遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

34 / 202
ふと閃いた。決闘少女ストロング☆柚子なんてどうだろう?妖精枠はモリンフェンとゴリラとバーガーとヤリザ殿、四人の少女がハゲに立ち向かう話。一番キャラが変わるのはクロワッサンと勲章おじさん。
暇ができ、気分が乗れば書くかもしれない、書かないかもしれない。多分忙しくなりそうだから無理。これも一週間更新が続くかどうか……。


第29話 刃のような鋭さも、バレットのごとき威力も感じられない

「くぁぁっ!?」

 

光津 真澄 LP1400→0

 

ドサァッ、と廊下に投げ出されるような形で真澄が倒れる。これで4回目の敗北、公式戦であれば勝率がだだ下がりだろう。

デュエルディスクのプレートが光を失って消滅し、設置されていたカードがバラバラに床に散らばる。

 

「ふん!私の勝ちだな!だが今のは中々良い線だったぞ、真澄ん!」

 

「うぐ……ま、真澄んって言うなし……!」

 

床に倒れた真澄んこと真澄へと、このデュエルの勝者であるセレナがドヤ顔で語りかける。互いに融合使いだからか、デュエルを通す内に仲が良くなっていた。最早友人と言っても良いだろう。

しかしあくまで真澄はコナミと友達になる為にここにいるのだ。床に落ちたカードをデッキに戻し、再びデュエルディスクを構える。

 

「もう1度よ。今度こそここを通して貰うわ」

 

「その意気や善し!私も全力で迎え撃つ!」

 

「私だって負けないわ!マルコ先生の弟子だもの!これ以上先生の名に泥は塗れない!」

 

「ほう、真澄んにも先生がいるのか!」

 

意気込む真澄へとセレナが目を丸くし、感心めいた声を上げる。上機嫌な彼女の様子を見て、真澄も伺うように疑問の声を放つ。

 

「貴方にも師がいるの?」

 

「ああ、2人な!」

 

ニコリ、花が咲き誇るような満面の笑みで答えるセレナ。彼女がこんなにも楽しそうに語る師に真澄も自然と興味が沸く。

これ程までに強いセレナを育てたデュエリストはどれ程の腕なのか、と。

 

「1人は優しくて強い人だ……私は先生から色んな事を学んだ。そしてもう1人は不器用で、口下手で、SALのバナナを良く摘まみ食いする……だけど」

 

「?」

 

「私は、バレットが……父が先生以外に負けた所を見た事が無い」

 

口元に弧を描いて答えるセレナ。その瞳には確かに、信頼の色が見える。同時に真澄も笑みを浮かべる。ああ――目の前の少女も――良い師に、恵まれたのだろう。

 

「……何してるんだ?」

 

と、ここでセレナの背後のドアが開き、コナミが遠慮がちに顔を見せる。突然コナミが現れたせいか、真澄は狼狽え、目的のコナミと友達になる、と言うのは記憶の彼方へと消えていくのであった――。

 

――――――

 

「俺のターン、ドロー!」

 

場所は変わり、舞網市の沿岸。そこではユートとバレット、そしてナンバーズハンター2人のデュエルが続けられていた。

イビルーダーと飛車角のフィールドには2体の『No.』。将棋の駒をモチーフとした『No.72ラインモンスターチャリオッツ・飛車』。そして強力なトークンを生成する高守備力の巨大母艦、『No.42スターシップ・ギャラクシー・トマホーク』が存在している。

ユートは2体のモンスターをジッと睨む。どちらも厄介な効果を持つがORUは既に尽きている。焦らずに各個撃破が望ましいだろう。

 

「『終末の騎士』を召喚」

 

終末の騎士 攻撃力1400

 

現れたのはボロボロに傷つき、錆びついた鎧を纏った騎士。まるで砂漠を渡るかのようなゴーグルとスカーフを身につけ、その手にはサーベルを持っている。闇属性モンスターを使う者にとっては優秀な1枚だ。

 

「召喚時効果により、デッキから闇属性モンスター、『幻影騎士団ダスティローブ』を墓地に送る。更にダスティローブを墓地から除外し、デッキから『幻影騎士団サイレントブーツ』を手札に加える。準備は整ったか……墓地の『幻影剣』を除外し、墓地の『幻影騎士団ラギッドグローブ』を特殊召喚」

