シティの遥か上空にて、巨大な竜の形を模したDーホイール、アーククレイドルと、それに比べて余りにも小さなDーホイールが飛び交い対決していた。
アーククレイドルに搭乗、否、一体化しているのは白コナミ。このシティをも滅ぼしかねない圧倒的な力を誇るデュエリスト。
対する赤い尾を伸ばすDーホイールに乗るのは榊 遊矢。今やこのシティを救う、たった1つの希望だ。
やや白くなりつつ夜空でさながら流星の如く飛行し、時よりアーククレイドルを破壊した事で落下する残骸を処理し、アーククレイドル自身が街にぶつからないよう誘導し、不格好に飛ぶ彼を見上げ、シティの住民が胸を抑える。
「……まだあんな若い子供が、シティの為に、俺達の為に闘ってくれている……」
「そうだよ、シティ生まれでもないのに、命懸けで……」
彼等は、遊矢の試合を見ていた者だった。遊矢の言葉を聞いていた者だった。だから彼等は知っている。榊 遊矢が彼等シティの住民の事を余り快く思っていない事を。
実際そうだ。遊矢はユーゴやシンジ、ジャックやクロウ、牛尾達の事を好んでいても、フレンドシップカップを見ていた観客達のようなシティの人間を好んでいない。むしろ嫌いとも言える。それは遊矢が彼等の事を知らない事を差し引いても当然の事だった。
だからこそ遊矢は彼等に少しでも変わる事を望んだのだ。
そんな、彼等を嫌っている筈の遊矢が――彼等の日常を守る為に命を賭け闘っている。そんな姿を見てしまっては、彼等の心にも何とかしなければ、どうにかしなければと言う焦りも生まれる。
遊矢やジャック、クロウの助けになりたいと言う想いも生まれてくる。
シティの構造を嘆き、怒るだけしかせず、行動を起こそうとしないコモンズ。コモンズを侮蔑し、自らの地位を守る事だけに頭がいっぱいなトップス。そんな人間としての愚かしさを持つ彼等が、遊矢や今、彼等を守るランサーズを見て、変わっていた。
「チクショウ!あんな子供が必死で闘ってくれているって言うのに……俺達は、俺は……!何か出来る事はねぇのかよ!俺が、アイツ等の為にしてやれる事は!」
無力なままでも構いもしなかった彼等が、無力さに地面に拳を打ち付ける。されど後悔は先に立たず、今更悔やんでも、無力な彼等に出来る事など――。
「あるぞ!」
「うむ!」
あったよ!出来る事が!でかした!と彼等の前に駆けつけたのは、1人の男と1人の少女、そして一匹の小猿の姿。
オールバックの黒髪の男と、紫の髪をポニーテイルに結んだ少女。そしてデュエルディスクを背負った猿だ。
「あ、あんたは確か、榊 遊矢と一緒のチームだった……!」
「セレナだ!」
「そしてこの猿は……」
「キキー」
「ああ!コイツは猿のSAL」
「SAL?」
「アカデミアでは伝説になっているデュエルをするSALだ」
「ふーん、伝説って?」
「ああ!」
そう、彼等の前に現れたのはセレナとSAL。一回戦、二回戦と遊矢とユーゴと共にチームランサーズとしてフレンドシップカップで闘ったデュエリストだ。
突然現れた彼等に対し、シティの住民は驚き、訝しみつつも、彼女等が言う遊矢の助けになる方法について訪ねる。
「ところであいつ等の助けになれる事って?」
「ああ!」
「いや、だからその方法を……」
「それって『ハネクリボー』?」
「ダメだコイツ!話が通じねぇ!」
住民の質問に対し、聞いているのかいないのか、良く分からない問答を続けるセレナに対し、頭を抱える男達。
一体どうすれば良いのか、そんな時――チョンチョン、男の肩が何者かに控えめに突かれ、「んんっ」とわざとらしい咳払いが響く。
反射的に振り返ると、そこにいたのは今の今までガン無視されていたオールバックの男、三沢 大地だった。
「……ええと、あんた誰?」
「三沢 大地」
「……何時からいたの?」
「ずっと」
「む、いたのか。えーっと……うん……」
「だから三沢だって言ってるだろ!忘れたなら忘れたと言え!そっちの方がマシだ!」
「そんな事よりあいつ等の助けになれる方法って何だよ!?」
「そんな事って……まぁ良い、シティ住民、全員の力を貸せ」
「い、一体何を……」
「なぁに、自分の事は自分で守る。自分の街は自分で守る。ただそれだけの事だ」
ニヤリ、不敵な笑みを浮かべる三沢。その左腕に装着したデュエルディスクが、キラリと光を反射させた――。
――――――
『「俺のターン、ドロー!」』
一方、上空でぶつかり合う遊矢と白コナミのデュエルは後半戦へともつれ込んでいた。
2人のLPはどちらも3桁を切っている。互いに何時終わってもおかしくない程の数値だ。
そんな中、白コナミは圧倒的な実力を見せつけ、自らのエースである『スターダスト・ドラゴン』の進化体3種を召喚。『シューティング・スター・ドラゴン』、『セイヴァー・スター・ドラゴン』、『スターダスト・ドラゴン/バスター』と言う過剰戦力で遊矢を追い詰めるが――遊矢も足掻きに足掻く。
