遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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好きな子はいじめたくなる小学生メンタル。
それがユートとか沢渡さん、ロジェに適用されているのかもしれません。コイツ酷い目にあってるなってキャラは大体好きなキャラ。
明日はもーっと不憫になるよね、ナス太郎?


第187話 赤き竜

「おーおー、『クリッター』じゃねぇか。まぁた戻って来たのかぁ?」

 

「ハハハ、おかえりサンガンちゃん!」

 

とある監獄の中で、3つの目を持った悪魔、『クリッター』が哀れにも迷い込み、炎に覆われた竜や紫色の羽を持つ烏等、一目見ただけでろくでもない雰囲気を漂わせた囚人達に下卑た声で歓迎されていた。

 

「うっ……うっ……うっかり乗るバスを間違えたばっかりに……!頼むよぉ、オイラ何もやってねぇよぉ!」

 

「ええいうるさい!キリキリ歩け!」

 

「お前に言われるとムカつくなぁ、『ゴヨウ・ガーディアン』!」

 

そう、ここは禁止カード達の監獄。

セキュリティである『ゴヨウ・ガーディアン』や『ゴヨウ・ディフェンダー』に連れられた『クリッター』が3つの目から涙を流しながらこの世の終わりのような表情となる。

彼はただ行き先のバスを間違えただけなのに。

ここに入れば最後、デュエルに顔を出す事が出来なくなるのだ。何だかんだとデュエリスト以上にデュエルが好きな彼等からすれば地獄のような環境だ。

 

「おら!貴様はこの573号室だ!」

 

「お前の同部屋の囚人番号573番は超凶悪な奴だからなぁ!墓地送りにされないよう気をつけろよぉ!」

 

ガシャン、無情にも罪のない『クリッター』が独房へと入れられる。

相部屋の奴もろくでもない奴と言う始末。最悪である。

 

「ふ……新入りか……」

 

「!」

 

部屋の奥、黒く闇に包まれたベットの上で、もう1人の囚人が『クリッター』へ声をかける。噂を聞いた『クリッター』はビクビクとしながらゆっくり振り返る。

 

「えらいハリキリボーイが来たじゃないか……」

 

そこにいたのは、お察しの通り――黄金のデュエルディスクを左腕に嵌めた、デュエリストであった。

 

ーーーーーー

 

「何故だ……何故貴様等はっ……!」

 

シティ中で、多くの者が闘っている。現在、シティ上空に浮かぶアーククレイドルを何とかする為に、遊矢、ジャック、クロウ達が闘い。

混乱の中それに乗じてシティの人々を襲うゴースト達から彼等を守る為に、ランサーズやそれに協力する現地の者達が闘っているのだ。

 

ここシティ地下に設立された賭けデュエル場でも、3人の勇士が1人の大男と大男が引き連れたゴーストとデュエルを行っていた。

その中で、紫のラインを刻んだ黒のローブを纏った筋肉質の大男、ボマーが歯軋りを鳴らし、トップスと思われる高価なスーツを着た恰幅の良い裕福そうな男を庇い立つ青年を睨む。

 

「貴様等はそいつ等が憎くないのかっ!?シンジ・ウェーバーッ!」

 

その青年の名は、シンジ・ウェーバー。今やフレンドシップカップでの遊矢との激闘を見て、シティ中の誰もが知るコモンズのデュエリストだ。

シティの構造を、トップスを憎む誇り高きコモンズの男。そんな彼が、凛々しい表情で、トップスの人間を守っている。

いや、彼だけじゃない。彼の仲間、トニーもデイモンも、トップスを守る為に闘っている事に、ボマーは驚愕し、同時に苛立っている。

 

このゴーストの人格を作る為にコピーされたボマーと言う男は、復讐者であった。故郷を滅ぼしたであろう者を憎み、復讐を遂げようとしていた彼からすれば、憎き敵を庇う彼等の行動は理解できず、自らを否定するものに見えてしまうのだ。

 

「貴様は自らの誇りを捨て、その男達の奴隷にすらなると言うのか!?」

 

「あん?」

 

「ひっ、ヒィッ!た、助けれくれッ、き、君ぃ!早く奴等を倒してくれっ!」

 

「あぁ?」

 

ボマーが怒りを露にして叫び、トップスの男が悲鳴を上げてシンジにすがりついた時、シンジは額に青筋を浮かべ、目付きを鋭くして男を睨み、ドスの効いた声で唸る。

そしてシンジは右手で男の顔面を掴み、あり得ない馬鹿力で持ち上げる。俗に言うアイアンクロー状態。シンジは心外だと言わんばかりの表情で男を掴みながら、今度はボマーを睨む。

 

「イダダダダ!?き、君ぃ!?何をやって……イダダダダ!」

 