 

幻影騎士団ラギッドグローブ 攻撃力1000

 

「まだだ。手札より『幻影騎士団サイレントブーツ』を特殊召喚」

 

幻影騎士団サイレントブーツ 守備力1200

 

次々と動きを見せるユート。手札が少なくとも、墓地から真価を発揮するのが彼のカードだ。そして、これでレベル3、4のモンスターが2体となった。

 

「俺は2体のモンスターでオーバレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!再びフィールドへ現れろ!『幻影騎士団ブレイクソード』!!」

 

幻影騎士団ブレイクソード 攻撃力2000→3000

 

2体目のブレイクソードがフィールドを駆け抜ける。このカードがユートのデッキにとってキーカードなのだろう。実際ユートにとっては裏のエースと言って良い程信頼を寄せている。

 

「墓地のサイレントブーツを除外し、デッキより『幻影霧剣』を手札に加える」

 

「さぁて、残るはレベル4のモンスターが2体……来るかい?ユート?」

 

コンテナの上に座り込んだ八雲が目を皿のようにし、手で顎を支えながら笑う。完全に読まれている。焦る気持ちを抑え、冷静に頭を動かせる。読まれていたとしてもこの手しかない。敵の思い通りだろうと言葉に振り回されずに自分がやりたいようにやるべきだろう。

 

しかし、どうにも融合素材となっていたモンスターを使うのは気が引ける。これも彼の経験のせいか、だが、力には罪は無い。バレットも頼れる男だ。深呼吸を一つし、気を引き締める。

 

「俺は!2体のモンスターでオーバレイ・ネットワークを構築!漆黒の闇より愚鈍なる力に抗う反逆の牙!今、降臨せよ!」

 

黒き渦が発生し、中より霧が広がっていく。その中で巨大な尾が振るわれ、鋭い翼が羽ばたき、霧を散らす。これより現れたるはユートのエースカード。長き戦いを共にして来た、反逆の黒き力。

 

「エクシーズ召喚!現れろ!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力2500

 

紫の体躯からバチバチと赤い雷を放電し、刃物のような鈍い輝きを放つ翼、角、腕、尾を持つ竜。何よりも目を引くのはその竜の顎であろう鋭く、見る者を吸い込みそうな妖しい光のあるそれ。

正しく闇の逆鱗。『No.』にも匹敵する力が今、解き放たれた。

 

「来たか……ダーク・リベリオン……!」

 

八雲がこれまでに無い喜びに満ちた表情を見せる。子供のような邪気の欠片も無い妖しい笑み。それを見てユートがまるで死神の鎌を喉に突きつけられたかのような錯覚に陥る。だがそれも一瞬の事、直ぐに振り払い、左手を前に出す。

 

「ダーク・リベリオンのORUを2つ取り除き、チャリオッツ・飛車を対象とし、効果発動!チャリオッツ・飛車の攻撃力を半分にし、その数値分、このカードの攻撃力をアップする!トリーズン・ディスチャージ!」

 

No.72ラインモンスターチャリオッツ・飛車 攻撃力2500→1250

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力2500→3750

 

ダーク・リベリオンのORUが弾け、咆哮する。空気を震わせるようなプレッシャーを前にチャリオッツ・飛車がガクリと前に倒れ、竜の両翼の宝玉へと力が吸収されていく。『フォース』を内蔵した優秀な効果、攻撃力増加が永続と言うのも強力だ。

 

「さぁ、バトルだ!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』でギャラクシー・トマホークを攻撃!反逆のライトニング・ディスオベイ!!」

 

赤き雷が宙を舞い、竜もその体躯を空中で翻す。地面へ牙を突き立て、引き摺るようにギャラクシー・トマホークへ向かって進んでいく。ゴガガガガッ、激しい音を立て、コンクリートをも砕く竜のアギトが迫る。

 

「永続罠『ナンバーズ・ウォール』!」

 

「ッ!またそれか……!」

 

しかし、後一歩と言う所でまたしても『No.』の文字が浮かび上がり、障壁となって牙を防ぐ。先程のターンの繰り返しの光景にユートが苛立つ。

 

