やっぱり本家は凄いと思いました(小並み感)
20XX年、シティはモーメントの暴走に包まれた!!
人々はトップスとサテライトに別れ、サテライトのクズ野郎は絶望したかに見えた……。
だが意外と元気だったし、現代の若者に心配されるバイタリティに満ち溢れまくっていた。特に満足同盟とか。
サテライトには便利なものは少なかったけど、大丈夫だった。主に満足同盟が。
カードは貴重で、拾ったものでデッキを組んでるけど、仕方がないので頑張ります。
――――――
「デュエルだ。プラシド!」
「フハハハハ!良いだろう不動 遊星!虫ケラの分際で俺に勝負を挑んだ事、後悔するが良いわ!」
ネオドミノシティ、ハイウェイ。スピードワールド2の発動によりレーンが変更されたそこで2人の青年がデュエルを行っていた。
1人は赤いヘルメットを被り、紅白のD-ホイールを飛ばしているD-ホイーラー。不動 遊星。この街の英雄にして現キングの称号を持ち、赤き竜の痣を右腕に宿したシグナーの1人である。
もう1人はどう言う訳か胴体とD-ホイールがドッキングしている銀髪の青年。イリアステルの三皇帝、プラシド。
D-ホイールと合体して何が変わったの?と聞かれても分からない。強いて言うなら突然蜂の踊りについて語りだす辺り、豆知識的な何かが増えるのかもしれない。後、妙にテンションがウザくなる。
互いのマシンを駆けさせ、対峙する2人。遊星の背後には戦闘機のような白き竜、アクセルシンクロモンスター、『シューティングスター・ドラゴン』が。
プラシドの背後には純白のボディを輝かせる巨大な合体ロボ『機皇帝ワイゼル∞』が火花を散らしている。
「スターダスト・ミラージュ!」
遊星が指示を飛ばすと同時に背後の竜が5体に分身し、様々な色彩を放ちながらプラシドのモンスター、ワイゼルへと突撃し、破壊による衝撃がプラシドの身体を貫く。
「ぐぉぉぉぉぉぉっ!?」
5回もの連続攻撃を受け、プラシドの上半身がもげかける。だが、プラシドは何を思ったかおもむろに絆創膏を取り出し、もげかけた上半身と下半身を繋ぎ止める。
「これで大丈夫!みたいな!?」
「何!?」
何が大丈夫なのだろうか?プラシドはニィッ、と口の端を歪め、愉快気な笑みを遊星へと向ける。プラシドの突然の奇行に驚愕する遊星。
絆創膏を貼った胴体がガタガタギィギィと悲鳴を上げているのはご愛嬌である。
「ここで絆創膏!?未来のテクノロジーとか、もっとあったんじゃないのかプラシド!?」
「遊星、もういいからとどめを刺すのよー!!」
彼等の闘いを見守っていた兄妹、龍亜と龍可が叫ぶと共にプラシドの哄笑がハイウェイに響き渡る。
許して欲しい、彼は不器用なのだ。
「フハハハハー!今度はこちらの番だ。不動 遊星!俺は『スクラップ・コング』を召喚!」
「!?」
「ウホッ」と鳴き声を上げて、現れたのは廃棄物で作られたゴリラ。登場時、散々ネタにされ、今でもネタにされるカードである。だが、問題はそこではない。
重要なのは、プラシドが機皇帝以外のモンスターを使い、そのモンスターが自壊に関する効果を持つ事。ゴリラの登場にまさか、と遊星は眼を見開く。
「あいつ……まさか、OCG版のワイゼルを使う気じゃ……!?」
「買ったの!?ジャンプを買ったの!?」
「フハハハハ!俺はVジャン派だ!一応、その号は3冊押さえたがな!罠発動!『エンペラー・オーダー』!『カゲトカゲ』!効果を無効にゴリラの宝札!」
「ネタを潰しやがったぜアイツ!」
「ええ、そして自分と関係無いネタをやり出したわ!」
まさかの展開に戦慄する龍亜と龍可。対するプラシドは「フハハハハー!」と顔を抑えて、してやったりと哄笑を上げる。胴体がギィギィと悲鳴を上げているが大丈夫なのだろうか?
