遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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予約投稿を間違える痛恨のミスの巻。


第188話 みらいいろ

「フハハハハ!残念だったなデュエリストよ!もう既に我が神の復活の条件は揃った!」

 

長き旅路の中で、デュエリストは世界を脅かす者と対峙する。

その名は『邪神官チラム・サバク』。下半身が蛇の塊となった異形の神官である。

彼はモンスター達のエネルギーを奪い取り、世界を支配すべく邪神の一柱を復活させようとしたのだ。

 

デュエリストはそれを阻止すべく、闘いを挑むが――時既に遅し、チラム・サバクの背後より、赤黒に染まった竜が雄叫びを上げて現れる。

 

「来たれ、『邪神イレイザー』!!」

 

それは世界を呑み込む邪なる神。無限を超える闇の竜。最悪がデュエリストの前に立ち塞がる。

 

「そして貴様が持っていただろうデッキは我が手にある!この意味が分かるか!?最早貴様に勝機は無い!」

 

チラム・サバクの左腕に闇色のデュエルディスクが生え、デュエリストが本来持っていた、今まで失われていたデッキがセットされる。

状況は最悪。だが、デュエリストの眼に、絶望はない。

 

「いいや――勝機は、ここにある!」

 

その言葉と共に――今まで色を失っていた彼の帽子が赤く染まり、彼の背後に、数多のモンスター達が揃い踏む。

 

黒き獣の英雄、ろーちゃんや『壊獣』の面々。

『アトランティスの戦士』に『舌魚』、『海神の巫女』。

『メルフィー・ラビィ』に『獣王アルファ』、『天霆號アーゼウス』。

『六武衆ーヤリザ』に『六武衆ーニサシ』。

『失楽の聖女』。

『切り込み隊長』に『衛生兵マッスラー』、『無敵将軍フリード』、『覚醒の勇士ガガギゴ』。

キモイルカ、『銀河恐竜』、『サテライト・キャノン』。

『クリッター』と『ゴヨウ・ガーディアン』、『ゴヨウ・ディフェンダー』。

他にも大小、色様々な今まで彼が出会い、救って来たモンスターが彼に味方し、最後に――彼の傍に、白と黒の竜が参戦する。

 

『閃光竜スターダスト』と、『暗黒界の龍神グラファ』が。

 

「ッ!おのれデュエリスト……このモンスターたらしめ……!」

 

「いくぞ皆!オレ達の満足は、これからだぁっ!」

 

デュエル!!熱き口上が、木霊した。

 

――――――

 

「やれぇっ!『地縛神Cusillu』!少年のドラゴンへ攻撃!」

 

シティの一角、とある孤児院の近くにて、ここでもまたゴーストの1体が来襲し、2人のデュエリストと対峙していた。

ゴーストの名はディマク。黄色いラインが走った黒いローブを身に纏う男だ。

彼は自らのエース、猿の姿をした『地縛神Cusillu』を操り、敵である山吹色の鱗を持つ竜を倒そうとするも、Cusilluの巨大な拳を受け止める。

 

「Cusilluの攻撃を受け止めただとっ!?」

 

「『ライフ・ストリーム・ドラゴン』は墓地の装備魔法を除外する事で、破壊を逃れる!」

 

ディマクと相対するデュエリストの1人、少年、龍亞が雄々しく吠える。すると彼のエースである『パワー・ツール・ドラゴン』の進化体、『ライフ・ストリーム・ドラゴン』が見事にCusilluを殴り飛ばす。

 

「くっ、Cusilluが戦闘破壊される代わりに私のフィールドのモンスターをリリースする事で、貴様等のLPを半分にする!」

 

龍亞 LP7000→3500

 

龍可 LP20000→10000

 

Cusilluの戦闘破壊を逃れ、更に敵のLPを半減するディマクだが、全く減っている気がしない。

 

「頼もしくなったわね、龍亞」

 

「へへ、龍可だっておっかないよ」

 

「……それって褒めてる?」

 

龍亞の隣に並ぶ少女、彼と瓜二つの双子である龍可がクスリと微笑みながら声をかける。

そう、ディマクが闘っているのは2人合わせて彼の年に届くかと言った幼き兄妹。そんな子供を相手に、ディマクは苦戦していた。

別段、ディマクが弱い訳ではない。劣化コピーであるディマク・ゴーストの実力は本物のディマクより劣るが、それでもダークシグナーとして強力な力を有している。

にも関わらず、何故彼がここまで手をこまねいているか、簡単だ。この双子が、大人顔負けな程、強いからだ。むしろディマクは良くやっていると言える。

何故なら彼は、自分よりも強い2人を相手に健闘しているのだから。

 

「くっ、何故だ!シグナーの少女はまだしも、少年の方は何故こんなにも強い!」

 

「何でって?へへっ、だって俺もシグナーだし!」

 

2人とは言え、子供を相手に苦戦している事からか、悔しさと焦りを表情に浮かべ、ギリリと口元を歪めて歯軋りを鳴らすディマク。そんな彼の疑問の声に、龍亞が無邪気な笑みを浮かべ、右腕に刻まれた赤い痣を自慢するように見せつける。

 

「何だと!?」

 

「貴方が知らない間にも色々あって、私達も成長したって事!」

 

