遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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一時間スペシャル風1日2話投稿。
この話に辿り着く為だけにシンクロ次元編を書き続けたと言っても過言ではありません。
推奨BGMとかはハナテ以外でも別段構いませんが、出来る事ならば自分が心から好きなモンスターやエースを思い浮かべて読んでくだされば嬉しいです。

ん?ドラグーンが好き?それならあそこら辺に禁止カード流星群エリアがあるじゃろう?ほらあそこのドラグーンだらけで黒くなってる所(適当)。



第192話 ハナテ

「俺のターン、ドロー!」

 

榊 遊矢対白コナミ。シティの命運を賭けたフレンドシップカップ決勝戦、天空のライディングデュエルも、いよいよ佳境を迎える。

襲いかかる脅威、アーククレイドルと一体化した白コナミに対し、ユーゴとシンクロした遊矢が果敢に立ち向かう。

 

そんな姿を見て、シティも今漸く変わり始めた。

自分の事は自分で守る。誰かがピンチならそれも纏めて守る。そんな暖かな思いやりを、シティにいる全員が行っている。

最早トップスもコモンズも関係ない。全ての境界を、垣根を、障害を乗り越えてそれぞれのエースモンスターがアクションフィールド内で放たれ、降り注ぐ流星群を砕く。

 

ランサーズが展開したアクションフィールドを、シティの誰かが繋ぎ、別の誰かが受け、また繋ぐ。さながらサーキットの如く地上に描かれた絆。未来を描くサーキット。

光差す道を一瞥し、白コナミは感嘆の息を漏らす。

 

「認めよう。お前の実力を、この光景の素晴らしさを。だが……敗北は認めんっ!」

 

『上等!』

 

「シティが今、1つになった!それ以上に難しい事なんて何もない!奇跡だって起こして見せる!」

 

「俺は『カードガンナー』を召喚!」

 

カードガンナー 攻撃400

 

「魔法カード、『機械複製術』!デッキから2体の『カードガンナー』を特殊召喚!」

 

カードガンナー 攻撃力400×2

 

「そして3体の『カードガンナー』の効果発動!デッキトップから9枚のカードを墓地に送り、攻撃力をアップ!」

 

カードガンナー 攻撃力400→1900×3

 

「墓地の『絶対王バック・ジャック』の効果でデッキトップを操作、更に墓地の『ラッシュ・ウォリアー』を除外し、同じく墓地の『ジャンク・シンクロン』を回収。カードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

白コナミ LP1950

フィールド『カードガンナー』(攻撃表示)×3

セット1

手札1

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「バック・ジャックを除外し、デッキトップの罠カードをセットする!」

 

「スカーライトの効果発動!フィールドに存在するこのカードの攻撃力以下の攻撃力を持つ特殊召喚されて効果モンスターを全て破壊し、その数×500のダメージを与える!」

 

「罠発動、『ハイレート・ドロー』!俺のフィールドのモンスターを全て破壊し、その中の機械族モンスターの数だけドローする!更に『カードガンナー』の効果発動!合計6枚のカードをドロー!」

 

白コナミ 手札1→4→7

 

『魔法カード、『星屑のきらめき』!墓地からシュラとゲイルを除外し、『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』を蘇生する!!』

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力2500

 

スカーライトの隣に並ぶのは、ユーゴのエースモンスター、白と青、ミントグリーンの色が映える竜。誇り高きシンクロの名を持つモンスターの登場に、シティ中が沸き起こる。

 

『バトル!『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』でダイレクトアタック!旋風のヘルダイブスラッシャー!』

 

「甘い!罠発動、『リジェクト・リボーン』!墓地の『炎魔竜レッド・デーモン・ベリアル』と『シンクローン・リゾネーター』を蘇生!」

 

炎魔竜レッド・デーモン・ベリアル 攻撃力3500

 

シンクローン・リゾネーター 守備力100

 

「カードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

榊 遊矢 LP100

フィールド『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』(攻撃表示)『レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト』(攻撃表示)

セット3

手札1

 

「俺のターン、ドロー!スタンバイフェイズ、墓地に存在する3枚の『堕天使マリー』の効果でLPを600回復し、墓地の『キラー・スネーク』を自身の効果で回収」

 

白コナミ LP1950→2550

 

「『スターライト・ジャンクション』の効果により、『シンクローン・リゾネーター』をリリースして『シンクロン・キャリアー』をリクルートする!」

 

シンクロン・キャリアー 守備力1000

 

「『シンクローン・リゾネーター』の効果により『バリア・リゾネーター』を回収。『シンクロン・キャリアー』の効果により、『ジャンク・シンクロン』を召喚!」

 

ジャンク・シンクロン 攻撃力1300

 

「『ジャンク・シンクロン』の効果で墓地の『フォーミュラ・シンクロン』を特殊召喚」

 

フォーミュラ・シンクロン 守備力1500

 

「『シンクロン・キャリアー』をリリースしてモンスターをセット、ベリアルの効果でリリース!そしてアドバンス召喚した『タン・ツイスター』の効果により、2枚ドロー!」

 

