遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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シンクロ次元編最終話。長かったね……。


第197話 愛と正義

離れ離れになる前は、何時も一緒だった。

父親同士が親友で、家が近くてデュエル塾も同じ。小学校も中学校も、更にはクラスまでずっと一緒だった。

所謂幼馴染み。そんな関係だからか、自然と仲良くなっていったし、喧嘩する事だって少なくなかった。男と女だから、お前等付き合ってるの?とからかわれたりする事もあって、何時も唇を尖らせ2人揃って違うと言うのだ。

 

だけど互いに言葉を交わさずとも相手の言いたい事が分かってしまう。異性と言うより姉弟のような間柄。

互いに互いを支え合って、感謝はあれど貸し借りと言う想いはなかった。そんな感じなのでからかわれても別段距離を置くと言う事もなく、むしろ互いの家を行ったり来たり、互いの所持品が互いの家にあるなんてザラだった。

何時も一緒なのが当たり前とも思わない程当たり前で。

 

そんな日常の中、中学一年の下校時間、一緒に帰ろうと声をかけようとしたけど、何時の間にかいなくなってて、クラスメイトに居場所を聞くと、さっき出ていったと言う。

何時も通りからかわれながら、「声位かけてくれたって良いじゃんかー」と唇を尖らせ拗ねながら彼女の下に向かうと――何やら知らない奴と一緒にいるではないか。

 

告白だった。思わず隠れて様子を見守っていると、男の方はイケメンでスポーツ万能、頭も良い、デュエルの腕まで少年より上と非の打ち所のない奴だった。

何故か胸がチクリと痛んでいるのを自覚する中、少女はその男の告白を断った。

とても丁寧に、親身に、最後に好きな人がいるからと付け加えて。

 

その言葉を聞いて、何故か胸にポッカリと穴が開いた気分だった。

アイツにも好きな人がいるんだ、とか。ふーんだとか、ほーんだとか。

正直少年はかなりテンパった。同時に、怖くなった。少女がどこか遠くに行ってしまう気がして、自分を置いて離れてしまう気がして。

でもその時はどうせ何時かは離れ離れになるんだと無理矢理に納得した。

 

それを期に、少しずつ、少しずつ行動を別にして、友人達との出会いが増えていき――ある時に、少女がいなくなった。

拐われていなくなったのだ。会う事もままならない。少女を失った感覚――最悪だった。

全てがどうでも良くなって、投げ出したくなった。

 

だけど友に支えられ、次元を渡り、ある少年と少女の絆を見た。

美しい恋を見た。純粋な愛を見た。

それを見て気づいたのだ、自分の想いに、少女への想いに。この想いは、嫉妬でも独占欲でもない。この想いは――。

 

「柚子ぅぅぅぅぅっ!!」

 

バキィィィィィッ!友が託したDーホイールを使い、猛スピードで駆け抜け、少年は厳重にセキュリティがかかった扉を無理矢理にぶち破る。

何と言う強引さ、何と言う力技。背後に浮かぶ親友の影が「もうちょっと丁重に……」と呟くが今の彼は聞く耳を持たない。

そのまま少年、遊矢は急ブレーキ、眼前に立ち塞がる、零児達から逃れた――プラシドを射抜き、彼に連れられる少女、柚子へと視線を移す。

 

「遊矢っ!」

 

そして柚子は遊矢へと振り返り、泣きそうな笑顔で彼の名を呼ぶ。

この時を、どれだけ待った事か。

舞網チャンピオンシップで柚子がオベリスク・フォース達――と言うかユーゴに連れ去られた形だったのだが、そんな彼女を追い、このシンクロ次元に辿り着き、多くの激闘を経て、今、再会した。

 

「榊 遊矢……ここまで来たか……!」

 

「お前も後!」

 

「……何?」

 

口を挟もうとするプラシドに対し、遊矢は邪魔はさせまいと指を差して黙らせる。

これには流石のプラシドも戸惑いを見せる。遊矢らしくない行動だ。

彼はそのまま再びエンジンを吹かせ、プラシド目掛けて走り出す。

 

「柚子、俺は……っ」

 

ずっと、言おうと思っていた。彼女に再会した時に。

 

「俺は……っ!」

 

この想いを、伝えようと。

 

「俺は、お前が、好きだぁっ!!」

 

