遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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ウルトラマンゼットが面白過ぎて辛い……神回しか作れないの?


第193話 一撃

ここはどこだろう。少年の脳裏に疑問が過る。いや、それは少年なのかも分からない、何者でもあり、何者でもない。そんな歪な者の独白。

そんな誰かが首を傾げる中、目の前の光景は異常だった。空、地面、壁、全てが無数のカードで作られた空間だったのだから。

見渡す限り、カードの荒野、カードの海。モンスター、魔法、罠、様々なカードが彼を出迎える。一体ここはどこなのか、再び疑問が過ったその時――。

 

「ここは君の心の中さ」

 

「ッ、誰だ!」

 

不意に背後から声が聞こえ、思わず振り向いてしまう。そこにいたのは、黒いモヤで包まれた人影だった。

 

「ッ!?」

 

「ああ、すまない。こんな姿だが、別に君に敵意は無いから安心してくれ。と言っても信用出来ないかな?言っておくが、こっちも望んでこんな姿をしている訳じゃないんだ」

 

息を呑む少年に対し、人影は朗らかに話しかける。どうやら本当に敵意はないようだ。表情は分からないが、ニコニコと笑っているのが理解出来る。

 

「……オレの、心の中……?」

 

「ああ、凄いね君は。こんなにも多くのカードの事を想っている。こんなにもデュエルが好きだって言う想いが伝わってくるよ」

 

「……そうか」

 

辺りを見渡し、ストンとふに落ちたように納得する。ここが自身の心の中と言うなら、そうなのだろう。言われてみれば、そうであるとしか思えない。

 

「なら、お前は誰なんだ」

 

と、ここで新たな疑問が生じる。ここが自身の心の中ならば、そんな所にいる者は、何者なのか。

 

「さぁ?」

 

しかし、帰って来るのは、すっとぼけたような答えのみ。思わず呆然としてしまう。何か隠しているのか、敵意は無いようだが。

 

「さぁ……って」

 

「そう睨まないでくれ。本当に分からないんだ。記憶喪失って奴かな?」

 

「……そうか」

 

どうやら嘘はついていないらしい。アハハと苦笑しながら頭を掻く影。何やら初めて会った気がしない存在だ。自然とこちらの警戒心も薄れていく。

 

「おや……?」

 

「?どうした……?」

 

「どうやら、君に迎えのようだ」

 

「え……?」

 

そんな時、影が上空を指差し、その方向へ顔を向けると――何やら暖かな光が差し込んでいるではないか。

ふと、そこに行かなければならない気がした。

 

「行くんだ、君の仲間が、呼んでいる」

 

「……ああ、そのようだな」

 

「うん?フフ……君と行きたいと言うカードが何枚かいるらしい。良かったら、連れていってあげてくれ」

 

影がそう言うと、天井の、床の、壁にあるカードの何枚かが周囲を回転し、ついていこうとしているではないか。

 

「ああ、折角だ。共に行こう」

 

そして――それは、天に昇り、光差す道へと進んでいく。帰るべき、場所へと。

 

「行ってらっしゃい」

 

――――――

 

――ナミ――

 

声が、する。懐かしい、聞き覚えのある声が。これは一体誰の声だろうか。膨大な記憶の中から掘り起こす。

太陽のような笑みを浮かべる少年か、未来を掴んだ英雄か、それとも挑戦を続けた2つの魂か。

 

――ナミ――

 

どれもこれもが違う。この声は――。

 

「コナミッ!」

 

最高のエンタメデュエリストの声だ。

 

「ああ――そこにいるんだな、遊矢っ!」

 

目を開き、こちらへと伸ばされた手を掴む。すると――目の前の少年、榊 遊矢は少しだけ驚いた顔をした後、満面の笑みを浮かべる。

ああ、この笑顔だ。この笑顔が榊 遊矢なのだ。つられてコナミも笑い、遊矢によって引き上げられる。

 

「フ、随分と立派なDーホイールに乗ってるな」

 

「誰かさんのお蔭でね。おかえりコナミ」

 

「ああ、ただいま、遊矢」

 

コナミが遊矢が搭乗した赤い翼を広げるユーゴのDーホイールを見て、クスリと笑みを浮かべる。

まるでどこぞのシティの英雄のようだ。この様子や自身が帰って来られた事を考えると――どうやら遊矢はやってくれたらしい。

 