『セイヴァー・スター・ドラゴン』の効果でフィールドを全滅させられるも、彼の中に眠っていたユーゴが覚醒、『SRメンコート』の効果によって遊矢を助けてくれたのだ。
現在の脅威は『シューティング・スター・ドラゴン』と『スターダスト・ドラゴン/バスター』の2体。この2体を叩かねば遊矢に勝利はない。
されど不安もない。今の遊矢には頼もしい味方、ユーゴがいるのだ。
『よっしゃ、ここは『クリアウィング』を出して大逆転だぜ!え?墓地……?マジで?』
頼もしい……のだろうか?だがこの相変わらずの馬鹿さが良い感じに緊張をほぐしてくれた。
「全く、気が抜けるよ。俺は魔法カード、『振り出し』を発動!手札を1枚捨て、『/バスター』をバウンスする!」
「『/バスター』をリリースし、その効果を無効!」
「当然そうするしかないよな!俺はたった今墓地に送った『シャッフル・リボーン』の効果発動!」
『墓地のこのカードを除外し、フィールドに存在する『SRメンコート』をデッキに戻して1枚ドロー!』
榊 遊矢 手札3→4
『まだまだ飛ばしていくぜぇっ!』
「『EMダグ・ダガーマン』をセッティング!そのペンデュラム効果で墓地のセカンドンキーを回収!」
「俺は手札の『増殖するG』を捨て、このターンお前が特殊召喚する度にドローする!」
スケールを整えつつ、手札を補充。これが遊矢の基礎となる戦術だ。彼らしさがここになって出て来た。ここからが本番と言う訳か。
『「ペンデュラム召喚!」』
そしてペンデュラム召喚。榊 遊矢の代名詞と言える技が炸裂する。『涅槃の超魔導剣士』のスケールは8、ダグ・ダガーマンのスケールは2。つまりレベル3から7のモンスターまでを召喚可能だ。
「『EMボットアイズ・リザード』!『EMセカンドンキー』!『EMシルバー・クロウ』!『EMオオヤヤドカリ』!『EMインコーラス』!」
EMボットアイズ・リザード 攻撃力1600
EMセカンドンキー 守備力2000
EMシルバー・クロウ 守備力700
EMオオヤヤドカリ 守備力2500
EMインコーラス 守備力500
白コナミ 手札0→1
幾度も揺れる振り子の召喚法。遊矢のフィールドに次々と光の柱が舞い降り、光の粒子を散らしてモンスター達が姿を見せる。
モノクルを装着した紫のリザードマン。シルクハットを被ったロバに、鋭い鉤爪を持つ銀狼。マンションのように子ヤドカリを住まわせる親ヤドカリに、カラフルな色合いの3羽のインコ。一気に5体の召喚。正しくペンデュラムの本領発揮だ。
『セカンドンキーの効果で『EM』をサーチする!』
「止める。手札の『灰流うらら』を捨て、その効果を無効にする!」
『通しちゃくれねぇか……!』
「ならこじ開ける!」
『俺好みだな、そいつぁよ!オオヤヤドカリの効果発動!シルバー・クロウの攻撃力を1500アップ!』
EMシルバー・クロウ 攻撃力1800→3300
「そしてボットアイズ・リザードの効果発動!デッキから『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を墓地に送り、名前をコピーする!」
ボットアイズ・リザードが身につけたモノクルを操作し、彼のエース、赤い鱗と真紅と翡翠の眼を持つ竜、『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』の姿を空中に投影、ボットアイズ・リザードに重なる。
『魔法発動!『龍の鏡』!フィールドの『オッドアイズ』となった『ボットアイズ・リザード』と、墓地のクライスを除外し、融合召喚を行う!て、俺にやらすんじゃねぇ!何か恥ずかしいだろ!』
「ええ!?そっちが勝手にやったんだろ!?」
ユーゴが融合召喚を口にし、そのネタ感に妙に気恥ずかしくなって文句を言うも、こればっかりは本人の問題だ。遊矢は一言返して無視し、ユーゴが止めた融合召喚の続きを繋げる。
「今一つとなりて新たな命ここに目覚めよ!」
遊矢の背後に発生した青とオレンジの渦。その中にボットアイズ・リザードと『光帝クライス』が呑み込まれ、混ざり合った瞬間、眩いばかりの光が炸裂、フィールドに炎が出現して逆巻き、新たな渦を作り出す。
『「融合召喚!現れ出でよ!気高き眼燃ゆる勇猛なる龍!『ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!」』
ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力3000
白コナミ 手札0→1
そして炎の中り誕生するのは深紅の炎を思わせる鱗を鎧の如く纏う、赤と緑のオッドアイを輝かせた、巨大な角を持ちし竜。