「永続罠、『便乗』!この後相手がドローフェイズ以外でドローする度2枚ドロー!」

 

白コナミ 手札8→10

 

「墓地の『ラッシュ・ウォリアー』を除外して『シンクロン・エクスプローラー』を回収、魔法カード、『打ち出の小槌』を発動!アクションカードと共に手札を交換!」

 

榊 遊矢 手札1→3

 

「魔法カード、『シンクロ・クリード』!」

 

白コナミ 手札10→12

 

榊 遊矢 手札3→5

 

「装備魔法、『愚鈍な斧』を『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』に装備!攻撃力を1000アップし、効果を無効にする!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力2500→3500

 

「魔法カード、『無情の抹殺』!『ジャンク・シンクロン』を墓地に送り、相手の手札1枚を墓地へ!」

 

「アクションマジックが……!」

 

「3枚の魔法カード、『復活の福音』!墓地の『スターダスト・ドラゴン』と『炎魔竜レッド・デーモン』、『玄翼竜ブラック・フェザー』を蘇生!」

 

スターダスト・ドラゴン 守備力2000

 

炎魔竜レッド・デーモン 攻撃力3000

 

玄翼竜ブラック・フェザー 守備力1600

 

揃う5体のシンクロモンスター。圧倒的、圧巻の光景に遊矢がゴクリと喉を鳴らす。が、白コナミの猛攻は、更に続く。

 

「永続魔法、『カイザー・コロシアム』を発動、楽しもうか。魔法カード、『下降潮流』を3枚発動!ベリアルと炎魔竜、玄翼竜のレベルを1に変更!」

 

炎魔竜レッド・デーモン・ベリアル レベル10→1

 

炎魔竜レッド・デーモン レベル8→1

 

玄翼竜ブラック・フェザー レベル8→1

 

「レベルを……1に……!?」

 

「更に墓地の『妖怪のいたずら』を除外、『フォーミュラ・シンクロン』のレベルを1つダウン!」

 

フォーミュラ・シンクロン レベル2→1

 

『今度は『フォーミュラ・シンクロン』を……何考えてやがる!』

 

「……待て、今、アイツのフィールドのモンスターの合計レベルは幾つだ?」

 

『あぁ?えっと、『スターダスト・ドラゴン』が8、ベリアルと炎魔竜、ブラック・フェザーが1で、『フォーミュラ・シンクロン』も1、12か?……待て、待て待て待て……!?』

 

「そして全てのモンスターがシンクロモンスター。もう、それしかないだろう……!」

 

執拗に自らのモンスターのレベルを下げ、調節を行う白コナミに対し、遊矢が何か勘づく。何か、とんでもない事に。

アクセルシンクロとは、シンクロモンスターとシンクロチューナーによるシンクロ召喚を超えたシンクロ。

その上には、デルタアクセルシンクロがある。シンクロモンスター2体に、シンクロチューナーを1体チューニングする事で生み出されるのだ。1回戦で白コナミが出した技がこれに当たる。

そして――そのデルタアクセルの更に上を行く究極のシンクロがあったとしたら?それはどのようなシンクロなのか。

答えを出そう。それは、シンクロモンスター4体と、シンクロチューナー1体によるシンクロ召喚だ。

 

「レベル8の『スターダスト・ドラゴン』と、レベル1の『炎魔竜レッド・デーモン・ベリアル』と『炎魔竜レッド・デーモン』、『玄翼竜ブラック・フェザー』に、レベル1の『フォーミュラ・シンクロン』をチューニング!集いし星が1つになる時、新たな絆が未来を照らす!光差す道となれ!」

 

その名を。

 

「リミットオーバー・アクセルシンクロォーッ!!」

 

5体のシンクロモンスターの姿が弾け飛び、シティ中を眩き光が包み込む。流れる光の奔流は、やがて一ヶ所、白コナミの傍に集束し、巨大な竜の星座を描き出す。

そして光は竜の中に格納されていき、その全貌が明らかとなる。

 

「進化の光、『シューティング・クェーサー・ドラゴン』ッ!!」

 

シューティング・クェーサー・ドラゴン 攻撃力4000

 

アーククレイドルにも負けぬ純白の巨躯、頭部から鋭い角を伸ばし、胸には翡翠に輝くコアを抱き、陽光を反射する白銀の翼を広げる光輝く神々しい竜。

白コナミが誇る、最強のシンクロモンスターが、君臨した。

 

「完全体と化した『シューティング・クェーサー・ドラゴン』は、4回の攻撃が可能!スカーライトへ攻撃!天地創造撃ザ・クリエーションバースト!」

 

「永続罠、『強制終了』!『便乗』をコストにバトルを終了!」

 

「『シューティング・クェーサー・ドラゴン』の効果発動!その効果を無効にし、破壊!」

 

「罠発動、『パワー・ウォール』!良し、墓地に落ちたバック・ジャックの効果でデッキトップを操作し、トップの罠カードをセットする!」

 

