遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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第160話 屑野郎

シンクロ次元、シティの地上にて、1人の少女が奔走していた。白いフードつきのマントを纏った少女だ。彼女は息を切らしながらも走る足を緩める事無く、シティを駆ける。目的は――1人の少年、幼馴染みに会う為、普段聡明な彼女からは想像もつかないような行為だ。それだけ冷静さを失っているのか――。

 

「はぁ……はぁ……ユーゴ……!」

 

記憶を取り戻した少女は、故郷を駆ける。果たして彼女は、少年と無事再会出来るのか――。

 

――――――

 

一方、隼達ランサーズメンバーはシンジ達の助けを得、何とか地上に出ていた。

 

「良し、行動開始だ」

 

「こう言う時って状況を開始するって言うんじゃねーの?」

 

「成程、一理ある。格好良いしな」

 

「よっしゃ、じゃあ状況を開始するぜ!」

 

「待てアリト、そう言うのはサブリーダーである俺が言うべきだ」

 

「待てい黒咲、何時からお前がサブリーダーになったんだよ。普通俺みたいなスーパーウルトラなデュエリストがな……」

 

「お前達何をしているんだ、そんなどうでも良い事より早く状況を開始せんか!」

 

「あっるぇー!権現坂君、真面目そうな事言いながらしれっと状況を開始しちゃいましたよぉー?ちょっといただけないなー」

 

こんな状況にも関わらず、男子中学生らしい馬鹿なやり取りを繰り返すランサーズ達。余裕があるのか考え無しなのか、前者であると思いたいと考えながら、新たなランサーズに加わった黄金の騎士、ジル・ド・ランスボウと、エンジョイデュエリスト、徳松 長次郎がやや呆れながら口を挟む。

 

「それより早く敵軍に仕掛けた方が良いのでは?」

 

「月影の兄ちゃんは先に行っちまったしよ」

 

大人な意見である。ランサーズメンバーもむぅと黙り込み、仕方無いと頷き合い、状況を開始しようとしたその時――。

 

「ハーハッハッハ!」

 

「ッ!?」

 

彼等がいる場所の遥か上、ビルの屋上より笑い声が5つ、木霊する。敵か味方か一体何者なのかとランサーズ達がその先へと視線を向けると――そこにいたのは、5つの影。赤、青、黄、緑、桃と色とりどりのオベリスク・フォースの仮面を被った男達の姿。彼等の姿を視界におさめた途端、この場全員の思考が一致する。何だ――ただの馬鹿か、と。

 

「まさか早速喧嘩を始めるとはな、ランサーズ、恐るるに足らず!」

 

「何ィ!?」

 

「沢渡、挑発に乗るな、同じ馬鹿になるぞ。手遅れかもしれんが」

 

「馬鹿ではないわ!馬鹿って言った方が馬鹿なんですぅー!」

 

「じゃあ一体何なんですー?」

 

「フハハハハ!良くぞ聞いた!ピンク!」

 

赤いスーツを纏ったオベリスク・フォースが待っていたとばかりに哄笑を上げ、ピンクと呼ばれた筋骨隆々、5人の中でも一番マッシヴなピンク色のスーツを纏ったオベリスク・フォースが前に出る。

 

「OK、レッド!ピンクの仮面は愛の証!癒しのデュエリスト、アカデミアピンク!」

 

ムッキムキのボディをくねらせながら、黄色のマフラーを靡かせ、両手でハートを作ってポーズを決めるアカデミアピンク。その姿に堪え切れなくなった隼と沢渡が仲良く吐く。そんな彼等、特に隼を気に入ったのか、彼にウィンクを飛ばすピンク。隼のゲロが止まらなくなって来た。

 

「緑の仮面は叡知の証!データデュエリスト、アカデミアグリーン!」

 

ピンクとは対照的な、ヒョロリとした長身でポーズを決め、黄色のマフラーをたなびかせたのは緑のスーツと仮面を被ったアカデミアグリーン。彼は仮面の上に装着したスカウターを起動し、不敵な笑みを沢渡に向ける。

 

「黄の仮面は暴食の証!大食いデュエリスト、アカデミアイエロー!」

 

お次はかなり肥満体型のオベリスク・フォース。カレーライスを片手にした彼はモシャモシャと食いながらジルへと視線を向ける。

 