『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を一回り大きくしたかのような『ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』だ。
「……何だよええ?なんだかんだノリノリじゃないか、融合」
『ううううっせー!融合じゃねぇ、ユーゴだ!』
融合召喚の際、ユーゴが共に声を重ねた事に気づき、遊矢がニヤニヤとした笑みを見せ、ユーゴが狼狽える。どちらも遊矢が行っている為、何とも面白い百面相だ。他人が見れば危ない奴だろう。
冷静に遊矢を導いてくれるユートと、一緒に馬鹿をやりながらも助けになってくれるユーゴ。タイプが異なるが、どちらも遊矢と相性が良く、頼りになる仲間だ。
「さぁてブレイブアイズの効果発動!このカードの融合召喚時、相手フィールドのモンスターの攻撃力を0にする!」
シューティング・スター・ドラゴン 攻撃力3300→0
「そしてこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、攻撃力0のモンスターが発動した効果は無効になる!」
これで『シューティング・スター・ドラゴン』を弱体化させた上に攻撃無効効果を封じた。その代わり、このターン遊矢はブレイブアイズでしか攻撃出来なくなったが。
『さぁ行くぜぇ!ブレイブアイズで、『シューティング・スター・ドラゴン』へ攻撃!』
「灼熱のメガフレイムバーストッ!」
ブレイブアイズがそのアギトに大気を集束、口端でバチリと小さな火花が散り、巨大な火球に変化させて撃ち出す。
「罠発動、『ガード・ブロック』!戦闘ダメージを0にし、ドロー!」
白コナミ 手札1→2
「カードを1枚セット、ターンエンドだ!」
「だが俺にはまだ、『/バスター』が残っている!」
スターダスト・ドラゴン/バスター 攻撃力3000
榊 遊矢 LP600
フィールド『ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』(攻撃表示)『EMシルバー・クロウ』(守備表示)『EMセカンドンキー』(守備表示)『EMオオヤヤドカリ』(守備表示)『EMインコーラス』(守備表示)
セット1
Pゾーン『涅槃の超魔導剣士』『EMダグ・ダガーマン』
手札0
「俺のターン、ドロー!楽しいじゃないか、バトル!『/バスター』でブレイブアイズへ攻撃!」
「相討ち狙いか……迎え撃て!」
星屑纏う『スターダスト・ドラゴン/バスター』の風のブレスと、勇猛なる『ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』の火炎のブレスがフィールド中央でぶつかり、大爆発を巻き起こし、近場にいた2体を粉々に吹き飛ばす。
が――吹き飛ばされたのはブレイブアイズと、『/バスター』の鎧のみ。立ち込める黒煙の中から、一切の傷の無い『スターダスト・ドラゴン』が飛び出す。
「『/バスター』が破壊された時、その進化元のモンスターを蘇生する!」
スターダスト・ドラゴン 攻撃力2500
「『スターダスト・ドラゴン』で、セカンドンキーへ攻撃!」
「ぐっ!?」
「メインフェイズ2、魔法カード、『アドバンスドロー』!『スターダスト』をリリースして2枚ドロー!」
白コナミ 手札2→4
「魔法カード、『ライトニング・ボルテックス』!手札を1枚を捨て、相手フィールドの表側表示モンスターを全て破壊!」
『チッ!』
「速攻魔法、『サイクロン』!『涅槃の超魔導剣士』を破壊!カードを1枚セット、ターンエンドだ」
白コナミ LP50
フィールド
セット1
手札0
「俺のターン、ドロー!『EMリザードロー』をセッティング!ペンデュラム召喚!『EMドクロバット・ジョーカー』!『EMシルバー・クロウ』!『EMオオヤヤドカリ』!『EMインコーラス』!『曲芸の魔術師』!」
EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800
EMシルバー・クロウ 攻撃力1800
EMオオヤヤドカリ 守備力2500
EMインコーラス 守備力500
曲芸の魔術師 守備力2300
ペンデュラム召喚。再び大量展開が炸裂し、遊矢のフィールドに5体のペンデュラムモンスターが現れる。
しかし、白コナミはこの時こそを待っていた。
「罠発動、『裁きの天秤』!俺のフィールドと手札、そしてお前のフィールドのカードの差分ドローする!俺のフィールドはこのカードとアクションフィールドの2枚、お前のフィールドは9枚!よって7枚のドロー!」
白コナミ 手札0→7
『コナミのこう言う所が厄介だぜ……』