「『クリアウィング』に攻撃ィ!」

 

「墓地の『超電磁タートル』を除外、バトルを終了!」

 

「かわすか……!墓地の『ADチェンジャー』を除外してクェーサーを守備表示に。カードを3枚セット、ターンエンドだ!」

 

白コナミ LP2550

フィールド『シューティング・クェーサー・ドラゴン』(守備表示)

『愚鈍な斧』『カイザー・コロシアム』セット3

手札0

 

「俺のターン、ドロー!墓地の『ブレイクスルー・スキル』を除外し、クェーサーの効果を無効に!魔法カード、『スタンピング・クラッシュ』!『カイザー・コロシアム』を破壊!相手に500ダメージを与える!」

 

「墓地の『プリベントマト』を除外し、効果ダメージを防ぐ!」

 

「魔法カード、『魂の解放』!お前の墓地から『シューティング・スター・ドラゴン』と『スターダスト・ドラゴン』、3枚の『復活の福音』を除外!」

 

「罠発動、『貪欲な瓶』!対象のカードをデッキに戻し、ドロー!」

 

白コナミ 手札0→1

 

「魔法カード、『モンスター・スロット』!『クリアウィング』を選択し、墓地の同じレベルのモンスター、『相克の魔術師』を除外し、1枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札3→4

 

遊矢のフィールドにモンスターの姿を模したスロットマシーンが出現、レベル7、『クリアウィング』と『相克の魔術師』を写し出し、7の文字へと変わる。

残るは1つ、このドローでレベル7のモンスターを引けばスリー7だ。デュエルの勝敗を賭けたギャンブル。成功しないかで行き先が決まるが――。

 

『悪いが、俺ぁこう言うのに強くてね!』

 

ユーゴがいる限り、遊矢に失敗の2文字はない。

 

「引いたカードはレベル7!よって特殊召喚する!雄々しくも美しく輝く二色の眼!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力2500

 

『クリアウィング』の隣に並ぶ、遊矢のエースモンスター。赤い鱗、真紅と翡翠のオッドアイを輝かせる、2本の角を伸ばす竜。

『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』。フィールドで二大エースが雄々しく咆哮し、『シューティング・クェーサー・ドラゴン』を射抜く。

 

「やっとエースの登場か。だがその程度では、俺の『シューティング・クェーサー・ドラゴン』は倒せない!」

 

「そうはどうかな……?」

 

「何……?」

 

「今こそ2つの力を、1つに合わせる!『EMオッドアイズ・シンクロン』をセッティング!」

 

遊矢のフィールドに、シルクハットを被ったオッドアイの機械が現れる。これこそが、この1枚が、遊矢とユーゴの力を1つにする。

 

「そして『EMオッドアイズ・シンクロン』のペンデュラム効果発動!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』をチューナーにし、レベルを1に変更!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン レベル7→1

 

「お前もレベル調節を……?」

 

「そして墓地の『アマリリース』の効果で『マジック・キャンセラー』をリリース無しで召喚!」

 

マジック・キャンセラー 攻撃力1800

 

「これが!」

 

『俺達の全力全開!』

 

遊矢も白コナミに対抗するように、エース、『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』のレベルを変更。

てっきりレベル7同士でオーバーレイ、切り札、『覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』をエクシーズ召喚するのかと思ったが――遊矢の狙いは別の所にあるようだ。

 

『オッドアイズ』はチューナーとなり、『クリアウィング』との合計レベルは8。『覚醒の魔導剣士』か?いや、あのカードは既に倒され、墓地に送られている。それに遊矢のシンクロモンスター『涅槃の超魔導剣士』と『覚醒の魔導剣士』、そして『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』の3体の筈。

……本当にそうだろうか?元々、彼のエクストラデッキには『クリアウィング』は無かった。白コナミ視点では何時の間にか『クリアウィング』を手にしていたのだ。ならば『クリスタルウィング』も、と考えるのが自然だが。

加えて前者2体も遊矢が創造したカード。ならば――4体目がいても、おかしくはない。

 

遊矢が、『クリアウィング』と同じく、ユーゴから受け取った4体目が。『覇王眷竜クリアウィング』が変化したカードが。

それを今こそ、解き放つ。

 

『「レベル7の『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』に、レベル1となった『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』をチューニング!」』

 

『オッドアイズ』が赤い光となって弾け飛び、『クリアウィング』の周囲を回転、シンクロ召喚の際に見られる調律リングを描き出した後、ギュンと宙を走り、『クリアウィング』の左眼に吸い込まれ、真紅の輝きを放つ。

 

『「二色の眼の竜よ!光輝く翼を得て。覇道の頂へ舞い上がれ!シンクロ召喚!」』

 

そしてリングから光の線が針の如く尖り、『クリアウィング』を貫き集束、その体躯を縛り上げ、眩き閃光が『クリアウィング』を覆い尽くし――見る見る内にシルエットが変化。

カッターナイフのような鋭利な刃を新たに装着した両腕を広げ、拘束を切り裂き破る。

 

