遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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第176話 もっと速く疾走れー!!

シンクロ次元、シティ。夜の闇も明け始める頃、未だアカデミアの侵攻を防ぐ中、遊矢とユーゴのアクションライディングデュエルは続く。

 

遊矢のフィールドにはペンデュラムと言う大量展開により呼び出された3体の『EM』に加え、強力な融合モンスター、『ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』が存在。

対し、ユーゴのフィールドには彼が憧れるデュエリストのカード、『王者の調和』で呼び出されたエース、『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』が飛翔している。

攻撃力、戦力においてはユーゴが不利であるが、『クリアウィング』には自身を強化する効果がある。勝負はまだ分からない。

 

「『SRシェイブー・メラン』を召喚!」

 

SRシェイブー・メラン 攻撃力2000

 

「シェイブー・メランの効果発動!このカードを守備表示に変更し、ブレイブアイズの攻撃力を800ダウン!『クリアウィング』の効果!レベル5以上のモンスター1体を対象とするモンスター効果を無効にし、破壊。破壊してシェイブー・メランの攻撃力を自身に加える!ダイクロイック・ミラー!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力2500→4500

 

『クリアウィング』の翼が光輝き、幾何学的な紋様が出現、紋様は浮き出て光の針と化し、シェイブー・メランを突き刺しエネルギーを吸収する。

シェイブー・メランの効果でも事は足りるが、守備力の低いこのモンスターは次のターンには破壊されかねないと思っての行動だ。

 

「バトル!『クリアウィング』でブレイブアイズへ攻撃!旋風のヘルダイブスラッシャー!」

 

榊 遊矢 LP3000→1500

 

「ぐっ、『補給部隊』の効果でドロー!」

 

「『便乗』するぜ、2枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札1→2

 

ユーゴ 手札3→5

 

「メインフェイズ2、速攻魔法、『ツイン・ツイスター』!手札を1枚捨て、ペンデュラムスケールを破壊するぜ!」

 

「ペンデュラムまで……!」

 

「これで展開の肝は潰したぜ?カードを2枚セット、ターンエンドだ!」

 

ユーゴ LP3000

フィールド『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』(攻撃表示)

『便乗』セット2

手札1

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「永続罠、『竜の束縛』!互いに『クリアウィング』の元々の攻撃力、2500以下のモンスターを特殊召喚出来ない!」

 

「ッ、これは……!?」

 

『クリアウィング』が天高く飛翔、翼を光輝かせ、咆哮する。対象のドラゴン族、最大攻撃力2500以下のモンスターの特殊召喚の封印。つまり、遊矢のペンデュラム対策。遊矢のメインデッキに投入されているモンスターで攻撃力2500を越えるモンスターはそうはいない。ユーゴも『クリアウィング』を維持する事については特化している。これは苦しくなりそうだ。

 

「さぁ、どうする遊矢?」

 

「成程……強敵じゃないか……このドラゴン退治、受けさせてもらおうか!『EMドクロバット・ジョーカー』を召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800

 

「ドクロバット・ジョーカーの効果で『EMラディッシュ・ホース』をサーチ、セッティング!ペンデュラム効果発動!ダグ・ダガーマンの攻撃力2000分、『クリアウィング』の攻撃力をダウン!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力2500→500

 

「ほーう……!」

 

今度は『クリアウィング』の攻撃力がダウン、下級モンスターでも充分に破壊可能な数値まで落ちてしまった。初見で『竜の束縛』に対応して来る所は流石と言うべきか。

 

「バトル!ダグ・ダガーマンで『クリアウィング』へ攻撃!」

 

「甘いぜ遊矢!速攻魔法、『旗鼓堂々』!俺の墓地の装備魔法をフィールドのモンスター1体に装備する!『ドラゴン・シールド』を『クリアウィング』に装備!このカードを装備したモンスターは戦闘、効果では破壊されず、互いが受けるダメージも0にする!」

 