「ならばブレイクソードでチャリオッツ・飛車に攻撃!」

 

ダメージは防げないと考えたのだろう。ダーク・リベリオンの効果で弱体化したチャリオッツ・飛車へとユートの剣が駆け、その錆びついた刃を突き立てる。

 

イビルーダー&飛車角 LP3200→1450

 

「メインフェイズ2、カードを2枚伏せ、ブレイクソードのORUを1つ使い、俺の場の伏せカードと『ナンバーズ・ウォール』を対象とし、破壊。俺はこれでターンエンドだ」

 

ユート&バレット LP4000

フィールド『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』(攻撃表示) 『幻影騎士団ブレイクソード』(攻撃表示)

セット1

手札0(ユート) 手札2(バレット)

 

「私のターン、ドロー。この瞬間、罠カード、『ナンバーズ・オーバーレイ・ブースト』発動!自分フィールド上のORUの無い『No.』と名のついたエクシーズモンスター1体を選択し、自分の手札のモンスター2体をORUとする!私はチャリオッツ・飛車を選択!」

 

「徹底的に『No.』で戦う気か……!」

 

「エースカードを活かしているだけさ」

 

「クックック」と笑い声を噛み殺し、八雲が嘲笑う。これで効果を使う為のORUが補填された。

 

「チャリオッツ・飛車のORUを2つ取り除き、ダーク・リベリオンと伏せカードを破壊する!」

 

「永続罠!『幻影霧剣』!チャリオッツ・飛車の効果を無効にし、攻撃を封じる!」

 

「『トラップ・スタン』発動!このターン中、このカード以外のフィールド上の罠カードの効果を無効にする!お前の戦略など見抜いているわ!」

 

流石は仲間と言う事か。永続罠を主体とした戦略は見抜かれているらしい。やりにくい敵だ。エースカードを活かし、且つ此方の思い通りにはさせてくれない。

 

弱体化しても尚、『No.』の力は健在と言う事か、車輪がこれまでに無い程の回転を見せ、ダーク・リベリオンへと襲いかかる。竜が羽ばたき、飛翔する。しかし高速で動き回り、車輪をかわす竜も上空に座したギャラクシー・トマホークに打ち落とされ、待ち構えた車輪によって潰される。

 

「チャリオッツ・飛車を守備表示に変更し、魔法カード、『一時休戦』発動!次のターン終了まで互いに1枚ドローし、次のターン終了までダメージを0に!」

 

飛車角 手札1→2

 

ユート 手札0→1

 

「カードを1枚セットし、ターンエンドだ」

 

イビルーダー&飛車角 LP1450

フィールド『No.42スターシップ・ギャラクシー・トマホーク』(守備表示) 『No.72ラインモンスターチャリオッツ・飛車』(守備表示)

『暴走闘君』セット1

手札0(イビルーダー) 手札1(飛車角)

 

「私のターン、ドロー。『キャリア・センチネル』を召喚」

 

キャリア・センチネル 攻撃力1000

 

「効果でパンサー・ウォリアーをサーチし、魔法カード『融合』発動。手札の『漆黒の豹戦士パンサーウォリアー』と『キャリア・センチネル』を融合、獰猛なる黒豹よ、聖なる闇の番人と混じり合いて新たなる雄叫びを上げよ!融合召喚!現れ出でよ、『獣闘機パンサー・プレデター』!!」

 

獣闘機パンサー・プレデター 攻撃力1600

 

「ブレイクソードのORUを取り除き、パンサー・プレデターとギャラクシー・トマホークを破壊する」

 

「速攻魔法、『神秘の中華なべ』!ギャラクシー・トマホークをリリースし、守備力3000をLPに変換!」

 

イビルーダー&飛車角 LP1450→4450

 

その言葉と同時にユートがその表情を驚愕の色に染める。ユートの見立て通りならパンサー・プレデターはバレットのエースカードの筈だ。それなのに彼はユートのモンスターでは無く、自分のモンスターを犠牲にした。一体何故?

