遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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今回文章が読みづらいかもしれません。どうしてもアニメのようにスピード感が欲しかったもので同時進行的な形に。申し訳ないです。ただ今回ばかりなので許しておくれ。


第27話 ペンデュラムのその先

ドクン、ドクン。胸がどうしようも無く熱く脈打つ。コナミは感じ取っていた、そのカードの鼓動を。遊矢は聞こえていた、そのカードの遠吠えを。

頭から爪先まで熱く、暴れ狂うかのような、身を焦がすかのような熱。今それが、コナミの、遊矢の身体中を駆け巡る。決して不愉快なものではない、むしろ心地好いものだ。

コナミ/遊矢の前には強力な力を放つモンスターが宙に浮いている。花弁より咲き誇る歌姫、『幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ』。6本の腕を持つ、ローブを纏った占い師、『聖占術姫タロットレイ』。その神々しい気を身に受けるもコナミ/遊矢は畏縮などしない。

沸き上がるものは刺激的な闘争心。それが好戦的な笑みとして浮かび上がる。早く早くと急かすような、幼子のような気持ちを必死で抑え、これ以上身体が勝手に動かないように自らの前にデュエルディスクを構える。

 

「さぁ、バトルよ!『幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ』で『竜脈の魔術師』を攻撃!」

 

「バトル!『聖占術姫タロットレイ』で『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を攻撃!」

 

華歌聖がフィールドを飛び回り、『竜脈の魔術師』の元へと迫る。羽衣を揺らし、花びらを纏う姿はまるで妖精のようだ。

聖占術姫が宙を漂いながら真紅の竜の眼前へと躍り出る。6本の腕を胸の前へと突き出し、光の球を作り出す。

 

「ブルーム・ディーヴァの効果!このカードは戦闘、効果では破壊されず、このカードの戦闘によって発生する自分へのダメージは0になる!更にこのカードが特殊召喚されたモンスターとの戦闘を行ったダメージ計算後、このモンスターの元々の攻撃力の差分のダメージを与え、相手モンスターを破壊する!リフレクト・シャウト!」

 

「罠発動!『ブレイクスルー・スキル』!ブルーム・ディーヴァを対象に、効果を無効に――」

 

「甘いわ!罠発動、『幻奏のイリュージョン』!ブルーム・ディーヴァを対象に、このターン、ブルーム・ディーヴァは相手の魔法、罠の効果を受けず、2回攻撃ができる!」

 

素良の反撃をものともせず、ブルーム・ディーヴァに更なる力を与える柚子。完全にしてやられた事に小さく舌打ちを鳴らしながらも、こちらの上をいく柚子の成長に笑みを浮かべ、喜ぶ素良。

その間にもブルーム・ディーヴァは『竜脈の魔術師』の反撃を防ぎ、その攻撃を跳ね返す。

 

コナミ&紫雲院 素良 LP2200→1400

 

『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』へと胸の前で集束した球体を打ち出すタロットレイ。爆発による熱風が遊矢の頬を撫でる。

強い――。心の内で感じ取りながらも尚、遊矢はその笑みを深める。

 

榊 遊矢 LP900→700

 

「2回目の攻撃よ!」

 

ブルーム・ディーヴァが身の周りに浮かぶ花びらをピタリと停止させ、まるで弾丸のように打ち出す。刃の如く硬化した花びらがコナミと素良に襲いかかる。

 

コナミ&紫雲院 素良 LP1400→400

 

ついにコナミ達のLPが1000を切る。正にデッドゾーン、だが、コナミにとってそんな事は関係ない。LPがまだ残っているなら、まだ負けていないなら、彼にとってLPが4000でも100でも同じに等しい。だから諦めない。まだ勝敗は決まっていない、この程度で折れる程、コナミの心は繊細では無いのだ。

 

「ミエルはこれでターンエンド。タロットレイの効果により、墓地のリバースモンスター、『禁忌の壺』をセット状態で特殊召喚するわ」

 

タロットレイの力により、墓地から禁止カード達の効果を集めたようなリバースモンスターがにやけ面で裏返る。あのカードには散々苦しめられたのだ。遊矢は思わず苦笑いする。

 

「私は手札を1枚伏せ、ターンエンド」

 

柊 柚子&鮎川 アユ LP1500

フィールド『幻奏の華歌聖ブルーム・ディーヴァ』(攻撃表示)

セット1

手札0(柚子)手札0(アユ)

 

