遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

167 / 202
第162話 ティモティモ詐欺

混乱極まるシンクロ次元、シティ。スタンダード、融合、シンクロ、エクシーズ、4つの次元のデュエリストがぶつかる中、ここでもまた、スタンダードとエクシーズ次元のデュエリストが対峙していた。

1人はエンタメデュエルを信条とし、最早一流とも言って良い実力を身につけた少年、榊 遊矢。そしてもう1人は――エクシーズ次元出身と言うのも怪しい、つばの欠けた黒帽子、重々しいヘッドフォンを首から下げ、白いマントを靡かせた少年、黒コナミ。

 

親友と同じ姿をした相手にデュエルをしているのだが――遊矢にも変化が起きていた。今の遊矢は遊矢であって遊矢ではない。彼の身体に、ティモシーと名乗る謎の男の意識が入っているのだ。

因みに遊矢本人は背後で浮遊霊のように半透明になってデュエルを見守っている。

結局の所、このティモシーもどの次元出身なのか分かってない為、この混戦の中でもニュートラルな者同士の対決と言えよう。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

そしてターンはティモシーに移り、彼はデッキから1枚のカードを引き抜く。状況としてはLPは彼が上、しかし黒コナミの場にはモンスターが存在している為、互角と言った所か。だがこれも、ティモシーが低スケールのペンデュラムモンスターを引けば大きく動く。

 

「スタンバイフェイズ、刻剣とマエストロークがフィールドに戻る。そして刻剣の効果により、このカードと『ガガガザムライ』を除外!」

 

「ッ」

 

「クク、まだまだ。俺は『EMブランコブラ』をセッティング!ペンデュラム召喚!『EMシルバー・クロウ』!『EMウィム・ウィッチ』!」

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力1800

 

EMウィム・ウィッチ 守備力800

 

「バトル!シルバー・クロウでマエストロークに攻撃!効果で攻撃力アップ!」

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力1800→2100

 

EMウィム・ウィッチ 攻撃力800→1100

 

「アクションマジック、『大脱出』!バトルフェイズを終了!」

 

「チ、ターンエンドだ」

 

榊 遊矢 LP3500

フィールド『EMシルバー・クロウ』(攻撃表示)『EMウィム・ウィッチ』(守備表示)

Pゾーン『EMラフメイカー』『EMブランコブラ』

手札0

 

「私のターン、ドロー!チッ、マエストロークを守備表示に変更、カードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

黒コナミ LP1900

フィールド『交響魔人マエストローク』(守備表示)

セット2

手札0

 

「俺のターン、ドロー!スタンバイフェイズ、刻剣と『ガガガザムライ』がフィールドに戻る。どうした?もう少し骨があると思っていたんだがな……『EMウィップ・バイパー』を召喚!」

 

EMウィップ・バイパー 攻撃力1700

 

現れたのは紫色の蛇。シルバー・クロウやヘイタイガーには劣るものの、このモンスターもまた、『EM』内ではトリッキーなアタッカーだ。別方向からの突破や防御に一役かう。

 

「ウィップ・バイパーの効果により、マエストロークの攻守を入れ替える!混乱する毒!」

 

交響魔人マエストローク 守備力2300→1800

 

「チッ」

 

「バトル!シルバー・クロウでマエストロークへ攻撃!」

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力1800→2100

 

EMウィップ・バイパー 攻撃力1700→2000

 

EMウィム・ウィッチ 攻撃力800→1100

 

このデュエル中、何度目か分からないシルバー・クロウの活躍により、次々と黒コナミのエクシーズモンスターが破壊されていく。頼もしいアタッカーだ。

 

「ウィッチ・バイパーで『ガガガザムライ』へ攻撃、刻剣でダイレクトアタック!」

 

「罠発動!『カウンター・ゲート』!」

 

「ほう……!」

 

ここで発動されたのはティモシーも使った罠カード。直接攻撃宣言時、カードを1枚ドロー、モンスターならば召喚可能なカードだ。『ガード・ブロック』のは相互互換であるが、こちらはモンスターを引けなければ駄目、モンスターであっても上級であっては腐ってしまうギャンブル性がある。ティモシーは引いたが、こちらは――。

 

「フ、言うまでもないか」

 

「この程度、シャイニング・ドローするまでもない!さぁ、来るが良い!ドロー!」

 