「そー言う事っ!こんな俺だって成長したんだ。だったらシティだって変われる!ジャックやクロウ、そして――俺達のリーダーがかつてシティを繋げたみたいに!」

 

「絶望だって、希望に変えられる!」

 

この2人は、ただの子供ではない。シグナーであると言う前に、この2人は数々の激闘を潜り抜けて来た。頼もしい兄や姉のような背中を見てきた。

だから知っている。どんな絶望も、希望に変えられる事を。

その胸にありったけの勇気を込め、小さな2人は巨大な闇を打ち砕く。

 

「龍可、覚えてる?」

 

「何を?」

 

「昔、ジャックが言ってたじゃん。チーム5D'sの結成時、俺達は半人前だから、2人合わせて一人前って」

 

「フフ、そんな事もあったわね」

 

「だけど今ならジャックも認めてくれるよね!俺達は1人ずつ一人前だって!」

 

「だったらチーム6D'sになっちゃうかもね」

 

「それはちょっとやだなぁ。やっぱチーム5D'sは5D'sじゃなきゃ」

 

巨大な敵を前にしても、2人は軽口を交わし合い、明るく笑う。だって未来は希望に満ち溢れているのたから。

笑わずにはいられない。見事な連携でディマクの猛攻を退け、圧倒する双子。

そんな彼等のデュエルを見て、キラリと装着したサングラスを輝かせながら、遠目に見つめるなんちゃってシスター少女、ツァン・ディレはニヤリと笑う。

 

「2人は僕が育てた」

 

大胆不敵にホラを吹くツァン。別段そんな事はないのたが、彼女のセリフにディマクは彼女を2人の師とみなし、「では奴はどれだけの強さなのだ……!?」と戦慄するのだった。

 

――――――

 

「私のターン、ドロー!」

 

そんな中、ここ治安維持局、デュエルルームでも闘う者がいた。

ランサーズリーダー、赤馬 零児。アカデミア幹部、治安維持局長官、ジャン・ミシェル・ロジェ。そしてそんな彼に反旗を翻した男、セルゲイ・ヴォルコフ。

神を操るロジェを打倒すべく、零児とセルゲイは手を組み立ち向かう。現在、ターンは零児へ渡る。

 

「スタンバイフェイズ、『地獄門の契約書』の効果により、私は1000のダメージを受ける」

 

赤馬 零児 LP4000→3000

 

「そして『地獄門の契約書』の効果発動!デッキから『DD』モンスターをサーチ!」

 

「させん!手札の『灰流うらら』を捨て、その効果を無効にする!」

 

「ッ!」

 

「そんなものか?赤馬 零児ィ!」

 

「魔法カード、『暗黒界の取引』を発動。手札を交換し、手札の『DDスワラル・スライム』の効果発動!このカードと手札のアビス・ラグナロクを墓地に送り、融合を行う!」

 

「手札の『増殖するG』を捨て、このターン相手が特殊召喚する度にドロー!」

 

「融合召喚!『DDD烈火大王エグゼクティブ・テムジン』!」

 

DDD烈火大王エグゼクティブ・テムジン 攻撃力2800→3100

 

ジャン・ミシェル・ロジェ 手札0→1

 

融合召喚、零児の手札から2体のモンスターを飛び出し、その場でクルクルと回転、混じり合って炎の渦となり、渦の中より新たなモンスターが歩み出る。

炎を纏う大剣に、幅広の盾。肩からは4本の腕が伸びており、剣と盾を持つ手を除いた2本には小太刀が握られている。ブラウンの鎧纏うこのモンスターは、零児が今まで隠していた奥の手。

『DDD烈火王テムジン』を進化させたカードだ。

 

「エグゼクティブだと……?まだそんなものを隠していたとは、抜け目のない奴だ。だがどんなカードでも、この神を前にしては紙切れ同然!」

 

「それはどうかな?私は更に『DDナイト・ハウリング』を召喚!」

 

DDナイト・ハウリング 攻撃力300→600

 

次は鋭い牙が生え揃う、顎のみのモンスター。レベル3のチューナーだ。零児もロジェに対抗し、もう1つの武器を取り出す。

 

「ナイト・ハウリングの効果により、墓地の『DDD壊薙王アビス・ラグナロク』の攻守を0にし、特殊召喚する!」

 

DDD壊薙王アビス・ラグナロク 守備力3000→0→300

 

ジャン・ミシェル・ロジェ 手札1→2

 

「この瞬間、アビス・ラグナロクとエグゼクティブ・テムジンの効果発動!墓地より『DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク』と『DDD覇龍王ペンドラゴン』を特殊召喚!」

 

DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク 攻撃力3200→3500

 

DDD覇龍王ペンドラゴン 攻撃力2600→2900

 

ジャン・ミシェル・ロジェ 手札2→3→4

 

「ッ、次から次へと……!」

 

次々と現れる零児のモンスターを見て、流石のロジェの表情にも焦りが見え始める。当然だ、1ターンで5体の展開。その内4体が大型である『DDD』なら動揺もする。

 

「アビス・ラグナロクの効果発動!ペンドラゴンをリリースし、『スターダスト』を除外!」

 

「『スターダスト』の効果でグリオンガンドに耐性を与える!」

 

「魔法カード、『アドバンス・ドロー』!アビス・ラグナロクをリリースし、2枚ドロー!」

 

赤馬 零児 手札1→3

 