方中 ミエル LP2500

フィールド『聖占術姫タロットレイ』(攻撃表示) 『占術姫ウィジャモリガン』(攻撃表示) セットモンスター

手札0

 

LPはギリギリ、相手の場には強力な切り札足り得るモンスター。今の手札では勝てない。全く、最高の状況ではないか。

竜の鼓動が速くなる。遠吠えが更なる凄みを纏う。苦笑いを一つ溢し、デッキトップへ手を置く。熱い、カードから発せられるものではない。自身の興奮から来るものだ。頭を左右に振り、冷静さを取り戻す。――さぁ、覚悟は決まった――。望むは力、掴むは勝利。コナミ/遊矢は勢いをつけて、そのドローでアークを描く。

 

「「俺/オレのターンッ!ドロォォォォォォ!!」」

 

視線をカードへと移す。引いたカードは緑のフレーム、渦が描かれたカード。自らの手札、デッキを見るに明らかに手札事故だ、だがコナミ/遊矢は感じ取る。直感にも似た何かが脳に訴えかける。このカードが、逆転へのカードだ――と。

 

「オレは『竜脈の魔術師』を召喚!」

 

竜脈の魔術師 攻撃力1800

 

コナミの場に現れたるは白き衣を纏った『魔術師』モンスターだ。主を仰ぐように膝をつく。

 

「俺は、既に設置したスケール2の『EMドラミングコング』とスケール8の『EMドクロバット・ジョーカー』でペンデュラム召喚!『星読みの魔術師』!雄々しくも美しく輝く二色の眼!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力2500

 

星読みの魔術師 守備力2400

 

現れたのは遊矢のエースカード、真紅の体躯、背に三日月の角を持ち、胸と背の角、額に青、赤、緑の宝玉を散りばめた赤と緑のオッドアイを輝かせた竜。天を震わせるような咆哮を上げ、喉を唸らせる。

そして竜に付き従うのは、三角帽と烏帽子を合わせたようなものを被り、白き衣の上に黒い鎧と紫のマントを羽織、手にホロスコープを模した武器を持った長髪の『魔術師』。

これで準備は整った――。コナミ/遊矢は手札より1枚のカードを翳し、デュエルディスクから展開された光のプレートへと叩きつける。

 

「「魔法カード!『融合』!!」」

 

竜が歓喜の咆哮を上げる。フィールドに渦が発生し、真紅の竜と『魔術師』が身を投じる。今までの融合召喚では比較にならない程のエネルギー。紫電が渦より飛び散り、バチバチと火花が地面を伝う。

 

「オレは手札の『オッドアイズ・ドラゴン』とフィールドの『竜脈の魔術師』を融合!」

 

「神秘の力操りし者、眩き光となりて龍の眼に今宿らん!融合召喚!出でよ!秘術ふるいし魔天の龍!『ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

 

「融合召喚!『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』ッ!!」

 

ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力3000

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン 攻撃力2500

 

ミエルの眼前で咆哮を放ちしは赤よりも深い真紅の竜。右目を金属で覆い、首や背に金色の円を背負った魔術の竜。降り立った震動で煙が上がり、竜の威容を際立たせる。

運命が変わった――。その事実に生唾を飲み込み、遊矢を見据える。

 

柚子達の前で飛翔せしは雷纏いし嵐の竜。4枚2対の翼を広げ、雷を模したような棘を緑の鎧に装飾し、鳥の嘴のような口よりズラリと並んだ牙を輝かせる。

初めて見るモンスター。強大な存在を前に、柚子達は緊張を走らせる。

 

「『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』の効果!特殊召喚に成功した時、相手フィールドの表側攻撃表示のモンスター1体を対象として、そのモンスターを手札に戻す。俺が対象にするのはブルーム・ディーヴァ!!」

 

「罠発動!『スキル・プリズナー』!ブルーム・ディーヴァを選択し、選択したモンスターを対象としたモンスター効果を無効にする!」

 

「ならば墓地の『ブレイクスルー・スキル』を除外し、ブルーム・ディーヴァの効果を無効にする!」

 

カードの応酬が飛び交う。互いに全てを出し尽くした――。このままでは負ける、そう思った柚子はアクションカードを探す為、フィールドを駆ける。

 

「バトルだ!『ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』で『占術姫ウィジャモリガン』へ攻撃!」

 

魔天の龍がウィジャモリガンに狙いを定め、宙を飛ぶ。しかし如何に強力なモンスターを出そうとタロットレイの効果で防げると思い至ったのだろう。ミエルは腕を伸ばし、自らの切り札に指示を飛ばす。