黒コナミ 手札0→1

 

この男はモンスターは引ききると、ティモシーも確信している。問題は、引いたモンスターが何であるかだ。黒コナミがデッキトップに手をかけ、1枚のカードを引き抜く。結果は――。

 

「『ゴゴゴジャイアント』を召喚!」

 

ゴゴゴジャイアント 攻撃力2000

 

「召喚時、墓地の『ゴゴゴゴースト』を特殊召喚し、守備表示に!」

 

ゴゴゴゴースト 守備力0

 

「更に『ゴゴゴゴースト』の効果で『ゴゴゴゴーレム』を蘇生!」

 

ゴゴゴゴーレム 守備力1500

 

1枚の防御カードからの展開では最高と言える結果だ。3体の『ゴゴゴ』モンスターが膝をつき、壁となって黒コナミへの道を閉ざす。

 

「ならば『ゴゴゴジャイアント』へ攻撃!」

 

「構わん、通す」

 

「ターンエンドだ!」

 

榊 遊矢 LP3500

フィールド『EMシルバー・クロウ』(攻撃表示)『EMウィップ・バイパー』(攻撃表示)『EMウィム・ウィッチ』(守備表示)『刻剣の魔術師』(攻撃表示)

Pゾーン『EMラフメイカー』『EMブランコブラ』

手札0

 

壁モンスターを少しでも減らすが、それでも2体のモンスターが残る。レベル4のモンスターが2体だ。間違いなく仕掛けて来るだろう。警戒を引き上げ、デュエルディスクを構え直す。

 

「私のターン、ドロー!2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『No.55ゴゴゴゴライアス』!」

 

No.55ゴゴゴゴライアス 攻撃力2400

 

早速エクシーズ召喚、現れたのは要塞に手足を足したような巨人のモンスター。彼が『ホープ』以外に所持する『No.』モンスター。遊矢が目にするのは初めてだ。

 

「ゴライアスのORUを1つ取り除き、効果発動!墓地の『ゴゴゴジャイアント』をサルベージ、そして召喚!」

 

ゴゴゴジャイアント 攻撃力2000

 

「またか……」

 

今回の過労死要員、『ゴゴゴジャイアント』。気のせいか、少々元気が失われているように感じる。そんな彼がお前も道連れだと言わんばかりに墓地に繋がる穴を作り出し、巨大な腕で同僚を引っ張り出す。

 

「召喚時、『ゴゴゴゴーレム』を蘇生!」

 

ゴゴゴゴーレム 守備力1500

 

「永続魔法、『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』!私が『希望皇ホープ』をエクシーズ召喚する度、LPを500払い、ドローに変換する。2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れよ、『No.』39!我が戦いはここより始まる!白き翼に望みを託せ!光の使者、『希望皇ホープ』!!」

 

No.39希望皇ホープ 攻撃力2500

 

2体のモンスターが1つとなり、閃光がフィールドを覆う。満ち溢れる光の中、降り立つのは黄金の装飾を纏う白い塔。カタカタと音を立てて変形し、人型となったそれが腰の剣を抜き、白刃で光を裂く。

晴れたそこに立つのは、全貌が明らかとなった彼のエース。黄金に輝く鎧に純白の翼、二振りの剣を携え、右肩に赤い閃きを見せる39の数字が浮かび上がる。

 

『希望皇ホープ』。防御的な効果を持つモンスターだが、真に恐るべきは彼が扱うこのモンスターの攻撃性が高い進化形態、言わばこのモンスターは仮の姿に過ぎない。

 

「『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』の効果発動!」

 

黒コナミ LP1900→1400 手札0→1

 

「更に『希望皇ホープ』1体でオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!現れよ、『CNo.39』!混沌を光に変える使者!希望皇ホープレイ!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ 攻撃力2500

 

地面に星が浮かぶ渦が広がり、白い塔に戻った『ホープ』が飛び込み、中で新たな姿へ変わった『ホープ』が再びフィールドへと飛翔する。白と金より一転、黒一色に染まった体躯を回転させ、鋭い翼を広げた黒騎士が雄々しい咆哮を放つ。

 

「『CNo.』……!」

 

「出て来たか……」

 

「『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』の効果発動!」

 

黒コナミ LP1400→900 手札1→2

 