 

「……同僚が言っていてね、確かにエースカードは大事だが……私にはもっと大事な、守るべきものがある。私はどちらも取るなんて器用な真似は出来ない。大切な者を守る為なら、私は魂など惜しくない」

 

ギン、バレットの左目が熱い闘志を見せる。冷静ながらも決して曲がる事の無い信念を抱いた眼だ。正直、ユートは彼のその覚悟に気圧されていた。勿論眼前のナンバーズハンターも。そして、あの八雲でさえ。

ユート自身も大切な者を取り戻そうとしている。決して生半可な覚悟では無い。だが、もしも自らの魂を捨てろと言われれば、彼のように即答出来るだろうか?

 

ユートの口元が緩む。ああ――スタンダード次元に来て良かった――。誰かを笑顔にしようと闘う少年と出会えた。誰かを守ろうとする男に出会えた。

例え、それが――融合次元の人間でも。融合次元にも、分かり合える者がいる。

“デュエリスト”がいる。

 

「魔法カード、『貪欲な壺』!墓地のパンサー・プレデター2体、パンサー・ウォリアー、ワーウルフ、キャリア・センチネルを回収し、2枚ドロー!」

 

バレット 手札0→2

 

「ブレイクソードでチャリオッツ・飛車を攻撃!」

 

バチィッ、ブレイクソードの折れた剣を舐めるように紫電が纏われ、矢の如くチャリオッツ・飛車へと飛ぶ。激しい雷がチャリオッツ・飛車の車輪を穿ち、黒焦げに変わり、霧散される。

残るは本体のみ、黒馬を駆けさせ、地面を蹴り、宙を舞う。頭部から足にかけ、ブレイクソードの刃が通り、真っ二つに切り裂く。

 

「私はカードを2枚セットし、ターンエンド」

 

ユート&バレット LP4000

フィールド『幻影騎士団ブレイクソード』(攻撃表示)

セット2

手札1(ユート) 手札0(バレット)

 

「オレのターン!オレは魔法カード『貪欲な壺』を発動!墓地の『ラインモンスターKホース』、『ラインモンスタースピア・ホイール』、『スターシップ・アジャスト・プレーン』、『スターシップ・スパイ・プレーン』2体を回収し、2枚ドロー!」

 

飛車角 手札1→3

 

「魔法カード、『マジック・プランター』!『暴走闘君』をコストに2枚ドロー!」

 

飛車角 手札2→4

 

「魔法カード『死者蘇生』!墓地より蘇れ!チャリオッツ・飛車!」

 

No.72ラインモンスターチャリオッツ・飛車 攻撃力2500

 

再びフィールドに『No.』が顕現する。ORUが無いものの良い加減にして欲しいものだ。

 

「まだまだ!魔法カード『ブラック・コア』!手札を1枚捨て、ブレイクソードを除外する!」

 

「ッ!しまった!」

 

これもユートに対する策の1つか、驚くのも束の間、ブレイクソードが黒き孔に飲み込まれ、朽ち果てる。ブレイクソードが素材を蘇生させるのは破壊された場合のみ、除外では効果が使えず、ユート達のフィールドが丸裸となる。

 

「クッフフフフ!詰みだ!チャリオッツ・飛車でダイレクトアタック!」

 

ユート&バレット LP4000→1500

 

チャリオッツ・飛車の車輪がユートとバレットに襲いかかる。身体を焼かれるような痛みが駆け巡る。目の前が真っ白に染まり、ボタボタと吐血する。だが、ユートは膝をつかない。無論、バレットもだ。こんなデュエルなど慣れている。そう言わんばかりに2人は無言で強引に足を立たせる。

 

「ふん……何時まで続くかな……俺はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

イビルーダー&飛車角 LP4450

フィールド『No.72ラインモンスターチャリオッツ・飛車』(攻撃表示)

セット1

手札0(イビルーダー) 手札0(飛車角)

 

「何時まで……?このターンで、終わりだ……!」

 

ユートの瞳に闘志が宿り、燃え上がる。こんな逆境、何度だって味わってきた。劣勢だろうと闘うしかない。彼が見てきた地獄はこんなものでは生温い。負けてなるものか、バレットは言った、大切な者を守る為なら、魂も惜しくない。ならば自分も賭けよう、仲間を救う為に、笑顔を取り戻す為に。

 

「さぁ、引き抜け。エクシーズ次元の少年よ」

 

バレットが呟く。彼も気づいていたのだろう。ユートの事に、だが、だからと言って彼は手など抜かなかった。ならばただ――感謝を――。

 

