遊矢は駆ける。治安維持局のビルの中を、いてもたってもいられずDーホイールのまま突入し、猛スピードで走り抜ける。
全ての闘いに決着をつけ、漸く彼女に会えるから。誰よりも何よりも守りたかった大切な人を求めて。
失うまで自分がこんなにも彼女の事を想っていただなんて思わなかった。ただ昔から一緒にいた幼馴染みで、気の置けない友人の1人だと思っていた。
それが決定的に変わったのはスタンダード次元、舞網チャンピオンシップで彼女を失った時。大きな喪失感が胸を襲い、モヤモヤとした気持ちが生まれた。
その想いの正体が分かったのは何時だろう、間違いなくあの時。
ユーゴとデュエルした時、彼とリンの想いに触れた時だ。
彼の男らしい真っ直ぐな想いを見て、自分もそうなのだと確信した。
だから――伝えよう、彼女と会った時、ユーゴのようにじゃなく、自分らしく。
もう2度と彼女を手放さないように。
そうして彼は、如何にも厳重な扉に辿り着く。
「遊矢!」
その前にいたのは権現坂、素良、セレナ、アリト、ユート、リン、瑠璃、万丈目、ジルの姿。どうやら近くにいたのが彼等だったらしい。
遊矢は何やら扉前のセキュリティと悪戦苦闘する素良と視線を交わす。
「遊矢……僕は……」
「お前は後!」
「ええ……?で、でも取り敢えずこのセキュリティを何とかしないと……」
「んなもん……知ぃるぅかぁぁぁぁぁっ!!」
「うっそぉぉぉぉぉっ!?」
ドガァッ、素良の注意を聞き流し、その場でDーホイールのアクセル全開、猛スピードで加速し、無理矢理に扉をぶち破る。
何故敵の出したルールに乗らねばならんのだと言わんばかりの強行突破。今の遊矢を止められる者は何もない。
ドン引きする一堂の中で、権現坂と素良、リンの3人が何かを察して表情を浮かべる。
「全く……漸くか、やきもきさせられる」
そんな権現坂の呟きに、素良がクスリと笑みを溢して頷く中で――遊矢は視線の先で、ずっと求めていた少女の姿を見つけ、輝くような笑みとなる。
「柚子ぅぅぅぅぅっ!!」
「遊矢っ!」
この想いを、届かせる。
――――――
「オレのターン、ドロー!」
シンクロ次元、シティの湾岸エリアにて。コナミと白コナミ、記録に残さぬライディングデュエルが今、佳境を迎えていた。
現在優勢なのは――白コナミ。彼のフィールドには最強のシンクロモンスター、『シューティング・クェーサー・ドラゴン』が堂々たる存在感を放っている。
この光を纏う純白の竜は本来リミットオーバーアクセルシンクロモンスターと言うシンクロの頂点に座すカードであるが、今は1つ下のデルタアクセルシンクロモンスターへスペックダウンしている。
にも関わらず、その力は未だ強大にして絶大。
それに加え、このモンスターを操る白コナミも最速のDーホイーラーに相応しい力を有している。
成長し、進化したコナミのデュエルにも互角以上に渡り合っているのだ。規格外の一言に尽きる。
対するコナミのモンスターは0。先のターン、『閃光竜スターダスト』を残す事も出来たのだが、その手を取れば敗北が確実になってしまう事が原因だ。
だが、コナミの手はまだ残っている。
「スタンバイフェイズ、1ターン前に墓地に送られた『アークブレイブドラゴン』の効果発動。このカード以外のレベル7か8のドラゴン族モンスター1体を特殊召喚する。来い、『閃光竜スターダスト』!」
閃光竜スターダスト 攻撃力2500
「『パワー・ウォール』の時か」
コナミの背後にペンデュラムが出現し、1度揺れ動いた後、ペンデュラムの水晶から『スターダスト』が復活する。
時間を飛び越える振り子の軌跡。これがコナミの得たペンデュラムならざるアークだ。
「魔法カード、『アドバンスドロー』!『スターダスト』をリリースし、2枚ドロー!」
コナミ 手札0→2
「墓地の『シャッフル・リボーン』を除外し、セットカードをデッキに戻してドロー!」
コナミ 手札2→3
「今度は手札からだ。魔法カード、『シャッフル・リボーン』!墓地の『アクセル・シンクロン』を効果を無効にして特殊召喚!」
アクセル・シンクロン 守備力2100
「魔法カード、『アームズ・ホール』。デッキトップを墓地に送り、墓地から装備魔法である『妖刀竹光』を回収。『アクセル・シンクロン』に装備し、魔法カード、『黄金色の竹光』を発動!2枚のカードをドロー!もう1枚だ!2枚ドロー!」
コナミ 手札0→2→3