「ペンデュラム召喚!『DDD反骨王レオニダス』!」

 

DDD反骨王レオニダス 攻撃力2600→2900

 

ジャン・ミシェル・ロジェ 手札4→5

 

「次だ!レベル7のレオニダスに、レベル3の『DDナイト・ハウリング』をチューニング!シンクロ召喚!『DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー』!」

 

DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー 攻撃力3000→6000→6300

 

シンクロ召喚、フィールドに見参したのは新たなエグゼクティブの名を冠する風の大王。傷一つない銀の鎧に緑のマント、手には巨大な剣が握られている。

『DDD疾風王アレクサンダー』の進化体だろう。剣を構え、『アルティマヤ・ツィオルキン』を睨む。

 

「エグゼクティブ・アレクサンダーはフィールドに『DDD』モンスターが3体以上存在する事で、攻撃力を3000アップする!」

 

「ぬぅっ……!」

 

「更に墓地の『DD』モンスターを2体除外し、ペンデュラムゾーンのカオス・アポカリプスを特殊召喚!」

 

DDD極智王カオス・アポカリプス 攻撃力2700→3000

 

ジャン・ミシェル・ロジェ 手札5→6

 

揃う王達、これで零児のフィールドに4体の『DDD』が並んだ。とんでもない威圧感だ。

 

「バトル!カエサル・ラグナロクでアメトリクスへ攻撃!この瞬間、『DD魔導賢者ニュートン』をバウンスし、グリオンガンド装備!」

 

DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク 攻撃力3500→6500

 

ジャン・ミシェル・ロジェ LP7500→3800

 

見事粉砕、カエサル・ラグナロクの一撃がグリオンガンドとアメトリクスの2体を破壊する。これで残るは『アルティマヤ・ツィオルキン』のみか、と思われたその時。

 

「調子に乗るなぁッ!シンクロ召喚してアメトリクスが破壊された事で、シンクロモンスター以外の『クリストロン』を蘇生する!来い、『水晶機巧ークオン』!」

 

水晶機巧ークオン 守備力500→800

 

「更に『補給部隊』の効果でドロー!」

 

ジャン・ミシェル・ロジェ 手札6→7

 

ビキビキとロジェがその額に青筋を浮かべ、咆哮すると共に、フィールドに新たなモンスターが登場する。破壊されたアメトリクスの内部から、水晶を帯びた小さな人型ロボットが降り立つ。

 

「クオンの効果発動!手札のチューナー以外のモンスター1体を効果を無効にして特殊召喚し、そのモンスターとこのカードで機械族シンクロモンスターをシンクロ召喚する!来い、スモーガー!」

 

水晶機巧ースモーガー 守備力1800→2100

 

「レベル3のスモーガーに、レベル1のクオンをチューニング!シンクロ召喚!『水晶機巧ークオンダム』!」

 

水晶機巧ークオンダム 守備力2000→2300

 

水晶を生やした白虎が登場し、直ぐ様クオンと1つになり、新たなモンスターを呼ぶ。白い鎧を纏った人型ロボット。その姿はスモーガーを纏ったクオンと言った所だろうか。華麗に着地し、『アルティマヤ・ツィオルキン』を守る。

 

「くッ、固い……!」

 

「当然だ。貴様が如きが神を崩すなど100年早い!」

 

これでシンクロモンスターが増え、ロジェを守る壁となる。凄まじいプレイングだ。クオンを呼び出しただけで零児の王の猛攻を防ぐ壁を生み出すとは。

 

「ならばカオス・アポカリプスでクオンダムへ攻撃!」

 

「クオンダムが破壊された事で、墓地の『水晶機巧ーシトリィ』を蘇生!」

 

水晶機巧ーシトリィ 守備力500→800

 

「シトリィの効果発動!墓地より『古代の機械工兵』を効果を無効にし、蘇生!」

 

古代の機械工兵 守備力1500

 

「2体を素材に機械族シンクロモンスターをシンクロ召喚する!鋼の逆鱗に触れたい奴はご自由に!シンクロ召喚!『機械竜パワー・ツール』!」

 

機械竜パワー・ツール 守備力2500

 

次は龍亞が操る決闘竜。黄色い鋼の鱗にショベルとドライバーの腕を持つ、玩具のような機械竜。決闘竜の中で唯一機械族である異色のカードだ。だからこそこうして『クリストロン』で呼べたのだが。

 

「エグゼブティブ・テムジンで『パワー・ツール』へ攻撃!」

 

「チッ!」

 

「道は開けた!エグゼクティブ・アレクサンダーで『アルティマヤ・ツィオルキン』へ攻撃!」

 

届く刃、エグゼクティブ・アレクサンダーの剣が今、赤き竜神に襲いかかる。どれだけ強力な効果を持っていても、このカード自身の攻守は0。

 

「ならば閉ざすまで!手札の『工作列車シグナル・レッド』の効果発動!このカードを特殊召喚し、このカードに攻撃を移行させる!尚、この戦闘でシグナル・レッドは破壊されない!」

 

工作列車シグナル・レッド 守備力1300

 

足掻きに足掻くロジェ。とんでもない固さだ。神へ攻撃するだけでも苦労させられる。

 

「メインフェイズ2に移行!」

 

「その前に、手札の『クリボーン』を捨て、破壊された『水晶機巧ークオンダム』を蘇生!」

 