「ホープレイの効果発動!ORUを2つ取り除き、このカードの攻撃力を1000アップ!ウィップ・バイパーの攻撃力を2000ダウン!更にORUを1つ取り除き、攻撃力を500アップ、シルバー・クロウの攻撃力を1000ダウン!オーバーレイ・チャージ!」

 

CNo.39希望皇ホープレイ 攻撃力2500→3000→3500→4000

 

EMウィップ・バイパー 攻撃力1700→0

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力1800→800

 

「くっ、ウィップ・バイパーの効果発動!ホープレイの攻守を入れ替える!」

 

「無駄だ!墓地の『ブレイクスルー・スキル』を除外し、効果を無効!バトル!ホープレイでウィップ・バイパーへ攻撃!ホープ剣・カオススラッシュ!」

 

『不味い!』

 

「囀ずるなうすのろ。アクションマジック、『回避』!」

 

「何!?」

 

ホープレイが二振りの剣を握り、背中がバキリと甲高い音を上げ、2本の巨大な腕を伸ばし、3本目の剣を手にし、ウィップ・バイパーへ向かい、襲いかかる。一閃、二閃、三閃、風を引き裂く光の刃。ティモシーはそれをかわす為、ウィップ・バイパーの尾を掴み、ブン回してアクションマジックを口に咥えさせて運ぶ。人のモンスターだと思って無茶苦茶な奴である。

 

『やめたげてっ!』

 

「ふん、ご苦労」

 

そしてぽいっ、と呆気なくリリースされるウィップ・バイパー。その目はグルグルと回転している。

 

「ならゴライアスで追撃!」

 

「ぬうぅ!?」

 

榊 遊矢 LP3500→1100

 

ゴライアスが剛腕を振り抜き、ウィップ・バイパーを吹き飛ばす。とんでもないパワーだ。ソリッドビジョンで作られた光の足場が砕かれ、ガラガラと土煙を上げて崩れ落ちる。

 

『互角……!』

 

「互角……?互角だと?笑わせるな、俺の方が遥かに上だ、このうすのろ」

 

「ならば見せてみろ、貴様の実力を。まさかこの程度な訳あるまい?私は速攻魔法、『神秘の中華なべ』を発動。ホープレイをリリースし、攻撃力をLPに変換」

 

黒コナミ LP900→4900

 

『負けてるじゃないか!』

 

「ええい、狼狽えるな、このたわけが!」

 

100を切ったLPが一気に4000以上に回復し、対するこちらは100少しと明らかに不利な状況を見て、遊矢がティモシーに文句を放ち、ギャースカと喧嘩になる。この男の自信はどこから出て来るのだろうか。流石の遊矢も勝手に身体を乗っ取られ、その上で負けると言うのはカチンと来るものがある。

 

「カードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

黒コナミ LP4900

フィールド『No.55ゴゴゴゴライアス』(攻撃表示)

『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』セット1

手札0

 

「俺のターン、ドロー!刻剣の効果発動!ゴライアスとこのカードを除外する!」

 

「罠発動!『スキル・プリズナー』!ゴライアスを対象とするモンスター効果を無効!」

 

「チッ、全てのモンスターを守備表示に変更、カードを1枚セット、ターンエンドだ!」

 

榊 遊矢 LP1100

フィールド『EMシルバー・クロウ』(守備表示)『EMウィム・ウィッチ』(守備表示)『刻剣の魔術師』(守備表示)

セット1

Pゾーン『EMラフメイカー』『EMブランコブラ』

手札0

 

「私のターン、ドロー!ゴライアスのORUを取り除き、効果発動!『ゴゴゴジャイアント』を回収!速攻魔法、『ツイン・ツイスター』!手札を1枚捨て、ペンデュラムを破壊!」

 

「くっ!」

 

「バトル!ゴライアスで刻剣へ攻撃!」

 

ペンデュラムも破壊され、頼みの刻剣も破壊、これで防ぐ事も攻略も難しくなった。

 

「ターン、エンド」

 

黒コナミ LP4900

フィールド『No.55ゴゴゴゴライアス』(攻撃表示)

『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』

手札0

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『ペンデュラム・ホルト』!俺のエクストラデッキに3種類以上のペンデュラムモンスターが加わっている事で2枚ドローする!」

 

榊 遊矢 手札0→2

 

