遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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シャイニング・ドローの設定整理回、やっぱり絶対に勝てる手なんてないんだなって。


第163話 エクシーズセカンドチェンジ

変化は直ぐに起こった。シティ全体を照らすかと言う程の青い閃光がフィールドに発生し、黒コナミの魂を更なる次元にランクアップさせる。肌は全体的に青白く輝くアストラル体へと変わり、左眼に緑のフレームを持つバイザーが装着、腰からは漆黒に煌めくアーマーとマントが靡き、左肩から腕にかけ、黄金のデュエルディスクが盾のような形状に進化する。これこそが黒コナミの奥の手、エクシーズ・チェンジ。

遊矢達の目の前で初披露されたそれは2人の度肝を抜く。ある程度耐性を持っているティモシー

さえ、少々動揺している。

 

『エクシーズ……セカンドチェンジ……!?』

 

「ふ……ふん、ファ、ファーストはどこにいったのやら……この程度何ともないわ!」

 

『声が震えてるけど……』

 

「やかましいわ!」

 

途方も無い力を黒コナミから感じる。これがエクシーズ・チェンジの結果と言う事か。今の今まで互角だったのだ、力を増した黒コナミ相手では、ティモシーでもどうなるか分からない。

 

「……だが……少々不味いな……」

 

『え?』

 

初めて、気弱な台詞を吐くティモシーに、遊矢が戸惑う。この男なら例え相手が自身よりも強敵であったとしても不遜な態度を崩さないと思ったのだが――それとも、別の事か、どこかあせっているように見える。

 

「――お前にこの姿を見せるのは初めてだったな……お前が融合やシンクロを得たように、私も成長していると言う事だ」

 

そう言うや否や、彼は右手を翳し、眩い光を宿す。これは――彼が得意とする、必殺とも言って良い力。カードの創造、シャイニング・ドロー。

 

「来るか……」

 

「最強デュエリストのデュエルは全て必然!ドローカードでさえもデュエリストが創造する!」

 

黄金の力は、彼の右手からデッキトップへと移り、1枚のカードを作り出す。

 

「全ての光よ!力よ!我が右腕に宿り、希望の光を照らせ!シャイニング・ドロォォォォッ!!」

 

引き抜かれる1枚のカード、形勢を逆転させる1枚が、その手に渡る。

 

「『Vサラマンダー』を召喚!」

 

Vサラマンダー 攻撃力1500

 

現れたのは4本の首を伸ばした赤い炎に包まれし蜥蜴。このカードの事は知っている。面倒な事になりそうだ。

 

「召喚時効果により、墓地のホープレイを蘇生!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ 攻撃力2500

 

再びフィールドに現れる黒騎士皇。希望の光、ホープレイ。だがこうして相対する者からすれば絶望を与えるモンスターと言える。

 

「そして『ZW』の効果!阿修羅副腕と荒鷲激神爪をそれぞれ攻撃力1000、2000アップの装備カードとして装備する!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ 攻撃力2500→3500→5500

 

ガガンッ、甲高い音を響かせ、荒鷲激神爪、阿修羅副腕の2体が『ホープ』の肩と背に取りつき、複数の腕を伸ばした騎士へと進化する。これが彼のエース、『ホープ』の強み、『ZW』によって強化されるエース1体に全てを振り切ったデッキ。どこかジャックにも似た戦術だ。

 

「バトルだ!ホープレイで『覚醒の魔導剣士』へ攻撃!ホープ剣・アシュラ・イーグル・スラッシュ!」

 

『罠カードを!』

 

「分かっている!罠発動!『あまのじゃくの呪い』!ターン終了まで、攻守のアップダウンは逆転する!つまり『ZW』の効力は逆となり、ホープレイの攻撃力は3000ダウン!」

 

「無駄だ!荒鷲激神爪の効果により、1ターンに1度、罠の効果を無効にし、破壊!」

 

「罠発動!『聖なる鎧ーミラーメールー』!『覚醒の魔導剣士』の攻撃力を、ホープレイと同じ5500に変更!」

 

「何ッ!?」

 

覚醒の魔導剣士 攻撃力2500→5500

 