ペンデュラム召喚を逆手にとって大量ドロー。7枚もの手札補充にユーゴが呆れたような声を出す。ペンデュラム召喚は確かに強力だ。何せ召喚権を使わず、高レベルのモンスターだろうとスケールがあれば最大5体まで呼び出せる。
しかし、同時にこう言った相手フィールドのカードに依存する効果には弱い。モンスターに加え、スケールまであるのだから。
「『EMリザードロー』のペンデュラム効果!このカードを破壊し、1枚ドロー!」
榊 遊矢 手札0→1
『そしてオオヤヤドカリの効果発動!シルバー・クロウの攻撃力を1200アップ!』
EMシルバー・クロウ 攻撃力1800→3000
「バトルだ!シルバー・クロウでダイレクトアタック!」
「墓地の『クリボーン』を除外、『クリアクリボー』を蘇生!」
クリアクリボー 守備力200
EMシルバー・クロウ 攻撃力3000→3300
EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800→2100
EMオオヤヤドカリ 攻撃力500→800
EMインコーラス 攻撃力500→800
「くっそ……!破壊してドクロバット・ジョーカーでダイレクトアタック!」
「『クリアクリボー』の効果発動!」
白コナミ 手札7→8
「引いたカードは『ジャンク・ブレーダー』だ」
ジャンク・ブレーダー 守備力1000
「破壊してメインフェイズ2へ。カードを1枚セット、ターンエンドだ」
榊 遊矢 LP600
フィールド『EMドクロバット・ジョーカー』(攻撃表示)『EMシルバー・クロウ』(攻撃表示)『EMオオヤヤドカリ』(守備表示)『EMインコーラス』(守備表示)『曲芸の魔術師』(守備表示)
セット2
Pゾーン『EMダグ・ダガーマン』
手札0
「俺のターン、ドロー!速攻魔法、『リロード』!魔法カード、『調律』!デッキから『ジャンク・シンクロン』をサーチ!俺のフィールドにモンスターが存在しない事で手札の『ジャンク・フォアード』を特殊召喚!」
ジャンク・フォアード 守備力1500
白い装甲を纏った機械戦士がフィールドに飛び出す。特殊召喚が容易な下級モンスターの1種だ。
「『ジャンク・シンクロン』を召喚!」
ジャンク・シンクロン 攻撃力1300
「召喚時、墓地の『チューニング・サポーター』を蘇生!」
チューニング・サポーター 守備力300
「レベル1の『チューニング・サポーター』と、レベル3の『ジャンク・フォアード』に、レベル3の『ジャンク・シンクロン』をチューニング!集いし叫びが木霊の矢となり空を裂く!光差す道となれ!シンクロ召喚!出でよ、『ジャンク・アーチャー』!」
ジャンク・アーチャー 攻撃力2300
シンクロ召喚、白コナミのフィールドに現れたのは鳥帽子を模した縦長の頭部にオレンジ色のボディ、弓矢を持った機械戦士だ。
これで白コナミが呼び出したシンクロモンスターは14体。残るシンクロモンスターは1体、恐らく切り札であるあのモンスターだろう。随分と掘り出したものだ。
「『チューニング・サポーター』の効果でドロー!」
白コナミ 手札5→6
「『ジャンク・アーチャー』の効果発動!『EMオオヤヤドカリ』を除外!ディメンジョン・シュート!」
『ジャンク・アーチャー』が矢をつがえ、『EMオオヤヤドカリ』に狙いを澄まして放つ。すると矢が命中したオオヤヤドカリがギュルリと渦巻き縮小、最初から何もなかったように消えてしまう。
「速攻魔法、『大欲な壺』!除外されている『EMオオヤヤドカリ』、『ジャンク・ウォリアー』、『ジャンク・デストロイヤー』をデッキに戻し、1枚ドローする!」
白コナミ 手札5→6
『ジャンク・アーチャー』の効果は一時的なもの。そこで白コナミは『大欲な壺』を併用する事でデッキバウンスとドローに変換する。
オオヤヤドカリは最大1500ポイント、ペンデュラムモンスターの攻撃力を上げる厄介なモンスターだ。守備力も高く、潰しておくに越した事はない。
「魔法カード、『磁力の召喚円LV2』を発動!手札からレベル2以下の機械族モンスター、『シンクロン・キャリアー』を特殊召喚!」
シンクロン・キャリアー 守備力1000
「『シンクロン・キャリアー』がいる限り、『シンクロン』モンスターの召喚権が増える。来い、『シンクロン・エクスプローラー』!」
シンクロン・エクスプローラー 攻撃力0
「エクスプローラーの召喚時、墓地の『ジャンク・シンクロン』を蘇生!」
ジャンク・シンクロン 攻撃力1300
「場にチューナーモンスターが存在する事で、墓地の『ボルト・ヘッジホッグ』を蘇生!」
ボルト・ヘッジホッグ 守備力800
次々と白コナミに低レベルモンスターが現れ、ついにモンスターゾーンが埋まる。相変わらず凄まじいものだ。とは言えその代償も大きく、中々の手札を消費してしまったが。