「青の仮面は冷徹の証!トラップデュエリスト、アカデミアブルー!」

 

続くは青いスーツ、青い仮面を装着したオベリスク・フォース。権現坂に視線を投げ掛け、ポーズを決める。

 

「赤の仮面は情熱の証!熱血デュエリスト、アカデミアレッド!」

 

最後は赤い仮面とスーツを纏ったリーダー格であろう男、彼は荒ぶる鷹のポーズを決め、アリトを射抜く。そして彼等は揃ってポーズを決め――。

 

「「「「「我等、学園軍隊ビッグ5!!」」」」」

 

瞬間、5人の背後に赤、青、黄、緑、桃の爆煙が上がる。正に戦隊ヒーロー。その姿を見て、ランサーズ達は彼等の評価を修正する。ただの馬鹿から、大馬鹿野郎へと。

 

「フハハハハ!さぁ、悪の手先ランサーズめ!我等アカデミアの正義の名の下に、敗れ去るが良いわ!」

 

激突する正義と正義、勝つのは果たして――。

 

――――――

 

デュエルチェイサー227は考える。自身が何故、セキュリティになろうと思い至った出来事を。あれは何時の頃だったか、幼い頃、セキュリティの姿に憧れたのが理由だった事は覚えている。だけど、自身がどんな人間になりたいかが、スッポリと抜けてしまっていて――どうにも気持ち悪い。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

場所は変わって、シティの地下、デュエルチェイサー227とギャラガーのデュエルは続いていた。状況は227の不利。

とは言えそれも無理はない。セキュリティの中でも腕利きの実力を持った彼ではあるが、相手は禁止カードのみで組まれたデッキを使っている。そのカードパワーは凄まじいの一言に尽きる。一体どうして禁止になったのかが今更ながらに思い知らされる。227も何とか渡り合っているが……どこまでもつか。

 

「魔法カード、『天使の施し』を発動!3枚ドローし、2枚捨てる!」

 

ギャラガー 手札4→7→5

 

「マジか……」

 

発動されたカードは『強欲な壺』と肩を並べる極悪ドローソース。実に分かりやすいパワーカードだ。それにより、ギャラガーの手札が入れ替わり、補充される。

 

「墓地に送られた『処刑人ーマキュラ』の効果発動!このターン、俺は手札から罠を発動可能!罠カード、『刻の封印』を発動!次のお前のターンのドローフェイズをスキップ!」

 

「なっ!?」

 

続けて発動されたのは本来1ターンタイミングが遅れる罠を発動可能とするカードと、相手のドローフェイズをスキップする禁止カード。極悪カードのオンパレード、凶悪なラッシュのハメコンボが227を攻め立てる。これが禁止カードの力。こんなものが今野に放たれれば環境は荒れ放題、デュエルはじゃんけんゲーとなるだろう。この違法ディスクは、ここで潰さねばならない。

 

「ブラスターのレベルをダウン、2体の『レベル・スティーラー』を蘇生する!」

 

焔征竜ーブラスター レベル7→6→5

 

レベル・スティーラー 守備力0×200

 

「2体の『レベル・スティーラー』をリリース、アドバンス召喚!『嵐征竜ーテンペスト』!」

 

嵐征竜ーテンペスト 攻撃力2400

 

「バトル!マスターPで『ゴヨウ・ガーディアン』へ攻撃!」

 

「罠発動、『砂塵のバリアーダスト・フォース』!お前の攻撃宣言時、モンスター全てを裏側守備表示に変更!」

 

「何ィ!?」

 

227のフィールドに凄まじい砂塵が吹き荒れ、ギャラガーのモンスターの視界を覆い、砂へズブズブと沈み込む。まるで蟻地獄だ。ギャラガーもマスターPに罠耐性を与えていない事が仇となり、攻撃モンスターが失われる。見事禁止カード軍団を抑え込んだ。

 

「クソッ、そんなゴミみたいなカードで……!」

 

「ゴミなんかじゃないさ、俺も、このカード達も、捨て石なんかじゃない!」

 

「ハッ、良く言うぜ。テメェもコモンズを切り捨ててた癖によぉ!」

 

「ッ!」

 