「ちょっとトリッキー過ぎるぞ……!『竜の束縛』といい、『クリアウィング』とクリスタルウィングしかドラゴン族いない癖に……!」

 

しかしユーゴの戦術は2歩先を行く。瞬間に『クリアウィング』に青い鎧が装着され、ダグ・ダガーマンが投げるナイフを弾き返す。

 

「カードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

「この瞬間、『旗鼓堂々』の効果で装備して『ドラゴン・シールド』は破壊される」

 

榊 遊矢 LP1500

フィールド『EMドクロバット・ジョーカー』(攻撃表示)『EMダグ・ダガーマン』(攻撃表示)『EMゴムゴムートン』(守備表示)『EMギッタンバッタ』(守備表示)

『補給部隊』セット3

Pゾーン『EMラディッシュ・ホース』

手札0

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『局所的ハリケーン』!フィールドにセットされた魔法、罠を持ち主の手札に戻す!」

 

「罠発動、『仁王立ち』!ドクロバット・ジョーカーの守備力を倍に!」

 

EMドクロバット・ジョーカー 守備力100→200

 

「ドクロバット・ジョーカーに……?魔法カード、『アームズ・ホール』を発動。デッキトップを墓地に送り、『月鏡の盾』をサーチ、『クリアウィング』に装備、バトル!」

 

「墓地の『仁王立ち』を除外し、攻撃をゴムゴムートンに絞る!」

 

「そっちを選ぶか、行け!『クリアウィング』!『月鏡の盾』の効果でゴムゴムートンの攻守の内、高い方の数値に100を加えた攻撃力を『クリアウィング』に与える!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力500→2500

 

「『補給部隊』の効果でドロー!」

 

「『便乗』!」

 

榊 遊矢 手札2→3

 

ユーゴ 手札0→2

 

「ターンエンドだ」

 

ユーゴ LP3000

フィールド『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』(攻撃表示)

『月鏡の盾』『竜の束縛』『便乗』

手札2

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『手札抹殺』!互いに手札を捨て、捨てた枚数をドローする!」

 

「『便乗』の効果!」

 

ユーゴ 手札2→4

 

ユーゴを相手取るには少しでも手数が欲しい。そう思い、遊矢は相手にドローさせるデメリットにも目をつむり、新たなカードを引き込む。そして視線を落として。

 

「!これは……賭けに出るか……『EMラ・パンダ』をセッティング!そして魔法カード、『プレゼント交換』を発動!」

 

「何……?」

 

「あのカードは……!」

 

ここで遊矢が発動したのは予想外の想定外。ユーゴも目を見開くバラエティカード。その気になる効果は――。

 

「互いのプレイヤーはそれぞれ自分のデッキからカードを1枚選んで裏側表示で除外、このターンのエンドフェイズに除外したカードを互いの手札へ交換する!」

 

「何を考えているのか分からねぇが……お前の事だ、何も考えていない筈がねぇか。良いぜ、乗ってやるよ!」

 

「俺はカードをセット、ターンエンドだ!」

 

榊 遊矢 LP1500

フィールド『EMドクロバット・ジョーカー』(攻撃表示)『EMダグ・ダガーマン』(攻撃表示)『EMギッタンバッタ』(守備表示)

『補給部隊』セット1

Pゾーン『EMラ・パンダ』『EMラディッシュ・ホース』

手札1

 

ユーゴが遊矢の手札に加えたのは『SRベイゴマックス』。『スピードロイド』のキーカード。恐らく捨てさせる事で回収を図っているのだろう。そして遊矢がユーゴの手札に加えたのは。

 

「俺のターン、ドロー!早速使わせてもらおうか……!『EMドラミング・コング』をセッティング!」

 

ユーゴにも使えるペンデュラムカード。つまりペンデュラムゾーンに置いて来るであろうカード。かなりの賭けだったが、これで遊矢の狙いは達成された。これこそが遊矢の待っていた展開。

 