「優勝おめでとう、キング」

 

「!あぁ、ありがとう。コナミや皆のお蔭だよ」

 

「さて、とするとオレも決着をつけねばならないな」

 

「行くんだな、あの白いコナミの所に」

 

「お前が奴に勝って、オレが負けっぱなしと言うのは格好がつかないだろう?」

 

だが、コナミにはまだやるべき事が、白コナミとの決着が残っている。遊矢もそれを察したのだろう、頷き返し、白コナミが落下したであろう場所を指差す。

 

「あいつはあそこに落ちた筈だ」

 

「落ちた……?遊矢お前、何をやらかしたんだ?」

 

「……」

 

眉をひそめ、訝しむコナミに対し、ひょっとして俺とんでもない事しでかしたんじゃ……?と今更ながらダラダラと滝のような汗を垂らす遊矢。

ひょっとしないくても50万のダメージを叩き出しているのはシンクロ次元でもコイツ位である。

 

「おい」

 

「……」

 

「こっちを見ろ」

 

顔を背向け、無言を貫く遊矢を見て、コナミが深い溜め息溢す。こうなっては仕方無い。後で沢渡辺りにでも聞こうと諦め、自らのデュエルディスクを取り出し、パネルを操作し始める。

すると――どこからか彼のDーホイール、グラファ号Rが現れ、コナミ達のいる真下を走り抜ける。

 

「変な機能つけてる……」

 

「お前のこれも充分変の内に入るんじゃないか?」

 

呆れる遊矢を見て、次はコナミがユーゴのDーホイールから生えた赤い翼を指差し指摘する。ごもっともであるが、そもそもこの機能をつけたのはコイツである。

 

「行ってくる」

 

「ああ、皆で一緒に融合次元に行こう」

 

カツン、拳をぶつけ合い、約束する2人。そして――コナミはその場から飛び降り、グラファ号Rに搭乗、白コナミがいる場所へ向かうのを見送る。そして、遊矢もまた。

 

「と言う訳で、シンジーッ!!」

 

「……あん?」

 

観客席へと振り返り、その中にいるシンジ・ウェーバーに向け、大声で叫ぶ。

 

「後は任せた!」

 

「……は?……はぁぁぁぁっ!?」

 

遊矢達はこれから融合次元に向かうだろう。その為キングの荷を僅か3分で降りる事になる。まぁ遊矢のキングとしての仕事はもうほとんど無くなっているので問題はないだろうが。色々後始末は信頼出来るシンジに任せ、遊矢は柚子を救う為、治安維持局へと進む――。

 

――――――

 

「つ……全く、やってくれる。榊 遊矢……やはり奴は……」

 

場所は変わり、シティの外れ、コモンズも近寄らないようなゴミ溜めにて、遊矢に敗北した白コナミはコキコキと身体中の骨を鳴らし、ボロボロになった自らのDーホイールに背を預けていた。

流石にあれだけのダメージを受ければこの男でも身体が痛む。デュエリストじゃなければ危なかった。自慢のDーホイールもこの状態ではもう飛行出来ないだろう。やれやれと溜め息をつき、帽子を被り直していると――。

 

「見つけたぞ」

 

「……驚いたな、こんなに早く来るとは」

 

背後からかかる、自身と同じ声。振り向けば自身と同じ姿。いや、正確には身につけているものが白から赤へ変わった己の姿、コナミがいた。

 

「だが、また俺に挑むと言うのか?2度も敗北したと言うのに……俺としては若干呆れているんだが」

 

「安心しろ、今回は――貴様を完膚なきまでに叩き潰す」

 

ゴウッ、今まで以上の闘志を燃やすコナミに対し、ニヤリと白コナミの口角が持ち上がる。成程、確かに強くなっているようだ。これならこの男を再度取り込み、あの榊 遊矢に再戦を挑むのも悪くないとDーホイールに飛び乗り、デュエルの意志を見せる。そして――。

 

「「ライディングデュエル、アクセラレーション!!」」

 