確かに、ギャラガーの言う通り、227には彼の事をとやかく言う権利はないのかもしれない。今までロジェの手駒として、違反者を捕らえ、ゴミのように地下に送って来た事だってある。中には、冤罪を被った者もいるだろう。彼が優秀と言う事は、それだけ犠牲になった者がいると言う事だ。

ただコモンズと言うだけで、罪のない者も、蹴り落として来た。それは、227もギャラガーも同じ。今の差は、勝者か敗者かだけに過ぎない。

 

「俺は……!」

 

「綺麗事言ってんじゃねぇよ。俺からすれば、お前も同類なんだよぉ!」

 

「俺、は……」

 

何も、言えない。言い返せない。それだけの罪悪感が、彼を縛り付ける。このデュエルは、罰だ。彼に罪の重さを思い知らせるデュエル。そして――目の前に立ちはだかる禁止カード達が、その重さを物語っている。

 

「ターンエンド。精々苦しみな」

 

ギャラガー LP3000

フィールド セットモンスター×4

『血の代償』

『ドラゴニックD』

手札3

 

「俺のターン、俺は、ドローフェイズをスキップ……バトルだ!『ゴヨウ・ガーディアン』で、セット状態のブラスターへ攻撃!そのコントロールを奪う!」

 

焔征竜ーブラスター 守備力1800

 

『ゴヨウ・ガーディアン』の効果で、禁止カードであるブラスターが227のフィールドへ渡る。禁止カードを使う事になるが、相手のデュエルディスクが特殊な為か、エラーは出ない。

 

「ターン、エンドだ……」

 

デュエルチェイサー227 LP3000

フィールド『ゴヨウ・ガーディアン』(攻撃表示)「焔征竜ーブラスター」(守備表示)

『補給部隊』『強制終了』セット1

手札0

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『サンダー・ボルト』!テメェのモンスターを、全て破壊!」

 

ギャラガーが1枚のカードを掲げ、デュエルディスクに叩きつけた途端、2人の真上に黒雲が発生し、中より凄まじき稲妻が227のフィールドに降り注ぐ。雷は自然を司る征竜が1体、ブラスターまでも焦がし尽くし、227のフィールドをまっさらな荒野へと変える。

デュエルモンスターズ黎明期に作り出されたカードだ。これ1枚で状況は逆転する。

 

「『補給部隊』の効果でドロー!」

 

デュエルチェイサー227 手札0→1

 

「おっと手札を確保したか。ならこいつの出番だ。魔法カード、『強引な番兵』!相手の手札を確認、その中のカード1枚をデッキに戻させる!『ブラック・ホール』か、俺様の『サンダー・ボルト』の下位互換とは言え、危ねぇもん持ってんなぁ」

 

「くそっ……!」

 

お次はハンデス3種の神器の1枚、ノーコストでピーピングとハンデスを行うカードだ。折角引き寄せたチャンスもクシャリと簡単に握り潰されてしまう。

 

「『ゼンマイハンター』を召喚!」

 

ゼンマイハンター 攻撃力1600

 

今度はゼンマイ仕掛けのケンタウルス。緑と白のボディを鈍く光らせ、黄金のボウガンを構える。『ゼンマイ』モンスターを利用したハンデスデッキにおいて、キーとなったカードだ。尤も、彼のデッキを考えるとその効果は使用する事は無いだろうが。

 

「バトル!『ゼンマイハンター』でダイレクトアタック!」

 

「罠発動、『波紋のバリアーウェーブ・フォースー』!『ゼンマイハンター』をデッキにバウンスする!」

 

「チ、ターンエンドだ」

 

ギャラガー LP3000

フィールド セットモンスター×3

『血の代償』

『ドラゴニックD』

手札1

 

「……」

 

回りに回って227のターン、一体どうしたのか、彼はカードを引く事を躊躇っている。その理由は――無論、彼の迷いだ。自身のして来た事を今更ながら痛感し、罪悪感が彼にのしかかっているのだ。

今なら分かる。敗者の側に落ちた今なら。このどうしようもない、納得のいかなさが、それでも納得するしかない理不尽さが。こんな思いを――多くの人々に味わわせて来たのだ。それが今、彼に回っている。