「ククク、まだまだお楽しみはこれからだよ遊星、ん?」
「どう言う事だ、プラシド!」
口元を歪め、遊星へと不敵な笑みを向けるプラシド。その絶妙に神経を逆撫でする態度に堪らず叫ぶ遊星。しかし、プラシドは全く悪びれずに左腕を天高く掲げる。
「俺は『二重召喚』を発動し、2体目のゴリラを召喚!ゴリラの宝札!そして2体のゴリラでオーバーレイッ!」
「!?」
プラシドの背後に黒き渦が巻き起こり、2体のゴリラが「ウホッ」と鳴き声を上げて吸収される。続いて現れたるは、この世界には決して存在しえないモンスター。
「エクシーズ召喚!現れよNo.39!我が戦いはここより始まる!白き翼に望みを託せ!光の使者、希望皇ホープ!」
白き塔が立ち、カタカタと音を立てて変形し、戦士の姿へとなる。腰に携えた2刀、黄金の鎧、純白の翼、右肩に輝く、39の紋章、皇は今、顕現した。
「いやそれ、お前が一番使っちゃいけないカードだろ!?」
「こっちもクェーサーを立てるのよ遊星ぇー!」
やりたい放題の皇帝に思わず罵声を浴びせる龍亜と龍可。一体、どうしてこの面倒臭い男が絶望したのか気になる所である。
「神宣で」
「えっ……えっ?」
無情にも、遊星の場に伏せられていたカードが裏返る。それによってホープが雷に打たれ、破壊される。崩れ落ちるホープを横目に呆然とするプラシド。間抜け面を晒す彼を何時も通りの平坦な表情を保ち、無言を続ける遊星。ガチなやつである。
「……おこなの?」
その顔から感情を無くし、間の抜けた表情で遊星に問い掛けるプラシド。答えは返ってこない、激おこである。その証明として、次のターン、プラシドはクェーサー2体を立てられ、シューティングスターと共に怒涛の9連打を受けたのだった。
――――――
「これよりダークシグナー会議を始めたいと思います。進行は私、ディマクが勤めます」
篝火のみが照らす暗き部屋、長いテーブルに肘をつき、黒き外套を纏った7人のデュエリストが椅子に腰掛けていた。その中の1人、黄色の紋様が外套を走り、フードの奥から覗く褐色の肌が特徴的な男。ディマクが進行役として立ち上がる。
「ぬぅ……鬼柳はどうした?」
テーブルの最奥で、赤い紋様が走った外套の男が、重々しい声音で、空席となった椅子を見詰める。
「また奴は不在か!?ルドガー兄さん!いい加減、説得に迎いましょう!」
「落ち着けレクス!奴は今、自分自身のキャラの方向性を探っている中なのだ!もう少し様子を見るべきだ!」
「そんな転校生みたいなかんじっ!?」
7人の中でただ1人、外套を纏っておらず、いや、上半身に衣服を身につけてすらいない、銀の長髪を流した筋肉質な男。レクス・ゴドウィンがその表情を怒りに染め立ち上がる。
しかし、赤き紋様の男、兄であるルドガーによってそれを制される。
そんな彼等を遠巻きに観察しながら隣り合った緑とオレンジの線が縁取られたフードを被った女性、ミスティとカーリーが言葉を交わす。
「……ねぇ、ミスティ」
「何かしらカーリー」
チラリ、とミスティ、いや、ミスティの隣で1枚のカードを手に取り、ブツブツと呟く紫のフードの巨漢を半眼で一瞥した後、溜め息を吐くカーリー。
「どうしてこう……ここの男ってムキムキムキムキ……濃い奴等ばかりなのかしら」
「頭にいく栄養が全部筋肉になってるんじゃない?」
酷い言い様である。もう少しオブラートに包む気は無かったのか。カーリーも成程と頷いて良いのだろうか?割りと大きな声で話し込んでいる為か、レクスとルドガー、ディマクは汗を垂らし苦い顔をしている。しかしミスティの隣の筋肉は聞こえて無かったのか、先程同様1枚のカードを見詰めている。
「『ダーク・ダイブ・ボンバー』……何故こんな効果に……」
そのカードは昔、鬼畜な効果を持つ猫と共に猛威を振るったシンクロモンスター。しかし現在エラッタされ、禁止カードから無制限へと一気に釈放されたが。
要するにこの男、ボマーは弱体化された自身のカードである『ダーク・ダイブ・ボンバー』に不満があるのだ。我慢して欲しい。