今、最後の闘いが幕を開ける。ゴミ溜めを抜け、トンネルに入り、また抜ける。

シティの沿岸部、カーブに差し掛かり、コーナーを取ったのは――白コナミだ。彼は内心成長が見られないコナミに僅かな失望をし、デッキから5枚のカードを引き抜く。

 

「俺のターン、手札の『サンダー・ドラゴン』を捨て、同名カードを2体サーチ、魔法カード、『手札抹殺』!互いに手札を交換だ。魔法カード、『調律』!デッキから『クイック・シンクロン』をサーチし、デッキトップを墓地へ送る!そして手札のモンスターをコストに『クイック・シンクロン』を特殊召喚!」

 

クイック・シンクロン 守備力1400

 

白コナミの手札の1枚が撃ち抜かれ、白煙が上がる。その中から登場するのは、彼のデッキの主軸となる『シンクロン』チューナーの1体。

テンガロンハットに赤いマント、ガンマン人形の姿をしたモンスターだ。

キザったらしく煙を出す銃口に息を吹き掛け、指先でクルクルと回転、ガンホルダーへ拳銃を収納する。

 

「墓地の『ラッシュ・ウォリアー』を除外し、墓地の『ジャンク・シンクロン』を回収し、召喚!」

 

ジャンク・シンクロン 攻撃力1300

 

次は所々凹んだオレンジ色のボディに丸眼鏡、背負ったバックパックが特徴的なモンスター。かなり昔に登場したカードであるが、今でも一線級の働きが見込めるチューナーだ。

 

「召喚時、墓地のレベル2以下のモンスター、『チューニング・サポーター』を守備表示で特殊召喚!」

 

チューニング・サポーター 守備力300

 

『ジャンク・シンクロン』に呼ばれ、シュタリとフィールドに降り立ったのは中華なべを被り、マフラーを風に靡かせた1頭身のモンスター。所謂忍者走りで白コナミのDーホイールに並ぶ。

 

「レベル1の『チューニング・サポーター』に、レベル5の『クイック・シンクロン』をチューニング!集いし力が大地を貫く槍となる。光差す道となれ!シンクロ召喚!砕け、『ドリル・ウォリアー』!」

 

ドリル・ウォリアー 攻撃力2400

 

そして白コナミ最大の武器にして十八番、シンクロ召喚が炸裂する。

『クイック・シンクロン』の眼前に、光輝くサイバーパンクなイメージが浮かぶだろうカード達が並ぶ。そこには『ジャンク・シンクロン』や『ニトロ・シンクロン』と言った『シンクロン』チューナーの数々。

『クイック・シンクロン』が拳銃を取り出し、撃ち抜いたのはその中の1枚、『ドリル・シンクロン』だ。弾丸は『ドリル・シンクロン』を貫いた後、空中で光のリングに変化、『チューニング・サポーター』と『クイック・シンクロン』を包み込み、更に5つのリングと1つの光となり、フィールドを照らす。

閃光の霧を晴らし、現れたのは1人の戦士。右手、両肩、両足にドリルを取り付け、黄色いマフラーを風に流す、ブラウンのボディの機械戦士、『ドリル・ウォリアー』だ。

 

「『チューニング・サポーター』がシンクロ素材になった事で、1枚ドローする!」

 

白コナミ 手札3→4

 

「墓地の魔法カード、『調律』を除外する事で、手札の『マジック・ストライカー』を特殊召喚!」

 

マジック・ストライカー 攻撃力1600

 

更に続けて召喚。白コナミの墓地の『調律』に写るハープが弾かれ、中より飛び出したのはヴァイキング帽に赤いマント、鎧にステッキ、剣とSDキャラのような見た目とあいまって一昔前のゲームの中の勇者を思わせる姿をした戦士。

容易な特殊召喚条件を持ち、リリース、シンクロ、エクシーズと様々な召喚法の素材に使えるカードだ。

 

「レベル3の『マジック・ストライカー』に、レベル3の『ジャンク・シンクロン』をチューニング!疾風の使者に鋼の願いが集う時、その願いは鉄壁の盾となる。光差す道となれ!シンクロ召喚!現れよ、『ジャンク・ガードナー』!」

 

ジャンク・ガードナー 守備力2600

 

2連続シンクロ召喚。今度は『ジャンク・シンクロン』が背中のリコイルスターターを引っ張り、バックパックが振動、『ジャンク・シンクロン』が3つのリングとなり、『マジック・ストライカー』を包み込む。