「レベル2の『シンクロン・エクスプローラー』に、レベル3の『ジャンク・シンクロン』をチューニング!シンクロ召喚!『ジャンク・ウォリアー』!!」
ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300
再びフィールドに登場する白いマフラー、青いボディの機械戦士。『スターダスト・ドラゴン』程じゃないにしろ、白コナミはこのモンスターにただならぬ想いを持っており、重宝しているカードだ。
何よりこのカードでし突破出来ない状況がある、と言うのも大きい。
攻撃力に関する効果なら『ニトロ・ウォリアー』や『ジャンク・バーサーカー』がいるが、前者は制限があり、後者は相手に作用するもの。底抜けに攻撃力を高める『ジャンク・ウォリアー』には爆発力がある。
「『ジャンク・ウォリアー』の召喚時効果にチェーンし、『シンクロン・キャリアー』の効果発動!『シンクロントークン』を特殊召喚!」
シンクロントークン 守備力0
ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→4100
フィールドに存在するレベル2以下のモンスター3体。攻撃力0、『シンクロン・キャリアー』。攻撃力800、『ボルト・ヘッジホッグ』。そして攻撃力1000、『シンクロントークン』。合わせて1800の数値が『ジャンク・ウォリアー』に加わり、4100。
レベル5のシンクロモンスターにしては脅威的の数値だ。
「バトル!『ジャンク・ウォリアー』でシルバー・クロウへ攻撃!手札の『ラッシュ・ウォリアー』の効果発動!攻撃力を倍に!」
ジャンク・ウォリアー 攻撃力4100→8200
「罠発動!『ガード・ブロック』!」
『戦闘ダメージを0にし、1枚ドロー!』
榊 遊矢 手札0→1
「『ジャンク・アーチャー』でドクロバット・ジョーカーへ攻撃!」
「ぐぅ――!」
榊 遊矢 LP600→100
『ジャンク』モンスター2体の猛攻が遊矢に襲いかかり、少ないLPが削り取られる。残り100、白コナミと並んだが、戦況としては遊矢の方が不利だ。
「アクションマジック、『セカンド・アタック』!『ジャンク・ウォリアー』に戦闘権を与え、『曲芸の魔術師』を攻撃!」
「こっの……!」
「メインフェイズ2、墓地の『ラッシュ・ウォリアー』の効果発動!『ジャンク・シンクロン』を回収!」
「手札の『D.D.クロウ』を捨て、『ジャンク・シンクロン』を除外!」
「カードを2枚セット、ターンエンドだ」
白コナミ LP50
フィールド『ジャンク・ウォリアー』(攻撃表示)『ジャンク・アーチャー』(攻撃表示)『シンクロン・キャリアー』(守備表示)『ボルト・ヘッジホッグ』(守備表示)『シンクロントークン』(守備表示)
セット2
手札1
「俺のターン、ドロー!魔法カード、『命削りの宝札』!3枚のカードをドロー!」
榊 遊矢 手札0→3
「良し……魔法カード、『金満な壺』!墓地の『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』、エクストラデッキから『EMシール・イール』、『EMドクロバット・ジョーカー』をデッキに戻し、2枚ドロー!」
榊 遊矢 手札2→4
『乗って来たぜ!『EMディスカバー・ヒッポ』を召喚!オラ出ろカバッ!』
「やめたげてっ!」
EMディスカバー・ヒッポ 攻撃力800
『命削りの宝札』と『金満な壺』の効果でこのターン、遊矢は特殊召喚が封じられた。だが、アドバンス召喚は可能。
と言う事でその道のスペシャリスト、ピンク色のカバ、『EMディスカバー・ヒッポ』を呼ぶ。ペンデュラムが戦術の主軸である彼には相性が良くないと思われがちであるカードであるが、それでも昔から何度も遊矢を支えてくれたカードだ。ユーゴに雑に扱われる事を庇う位には気に入っている。
『カバの召喚時、俺達はもう1度最上級モンスターを呼ぶ権利を得る!オラ働けカバッ!』
「やめたげてっ!」
『カバとインコを生け贄に――』
「アドバンス召喚!来てくれ。誰をも笑顔にしてくれる楽しい仲間。『EMラフメイカー』!」
EMラフメイカー 攻撃力2500
現れたのはレベル8、ステッキを手にしたマジシャン風のモンスターだ。ゴーグル付きのハットを深く被り直し、帽子の奥でニヤリと不敵に笑う。
ペンデュラムモンスターであるが、遊矢のデッキに投入されているペンデュラムモンスターの最大スケールは8なので、サポートカードを使わなければペンデュラム召喚出来ないのが欠点だ。
「魔法カード、『スマイル・ワールド』!互いのモンスターはフィールドのモンスターの数×100、攻撃力をアップする!」