「この時を、待っていた!速攻魔法、『揺れる眼差し』!」

 

「――そう言う事か……!」

 

『クリアウィング』は現在戦闘で無敵と言って良い。それを差し引いても蘇生されたら厄介だ。だからこそ、除外を狙う。しかもこれは、防ぐのが難しい。対象を取らない効果。

 

「互いのスケールを破壊し、破壊したカードの数まで効果を適用!1つ、相手に500ダメージを与える!」

 

ユーゴ LP3000→2500

 

「2つ、ペンデュラムモンスターのサーチ!『EMペンデュラム・マジシャン』をサーチ!そして3つ――『クリアウィング』を除外!」

 

『クリアウィング』、撃破。見事な攻略法で逆境を覆す遊矢。とんでもないコンボだ。一歩間違えれば自分が不利になっていたと言うのに。

 

「やってくれたな……!」

 

「へへ……!」

 

「だけどこんなもんで俺は止まらねぇ!対象のモンスターがフィールドを離れた事で『竜の束縛』は破壊される。俺は『ジェスター・コンフィ』を特殊召喚!」

 

ジェスター・コンフィ 攻撃力0

 

「『BFー東雲のコチ』を召喚!」

 

BFー東雲のコチ 攻撃力700

 

「レベル1の『ジェスター・コンフィ』に、レベル4の東雲のコチをチューニング!シンクロ召喚!『HSRチャンバライダー』!」

 

HSRチャンバライダー 攻撃力2000

 

「魔法カード、『二重召喚』!もう1度召喚権を得、『SRオハジキッド』を召喚!」

 

SRオハジキッド 攻撃力1000

 

今度はオハジキを手に遊矢を狙い撃とうとするガンマン風のモンスター。

 

「召喚時効果で相手の墓地のチューナーを特殊召喚!そのカードとこのカードでシンクロを行う!」

 

「俺の墓地にはチューナーモンスター、『調律の魔術師』がいる……!」

 

調律の魔術師 守備力0

 

ユーゴのフィールドに白い法衣を纏ったピンク髪の『魔術師』少女が横ピースで登場する。

 

「俺はレベル3のオハジキッドにレベル1の『調律の魔術師』をチューニング!幾千の顔を持つ迷宮の影よ、その鋭き刃で混沌の闇を切り裂け!シンクロ召喚!『HSR快刀乱破ズール』!」

 

HSR快刀乱破ズール 攻撃力1300

 

今度はパズルを人型に組み立て直したようなモンスター。攻撃力は低いももの、特殊召喚したモンスター相手では強力なアタッカーと化す。

 

「だが調律の効果を受けてもらう!」

 

「ぐがっ!?」

 

榊 遊矢 LP1500→1900

 

ユーゴ LP2500→2100

 

シンクロの際、調律が手からスッポリと落とした音叉がユーゴの頭部に激突、ヘルメット越しでも衝撃が伝わり、頭を抱える。

 

「バトル!チャンバライダーでドクロバット・ジョーカーへ攻撃!」

 

HSRチャンバライダー 攻撃力2000→2200

 

榊 遊矢 LP1900→1500

 

「『補給部隊』の効果でドロー!」

 

榊 遊矢 手札2→3

 

ユーゴ 手札1→3

 

「2回目の攻撃!ギッタンバッタを狙う!」

 

「特殊召喚したギッタンバッタは1ターンに1度、戦闘で破壊されない!」

 

HSRチャンバライダー 攻撃力2200→2400

 

「ズールでダグ・ダガーマンへ攻撃!特殊召喚されたモンスターと戦闘を行う場合、攻撃力倍加!」

 

HSR快刀乱破ズール 攻撃力1300→2600

 

榊 遊矢 LP1500→900

 

「カードを2枚セット、ターンエンドだ!」

 

ユーゴ LP2100

フィールド『HSRチャンバライダー』(攻撃表示)『HSR快刀乱破ズール』(攻撃表示)

『便乗』セット2

手札1

 