「ウィム・ウィッチをリリース、アドバンス召喚!『相克の魔術師』!」

 

相克の魔術師 攻撃力2500

 

現れたのは大剣を手にした上級『魔術師』だ。光属性モンスターの効果を無効、つまり『ホープ』に対抗出来るモンスターでもある。

 

「バトル!相克でゴライアスへ攻撃!」

 

黒コナミ LP4900→4800

 

ゴライアスが向かって来る相克を迎撃すべく、腹部の砲門から弾丸をばら撒くも、相克は凄まじい速度で駆け抜け、ゴライアスの太い腕に飛び乗る。そしてゴライアスは思わず自身の腕にいる相克へ砲撃を続け、かわされて腕を爆砕してしまう。

たたらを踏み、そのまま足を滑らせて転ぶゴライアス。ゴライアスが赤く輝くモノアイで上空を見れば――そこには跳躍し、こちらに剣を向けて落ちて来る相克の姿。

ズガンッ、と鈍い音と共にモノアイに剣が突き立てられ、活動を停止するゴライアス。相克は大剣を引き抜いて退いた瞬間、ゴライアスが爆発、岩石が飛び散る。

 

「シルバー・クロウで攻撃!」

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力1800→2100

 

黒コナミ LP4800→2700

 

更なる追撃、シルバー・クロウが獲物を狙って走り、鋭い爪で黒コナミを切り裂く。大ダメージだ。流石の黒コナミも顔をしかめ、たたらを踏む。

 

「くっ……!」

 

「ターンエンドだ」

 

榊 遊矢 LP1100

フィールド『相克の魔術師』(攻撃表示)『EMシルバー・クロウ』(攻撃表示)

セット1

手札1

 

「私のターン、ドロー!魔法カード、『名推理』!相手はレベルを宣言し、自分はデッキトップからモンスターが出るまでカードを墓地に送る!そして出たモンスターのレベルが相手が宣言したものであれば墓地に送り、それ以外であれば特殊召喚する!」

 

「レベル4を選択する」

 

発動されたのは『名推理』の効果で黒コナミのデッキからカードが墓地に送られていき――1枚のモンスターカードがその手に渡る。レベルは――。

 

「レベル3、『ガガガガール』!よって特殊召喚!」

 

ガガガガール 守備力800

 

ポン、飛び出したのは三角帽子を被り、スライド式の携帯電話を持った女子校生風の金髪美少女。気だるげにふわぁと欠伸をし、紅玉のような眼をゴシゴシと擦る。

そしてやっと目の前の相克の姿に気づいたのか、強そうなモンスターに怯え、ふわふわと宙を漂って黒コナミの後ろに隠れ、威嚇するようにシャドーボクシングを始める。

そんな彼女の様子に溜め息を吐き、首根っこを掴んでポイとフィールドに放り投げる黒コナミ。べしゃりと倒れた『ガガガガール』は「うー」と唸り、女の子座りのまま半眼で主人を睨む。

 

「墓地の『シャッフル・リボーン』を除外し、『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』をデッキに戻し、1枚ドロー!」

 

黒コナミ 手札0→1

 

「そして装備魔法、『ワンダー・ワンド』を『ガガガガール』に装備、攻撃力を500アップ」

 

ガガガガール 攻撃力1000→1500

 

『ガガガガール』の手に緑の宝玉がついた杖が渡り、途端に彼女はキラキラした眼で主人に視線を移す。まるで見捨てられてなかったんだと言わんばかりである。

 

「『ワンダー・ワンド』を装備した『ガガガガール』を墓地に送り、2枚ドロー!」

 

黒コナミ 手札0→2

 

戦闘破壊されずに済んだと笑顔で手を振り去っていく『ガガガガール』。しかし――。

 

「『ガガガシスター』を召喚」

 

ガガガシスター 攻撃力200

 

ガールの妹なのか、白い帽子を被り、鍵を模したステッキを持った幼女がフィールドに立つ。その姿に墓地に繋がる渦に入り込もうとする『ガガガガール』の表情が凍りつく。

 

「召喚時、デッキから装備魔法、『ガガガリベンジ』をサーチ、発動!『ガガガガール』をそせし、このカードを装備!」

 

ガガガガール 攻撃力1000

 