EMラフメイカー 攻撃力2500→3100
ジャンク・ウォリアー 攻撃力4100→4700
ジャンク・アーチャー 攻撃力2300→2900
シンクロン・キャリアー 攻撃力0→600
ボルト・ヘッジホッグ 攻撃力800→1400
シンクロントークン 攻撃力1000→1600
遊矢の手から放たれたのは、母、洋子より譲り受けた、父、遊勝のカード。
その効果は――実に弱い。冗談抜きで、どこに使い道があるんだと言いたくなるようなカードであるが、そこはデュエルモンスターズ。無数とも言えるカード群ならばこのカードと相性の良いカードも見つかるだろう。
「バトルだ!ラフメイカーで『ジャンク・ウォリアー』へ攻撃!この攻撃宣言時、このカードと相手モンスターの内、元々の攻撃力より高い攻撃力を持つモンスターの数×1000アップする!ラフィングスパーク!」
EMラフメイカー 攻撃力3100→9100
「ぐっ……!」
『スマイル・ワールド』によって発生した笑顔が、ラフメイカーのステッキへ集まり充填。バチバチと鳥の囀ずりのように鳴り響き、『ジャンク・ウォリアー』に向かって発射、胸部を貫き黒焦げにする。
『命削りの宝札』の効果でダメージは与えられないが、高い攻撃力を持つ『ジャンク・ウォリアー』は倒せた。
「カードを1枚セット、ターンエンドだ」
「罠発動、『奇跡の残照』!『ジャンク・ウォリアー』を蘇生する!」
ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300
榊 遊矢 LP100
フィールド『EMラフメイカー』(攻撃表示)
セット2
Pゾーン『EMダグ・ダガーマン』
手札0
「俺のターン、ドロー!『ジャンク・アーチャー』の効果発動!ラフメイカーを除外!」
「永続罠、『デモンズ・チェーン』!『ジャンク・アーチャー』の攻撃と効果を無効にする!」
「魔法カード、『七星の宝札』!『ジャンク・アーチャー』を除外し、2枚ドロー!」
白コナミ 手札1→3
「バトルだ!『ジャンク・ウォリアー』で『EMラフメイカー』へ攻撃!この瞬間、手札の『ラッシュ・ウォリアー』を墓地に送り、『ジャンク・ウォリアー』の攻撃力を倍にする!」
ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→4600
「罠発動、『パワー・ウォール』!デッキから5枚のカードを墓地に送り、戦闘ダメージを0にする!加えてアクションマジック、『奇跡』!ラフメイカーを戦闘から守る!」
「止めるか……カードをセット、魔法カード、『命削りの宝札』を発動!3枚ドロー!」
白コナミ 手札0→3
「『ジャンク・アンカー』を召喚」
ジャンク・アンカー 攻撃力0
「カードを1枚セット、ターンエンドだ。残る手札を捨てる」
白コナミ LP50
フィールド『ジャンク・ウォリアー』(攻撃表示)『ジャンク・アンカー』(攻撃表示)『シンクロン・キャリアー』(守備表示)『ボルト・ヘッジホッグ』(守備表示)『シンクロントークン』(守備表示)
セット2
手札0
「俺のターン、ドロー!墓地の『キラー・スネーク』を自身の効果で回収。魔法カード、『マジック・プランター』!『デモンズ・チェーン』をコストに2枚ドローする!」
『さぁ、来い来い!』
榊 遊矢 手札1→3
『ここからが勝負だぜ!『カードガンナー』を召喚!』
カードガンナー 攻撃力400
現れたのはガラスの頭部にサーチライト、両腕が砲身になった赤いボディ、下半身は青いキャタピラと玩具のようなモンスターだ。
ユーゴも自身の扱う『スピードロイド』のような見た目と優秀な効果からデッキに投入しているカードだ。遊矢もまた投入しているのを見て、何だか嬉しくなってしまう。
「『カードガンナー』の効果発動!デッキトップから3枚のカードを墓地に送り、攻撃力を1500アップ!」
カードガンナー 攻撃力400→1900
『バトルだ!『EMラフメイカー』で『ジャンク・ウォリアー』へ攻撃!』
「罠発動、『緊急同調』!このバトルフェイズ、俺はシンクロ召喚を行う!」
『あいつのエクストラデッキで残っている中でフィールドのモンスターを素材に出せるモンスターは……やべぇぞ遊矢!』
「レベル2の『シンクロン・キャリアー』、『ボルト・ヘッジホッグ』、『シンクロントークン』に、レベル2の『ジャンク・アンカー』をチューニング!シンクロ召喚!『ジャンク・デストロイヤー』!」
ジャンク・デストロイヤー 攻撃力2600
再び現れる怒号の魔神、『ジャンク・デストロイヤー』。この状況で考えうる中で最悪のシンクロモンスターが起動、赤く輝く眼光を迸らせ、凄まじい速度で遊矢のフィールドへ接近、4本の腕でラフメイカーとダグ・ダガーマンを掴み上げる。