「俺のターン、ドロー!墓地の『ギャラクシー・サイクロン』を除外し、『便乗』を破壊!魔法カード、『マジカル・ペンデュラム・ボックス』!」

 

榊 遊矢 手札3→5→4

 

「魔法カード、『金満な壺』!トランプ・ガール、ギタートル、ドクロバット・ジョーカーを回収し、2枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札3→5

 

「魔法カード、『打ち出の小槌』。手札を交換!ここからが勝負だ!『EMキングベアー』と『EMブランコブラ』をセッティング!ペンデュラム召喚!『EMペンデュラム・マジシャン』!『EMダグ・ダガーマン』!『EMラディッシュ・ホース』!『EMラ・パンダ』!」

 

EMペンデュラム・マジシャン 守備力800

 

EMダグ・ダガーマン 攻撃力2000

 

EMラディッシュ・ホース 守備力2000

 

EMラ・パンダ 守備力800

 

呼び出される4体のモンスター。赤い衣装を纏い、振り子を手にしたマジシャン。『EM』のキーカードであり、ドクロバット・ジョーカーと並んで『EM』サーチ、3種の神器とも言えるモンスターだ。もう1枚は牢獄の中である。そしてこの中で最も攻撃力が高いダグ・ダガーマンとこれまでのデュエルで他のモンスターをサポートしてきた大根の角持つ馬。ラッパを身体に巻いたパンダだ。

 

「『EMペンデュラム・マジシャン』の効果!このカードとラ・パンダを破壊し、2枚の『EM』をサーチ!」

 

「おっと、そいつには退場してもらうぜ!カウンター罠、『大革命返し』!カードを2枚以上破壊する効果の発動を無効にし、除外する!」

 

「ッ、アリト並みのカウンターだな……!なら今度はラディッシュ・ホースの効果発動!チャンバライダーの攻撃力をラディッシュ・ホースの攻撃力分ダウンし、ダグ・ダガーマンの攻撃力を逆にアップ!」

 

HSRチャンバライダー 攻撃力2400→1900

 

EMダグ・ダガーマン 攻撃力2000→2500

 

「バトル!ダグ・ダガーマンでチャンバライダーへ攻撃!」

 

「チャンバライダーの攻撃力をアップ!」

 

「それでも届かない!」

 

HSRチャンバライダー 攻撃力1900→2100

 

ユーゴ LP2100→1700

 

「ぬぁっ……!」

 

「踏ん張るのよユーゴ!」

 

ズラリとダグ・ダガーマンが袖よりナイフを取り出し、チャンバライダーへ投擲、チャンバライダーは巧みなライディングテクニックで隙間を縫ってかわし、二刀流で切りかかる。しかしダグ・ダガーマンはナイフを何本も重ねる事で強度を高めて防ぐ。

だが流石はチャンバライダー。両腕の刃の切れ味は恐ろしく、ナイフを纏めて真っ二つにしてしまう。このままではダグ・ダガーマンが負ける。そんな時、パチンてダグ・ダガーマンが指を鳴らすとチャンバライダーのいる地面からナイフが飛び出し、バイクがズタズタに傷つけられる。

機動力を失ったチャンバライダーに向かい、ダグ・ダガーマンは全てのナイフを投擲、ハリネズミのような姿になる。

 

「チャンバライダーの効果!除外されている『SRアクマグネ』を回収!」

 

「ターンエンドだ。この瞬間、キングベアーを破壊し、『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』を回収!」

 

榊 遊矢 LP900

フィールド『EMダグ・ダガーマン』(攻撃表示)『EMラディッシュ・ホース』(守備表示)『EMラ・パンダ』(守備表示)『EMギッタンバッタ』(守備表示)

『補給部隊』

Pゾーン『EMブランコブラ』

手札2

 

「『SRアクマグネ』を召喚!」

 

SRアクマグネ 攻撃力0

 