ガシリ、プラシドの手から柚子を奪い取り、だけど壊れ物を扱いように丁寧に、顔と顔を向き合わせ盛大に愛の告白をした。

思いの丈を乗せた情熱の籠った、榊 遊矢一世一代の大勝負。その戦場に似つかわしくない叫びが木霊すると共に、当の本人である柚子、ランサーズ、更にはプラシドまでもが呆気を取られて硬直する。

 

「え、あ、う……~~~っ!?」

 

真っ先に硬直を解いたのは張本人、柊 柚子。

彼女は遊矢の腕の中であわあわと目を白黒させた後、今度は耳まで真っ赤にして両手で顔を覆う。

そんな彼女につられてランサーズがハッと正気に戻る。瑠璃とリンは両手を繋いでキャーキャーと騒いでいるが他の連中はそうはいかない。特にアリトはずずいと飛び出し口を開く。

 

「へ、返事は!?」

 

彼等の急かすような声音も耳に入らず、柚子はあうあうと金魚のように口を開閉するのみ。

最早オーバーヒート寸前、だが遊矢は更には追い討ちをかけるかの如く、その場でDーホイールを急停止、彼女の肩に顔を埋め、精一杯力強く、かつ傷つけないように優しく抱き締める。

 

「~~~ッ!?」

 

「気を失って初めて、君の大切さに気づいた。君と離れて初めて、自分の想いに気づいた」

 

「遊、矢……?」

 

ぐっ、更に肩に顔を押し付ける遊矢の様子に、柚子が正気に戻る。触れ合う肩が生暖かく、何かに濡れている。遊矢の身体が、僅かに揺れている。声が、震えている。

 

「それからは怖くて怖くて仕方無かった。当たり前のように傍にいた君がもう2度と会えなくなる程に遠くに行ってしまいそうで、この想いを伝えられないまま、終わってしまいそうでっ……!」

 

「うん……」

 

震える唇から告げられる、柚子への想いと弱音。それ等全てが柚子へ暖かく染み渡っていく。

情けないとは思わない。彼の優しさを、情けないだなんて誰にも言わせない。

おずおずと柚子は遊矢の背中に腕を回し、ポンポンと幼子をあやすように軽く叩く。

 

「男らしいんだが、泣き虫なんだか」

 

クスリと微笑み、「あ」と気づく。今までは、遊矢の身長は柚子よりも僅かに低かった。だけど、何時の間にか、その背は高くなっていて。触れる背中は、大きく暖かい。

 

「男子三日会わざればって奴かしら」

 

「君と一緒にいたい」

 

「うん」

 

「君の笑顔が見たい」

 

「うん」

 

「君と共に歩みたい」

 

「――はいっ」

 

2人の想いは、重なり合う。まるで最初からこうなる事が自然だったかのうに。顔を合わせて笑い合う。

 

「私がいないと、駄目なんだから」

 

「君じゃないと、駄目みたいだ」

 

「えへへ」「うふふ」とニヤケっ放しとなる2人。そんな砂糖が吐けそうな位いちゃつくバカップルに、漸く正気に戻ったプラシドが咳払いをして申し訳なさそうに割り込む。

 

「……ここが敵陣である事を忘れていないか」

 

「「……あっ」」

 

どうやら忘れていたらしい。2人は顔を見合わせて声を出し、にへらと表情を崩す。

 

「忘れてたなぁ」

 

「忘れてたねぇ」

 

そしてこの台詞である。流石のプラシドもイラついたのか、ひくひくと頬が歪んで見える。仲間達も呆れて物が言えない。

ただ1人、アリトを除いては。

 

「俺の天使が……遊矢が寝取られた……コイツはボディに効くぜ……!俺は祝福すれば良いのか?俺はどうすれば良い、答えろ!」

 

「流れ弾を寄越すなっ!」

 

激しく動揺、何故か敵側であるプラシドを糾弾する。対するプラシドはらしくもなく焦り、ごもっともな意見を叫ぶ。

彼は悪くない、だが遊矢達が悪いとは一概にも言えない。

 

「さて……2人を今まで見守っていた俺としては直ぐにでも祝いの席を用意してやりたいが、残念な事にそうもいかん。だから――憂いを取り除いてやろうと思うのだが、貴様はこの数を相手に勝てると思うか?」

 