水晶機巧ークオンダム 守備力2000

 

「魔法カード、『アドバンス・ドロー』!テムジンをリリースし、ドロー!」

 

赤馬 零児 手札3→5

 

「墓地の『置換融合』を除外、テムジンをエクストラデッキに戻し、ドロー!」

 

赤馬 零児 手札5→6

 

「まだまだぁ!速攻魔法、『グリード・グラード』!このターン、シンクロモンスターを破壊した事で2枚ドロー!」

 

赤馬 零児 手札5→7

 

「もう1枚だ!」

 

赤馬 零児 手札6→8

 

「魔法カード、『ライトニング・ボルテックス』!手札を1枚捨て、相手の場の表側表示モンスターを全て破壊する!」

 

「クオンダムの効果により、相手ターン中にシンクロ召喚を行う!レベル3の『工作列車シグナル・レッド』に、レベル4の『水晶機巧ークオンダム』をチューニング!太古の森よりフィールドを制圧する精霊よ、かりそめの姿にその身をやつし降臨せよ。『妖精竜エンシェント』!」

 

妖精竜エンシェント 守備力3000

 

「そして墓地から『復活の福音』を除外、我がフィールドのドラゴンの破壊を防ぐ!」

 

とんでもない執念。あの状況から猛攻を防ぐなど、馬鹿げているにも程がある。

フィールドに現れたるは龍可が持つ決闘竜。水色の体躯に蝶のような翼を広げた森を守護するドラゴンだ。

 

「貴様等がどれだけ足掻こうと、神が残っていればいくらでも巻き返しが効くのだ!フハハハハ!ハァーハッハッハッハァッ!」

 

「手札のニュートンを捨て、『闇魔界の契約書』を回収、発動。効果で墓地のニュートンをセッティング!カードを3枚セット、ターンエンド」

 

「『クリスタルP』の効果でドロー!」

 

ジャン・ミシェル・ロジェ 手札5→6

 

赤馬 零児 LP3000

フィールド『DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー』(攻撃表示)『DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク』(攻撃表示)『極智王カオス・アポカリプス』(攻撃表示)

『水晶機巧ーグリオンガンド』『地獄門の契約書』『闇魔界の契約書』セット3

Pゾーン『DD魔導賢者ニュートン』

手札2

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『強欲で貪欲な壺』!」

 

セルゲイ・ヴォルコフ 手札0→2

 

「『暗黒界の門』の効果発動!墓地の『魔サイの戦士』を除外し、手札を交換!『暗黒界の狩人ブラウ』の効果でドロー!」

 

セルゲイ・ヴォルコフ 手札2→3

 

「魔法カード、『地縛救魂』を発動。墓地から『手札抹殺』とストーン・スィーパーを回収。手札の『サンダー・ドラゴン』を捨て、同名を2体サーチし、『手札抹殺』を発動!『暗黒界の狩人ブラウ』が捨てられた事で、ドロー!」

 

セルゲイ・ヴォルコフ 手札4→5

 

次々と魔法カードを駆使し、手札を入れ替える。流石の腕だ。

 

「魔法カード、『ミラクルシンクロフュージョン』を発動!墓地のジオグリフォンとジオクラーケンを除外し、融合を行う!融合召喚!現れよ、『地縛戒隷ジオグラシャ=ラボラス』!!」

 

地縛戒隷ジオグラシャ=ラボラス 攻撃力3000→3300

 

融合召喚、墓地に眠る天空を飛翔する魔獣、ジオグリフォンと、海を支配せし魔物、ジオクラーケンが混ざり合い、地獄の底から大悪魔が産声を上げる。

黒い巨影にオレンジのラインを走らせた、山羊のような角と天を覆う翼、4本の腕に尾と竜のような姿のモンスター。

セルゲイの切り札が今、登場する。

 

「更に『天帝従騎イデア』を召喚!」

 

天帝従騎イデア 攻撃力800

 

現れたのは白銀の鎧を纏う女性型のモンスター。沢渡も使用する『帝王』に連なる系譜のカードだ。アドバンス召喚を行う際、優秀なサポートとなる為、上級モンスター、『地縛神』を使うセルゲイもデッキに投入している。

 

「イデアの召喚時、デッキより攻撃力800、守備力1000のモンスターを守備表示で特殊召喚する!俺は『冥帝従騎エイドス』を選択!」

 

冥帝従騎エイドス 守備力1000

 

イデアの影がその場でうねり、人型となって登場する。イデアと対照的な、闇そのものと言える漆黒の甲冑を纏うモンスター。このカードとイデアを合わせる事によって容易に最上級モンスターのリリース要員を揃える事が出来る。

 

「そしてエイドスが特殊召喚に成功した事で、このターン、俺はもう1度アドバンス召喚の為の召喚権を獲得!2体をリリース、積年の恨み積もりし大地に眠る魂達よ!今こそ穢された大地より出でて、我に力を貸さん!アドバンス召喚!降臨せよ、『地縛神ChacuChallhua』!」

 

地縛神ChacuChallhua 攻撃力2900

 

そしてこの2体を贄として、現れたのは『アルティマヤ・ツィオルキン』、赤き竜に敵対する冥界の王の僕、ジオグラシャ=ラボラスに匹敵する黒き巨影に、紫の紋様を刻んだ鯱の地上絵から生まれたナスカの邪神。

