だが足りない。これだけでは北斗は満足できない。
「『セイクリッド・カウスト』の効果により、自身とソンブレスのレベルを1つずつ上げる!」
セイクリッド・ソンブレス レベル4→5
セイクリッド・カウスト レベル4→5
「この状況でやるつもりか!?」
「やらなきゃ!僕じゃない!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『セイクリッド・プレアデス』!!」
セイクリッド・プレアデス 攻撃力2500
今再び、北斗のエースカードが現れる。牡牛座を司る『セイクリッド』エクシーズモンスター。しかし、エクシーズ召喚によってサルガッソが反応し、異次元の赤き雷が北斗に向かって襲いかかる。
「僕に――触れるなぁ!手札の『ハネワタ』を捨て、このターン、自分が受けるダメージを0にする!」
だが振り払う。勝利に向かって、手を伸ばす。闇雲に、我武者羅に。
「星痕の効果で1枚ドロー!そして!プレアデスのORUを1つ取り除き、フラムナイトを手札に戻す!まだだ!『セイクリッド・プレアデス』でオーバーレイ・ネットワークを再構築!ランクアップ!エクシーズチェンジ!『セイクリッド・トレミスM7』!!」
セイクリッド・トレミスM7 攻撃力2700
プレアデスが黄金の機竜へと姿を変える。頭上に生えた蝙蝠のような翼を広げ、竜が歓喜の咆哮を上げる。
「バトル!『セイクリッド・トレミスM7』でプリズムオーラを攻撃!」
機竜が海を飛翔し、プリズムオーラに向かって吠え、その爪を振り上げる。だがプリズムオーラもその盾で防ぎ、右手で持ったレイピアでプレアデスに反撃する。
ガギィ!金属がぶつかり合う音が響く。
「アクションマジック!『ハイダイブ』!これでプリズムオーラの攻撃力を1000アップする!」
真澄が反撃のアクションマジックをデュエルディスクに差し込むも――既に、勝利は約束されている。
「速攻魔法!『禁じられた聖槍』!プリズムオーラの攻撃力を800ダウンし、このカード以外の魔法、罠を受けつけさせない!」
ジェムナイト・プリズムオーラ 攻撃力2450→1650
槍がプリズムオーラの胸を穿ち、機竜がその口より光線を放つ。これで――全てが終わりを迎える。
光津 真澄&刀堂 刃 LP900→0
デュエル終了のブザーが響き渡る。勝利は――北斗達の、手の中に。
――――――
「あー、負けたー!」
「ま、次は勝つけどね。ん、ちょっと待って、メールが……」
デュエルが終了し、遊勝塾のソファに座り込み、談笑するコナミ達。そんな中、真澄がデュエルディスクを取り出してディスプレイを操作する。
「――え?」
思わず、メールの文面に声を漏らす真澄。他のメンバーも気になり、覗いたそこには――。
To 真澄ん
From マルコ
件名 クロワッサンギザ強ス
入院した。全治3日位の怪我だったんだけど、ナースさんのスカート覗こうとしたら全治1ヶ月に増えたでござる。
「……ドンマイ真澄ん」
「……うん」
ポン、と真澄の肩に手を置き、励ますコナミ。皆、暖かい眼差しを真澄へ向けている。
だからこそ、真澄はどうしたら良いか分からなかった。
北斗ー君はどことなくワカメっぽい。これから彼は初期のシゲルみたいな沢渡さんとは別方向の面白ライバルにする予定。
マルコ先生……一体何咲さんにやられたんだ……(棒)
融合「女性のスカート覗くとか人間性を疑いますね」