カンッ、特徴的な下駄の音を鳴らし、遊矢と柚子の幼馴染みである権現坂が彼の肩に手をポンと乗せ、プラシドを睨む。

そう、突然の告白で話が大いに逸れてはいたが、彼等ランサーズとプラシドは敵同士。プラシドがどれだけ手練れだろうと、この数相手では敗北は確定したようなもの。

プラシドは赤き竜との対決で消耗しているのだから尚更だ。本人も自覚しているのか、権現坂の指摘を否定しない。

 

「思わんな。だから……ここに来たんだ」

 

「……何?」

 

その言葉に、ユートが眉をひそめたその時、プラシドが懐から何かを取り出し、そのスイッチを押す。

すると部屋の奥より赤い光が灯り、光の元である巨大な装置が起動する。

 

「これは……っ!?」

 

「次元転送装置、これで俺とお前達を、アカデミアに転移させる」

 

「!」

 

数で劣るならば、その数を逆転させようと、ホームで迎え撃とうと至極単純な手に打って出る。

そんな事になれば全滅は必至。一瞬にしてユートがデュエルディスクからワイヤーを射出、デュエルアンカーで装置を壊す強行に出る。

 

「何だとっ!?」

 

プラシドが驚愕の声を上げると共に、装置は激しくスパーク。眩い閃光が部屋中を覆い、歪な音色が響き渡る。そして――装置より巨大な闇色の津波が広がり、プラシド以外の全員を呑み込む。

 

「ッ、間に合わなかったか……!」

 

「ぬ、ぉぉぉぉぉっ!」

 

「きゃぁぁぁぁっ!?」

 

全員が足場が崩れるような感覚に陥り、次元の渦に呑み込まれる中――榊 遊矢は柚子を手繰り寄せようと必死でもがく。

 

「柚子ぅぅぅぅっ!」

 

「遊矢ぁっ!」

 

その手を掴み、手繰り寄せ、ギュッと力強く抱き締める。今度は離れないように、2度と彼女を失わぬように。

そうして――彼等は、闇の中に消えていった。

 

「……エクシーズ次元、か」

 

ポツリと、残されたプラシドはプスプスと黒煙を上げる装置に写し出された座標を視界におさめ、小さく呟く。

そんな彼の下に――新たなデュエリスト達が駆けつける。白いライダースーツを纏った金髪の青年、ジャック・アトラスと、箒のように逆立った髪をバンドで留めた小柄な少年、クロウ・ホーガンだ。

 

「無事か遊矢っ!」

 

「遅くなっちまってワリィ!って、テメェはプラシド!?」

 

「……やれやれ、騒がしいな全く……」

 

休む暇なく現れる、シンクロ次元でも5本の指に数えられるだろうDーホイーラーの登場に、プラシドが深い溜め息を吐く。

あの数のランサーズもそうだが、この2人を相手はかなり不味い。

転送装置も壊れてしまった。ここは奥の手を出すしかないだろう。懐からもう1つのスイッチを出そうとして――ビュンッ、クロウの手からカード手裏剣が飛び、姿勢を崩したプラシドのケープを切り裂く。

ハラリ、めくれ上がり、地へ落ちるケープ。その間に――彼の今まで隠されていた正体が、明らかとなる。

 

「……は?」

 

「馬鹿な……」

 

思わず呆然とするジャックとクロウ。それもそうだろう、だってこの男は――。

思い出されるのは積み重ねて来た過去の日々、辛くも楽しかった、激闘、死闘を仲間達と共にした何よりも大切な日常。

そして、その日々の中心にいた彼。

 

蟹のような髪型と、鋭く勇ましい青い瞳。この状況にあっても冷静沈着を崩さぬ、彼は――。

 

「遊……星……」

 

その時、彼の手元のスイッチが押され、部屋の壁を突き破り、3つの影が飛び出した――。

 

――――――

 

場所は変わり、シティ湾岸沿いのレーンにて、そこには2人のデュエリストの姿があった。

1人はコナミ。白コナミとの激闘の果て、見事勝利を掴み取った赤帽子のデュエリスト。

そんな彼と対峙するのは――彼等の激闘を虎視眈々と睨み続け、敗北した白コナミを吸収すると言うハイエナのような行為に出た黒帽子の少年、黒コナミ。

彼は白コナミの力を余さずその身に取り込み、溢れ出す力の波に口元を緩める。

 

「ハ、ハ、ハハハ、ハハハハハハ!素晴らしい……最高だ!力が溢れる……そうだ、これだ!欠けていたものが見事に嵌まる感覚!たった1つ戻っただけなのに、何て甘美な感覚だ!」