このカードはあくまでコピーカードであるが、何か感じるものがあるのか、『アルティマヤ・ツィオルキン』が咆哮する。

 

「バトル!ジオグラシャ=ラボラスで、『妖精竜エンシェント』へ攻撃!」

 

妖精竜エンシェント 守備力3000→0

 

「『補給部隊』の効果でドロー!」

 

ジャン・ミシェル・ロジェ 手札6→7

 

ジオグラシャ=ラボラスが大きく翼を羽ばたかせ、4本の腕で森を守護する妖精竜に殴りかかり、見事破壊する。これでロジェのモンスターは、『アルティマヤ・ツィオルキン』のみ。

 

「やめ……やめろセルゲイッ!」

 

「ChacuChallhuaで、『アルティマヤ・ツィオルキン』を攻撃!罠発動、『ブラック・アロー』!攻撃力を500ダウンし、貫通効果を与える!」

 

地縛神ChacuChallhua 攻撃力2900→2400

 

ジャン・ミシェル・ロジェ LP3800→1400

 

そして今、『地縛神』が赤き竜を打ち倒す。崩される神の牙城。ロジェの野望がガラガラと音を立てて破壊されていき――フ、とロジェの頭に血が昇り、ビキリと青筋が浮かび、激怒する。

 

「おのれおのれおのれぇっ!この私に、この神に逆らいおってぇぇぇぇぇっ!!」

 

ゴウッ、怒号と共にロジェの周囲から一陣の風が吹き荒れ、闇色のオーラが発生する。神を倒しても尚、いや、神を倒したからこそ、彼の闇は膨れ上がる。

 

「呑まれたか……むしろここまで良く自我を保ったものだ」

 

プラシドがポツリと溢したのを、零児は拾い上げる。呑まれた?まさかロジェは、神のカードに意識を取り込まれているのではないか。

 

「長官!それ以上は駄目です!戻れなくなる!」

 

「黙れぇっ!この神に逆鱗に触れた事、己の死をもって思い知るが良い!」

 

「くっ、カードを2枚セットし、ターンエンドだ……!」

 

セルゲイ・ヴォルコフ LP4000

フィールド『地縛戒隷ジオグラシャ=ラボラス』(攻撃表示)『地縛神ChacuChallhua』(攻撃表示)

セット2

『暗黒界の門』

手札0

 

「私のターン、ドロー!『機巧牙ー御神尊真神』をリリース無しで召喚!」

 

機巧牙ー御神尊真神 攻撃力2150

 

「罠発動、『落とし穴』!そのモンスターを破壊!」

 

「だがこのカードが破壊された事で、除外された6枚のカードをデッキに戻す!更に『補給部隊』の効果でドロー!」

 

ジャン・ミシェル・ロジェ 手札7→8

 

「魔法カード、『シャッフル・リボーン』を発動。墓地の『水晶機巧ーアメトリクス』を蘇生!」

 

水晶機巧ーアメトリクス 攻撃力2500→2800

 

「墓地の『シャッフル・リボーン』を除外、『補給部隊』をデッキに戻してドロー!」 

 

ジャン・ミシェル・ロジェ 手札7→8

 

「そして魔法カード、『アイアンコール』を発動!『水晶機巧ークオンダム』を蘇生!」

 

水晶機巧ークオンダム 守備力2000

 

「そしてレベル5のアメトリクスに、レベル4のシンクロチューナー、クオンダムをチューニング!アクセルシンクロ!『水晶機巧ーフェニキシオン』!!」

 

水晶機巧ーフェニキシオン 攻撃力2800→3100

 

ダブルチューニングの次はアクセルシンクロ。シンクロモンスターとシンクロチューナーを素材とするこの召喚法は、白コナミとコナミのものだ。

彼等の対戦データを元に開発されたこのカードは、真紅の装甲を纏い、肩からクリスタルを生やし、背中から鞭のようにしなるペンデュラムを翼の如く伸ばしたロボット。と言う見た目だ。

その姿はまるで不死鳥。一種の美しささえも感じる。

尤も、ロジェはダブルチューニングに必要なバーニングソウルは勿論、アクセルシンクロに必要なクリアマインドも会得していない。人の科学によって限界を超えたもの。それがフェニキシオンとグリオンガンドの2体だ。この2枚に、特別な力は必要ない。

 

「フェニキシオンのシンクロ召喚時、相手フィールドと墓地の魔法、罠を全て除外!」

 

「速攻魔法、『捕違い』!このターン中、相手のドロー以外でデッキからカードを手札に加える効果を封じる!」

 

「3枚の罠発動、『契約洗浄』!2枚の『契約書』を破壊し、LP2000と2枚の手札を獲得!『ダメージ・ダイエット』!このターン受けるダメージを半分に!そして『貪欲な瓶』!墓地のカードを5枚デッキに戻し、ドロー!」

 

赤馬 零児 LP3000→5000 手札0→2→3

 

「速攻魔法、『大欲な壺』!除外されているモンスター3体をエクストラデッキに戻し、ドロー!」

 

ジャン・ミシェル・ロジェ 手札5→6

 

「装備魔法、『D・D・R』!手札を1枚捨て、除外されているシトリィを復活!」

 

水晶機巧ーシトリィ 攻撃力500→800

 

「速攻魔法、『地獄の暴走召喚』!デッキより2体のシトリィを特殊召喚!」

 