「テメェもおっさんも、勘違いしてんじゃねぇぞ。俺は今でもトップスは憎いし、こんな奴等本当は守りたくねぇ」

 

「なら何故!」

 

ギリギリと自身が締め上げる腕を必死でタップする男に視線を移し、呟くシンジ。当然の事だ、シンジ達はそれだけトップスに虐げられて来た。その過去は変わらないし、この憎しみは今でも消えない。

 

「だからテメェ等がコイツ等をかっさらうってのも気に食わねぇ」

 

「ッ!?」

 

「コイツ等が消えたらそれで俺の憎しみも消えんのか?んなもんテメェが決めんじゃねぇ。コイツ等には償ってもらわなきゃいけねぇんだよ。新しくなるシティでな」

 

今も昔も、彼等を許すつもりはない。だが未来はどうなるか分からない。未来ではトップスは償い、コモンズは許しているかもしれない。そんな可能性を潰す事こそ、シンジは許さない。

 

「分かったかデカブツ、分かったら手を退きな。分からねぇなら、お前も俺に、殴られてみるかい?」

 

そう言って不敵に笑う彼は――どこか晴れやかであった。

 

――――――

 

一方、治安維持局のデュエルルーム。そこでは赤き竜神、『アルティマヤ・ツィオルキン』とその配下である『魔王龍ベエルゼ』をフィールドに並べた治安維持局長官――いや、ビルドアップした今、超官と呼ぶべきジャン・ミシェル・ロジェと、彼と対立するランサーズリーダー、赤馬 零児と、ド変態デュエルマシーン(賢者モード)のセルゲイ・ヴォルコフの姿があった。

 

シティの混戦の裏で行われるもう1つのデュエル。ターンは零児に移り、彼はデッキから1枚のカードを引き抜く。

 

「私のターン、ドロー!」

 

ロジェのフィールドには強力なモンスターが2体、下級モンスターが2体、永続魔法、『補給部隊』とセットカードが3枚。

よくも1ターンでここまでの布陣を敷いたものだ。敵であっても感心する。

まずは激闘竜を呼び出す『アルティマヤ・ツィオルキン』を撃破し、長期戦での不利不安を取り除きたい所だが――神と呼ばれるにも関わらず、レベル、攻守共に0のモンスターだ。何か耐性がある事は間違いない。

 

となると次の不安は伊集院 セクトのエースモンスターである『魔王龍ベエルゼ』。攻撃力3000の上、ダメージを攻撃力に変える強固な耐性のモンスター。

試合を見ていた限り、突破は難しいだろうが、このカードの除去も考えなければならない。

幸い、決闘竜は『アルティマヤ・ツィオルキン』に無理矢理フィールドに呼び出された為、正規の召喚を通さず、蘇生制限を満たしていない。1度破壊すれば回収しない限り、復活出来ない。

 

如何に敵は神だろうと、それを操っているのはあくまでデュエリスト。プレイヤー自身は無敵ではない。

ロジェのLPを0にすれば問答無用で勝てる。

 

「結局動いてみないと分からんか、私は『サンダー・ドラゴン』を手札から捨て、同名カード2枚をサーチ!カードをセット、そして――」

 

「罠発動!『砂塵の大竜巻』!そのセットカードを破壊しようか!」

 

「くっ!」

 

「おっと、『地獄門の契約書』か。良いカードを砕けたなぁ」

 

専用サーチカードで盤上を整えようとするも、『アルティマヤ・ツィオルキン』が咆哮し、その影響で生まれた竜巻が『契約書』を砕く。これはかなり痛い。

 

「君は試合に出ていないから情報がないと思ったか?だからこそ私は評議会を部下に攻めさせたのだよ。君のデュエルスタイルを暴く為にね。尤もそのまま倒せるだろうとあれだけ送ったのだが、それも全て倒し、ここに来るのは予想外だったが。榊 遊矢等より君の方がよっぽど化物染みている」

 

「お褒めの言葉受け取っておこう。今の貴方も充分化物だが」

 

「化物ではない!神だ!さぁ、崇めよ!『砂塵の大竜巻』の続く効果で手札の魔法、罠カードをセットし、カードがセットされた事で、『アルティマヤ・ツィオルキン』の効果発動!次はこのカードだ!星海を切り裂く一筋の閃光よ!魂を震わし世界に轟け!『閃光竜スターダスト』!」

 

閃光竜スターダスト 攻撃力2500

 

ロジェが『砂塵の大竜巻』を発動した本当の狙いはこちら。カードをセットし、『アルティマヤ・ツィオルキン』の効果で新たな決闘竜を呼ぶ事。

神の勅命を受け、フィールドに推参したのは星屑纏う線の細い天使のような白い竜。白コナミのエース、『スターダスト・ドラゴン』に酷似した姿を持つ、零児の仲間、コナミの操るシンクロモンスターだ。