『「烈破の慧眼輝けし竜!『覇王白竜オッドアイズ・ウィング・ドラゴン』!!」』

 

覇王白竜オッドアイズ・ウィング・ドラゴン 攻撃力3000

 

それは、シティの天空を舞い、人々の視線を釘付けにする程、雄々しく美しい竜だった。頭部、身体、翼、腕、尾、身体中に青白く輝く水晶の刃を身につけた、攻撃的なフォルム。それを調和させる陽光を反射する純白のボディ。

『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』とは違う、『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』の面影を残しながら進化した姿に、赤と緑のオッドアイ。

 

最初に人々の頭に浮かんだのは、『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』と『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』。そして『覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』の3体。

そう、覇王黒竜が『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』と『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』を合わせた姿なら、このカードは『オッドアイズ』と『クリアウィング』、ペンデュラムとシンクロを調和させた、覇王白竜。

遊矢とユーゴの絆の竜が、フィールドに飛翔した。

 

「覇王……白竜だと……!?」

 

「これが――俺達の新たな切り札!」

 

『未来を切り開く、光の刃!』

 

「成程……だとしても貴様の前に立ち塞がるは、究極のシンクロモンスター!人々の未来を願う想いが生み出した、希望のカードだ!」

 

そう、『覇王白竜オッドアイズ・ウィング・ドラゴン』も確かに特別な力を持つカードだが、彼のフィールドに存在する『シューティング・クェーサー・ドラゴン』はそれ以上に特別なモンスター。

未来を、世界を救った英雄の切り札。神である赤き竜をも超えるべく、人々の想いが造り出したカード。遊矢のカードとは、規模が違う。

 

「それがどうした!未来を願う希望なら、今このシティに溢れてる!」

 

『このシティ中に放たれた切り札1つ1つが1人1人にとっての特別なカードなんだよ!』

 

だが、そんな事は関係ない。例え相手が神のカードでも、普通の者が使う、心から信頼し愛着を持つ普通のカードが敵わぬと、誰が決めたのか。

小さき者が大きな者を打ち倒す。それが――デュエルモンスターズの醍醐味の1つだろう。

 

「なら――そのカードも、数ある特別の1枚に過ぎない!」

 

「ッ!言ってくれる……!」

 

「『レッド・ミラー』を回収し、バトル!この瞬間、覇王白竜の効果発動!」

 

『シンクロ召喚したこのカードが存在する場合、お互いのバトルフェイズに、相手フィールドのレベル5以上のモンスターを全て破壊する!』

 

「ぐっ……!?」

 

覇王白竜が青く輝く翼を広げ、電子基板のような紋様が浮かび上がり、針となって『シューティング・クェーサー・ドラゴン』を突き刺し、身動きを封じて突進、鋭き翼の刃で切り裂く。

爆発し、黒煙を上げる『シューティング・クェーサー・ドラゴン』。だがまだだ、まだこのモンスターの効果は残っている。

 

「『シューティング・クェーサー・ドラゴン』がフィールドを離れた事で、エクストラデッキから『シューティング・スター・ドラゴン』を呼び出す!」

 

シューティング・スター・ドラゴン 攻撃力3300

 

「覇王白竜で、『シューティング・スター・ドラゴン』を攻撃!」

 

「『シューティング・スター・ドラゴン』の効果発動!このカードを除外し、攻撃を無効に――」

 

『させるかよ!罠発動、『もの忘れ』!その効果を無効にし、『シューティング・スター・ドラゴン』を守備表示に変更!』

 

「しまっ――!?」

 

攻撃力で劣る覇王白竜で攻撃、何かあると思い、その攻撃を無効にしようとする白コナミだが、それこそが遊矢の狙い。

効果を無効にした上で覇王白竜の攻撃力より低い守備力を剥き出しにさせ、青い刃で切り裂く。一歩間違えれば反射ダメージを受け、敗北していたと言うのに。

 

「『マジック・キャンセラー』でダイレクトアタック!」

 

「墓地の『クリアクリボー』を除外し、1枚ドロー!」

 

白コナミ 手札1→2

 

「ドローしたカードは『絶対王バック・ジャック』!特殊召喚し、戦闘を引き継ぐ!」

 

絶対王バック・ジャック 守備力0

 

「墓地に送られたバック・ジャックの効果でデッキトップを操作し、デッキトップの罠カードをセットする!」

 

「カードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

「罠発動、『集いし願い』!!」

 

「ッ!」

 

だが――白コナミも負けてはいない。『シューティング・クェーサー・ドラゴン』が倒されたと言うなら、更に強大なモンスターを呼び出せば良い。

彼の、真の切り札をもってして。

 

「俺の墓地に5種類以上のドラゴン族シンクロモンスターが存在する事で、エクストラデッキから『スターダスト・ドラゴン』をシンクロ召喚扱いで呼び、このカードを装備する!集いし願いが新たに輝く星となる。光差す道となれ!シンクロ召喚!飛翔せよ、『スターダスト・ドラゴン』!!」

 

スターダスト・ドラゴン 攻撃力2500

 