武装した黒騎士と白銀に輝く鎧を纏った白騎士が互いに同時に地を蹴って飛び上がり、二刀の剣で切り結ぶ。火花を散らし、鉄がぶつかり合う音を鳴らす両者の白刃。

同じ形状をした片刃の剣で攻め防ぎ、痺れを切らした魔導剣士がホープレイの胸を蹴り、宙をくるりと舞って魔導剣士の本領発揮と言わんばかりに背後の空間を揺らめかせ、波紋の中から何本もの剣を召喚、両手に持つ魔剣に劣らぬの業物を弾丸のようにホープレイに向かって撃つ。

 

しかし相手は強化された『No.』。直ぐ様阿修羅副腕で背の大剣を引き抜き、雨の如く降り注ぐ剣を3本の聖剣で叩き落とし、足場にして魔導剣士に襲いかかると言う荒業を披露。

僅かに目を見開き、驚愕する魔導剣士。流石に相手が悪いと感じ取ったのか、彼は身を守る鎧に灯る光を手に持った剣に全て注ぎ、滝のように流れる巨大な光の刃を生成、二刀の剣を回転しながら振るう。

 

全てを賭けた攻撃、ホープレイもその覚悟に応え、降り注ぐ剣を阿修羅副腕と荒鷲激神爪、全ての腕で掴み、全ての剣で斬撃を放つ。

光と闇、白と黒、斬撃は混じり合って大爆発を起こし、最強の一撃となって両者を吹き飛ばし、鎧を砕く。相撃ち――予想外の結果に黒コナミがギリリと歯軋りを鳴らす。

 

「『補給部隊』の効果でドロー!」

 

「ッ、こちらもドローだ!」

 

黒コナミ 手札1→2

 

榊 遊矢 手札1→2

 

ティモシーはニヤリと笑みを浮かべ、黒コナミは対照的に苦い顔で1枚のカードをデッキから引き抜く。

 

「やはりな……貴様のシャイニング・ドローも、無敵ではないと言う事だ」

 

『え――?』

 

「……」

 

フン、と鼻を鳴らし、ティモシーは得意気な顔を見せる。そう、彼は見つけたのだ。この一見無敵となるシャイニング・ドローの、致命的とも言える弱点を。この短い間に――見つけてみせた。

 

「そのシャイニング・ドローは完璧過ぎるのだ。今のように、未公開のリバースカードや手札誘発に対応するカードは引けず、公開情報から答えを計算、その状況を覆す事が出来るカードしか引けない。一種のピンポイントメタだ。その時に必要なカードしか引けない為、予想外の一手を打たれては一気に瓦解してしまう」

 

『そんな、事が――』

 

冷静にシャイニング・ドローを分析、弱点を語るティモシーの姿に、呆然とする遊矢。そんな事、思いつきとしなかったと言うのに――。やはりこの男は、デュエリストとしても高いレベルを持っている。

 

「それに最初から――シャイニング・ドローは必ずしも勝てる力ではない。敵が強ければ数も引かねばならんしな。クク、シャイニング・ドロー、敗れたり!と言った所か」

 

『スゲェ……!』

 

「……フン、だからどうした?確かにシャイニング・ドローの弱点は貴様の言う通りだ。必勝であってはデュエルがつまらんしな。例えシャイニング・ドローが無くとも、私は充分に闘える!装備魔法、『ワンダー・ワンド』を『Vサラマンダー』に装備!」

 

Vサラマンダー 攻撃力1500→2000

 

「2枚を墓地に送り、2枚ドロー!」

 

黒コナミ 手札1→3

 

「カードを2枚セット、ターンエンド」

 

黒コナミ LP2650

フィールド

『補給部隊』セット3

手札2

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「速攻魔法、『ツイン・ツイスター』!手札1枚を捨て、ペンデュラムを破壊!」

 

「『EM小判竜』を召喚!」

 

EM小判竜 攻撃力1800

 

フィールドに登場したのは額に小判をつけた東洋風の龍。『EM』内でも珍しい漢字を使ったカードだ。アタッカーとしてもそこそこに役立つが、個性を出すにはエースの『オッドアイズ』を出す必要があるだろう。

 

「バトル!『相克の魔術師』でダイレクトアタック!」

 

「罠発動!『エクシーズ・リボーン』!墓地から『ZWー獣王獅子武装』を蘇生し、このカードをORUにする!」

 

ZWー獣王獅子武装 攻撃力3000

 

「止めに来たか、カードを2枚セット、ターンエンド」

 

榊 遊矢 LP1500

フィールド『相克の魔術師』(攻撃表示)『EM小判竜』(攻撃表示)

『補給部隊』セット2

手札0

 

「私のターン、ドロー!バトルだ!獣王獅子武装で相克へ攻撃!」

 