 

「『スターダスト』……!」

 

「ククク、貴様の仲間、ダニエルのカードとの再会だ。感動的だろう?」

 

「そうだな……より一層貴方を倒したくなった。魔法カード、『手札抹殺』!」

 

「カウンター罠、『魔宮の賄賂』!魔法、罠の発動を無効にし、破壊!相手は1枚ドローする!」

 

赤馬 零児 手札5→6

 

セルゲイ・ヴォルコフ 手札5→6

 

「くっ、速攻魔法、『リロード』!手札を交換!そして魔法カード、『強欲で貪欲な壺』!デッキトップから10枚のカードを除外、カードを2枚ドローする!」

 

赤馬 零児 手札4→6

 

「魔法カード、『マジカル・ペンデュラム・ボックス』!2枚ドロー!」

 

赤馬 零児 手札5→7

 

「2枚ともペンデュラムモンスターの為、そのまま手札に加える。手札の『DD魔導賢者ニュートン』の効果発動!このカードを手札から捨てる事で、墓地の『地獄門の契約書』を回収、発動!『DD魔導賢者ケプラー』をサーチし、召喚!」

 

DD魔導賢者ケプラー 攻撃力0

 

「ケプラーが召喚、特殊召喚に召喚に成功した事で効果発動!『闇魔界の契約書』をサーチし、発動!効果により墓地の『DD魔導賢者ニュートン』をペンデュラムゾーンに設置する!更に『DDD極智王カオス・アポカリプス』をセッティング!これでレベル5から9のモンスターを同時に召喚可能!我が魂を揺らす大いなる力よ。この身に宿りて、闇を引き裂く新たな光となれ!ペンデュラム召喚!『DDD壊薙王アビス・ラグナロク』!」

 

DDD壊薙王アビス・ラグナロク 守備力3000

 

零児の背後に2本の光の柱が出現し、その中に弧を描いた機械に色とりどりの宝玉を吊るしたモンスターと振り子を模した悪魔が現れ、上空に魔方陣を描き出す。

そして魔方陣に孔が開き、中から1本の光が降り、地響きを鳴らす。光の粒子を散らし、君臨するのは頭部と肩から角を伸ばした人型の悪魔。静かに玉座に腰掛け、圧倒的な存在感を放つ。

 

「そしてアビス・ラグナロクの効果発動!」

 

「棒立ちになっているケプラーをリリースし、『アルティマヤ・ツィオルキン』を狙うか?それとも破壊耐性を持つベエルゼを除外する、か?悪いがそうはいかん。『アルティマヤ・ツィオルキン』には他のシンクロモンスターが存在する限り、攻撃、効果への耐性がある!それに……アビス・ラグナロクの特殊召喚時、私は罠カード、『ツイン・ボルテックス』を発動!私のフィールドの機械族モンスター、『カードガンナー』と君のモンスター、アビス・ラグナロクを破壊!」

 

「ッ!」

 

常に一手先を行くロジェの妨害で、零児の戦術が瓦解する。折角のベエルゼに対抗出来るモンスターが失われてしまった。しかもロジェの戦術はこれだけに終わらない。

 

「『カードガンナー』と『補給部隊』の効果でドロー!」

 

ジャン・ミシェル・ロジェ 手札1→2→3

 

敵の一手を潰すだけでなく、自分は新たな手を引き込む。ロジェはこの一手だけに留まらず、更に先の大局を読もうと言うのだ。まるでチェスでもするかのように、一つ一つに隙がない。

 

「クク、どうしたね、それで終わりか?」

 

「くっ、カードを2枚セットし、ターンエンドだ……!」

 

赤馬 零児 LP4000

フィールド『DD魔導賢者ケプラー』(攻撃表示)

『地獄門の契約書』『闇魔界の契約書』セット2

Pゾーン『DD魔導賢者ニュートン』『DDD極智王カオス・アポカリプス』

手札2

 

結局このターンは大した戦果は上げられなかった。バトルロイヤルルールでは全てのプレイヤーは最初のターン、バトルを行えないとは言え、せめてベエルゼだけでも倒したかった。そしてターンはセルゲイへと回り、彼はデッキから1枚のカードを引き抜く。

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『手札抹殺』!そしてフィールド魔法、『暗黒界の門』を発動!フィールドカードが存在する事で、『地縛囚人ストーン・スィーパー』を特殊召喚する!」

 

地縛囚人ストーン・スィーパー 守備力1600→1900

 