最後に立ち塞がるは、白コナミのエースモンスター。かつて『シューティング・クェーサー・ドラゴン』と共に、未来を切り開いた白き竜。

『スターダスト・ドラゴン』は直ぐ様アーククレイドルに宿り――機械のボディが光で塗り潰され、本物の『スターダスト・ドラゴン』に変化する。

見ようによれば、白コナミと巨大『スターダスト・ドラゴン』が一体化したような姿だ。

 

「そして装備モンスターの攻撃力は俺の墓地のドラゴン族シンクロモンスターの攻撃力の合計分アップする!」

 

スターダスト・ドラゴン 攻撃力2500→30100

 

「攻撃力……」

 

『30100……!』

 

圧倒的攻撃力。圧倒的巨体を前に、遊矢とユーゴが冷や汗を浮かべる。何と言う男だ。ここに来て――とんでもない手を使って来た。

 

「更に永続罠、『王宮の鉄壁』を発動!これで互いのカードを除外出来ない……つまり、『集いし願い』のデメリット効果は無くなった訳だ」

 

榊 遊矢 LP100

フィールド『覇王白竜オッドアイズ・ウィング・ドラゴン』(攻撃表示)『マジック・キャンセラー』(攻撃表示)

セット1

Pゾーン『EMオッドアイズ・シンクロン』

手札1

 

「俺のターン、ドロー!スタンバイフェイズ、『堕天使マリー』の効果でLPを回復!」

 

白コナミ LP2550→3150

 

「『彼岸の悪鬼アリキーノ』を召喚」

 

彼岸の悪鬼アリキーノ 攻撃力1200

 

「召喚後、自壊し墓地に送られた事で覇王白竜の効果を無効にする。バトル!『スターダスト・ドラゴン』で『マジック・キャンセラー』へ攻撃!」

 

「手札の『レッド・ミラー』の効果を発動し、罠発動、『ガード・ブロック』!ダメージを0にして1枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札1→2

 

「魔法カード、『命削りの宝札』!3枚ドロー!」

 

白コナミ 手札0→3

 

「カードを2枚セット、ターンエンドだ。残る手札を捨てる」

 

白コナミ LP3150

フィールド『スターダスト・ドラゴン』(攻撃表示)

『集いし願い』『王宮の鉄壁』セット3

手札0

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「永続罠、『エンジェル・リフト』!墓地の『レッド・リゾネーター』を特殊召喚し、それにチェーンして永続罠、『輪廻独断』を発動!墓地のモンスターの種族をドラゴン族に、『スターダスト・ドラゴン』の攻撃力アップ!」

 

スターダスト・ドラゴン 攻撃力30100→60600

 

レッド・リゾネーター 攻撃力600

 

「そして『レッド・リゾネーター』の効果で『スターダスト・ドラゴン』の攻撃力分回復!」

 

白コナミ LP3150→63750

 

攻撃力60600に加え、LP63750。圧倒的な数値が遊矢達の前に立ち塞がる。対する遊矢のLPは100。限界ギリギリまで追い詰められてしまっている。

なのに何故、何故かこの少年の口元には――満面の笑みが浮かべられているのだろうか。

 

「スゲェ……!」

 

『遊矢……?』

 

そして、直ぐ様寂しそうな顔を見せる遊矢に、ユーゴが思わず彼の名を呼ぶ。

遊矢が思うのは自身の友、コナミの事。白コナミのデュエルを見て、やはり彼もコナミなんだなと唇を噛み締める。

見ているだけで、心のどこかがワクワクするデュエル。遊矢が目指す。いや、目指したデュエル。こんなものを見せられては――じっとしていられない。

 

「だからこそ、超えたい!この凄いデュエルより更に凄いデュエルがやりたいんだ!やめられないな!これだから……デュエルは!」

 

『……へへ、そうだよなぁ。こんなもの見せられて、デュエリストの血が、騒がない訳がねぇ!』

 

遊矢は、この光景を前にしても絶望よりも、希望を見る。

シンクロ次元に来たばかりの彼ならばここで、いや、ここに来るまでに折れていたかもしれない。

だが、遊矢はこのシンクロ次元で様々な人と会い、デュエルをし、想いをぶつけ合って成長した。

ジャックやシンジ、セルゲイ、ユーゴと闘い、彼の、彼等の想いはシティをも変えた。ならば、

やれない事など何もない。

後一歩、後一歩なのだ。後少しで届くのに――ここで止まれる訳がない。明日はもう、目の前にあるのだから。

 

「魔法カード、『光の護封剣』!速攻魔法、『リロード』!そして魔法カード、『命削りの宝札』!」

 

『こっちも3枚ドロー!』

 

榊 遊矢 手札0→3

 

「バトル!」

 

「その前に罠発動、『弩弓部隊』!『レッド・リゾネーター』をリリースし、覇王白竜を破壊!」

 

「ッ、モンスターゾーンで破壊されたこのカードはペンデュラムゾーンに置かれる!俺はカードを3枚セット、ターンエンド!」

 