白コナミとコナミがトンネルに入り込み、姿が見えなくなり、抜け、次に視界に捉えた時には既に3つの光に変化、一筋の閃光がリングの中を撃ち抜き、2体目のシンクロモンスターが現れる。

 

深緑の装甲を纏い、背中に2対の砲塔を伸ばした機械戦士。

防御に特化したカードだ。先攻でこのカードをフィールドに残す事で、コナミの攻め手を削ぐつもりなのだろう。

特殊召喚が容易な低レベルモンスターを素材に、次々とシンクロモンスターを呼ぶ、高速のデュエル。それが白コナミの戦術だ。

 

「手札を1枚捨て、『ドリル・ウォリアー』の効果発動。このカードを除外する。そしてカードを1枚セットしてターンエンドだ」

 

白コナミ LP4000

フィールド『ジャンク・ガードナー』(守備表示)

セット1

手札1

 

これで白コナミのフィールドは『ジャンク・ガードナー』とセットカードの2枚。中々の布陣であるが、手札は1枚だけになってしまったのは痛い。

対するコナミがどう出るか、これは白コナミがコナミを試していると言っていい。この程度、軽く越えてみろと挑発的な笑みが横顔から見れる。

 

「オレのターン、ドロー!スタンバイフェイズ、墓地の『キラー・スネーク』の効果で自身を回収。そして――」

 

その想いは、今この瞬間に。

 

「手札を1枚捨て、魔法カード――『一撃必殺!居合いドロー』を発動!」

 

「……は?」

 

粉微塵に、切り刻まれる。

 

「待て、待て……!それは、そのカードは……っ!」

 

思わずフリーズしていた白コナミが漸くそのカードの登場を理解し、けれども動揺を隠せない。それもその筈――フレンドシップカップの対決では、このカードの影も形もなかったのだから。

 

そしてこのカードは、白コナミの驚く通り、コナミが新たに得たカード、新たな力、『エレメンタルバースト』や『魂を吸う竹光』と同じ、勝負を左右する切り札。

それを――1ターン目の1枚目に、発動して来た。

つまりこのカードは、コナミが初めて得た、軽い準備で積極的に使える武器と言える。そして、このカードの存在を、白コナミは知っている。知っているからこそ驚いたのだ。その、効果は。

 

「相手フィールドのカードの数だけデッキトップからカードを墓地に送り、その後、オレはカードを1枚ドロー。互いに確認し、それが『一撃必殺!居合いドロー』だった場合、そのカードを墓地に送る事で、フィールドのカードを全て破壊、その後、この効果で破壊したカード×2000のダメージを相手に与える!」

 

正しくギャンブル。成功した場合、相手フィールドを一掃した上でその数×2000ものダメージを与えるカード。

2枚破壊すれば4000のダメージを与えて勝利出来ると言う訳だ。そして、このカードが成功した場合の利点はそれだけではない。それは――墓地肥やし。ドローの前に、大量の墓地肥やしを狙えるのだ。墓地発動系のカードを大量に投入したコナミ向けのカードと言える。

 

「ッ……!罠発動、『針虫の巣窟』!デッキトップから5枚のカードを墓地へ!更に墓地の『ダメージ・ダイエット』を除外し、このターンの効果ダメージを半分にする!」

 

「賢明だな、さぁ、引こうか――!」

 

コナミのデッキから、『ジャンク・ガードナー』と『針虫の巣窟』、フィールド魔法、『スピード・ワールドーネオ』の3枚分のカードが墓地に送られる。そして、コナミがまるで居合い術を見せるかのようにデッキトップに指先を翳し、今、1枚のカードが引き抜かれる。

一瞬の緊張、白コナミがゴクリと唾を呑み込むと共に、そのカードが姿を見せる。

 

コナミ 手札5→6

 

「引いたのは、『一撃必殺!居合いドロー』!」

 

「馬鹿、な――!?」

 

見事成功を果たし、指先に掴まれた『一撃必殺!居合いドロー』が光を纏って変化、一振りの日本刀としてコナミの手に握られ、抜刀、汚れ一つない煌めく白刃が白コナミのフィールドを切り裂く。