そんな混沌とする中、部屋のドアが破られ、1人の男が侵入する。
左眼を冷たい金属で隠した銀髪の青年。一風変わった服装に身を包んだ彼は吊りがちな赤い眼で部屋中を見渡した後、顔に手を当て、高らかに笑い声を上げる。
「フハハハハ!虫ケラの皆さん、こんにちは!羽虫共がお揃いで何をしているのかな?ん?」
ドカドカと音を立てて歩み、これまた大きな音を立て椅子に座る皇帝プラシド。実に自分勝手に振る舞うプラシドを見て頭を抑えるダークシグナー達。
(((((また面倒な奴が来た……)))))
そう考えるのも無理は無いだろう。実際このドヤ顔をしているプラシド、拗らせた男子中学生並みに相手をするのが面倒臭い。とても面倒臭い。
ダークシグナー達も苦虫を噛み潰した表情でプラシドを睨んでいる。本人は意に介さずに「フハハハハー!」と笑っているが。
「あの……プラシド……さん?何の御用で?」
満を持してディマクがプラシドへと声を掛ける。その顔は実に困惑しており、嫌々と言った様子である。
「ん」
「……は?」
ディマクの質問に短い言葉で答えるプラシド。いや、答えにもなっていないそれにディマクも眉をひそめる。眉は無いが。
「ん、茶はまだかな?」
「兄さん、塩はどこだ!」
「落ち着けレクス!適当に相手して早めに帰らせるのだ!」
早く早くと机を叩き、茶を要求するプラシドの態度が癪に触ったのか、レクスが額に青筋を浮かべ、ルドガーへと振り返る。しかし塩を撒けばかえって面倒な事になりかねないと察したのだろう。ならば適当に相手をして満足させようとルドガーはレクスを制する。
「フフフ……」
「ッ!?何がおかしい!プラシド!」
彼等のやり取りを見ていたプラシドが笑みを溢す。その不気味な笑いに怒りを覚えたレクスはプラシドを指差し問い詰める。
しかし、プラシドは余裕のある表情を見せながらディマクの出した麦茶を受け取り、一口飲んだ後、その鋭い視線をレクスへと向ける。炎のように赤い眼に思わず怯むレクス。それを見てか、更にプラシドが笑みを深める。
「フフッ、裸……なんで上半身裸なの貴様……寒くないかそれ」
「ぐぅっ!!」
「待てレクス!それは私も思っていた!」
顔に手を当て哄笑するプラシド。これは仕方無いと言えよう。むしろ上半身裸の筋肉質な男を見て何かを心配しない方がおかしい。兄であるルドガーでさえ心配する始末である。
「後、ここにはロン毛しかいないのか?そこの黄色いのもハゲだし」
「ぬふぅ!?」
んん?とドヤ顔を見せるプラシド。一体ロン毛に何の恨みがあるのか、そしてハゲに至っては未来の自分を見て言って欲しい。壮大なブーメランである。
と、そんなアホなやり取りをしている内にプラシドが1人の人物に目をつける。真っ黒、何色の線も描かれていない無地のフードを被った、この中では背の低い、細身の人物。一言も言葉を発していない人物を見てプラシドが眉をひそめる。
「ところで……そこの虫ケラは何だ?ダークシグナーは全員で7人、青い虫ケラとも違うようだが?」
「ふっ、その男は私が連れて来たのでございますよ」
プラシドの質問に答えたのはディマクだ。彼は口元を持ち上げ、不敵な笑みを見せる。
「ボマーでは山のフドウ的なポジションにはなれなかったのでね、ポジション的にはぴったりの人物を探したのですよ」
「この虫ケラが山のフドウ?バカな、貴様よりも背の低い、筋肉質でもない男が?やはりハゲか」
またもやブーメランを投げるプラシドに対し、頬を引き吊らせるディマク。咳払いを一つし、気を取り直し、謎の人物へ視線を移す。
「さぁ、紹介してやれ!お前の正体を!」
口元に三日月のような弧を描くディマク。同時に男は立ち上がり、自らの被った外套を脱ぎ捨てる。バサリ、音を立てて宙を舞う外套、その先に待っていたのは予想外の人物。
その男は猛禽類を思わせる眼をカッ!と見開き、今まで閉ざしていた口を開く。