次々と手を繰り出すコナミ。白コナミとしては『シューティング・クェーサー・ドラゴン』の効果で無効にしたいが、それにチェーンされて『迷い風』を発動されては目も当てられない。『迷い風』が白コナミを牽制している。
「魔法カード、『復活の福音』!墓地のレベル7か8のドラゴン族モンスターを特殊召喚する。来い、『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』!」
オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン 攻撃力2500
これでコナミのフィールドにもシンクロモンスターとシンクロチューナーが揃った。アクセルシンクロモンスターを出し、白コナミの『シューティング・クェーサー・ドラゴン』に対抗するつもりか。
しかしスペックダウンしているとは言え、それでもデルタアクセルシンクロモンスターであるこのモンスター相手に、アクセルシンクロモンスター程度で勝てるのか。
それにコナミが持つアクセルシンクロモンスターは『真閃光竜スターダスト・クロニクル』のみ。例えこのカードがエクストラデッキあっても、『迷い風』があっても勝てはしない。
そう、ただのアクセルシンクロモンスターならば。
「速攻魔法、『リミットオーバー・ドライブ』を発動!」
ならば『シューティング・クェーサー・ドラゴン』と同格のアクセルシンクロモンスターならば話はどうか。
「オレはフィールド上に存在するシンクロモンスターとシンクロチューナーをエクストラデッキに戻し、その2体の合計レベルとなるシンクロモンスターを、召喚条件を無視してエクストラデッキから特殊召喚する!」
「『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』のレベルは7、『アクセル・シンクロン』のレベルは5……合計レベル……12!俺の『シューティング・クェーサー・ドラゴン』と同等のシンクロモンスターだと!?」
コナミの持っているアクセルシンクロモンスターは『真閃光竜スターダスト・クロニクル』のみ。この事実に嘘偽りはない。が、それ以上のシンクロモンスターを持っていないと言う事実はない。
「さぁ、行くぞ……貴様のいる領域まで、オレは加速する!」
コナミは進化した。白コナミのいる世界まで、辿り着く程に。その為の切符は既に手の中にある。
ニヤリと不敵な笑みを浮かべる彼に対し、白コナミはギリッと音が響く程に強く歯軋りを鳴らす。シンクロだけは、この男に負ける訳にはいかないと言うのに、この男は――。
「貴様ぁっ……!」
「レベル7の『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』に、レベル5の『アクセル・シンクロン』をチューニング!古の天空を彩る星々よ!神雨となりて世界を祓え!アクセルシンクローッ!!」
白コナミ同様、コナミの身体に赤いオーラが纏われ、加速、加速、加速。音をも越えて、光の速度で白コナミの背を追い抜き、次元の扉を破る。
「超来迎!『聖光神竜スターダスト・シフル』!」
聖光神竜スターダスト・シフル 攻撃力4000
そして、黄金の光が白コナミの背後で輝き、神なる竜と共にコナミが帰還する。
『閃光竜スターダスト』の面影が残る、白金の鱗に、背から広がる花弁のような大輪の翼。『シューティング・クェーサー・ドラゴン』と同等の巨躯と力を誇る、もう1の最強の名に相応しいシンクロモンスターが、空高く飛翔する。
「『聖光神竜スターダスト・シフル』……だと……!?本当に――手にしたと言うのか、限界を越えたシンクロを!?」
「そうだ!これがオレのリミットオーバー!今オレが誇る、最強のモンスター!」
レベル12、攻守4000。『シューティング・クェーサー・ドラゴン』と同じ、圧倒的なステータスのモンスター。このモンスターと共に、コナミは白コナミを倒し、更なる高みへ行く。
「『妖刀竹光』の効果で、『黄金色の竹光』をサーチ!バトル!『聖光神竜スターダスト・シフル』で『シューティング・クェーサー・ドラゴン』に攻撃!超新星撃!!」
「相撃ちか……良いだろう、迎え撃て!『シューティング・クェーサー・ドラゴン』!天地創造撃ザ・クリエーションバーストッ!!」
互いの最強モンスターが黄金の光の線となって螺旋状に空へ旋回。上空で熱き火花を散らして閃光が爆発する。
鳴り響く轟音。まるで神話の激闘だ。神の力を宿すモンスター同士の対決は正に凄まじいの一言に尽きる。