墓地の穴から赤いモノアイが覗き、やって来た『ゴゴゴゴーレム』がお前が来るのはここではない、あっちだと墓地行きをキャンセルし、『ガガガガール』の首根っこを掴んでフィールドに投げられる。べしゃり。

 

「『ガガガシスター』の効果により、このカードと『ガガガシスター』のレベルを、2体のレベルを合計した数値にする!」

 

ガガガシスター レベル2→5

 

ガガガガール レベル3→5

 

そんな彼女の頭を良し良しと撫でるシスター。思わず彼女は妹に抱きつき泣いた。

 

「2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『ZWー獣王獅子武装』!」

 

ZWー獣王獅子武装 攻撃力3000→3300

 

大地を駆り、天空に雄々しき咆哮を放つのは赤と金に染まった機械の獅子。『ホープ』を助ける『ZW』達を統べし王だ。

 

「ORUとなった『ガガガガール』の効果により、獣王獅子武装はエクシーズ召喚に成功した際、相手モンスター1体の攻撃力を0にする効果を得る!相克に対し、発動!ゼロゼロコール!」

 

「相克の効果で獣王獅子武装の効果を無効!」

 

「甘い!墓地の『スキル・プリズナー』を除外し、獣王獅子武装を対象とするモンスター効果を無効!」

 

相克の魔術師 攻撃力2500→0

 

獅子の背後に『ガガガガール』が現れ、まぁ、戦闘しないならいっか、と半眼になりながらケータイを操作し、相克に向かって音波を放つ。少々不味い事になった。

 

「そして獣王獅子武装のORUを1つ取り除き、デッキから『ZWー阿修羅副腕』をサーチ、バトル!獣王獅子武装で、相克へ攻撃!」

 

「罠発動!『レインボー・ライフ』!手札を1枚捨て、ダメージを回復に変換する!」

 

榊 遊矢 LP1100→4400

 

獣王の咆哮が木霊し、衝撃が空気を震撼させ、相克がガラスのように砕け散る。それでもダメージは虹のカーテンを通して恵みの雨となり、ティモシーを癒す。これでかなり楽になった。

 

「ほう、モンスターとカードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

黒コナミ LP2700

フィールド『ZWー獣王獅子武装』(攻撃表示)セットモンスター

セット1

手札0

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『金満な壺』!エクストラデッキの『EMブランコブラ』、『EMラフメイカー』、『EMゴムゴムートン』の3体をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札0→2

 

「永続魔法、『補給部隊』を発動!『EMラディッシュ・ホース』をセッティング!ペンデュラム効果発動!シルバー・クロウの攻撃力分、獣王獅子武装の攻撃力をダウンする!」

 

ZWー獣王獅子武装 攻撃力3000→1200

 

ペンデュラムゾーンに現れた鮮やかな赤の馬が大根の角をロケットのように発射させ、弾けて狼と獅子の頭に降り注ぐ、これで強弱が入れ替わった。優秀な1枚だ。例え下級モンスターだろうと強力なモンスターを倒す可能性が沸いて来る。

 

「バトル!シルバー・クロウで獣王獅子武装へ攻撃!」

 

「罠発動!『ハーフ・アンブレイク』!獣王獅子武装に戦闘耐性を与え、受けるダメージを半分にする!」

 

EMシルバー・クロウ 攻撃力1800→2100

 

黒コナミ LP2700→2250

 

「かわしたか……だが獣王獅子武装は弱体化した。俺はこのままターンエンドだ!」

 

榊 遊矢 LP4400

フィールド『EMシルバー・クロウ』(攻撃表示)

『補給部隊』

Pゾーン『EMラディッシュ・ホース』

手札0

 

「私のターン、ドロー!獣王獅子武装を守備表示に変更、墓地の『ギャラクシー・サイクロン』を除外し、ラディッシュ・ホースを破壊!獣王獅子武装のORUを1つ取り除き、『ZWー荒鷲激神爪』をサーチ!こちらも永続魔法、『補給部隊』を発動。そしてLPが相手より2000以上少ない事で手札の『ZWー荒鷲激神爪』を特殊召喚する!」

 

ZWー荒鷲激神爪 攻撃力2000

 

「阿修羅副腕を反転召喚、バトル!荒鷲激神爪でシルバー・クロウへ攻撃!」

 

榊 遊矢 LP4400→4200

 

「チ、『補給部隊』の効果でドロー!」

 