「ジャンクションの効果で『カードガンナー』をバウンス!シンクロ召喚時、ラフメイカー、ダグ・ダガーマンを破壊!」
「墓地の『スキル・サクセサー』を除外し、ラフメイカーの攻撃力を800アップ!」
「このタイミングで……?」
EMラフメイカー 攻撃力2500→3300
破壊されるにも関わらず、遊矢が発動したのはモンスターの攻撃力を上げるカード。普通ならば温存すべきカードだろう。
だが――ラフメイカーに使うならば、何の問題はない。
「元々の攻撃力より高い攻撃力となったラフメイカーが破壊された事で、墓地のモンスター1体を蘇生する!」
「そう言う事か……!」
「俺が呼ぶのは、『レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト』!」
レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト 攻撃力3000
遊矢が選んだモンスターは高い攻撃力と殲滅効果を持つ悪魔竜。確実に2体を倒せ、効果ダメージもあるこのカードに託そうと言う事だろう。
「速攻魔法、『リロード』!アクションカードと共に手札を交換し、スカーライトで『ジャンク・デストロイヤー』に攻撃!」
「罠発動、『デストラクト・ポーション』!デストロイヤーを破壊し、LPを2600回復!」
白コナミ LP50→2650
「チッ、なら『ジャンク・ウォリアー』へ攻撃!」
白コナミ LP2650→1950
スカーライトの一撃が『ジャンク・ウォリアー』に突き刺さり、見事突破。しかしその時、大爆発が起こった事でアーククレイドルの一部が崩れ、巨大な瓦礫がシティに向かって落下し始める。
「ッ、しまった……!」
『やべぇぞ遊矢!あんなもん落ちたら……!』
「くっ……!」
最悪の展開、このままではシティどころか、そこに住む人々まで傷ついてしまう。遊矢はさぁっ、と顔を青くし、スカーライトを連れて瓦礫の下まで向かおうとする。
スカーライトならばこの程度、破壊出来る筈だ。だが――届かない。しかも更に最悪なのは、瓦礫が1つではない事だ。
四方八方に飛び散り、流星の如く降り注ぎ、牙を剥いている。
駄目なのか、そんな諦めが頭に過った、その時だった。
「クサナギソード・斬!」
遊矢の眼前に、深緑の装甲を纏う機械武者が現れ、その手に持った薙刀で瓦礫を木っ端微塵に切り裂いたのは。
『っ!?』
「『超重荒神スサノーO』……!?って事は!」
その正体は『超重荒神スサノーO』。遊矢の良く知る、彼の最も信頼を寄せる親友が使う切り札のシンクロモンスター。
このモンスターがいると言う事は。遊矢がバッと声をした方向に振り返るとそこにいたのは、ビルの屋上でデュエルディスクを構える、長いリーゼントと頭に巻いた鉢巻、キリリとした太い眉と大きな身体、白い学ランと下駄が特徴的な少年、権現坂 昇の姿があった。
「権現坂!」
友の危機に、シティの危機に駆けつけた彼の登場に、遊矢がパッと顔色を明るくする。
すると権現坂はニヤリと笑みを浮かべ、遊矢に応えるように親指を立てる。
「フルムーンクレスタァ!」
更に遠くに落下しようとする瓦礫が黄金色の熱線に焼かれ、跡形なく消え去る。見ればそこにいたのは、赤毛を揺らす踊り子のような姿をした猫の獣人、『月光舞猫姫』とその主、セレナの姿。
「セレナ!」
「俺も忘れてもらっちゃ困るぜぇ!『BK拘束蛮兵リードブロー』!」
続けて全ての拘束を解き放ち、恐るべき速度となった『BK拘束蛮兵リードブロー』が、アリトの指示の下、瓦礫を次々と殴り砕く。
「アリト!」
何故、一体、彼等がどうして。疑問が湧き出る中、遊矢の傍に巨大な影が現れる。
双頭の竜に、女性を磔にしたようなモンスター。『魔王龍ベエルゼ』だ。
「榊 遊矢!」
『セクト!?』
「あん?その声、ユーゴか!?一体どうして……」
『細かい事は後だ!それより聞きたいのはこっちの方だ!こりゃ一体どう言う事だ!』
現れたのは伊集院 セクト。ユーゴの親友にしてライバルとなる少年だ。彼はユーゴにまくしたてられ、へへへと鼻を掻きながら誇らしそうに胸を張る。
「リアルソリッドビジョンとデュエルの乱入だよ。それとアクションデュエルって言ったら分かるか?」
「ソリッドビジョンと、乱入?……まさか!?」
『?ど、どう言う事だよ!?』
遊矢達ランサーズのデュエルディスクには、アクションデュエルの為にアクションフィールドを展開させる機能がある。
この機能の強力な所は、相手のデュエルディスクが対応していなくても作用し、相手もアクションフィールドを使ったデュエルが出来る点だ。つまりはランサーズのデュエルディスクを通して相手のデュエルディスクを最新性能のものにアップデートしているに等しい。