2体のモンスターに呼応するかのようちコナミと白コナミのDーホイールも加速、激突を繰り広げ、デッドヒートする。
加速、加速、加速。ぶつかる度に2人は進化を繰り返していく。
そして――シティの上空で『聖光神竜スターダスト・シフル』が煌めく星の如く激しく発光、背中の翼から無数の光を放って束ね、『シューティング・クェーサー・ドラゴン』へ。
『シューティング・クェーサー・ドラゴン』は右の掌から眩い光線を解き放ち、互いを攻撃。
光は中央で爆発し、それを合図に2体の竜が互いに向かって突撃する。攻撃力は同じ、ならば結果は相討ちになるのが常だ。だが。
「『聖光神竜スターダスト・シフル』が存在する限り、オレのフィールドのカードには、1ターンに1度の戦闘、効果耐性が与えられる!波動聖句!」
「何だとぉっ!?」
今、コナミのフィールドに存在するカード全てには耐性が与えられている。そう、全てだ。
『聖光神竜スターダスト・シフル』だけでない。全てのカードに耐性が与えられている。とんでもない効果、これこそがリミットオーバーの力。
しかも――この効果は永続効果。『シューティング・クェーサー・ドラゴン』では無効に出来ない。
つまりこのモンスターは『シューティング・クェーサー・ドラゴン』と同じリミットオーバーでありながら、『シューティング・クェーサー・ドラゴン』の天敵であると言う事だ。
それによって『聖光神竜スターダスト・シフル』が競り勝ち、撃ち貫く。
「くっ、『補給部隊』の効果と『シューティング・クェーサー・ドラゴン』の効果発動!」
「させん!シフルの効果発動!1ターンに1度、相手が発動したモンスター効果を無効にして相手フィールドのカード1枚を破壊する!『補給部隊』を破壊!光波動反撃!」
「ッ、後続も出せんか……!」
正しく天敵。『シューティング・クェーサー・ドラゴン』が手も足も出せずに崩れ落ちる。
「言った筈だ。お前を倒すと。その為の力は身につけたつもりだ!」
「口先だけではないと言う事か。俺もお前を侮っていたようだな」
2回の闘いを経て、2回の勝利を得て、自然と白コナミはコナミを格下と見て、心のどこかで侮っていたのかもしれない。
この『シューティング・クェーサー・ドラゴン』がいれば問題ないと、所詮2回目の闘いで見せた奮戦は散り際の輝きだったのだろうと頭の片隅に忘れて。
実際、コナミがあの時のままなら実力差は開き、そうなっていただろう。しかし、そうはならなかった。
カードだけではない、コナミ自身もカードを使いこなせる程の実力を持っている。
僅かな油断と慢心が、この結果を生んだ。針の穴にも満たない隙を、コナミが突いたのだとしても――デュエリストとして、恥ずべき事だ。
少なくとも白コナミはそう思ったのか、表情に苛立ちを浮かべ――直ぐ様呼吸を整え、冷静に努める。ここで冷静さを欠いてはそれこそコナミの思うつぼ。またしても恥を晒す所だった。この失態を挽回すべく、新たに現れた脅威、『聖光神竜スターダスト・シフル』を睨み付ける。
「カードを1枚セット、ターンエンドだ」
コナミ LP300
フィールド『聖光神竜スターダスト・シフル』
セット2
手札1
「俺のターン、ドロー!調子に乗っていたのは俺の方か、榊 遊矢と貴様が教えてくれた。今度は俺が挑ませてもらう番だ!永続罠、『輪廻独断』を発動!俺の墓地のモンスターをドラゴン族に変更!」
「ドラゴン族……まさか……!?」
発動されたのは自信の墓地に存在するモンスターを宣言した種族に変更する強力なカード。このカードを使えば種族指定の蘇生カードも『死者蘇生』に変わると言うものだ。
尤も、このカードの使い方はそれだけでは留まらない。このカードがあれば白コナミのデッキでは出来ない芸当も出来るようになる。
「そのまさかだ!罠発動、『集いし願い』!!」
それがこの、『シューティング・クェーサー・ドラゴン』をも超える最強のシンクロモンスターを生み出す、白コナミの真の切り札。
「自分の墓地に存在するドラゴン族シンクロモンスターが5種類以上の場合、エクストラデッキより『スターダスト・ドラゴン』をシンクロ召喚扱いとして呼び出す!飛翔せよ、『スターダスト・ドラゴン』!!」
スターダスト・ドラゴン 攻撃力2500
煌めく星屑をフィールド上に降り注がせ、地上に立つは純白の双翼を広げる天使のような竜。白コナミが最も信頼するエースカードだ。