現れたのは黒い影の身体に青く輝く紋様を持つイルカ型のモンスター。セルゲイのデッキは『地縛』カードを中心とし、大型モンスターを次々と展開するもの。遊矢を追い込んだだけあり、かなり強力だ。

 

「続けて『地縛囚人ライン・ウォーカー』を召喚!」

 

地縛囚人ライン・ウォーカー 攻撃力800→1100

 

次は黒い人型の影にオレンジの光を纏わせたモンスター。下半身はプツリと途切れており、紫の炎が漏れ出している。このモンスターはチューナー。シンクロの準備を整えてきた。

 

「そして魔法カード、『異界共鳴ーシンクロ・フュージョン』を発動!俺のフィールドからシンクロモンスターと融合モンスターに記された素材一組を墓地に送り、そのシンクロモンスターと融合モンスターをそれぞれシンクロ、融合召喚する!レベル5のストーン・スィーパーに、レベル3のライン・ウォーカーをチューニング!地の底から蘇れ、戒め放つ翼持つ巨獣よ!シンクロ召喚!現れよ、『地縛戒隷ジオグリフォン』!」

 

地縛戒隷ジオグリフォン 攻撃力2500→2800

 

ライン・ウォーカーが3つのリングとなってストーン・スィーパーを包み込み、その中を潜り抜けると共に閃光が炸裂、光の中より鋭いアギトを拘束された漆黒の翼獣が飛び立つ。

身体中に刻んだ緑の光に巨大な翼、鋭い爪と尾となった蛇が特徴的なモンスター。

その隣でたった今シンクロ素材となった一組のモンスターが渦を巻き、無数の触手が飛び出す。

 

「地を這う囚人よ、刑場への道を歩き続ける囚人と1つとなり戒めを与える巨獣となれ!融合召喚!現れよ、『地縛戒隷ジオクラーケン』!」

 

地縛戒隷ジオクラーケン 攻撃力2800→3100

 

現れたのは巨大なイカの姿をしたモンスター。『アルティマヤ・ツィオルキン』やベエルゼもいる事で、広いデュエルルームも少々狭く感じる。

 

「確かに……私が与えた力だけあってそのモンスター達は強力だが、それでもベエルゼは倒せんぞ。それが分からない貴様ではあるまい」

 

「魔法カード、『終わりの始まり』!墓地の闇属性モンスター5体を除外し、3枚ドロー!」

 

セルゲイ・ヴォルコフ 手札1→4

 

「除外された『ネクロフェイス』の効果で互いにデッキから5枚のカードが除外される。俺はカードを4枚セットし、ターンエンド」

 

セルゲイ・ヴォルコフ LP4000

フィールド『地縛戒隷ジオグリフォン』(攻撃表示)『地縛戒隷ジオクラーケン』(攻撃表示)

セット4

『暗黒界の門』

手札0

 

「私のターン、ドロー!」

 

「永続罠、『サモンリミッター』!互いに1ターンに2度までしか召喚、特殊召喚を行えない!」

 

「魔法カード、『強欲で金満な壺』を発動!エクストラデッキから6枚のカードを除外、2枚ドロー!」

 

ジャン・ミシェル・ロジェ 手札3→5

 

「『カードガンナー』の効果発動!デッキトップから3枚のカードを墓地へ!」

 

カードガンナー 攻撃力400→1900

 

「手札の『水晶機巧ースモーガー』を捨て、『水晶機巧ーサルファフナー』を墓地より蘇生!」

 

水晶機巧ーサルファフナー 守備力1500

 

「そして『カードガンナー』を破壊!墓地のスモーガーを除外し、『クリストロン・インパクト』をサーチ!そしてカードをセットする事で、『アルティマヤ・ツィオルキン』の効果発動!清廉なる花園に芽吹き孤高の薔薇よ蒼き雫を得てここに開花せよ!『月華竜ブラック・ローズ』!」

 

月華竜ブラック・ローズ 攻撃力2400

 

恐るべき速度でロジェのフィールドを侵食する決闘竜。今度は鮮やかな深紅に染まった薔薇の鱗を持つ黒い竜。

 

「ブラック・ローズの特殊召喚時、または相手のレベル5以上のモンスターが特殊召喚した時、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体をバウンスする!消えるが良い!ジオグリフォン!退華の叙事歌!」

 

「永続罠、『デモンズ・チェーン』!ブラック・ローズの効果を封じる!」

 

「それ位はやってもらわないと困る。では今度はバトルにしようか!まずは赤馬 零児!愚かな貴様に神の鉄槌を!仲間の力をその身に受けよ!『閃光竜スターダスト』でケプラーへ攻撃!流星突撃!」

 

セルゲイのフィールドより鎖が飛び出してブラック・ローズの動きを封じ込めるのも束の間、隣に並ぶ『スターダスト』が飛び立ち、急降下、猛スピードのダイブでケプラーに迫る。