「効果でお前のダグ・ダガーマンをシンクロ素材に!レベル5のダグ・ダガーマンに、レベル1のアクマグネをチューニング!シンクロ召喚!『HSR魔剣ダーマ』!」

 

HSR魔剣ダーマ 攻撃力2200

 

「ダーマの効果!墓地のオハジキッドを除外し、500ダメージを与える!」

 

榊 遊矢 LP900→400

 

「くっ……ヤバイな……!」

 

残る遊矢のLPは僅か400。デッドゾーンに腰まで、いや、胸元まで浸っている所だ。何としてでも回復系のカードを引きたいが、その前にこのターンを越える事が前提だ。

 

「バトル!ダーマでギッタンバッタへ攻撃!」

 

「墓地の『ネクロ・ガードナー』を除外し、攻撃を無効!」

 

「粘るじゃねぇか……!ラ・パンダはペンデュラムモンスターへの攻撃を無効にする効果があったな……カードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

ユーゴ LP1700

フィールド『HSR魔剣ダーマ』(攻撃表示)『HSR快刀乱破ズール』(攻撃表示)

セット1

手札0

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『打ち出の小槌』手札を交換!」

 

遊矢が額から汗を流しながらデッキからカードを引き抜く。このターンでダーマに対し、何らかの手を施さなければ、効果を使われて終わってしまう。それだけは避けたい所だ。チラリと引いたカードに目を配らせ、これならばと息を呑む。

 

「ギッタンバッタとラ・パンダをリリース!雄々しくも美しく輝く二色の眼!アドバンス召喚!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』!!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力2500

 

現れたのは遊矢が最も信頼するエースカード。赤と緑、左右で異なるオッドアイ、額と背に角を伸ばし、嘴のようなアギトが特徴的な胸に宝玉を抱いた赤い竜。登場と共に2人の心臓がドクンと跳ね、僅かな痛みが走る。

 

「ラディッシュ・ホースの効果!ダーマの攻撃力をダウン、『オッドアイズ』の攻撃力をアップ!」

 

HSR魔剣ダーマ 攻撃力2200→1700

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力2500→3000

 

「ッ、『オッドアイズ』にはダメージを倍にする効果がある……!」

 

「そう!この攻撃が通れば……!」

 

「ユーゴのLPは0……!」

 

今度は一転して遊矢の有利。ユーゴの不利となった。デュエルは何が起こるか分からない。たった1枚のカードで劣性を覆す事も有り得るのだ。一体どちらが勝つか分からない。先の見えないワクワクが3人の胸を打つ。

 

「バトル!『オッドアイズ』でダーマへ攻撃!螺旋のストライクバースト!」

 

「やらせるかよっ!まだまだ、こんな楽しい事は終わらせねぇ!罠発動、『シンクロ・バリアー』!ズールを墓地に送り、次のターン終了まで、俺が受けるダメージを0に!」

 

「だが、ダーマは破壊させてもらう!」

 

「チィッ!」

 

ダメージを抑える事は出来たが、2体のシンクロモンスターを失い、ユーゴのフィールドはボロボロ。しかしまだ勝機は充分に残っている。

 

「ターンエンドだ!」

 

「ズールの効果で赤目のダイスをサルベージ!」

 

榊 遊矢 LP400

フィールド『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』(攻撃表示)『EMラディッシュ・ホース』(守備表示)

『補給部隊』セット1

Pゾーン『EMブランコブラ』

手札1

 

「俺のターン、ドロー!装備魔法、『D・D・R』!手札を1枚捨て、除外されている『クリアウィング』を特殊召喚!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力2500

 

向かい合う2人のエース、『オッドアイズ』と『クリアウィング』。二竜が揃い、互いの胸が激しく締め付けられる。まるでこの時を昔から待っていたかのような咆哮が轟く。間違いなく、このドラゴン達には何かがある。

 

「バトル!『クリアウィング』でラディッシュ・ホースへ攻撃!」

 

「『補給部隊』の効果でドロー!」

 