赤き竜の系譜であるモンスターとは言え、アクセルシンクロでもない、ただのシンクロであるこのカードで、リミットオーバーに比肩する『聖光神竜スターダスト・シフル』に敵う筈がないのだが――。
「そして『集いし願い』を『スターダスト・ドラゴン』に装備、装備モンスターの攻撃力を墓地のドラゴン族シンクロモンスターの攻撃力分アップする!」
スターダスト・ドラゴン 攻撃力2500→12600
絆が、『スターダスト・ドラゴン』を強くする。その攻撃力、12600。『迷い風』で半減したとしても11350。『聖光神竜スターダスト・シフル』を軽く越え、まるで蟻のように扱う所業が炸裂する。
「そのモンスターが『シューティング・クェーサー・ドラゴン』の天敵である事は認めるが……これは防げるかな?」
ニヤリ、白コナミがコナミに見えるように並走し、挑発的な笑みを浮かべる。今度はこちらがやってやる番だと言わんばかりの表情だ。
しかし追い込んだと思えば相変わらずとんでもない事をやってくれる。ギリギリの攻防の中で、この男も進化していると言う事か。厄介極まりない。
「バトル!『スターダスト・ドラゴン』で『聖光神竜スターダスト・シフル』へ攻撃!シューティング・スパイラル・ソニック!」
『スターダスト・ドラゴン』がアギトに大気を集束し、一気に解き放ち、シフルに攻撃を仕掛ける。星屑纏う風のブレス。螺旋状に渦巻き、最強のシンクロモンスターに迫り来る。
『ガード・ブロック』のようなカードで防いだとしても『集いし願い』には連続攻撃効果がある。コナミの墓地に『仁王立ち』や『光の護封霊剣』がある場合もシフルが持つ耐性が逆にコナミの足を引っ張っている。このままではサンドバッグ状態だ。
「罠発動、『攻撃の無敵化』!戦闘ダメージを0に!」
だから、断腸の思いでシフルを手放す。やっとの想いで手に入れ、呼び出したカードを犠牲にするプレイング。だがこれもまた、デュエリストとして必要な事だ。
「『集いし願い』の効果で『ジャンク・ガードナー』を除外し、再攻撃!」
スターダスト・ドラゴン 攻撃力12600→11200
「カードをセット、ターンエンドだ」
白コナミ LP50
フィールド『スターダスト・ドラゴン』(攻撃表示)
『集いし願い』『輪廻独断』セット2
手札1
「オレのターン、ドロー!カードをセット、墓地の『シャッフル・リボーン』を除外し、セットカードをデッキに戻してドロー!」
コナミ 手札2→3
「魔法カード、『貪欲な壺』!墓地のモンスター5体をデッキに戻し、2枚ドロー!」
コナミ 手札2→4
「魔法カード、『地割れ』!」
「チ、『スターダスト・ドラゴン』をリリースし、破壊効果を無効にし、破壊!更に永続罠、『星屑の願い』を発動!自信の効果でリリースされた『スターダスト』シンクロモンスターを蘇生する!」
スターダスト・ドラゴン 攻撃力2500
「墓地の『聖光神竜スターダスト・シフル』を除外し、効果発動!墓地のレベル8以下の『スターダスト』モンスターを特殊召喚する!来い、『閃光竜スターダスト』!」
閃光竜スターダスト 攻撃力2500
コナミも星屑纏う閃光の決闘竜を帰還させ、互いのフィールドにて2体の『スターダスト』が向かい合い、咆哮する。
攻撃力は同じ、しかし『閃光竜スターダスト』には1ターンに1度、フィールドのカードに破壊耐性を与える効果がある。
『スターダスト・ドラゴン』は無効にした上で破壊し、自身をエスケープさせる効果を持つが、汎用性で言えば『閃光竜スターダスト』の方が高い。『スターダスト』同士のミラーマッチになれば、コナミが押し勝つ。
「『スターダスト』に耐性を与え、バトル!『閃光竜スターダスト』で『スターダスト・ドラゴン』へ攻撃!罠発動、『迷い風』!」
「カウンター罠、『トラップ・ジャマー』!その効果を無効にし、破壊!」
「なら正面突破か、流星閃撃!」
「迎え撃て!シューティング・ソニック!」
先程の『聖光神竜スターダスト・シフル』と『シューティング・クェーサー・ドラゴン』の対決のように、互いの『スターダスト』が天高く飛翔し、ドッグファイトを繰り広げる。
空中でぶつかる度に火花を散らし、羽ばたきから散布される星屑が光線へと変化、撃ち出される閃光の弾丸に対し、今度はもう1体の『スターダスト』が翼を折り畳み、まるで繭のように自身を覆う盾として防ぐ。着弾し、大爆発が巻き起こり、黒煙が空を染める。