 

「させない!罠発動、『威嚇する咆哮』!攻撃宣言を封じる!」

 

「チッ、流石にケプラーを棒立ちさせる訳がないか。私はカードを3枚セットし、ターンエンドだ」

 

ジャン・ミシェル・ロジェ LP4000

フィールド『アルティマヤ・ツィオルキン』(守備表示)『閃光竜スターダスト』(攻撃表示)『魔王龍ベエルゼ』(攻撃表示)『月華竜ブラック・ローズ』(攻撃表示)『水晶機巧ーサルファフナー』(守備表示)

『補給部隊』セット4

手札1

 

「私のターン、ドロー!スタンバイフェイズ、2枚の『契約書』の効果により、私は2000のダメージを受ける」

 

赤馬 零児 LP4000→2000

 

「ほう、手札を得る為ダメージを許容するか。涙ぐましいなぁ。いじらしくて、邪魔したくなってしまう!希望を捨て、楽になれ!罠カード、『砂塵の大嵐』!『地獄門の契約書』と『デモンズ・チェーン』を破壊する!」

 

「ッ、罠発動!『契約洗浄』!私は全ての『契約書』を破壊し、その枚数分ドローし、LPをドローした数×1000回復!」

 

赤馬 零児 LP2000→4000 手札3→5

 

ロジェが零児を地獄に突き落とそうと『アルティマヤ・ツィオルキン』から激しき嵐を放つ。幸いにして零児はこれをかわし、新たな手札を得るが、これならばダメージを受ける前に使った方が良かったか。『地獄門の契約書』での手札補給も不発に終わり、零児の勝利へのポートフォリオが崩れていく。

ジャン・ミシェル・ロジェ。零児にとって強力な天敵だ。

 

「おや、かわされてしまったか。まぁしかし――」

 

ニヤリと笑みを浮かべるロジェの背後で、セルゲイが仕掛けた『デモンズ・チェーン』から解き放たれし竜。『ブラック・ローズ』が荒々しい咆哮を放つ。これもまた、零児の天敵。

 

「このカードが解放されたから良しとしよう」

 

「……!魔法カード、『強欲で金満な壺』を発動!エクストラデッキから6枚のカードを除外、デッキより2枚ドロー!」

 

赤馬 零児 手札4→6

 

「魔法カード、『ポルターガイスト』!セルゲイの場から『サモンリミッター』をバウンスし、ペンデュラム召喚!『DDD壊薙王アビス・ラグナロク』!『DDD反骨王レオニダス』!」

 

DDD壊薙王アビス・ラグナロク 守備力3000→3300

 

DDD反骨王レオニダス 攻撃力2600→2900

 

再び揺れ動く振り子の軌跡、現れたのは決闘竜への唯一の対抗株、アビス・ラグナロクと黄金の鎧兜と赤いマントを纏い、槍と盾を手にした騎士王の姿。

 

「ブラック・ローズの効果発動!アビス・ラグナロクをバウンス!」

 

「だがアビス・ラグナロクの効果までは無効に出来ない!このカードが召喚、特殊召喚に成功した事で、墓地の『DDD覇龍王ペンドラゴン』を蘇生する!」

 

DDD覇龍王ペンドラゴン 攻撃力2600→2900

 

アビス・ラグナロクと入れ替わるように現れたのは漆黒の鱗を狂気で震わせる強靭な竜王。このような見た目だが、悪魔族と言う、デュエルモンスターズにありがちなややこしさを持つ。

 

「魔法カード、『置換融合』を発動!フィールドのレオニダスとペンドラゴンで融合!神々の黄昏を打ち破り、押し寄せる波の勢いで、新たな世界を切り開け!融合召喚!出現せよ!極限の独裁神、『DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク』!」

 

DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク 攻撃力3200→3500

 

融合召喚、零児の背後に青とオレンジの渦が発生し、黄金の騎士王と漆黒の竜王が混ざり合い、新たな王を誕生させる。進化前となるアビス・ラグナロクの面影を残しつつ、筋肉を雄々しく隆起させ、背から更なる角を伸ばし、水のオーラを纏う魔王。

このモンスターで、ロジェの布陣を突き崩す。

 

「バトル!カエサル・ラグナロクでブラック・ローズへ攻撃!この瞬間、ケプラーを手札に戻し、カエサル・ラグナロクの効果発動!ベエルゼをこのカードに装備し、その攻撃力分、カエサル・ラグナロクの攻撃力をアップ!」

 

「ほう……?罠発動!『レインボー・ライフ』!手札を1枚捨て、このターンのダメージを回復に変換!更に『スターダスト』の効果を使い、ブラック・ローズを破壊から守る!波動音壁!」