そしてアクションデュエルはリアルソリッドビジョン。モンスター達を実体化し、現実に介入する。
権現坂達のモンスターはこれで瓦礫に干渉している。そしてセクトの『魔王龍ベエルゼ』もランサーズの誰かからアクションデュエルを繋げて実体化しているのだろう。
つまり、今このシティは、ランサーズ達が駆け回り、アクションフィールドを繋ぎに繋げていると言う事で、その結果は。
『乱入ペナルティ、2000ポイントダメージ』
シティ中でも響く機械音声。そしてその直ぐ後に、住民達の「シンクロ召喚」の声が重なっていく。
「何つったっけ、三澤?って奴がさ、これを使って乱入に乱入を重ねて、シティ中なアクションフィールドを繋げれば……俺達のモンスターで、降り注ぐ脅威から自分の身を守れるって言ったんだ。まぁ、お前達のデュエルには流石に乱入できねぇみたいだがな。だからよ、お前は思う存分暴れて来い!俺達の事を気にせずにな!」
「シンクロ召喚!『ジュラック・ギガノト』!」
「シンクロ召喚!『甲化鎧骨格』!」
「シンクロ召喚!『ゴヨウ・ガーディアン』!!」
「シンクロ召喚!『PSYフレームロード・Z』!」
「シンクロ召喚!『アンデット・スカル・デーモン』!!」
「シンクロ召喚!『ドラグニティナイトーヴァジュランダ』!」
「シンクロ召喚!『フレムベル・ウルキサス』!」
「シンクロ召喚!『インフェルニティ・デス・ドラゴン』!!」
「シンクロ召喚!『花札衛ー五光ー』!!」
「シンクロ召喚!『C・ドラゴン』!」
「シンクロ召喚!『宇宙砦ゴルガー』!!」
「シンクロ召喚!『転生竜サンサーラ』!」
「シンクロ召喚!『真六武衆ーシエン』!!」
「シンクロ召喚!『B・Fー決戦のビッグ・バリスタ』!!」
「シンクロ召喚!『ブラック・ローズ・ドラゴン』!!」
『シンクロ召喚ッ!!』
次々とシティ中に現れる、それぞれの切り札、それぞれのエース。まるで流星群のように姿形が異なるモンスターが空から落ちる凶星を打ち砕く。
ハナテ、モンスター。どんなもんだと言わんばかりのシンクロパニック。
最早ここにいる住民は、ただ与えられる明日を待つ愚かさを捨てた。これこそが本当のシティ、本当のシンクロ次元だと、誇り高きシンクロ召喚を炸裂させる。
その様子はまるで、地上で光輝く星空のようで。思わず本物の空を飛ぶ遊矢が呆然と見惚れてしまう。
『……綺麗だな……』
「……ああ」
不意に思った事をそのままに漏らしたユーゴに、遊矢が同意する。この光景を表すには、とても安っぽくて陳腐な言葉。
だけど、遊矢にもそんな当たり前の台詞しか飛び出さない程に、目の前の景色は美しくて。
『俺さ、今まで別に、自分の故郷の事なんて何とも考えてなかった。ただリンやセクト、知ってる奴等さえいれば良いって思ってた』
「……うん」
ユーゴの口から溢れる本音。それは誰にも責められる事のない、普通の少年が思う普通の事だ。
遊矢だって、そう思っていた。だから静かに、地上の星空を見つめて頷く。
『だけど、だけどよ……!今は思うんだ!俺はシンクロ次元のシティで生まれて良かったって!胸を張って言える!ここが俺の故郷だ!守りてぇ、失わせたくねぇ、この光を!』
「ああ!」
そしてその思いは、遊矢も感じている事で。今このシティでいる誰もが想う意志だった。
善人も悪人も。男性も女性も。子供も大人も。トップスもコモンズも。
例外なく、明日をこの手に掴みたいと言う、未来へ向けた叫びが光差す道を作り出す。
「~~~っ!何か、元気出て来たぁっ!漲るなぁっ!」
『ああ!例え俺達に残るLPが少なくとも!このシティに貰った気合いで一億ポイントだあっ!!』
エンタメデュエリストが目指し、守り、その力の源になるものはこれだと、遊矢は確信する。
それは皆の声援。それは皆の勇気。それは皆の光。それは皆の笑顔。
地上に浮かぶ星々で作られたサーキットが、遊矢達に力をくれる。
「ッ、これは……そうか……榊 遊矢!やはり貴様は……っ!」
地上の光を目にし、白コナミが眩しそうに、鬱陶し気に帽子の奥の目を細め、遊矢を睨む。そんな白コナミの敵意を受けても――遊矢にはもう、怯えはない。
「何度も、何度だって言おう!俺は、俺達は……1人で闘ってるんじゃないってな!」
『魔法カード、『一時休戦』を発動!」
榊 遊矢 手札2→3
白コナミ 手札0→1
「カードを2枚セット、さぁ……ここからが最終ラウンドだ!』
榊 遊矢 LP100
フィールド『レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト』(攻撃表示)
セット2
手札1
地上に星空が輝く中、暗き空が白く晴れていき、今、太陽が昇る。
これが誇り高きシンクロ召喚の力!掌セットからのリバース?知らんなぁ。