榊 遊矢 手札0→1

 

黒コナミのフィールドに赤い荒鷲が現れ、シルバー・クロウを破壊する。一進一退、どちらも負けていない。

 

「阿修羅副腕でダイレクトアタック!」

 

榊 遊矢 LP4200→3200

 

「ぬぅぅぅぅっ!?」

 

迫る猛攻、複数の拳がティモシーを貫く。堪らず苦悶の声を上げ、たたらを踏むティモシー。このままでは不味い――。

 

「ふん……舐めるなよ……この程度、屁でもないわ!」

 

「ターンエンドだ」

 

黒コナミ LP2250

フィールド『ZWー獣王獅子武装』(守備表示)『ZWー荒鷲激神爪』(攻撃表示)『ZWー阿修羅副腕』(攻撃表示)

『補給部隊』

手札0

 

「俺のターン、ドロー!『EMヘイタイガー』を召喚!」

 

EMヘイタイガー 攻撃力1700

 

現れたのはデフォルメされた虎の兵士。赤い軍服を纏い、背筋を伸ばして敬礼する。

 

「バトル!ヘイタイガーで獣王獅子武装へ攻撃!」

 

「チ、『補給部隊』の効果でドロー!」

 

「こちらもヘイタイガーの効果で『EMペンデュラム・マジシャン』をサーチ!」

 

ヘイタイガーが腰のサーベルを引き抜き、弱体化した獣王獅子武装に剣線を走らせ、切り裂く。獅子と虎の動物合戦、勝利をもぎ取ったのは虎だ。

 

黒コナミ 手札0→1

 

「『EMペンデュラム・マジシャン』をセッティング、カードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

榊 遊矢 LP3200

フィールド『EMヘイタイガー』(攻撃表示)

『補給部隊』セット1

Pゾーン『EMペンデュラム・マジシャン』

手札0

 

「私のターン、ドロー!」

 

「永続罠発動!『連成する振動』!『EMペンデュラム・マジシャン』を破壊し、1枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札0→1

 

「手札を確保したか……バトル!荒鷲激神爪でヘイタイガーへ攻撃!」

 

榊 遊矢 LP3200→2900

 

「『補給部隊』の効果でドロー!」

 

榊 遊矢 手札1→2

 

「阿修羅副腕でダイレクトアタック!」

 

榊 遊矢 LP2900→1900

 

「ぐふっ……!」

 

『ZW』による連撃、本来『ホープ』の装備となるカードに素のままで殴られ続けるティモシー。このままでは不味い。とは言えティモシーもLPを犠牲に手札を確保。このままでは終われない。

 

「カードを2枚セット、ターンエンドだ」

 

黒コナミ LP2250

フィールド『ZWー荒鷲激神爪』(攻撃表示)『ZWー阿修羅副腕』(攻撃表示)

『補給部隊』セット2

手札0

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『マジック・プランター』!『連成する振動』をコストに2枚ドロー!」

 

榊 遊矢 手札2→4

 

『――え?』

 

引き抜かれた2枚のカード、その内の1枚に視線を移し、遊矢の目が見開かれ、ポカンと口が開く。そのカードは、自分が最も信頼するカード、しかし、デッキに投入した覚えが全く無いカード。ティモシーが描く漆黒のアーク、天に現れ、揺れ動く。

 

「『時読みの魔術師』と『覇王眷竜オッドアイズ』の2体でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

背後のペンデュラムゾーンに登場する、黒い『魔術師』と赤い体躯に緑の光を走らせた、オッドアイのドラゴン。その姿は遊矢の持つエースカード、『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』に驚く程酷似しており、このカードが発動された途端、ドクンと遊矢の心臓が跳ねる。『オッドアイズ』でありながら、『オッドアイズ』ならざるカード。このモンスターは一体――。

 

「――その、カードは……」

 

「クク、美しいだろう?早くフィールドに出してやりたいが、このデッキでは少々相性が悪いな。まぁ良い、ペンデュラム召喚!『降竜の魔術師』!『相克の魔術師』!」

 

降竜の魔術師 攻撃力2400

 

相克の魔術師 攻撃力2500

 

降り注ぐ光の柱、フィールドに現れたのは2体の『魔術師』。どちらも攻撃力は荒鷲激神爪を上回っている。反撃開始と言う事か。

 