「罠発動!『ペンデュラム・リボーン』!エクストラデッキから『EMペンデュラム・マジシャン』を特殊召喚!」

 

EMペンデュラム・マジシャン 守備力800

 

現れたのは振り子を手にした赤い衣装のマジシャン。遊矢のデッキ内ではキーとなるモンスターだ。このカードを起点とし、後半の展開へと繋ぐのが『EM』の基本戦術だ。

 

「特殊召喚時、効果発動!これにチェーンして相克の効果で獣王獅子武装の効果を無効!」

 

「相克と小判竜を破壊、デッキから『EMドクロバット・ジョーカー』と『EMギタートル』をサーチ!更に『補給部隊』の効果でドロー!」

 

榊 遊矢 手札2→3

 

「チッ……ターンエンドだ」

 

黒コナミ LP2650

フィールド『ZWー獣王獅子武装』(攻撃表示)

『補給部隊』セット1

手札1

 

「俺のターン、ドロー!『EMドクロバット・ジョーカー』を召喚!」

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800

 

フィールドにステップを刻みながら飛び出したのは、継ぎ接ぎだらけのシルクハットを被り、黒いマスクにトランプのマークを散りばめた燕尾服を纏ったモンスター。『EMペンデュラム・マジシャン』と並び、『EM』の戦術を加速させるカードだ。

 

「召喚時効果により、デッキから『EMリザードロー』をサーチ!ギタートルと共にセッティングし、ギタートルのペンデュラム効果でドロー!更にリザードローのペンデュラム効果も発動!このカードを破壊し、1枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札2→3→4

 

「ノッて来たな!『EMパートナーガ』をセッティング!これでレベル4から5のモンスターまで同時に召喚可能!ペンデュラム召喚!『EMシルバー・クロウ』!『EMラディッシュ・ホース』!『EMリザードロー』!」

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力1800

 

EMラディッシュ・ホース 守備力2000

 

EMリザードロー 守備力100

 

「パートナーガのペンデュラム効果!フィールドの『EM』カードの数×300、ラディッシュ・ホースの攻撃力をアップ!」

 

EMラディッシュ・ホース 攻撃力500→2600

 

「そしてラディッシュ・ホースの効果により、このカードの攻撃力分、獣王獅子武装の攻撃力をダウンし、『EMシルバー・クロウ』の攻撃力をアップする!」

 

ZWー獣王獅子武装 攻撃力3000→400

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力1800→4400

 

『よしっ!』

 

「さぁバトルだ!シルバー・クロウで獣王獅子武装へ攻撃!この瞬間、シルバー・クロウの効果で『EM』達の攻撃力を300アップ!」

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力4400→4700

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800→2100

 

EMペンデュラム・マジシャン 攻撃力1500→1800

 

EMラディッシュ・ホース 攻撃力2600→2900

 

EMリザードロー 攻撃力1200→1500

 

「罠発動!『パワー・ウォール』!ダメージ500につき、デッキトップからカードを墓地に送り、ダメージを0にする!ダメージは4300、デッキから9枚のカードを墓地に送る!」

 

黒コナミがデッキトップから大量のカードを引き抜き、前方へと投げ出す。カードは組み合わさって盾となり、シルバー・クロウの爪を防ぐ。惜しい、だが攻撃権はまだ残っている。

 

「『補給部隊』の効果でドローする!」

 

黒コナミ 手札1→2

 

「ドクロバット・ジョーカーでダイレクトアタック!」

 

「墓地の『光の護封霊剣』を除外、このターンのダイレクトアタックを封じる!」

 

「チッ、カードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

榊 遊矢 LP1500

フィールド『EMペンデュラム・マジシャン』(守備表示)『EMドクロバット・ジョーカー』(攻撃表示)『EMシルバー・クロウ』(攻撃表示)『EMラディッシュ・ホース』(守備表示)『EMリザードロー』(守備表示)

『補給部隊』セット2

Pゾーン『EMギタートル』『EMパートナーガ』

手札2

 

「私のターン、ドロー!『暗黒界の取引』。手札を交換、速攻魔法、『サイクロン』私のフィールドの『補給部隊』を破壊!」

 

『なっ!?』

 

「ほう……?」

 

ここで黒コナミが自身のカードを破壊する凶行に打って出る。一体何を考えているのか、自棄になった訳ではないだろう。ティモシーが目を細め、警戒を露にする。もしや――。

 