 

DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク 攻撃力3500→6500

 

ジャン・ミシェル・ロジェ LP4000→8100

 

対象を取らない、相手モンスターの装備化、如何に戦闘、効果で破壊されないベエルゼだろうと一瞬で無力化され、更に糧とする効果だ。魔王が魔王に食らわれる。

生き残った王はその身体から漆黒のオーラを滾らせ、巨刀を薔薇の竜に振り下ろす。これを食らえば決闘竜でもすり潰され、ミンチにされる。ロジェにも大ダメージが入るだろうと思われたその時、ロジェは2つのカードを駆使し、完璧にかわしてみせる。

 

ブラック・ローズの周囲に光のバリアが発生し、巨刀とぶつかって飛び散る火花が虹色の雨となりてロジェに降り注ぐ。

手強いが――厄介なベエルゼを打破した。

 

「メンイフェイズ2、『DD魔導賢者ケプラー』を召喚!」

 

DD魔導賢者ケプラー 攻撃力0→300

 

「召喚時効果により、デッキより『地獄門の契約書』をサーチ、発動!デッキから『DDナイト・ハウリング』をサーチ。墓地の『ADチェンジャー』を除外し、ケプラーを守備表示に変更。カードをセットし、ターンエンド」

 

赤馬 零児 LP4000

フィールド『DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク』(攻撃表示)『DD魔導賢者ケプラー』(守備表示)

『魔王龍ベエルゼ』『地獄門の契約書』セット1

Pゾーン『DD魔導賢者ニュートン』『DDD極智王カオス・アポカリプス』

手札4

 

「俺のターン、ドロー!『暗黒界の門』の効果を発動!墓地の『地縛囚人ストーン・スィーパー』を除外し、手札の悪魔族モンスターを捨て、1枚ドロー!」

 

セルゲイ・ヴォルコフ 手札1→2

 

「更に墓地に送られた『魔サイの戦士』の効果発動!デッキからこのカード以外の悪魔族モンスターを墓地に!『地縛囚人ライン・ウォーカー』を選択!魔法カード、『アームズ・ホール』!デッキトップをコストに装備魔法、『メタルシルバー・アーマー』をサーチ!カードを1枚セット、墓地の『シャッフル・リボーン』を除外、セットカードをデッキに戻し、ドロー!」

 

セルゲイ・ヴォルコフ 手札1→2

 

「『メタルシルバー・アーマー』をジオクラーケンに装備!」

 

「『スターダスト』の効果発動!ブラック・ローズを守る!」

 

「そして墓地に存在するライン・ウォーカーを除外し、ブラック・ローズを再度特殊召喚させる!」

 

「ブラック・ローズの効果発動!ジオクラーケンをバウンス!」

 

「墓地の『スキル・プリズナー』を除外し、効果を無効!更にもう1体のライン・ウォーカーを除外、『スターダスト』を再度特殊召喚させ、ジオクラーケンの効果発動!自分のターンに相手モンスターが特殊召喚された事で、このターン特殊召喚したモンスターを全て破壊し、その数×800のダメージを与える!」

 

「やらせんさ、カウンター罠、『大革命返し』。フィールドのカードを2枚以上破壊するカードの発動を無効にし、除外する!」

 

「ぐっ……!」

 

「それで終わりか?セルゲイよ。貴様では私には勝てん。誰がお前にデュエルを教えてやったと思っている?誰がお前にそのカード達を渡したと思っている?」

 

そう、例えロジェが赤き竜の力を得ていなかったとしても、セルゲイではロジェは倒せない。それはロジェがセルゲイの師である為、今現在セルゲイが行っているデュエルは、ロジェによって教えられた為。セルゲイの全てを知り尽くしているロジェには、セルゲイは勝てない。

 

「そんな事を忘れてしまったのか?嘆かわしいな。榊 遊矢に誑かされ、育ててもらった恩を仇で返すとは」

 

わざとらしく頭に手をやり、溜め息を吐き出すロジェ。そんな彼の力を前にして、セルゲイは歯軋りを鳴らし、手札から新たなカードをデュエルディスクに叩きつける。

 

「魔法カード、『アドバンスドロー』!ジオグリフォンをリリースし、2枚ドロー!」

 

セルゲイ・ヴォルコフ 手札0→2

 

「折角の上級モンスターを良いのか?」

 

「お忘れですか?俺が安定よりもスリルを求めるデュエリストである事を」

 

「ふん、言うではないか。なら私にもスリルを味わわせてもらおうか。出来るものならな」

 

「言われずとも魔法カード、『強欲で貪欲な壺』!」

 

セルゲイ・ヴォルコフ 手札1→3

 

「魔法カード、『ブラック・コア』!手札を1枚捨て、ブラック・ローズを除外!」

 