「瑠璃ィィィィィィィィィィィィ!!!」
「貴様、本気か!?」
黒咲だった。プラシドが動揺するのも無理は無い。ホープを使用した彼に怒る権利は無いが。しかしARC-Vでもないのにシリーズを超えてのキャラの使用と言う暴挙にディマク以外のダークシグナーが憤慨する。連れて来た理由もどうでも良いものだから当然か。
「ディマク!流石にこれは私もどうかと思うぞ!?と言うか黒咲!お前も納得したのか!?」
「瑠璃!」
「ダメです兄さん!話が通じない!」
「くそぅ、ディマク。余計な者を連れて来おって……何とかしろ!」
「まさかこんなに批評を買うとは……この猿のディマクの目を持ってしても見抜けなかった……」
「ハゲのディマクに改名したらどうかしら?」
瑠璃、瑠璃、としか発しない黒咲を見てディマクを罵倒するルドガー。しかし当のディマクは妙に気取った態度で責任を逃れようとしている。そんな彼にミスティが厳しい一言を投げるのも無理は無いだろう。グサリ、と矢のような一言に崩れ落ちるディマク。
混沌とする場、そんな中、プラシドが「とうっ!」と声を上げ、宙に身を投げ出し、自らのD-ホイールとドッキングする。
「フハハハハ!青天につき、ツーリング日和だな!」
「クソッ!奴め、場を乱すだけ乱しておいてトンズラし始めたぞ!」
「何しに来たんだ、あいつは!?」
ニヤリ、と笑みを浮かべその場から消えるプラシド。そしてそんな彼に悪態をつくゴドウィン兄弟。瑠璃、瑠璃と叫ぶ黒咲。プラシドのせいでカオスに陥れられるダークシグナー達であった。
――――――
「うん?」
時は過ぎ、サテライトのある一角、雲が空を覆い、暗くなった広場で1人の男と2人の男が向かい合い、対峙していた。2人の男の方は先程の会議に出席していた蜘蛛の地縛神、Uruを使役するルドガー・ゴドウィン。そしてもう1人は最じゃ、最強の地縛神、WiraqochaRascaを持つ半裸、レクス・ゴドウィン。
ダークシグナーの中でも優れた力を持つ彼等が態々足を運んだのには理由がある。そう、彼等と向き合う男、鬼柳 京介を説得する事である。
「だから何度も言っているだろう!貴様が『満足』と言う唯一のキャラクター性を持つ以上、欠席して満足しようとしないのはマズイ!」
「欠席して満足?」
「そんなんで満足されてたまるか!お前はハイテンションキャラだろう!少しは出席して場を盛り上げようとは思わんのか!?」
「誰かの為の満足なんて満足じゃないぜ!」
「それこそ自己満足だろう!!」
話が通じない。ディマクがアホな事を仕出かした以上、鬼柳 京介と言う強力な戦力を何とかものにしようとする2人だが、流石は遊星とカップルの喧嘩のようなやり取りを繰り広げた男。
こちらの話を全く受け入れない。このままではまたプラシドが来訪した時に互角に渡り合う人物がいないではないか。この状況を何とかしようとルドガーが1人の男を呼び出す。
「貴様が出席しないと言うなら、こちらにも考えがある!来い!」
ザッ、と土を鳴らし、1人の男が姿を現す。青みがかった白い髪、頭に巻かれた紫のバンダナ、手に着用された黒の穴空きグローブ、そして、その身に纏ったノースリーブのジャケット、通称、満足ジャケット。
「サティスファークショーン」
「見よ!満足時代のお前を!」
チームサティスファクション時代の鬼柳だった。彼はドヤ顔で鬼柳(ダークシグナー)へとデュエルディスクを構え、ニタニタと笑っている。と言うかどこから連れて来た。
「エメループ?アイドラループ?トリシューラループ!」
嫌な鳴き声(?)である。彼の満足に満ち溢れた眼や仕草を見て、ダークシグナーである鬼柳は警戒に目を光らせるのであった。
「いいぞ鬼柳!鬼柳はビビって何も言えないようだ!」
「兄さん!今の鬼柳って、どっちの鬼柳!?」
「そりゃお前、レクス、サティスファクションの方の鬼柳……ん?んっ?」
「ん?」
続かない。
赤帽子のお師様「出番まだかな……?」
極神聖帝「出番まだかな……?」