「カードをセット、ターンエンドだ」

 

黒コナミ LP2650

フィールド

セット1

手札0

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「罠発動!『裁きの天秤』!」

 

「やはりそう来たかっ!」

 

発動された黒コナミの罠、それはこの状況だからこそ輝くカードだ。予想的中、ティモシーは金色の眼を見開き、小さく舌打ちを鳴らす。

 

「私のフィールド、手札のカードはこれ1枚、対するお前のフィールドのカードは10枚!よってその差9枚をドロー!我が手に希望を!シャイニング・ドロー!」

 

黒コナミ 手札0→9

 

そう、黒コナミはこの為に――9枚連続シャイニング・ドローと言う荒業を行うが為に、態々自身のカードを破壊したのだ。確かに、状況によって適応するシャイニング・ドローならば、この状況で手札誘発の1枚も引けるだろう。相手ターンでのシャイニング・ドロー。それは何よりも信頼出来る防御となる。

 

「パートナーガのペンデュラム効果により、シルバー・クロウの攻撃力をアップ!」

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力1800→3900

 

「バトル!シルバー・クロウでダイレクトアタック!」

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力3900→4200

 

EMペンデュラム・マジシャン 攻撃力1500→1800

 

EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800→2100

 

EMラディッシュ・ホース 攻撃力500→800

 

EMリザードロー 攻撃力1200→1500

 

「手札の『ガガガガードナー』の効果により、このカードを特殊召喚する!」

 

ガガガガードナー 守備力2000

 

この危機に登場したのは巨大な盾を構えた『ガガガ』モンスター。オノマトの中で手札誘発効果を持つ頼もしい1枚だ。

 

「チ、ならターゲットを『ガガガガードナー』に変更!」

 

「手札を1枚捨て、ガードナーの破壊を防ぐ!」

 

「ドクロバット・ジョーカーで追撃!」

 

「通す」

 

ティモシーが攻め込むも、全てが叩き落とされる。が、相手の手札を2枚削れたならば上々と言った所だ。直ぐ様思考を切り換える。

 

「カードをセット、ターンエンド」

 

榊 遊矢 LP1500

フィールド『EMペンデュラム・マジシャン』(守備表示)『EMドクロバット・ジョーカー』(攻撃表示)『EMシルバー・クロウ』(攻撃表示)『EMラディッシュ・ホース』(守備表示)『EMリザードロー』(守備表示)

『補給部隊』セット3

Pゾーン『EMギタートル』『EMパートナーガ』

手札2

 

「私のターン、ドロー!……貴様は言ったな、シャイニング・ドローは公開情報にしか対応出来ないと」

 

「……ああ、完璧過ぎる為に、後に勝利に繋がるカードは引き込めない。後出しじゃんけん、チェーンを組めるカードはほぼないだろうな」

 

「だが――逆に言えば、未公開情報と言う事は、公開されている」

 

「……?……ッ!そう言う事か!」

 

「魔法カード、『ハーピィの羽帚』!セットカードがあると言う事は、公開されている!」

 

成程、確かにこれならば未公開情報にも対応する出来る。シャイニング・ドローの条件にのっとり、その弱点を補う一手。

 

「罠発動!『レインボー・ライフ』!手札を1枚捨て、このターンのダメージを回復に回す!」

 

だがそれでも、やはり取り零しは出てくる。

 

「仕方無いか、魔法カード、『シャッフル・リボーン』!墓地から『希望皇ホープ』を特殊召喚!!」

 

No.39希望皇ホープ 攻撃力2500

 

「またそいつか」

 

「またこいつだ!私は更に『クレーンクレーン』を召喚!」

 

クレーンクレーン 攻撃力300

 

次は鶴とクレーンを合わせた言葉遊びのモンスター。ここから更なる展開へと繋ぐ。

 

「召喚時、墓地のレベル3のモンスター、『ガガガガール』を蘇生!」

 

ガガガガール 攻撃力1000

 

クレーンにより墓地へと繋がる穴が開き、吊り上げられたのは『ガガガガール』。拗ねた様子でフィールドの隅に置かれる。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『管魔人メロメロメロディ』!」

 

管魔人メロメロメロディ 攻撃力1400

 

登場したのは金管楽器に巻かれた『魔人』モンスター。攻撃力こそ低いが、このモンスターの本来の力は他の『魔人』と並べる事にある為、仕方無いだろう。

 