水晶機巧ーシトリィ 攻撃力500→800×2

 

「そして墓地の魔法カード1枚を除外し、『マジック・ストライカー』を特殊召喚!」

 

マジック・ストライカー 守備力200

 

「レベル3の『マジック・ストライカー』に、レベル2のシトリィ3体をトリプルチューニング!シンクロ召喚!『水晶機巧ーグリオンガンド』!!」

 

水晶機巧ーグリオンガンド 攻撃力3000→3300

 

「効果により、エグゼクティブ・アレクサンダー、カエサル・ラグナロク、セルゲイの『地縛』モンスター2体を除外する!」

 

「私は墓地の『スキル・プリズナー』を除外、その効果を無効にする!」

 

揃うシンクロと『クリストロン』の極致、フェニキシオンとグリオンガンド。真紅の不死鳥と黄金の邪竜。更に。

 

「まだだ!こんなもので許すと思うなよ!魔法カード、『二重召喚』!『幻木龍』を召喚!」

 

幻木龍 攻撃力100

 

次は木で作られた龍のモンスター。高いステータスが多いドラゴン族の中では貧弱とも言える攻撃力のカードだ。

 

「次ぃ!フィールドに地属性モンスターが存在する事で、『幻水龍』を特殊召喚!」

 

幻水龍 守備力2000

 

『幻木龍』の隣に並んだのは水で作られた龍。緩い条件で特殊召喚出来る高レベルモンスター。レベル8、『トレード・イン』や『アドバンスドロー』の効果にも対応しており、優秀なカードと言える。

 

「墓地のチューナー、『水晶機巧ーシトリィ』とフィールドの『幻木龍』を対象に、速攻魔法、『ユニゾン・チューン』を発動。対象になった墓地のチューナーを除外し、残ったフィールドのモンスターにそのレベルとチューナーである特性を与える!」

 

幻木龍 レベル4→2

 

これでフィールドにレベル9のモンスターとレベル8のモンスター!レベル2のチューナーが揃った。ここはレベル10か11の大型シンクロモンスターを出して攻めにかかるか、零児が身構える。しかし、ロジェが取るのは、どちらでもない。

 

「そして『幻木龍』の効果でこのカードのレベルを、水属性ドラゴン族モンスター、『幻水龍』と同じ8に変更!」

 

幻木龍 レベル2→8

 

「レベル8……?まさか『アルティマヤ・ツィオルキン』をまた……!?」

 

ロジェの狙いが再び『アルティマヤ・ツィオルキン』にを呼び出す事と踏む零児だが、直ぐ様その思考に疑問が加わる。

また『アルティマヤ・ツィオルキン』を出したとして、どうなる?『アルティマヤ・ツィオルキン』は自身が強力なステータスを持たない代わりに、カードをセットするだけで決闘竜を出すカード。そう、カードを魔法、罠ゾーンにセットして。

現在ロジェの手札は0、セットするカードも持たない状態で、態々戦闘能力のない『アルティマヤ・ツィオルキン』を出すだろうか?それも計算高いロジェが。

それに『アルティマヤ・ツィオルキン』は墓地にある。2体目と言う考えも、このカードが神であると言う特性から否定出来る。

零児の推測は途中まではあっていた。ロジェは、その上をいく。

 

「甘いなぁ、赤馬 零児!そんなもので、私が貴様を許すと思ったか?私はレベル8の『幻水龍』に、レベル8の『幻木龍』をマイナスチューニング!決闘の地平に君臨する最初にして最後の神!混沌を束ね姿無き身を現世に映さん!シンクロ召喚!『究極幻神アルティミトル・ビシバールキン』!!」

 

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン 攻撃力0→8000

 

フィールドに再び赤き竜が復活し、その身を無数の黒き光に貫かれる。悲痛な雄叫びを上げる中、赤き竜の胸に黄金のコアが露出、更に頭部、型、腕に黒き装甲が纏われ、より攻撃的なフォルムに生まれ変わる。

これが、『アルティマヤ・ツィオルキン』が堕天した姿、アルティミトル・ビシバールキン。ロジェの最後の切り札。その事を示すように、ロジェの肉体が何時の間にか消え、竜の頭部にて現れ、一体化を果たす。

 

「これがぁ、我が神の真の姿!さぁ、天の裁きを受け入れるが良い!」

 

「モンスターと1つに、そんなものが神の姿と言うのか!」

 

「そうだとも!素晴らしいと思わんかね!」

 

「思わないな!貴様は神などではない……私と、僕達と同じ人間だ!」

 

「一緒にするなぁ!私は人を超えたのだ!アルティミトル・ビシバールキンは効果では破壊されず、フィールドのモンスターの数×1000、攻撃力をアップする!」

 

零児が己を奮い立たせ、ロジェに食ってかかるも、彼にとってその反抗的な態度が癪に触ったのか、図星を突かれたのか、青筋を浮かべてロジェが吠える。

 

「バトル!この一撃で滅ぶがいい!まずはセルゲイ!貴様だ!アルティミトル・ビシバールキンで、『地縛戒隷ジオグラシャ=ラボラス』へ攻撃!」

 

「ジオグラシャ=ラボラスは戦闘するシンクロ、融合モンスターの攻撃力を0にする!」

 