榊 遊矢 手札1→2

 

「アクションマジック、『セカンド・アタック』!『クリアウィング』で『オッドアイズ』へ攻撃!」

 

「アクションマジック、『回避』!攻撃を無効に!」

 

『クリアウィング』が翼を広げて飛翔、その勢いのまま急降下し、鋭い刃となった翼で『オッドアイズ』を切り裂こうとするも、『オッドアイズ』もそのアギトに炎を集束、螺旋のブレスを解き放つ。極太の熱戦を前に、『クリアウィング』が飛び退き、体勢を整える。

 

「ターンエンドだ!」

 

ユーゴ LP1700

フィールド『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』(攻撃表示)

『D・D・R』セット1

手札0

 

「俺のターン、ドロー!行くぜユーゴ!」

 

「来い、遊矢ぁ!」

 

「装備魔法、『団結の力』!『オッドアイズ』に装備!」

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃力2500→3300

 

「バトル!『オッドアイズ』へ『クリアウィング』へ攻撃!螺旋のストライクバースト!」

 

「くっ、迎え撃て!旋風のヘルダイブスラッシャー!」

 

「ダメージを倍に!リアクション・フォース!」

 

ユーゴ LP1700→100

 

再び2体が咆哮、互いに闘志を剥き出しにし、2人の指示を受けた途端、弾かれたようにフィールド、中央でぶつかる。『クリアウィング』がつばさで斬撃を放ち、『オッドアイズ』がブレスを放つ。

鬩ぎ合う互いの必殺、徐々に『オッドアイズ』のブレスが押していき、爆発。『クリアウィング』を粉々に砕き、ユーゴに激痛が走る。

 

「ぐうっ!?」

 

「ユーゴッ!」

 

強力なダメージを受け、ユーゴのDーホイールがキュルキュルと音を鳴らして回転、姿勢を大きく崩すが、何とか持ちこたえる。

しかし、『オッドアイズ』と『クリアウィング』がぶつかり合った影響か、ユーゴに闇の瘴気が流れ込み、正気を失わせようとユーゴではない、何者かの意志が浮かび上がろうとするが――。

 

「グ……邪魔はさせねぇ!誰にもこのデュエルの邪魔はさせねぇ!漢の勝負に、野暮な真似すんじゃねぇ!」

 

鋼のような意志で、闇を振り払う。何と言う自我の強さか。何と言う鉄の理性か。流れ込む闇の誘惑を一喝で黙らせる。行き場を失った闇はユーゴに支配され、1枚のカードを生み出す。

 

「ユーゴ……?」

 

「心配すんなリン……このデュエルだけは絶対に……決着をつける!」

 

「ユーゴ……そう来なくちゃな!俺はカードを1枚セット、ターンエンドだ!」

 

榊 遊矢 LP400

フィールド『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』(攻撃表示)

『団結の力』『補給部隊』セット1

Pゾーン『EMブランコブラ』

手札1

 

「俺のターン、ドロー!速攻魔法、『魔力の泉』!4枚ドローし、2枚捨てる!」

 

ユーゴ 手札0→4→2

 

「『SR三つ目のダイス』を召喚!」

 

SR三つ目のダイス 攻撃力300

 

ユーゴのフィールドに飛び出したのは三角錐の形状で角から炎を噴射させたモンスター。

 

「マッハゴー・イータを落としておけばクリスタルウィングに繋げられたんだが……しゃあねぇ、速攻魔法、『エネミーコントローラー』!三つ目のダイスをリリースし、『オッドアイズ』のコントロールをエンドフェイズまで得る!」

 

「何っ!?」

 

「デッキトップをコストに墓地の『グローアップ・バルブ』を蘇生!」

 

グローアップ・バルブ 守備力100

 

「バトル!『オッドアイズ』でダイレクトアタック!」

 

「罠発動!『カウンター・ゲート』!1枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札1→2

 

「引いたカードは『EMアメンボート』!召喚!」

 