「更にメロメロメロディのORUを1つ取り除き、このカードに2回攻撃権を付与する!バトル!メロメロメロディで『EMリザードロー』と『EMペンデュラム・マジシャン』へ攻撃!メロリンウェーブ!」

 

メロメロメロディがトランペットを吹き、音波が放たれて2体の『EM』をノックアウトする。これで2体、残るモンスターは3体だ。

 

「『ホープ』でドクロバット・ジョーカーへ攻撃!ホープ剣・スラッシュ!」

 

榊 遊矢 LP1500→2200

 

お次は『ホープ』の斬撃が冴え渡り、ドクロバット・ジョーカーを切り裂く。かに思われたが――ドロン、白煙が舞い、丸太へ変わる。当の本人はスタコラサッサとエクストラデッキへと逃げ込む。最早『忍者』モンスターである。

 

「そして速攻魔法、『RUMークイック・カオス』を発動!『ホープ』1体でオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!出でよ、『CNo.39』!混沌を統べる赤き覇王。悠久の戒め解き放ち、赫焉となりて闇を打ち払え!降臨せよ、希望皇ホープレイV!!」

 

CNo.39希望皇ホープレイV 攻撃力2600

 

ランクアップ・エクシーズ・チェンジ。エクシーズ特有の『RUM』を使っての召喚により、『ホープ』が新たな力を得て、フィールドに降り立つ。元の姿とは対照的な赤と黒の鎧を身につけ、フェイスは悪魔を思わせる攻撃的なものになった儚き希望の使者。ホープレイV――『ホープ』の中でも、特異なカードが耳を裂くような咆哮を放つ。

 

「ホープレイVでシルバー・クロウへ攻撃!ホープ剣・Vの字斬り!」

 

榊 遊矢 LP2200→3000

 

『ホープ』が二刀の曲刀を振るい、Vの字を描いてラディッシュ・ホースを3枚に下ろす。これで残るモンスターは1体、その1体も――。

 

「メインフェイズ2、手札の『ZWー極星神馬聖鎧』をホープレイVに装備!攻撃力を1000アップ!」

 

CNo.39希望皇ホープレイV 攻撃力2600→3600

 

「そしてCORUを取り除き、ホープレイVの効果発動!ラディッシュ・ホースを破壊!」

 

打ち砕かれる。

 

榊 遊矢 LP3000→3500

 

「ッ!」

 

『1ターンでモンスター5体、全てを破壊……!』

 

とんでもない腕前だ。あれだけあったモンスター達が、一瞬にして破壊し尽くされた。

 

「カードを2枚セット、ターンエンド」

 

黒コナミ LP2650

フィールド『CNo.39希望皇ホープレイV』(攻撃表示)『管魔人メロメロメロディ』(攻撃表示)

『ZWー極星神馬聖鎧』セット2

手札2

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『金満な壺』!エクストラデッキから『覇王眷竜オッドアイズ』、『EMギタートル』、『EMドクロバット・ジョーカー』をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札1→3

 

「魔法カード、『埋葬されし生け贄』!このターン、2体のリリースを必要とするアドバンス召喚をする場合に1度だけ、モンスター2体をリリースせず、互いの墓地のモンスターを1体ずつ除外する!俺の墓地からは『覚醒の魔導剣士』を、お前の墓地からは『No.39希望皇ホープ』を除外!二色の眼持つ眷属よ、その鋭き両目で捉えた敵を焼き尽くせ!アドバンス召喚!現れろ!『覇王眷竜オッドアイズ』!!」

 

覇王眷竜オッドアイズ 攻撃力2500

 

ドクン、と遊矢の心臓が跳ねる。その原因は――ティモシーが手に持つ1枚のカード。墓地のシンクロとエクシーズ、2体のモンスターを糧とし、遊矢の相棒ならざる『オッドアイズ』がフィールドに降り立つ。

真っ赤に燃える美しい体躯、胸に抱く青い宝玉、赤と緑のオッドアイを輝かせ、身体中に緑のラインを走らせた遊矢の最も信頼するエースモンスター。しかしその姿はどこか禍々しく、どちらかと言えば『覇王黒竜オッドアイズ・リベリオン・ドラゴン』を思わせる。

 

『――『オッドアイズ』……!?』

 

「バトルだ!『オッドアイズ』で、メロメロメロディを攻撃!螺旋のストライクバースト!」

 

「罠発動!『ハーフ・アンブレイク』!このターンメロメロメロディは戦闘破壊されず、受けるダメージを半分にする!」

 