 

狂ったように笑い声を上げ、白黒の稲妻を走らせる黒コナミを見て、コナミが頬から顎にかけて冷たい汗を垂らす。

状況は最悪も良いところだった。コナミは白コナミとの死闘で消耗し、その上彼の力が無傷の黒コナミに渡る。

間違いなく、今黒コナミと闘えばコナミは負ける。そんな確信があるのに、コナミの足はこの場に縫い付けられたように動かない。

目の前の圧倒的な存在を前に、息すらも忘れそうになる。

 

「次は、お前だ……!」

 

そして黒コナミは都合良く彼を見逃してはくれない。

ニヤリと獣のような獰猛な笑みをその口元に描き、無慈悲な宣告をする。最悪も最悪、これ以上なく最悪な状況。

それでも、コナミに逃げの一手は残されていない。

ギリ、歯軋りを鳴らし、口を一文字に結んで黄金のデュエルディスクを構える。

 

「安心しろ、白も、貴様の力も私が有効に活用してやる」

 

「何故だろうな、あれ程敵対していた奴だが、ポッと出の貴様に踏み台のように扱われる事には苛立って仕方無い」

 

白いコナミも相当アレだったが、この男は輪をかけて不味い。

何よりもコナミの勘がこの男にだけは負けてはならないとうるさい程に警報を鳴らしている。

この男がコナミの力までも奪えば――何か、全てが滅茶苦茶に、台無しに崩壊してしまう気がして――酷い不安がコナミの背筋を襲う。

勝たねばならない。絶対に、何としてでも。

 

「「デュエル!!」」

 

両者が声を合わせ、デュエル開始の合図を出した、その時だった。

 

「「ッ!?」」

 

彼等の間に、天使のような姿の、白い竜が割って現れたのは。

 

「『スターダスト・ドラゴン』……!?」

 

その正体は、白コナミのエース、『スターダスト・ドラゴン』。消え去りそうな程薄くなった姿をした竜が、か細い咆哮を放ち、光の吹雪を放ち、2人の姿を呑み込む。

 

「ッ、最後の最後で、余計な真似をっ!」

 

「……奴の、仕業なのか……?」

 

黒コナミが苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、コナミが気づく。これはまさか、白コナミが最後に残した力なのかと。

そう、彼は最後に、黒コナミの暴挙を止めるべく、自らのエースに全てを託したのだ。せめて、コナミが万全な状態で黒コナミと闘えるよう、この場は逃そうと。それは恐らく、白コナミの情だろうか。いや、少なくともコナミには――自身に勝ったのだから負ける事は許さないと言う、叱咤に感じた。

しかし黒コナミは邪魔が入った事に明らかな怒りを示し、舌打ちと歯軋りを鳴らし、止めどなく放出する光の中、必死に足掻く。

 

「じゃ、ま、だぁぁぁぁぁっ!」

 

両腕にシャイニング・ドローに似た光を纏いながら、光を切り裂くように振るい、コナミに向かって突き進む黒コナミ。

この状況を前にして尚諦めるつもりはないらしい。しつこい男だ。亡者か悪鬼羅刹か。恐るべき執念を見てコナミがゴクリと喉を鳴らす。

するとその音を合図に『スターダスト』の光は更に増大、コナミの眼前に迫る黒コナミの右腕を丸呑みにする。

 

「ぐっううぅ!?」

 

それでも諦める事なく抵抗の意志を見せる黒コナミだが、苦痛に表情を歪ませ、完全にその姿が消え去っていく。

そして光に呑まれるのはコナミとて例外ではなく、巨大な津波を受け、その姿をこの次元から消し去った。

 

――――――

 

ピチョンと、自らの頬に何か冷たいものが触れた感覚を受け、少年――榊 遊矢の意識は浮上する。

 

「う、うん……」

 

再度、彼の頬に先程と同じ感覚が走り、今度こそ眠っていた意識は完全覚醒。ハッ、と瞼を上げ、両の眼を開いて勢いよく起き上がる。

 

「――ッ!」

 

瞬間、ズキリと鋭い痛みが脳天を貫き、思わず顔をしかめ、左手で額を抑える。

そして開いた片目に写ったのは、ボロボロに壊された都市の姿。この光景、何時かどこかで見た事があるような。あれは一体、何時だったか。

 