「イビルーダー、飛車角、お前達には刃のような鋭さも、弾丸のごとき威力も感じられない。俺が教えよう……八雲、お前も見ていろ」

 

指を差し、睨む。八雲もまた歪んだ笑みを向ける。

 

「ドローッ!」

 

引いたカードは逆転の一手とは言えない。が、逆転へと繋ぐカード。

 

「魔法カード、『貪欲な壺』!墓地の『幻影騎士団ブレイクソード』、を2体、『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』、『終末の騎士』、『ダーク・センチネル』を回収して2枚ドロー!墓地のサイレントブーツを除外し、『幻影剣』を手札に加え、『手札抹殺』!」

 

ユート 手札1→3→4→3

 

「魔法カード『強欲で貪欲な壺』を発動し、2枚ドロー!」

 

ユート 手札2→4

 

「永続魔法、『王家の神殿』を発動!カードを1枚セットし、リバースカードオープン!『デスメテオ』!速攻魔法、『連鎖爆撃』!1800のダメージを与える!」

 

イビルーダー&飛車角 LP4450→2650

 

「『終末の騎士』を召喚!」

 

終末の騎士 攻撃力1400

 

現れたのは文字通りこのデュエルに終末を告げるモンスター。このカードが、ユートの勝利への方程式を紡ぐ。

 

「効果により、デッキから『幻影騎士団フラジャイルアーマー』を墓地に送り、墓地のラギッドグローブを除外し、デッキの『幻影翼』を墓地へ送り、そのまま除外し、フラジャイルアーマー、特殊召喚!」

 

幻影騎士団フラジャイルアーマー 守備力2000

 

姿を見せたのは骨で作られた鎧を纏い、青い炎を吹き出した首なしの騎士。レベル4のモンスターが2体、これで――勝利は見えた。

 

「2体のモンスターでオーバレイ・ネットワークを構築!再び現れよ!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力2500

 

黒き竜がフィールドに舞い戻る。天高く飛翔し、スパークする雷が雲を引き裂き、地鳴りにも似た咆哮が響く。

このデュエル、最後の刺客が放たれた。

 

「ORUを2つ取り除き、攻撃力を吸収する!トリーズン・ディスチャージ!」

 

「永続罠、『デモンズ・チェーン』!ダーク・リベリオンから攻撃権と効果を奪い取る!」

 

ダーク・リベリオンから雷が嘶いたその時、異次元に繋がる渦が発生し、中から鎖が飛び出て翼を拘束しようとダーク・リベリオンに襲いかかる。

 

「いいや!もう何も奪わせない!勝利も!仲間も!罠発動!『荒野の大竜巻』!」

 

しかし――ダーク・リベリオンの翼に竜巻が発生し、雷と重なり、鎖を砕いて破壊する。

 

No.72ラインモンスターチャリオッツ・飛車 攻撃力2500→1250

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力2500→3750

 

「まだまだ!墓地の『幻影霧剣』を除外し、墓地の『幻影騎士団フラジャイルアーマー』を特殊召喚!」

 

幻影騎士団フラジャイルアーマー 攻撃力1000

 

「さぁ、バトルだ!ダーク・リベリオンでチャリオッツ・飛車を攻撃!反逆の!ライトニング・ディスオベイ!!」

 

上空より猛スピードで降下し、海面スレスレの所を滑空しながら竜は突き進む。その後についてくるのは水面に写った竜の影法師。水切り石のようにその身を弾かせながら牙をコンクリートに食い込ませ、破壊音を響かせる。

ズガガガガッ!地面をめくり上げ、イルカのジャンプを思わせるかの如く跳ねる。

 

「無駄だぁ!墓地より『タスケルトン』を除外し、その攻撃を無効にする!」

 

突如発生した障壁が竜のアギトを受け止める。バチバチと火花を上げ、ぶつかり合う障壁とアギト。その光景を見て、八雲が薄く笑う。

 

「「これで――詰みだ――」」

 

ビクリ、ユートと言葉が重なった事で八雲が目を見開く。馬鹿な――もう竜の攻撃は終わっていると言うのに――。八雲に答えるようにユートが1枚のカードをデュエルディスクに叩きつける。