「良い判断だ。『オッドアイズ』には、俺のペンデュラムモンスターが相手モンスターと戦闘を行う際、ダメージを倍にする効果がある!リアクションフォース!」

 

黒コナミ LP2650→1550

 

「ぐぉぉぉぉぅ!?」

 

『オッドアイズ』の両眼が輝き、アギトに大気が集束、圧倒的エネルギーが螺旋状のブレスとなって撃ち出され、メロメロメロディを呑み込む。凄まじい威力だ。ダメージ倍化を与える効果、モンスターとの戦闘やペンデュラムモンスターにしか影響されないが、『オッドアイズ』の強化版と言って良い。

 

「魔法カード、『命削りの宝札』を発動!3枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札0→3

 

「カードを3枚セット、ターンエンド」

 

榊 遊矢 LP3500

フィールド『覇王眷竜オッドアイズ』(攻撃表示)

セット3

手札0

 

「私のターン、ドロー!それがお前のエースと言う訳か……私は『ZWー玄武絶対聖盾』を召喚!」

 

ZWー玄武絶対聖盾 攻撃力0

 

フィールドに現れたのは青い甲羅を持つ亀の『ZW』。攻撃力は低く、効果は少々ピンポイントだが、既に条件は満たされている。

 

「召喚時、除外されているエクシーズモンスター、『No.39希望皇ホープ』をフィールドに!!」

 

No.39希望皇ホープ 攻撃力2500

 

再びフィールドに現れる『ホープ』。この男は『ホープ』をフィールドに出す手段が豊富過ぎる。ここまで1体のエースを過労視させるとは、気のせいか、彼の墓地のモンスター達からから流石『ホープ』先輩だぜと憧れと怯えの眼差しが向けられているように見える。

 

「墓地の『シャッフル・リボーン』を除外、『ZWー玄武絶対聖盾』をデッキに戻し、1枚ドロー!」

 

黒コナミ 手札2→3

 

玄武絶対聖盾を装備しても得られるのは守備力のみ。攻撃するならば意味のない数値だ。直ぐ様ドローカードに変換する。

 

「魔法カード、『RUMーリミテッド・バリアンズ・フォース』を発動!『ホープ』をランクが1つ高い『CNo.』へとランクアップさせる!オーバーレイ・ネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!現れろ、『CNo.39』!未来に輝く勝利を掴む!重なる思い、繋がる心が世界を変える!希望皇ホープレイ・ヴィクトリー!!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー 攻撃力2800

 

2度目のランクアップ、『ホープ』に赤、青、金と様々な色のパーツが装着され、ヒロイックな4本腕となった『ホープ』へと進化を遂げる。並び立つVとヴィクトリー。2体の『ホープ』の進化形態。見事なものだ。

 

「メロメロメロディのORUを1つ取り除き、攻撃権を増やす。バトル!」

 

「罠発動!『威嚇する咆哮』!」

 

「チ、メロメロメロディを守備表示に変更、カードを2枚セット、ターンエンドだ」

 

黒コナミ LP1550

フィールド『CNo.39希望皇ホープレイV』(攻撃表示)『CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー』(攻撃表示)『管魔人メロメロメロディ』(守備表示)

『ZWー極星神馬聖鎧』セット3

手札0

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『命削りの宝札』!3枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札0→3

 

「バトル!『オッドアイズ』でホープレイ・ヴィクトリーへ攻撃!」

 

「ほう……!」

 

「罠発動!『燃える闘志』!『オッドアイズ』に装備、元々の攻撃力より攻撃力が高いモンスターがフィールドに存在する場合、装備モンスターの攻撃力を倍にする!」

 

覇王眷竜オッドアイズ 攻撃力2500→5000

 

『オッドアイズ』の力が更に増し、極太のブレスがヴィクトリーを襲う。圧倒的質量による攻撃は『No.』である『ホープ』をも溶かす。一撃一撃が重く、身体の芯まで響いて来る。間違いなくこのカードは、『No.』か、それ以上のポテンシャルを秘めている。

 

「カードを1枚セット、ターンエンドだ。『命削りの宝札』の効果で1枚捨てる」

 

「罠発動!『奇跡の残照』!このターン破壊されたヴィクトリーを蘇生する!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー 攻撃力2800

 

榊 遊矢 LP3500

フィールド『覇王眷竜オッドアイズ』(攻撃表示)