「ここは――俺は……確かあの時、装置の暴走で……そうだ!柚子!」

 

直前までの記憶を手繰り、ハッとして辺りを見渡す遊矢。あの時の記憶通りなら、彼女の無事が何より気になる。

自身は今度こそ彼女を守れたのか。彼女は大丈夫なのかと不安に駆られて行動を起こすと――いた。しかもかなり近くに。

正確に言えば、遊矢は彼女の、柚子の手を放さないようにとガッチリ握り込んでいたのだ。見た目も外傷はなく、すうすうと寝息を立てている。

 

「良かったぁぁぁぁ……」

 

安心で肩から力を、いや、全身から力を抜き、その場に座り込んで深い溜め息を吐く。だが繋いだ手がどうにも恥ずかしく、頬を染め、ポリポリと掻く。

 

「そうだ……皆はどうしたんだろ……それここはどこなんだ……?」

 

昇って来た熱を逃がすように辺りを見渡す遊矢。この様子だとシンクロ次元やスタンダード次元では無さそうだ。

勿論次元転送装置が暴走したのだから他の次元についた可能性はある。だとすれば、と遊矢が思い出した瞬間。

 

「グワーハッハッハァッ!」

 

「きゃぁぁぁぁっ!?助けてぇっ!」

 

響き渡るうら若き乙女の悲鳴。一体何だと遊矢が声の方向へ視線を移せば――そこにいたのは鉄の仮面を被るモヒカンを生やした筋骨隆々の怪人と、そんな怪人の下、叫ぶアイドルのような衣装を纏った少女の姿。

1度は現実離れした怪人の存在に驚愕する遊矢だが、今までの超常的な現象を見て来て耐性がついたのか、直ぐ様冷静さを取り戻す。

 

「あの子が危ない……!」

 

「助けてぇっ!ナンバーズハンターッ!」

 

「……うん?」

 

しかし、次なる少女の台詞が遊矢の足を地に縫い付けて止める。今、彼女は何と言ったのか、助けての後に、何だか聞き慣れない単語がついていた気がするが――。

 

「そこまでだ!七皇のギラグ!」

 

「むっ、何奴!」

 

固まる遊矢の頭上のビル屋上より、少年の声が響き渡る。反射的に遊矢と怪人、ギラグが振り返ると――七色の光が輝き、小さな影に格納されていく。

 

「フォトン・チェーンジ!とうっ!」

 

そして、タンッ、軽やかな足取りでビルから飛び降り、ギラグの眼前に降り立ち、その姿を明らかとする。

逆立つ青い髪に、赤いマスク、水色のマントと白いスーツを纏う、まるでヒーローのような少年だ。

 

「広い銀河の地球の星にピンチになったら現れる!イキでクールなナイスガイ!行くぜ、正義の大盤振る舞い!ナンバーズハンター、エスパーロビン、定刻遅れてただ今到着!」

 

高らかに自らの名乗りを上げ、ポーズを決めるヒーロー、ロビン。更にそんな彼の隣に、もう1つの影が颯爽と現れる。

白いコートを纏う、オッドアイの青年。

 

「人の心に澱む影を照らす眩き光、人は俺を、ナンバーズハンターと呼ぶ……」

 

「カイト先輩!」

 

「先走るなと言った筈だぞ、ロビン」

 

その青年の登場に、ロビンがパッと顔を輝かせ、カイトと呼ばれた彼はそんなロビンをいさめる。

 

「来てくれたのね、ナンバーズハンター!」

 

「ぐっ、ぬぬぬぬ……またしても貴様等かナンバーズハンター!何時も何時も邪魔しに来おってぇぇ……!さなぎたんは俺が作ったラヴソングを歌うんダァーッ!」

 

正義のヒーロー、ナンバーズハンターの登場に、さなぎと呼ばれる司会のお姉さ、少女が笑みを見せ、ギラグが表情を歪ませ叫び声を上げる。

 

「そんな事させるもんか!」

 

「今日こそ狩らせてもらおう、貴様等、七皇の『No.』、その魂ごと!」

 

「返り撃ちにしてやるよぉ、天城カイトォ!『銀河眼の光子竜』を失ったテメェなんざ怖くねぇ!」

 

「懺悔の用意は出来ているか?」

 

目の前で行われるヒーローショー顔負けの超展開、訳も分からない状況を見て遊矢は唖然としながら声を絞り出す。

 

「なぁにこれぇ」

 

当然の感想だった。




エクシーズ次元?誰それ、俺特撮次元ん!