やったか、そう思ったか時、スモークを切り裂いて『スターダスト』が現れ突撃、もう1体を勢いのまま押し出し、共にシティの海面に沈む。
飛び散る水飛沫は煌々と星屑を纏って、コナミと白コナミに降り注ぎ、水に濡れた道路をスリップしないよう、しかし減速せずに走り抜け、コーナーを曲がった所で揺らめく水面の奥より光の柱が出現、中より腕を掴みアウトドア2体の白竜が現れる。
そして2体は口内に溜め込んだブレスを至近距離で同時発射、またも激しい大爆発が発生する。そして黒雲から、2体の『スターダスト』が弾き出されるような形で吹き飛ぶ。
「何……?『スターダスト・ドラゴン』まで破壊されないだと……!?」
そう、2体の『スターダスト・ドラゴン』が、だ。多少の傷はあれども、戦闘耐性を持たない筈の『スターダスト・ドラゴン』が無事な事実にコナミが確かな驚愕を見せる。これは一体、どう言う事か、隣で並走する白コナミを睨む。
「良い反応だ。そろそろネタばらしとするか。『星屑の願い』によって復活した『スターダスト・ドラゴン』は攻撃表示の場合、戦闘で破壊されなくなる!」
「成程、な。これで『閃光竜スターダスト』に比肩する耐性を得たと言う訳か」
効果破壊は自身で防ぎ、『星屑の願い』の効果で耐性を得て復活。結果的に『閃光竜スターダスト』を超える耐性を備えたと言う訳だ。
「カードを1枚セット、ターンエンド。『シャッフル・リボーン』の効果で手札を除外」
コナミ LP300
フィールド『閃光竜スターダスト』(攻撃表示)
セット1
手札1
「俺のターン、ドロー!魔法カード、『マジック・プランター』!『輪廻独断』をコストに2枚ドロー!」
白コナミ 手札1→3
「魔法カード、『暗黒界の取引』を発動。『シンクロン・エクスプローラー』を召喚!」
シンクロン・エクスプローラー 攻撃力0
「効果で『フォーミュラ・シンクロン』を蘇生!」
フォーミュラ・シンクロン 攻撃力200
強固な耐性を持っていても、このままでは『閃光竜スターダスト』を倒せず膠着状態が続くのみ。そう判断した白コナミは攻め手に出る。彼のDーホイールに並ぶように駆けつけたのはシンクロチューナー、『フォーミュラ・シンクロン』。
「墓地の『シャッフル・リボーン』を除外し、『シンクロン・エクスプローラー』を戻してドロー!」
白コナミ 手札1→2
「レベル8の『スターダスト・ドラゴン』に、レベル2の『フォーミュラ・シンクロン』をチューニング!アクセルシンクロ!『シューティング・スター・ドラゴン』!!」
シューティング・スター・ドラゴン 攻撃力3300
ドシュウッ、猛スピードで消え去り、白コナミがコナミの背後より『シューティング・スター・ドラゴン』を引き連れて現れる。
これは――かなり不味い展開だ。この男の手にかかれば、このカードはデルタアクセルシンクロした『シューティング・クェーサー・ドラゴン』よりも攻撃的なモンスターへ生まれ変わる。
「『シューティング・スター・ドラゴン』の効果発動!1枚目、チューナーモンスター、『ジャンク・シンクロン』!2枚目、チューナーモンスター、『灰流うらら』!3枚目、チューナーモンスター、『幽鬼うさぎ』!4枚目、チューナーモンスター、『ドリル・シンクロン』!5枚目、チューナーモンスター、『チューニングガム』!当然全てチューナー、5回の連続攻撃を得る!」
「もう慣れたな……」
「バトル!『シューティング・スター・ドラゴン』で『閃光竜スターダスト』へ攻撃!」
「罠発動、『パワー・ウォール』!カードを2枚墓地に送り、ダメージを0に!」
『シューティング・スター・ドラゴン』が5体に別れ、次々と流星群の如く降り注ぎ、『閃光竜スターダスト』を撃ち抜き破壊する。
本当ならば効果で破壊は逃れたかったが、まだ『シューティング・スター・ドラゴン』の攻撃は残っている。『スターダスト』の攻撃を防ぐと言う事は、サンドバッグにするも同然、そうなれば『スターダスト』どころかコナミまで倒されてしまう。そうなる事だけは避けなければならない。
「ダイレクトアタック!」
「墓地の『光の護封霊剣』を除外し、ダイレクトアタックを封じる!」
「カードを2枚セット、ターンエンドだ」
白コナミ LP50
フィールド『シューティング・スター・ドラゴン』(攻撃表示)
『星屑の願い』セット2
手札0
「オレのターン、ドロー!魔法カード、『強欲で貪欲な壺』!」
コナミ 手札1→3
「魔法カード、『復活の福音』!来い、『閃光竜スターダスト』!」