「当然知っているとも!速攻魔法、『禁じられた聖杯』!ジオグラシャ=ラボラスの攻撃力を400アップし、効果を無効にする!さぁ、受けろ!天聖雷撃!」

 

地縛戒隷ジオグラシャ=ラボラス 攻撃力3000→3400

 

進化した神の一撃。天から降り注ぐ漆黒の雷が一直線にジオグラシャ=ラボラスへ襲いかかり命中する。邪に堕ちたとは言え、竜を束ねし神の力だ。邪神を模した悪魔ごときでは勝てる筈もなく、一瞬で黒焦げになり粉砕される。

そして、雷はそれで止まる事なくセルゲイにも牙を剥く。

 

「ッ、セルゲイ!」

 

これを食らえば怪我では済まない。それどころか命に関わる。零児が珍しく声を荒げるも遅い。

呆然と立ち尽くすセルゲイの下へ雷は駆け抜け彼を撃つ――瞬間に、セルゲイを守るように鯱の『地縛神』が飛び出し、その身を盾にする。このモンスターはコピーと言えど邪神。雷の威力を削ぐ事位は出来る。されど雷は消失されず、セルゲイに命中、半分程に残った力がセルゲイを大きく吹き飛ばして壁に激突させる。

 

セルゲイ・ヴォルコフ LP4000→0

 

ワンショット・キル。LP4000を根こそぎ奪い取る一撃は伊達でなく、2体の『地縛』を沈め、壁に蜘蛛の巣状の亀裂を走らせる。

セルゲイの強靭なサイボーグボティの骨格にもひびが入った程だ。良く見れば頭部からも出血している。しかしその顔は――何故か頬を桜色に染めて舌を出した汚ならしいものだが。

 

「んほぉ……しゅごい……!」

 

どうやら大丈夫のようだ。零児はうむと頷いて彼から目をそらす。

 

「さぁ、次は貴様だ赤馬 零児!貴様をじっくりとなぶり倒した後でセルゲイには再教育を施してやろう。この神に忠実なる天使として生まれ変わるのだ!」

 

天使セルゲイ。何やらとんでもないモンスターを生み出そうとしている。

 

「そんな事、させてなるものか……!」

 

「グリオンガンドでカエサル・ラグナロクを!フェニキシオンでエグゼクティブ・アレクサンダーを攻撃ィ!」

 

赤馬 零児 LP5000→4950→4900

 

「くっ……!」

 

続けてダブルチューニングモンスターとアクセルシンクロモンスターによる挟撃が零児のフィールドの最重要モンスターを破壊する。吸収と攻撃力アップ。どちらもアルティミトル・ビシバールキンに通じる効果だ。狙われるのは分かりきっていた。

 

「墓地の『ADチェンジャー』を除外し、グリオンガンドとフェニキシオンを守備表示に変更する。ターンエンドだ。『クリスタルP』の効果でドローする」 

ジャン・ミシェル・ロジェ 手札0→2

 

ジャン・ミシェル・ロジェ LP1400

フィールド『究極幻神アルティミトル・ビシバールキン』(攻撃表示)『水晶機巧ーフェニキシオン』(守備表示)『水晶機巧ーグリオンガンド』(守備表示)

『クリスタルP』

手札2

 

圧倒的力を誇る究極神、アルティミトル・ビシバールキン。その攻撃力は絶大。最上級モンスターに相応しい4000もの数値。対する零児のモンスターはカオス・アポカリプスのみ。このままでは敗北は必至だ。

 

「このメインフェイズ、アルティミトル・ビシバールキンの効果発動!互いのフィールドに同じ数だけの『邪眼神トークン』を特殊召喚する!天聖風軍!」

 

「何だとっ!?」

 

邪眼神トークン 守備力0×4

 

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン 攻撃力4000→8000

 

赤き竜の咆哮と共に、互いのフィールドに目玉の化け物がゾロゾロと呼び出される。これでアルティミトル・ビシバールキンの攻撃力は4000アップ。かなり不味い事になった。

 

「私はっ、魔法カード、『手札抹殺』を発動!手札を交換!そして墓地の『置換融合』を除外、カエサル・ラグナロクをエクストラデッキに戻してドロー!」

 

赤馬 零児 手札3→4

 

「魔法カード、『打ち出の小槌』。手札を交換し、魔法カード、『死者蘇生』!墓地の『DDD壊薙王アビス・ラグナロク』を蘇生!」

 

DDD壊薙王アビス・ラグナロク 守備力3000

 

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン 攻撃力8000→9000

 

「アビス・ラグナロクの効果でエグゼクティブ・アレクサンダーを蘇生!!