くぅ~(以下略)
取り敢えずこれにてシンクロ次元終了です。消化不良な所もありますが、エクシーズ次元編でその後シンクロ次元はどうなったの?的な話もすると思うので気長に待ってください。

この先は私的な総まとめです。
当初の予定ではジャックのスポットライトが多くなるかな、と思ってたんですが彼よりも遊矢君やユーゴが活躍したなと思います。

後はシンジですね。この作品ではシンクロ次元再興するにあたって彼とロジェの力は必要不可欠です。ジャックやクロウと言った過去キャラに思い入れはありますが、ARCーVだからARCーVのキャラを中心に回したいなって。

大まかなストーリーとしては自分は書きたいラストを想定して間に中ボス役を添えながらその後の肉付けをしています。他の人もこんな感じなのだろうか。

取り敢えずこの章のラスボスとしてはなんちゃって5D'sのネオ5D's達。中ボスはセルゲイとかシンジとかバレットとかですね。
シティを纏める為に遊矢達が奔走し、ラストの白コナミの決戦でシティが纏まり、それが遊矢の力となるみたいな。

まるでかつての主人公が立ち塞がるように敵となったスターダスト。
白コナミのアーククレイドル私物化(ZONE激おこ案件)。
遊矢とユーゴの融合(激ウマギャグ)。
シティ中に広がるシンクロ召喚、乱入ペナルティ等の有効活用。
今こそ1つになったエースの攻撃で決着。

みたいな事を書きたいが為でした。後はフィーリングよフィーリング。
コナミはボコボコにして暫く退場させとこう。
白コナミはラスボスとか言う大役やったからもっとボコボコにしとこう。
零羅はすまねぇ!的な。

反省点はあほみたいなあるけどな!ガハハ!

プレイングミスやルールミス、テキスト間違いはヤバかったですね。これについては本当に申し訳ありません。多分これからもすると思います。

ストーリー面では描写不足が目立ったと思います。デュエルばっかりが中心になってしまった……。その癖零羅とかにスポットを当てられなかったと言う……彼?については原作通り頑張ったと補完してください。

デュエル描写も似たような文章になってしまってたと思います。ターンを跨いだキャラクター同士の掛け合いも少なかったなと。小説なのにね。

何より中々話が進まない、終わらないのは読んでいて苦痛だったかなと思います。申し訳ございません。

次回以降直すとは言えませんが少しずつ改善したいと思います。

没になった話もそこそこありました。
遊矢&リンvsアキ&ブレイブとか、ユーリvsアビドスとか、コナミvs藍神とか。犠牲になったのだ……。コナミvsチラムサバクはちょっと書きたかったな。

プラシドの中身については今まで彼については瞳の色等に関して描写してなかったりコナミが◯◯がいた発言とかでそれなりに匂わせてはいました(次の瞬間いなくなっているのはワープ剣を使えるから)。
色々ネタバレになるので質問されたとしてもああ!としか応えられません。

色々頑張った遊矢君にはご褒美を、サボってたコナミ君はリザルトを奪われました。お前がパワーアップするのか……。

長くなりましたが次回からはエクシーズ次元。遊矢君はすっかり成長したので前半は前作主人公のように先輩っぷりを見せてくれるでしょう。コナミは知らん。
ユートやナンバーズハンター達がアカデミアとバリアン達とバチバチする予定です。息がつまるので日常回も書きたいなと思ったり。

ではここまで読んでくださった読者の方々、感想、お気に入り、評価を下さった皆様に感謝を。
ありがとうございました。




次回予告

七皇のドラゴン使い、ミザエル。俺とカイト先輩は奴に挑み、俺が足を引っ張ってしまったせいで敗北。カイト先輩のエースカード、『銀河眼の光子竜』が奪われてしまった!
カイト先輩は気にするなと励ましてくれるがそうはいかない。そんな中、バリアン七皇、ギラグが襲来!俺とカイト先輩は迎撃に出動するが、その場には怪しい奴もいて……?

アカデミアが使うペンデュラムを操る少年、榊 遊矢!きっと融合次元の手先に違いない!

次回、ナンバーズハンター ロビン

第39話 敵か味方か、エンタメデュエリスト、榊 遊矢!

次回も俺と、ナンバーズハント!

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