他ならない、街を守るセキュリティと言う正義が、彼等コモンズにとって脅威だったのだ。理想が、弱者を傷つけていたのだ。踏み潰して来た草花の存在に、気づくように。

 

「クク、大人しく今まで通り、トップスに尻尾振ってりゃ良いものをよぉ、何なら……俺様がロジェ長官に交渉して、お前だけ助けてやっても良いんだぜぇ?」

 

ニヤリ、口端を吊り上げ、ギャラガーは227を見下しながら笑みを浮かべる。差し伸べられた悪魔の誘惑、これに応じれば、今まで通りの生活が待っている。トップス達に忠実に、コモンズ達を虐げる、何時も通りの日々が。憧れた、輝かしい昇進への道も。

 

「俺は――」

 

だけど、彼は見て来た、その常識を変えようと、必死に足掻くコモンズの姿を、苦しみながらも、見下されても誇りを失わなかった者もいた。

だから――もう、取り返しのつかない事かもしれないけど、227は、正義を目指し、守るべきものを選び取る。セキュリティではない、彼自身の正義を。

 

「俺は、確かに屑野郎だ、自分の事ばかり考えて、他者を蹴落として来た、本物の屑野郎だ。だけど、こんな屑野郎にも、守りたいものがある!俺は――トップスもコモンズも関係ない、このシティを守りたかったんだ!新しく生まれ変わる、シティを守りたいんだ!」

 

それが、彼に出来る罪滅ぼしの形であると信じて。

 

「……そうかい、交渉決裂って事で良いんだなぁ!」

 

「構わん、もう昇進なんて糞食らえだ!俺はこのシティに住む人々全てを守ってみせる!」

 

「くだらねぇ正義ごっこかい、なら遠慮なく、テメェを地獄に送ってやるよ!」

 

迷いは振り切った。まだまだ荒削りの正義であるが――誇りを胸に、227はデッキトップよりカードを引き抜く。

 

「俺のターン、ドロー!ギャラガー!まずはお前の悪を挫かせてもらう!本物のデュエルって奴を見せてやろう!永続罠、『強制終了』を墓地に送り、魔法カード、『マジック・プランター』を発動!2枚ドロー!」

 

デュエルチェイサー 手札0→2

 

「モンスターをセット、ターンエンドだ!」

 

デュエルチェイサー227 LP3000

フィールド セットモンスター

『補給部隊』

手札1

 

「ハッ、それで終わりか?俺に本物のデュエルとやらを見せてくれるんじゃないのか?俺のターン、ドロー!『ゼンマイハンター』を召喚!」

 

ゼンマイハンター 攻撃力1600

 

「バトル!『ゼンマイハンター』でセットモンスターへ攻撃!」

 

「『補給部隊』の効果でドロー!そして破壊されたのは『ヘル・セキュリティ』!効果でレベル1の悪魔族、『ヘル・セキュリティ』をリクルート!」

 

ヘル・セキュリティ 守備力600

 

デュエルチェイサー227 手札1→2

 

「ターンエンド」

 

ギャラガー LP3000

フィールド『ゼンマイハンター』(攻撃表示)セットモンスター×3

『血の代償』

『ドラゴニックD』

手札1

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『強欲で金満な壺』!エクストラデッキからモンスター6体を除外し、2枚ドロー!」

 

デュエルチェイサー227 手札2→4

 

「『アサルト・ガンドッグ』を召喚!」

 

アサルト・ガンドッグ 攻撃力1200

 

現れたのはその名の通り、アサルトライフルを装備したドーベルマン。これでチューナーと非チューナーが揃った。

 

「レベル4の『アサルト・ガンドッグ』に、レベル1の『ヘル・セキュリティ』をチューニング!シンクロ召喚!『ヘル・ツイン・コップ』!」

 

ヘル・ツイン・コップ 攻撃力2200

 

シンクロ召喚、ここで現れたのはヘイジと同じく、『ゴヨウ』系列から外れたポリスシンクロモンスターの1体、2つの頭を生やし、バイクに乗った悪魔刑事。ジョーとキックが戦場に駆ける。

 

「バトル!『ヘル・ツイン・コップ』で『ゼンマイハンター』へ攻撃!」

 

ギャラガー LP3000→2400

 

「ぐあっ!?」

 