 

「バカね!攻撃に入る前に、タロットレイの効果発動!『ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を裏側守備表示にする!フルスリープ!」

 

「『ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』はペンデュラム召喚されたモンスターを素材として融合召喚に成功したターン、相手の効果を受けない!更に!『EMドラミングコング』のペンデュラム効果発動!自分のモンスターが相手モンスターと戦闘を行う攻撃宣言時、『ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を対象に攻撃力を600ポイント上げる!」

 

ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力3000→3600

 

「そんなっ!?」

 

「シャイニーバースト!!」

 

バチバチとルーンアイズの背のリングから稲妻が迸る。全部で3つ、三角形に繋がり、右下に溜まった球体より光線が放たれる。一瞬の出来事、光線はウィジャモリガンを貫き、蒸発させる。

 

方中 ミエル LP2500→200

 

「くっ――!だけどこれで攻撃は終わったわ!次のミエルのターン、『禁忌の壺』をリバースすれば――!」

 

「ルーンアイズは融合素材として、星5以上の魔法使い族モンスターが使用された場合、モンスターへ3回攻撃が可能となる!セットモンスターを攻撃!」

 

「なっ!?『禁忌の壺』のリバース効果!フィールドの魔法罠を手札に戻す!」

 

「これで――とどめだ!」

 

「『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』でブルーム・ディーヴァを攻撃!」

 

コナミが竜へと指示を飛ばす。しかし柚子も負けてはいない。アクションカードを拾い上げ、デュエルディスクへと叩きつける。

 

「アクションマジック!『回避』!」

 

「『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』の効果!このカード以外のモンスター、魔法、罠が発動した時、エクストラデッキの『竜脈の魔術師』をデッキに戻し、発動を無効にして、破壊する!」

 

竜が天高く飛翔し、雄々しき翼を広げる。紫電が走り、嘴に空気で作られた球体が発生し、竜の咆哮と共に雷を纏った竜巻のブレスが放たれる。ゴウッ、凄まじい空気を切り裂く音を響かせ、ブルーム・ディーヴァを貫く。

 

「連撃のシャイニーバースト!!」

 

方中 ミエル 200→0

 

柊 柚子&鮎川 アユ 1500→0

 

デュエル終了のブザーが鳴り響く。竜を操りし者は見事――勝利した――。

 

――――――

 

「……こんな所にいたのか……どうしたんだボス?」

 

デュエルを見守っていた白き外套の男へと語りかける人物が1人、黒いローブを纏い、仮面をつけた男、――アムナエルだ。彼はボスと呼んだ男へと近づき、溜め息を一つ吐く。どうやらかなり疲労を溜め込んでいるようだ。身に纏ったローブもくたびれているように見える。

 

「――アムナエルか。少しデュエルの見物にね、最近見かけなかったけど、何してたんだい?」

 

顔だけを振り向かせ、アムナエルへと首を傾げる男。アムナエルは相当参っているのか、肩を落としながらも答える。

 

「あー、黒帽子に追いかけられてな。あいつさぁ!人が飯食ってたり、寝てたり、トイレに籠っている時まで追っかけてくんだぞ!?デュエル、デュエルってニヤニヤしながら!ホラーだよ!?お陰でローブにちょっとひっかかっちまった……!おい待て、何で距離とってんの?」

 

「いや汚いなぁって……まぁ極力『彼等』とはデュエルは避けなきゃね。ところでどうやって逃げたの?」

 

仮面に顔を覆われているのに表情豊かに愚痴を溢すアムナエルに対して距離を開きながらも質問を続ける男。対するアムナエルは頬をポリポリと掻きながらも言い淀む。

 

「えっと、な、カードを海に向かって投げたら飛び込んでいった。わーいって言いながら」

 

予想外の答えだ。男はその光景を想像したのか、仮面の奥で苦い顔をする。

 

「計画にもしもの事があったらどうするの?『彼等』の力が必要だって言うのに……まぁ、その程度で死ぬとは思えないけど」

 

「仕方無いだろ。で、赤い方のデュエルはどうだったんだ?」

 

許してくれ、と手を振りながらも問いかけるアムナエル。その瞳は少々の興味を抱いている。

 

「――ダメだね、話にならない。期待はしてなかったけどね。やはり彼は――」

 