榊 遊矢 LP100

フィールド

『光の護封剣』セット3

Pゾーン『覇王白竜オッドアイズ・ウィング・ドラゴン』『EMオッドアイズ・シンクロン』

手札0

 

「俺のターン、ドロー!『堕天使マリー』の効果で回復!」

 

白コナミ LP63750→64350

 

「速攻魔法、『サイクロン』!『光の護封剣』を破壊!バトル!」

 

「させるか!罠発動、『威嚇する咆哮』!」

 

「チッ、ターンエンドだ」

 

白コナミ LP64350

フィールド『スターダスト・ドラゴン』(攻撃表示)

『集いし願い』『王宮の鉄壁』『輪廻独断』

手札0

 

強い、強い、強い――目の前に存在するは、間違いなく今までで闘って来た中で最強のデュエリスト、最強のモンスター。

だが、少年の心に絶望はなく、むしろ心が踊る、心が騒ぐ。この圧倒的危機を乗り越えるのは正しく奇跡に等しいだろう。

ならば――起こして見せよう、奇跡を。この手で。想いを繋いだ、この両手で。

 

「Ladies and Gentleman!」

 

さぁ、榊 遊矢のエンタメデュエルの終幕だ。シティ中に響き渡る程の声量で放たれたそれに、全ての人々が表情を明るくし、遊矢とユーゴと共に、お決まりの台詞を轟かせる。

 

『「お楽しみは、これからだぁっ!!」』

 

皆、一斉にカードを引き抜き、虹の軌跡が天にかかる。皆の切り札が、想いが、今遊矢の周りに集まっていく。

 

「ペンデュラム召喚!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』ッ!!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力2500

 

「シンクロ召喚!『ナチュル・ガオドレイク』!」

 

「ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!『RRーレヴォリューション・ファルコン』!!」

 

「シンクロ召喚!『トライデント・ドラギオン』!」

 

「シンクロ召喚!『パワー・ツール・ドラゴン』!!」

 

「シンクロ召喚!『ラヴァル・ステライド』!」

 

現れたのは二色の眼を輝かせる遊矢のエース。『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』。その周囲に、モンスターが集まっていく。

 

「今更『オッドアイズ』だと……?何のつもりだ!」

 

「こう言うつもりだ!リバースカード、オープン!魔法カード、『ギャップ・パワー』!『オッドアイズ』の攻撃力を、お前のLPから、俺のLPを引いた数値分アップ!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力2500→66750

 

「融合召喚!『CCC武融化身ウォーターソード』!!」

 

「シンクロ召喚!『ライトエンド・ドラゴン』!」

 

「シンクロ召喚!『魔聖騎士皇ランスロット』!!」

 

「シンクロ召喚!『妖精竜エンシェント』!!」

 

「シンクロ召喚!『神海竜ギシルノドン』!」

 

いきなり『スターダスト・ドラゴン』の攻撃力越え、『オッドアイズ』の周囲に、更に皆のモンスターが集まり、騒がしくなって来る。だが、まだまだこれから。

 

「ッ!」

 

「更に罠発動、『不屈の闘志』!『オッドアイズ』の攻撃力を、『スターダスト・ドラゴン』の攻撃力分アップする!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力66750→127350

 

「融合召喚!『デストーイ・サーベル・タイガー』!!」

 

「エクシーズ召喚!『ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン』!!」

 

「融合召喚!『ゴヨウ・エンペラー』!!」

 

「シンクロ召喚!『武力の軍曹』!」

 

「アドバンス召喚!『スカル・フレイム』!!」

 

更に高く、最早『オッドアイズ』の姿が見えぬ程、無数のモンスターが天を舞う。

 

「さぁ、バトルだ!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』で、『スターダスト・ドラゴン』を攻撃!」

 

「させるかぁ!アクションマジック、『回避』!攻撃を無効にする!」

 

「ペンデュラム召喚!『魔界劇団ービッグ・スター』!!」

 

「シンクロ召喚!『ゼラの天使』!」

 

「融合召喚!『おジャマ・キング』!!」

 

「エクシーズ召喚!『LLーアセンブラリー・ナイチンゲール』!!」

 

「シンクロ召喚!『ヴァイロン・エプシロン』!」

 

この一撃を食らえば、即死。流石に白コナミも焦りを浮かべ、『オッドアイズ』の攻撃を防ぐ。が――ニヤリ、遊矢は悪どい笑みを浮かべる。

 

「無効に、したな?」

 

「何を――まさ、か……!?」

 

「そのまさかだ!速攻魔法、『ダブル・アップ・チャンス』!」

 

「シンクロ召喚!『カラクリ大将軍武零怒』!」

 

「儀式召喚!『リトマスの死の剣士』!!」

 

「シンクロ召喚!『デーモンの招来』!」

 

「シンクロ召喚!『WWーウィンター・ベル』!!」

 

「シンクロ召喚!『獣神ヴァルカン』!」

 

「俺の攻撃が無効になった事で、『オッドアイズ』の攻撃力を倍にし、再攻撃する!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力127350→254700