『燃える闘志』セット2

手札0

 

「私のターン、ドロー!罠発動、『貪欲な瓶』。カードを1枚ドロー」

 

黒コナミ 手札1→2

 

「魔法カード、『貪欲な壺』!墓地のホープ、ホープレイ、阿修羅副腕、荒鷲激神爪、『Vサラマンダー』をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

黒コナミ 手札1→3

 

「『ゴブリンドバーグ』を召喚!」

 

ゴブリンドバーグ 攻撃力1400

 

「召喚時効果で『アステルドローン』を特殊召喚!」

 

アステルドローン 攻撃力1600

 

「更に永続魔法、『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』を発動!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『No.39希望皇ホープ』!!」

 

No.39希望皇ホープ 攻撃力2500

 

再び現れる『ホープ』。とんでもない頻度だ。

 

「『アステルドローン』と『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』の効果でドロー!」

 

黒コナミ LP1550→1050 手札0→1→2

 

『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』、『ホープ』のエクシーズ召喚を利用してのドロー。これも厄介なものだ。LPを支払う事も、ホープレイの効果発動の条件を満たしやすくなる為、メリットに変わってしまう。しかも窮地を逆転させるシャイニング・ドローのスパイスにもなるのだから楽観視は出来ない。

 

『手札が尽きない……!』

 

「ドローの鬼だな、こやつは……まぁ、お前も人も事は言えんが」

 

デュエリストと言うものはサーチやドロー、絶えずに手札を確保する手段を用意するもの。遊矢なら『EMペンデュラム・マジシャン』、『EMドクロバット・ジョーカー』、『EMギタートル』、『EMリザードロー』。

コナミならば『竹光ターボ』。沢渡ならばクライスと『魔界劇団ーワイルド・ホープ』の合わせ技。隼は『RRーフォース・ストリクス』の連続サーチがこれにあたる。

概ね、エースを呼ぶまでの、言うなれば壁となるカード達で凌ぐ下準備、防御から攻めに転じる為の行為だ。

 

だがこの男のドローは少々異なる。攻めのドロー。エースを召喚しながら、より攻撃的に、より凶悪に、相手の希望をむしりとる為の行為。攻めから、更なる攻めに。その為ならば肉を切らせても構わない。諸刃の剣と言える戦術だ。切れ味を求め、細く、鋭く。

 

「まだまだこんなものでは無いぞ!さぁ、貴様のデュエルで、この私を更なる高みへと昇らせてくれ!」

 

この男にとって、相手となるデュエリストは全て、自身と言う刀剣を鍛える火だと言うのか、獰猛な笑みを浮かべ、純粋にデュエルを楽しむ彼が、どこかコナミに被って見える。

 

『――違う……!』

 

「む……」

 

だが遊矢は直ぐ様頭を振り、その考えを払う。彼はそんな事をしないと。しかし――。

 

「……俺には同じに見えるがな……」

 

『え――』

 

フイとそっぽを向くように、遊矢から視線を外し、眼前の敵に目を細めるティモシー。一体どう言う事なのか、遊矢が問おうとしたその時。

 

「……ぐっ……!」

 

ティモシーが頭を抑え、膝を着いたのは。

 

『ッ!おいティモシー!一体何が……』

 

瞬間、遊矢の身体にも変化が起こる。まるでノイズが走るように、遊矢の身体が揺らぎ始めたのだ。目を見開く遊矢。これは――。

 

「……フン、そろそろタイムリミットか……!」

 

『ッ!?』

 

「今の状態で長時間俺が表に出るのは無理と言う事だ。つまり、今まで通りの状態に戻るだけ。何としてでもこのデュエル中はもたせるが……」

 

どうやら彼が遊矢の身体を乗っ取っている状態も続かないようだ。焦りを浮かべるティモシー。

 

「成程、ならばさっさと終わらせてやろう、私は『ホープ』1体でオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!『CNo.39希望皇ホープレイ』!!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ 攻撃力2500

 

連続エクシーズ召喚、呼び出した『ホープ』に『ホープ』を重ね、白が黒へと裏返る。

 

「『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』の効果発動!」

 

黒コナミ LP1050→550 手札2→3

 

「速攻魔法、『サイクロン』!『燃える闘志』を破壊!そして魔法カード、『RUMーアストラル・フォース』を発動!」

 

黒コナミが天上に1枚のカードを掲げ、カードから眩き光がフィールドを照らす。アストラル・フォース。本来、異世界最強のデュエリストが使う、切り札とも言って良いカードだが――今は彼の手によって創造され、発動される。