EMアメンボート 攻撃力500

 

遊矢を守るようにアメンボモチーフのモンスターが颯爽と現れる。己や仲間と共に考え抜いて作り出したデッキは応えてくれる。

 

自らのエースカードが遊矢に牙を剥く。味方であれば頼もしいが、敵となれば予想以上に恐ろしい。ダイレクトアタックを受ければダメージ倍加もあって初期値のLPでもゲームエンドに持ち込まれてかねない。ただ自分のカードだけあり、その回避方法も理解している。

 

「罠発動!『緊急同調』!バトルフェイズにシンクロを行う!」

 

「――追撃か!」

 

が、逃してなるものかと遊矢の背に迫るユーゴ。まさかの加速に息を呑み、リンは驚いた表情となる。

現在ユーゴのフィールドにはレベル7の『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』とレベル1のチューナー、『グローアップ・バルブ』。合計レベルは8だが、ユーゴが持っているレベル8のシンクロモンスターは『クリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン』のみの筈。

そしてクリスタルウィングは素材にシンクロモンスターが無ければ出せないのだ。一体何を召喚するつもりなのか。

 

「レベル7の『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』に、レベル1の『グローアップ・バルブ』をチューニング!光の翼持つ眷属よ。その鋭利なる両翼で敵を討て!」

 

瞬間、ユーゴのエクストラデッキから、先程闇の瘴気を吸収し、生み出されしカードが排出される。ドクン、遊矢とユーゴの心臓が脈を打つ。

『オッドアイズ』と『クリアウィング』が向かい合った時のような、不吉な感覚、いや、これは――『覇王眷竜オッドアイズ』が発現した時と同じ。

 

「シンクロ召喚!現れろ、『覇王眷竜クリアウィング』!!」

 

覇王眷竜クリアウィング 攻撃力2500

 

シンクロ召喚、美しく、鋭き両翼を闇で染め、雄々しい体躯に緑のラインを走らせたドラゴンが飛翔する。その姿は正しく『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』。覇王の力を得た白竜が咆哮する。ユーゴはこの力を自らの下に制御してみせた。

 

「『覇王眷竜』……『クリアウィング』にもこの姿が……!」

 

「『覇王眷竜クリアウィング』のシンクロ召喚時、相手フィールドの表側表示のモンスター全てを破壊する!」

 

「なっ!?」

 

シンクロ召喚時、『ライトニング・ボルテックス』と同じ効果を炸裂させる超攻撃的な効果。元となる『クリアウィング』のモンスター破壊効果を進化させたのだろうが、余りにも強力で理不尽。暴力的な嵐が吹き荒れ、アメンボートが破壊される。今回フィールドにアメンボートしか存在しなかったのは運が良かったと考えるべきか。

 

「『補給部隊』の効果でドロー!」

 

榊 遊矢 手札1→2

 

「『クリアウィング』でダイレクトアタック!」

 

「手札の『護封剣の剣士』の効果発動!相手モンスターの直接攻撃宣言時、このカードを特殊召喚する!」

 

護封剣の剣士 守備力2400

 

「なら『クリアウィング』で攻撃!この瞬間、ダメージ計算前に相手モンスターを破壊し、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える!ま、そいつの攻撃力は0みてぇだがな」

 

「ッ、嘘だろお前!?誰だよ!」

 

ジャックの持つ『エクスプロード・ウィング・ドラゴン』に似たバーン効果。最早原型が分からない程凶悪さを増したカードだ。思わず遊矢が戦慄する。

 

「俺はこれで、ターンエンドだ」

 

ユーゴ LP1000

フィールド『覇王眷竜クリアウィング』(攻撃表示)

手札0

 

心の闇を、限界を超え、ライバルに勝負を挑むユーゴ。かかって来い、まるでそうやって挑発するような彼のデュエルを前にして、遊矢も更に加速する。決着の時は、別れの時は――近い。




これにて今年の投稿は終了です。よいおとしをー。

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