閃光竜スターダスト 攻撃力2500
「またそのモンスターか……」
「お前程じゃないさ。魔法カード、『アームズ・ホール』!デッキトップをコストに『妖刀竹光』を回収、『妖刀竹光』を『スターダスト』に装備し、『黄金色の竹光』を発動!2枚ドロー!」
コナミ 手札0→2
「『スターダスト』の効果で自身に耐性を与え、バトル!『スターダスト』で『シューティング・スター・ドラゴン』へ攻撃!」
「『シューティング・スター・ドラゴン』の効果発動!」
「墓地の『ブレイクスルー・スキル』を除外し、効果を無効。更に『スキル・サクセサー』を除外し、『スターダスト』の攻撃力を800アップ!流星突撃!」
閃光竜スターダスト 攻撃力2500→3300
今度はこちらの番だ。先程のターンに破壊された『スターダスト』がそう言わんばかりに四肢に力を滾らせ、閃光を纏い『シューティング・スター・ドラゴン』目掛けて突撃、胸部を貫き破壊する。
「罠発動、『スクランブル・エッグ』!俺のフィールドのモンスターが戦闘、効果で破壊された場合、手札、デッキ、墓地から『ロード・ランナー』を特殊召喚する!」
ロード・ランナー 守備力300
『シューティング・スター・ドラゴン』の破壊と同時に白コナミのフィールドに卵が出現。殻を破ってピンク色のミチバシリと言う鳥が飛び出す。
攻守は低いものの、高い攻撃力を持ったモンスターとの戦闘では破壊されない壁モンスターだ。立ち位置としては遊矢の『EMディスカバー・ヒッポ』に似ている。白コナミのマスコットモンスターと言う訳だ。
実用性は余りないが――彼の手にかかれば一線級になりうる。
「魔法カード、『アドバンスドロー』!『スターダスト』をリリースし、2枚ドロー!」
コナミ 手札1→3
「『妖刀竹光』の効果で『魂を吸う竹光』をサーチ。魔法カード、『グリード・グラード』!2枚ドロー!」
コナミ 手札3→5
「そして魔法カード、『手札抹殺』!手札を全て捨て、その分ドロー!これで新たに4枚のカードを手に入れた。魔法カード、『ギャラクシー・サイクロン』!セットカードを破壊!」
「セットカードは『リミッター・ブレイク』!墓地に送られた事でデッキの『スピード・ウォリアー』をリクルート!」
スピード・ウォリアー 守備力400
今度は古びた白い装甲を身につけた戦士が駆けつける。低レベルの戦士族モンスター、余り強いとは言えないが、白コナミが長い間愛用しているモンスターだ。
「カードを1枚セット、ターンエンド!」
コナミ LP300
フィールド
セット1
手札2
「俺のターン、ドロー!魔法カード、『強欲で金満な壺』!2枚ドロー!」
白コナミ 手札0→2
「魔法カード、『調律』!デッキから『ジャンク・シンクロン』をサーチしデッキトップを墓地へ送る。そして『ジャンク・シンクロン』を召喚!」
ジャンク・シンクロン 攻撃力1300
「召喚時、墓地の『ソニック・ウォリアー』を特殊召喚!」
ソニック・ウォリアー 守備力0
次々と低レベルモンスターが集まり、新たに現れたのは深い緑の装甲を持つ機械戦士。展開されていくモンスターが並ぶ光景を見て、コナミが何かに気づく。
「!これは……」
「そしてフィールドにチューナーが存在する事で、墓地の『ボルト・ヘッジホッグ』を特殊召喚する!」
ボルト・ヘッジホッグ 守備力800
最後に針ネズミのように、背中にボルトを突き刺したネズミのモンスター。並ぶ5体に対し、ゴクリとコナミが喉を鳴らす。
それはかつて街を救い、未来を導いた英雄をずっと支えて来た仲間達。
苦しい時も、楽しい時も、多くの激闘を誰よりも傍で共にして来た 歴戦の勇士達。
そして――コナミと白コナミ、最初の闘いで、最後に呼び出されたモンスター達の姿。あの時の再来、だとすれば、これから起こるのは。
「レベル2の『ソニック・ウォリアー』に、レベル3の『ジャンク・シンクロン』をチューニング!」
あの時、決着がつかなかったデュエルの続き。すなわち、コナミの敗北なのではないか。
「集いし星が新たな力を呼び起こす。光差す道となれ!シンクロ召喚!」
『スターダスト・ドラゴン』はエースカード。『シューティング・クェーサー・ドラゴン』は切り札。『集いし願い』は奥の手。
だとすればこのカードは何か。特別な力も、古くから続く伝承も存在しない、本当にどこにでもある、普通のカード。普通のシンクロモンスター。