カチャリ、日本刀が鞘におさまり、遅れて『ジャンク・ガードナー』が真っ二つになり、大爆発を巻き起こす。

 

白コナミ LP4000→2000

 

「ぐぅぅぅぅっ!?」

 

一気にフィールドが全壊し、その上2000のLPが削り取られた。正しく一撃必殺の名に相応しい威力。今までコナミは強力な奥の手を持っていたが、奥の手は下準備がかかるもの。今のコナミはその奥の手にも比肩する強力な、その上直ぐ様使えるカードを手に入れた、更に、だ。

 

「くっ、墓地に送られた『絶対王バック・ジャック』の効果でデッキトップを操作し、2体の『髑髏顔天道虫』の効果でLPを2000回復する……!」

 

白コナミ LP2000→3000→4000

 

「ならばオレも、墓地に送られた『妖刀竹光』と『E・HEROシャドー・ミスト』の効果で『黄金色の竹光』と、『E・HEROエアーマン』をデッキからサーチしよう」

 

「ッ!」

 

この『一撃必殺!居合いドロー』は一撃だけでは留まらない。こうして墓地に送られたカードが、更なる一撃を呼ぶ。

たった1枚、されど1枚で――コナミのデュエルは大きく変わった、進化したのだ。

 

「『E・HEROソリッドマン』を召喚!」

 

E・HEROソリッドマン 攻撃力1300

 

そして、コナミが得た新たな力はこれだけではない。そう言わんばかりにコナミの手から、見た事のない『HERO』が現れる。

黄金の鎧を纏う戦士。その姿に白コナミが更に警戒を示す。

 

「『E・HEROソリッドマン』の召喚時、オレは手札からレベル4以下の『HERO』を特殊召喚する!」

 

「来い、『E・HEROエアーマン』!」

 

E・HEROエアーマン 攻撃力1800

 

ソリッドマンの隣に並ぶのは、青い機械的な鎧に背中かれファンの翼を伸ばした風の『HERO』。『HERO』デッキでは必須級のサーチ効果を持つカードだ。

 

「エアーマンの特殊召喚時、デッキから『HERO』モンスター1体をサーチする!」

 

「墓地のバック・ジャックを除外し、デッキトップの罠をセット!」

 

「オレは2枚目のエアーマンをサーチ!魔法カード、『ナイト・ショット』!セットカードを破壊!」

 

「破壊されたのは『荒野の大竜巻』!効果でソリッドマンを破壊!」

 

「ならば速攻魔法、『マスク・チェンジ』を発動!」

 

「『マスク・チェンジ』だと……!?」

 

発動されたのは更にコナミのデュエルを大きく変革させるカード。今までの『HERO』による戦術を変身させる力。

 

「オレのフィールドの『HERO』1体を墓地に送る事で、墓地に送ったモンスターの属性に対応する『M・HERO』1体をエクストラデッキから特殊召喚する!オレが選択するのはソリッドマン!属性は地!変身召喚!『M・HEROダイアン』!」

 

M・HEROダイアン 攻撃力2800

 

ソリッドマンが光に包まれ、その強固な鎧を自ら砕く。姿を変え、新たに登場したのは軽く、その上でソリッドマンより強固なダイヤモンドの仮面と鎧を纏い、レイピアを握った英雄。

融合ではなく、変身。これこそがコナミが得た新たな『HERO』。進化前との大きな変更点だ。

 

「まだだ。魔法カードの効果でモンスターゾーンから墓地に送られたソリッドマンの効果発動!墓地に存在するこのカード以外の『HERO』モンスター、すなわち『E・HEROシャドー・ミスト』を蘇生する!」

 

E・HEROシャドー・ミスト 守備力1500

 

絶え間ない展開、ダイアンの影が逆巻き、人の形となる。ダイアンやソリッドマンとは対照的な漆黒の鎧と赤く輝く眼、そして風に靡く美しい青の長髪が印象的な『E・HERO』だ。

変身召喚を会得したお蔭でこのカードの真の力も発揮出来るようになった。

 

「何故だ、何故ここまでの力を……!」

 

「お前のお蔭だ」

 

「……何だと?」

 