「そして『ヘル・ツイン・コップ』の効果、戦闘で相手モンスターを破壊し、墓地に送った時、このカードの攻撃力を800アップ、続けて攻撃出来る!」

 

ヘル・ツイン・コップ 攻撃力2200→3000

 

「やれ!『ヘル・ツイン・コップ』!セットされたテンペストへ攻撃!」

 

「この野郎っ!」

 

「カードを3枚セット、ターンエンドだ!」

 

デュエルチェイサー LP3000

フィールド『ヘル・ツイン・コップ』(攻撃表示)

『補給部隊』セット3

手札0

 

「屑が調子に乗りやがって……!俺のターン、ドロー!セットモンスター1体をリリース!アドバンス召喚!『マジェスペクター・ユニコーン』!」

 

マジェスペクター・ユニコーン 攻撃力2000

 

現れたのは風を纏った一角獣。227としては見た事のないカードであるが、このカードも禁止カードなのだろうか?いや、それよりもこのカードは――。

 

「ペンデュラムモンスターだと……!?」

 

そう、このカードは、榊 遊矢達が使う、ペンデュラムモンスターと同種のもの。こんなものまで手に入れたと言うのか。

 

「ハッ、こいつは昨日届いたばかりのエラーカード。テメェでその力を試してやるよ、光栄に思いな」

 

「未知のカードか……面倒だな」

 

「墓地の『焔征竜ーブラスター』の効果!タイダルとテンペストを除外し、特殊召喚!」

 

焔征竜ブラスター 攻撃力2800

 

「墓地の『レベル・スティーラー』の効果!ユニコーンのレベルを2つ下げ、2体蘇生!」

 

マジェスペクター・ユニコーン レベル6→5→4

 

レベル・スティーラー 守備力0×2

 

「そしてユニコーンの効果!このカードと『ヘル・ツイン・コップ』をバウンス!」

 

「罠発動!『蟲惑の落とし穴』!このターン特殊召喚したモンスターの効果を無効にし、破壊!」

 

「だがユニコーンは効果で破壊されねぇ!装備魔法、『蝶の短剣ーエルマ』をブラスターに装備!攻撃力を300アップ!」

 

焔征竜ブラスター 攻撃力2800 攻撃力2800→3100

 

次は貴重なレアカードを一般支給させたカードだ。装備魔法としての性能はイマイチであるが、その真価は墓地に送られた後、ループコンボのパーツになってしまう為に禁止になったカード。こう言ったように、禁止カードは解放していると一方的なターン運びになってしまう事が多い。尤も、彼のデッキなら心配はなさそうだが。

 

「バトル!ブラスターで攻撃!」

 

「罠発動!『邪悪なるバリアーダーク・フォースー』!お前の守備表示モンスターを全て除外!」

 

デュエルチェイサー227 LP3000→2100

 

「『補給部隊』の効果でドロー!」

 

デュエルチェイサー227 手札0→1

 

「ユニコーンでダイレクトアタック!」

 

デュエルチェイサー227 LP2100→100

 

「ハッハー!どうしたどうしたぁ!」

 

「ふん……痒くもないな……!永続罠、『サウザンド・クロス』!俺のLPが2000以下の場合、LPを2000にする!」

 

デュエルチェイサー227 LP100→2000

 

「吠えるじゃねぇの。俺はこれでターンエンドだ」

 

ギャラガー LP2400

フィールド『マジェスペクター・ユニコーン』(攻撃表示)『焔征竜ーブラスター』(攻撃表示)

『蝶の短剣ーエルマ』『血の代償』

『ドラゴニックD』

手札0

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『マジック・プランター』!『サウザンド・クロス』をコストに2枚ドロー!」

 

「おっと、良いのかぁ?」

 

デュエルチェイサー227 手札1→3

 

「速攻魔法、『魔力の泉』!お前の場に表側表示で存在する魔法、罠、3枚分ドローし、俺のフィールドの2枚分を捨てる!」

 

デュエルチェイサー227 手札2→5→3

 

「悪くないな、『ジュッテ・ロード』を召喚!」

 

ジュッテ・ロード 攻撃力1600

 

フィールドに見参したのは着物を纏い、十手を握った役人風のモンスター。『ゴブリンドバーグ』と互換となるカードだ。

 