 

「攻撃力……254700だとぉっ!?」

 

ぞくぞくと、空いっぱいに、シティ中にモンスターが怒濤の展開を見せ、『オッドアイズ』に集まり――今、アーククレイドルにも負けない程の巨大な『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を作り出す。

これが――榊 遊矢、いや、シティ全体が1つになったエンタメデュエル。超弩級のデュエルに、白コナミも帽子の奥の眼を見開き、パクパクと口を開く。

 

「さぁ、ハナテ!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』で、『スターダスト・ドラゴン』へ攻撃!螺旋のストライクバーストォッ!!」

 

『まだまだ行くぞぉっ!『覇王白竜オッドアイズ・ウィング・ドラゴン』のペンデュラム効果で、『スターダスト・ドラゴン』の攻撃力分、『オッドアイズ』の攻撃力をアップする!』

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力254700→315300

 

そして――最後に、シティ上空に星屑纏う純白の竜が現れ、『オッドアイズ』の一部と化し、全てのモンスターによる攻撃が、『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』のアギトより、螺旋状の光線として放たれ――白コナミを呑み込む。

 

「最後だ。『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』の効果により……この戦闘ダメージは倍、509400となる。リアクション・フォース!!」

 

白コナミ LP66750→0

 

全てを呑み込む、超弩級の一撃必殺。虹色に染まった光の熱線が、アーククレイドルを吹き飛ばし――直線上の黒煙を消し飛ばし、快晴の青空が広がる。

何てとんでもないデュエル。文字通りに、シティ中の想いを乗せた攻撃、単純にして豪快、相手にするには余りに馬鹿馬鹿しいダメージ量を受け、崩れていくアーククレイドルの中から、ボロボロになったDーホイールと共に、落下する白コナミが今になって漸く現実を受け止めて、クスリと吹き出す。

 

「くっ、ははっ、はははははっ!50万っ、50万までいくか!脳筋にも程があるだろう……っ!ハハハハハ!ここまでの相手は久し振りだ……!ここまでやられたら、満足するしかないな。くく、あぁ――羨ましいものだ」

 

最早ここまで来ると笑うしかないと、白コナミが大爆笑し、腹を抱える。50万、これに比べれば、自身の何とちっぽけな事か。

白コナミは天をあおぎ、晴れ晴れとした笑みを浮かべる。そして、その帽子の奥の目を細め、口を開く。

 

「お前は仲間に恵まれているんだな」

 

あの日、自身がコナミと闘い、勝利し、彼から全てを奪った日を思い出す。

コナミが、最後に放った台詞を。

戯れ言と笑った、彼の予言を。

 

――話は済んだか?言い残した事も――

 

――……ハッ、優しい事だな。あぁ――言い残す事か、なら、お前にくれてやる――

 

――?――

 

――貴様は――

 

「榊 遊矢に、負ける……か」

 

スッ、と、何かが抜け落ちる感覚が、白コナミを襲った。

 

「ハァ……ハァ……!」

 

あれだけ巨大だったアーククレイドルが、一撃で消し飛んだ光景を見て、遊矢の身体にこれまで溜まった疲労が襲いかかる。

当たり前だ。勝ちはしたが、白コナミは間違いなく遊矢より格上。そんな敵を相手に、遊矢はシティの命運と言う特大のプレッシャーを背負い、闘い抜いた。

ハイになって忘れていた、蓄積された疲れで力が抜け、Dーホイールがふらつき、そのショックで気を取り戻して何とか姿勢を正す。見ている者からすれば冷や汗ものだ。

 

「……勝った……のか……?」

 

何度も何度も、ピンチを凌ぎ、不死鳥の如く蘇り、遊矢を苦戦に陥らせた相手に勝利した事に、未だ半信半疑なのか息を切らせて呆然とする遊矢。

無理もない。これでとどめ、と言う所で防がれ続けたのだ。そんな遊矢の独り言に――答えたのはこのデュエル、誰よりも傍で遊矢と共に闘い、導き、見守った少年、ユーゴだ。

デュエルが終わった事でシンクロが解かれたのか、以前までのユートのように半透明な身体を宙に浮かせ、呆れたように笑う。

 

『何言ってんだ。あんなとんでもねぇ一撃カマしておいて……勝ったんだよ、俺達が。へへ、良く頑張ったな……おめでとう、遊矢』

 

「――あ――」

 

暖かい祝福の言葉を受け、漸く遊矢が勝利を受け止める。それと同時に、頑張ったなと言う労いの言葉が、本当に遊矢の今までの頑張りを認めてくれる事を感じて。

報われた事を、理解して。つぅー、と遊矢の目から自然と涙が溢れ出す。

 

『お、おい!?』

 

「あ、え……うん……俺、頑張って……本当に頑張って……!シティを何とかしたいって思って……でも出来なくて……!」

 

『……おう』

 

「俺1人の力じゃ何にも出来なくて……!皆が俺を助けてくれてっ、支えてくれてっ!……うっ、ぐ、うぅ~っ!」

 