短い間、それも吸収されていたにも関わらず、前とは比べ物にならない力を得たコナミに、白コナミが疑問を浮かべ、コナミが答える。

『一撃必殺!居合いドロー』等はコナミの心から連れて来たカード。しかし、この『M・HERO』は違う。このカードは白コナミのお蔭で得たカードだ。

 

「お前は闘った筈だ。オレじゃない、お前でもない、他のコナミと」

 

「それがどうし……まさ……か……!?それが、俺の中にいたお前にも影響を与えたと言うのか!?」

 

そう、白コナミは決勝戦前に黒と紫、エクシーズと融合を使うコナミと闘った。その結果、白コナミも強くなり、中にいたコナミにも変異を与えたのだ。

白コナミとの闘いで、コナミがシンクロチューナーを得たように。コナミの成長に、カードがついて来てくれた。

 

「そう言う事だ。貴様は言ったな、成長するのは、進化するのはオレだけではなく、お前もだと!ならばオレは貴様が追いつく事も出来ない速度で進化を続けるまでだ!」

 

「面白い……!」

 

新たな力で、白コナミを追い詰めるコナミに対し、白コナミは獰猛な笑みを見せる。確かに、コナミは強くなった。だが白コナミとてあれから強くなっている。これで漸くイーブンと言った所だろう。

勝敗は、このデュエルの中の成長にかかっている。

 

「魔法カード、『クイズ』!相手はオレの墓地の一番下に存在するモンスターを当て、外れればオレのフィールドに特殊召喚、当たれば除外する!」

 

「俺は『キラー・スネーク』を選択する」

 

「残念!『ジャンク・コレクター』を特殊召喚!」

 

ジャンク・コレクター 攻撃力1000

 

「装備魔法、『妖刀竹光』をエアーマンに装備、魔法カード、『黄金色の竹光』を発動!『竹光』装備魔法が存在する事で2枚ドロー!」

 

コナミ 手札1→3

 

「魔法カード、『強欲で貪欲な壺』!デッキトップの10枚を裏側で除外して2枚ドロー!」

 

コナミ 手札2→4

 

「更に魔法カード、『カップ・オブ・エース』!コイントスを行い、表が当たれば2枚ドローだ。……当たりだ」

 

コナミ 手札3→5

 

「永続魔法、『魂を吸う竹光』を発動!『竹光』装備魔法を装備したモンスターが戦闘ダメージを与えた場合、次の相手のドローフェイズをスキップする!」

 

「チィッ!」

 

容赦はしない。そう言わんばかりにコナミが早速奥の手を見せる。成長前にも持っていた強力な武器。コナミが捨てる訳もない。

エアーマンが握った『妖刀竹光』より闇色の瘴気が噴き出し、亡者の呻き声が木霊する。ドロースキップ効果。成長前でも白コナミが厄介に思っていた力だ。

 

「バトル!エアーマンでダイレクトアタック!」

 

「墓地の『クリアクリボー』を除外し、1枚ドロー!」

 

白コナミ 手札1→2

 

「引いたカードは、モンスターではない」

 

「ならここで終わりか?」

 

「終わらせる訳がないだろう!墓地の『光の護封霊剣』を除外し、このターンのダイレクトアタックを封じる!」

 

流石に1ターンでは終われない。白コナミが地面より光輝く剣を引き抜き、妖刀片手に襲いかかるエアーマンの斬擊を防ぐ。

鳴り響くは甲高い剣戟の音。すかさずエアーマンの足元から更なる剣が飛び出し、退かせる。

 

「フン、ここで終わったら拍子抜けも良いところだ。今まで溜まった鬱憤、たっぷり晴らさせてもらうぞ!」

 

「ほざけ!今回も俺が勝たせてもらう!」

 

「カードを3枚セット、ターンエンド!」

 

コナミ LP4000

フィールド『M・HEROダイアン』(攻撃表示)『E・HEROエアーマン』(攻撃表示)『E・HEROシャドー・ミスト』(守備表示)『ジャンク・コレクター』(攻撃表示)

『妖刀竹光』『魂を吸う竹光』セット3

手札1

 

「俺のターン、ドロー!速攻魔法、『魔力の泉』!スピード・ワールドを含め、3枚ドローし、2枚を捨てる!更に『増殖するG』を捨てる!」

 

白コナミ 手札1→4→2

 