だが、デュエルを終わらせるに相応しいモンスター、白コナミの、英雄のフェイバリットカード。
「出でよ、『ジャンク・ウォリアー』!!」
ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300
青き装甲に真っ赤な眼、首につけた白のマフラーが風に舞い、拳のナックルダスターを陽光に反射させる機械戦士。
立ち塞がる最後の壁、『ジャンク・ウォリアー』だ。
「来たか……!」
「『ジャンク・ウォリアー』のシンクロ召喚時、このカードの攻撃力を俺のフィールドに存在するレベル2以下のモンスターの攻撃力の合計分アップする!そしてこの効果にチェーンにし、墓地に送られた『ソニック・ウォリアー』の効果発動!レベル2以下のモンスターの攻撃力を500アップ!」
スピード・ウォリアー 攻撃力900→1400
ボルト・ヘッジホッグ 攻撃力800→1300
ロードランナー 攻撃力300→800
「逆順処理だ。チェーンは戻り、『ジャンク・ウォリアー』の攻撃力がアップする!パワー・オブ・フェローズ!」
ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→5800
小さき者達の力が『ジャンク・ウォリアー』を強化し、攻撃力を爆発的に上げる。攻撃力5800。
『集いし願い』を装備した『スターダスト・ドラゴン』には劣るものの、今のコナミには脅威的な数値、ゲームエンドに持っていける攻撃力だ。
「バトル!『ジャンク・ウォリアー』でダイレクトアタック!貴様のLPをジャンクパイル送りにしてやる!スクラップ・フィストォッ!!」
グン、強大な力を得た『ジャンク・ウォリアー』の右腕が膨れ上がって巨大化し、コナミに向かって迫り来る。あの時のデュエルの続き、コナミの敗北が今、再び――。
「罠発動、『攻撃の無敵化』!ダメージを0にする!」
再現させる事は、コナミが許さない。2度ある事は3度ある。そんなものは完全否定しよう。クソ食らえだと、唾を吐きかけて。
勝つのだ。今度こそ、この男に今勝つ。
「フ、そうでなくては……!カードをセット、ターンエンドだ!」
白コナミ LP50
フィールド『ジャンク・ウォリアー』(攻撃表示)『スピード・ウォリアー』(守備表示)『ボルト・ヘッジホッグ』(守備表示)『ロードランナー』(守備表示)
『星屑の願い』セット1
手札0
見事あの時の続きを超え、その先へと漕ぎ着けたコナミ。あの時からの成長を感じさせるプレイング。ここから先は正しく未知の領域だ。
「オレは……未来に突き進む!」
だが、怯えはない。そこにあるのは遥か高みへ挑戦する向上心のみ。立ち塞がる未来を今乗り越える。
その為にデッキトップに指先を添え、一気に引き抜き――天空に、虹色のアークを描き出す。
「オレのターン、ドローッ!」
ディステニードローが、炸裂する。
「魔法カード、『ブラック・ホール』!」
「させん!カウンター罠、『魔宮の賄賂』!その発動を無効にし、破壊。その後相手は1枚ドローする」
コナミ 手札2→3
「『ADチェンジャー』を召喚!」
ADチェンジャー 攻撃力100
フィールドに現れたのは黒と赤の旗を持った応援団長風のモンスター。このカードから勝利へ繋げていく。
「墓地の『ジェット・ウォリアー』の効果発動!オレのフィールドのレベル2以下のモンスター、『ADチェンジャー』をリリースする事で、このカードを守備表示で特殊召喚する!」
ジェット・ウォリアー 守備力1200
ズドン、遥か上空から黒き戦闘機人が推参し、重厚なボディを陽光に反射させる。
見据える敵は『ジャンク・ウォリアー』。どちらも良く似た姿をしているから来る対抗心からか、眼光を鋭くする。
特別でも何でもない、ただ普通のシンクロモンスター。何の変哲もないこの2体が、このデュエルにピリオドを打つ。
「墓地の『ADチェンジャー』を除外し、フィールドのモンスター1体の表示形式を変更する。『ジェット・ウォリアー』を攻撃表示に!」
『ジェット・ウォリアー』スタンドアップ。しかし当然攻撃力は『ジャンク・ウォリアー』に比べては低く、半分にも満たない。
これでは倍なっても届かないだろう。が、手はある。
「バトル!『ジェット・ウォリアー』で『ジャンク・ウォリアー』へ攻撃!」
「仕掛けて来たか……迎え撃つ!『ジャンク・ウォリアー』!スクラップ・フィストォッ!!」