「まだだ、俺は『調律の魔術師』を召喚!」

 

調律の魔術師 攻撃力0

 

現れたのは攻守0、レベル1、闇属性の魔法使い族チューナーだ。白い法衣を纏い、桜色の髪を揺らす少女の『魔術師』。遊矢がサムから受け取ったカード、今更ながらジャックへと返しそびれ、すっかり遊矢のデッキに馴染んでしまっている。

今とて「星読みちゃんが焼いたクッキーおいしー」と口をモゴモゴ動かしている。どうやら遊矢のモンスターに可愛がられているようだ。遊矢が何しているんだコイツ、と言いたげな呆れの籠った視線を送ると、漸く呼び出された事に気づいたのか、口元にクッキーのカスをつけながらポーズを決める。

そして人懐っこい表情を浮かべ、ティモシーに近づき――ハッとした表情から更に眉をひそめ、手に持った音叉をティモシーの頭部目掛けて振るう。

 

「召喚時、相手のLPを回復、自分のLPに400のダメージを与えぶふぉっ!?」

 

黒コナミ LP2250→2650

 

榊 遊矢 LP1900→1500

 

ゴッ、頭部を殴られ、鈍い音を出すティモシー。彼はうごごと唸り、怒り心頭と言った顔をした調律を睨む。

 

「こ……こやつ……何?アンタごすずんじゃないでしょ?アタシのごすずんを返して?このスイーツめが……!」

 

忠誠心故と言う事か、ツンとそっぽを向く調律に舌打ちを鳴らすティモシー。とは言え今の主人は自分だ、言う事は聞いて貰わねばならない。

 

「……良いのか?後ろのごすずんとやらに格好いい所を見せないで?」

 

ニヤリ、ティモシーが意地の悪い笑みを見せ、クイと親指で遊矢を差す。そして漸く遊矢の存在に気づいたのか、調律はムーと頬を膨らませ、仕方無いと溜め息を吐く。

 

「そうで良いんだぁ……!俺はレベル7の降竜にレベル1の調律をチューニング!剛毅の光を放つ勇者の剣!今ここに閃光と共に目覚めよ!シンクロ召喚!『覚醒の魔導剣士』!」

 

覚醒の魔導剣士 攻撃力2500

 

シンクロ召喚、調律がピースサインを決め、光のリングとなって弾け飛び、降竜を包み込んで一筋の光がリングごと降竜を貫く。閃光がフィールドを覆い、それを切り裂いて現れたのは白銀の鎧を纏う、二刀流の魔導剣士。遊矢がこのシンクロ次元に来て新たに得た力だ。フィールドに降り立ち、剣を構える。

 

「『魔術師』ペンデュラムモンスターを素材としてこのカードがシンクロ召喚に成功した事で、墓地の『ペンデュラム・ホルト』を回収、発動!2枚のカードをドロー!」

 

榊 遊矢 手札1→3

 

「バトル!『覚醒の魔導剣士』で荒鷲激神爪へ攻撃!」

 

「罠発動!『威嚇する咆哮』!」

 

「チ、魔法カード、『一時休戦』を発動」

 

榊 遊矢 手札2→3

 

黒コナミ 手札0→1

 

「カードを2枚セット、ターンエンドだ」

 

榊 遊矢 LP1500

フィールド『覚醒の魔導剣士』(攻撃表示)『相克の魔術師』(攻撃表示)

『補給部隊』セット2

Pゾーン『時読みの魔術師』『覇王眷竜オッドアイズ』

手札1

 

ぶつかる互いのカード、互いの力、2人の実力者は互いに認める。目の前の存在は、自らの全力を出すに相応しい相手であると。ニヤリと笑みを深める覇王と皇。ここからがデュエルの本番、黒コナミはつばの欠けた帽子を被り直し、内側から溢れ出る力を今、解放する。

 

「……どうやら、ここからが奴の本領発揮のようだな」

 

「え……?」

 

嵐の気配を察知し、好戦的な笑みを見せるティモシー。遊矢が口を開いたその時――。

 

「さぁ、かっとビングだ!私は私自身でオーバーレイ・ネットワークを再構築!熱き情熱が勝利を導く!エクシーズ・セカンドチェンジィィィィッ!!」

 

黒コナミの身体が、青白く輝き、激しいスパークが視界を覆った。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。