「手札から捨てられた『魔轟神獣キャシー』の効果で『ジャンク・コレクター』を破壊!」

 

「墓地の『スキル・プリズナー』を除外し、『ジャンク・コレクター』を対象とするモンスター効果を無効に!」

 

「スタンバイフェイズ、墓地の『キラー・スネーク』を回収し、自身の効果で除外された『ドリル・ウォリアー』を特殊召喚!その後、墓地のモンスター1体を手札に。『ジャンク・シンクロン』を回収。魔法カード、『暗黒界の取引』。手札を交換し、捨てられた『魔轟神獣キャシー』の効果でダイアンを破壊!」

 

「こちらも墓地に送られた『絶対王バック・ジャック』の効果でデッキトップを操作し、速攻魔法、『フォーム・チェンジ』!ダイアンをエクストラデッキに戻し、同じレベルの『M・HERO光牙』を変身召喚!」

 

ドリル・ウォリアー 攻撃力2400

 

M・HERO光牙 攻撃力2500→3000

 

白コナミ 手札3→4

 

「『ジャンク・シンクロン』を召喚!」

 

ジャンク・シンクロン 攻撃力1300

 

M・HERO光牙 攻撃力3000→3500

 

「効果発動!『チューニング・サポーター』を蘇生する!」

 

「『ジャンク・コレクター』と墓地の『メタバース』を除外し、効果をコピー!デッキからフィールド魔法、『サモンブレーカー』を発動!更に墓地のバック・ジャックを除外して罠をセット!」

 

チューニング・サポーター 守備力300

 

M・HERO光牙 攻撃力3500→4000

 

「ターンプレイヤーが3回目の召喚、反転召喚、特殊召喚に成功した時、『サモンブレーカー』の効果でエンドフェイズに移行する!」

 

「速攻魔法、『コズミック・サイクロン』!LPを1000払い、『サモンブレーカー』を除外!」

 

「速攻魔法、『マスク・チェンジ』を発動!」

 

発動される2枚目の『マスク・チェンジ』。不意を突かれた形となり、白コナミの表情が歪む。次は果たしてどのような『M・HERO』が現れるか、闇か風の『HERO』。嫌な予感がする。

 

「シャドー・ミストを墓地に送り、変身召喚!『M・HEROダーク・ロウ』!」

 

M・HEROダーク・ロウ 攻撃力2400

 

白コナミ LP4000→3000 手札2→3

 

シャドー・ミストが眩い光に包まれ、新たに漆黒の装甲を纏い姿を変える。黒豹を模した仮面と胸当て、ショルダーアーマー、野性味を感じさせる『M・HERO』が、黄色いラインを輝かせ、ビルの屋上へと跳躍、腕を組み、白コナミを見下す。

 

白コナミもこのモンスターの登場と共に『増殖するG』の効果でドローするが――瞬間、手札から闇の渦が発生、逆巻いて1枚のカードが呑み込まれる。

 

「ダーク・ロウの効果。1ターンに1度、ドローフェイズ以外で相手がデッキからカードを手札に加えた場合、相手の手札を1枚除外する」

 

「チッ……!」

 

「そして墓地に送られたシャドー・ミストの効果で『E・HEROソリッドマン』をサーチ!」

 

「ならば俺はレベル1の『チューニング・サポーター』に、レベル3の『ジャンク・シンクロン』をチューニング!シンクロ召喚!『アームズ・エイド』!」

 

アームズ・エイド 攻撃力1800

 

M・HERO光牙 攻撃力3000→3500

 

呼び出されたのは噴射機能がついた、赤い爪を煌めかせる腕型のモンスター。ジェット推進でフィールドに駆けつけ、白コナミに並走する。見た目通り、他のモンスターの腕となる事で真価を発揮するカードだ。

 

「『チューニング・サポーター』の効果でドロー!」

 

展開でカードを消費したかと思いきや、直ぐ様補充する。これが白コナミのデュエルだ。強力な戦術。

だからこそ、コナミはここに対策を取る。

白コナミが『チューニング・サポーター』の効果発動を宣言したその時、墓地に闇の渦が広がり、『チューニング・サポーター』のカードを呑み込んでいる事に気づく。

 

「何……!?」

 