「ぬぅっ!?」

 

零児に続き、セルゲイも決闘竜を攻略する。毎ターンこちらの戦力をバウンスしてくるこのカードは実に強力だ。ベエルゼ同様、早期の除去が求められる。これで残る決闘竜は、星屑纏う『閃光竜スターダスト』のみ。

 

「永続罠、『闇次元の解放』!除外されている『地縛戒隷ジオクラーケン』を帰還させる!」

 

地縛戒隷ジオクラーケン 攻撃力2800→3100

 

次は戦力の復活を。異次元に繋がる穴が開き、中から食い破るように触手が飛び出し、無理矢理穴を広げて巨大な海魔が現れる。

 

「バトル!ジオクラーケンで『スターダスト』へ攻撃!」

 

「墓地の『シールド・ウォリアー』を除外、『スターダスト』を守る!」

 

ジャン・ミシェル・ロジェ LP8100→7500

 

「くっ、神たる私に傷をつけるか……!」

 

「貴方は神などではない!俺と同じただの人だ!」

 

「デュエルマシーンが世迷い言を……!」

 

「魔法カード、『一時休戦』!互いにドローし、次のターン終了までダメージを0に!」

 

セルゲイ・ヴォルコフ 手札0→1

 

赤馬 零児 手札4→5

 

ジャン・ミシェル・ロジェ 手札0→1

 

「魔法カード、『暗黒界の取引』を発動。ターンエンド」

 

セルゲイ・ヴォルコフ LP4000

フィールド『地縛戒隷ジオクラーケン』(攻撃表示)

『闇次元の解放』セット1

『暗黒界の門』

手札0

 

「私のターン、ドロー!罠発動!『クリストロン・インパクト』!除外されている『水晶機巧ーシストバーン』を特殊召喚!」

 

水晶機巧ーシストバーン 守備力1500

 

現れたのは紫水晶、アメジストで身体を構成した光輝く翼竜。翼獣、サルファフナーに並び、2体揃って零児とセルゲイのモンスターを威嚇する。

 

「続くインパクトの効果により、お前達のモンスターの守備力を0に!」

 

DDD怒濤壊薙王カエサル・ラグナロク 守備力3000→0

 

地縛戒隷ジオクラーケン 守備力1200→0

 

「そしてシストバーンの効果発動!サルファフナーを破壊し、デッキから『水晶機巧ーリオン』を特殊召喚!更に破壊されたサルファフナーの効果で2体目のリオンをリクルート!『補給部隊』の効果でドロー!」

 

ジャン・ミシェル・ロジェ 手札2→3

 

水晶機巧ーリオン 守備力500×2

 

次は黒銀のボディを輝かせた小さな人型のロボット。しかも2体だ。今度はどのような戦法で来るか、零児とセルゲイに緊張が走る。

 

「尤も、シストバーンの効果発動後、私は機械族シンクロモンスターしかエクストラデッキから呼べなくなるがね」

 

「決闘竜を呼ぶメリットを無くしてまで……何をする気だ?」

 

「魔法カード、『強欲なウツボ』!手札の水属性モンスター2体をデッキに戻し、3枚ドロー!」

 

ジャン・ミシェル・ロジェ 手札0→3

 

「更に魔法カード、『カップ・オブ・エース』!当然表!」

 

ジャン・ミシェル・ロジェ 手札2→4

 

「魔法カード、『暗黒界の取引』を発動……手札を交換。さて、答えてやろう。何をする気か、こうするのさ!私はレベル3のシストバーンに、レベル3のリオン2体を――ダブルチューニング!」

 

「何だと!?」

 

チューナー2体を、1体のモンスターに注入する、ダブルチューニング。それはあのキング、ジャック・アトラスしか持ち得ぬ異色のシンクロ召喚。それを、目の前のロジェは驚く零児とセルゲイを尻目に容易く行う。

 

「これこそが私が開発したシンクロ最強のデッキ、『クリストロン』の力!シンクロ召喚!『水晶機巧ーグリオンガンド』!!」

 

水晶機巧ーグリオンガンド 攻撃力3000

 

2体のリオンが6つの光輝くリングとなって弾け飛び、シストバーンを包み、真っ赤な炎が一面を照らす。燃える地平線より姿を見せたのは、黄金に輝く竜。

8枚の翼を伸ばす、逞しき体躯の竜人。

これがロジェ本来の切り札。フレンドシップカップの対戦データを元として作り上げた最強のシンクロデッキ、『クリストロン』だ。古き『アンティーク・ギア』から最新の力へ。それでも機械族と言う共通点は彼がアカデミアの人間である事を示しているのか。

 