 

DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー 攻撃力3000→6000

 

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン 攻撃力9000→10000

 

「そしてアビス・ラグナロクの第2の効果!カオス・アポカリプスをリリースし、アルティミトル・ビシバールキンを除外!」

 

「墓地の『スキル・プリズナー』を除外し、アルティミトル・ビシバールキンを対象とするモンスター効果を無効!」

 

「次だ!魔法カード、『アドバンスドロー』!フィールドのアビス・ラグナロクをリリースし、2枚ドロー!」

 

赤馬 零児 手札1→3

 

「墓地の『DDネクロ・スライム』の効果発動!このカードとペンドラゴンを除外し、融合!融合召喚!『DDD烈火大王エグゼクティブ・テムジン』!!」

 

DDD烈火大王エグゼクティブ・テムジン 攻撃力2800

 

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン 攻撃力8000→9000

 

「まだまだ!『DD』モンスターが特殊召喚された事でエグゼクティブ・アレクサンダーの効果発動!墓地の『DDプラウド・オーガ』を蘇生!」

 

DDプラウド・オーガ 攻撃力2300

 

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン 攻撃力9000→10000

 

零児のフィールドに現れたのは眼に当たる部位から角を生やした戦斧を持つ黒き悪魔。展開に次ぐ展開。だがアルティミトル・ビシバールキンの前では逆効果の筈だ。

 

「『邪眼神トークン』をリリースし、『DD魔導賢者ニコラ』をアドバンス召喚!」

 

DD魔導賢者ニコラ 攻撃力2000

 

今度は黒いマントを纏い、胸に巨大な赤の球体を露出させたモンスターだ。これで、レベル6が2体。シンクロ、融合と続き、零児は己が持つ全ての力を解放する。

 

「ニコラとプラウド・オーガでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『DDD怒涛大王エグゼクティブ・シーザー』!!」

 

DDD怒涛大王エグゼクティブ・シーザー 攻撃力2800

 

究極幻神アルティミトル・ビシバールキン 攻撃力8000→9000

 

炎と風の大王に並ぶは荒ぶる水流の大王。頑強な青、紫、銀の鎧を纏い、巨大な剣を担いだモンスターだ。零児が持つ『DDD怒濤王シーザー』の進化形態。そしてこれでフィールドに3体の大王が揃う。

この布陣で、ロジェを倒す。

 

「行くぞ、ジャン・ミシェル・ロジェ!私は墓地のスワラル・スライムを除外し、手札の『DDD』モンスターを特殊召喚する効果を発動!この効果をエグゼクティブ・シーザーのORUを1つ取り除き、無効にし、エグゼクティブ・アレクサンダーとこのカードの攻撃力を1800アップ!」

 

DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー 攻撃力6000→7800

 

DDD怒涛大王エグゼクティブ・シーザー 攻撃力2800→4600

 

「そして『DD魔導賢者ニコラ』をセッティング!手札の『DDD』モンスターを捨て、エグゼクティブ・アレクサンダーの攻撃力を更に2000アップ!」

 

DDD疾風大王エグゼクティブ・アレクサンダー 攻撃力7800→9800

 

「馬鹿なっ……!」

 

これが、零児の全力全開。ランサーズのリーダーの真の実力。ただの人間が神を打ち倒し、今英雄となる。そう、零児の『DDD』達のモチーフのように。

 

「これで、終わりだ!」

 

「神たる私が、こんな所で!」

 

「言った筈だ!私もお前も、間違え迷い、それでも進む人間だと!バトル!シーザーてテムジンで『邪眼神トークン』を攻撃、アレクサンダーで、アルティミトル・ビシバールキンを攻撃する!」

 

三位一体、炎と水、風の英雄が力を合わせ、虹色の剣を作り出し、巨大な刃で赤き邪竜を一刀の下に両断する。

 

ジャン・ミシェル・ロジェ LP1400→0

 

決着、勝者、赤馬 零児。彼の想いが、見事神を切り裂いた。

 

「負け……私が、負けただと……?」

 

「ええ、私達の負けです、長官」

 

「セル……ゲイ……私は……私は、間違っていたのか?」

 

アルティミトル・ビシバールキンが消滅し、投げ出されたロジェが地に仰向けになって倒れ、天井を見つめてポツリと呟く。完全なる敗北。

ぐうの音も出ず、憑き物が落ちた気分だ。そんな彼の下に、セルゲイが歩み寄り、手を伸ばす。

 

「はい。ですが人間、間違いに気づいて終わりではありません。ここから、もう一度始めましょう。私も貴方もここから償いましょう」

 

「……これから、か。出来るだろうか、私に」

 

「出来るも出来ないもない。やってもらわねばならない」

 

その手を取り、起き上がろうとするロジェの下に、今度は零児が歩み寄る。少なくとも零児は、この男ならば出来ると思っている。

ジャン・ミシェル・ロジェ。彼は長官として極めて有能な人材だったのだ。ここで倒れていては困る。シティを再興するにせよ、彼の力は必要なのだ。

 

「まずはあのアーククレイドルを止めてもらおう。出来るのだろう。貴方達に焦りがなかったと言う事は、このシティを自らのものにしようとしたと言う事。つまり

止める手段もある」

 

そう、アーククレイドルがシティに落下すれば、ロジェ達もただでは済まない。シティを支配するとも言ったのだ。止める手立ても必ずある。

 

「ああ、勿論だ。私とてシティそのものを滅ぼすつもりはない。アーククレイドルにはもしもの時の空間転移システムがある。これを使えば……」

 

そんな、時だった。ロジェが絶句し、モニターに写し出されたそれを見たのは。

一体何をと零児が彼の視線を追うと――そこにあったのは、想像を絶する信じられないものが、シティの上空を支配していた。

 

「何だ、あれは……!」

 

 




デュエリスト君は多分伴竜と一緒にバスブレに拾われたり超量戦隊の一員になったり2、3回死んだり生き返ったりと満喫してますね。
リンクがあればイビルツインに対して大量のスパチャ送って何だコイツ……とかひかれるに違いない。

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