『……おう』

 

それは、遊矢が漸く見せた、本音の弱音。14歳の少年が、今の今までシティの命運を背負っていたのだ。その重責は如何なるものか。大粒の涙を溢れさせ、泣き崩れる友を見て、ユーゴは暖かく彼に応える。

これも本当の遊矢だ。誰かの不幸を嘆き、怒り、誰かの幸福を喜び、どんな逆境でも笑顔を失わず、優しい人も、愚かな人も守ろうとするデュエリスト。誰かの為に勇気を出せる者。

 

そして――本当は、ほんの少ししかないなけなしの勇気を振り絞る、不安と恐怖に押し潰れそうになる、どこにでもいる普通の少年。

それが――榊 遊矢だったのだ。胸を張る姿の、何と勇ましい事か。不安に押し潰れようとする背中の、何と小さな事か。

榊 遊矢は――最強で、最弱のデュエリストだった。

 

「でもやっと……シティが1つになって……!俺、俺……っ!」

 

『……あー、もう!分かったからメソメソすんな!折角勝ったのに気分が台無しだろ!シャンとしろ!お前は今日からキングなんだからよ!』

 

「ぐぅぅ……!分かっ、てる、よぉ……!」

 

そんな遊矢を見て、元気になって欲しい、笑っていて欲しいと、ユーゴが檄を飛ばす。

何とも強引な、彼らしい発破のかけかただ。

 

遊矢はライダースーツの袖で涙を拭い、息をつく。そうだ、白コナミに勝ったと言う事は、決勝戦に勝ち、優勝したと言う事。キングの称号を得ると言う事だ。

皆が見ている、情けない姿を見せる訳にはいかないと、目を赤く腫らしつつも表情を引き締める。

 

『そーそー!俺に似た男前の顔してんだ!それに晴れの舞台に涙は似合わないぜ!』

 

「……ああ、ありがとな、ユーゴ」

 

頼もしいユーゴに叱咤に頷き、今、遊矢がDーホイールをスタジアムに停止させ、地面に降り立つ。

今まで空を飛んでいたからか、未だにフワフワとした感覚が残る。たたらを踏みながらも立ち、目の前の観客席には何と、シティ中の人々が溢れかえらんばかりに存在しているではないか。

 

「良くやったじゃねぇか遊矢っ!この野郎!」

 

「うわっ!クロウ!?」

 

呆然とする遊矢の下に、クロウが駆け寄りワシャワシャと子供達にするように力強く撫で回す。少々痛く、くすぐったいが悪くない感覚だ。

まるで兄にされる弟のように受け止めていると、今度はジャックが歩み寄る。

 

「皆、お前の事を出迎えたかったのだろう。シティの新たなキングをな。おめでとう、遊矢」

 

「ジャック……」

 

「だが忘れん事だ。その座、直ぐ様俺に奪い取られる、一瞬の栄光である事を――」

 

「まぁまぁ、コイツの事は置いといて」

 

「おいクロウ貴様!」

 

「今は真面目な話をしてんだよ!」

 

「貴様俺の話は真面目でないと言うのか!?」

 

「……」

 

ギャーギャーとうるさく騒ぎ、喧嘩をし始める2人に対し、遊矢が戸惑いながらも、何故かこれが本来の2人なんだと納得、安心してしまう。

と、そんな時、スタジアム上空でヘリが羽ばたき、メリッサが姿を見せる。

 

『さぁさぁ喧嘩し始めた2人はもう放っといて……長きに渡るフレンドシップカップ!激闘を勝ち抜き、決勝戦、シティの未来を賭けた最後の闘いに勝利したのは――』

 

それは、雲一つない、青空の下での出来事だった。近未来的な建築物が並び立つ中、長いデュエルレーンと繋がった巨大なスタジアム。

どこもかしこも観客で満席、街中には中継が写されている中、人々は忘れられていた伝説を目撃する。

スタジアム中心のサーキット、人々の目が釘付けとなっているのは、そこにいる3人のデュエリストの存在。

 

1人は、長身の男、金髪に白いライディングスーツ、鋭い眼光は王者の如し、ジャック・アトラス。

1人は箒のような髪型をした、小柄な男、バンドで髪を留め、額にM字のマーカー、それらと同じようなマーカーが顔中に刻まれている、クロウ・ホーガン。

そしてもう1人は――赤と緑の髪にゴーグルを頭にかけた少年、榊 遊矢。

人々はこの衝撃的な光景をその目にし、記憶に刻みつけ、忘れる事はないだろう。

彼等は――。

 

『チーム、ARCー5D's!!』

 

鳴り止まぬ歓声が、スタジアムに降り注ぐ。そんな時、遊矢の視界の端に何かが写り、途端に慌てた彼が再びDーホイールに乗り、空を飛翔した。




コナミ「……」
遊矢「……謝れよ、ユーゴ」
ユーゴ「!?」

最早白コナミいじめ。それだけ痛い目を見る事やらかしたからしょうがないね。多分生きてるし。

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