その言葉をアムナエルに告げ、2人は遊勝塾より姿を消した――。まるでそこには最初から、誰もいなかったように――。

 

――――――

 

場所は変わり、舞網市、沿岸。多くのコンテナが置かれたそのエリアで、1人の少年がとぼとぼと重々しい足取りで歩んでいた。その表情は浮かないものだ。

少年は年齢にしてはやけに大きく溜め息をつきながらも左腕に嵌めたデュエルディスクに目を配らせる。

 

「はぁ……コナミは見つからないし、隼は連絡を寄越せと言ったのに一向に来ないし、瑠璃と思った子は瑠璃じゃないし……俺は何をしにスタンダート次元にきたのだろうな?」

 

「瑠那……こんな時に君がいてくれれば……」と渇いた笑みを貼りつけながらがっくりと項垂れる少年。跳ねた前髪、くたびれたシャツとネクタイ、ボロボロに擦り切れた黒いマント、遊矢と似た顔立ちをした少年、ユートだ。

遊矢と別れた後でも苦労をしているらしい。もう何度目か分からない溜め息が溢れようとした時。

 

「「はぁ……」」

 

溜め息が重なる。誰のものだとユートが顔を上げ、視線を向ける。そこには溜め息の主と思わしき人物が1人。ジャケットとズボン、軍人のような装いをしたその男は随分と大柄だ。

彼も今こちらに気がついたのか、目を丸くしてこちらを見つめている。

 

蒼の髪をオールバックで流し、左目に眼帯、胸に大きな傷を負ったその姿は歴戦の猛者を思わせる。彼は整った顔で苦笑を溢し、ユートへと歩み寄る。

 

「どうした少年。若いのにそのような暗い顔で、幸せが逃げてしまうぞ」

 

「フフッ、その言葉、そっくりそのままお返ししますよ。随分と疲れているようですが、大丈夫ですか?」

 

ユートの返答が意外だったのか、目を丸くして「む」と言葉を詰まらせる男。良く見るとその目の下には隈が見てとれる。この男も苦労しているのだろう。その考えると何だか可笑しくて、親近感が沸いてくる。

 

「……実は娘が行方不明でね、こうして仕事を早めに切り上げて、あちこちを探しているのだが一向に見つからなくてな。君くらいの年頃で、黄色いリボンとポニーテール、猿を連れているのだが……知らないか?」

 

先程とは打って変わり、真剣な表情で語りかける男。娘が大事なのだろう、男の思いが自然と伝わってくる。知っているなら協力できただろうが、生憎ユートには心当たりが無い。

 

「すいません、俺には何も」

 

「……そうか……すまないね、変な事を言って」

 

「いえ……ああ、実は俺も仲間を探していて――黒い帽子とジャケットにヘッドフォンを首から下げた俺ぐらいの男と、赤いスカーフを巻いたコートの男なんですが、知りませんか?」

 

「……帽子、か。すまない、見かけてないな」

 

どうやら知らないようだ。ユートの問いにも親身になって答える男。自分の事のように眉を伏せてくれる彼に、良い人もいるものだ、と思いながらも薄く笑う。

 

「そうだね、これも何かの縁だ。互いに連絡先を交換して、協力しないかい?」

 

「そうですね、是非」

 

良い味方を見つけた。とデュエルディスクを互いに取り出し、操作する。とそこで。

 

「「?そのデュエルディスクどこかで――」」

 

見た事があるような。と言葉を紡ごうとした時、予期せぬ介入が加わる。

 

「久し振りだね、ユート」

 

「!?」

 

ユートの頭上より、声が届く。まだ声変わりしたばかりの少年の声。ユートにとって聞き覚えのある声だ。声のするコンテナの上へと目を配らせる。そこにいたのは1人の少年。

美しい銀髪は天に向かって逆立ち、額には緑のメッシュが垂れている。細身の体には緑のジャケットとブーツを纏っている。獲物を狙うかのような眼を輝かせ、歪んだ笑みを向けるその少年は――。

 

「八雲……興司……!?」

 

ユート達にとって――裏切り者と呼ばれる人物だった――。

 




次回は番外編を予定してます。ちゃんと本編と関係あるからね。プラシドはいないからね。
そう言えば最近ブラマジの新規が出たり、EMの程好い(ここ重要)新規が来たりしてますね。
オッドアイズ魔術師ブラマジでも作ろうか。自分的にはビーストボーグが作りたいです。
アニメも愉快な事になってるな……セルゲイはランサーズに入るのだろうか。

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