「グリオンガンドのシンクロ召喚時、素材としたモンスターの数まで相手フィールド、墓地のモンスターを除外する!私はカエサル・ラグナロクとジオクラーケン、更に赤馬 零児の墓地のペンドラゴンを除外!」

 

「させるか!罠発動、『スキル・プリズナー』!カエサル・ラグナロクを対象とするモンスター効果を無効に!」

 

流石はチューナー2体を求めるダブルチューニングのシンクロモンスターと言った所か、恐るべき効果が飛び出し、零児が何とかこれをかわす。

決闘竜にも比肩するモンスター。こんなカードまで出されては堪ったものではない。

 

「魔法カード、『デビルズ・サンクチュアリ』!『メタルデビルトークン』を特殊召喚!」

 

メタルデビル・トークン 攻撃力0

 

「『水晶機巧ースモーガー』を召喚!」

 

水晶機巧ースモーガー 攻撃力1000

 

今度は煙水晶、スモーキークォーツを身体に埋め込んだ白虎のモンスター。背中や尾から突き破るように水晶が生えている。シストバーンと対をなすモンスターだ。

 

「スモーガーの効果発動!トークンを破壊し、『水晶機巧ーシトリィ』をデッキから特殊召喚!」

 

水晶機巧ーシトリィ 守備力500

 

恐るべき展開力。スモーガーが咆哮すると共にトークンが見る見る内に成長し、黄水晶、シトリンで構成された少女型のロボットとなる。

 

「レベル3のスモーガーに、レベル2のシトリィをチューニング!シンクロ召喚!『水晶機巧ーアメトリクス』!」

 

水晶機巧ーアメトリクス 攻撃力2500

 

再びシンクロ召喚。フィールドに現れたのは紫水晶と黄水晶が混じり合い作られたアメトリンの鎧を持つ女性型のロボット。

シストバーンをモチーフにしたような角、翼、そして尾を持っており、羽の代わりに生えた水晶は紫と金の美しい輝きを放つ。

 

「アメトリクスのシンクロ召喚時、貴様のフィールドの特殊召喚されたモンスター全てを守備表示に変更する!」

 

「しまった……!」

 

現在、零児とセルゲイのフィールドのモンスターは『クリストロン・インパクト』の効果により守備力が0となっている。

その状況でのこのカード。如何にカエサル・ラグナロクの攻撃力が高まっていても防ぎようがない。

 

「フィールド魔法、『クリスタルP』を発動!私の『クリストロン』の攻撃力を300アップ!」

 

水晶機巧ーグリオンガンド 攻撃力3000→3300

 

水晶機巧ーアメトリクス 攻撃力2500→2800

 

「バトルだ!グリオンガンドでカエサル・ラグナロクへ、『スターダスト』でケプラーを、アメトリクスでジオクラーケンへ攻撃!」

 

「ぐっ……!」

 

「ぬぁっ!?」

 

シンクロモンスターによる総攻撃。見事零児達のモンスターを全滅させ、またもロジェが優位に立つ。2人を相手に一方的とも言って良い展開。

流石は神の力を得たと言うだけはある。いや、もしかすれば、神の力などなくとも、この男は零児1人が相手ならば互角に渡り合っていたのではないか。そう思わずにはいられない。

 

「ターンエンドだ。この瞬間、『クリスタルP』の効果発動!このターンにシンクロ召喚した『クリストロン』モンスターの数だけドロー!」

 

ジャン・ミシェル・ロジェ 手札0→2

 

更に展開した後の手札補充も万端、間違いなく一流のデュエリストだ。

 

ジャン・ミシェル・ロジェ LP7500

フィールド『アルティマヤ・ツィオルキン』(守備表示)『閃光竜スターダスト』(攻撃表示)『水晶機巧ーグリオンガンド』(攻撃表示)『水晶機巧アメトリクス』(攻撃表示)

『補給部隊』

『クリスタルP』

手札2

 

絶対的な力を持つ赤き竜、『アルティマヤ・ツィオルキン』。神の力を手にしたロジェが、恐るべき執念で零児達に襲いかかる。

果たして彼等は、ロジェを倒す事が出来るのか。




ドラグーン「遊戯と城之内くんの友情のカード!友情のカードだよ!」

ホープゼアル「俺が禁止になったのはヌメロンのせい、ぜってぇ許さねぇドン・サウザンドォ!」

鰻「助けてくださいデュエリスト……私達が禁止にされたのは冥界の王の罠に違いありません」

デュエリスト君「ほんとぉ?」

FWD(俺もしかしたら生まれたらその時点で死ぬのでは?)



龍可「エンシェントフェアリーのカードが反応しない……精霊界で何かが……?」

レグルス「エンシェントフェアリーは逮捕されました」

龍可「逮捕!?」

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