 

「ホープレイ1体でオーバーレイ・ネットワークを再構築!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!限界突破だ、『希望皇ホープ』!現れろ、『No.39』!人が希望を越え、夢を抱く時、遥かなる彼方に、新たな未来が現れる!限界を超え、その手に掴め!希望皇ビヨンド・ザ・ホープ!!」

 

No.39希望皇ビヨンド・ザ・ホープ 攻撃力3000

 

フィールドの中心に『No.39希望皇ホープ』が新たな、その周囲に『CNo.39希望皇ホープレイ』、『CNo.39希望皇ホープレイV』、『CNo.39希望皇ホープレイ・ヴィクトリー』、『No.39希望皇ホープ・ルーツ』が出現、天上に剣を掲げ、4体が光となって『ホープ』を包み、装甲を得て新たな『ホープ』となる。

純白の鎧を纏い、両腕に黄金の爪を思わせる剣を持った、限界をも超えるランク6の『ホープ』。これが黒コナミの、切り札。

 

「どうやら、このカードがお前の切り札らしいな」

 

「その通りだ。そしてその効果を味わえ!エクシーズ召喚成功時、お前のモンスターの攻撃力を0に!」

 

覇王眷竜オッドアイズ 攻撃力2500→0

 

「『オッドアイズ』……!」

 

他者の希望を奪う、絶望の化身、それがこのビヨンド・ザ・ホープ。希望を超える者。その力は覇王の竜からも力を奪い取る。強力なモンスターだ。ティモシーも舌打ちを鳴らし、セットカードを睨む。やりたくなかったが、やるしかあるまい。

 

「バトルだ!」

 

「この瞬間、罠発動!『破壊指輪』!『オッドアイズ』を破壊し、互いに1000のダメージを与える!」

 

「ッ、そのカードは……!」

 

「苦々しい思い出だ……!」

 

カチャリ、『オッドアイズ』の首に輪がかけられ、凄まじい爆発が巻き起こる。ティモシーからすれば、勝鬨との闘いで引き分け、自身の気に入っている『オッドアイズ』を破壊する忌々しいカード。だが――敗北するよりはマシだ。

爆風が2人を呑み込み、炎が襲いかかる。ティモシーのLPは3500、黒コナミのLP550、0を刻むのは、黒コナミのみの、筈だった。

 

「……な……に……!?」

 

榊 遊矢 LP3500→2500

 

煙を1枚のカードに、吸い込み、無傷で存在する黒コナミを見るまでは。

 

「手札の『ハネワタ』を捨て、効果ダメージを0に……!」

 

馬鹿な、ティモシーと遊矢、2人の目が見開かれる。こちらがかわし、相手だけ効果ダメージを与え、勝とうとした手も、見抜かれたようにかわされた。

それは本当に偶然、偶然の事だった。シャイニング・ドローではない、普通のドロー。公開情報に対応していないドローが、偶々非公開情報に対応してしまったのだ。恐るべき、デュエリストとしての運。無傷のままに仁王立ちし、3体の『ホープ』を背後に従える黒コナミを前に、ティモシーの膝が崩れ、額から大粒の汗が流れ落ちる。

 

「ぐっ……ハァ……ハァ……!ここが、限界か……おのれ……!」

 

ギンッ、敗北寸前だと言うのに、猛獣のように爛々と輝く眼で黒コナミを睨み、あくまで屈しない彼に対し、黒コナミはつばの欠けた黒帽子を被り直し、青く光る指先をティモシーに向ける。

 

「残念だったな、お前の実力も、そんなものでは無いだろうに。が――勝負は勝負、このデュエル、私の勝ちだ」

 

瞬間、3体の『ホープ』がそれぞれ剣を構え、その眼が赤い輝きを見せる。絶体絶命の大ピンチ、ここで、終わりか。

 

「バトルだ」

 

ドシュン、3体の『ホープ』が地を踏み砕き、凄まじい速度でティモシーに迫る。希望と殺意の化身、今鋭き輝きを見せ、遊矢達に絶望を与えようとして――。

 

「『ホープ』で、ダイレクトアタ――」

 

「リバースカード……オープン……!」

 

ティモシーが最後のカードを使おうとした、その時。

 

『乱入ペナルティ、2000ポイントダメージ』

 

白と紫のデュエリストが、地に降り立った。


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