「ダーク・ロウのもう1つの効果だ。このカードが存在する限り、相手の墓地に送られるカードは除外される!」

 

「ッ……!」

 

これぞダーク・ロウが敷く闇の法。白コナミの戦力を大きく削ぐ対抗策。白コナミの高速連続シンクロの肝である墓地を潰す手だ。

 

「やってくれる……!『アームズ・エイド』の効果発動!このカードを攻撃力1000アップの装備カードとして『ドリル・ウォリアー』に装備!」

 

ドリル・ウォリアー 攻撃力2400→3400

 

『アームズ・エイド』がジェット噴射で飛翔、『ドリル・ウォリアー』の右腕に装着しようとするも、そこにはお前の席ねぇからと言わんばかりのドリルが存在。仕方無く左腕に装備される。両腕が右腕の男の完成である。何とも格好がつかない。

 

「バトル!『ドリル・ウォリアー』でダーク・ロウへ攻撃!ドリル・ランサー!この瞬間、手札の『ジュラゲド』の効果発動!」

 

「カウンター罠、『無償交換』!『ジュラゲド』のモンスター効果の発動を無効にし、相手は1枚ドローする!」

 

白コナミ 手札1→2

 

「速攻魔法、『コズミック・サイクロン』!LPを1000払い、セットカードを除外!」

 

「罠発動!『マジカルシルクハット』!デッキの魔法、罠とエアーマンをセット、墓地に送られた『妖刀竹光』の効果で『黄金色の竹光』をサーチ!」

 

白コナミ LP3000→2000 手札1→2

 

「攻撃続行、ダーク・ロウを狙う!」

 

「光牙の効果発動!墓地の『HERO』モンスター、ソリッドマンを除外し、ターン終了まで除外したモンスターの攻撃力分、『ドリル・ウォリアー』の攻撃力をダウン!」

 

「速攻魔法発動!『ハーフ・シャット』!ダーク・ロウの攻撃力を半減し、戦闘耐性を与える!」

 

ドリル・ウォリアー 攻撃力3400→2100

 

M・HEROダーク・ロウ 攻撃力2400→1200

 

コナミ LP4000→3100

 

相変わらずの『マジカルシルクハット』戦法に、『M・HERO』で戦況を作り上げる強力な力が加わった。

ダメージは食らったが、ダーク・ロウは健在。流れはまだコナミに傾いている。初手で『一撃必殺!居合いドロー』を成功させた事が効いている。

 

「カードを1枚セット、ターンエンドだ……!」

 

「この瞬間、オレの墓地から『キラー・スネーク』を除外する」

 

白コナミ LP2000

フィールド『ドリル・ウォリアー』(攻撃表示)

『アームズ・エイド』セット1

手札0

 

2度の敗北から蘇り、新たな力を会得、再び白コナミに挑むコナミ。最早2人の間に大した実力差は無い。それ程までコナミは成長した。

もう、負ける気がしない。誰が相手だろうと何が立ち塞がろうと、この歩みを止めるつもりはない。例えこの闘いで、白コナミがどれだけ成長しようが構わない。

それならば自らも更に成長するまでだ。

 

シティ外周を激走し、熱き火花を散らす2人のデュエリスト、互いに猛スピードで並走し、視線を交わす。

 

「お前を倒す!絶対に!」

 

「面白い……!だがこの程度で勝った気になられては困る。さぁ、貴様の進化とやらを見せてみろ!俺はそれを全て叩き折って、吸収して新たなステージに辿り着く!」

 

己が全てを賭けた赤と白、2人のコナミの激突。シンクロ次元、最終局面――。




白コナミ「榊遊矢に50万ダメージを食らわされて負けた……せや!もう1回デュエルしたろ!」

アホかな?

と言う訳で今回からコナミのデッキが更にパワーアップしました。
TFSPでは今回のデッキと似たようなものを組んでいたんですがストーリーモード位なら結構互角に渡り合えます。
オリジナル版の居合いドローとM・HEROのカードパワーのお陰ですね。
魔術師少ないのでペンデュラムは役割果たさずオッドアイズは手札コストになってたのは内緒。

笑ったのは居合いドロー成功を食らった相手が刃&真澄ペアとユートだった事です。幻影騎士団無いから……。

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