「効果発動、手札の『ジュッテ・ナイト』を特殊召喚!」

 

ジュッテ・ナイト 守備力900

 

「レベル4の『ジュッテ・ロード』に、レベル2の『ジュッテ・ナイト』をチューニング!荒ぶる獣の牙持て捕獲せよ!シンクロ召喚!『ゴヨウ・プレデター』!」

 

ゴヨウ・プレデター 攻撃力2400

 

次はプロレスラーのマスクのようなものを被り、鋭い牙を覗かせる獣戦士に似たモンスターだ。レベル6としては『ゴヨウ・ガーディアン』に劣るが、コントロールを奪った後に追撃がかけられる為、相互互換と言った所だろう。

 

「はいはいお疲れちゃん、『マジェスペクター・ユニコーン』の効果!このカードと『ゴヨウ・プレデター』をバウンスする!」

 

「こっちのターンでもか……!」

 

攻め込もうとした所で、ギャラガーが台無しにする効果を使う。自身のペンデュラムモンスターと、相手モンスターをバウンスする小回りの効く優秀な効果。自身もエスケープする為、除去するには骨が折れそうだ。両者のターンでも使えるのが辛い。

 

「くそっ、カードを1枚セット、ターンエンド」

 

「ブラスターが手札に戻る」

 

デュエルチェイサー227 LP2000

フィールド

『補給部隊』セット1

手札0

 

「フハハッ、俺のターン、ドロー!魔法カード、『天使の施し』!3枚ドローし、2枚捨てる!」

 

ギャラガー 手札1→4→2

 

「『ゼンマイハンター』を召喚!」

 

ゼンマイハンター 攻撃力1600

 

「『血の代償』の効果を使い、『ゼンマイハンター』をリリース、アドバンス召喚!『マジェスペクター・ユニコーン』!」

 

ギャラガー LP2400→1900

 

マジェスペクター・ユニコーン 攻撃力2000

 

再び現れる風を操る一角獣。厄介なモンスターだ。『ゴヨウ』モンスターには耐性もない為、このままではされるがままになってしまう。早々に除去しておきたい。

 

「『レベル・スティーラー』を蘇生!」

 

マジェスペクター・ユニコーン レベル6→5

 

レベル・スティーラー 守備力0

 

「バトル!ユニコーンでダイレクトアタック!」

 

「罠発動、『ガード・ブロック』!ダメージを0にし、1枚ドロー!」

 

デュエルチェイサー227 手札0→1

 

「……ターンエンドだ」

 

ギャラガー LP1900

フィールド『マジェスペクター・ユニコーン』(攻撃表示)『レベル・スティーラー』(守備表示)

『血の代償』

『ドラゴニックD』

手札1

 

「俺のターン、ドロー!フ、どうした?これだけ禁止カードを使って俺1人に勝てんとはな」

 

「……チッ」

 

「魔法カード、『貪欲な壺』!墓地の『ゴヨウ・ガーディアン』、『ゴヨウ・チェイサー』、『ゴヨウ・ディフェンダー』3体をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

デュエルチェイサー227 手札1→3

 

「『切り込み隊長』を召喚!」

 

切り込み隊長 攻撃力1200

 

今度は戦士族モンスターの代表的なカード。今では多くのカテゴリが存在する為に使用率は低いが、それでも優秀なカードだ。歴戦の兵らしく手強い雰囲気を醸し出し、二振りの剣を手に戦場を駆ける。『ジュッテ・ロード』、『ゴブリンドバーグ』、そしてこのカード、あの手この手でモンスターを展開して来る。戦士族と言う点でも彼にとって扱いやすいのだろう。

 

「召喚時、手札から『ソード・マスター』を特殊召喚!」

 

次は地属性、戦士族のチューナーモンスター。「まそっぷ!」の掛け声と共にフィールドに現れ、『切り込み隊長』の隣に並び立つ。アラブ風の衣装を纏い、二刀流の剣技を見せる。

 

「レベル3の『切り込み隊長』に、レベル3の『ソード・マスター』をチューニング!シンクロ召喚!『ゴヨウ・プレデター』!」

 

ゴヨウ・プレデター 攻撃力2400

 