「墓地の『タスケルトン』を除外し、この攻撃を無効、そして速攻魔法、『ダブル・アップ・チャンス』!攻撃が無効になった場合、その攻撃モンスターの攻撃力を倍にし、再攻撃を可能とする!」
ジェット・ウォリアー 攻撃力2100→4200
これで攻撃力は倍。しかし依然差は開いている。それでも『ダブル・アップ・チャンス』を発動したのだ。何かがあると白コナミが様子を窺う中、コナミが再度、打って出る。
恐らく次がコナミのラストプレイング。このターンで決めねば、コナミに明日はない。
「『ジェット・ウォリアー』で、『ジャンク・ウォリアー』へ再攻撃!」
今、運命の時が迫る。互いに飛翔、天空でぶつかり合う『ジェット・ウォリアー』と『ジャンク・ウォリアー』、2体の機械戦士。
2体は己の拳をぶつけ、回し蹴りを交差させ、互いの武器をぶつけ合う。そして『ジャンク・ウォリアー』が『ジェット・ウォリアー』を弾き飛ばし、墜落する姿に巨大化して拳を振り抜こうとした、その時。
「手札の『ラッシュ・ウォリアー』の効果発動!」
「何……!?」
クルリ、『ジェット・ウォリアー』がその場で一回転し、背のジェットエンジンから火炎を噴射、『ジャンク・ウォリアー』に向かって空を駆ける。
発動された最後のカード、それは白コナミも知っているモンスターだ。当然その効果は。
「オレのシンクロ『ウォリアー』モンスターが相手モンスターと戦闘を行う、ダメージ計算時、このカードを手札から墓地に送り、その戦闘を行うオレのモンスターの攻撃力を倍にする!」
逆転へと繋がる一手。
ジェット・ウォリアー 攻撃力4200→8400
『ジャンク・ウォリアー』の拳に対抗するかのように『ジェット・ウォリアー』の拳も巨大化。見る見る内に膨れ上がり――今『ジャンク・ウォリアー』の拳をも超え、殴り砕く。
「馬鹿、な……!」
「この程度の攻撃力、オレ達の間では些細なものだろう?」
それはかつて白コナミがコナミに向かって言った台詞。それを皮肉のように、彼に返す。
「小さき者に、敗れ去れ」
特別でないカード達が、特別な彼等の激闘に、決着をつける。さぁ、高らかに叫べ、特別ではないこのカードに送るべき、特別な必殺の名を。
「ジェット……フィストォッ!!」
白コナミ LP50→0
魂を乗せた鉄拳が、因縁を断ち切り白コナミのLPを削り取る。
コナミVS白コナミ、長きに渡る対決、勝者は――今、スモークを上げる白コナミのDーホイールを見据え、停止して降り立ち、歩み寄る。
「そう言えば、名乗り忘れていたな」
1度目も、2度目に至ってはダニエルと言う偽名を使い、相対した。だが今は、今彼に勝利したのはダニエルでも、名もなきデュエリストでもない。
「オレはコナミ。貴様と同じ、ただのデュエル好きのデュエリストさ」
ニヤリ、不敵な笑みを浮かべるコナミを見て、白コナミはおかしそうに喉を鳴らして吹き出す。
全てを賭けた。このデュエルに、今までの自分の全てを。本気で、全力で、全開で、ここまで培って来た己が持てる知略と力を振り絞り、ただ1人のデュエリストとして彼と闘った。
そして――負けた。
なのに何故だろうか。こんなにも心が清々しいのは。こんなにもワクワクした、高揚した気分なのは。
ああ、そうだ、何でこんな当たり前の事を忘れていたのだろうか。
「これが、デュエルだったんだな……」
かつて、榊 遊矢が言った言葉を思い出す。勝っても負けてもデュエルは俺達を成長させてくれる。デュエルと言うのは1回だけでは終わらない。勝ち負けを繰り返し、楽しむもの、それがデュエル。
「光のデュエルを……か」
命を賭ける事も、魂を削る事もない。誰もが楽しめるエンターテイメント、それがデュエル。その事を思い出し、だけど照れ臭くて、負け惜しみにコナミと同じ不敵な笑みを見せ、皮肉を叩く。
「小さき者に、負けてしまったな……」
榊 遊矢に比べれば。と、内心で付け加えて彼は上空に掌を伸ばしてその姿を消していく。これで1つの因縁に決着がついた。
後に残った光の粒子は、コナミに渡る、その前に。
ズドンッ、彼等の前に現れたのは黒き影に呑まれていく。
白きマントを翻す、黒い帽子のつばを指で抑えた彼等と似た顔立ちのデュエリスト。彼はまるでブラックホールの如く白コナミを吸収し、その身から圧倒的な闘志を放ちコナミに振り向く。
「さぁ、デュエルだ……!」
黒コナミ、襲来。
素良「この詰めデュエルを解けば先に進めるぞ!」
遊矢「敵の策略に乗っかる必要なくない?リアルソリッドビジョンとかでさぁ」