 

「まだ――ダーク・リベリオンの牙は折れていない――!八雲!お前に見せてやる!お前の知らない、仲間の力!かっとビングだ!俺!速攻魔法――、『ダブル・アップ・チャンス』!!ダーク・リベリオンの攻撃力を倍にし、もう1度攻撃する!」

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 攻撃力3750 →7500

 

竜が怒りを見せるかのように咆哮し、牙が輝き、障壁を打ち破る。決着は――ユート達の、勝利――。

 

イビルーダー&飛車角 LP2650→0

 

「……ふぅん……『No.』を破ったか――」

 

八雲が立ち上がり、目を皿のように細める。随分と面白く無さそうだ。そんな彼に対し、次はお前だとばかりにユートとバレットが構える。しかし。

 

「今日はやめておくよ。ああ――これは預かっておくよ」

 

無言で睨む彼等に無邪気な笑みを見せながら、八雲がデュエルディスクを取り出し、画面を操作する。

 

「――ッ!?まさかっ!?」

 

直後、辺り一面を光が包み込む。光が消え、ユートが眼前に目を配らせる。先程まで倒れ伏したイビルーダーと飛車角が姿を消した――。いや、消されたのだ。正確には、八雲の手元へと。その証拠として、彼の手には2枚のカード。苦しむイビルーダーと飛車角の姿が描かれたカードがある。

そう、彼等は八雲によってカード化されたのだ。

 

「じゃあね。ユート」

 

その言葉と共に八雲が淡い光に包まれ、姿を消す。後に残されたのは、歯軋りをするユートとバレットのみ。

 

「ユート」

 

バレットが声をかける。少年では無く、ユートを名指しで呼んだのだ。ユートは彼に振り返る。その表情はどちらも真剣そのものだ。

 

「……今の私は戦士では無いし君の事情は良く知らん。だからと言って――私を恨むななどとは言わん。だが願わくば――」

 

その言葉を紡ぐ前に、バレットは背を向ける。ユートも、彼の言いたい事を察したのだろう。くるりと反転して、互いに別方向に歩み出す。足音も立たぬように、静かに、静かに。

 

「次に会う時は――敵では無く、またもう1度、共に闘いたいものだ――。ガッチャ、勲章もののデュエルだった――」

 

「――俺もです」

 

互いに背を向けている為、その表情は分からない。だが、きっと――笑顔で、あるように――。

 

――――――

 

「さて、次はどこを探すか……」

 

太陽が照り、眩しい日差しが襲う中、ユートは右手で頭を庇いながら再び沿岸付近を歩んでいた。

目的は勿論、仲間の捜索。気合いを入れ直し、晴れやかな気分で意気込んだ所で、ザッパァァァァッ、と海面が波打ち、大きな影がユートの頭上を超え、打ち付けられる。

ドスゥゥゥゥンッ!重量感たっぷりの音を響かせ、コンクリートにひびが走る。

 

ユートそれに目を配らせ、頬を引き吊らせる。鮫だ。それもとてつもなく巨大な、15メートルを優に超えるかと思われる巨体。口の中で不気味に生え揃った鋭い歯。ユート1人位なら丸呑みされそうだ。鮫と言うには余りにもバカでかい生物。ユートには見覚えがあった。尤も、図鑑の中で、だが。

 

「……メ、メガロドン……?」

 

太古の世界に存在した鮫、メガロドンだ。まさか生きているとは……いや、死んでいるが、この時代に目にするとは思わなかった。

余りにも現実離れした光景に呆けるユート。果たしてこれは夢ではないのか。とまたもや海面が大きく波打ち、人影が現れる。

黒いジャケット、肩にかけられたヘッドフォン、そして――つばの欠けた黒い帽子――。

 

「む、ユート。見ろ、なんか深海でデカい鮫を捕らえた。今晩はフカヒレスープだ」

 

「……ああ、うん」

 

今回使用されたメガロドンは、黒コナミが美味しく頂きましたとさ。




コナミを書けば途端にギャグになる。何故に。

おまけ

満族の饗宴レベル5

黒いの「ほぅらユート温かいフカヒレスープだよ」

茄子「……ああ……うん」

釣り吉「なんやあれ……不審者やん、関わらんとこ……」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。