「ハッ、忘れたのかぁ?ユニコーンの効果を!効果発動!」

 

「墓地の『スキル・プリズナー』を除外し、プレデターを対象に取るモンスターの効果を無効!」

 

「ッ!?」

 

ギャラガーが不敵な笑みを浮かべたその時、227が負けじと墓地の罠を使い、ユニコーンの効果に対抗する。予想外の場所からの妨害がユニコーンに突き刺さり、プレデターを守る。

 

「バトル!プレデターでユニコーンへ攻撃!」

 

「ぐっ!?」

 

ギャラガー LP1900→1500

 

「ユニコーンはペンデュラムモンスターの為奪えない。俺はカードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

デュエルチェイサー227 LP2000

フィールド『ゴヨウ・プレデター』(攻撃表示)

『補給部隊』セット1

手札0

 

「俺のターン、ドロー!舐めるなよ雑魚が!魔法カード、『強欲な壺』!2枚ドロー!」

 

ギャラガー 手札1→3

 

「魔法カード、『天使の施し』!3枚ドローし、2枚捨てる!」

 

ギャラガー 手札2→5→3

 

「墓地へ送られた『処刑人ーマキュラ』の効果で、俺はこのターン、手札から罠を発動可能!そして罠発動、『異次元からの帰還』!LPを半分払い、除外されているブラスターとタイダルを2体ずつ呼び戻す!」

 

ギャラガー LP1500→750

 

焔征竜ーブラスター 攻撃力2800×2

 

瀑征竜ータイダル 攻撃力2600×2

 

「――っ!」

 

凶悪罠により、フィールドに舞い戻る4体の征竜。自然を掌握する竜の頂に住みし者達。それがこれ程ともなれば227に緊張が走る。

 

「更に2体のブラスターをリリースし、アドバンス召喚!『The tyrant NEPTUNE』!!」

 

The tyrant NEPTUNE 攻撃力0→5600

 

2体の征竜を糧として、現れたのは何と世界に1枚ずつ存在しないプラネットシリーズの1枚、正真正銘本物のNEPTUNE。海王星を司る冷たき暴君。鎧を纏い、大鎌を手にした爬虫類のような巨大なモンスターだ。攻撃力は2体の力を吸収し、5600、圧倒的な数値、正しく暴君だ。

 

「この、カードは……っ!?」

 

現在、〟全てのプラネットシリーズ〝はアカデミアが管理している為、227がこのカードを知らないのは無理もない。このカードの纏う闇の瘴気は途方もない。227はピリピリとしたプレッシャーを感じるが――ギャラガーはアホなのか、余り気にしていないのか、このカードも彼にとっては凄く強いカードの1つでしかないのだろう。

 

「バトル!NEPTUNEで『ゴヨウ・プレデター』へ攻撃ィ!Sickle of ruin!」

 

「罠発動!『ハーフ・アンブレイク』!『ゴヨウ・プレデター』に戦闘耐性を与え、ダメージを半分にする!うぐぁぁぁぁぁっ!?」

 

デュエルチェイサー227 LP2000→400

 

NEPTUNEが野太い剛腕で大鎌を振るい、『ゴヨウ・プレデター』を切り裂く。『ゴヨウ・プレデター』にも薄い膜状のバリアが覆われ、何とか防ごうとするが、凄まじい衝撃を受け、地下の壁まで吹き飛ばされて叩きつけられ、異が逆流して胃液と血が吐き出される。とんでもない力だ。ダメージも実体化し、227が転倒、地面に叩きつけられる。

 

「続けて2体のタイダルで攻撃!」

 

デュエルチェイサー227 LP400→300→200

 

「カードをセット、ターンエンドだ。この瞬間、『異次元からの帰還』で呼んだモンスターは除外される」

 

ギャラガー LP750

フィールド『The tyrant NEPTUNE』(攻撃表示)『レベル・スティーラー』(守備表示)

『血の代償』セット1

『ドラゴニックD』

手札0

 

「俺のターン、ドロー!カードをセット――」

 

「罠発動!『ラストバトル!』」

 

「ッ!?」

 

ここで発動されたのは、文字通りデュエルに決着をつける極悪禁止カード。エクストラデッキのモンスターが多用される現在では更に凶悪なカードとなる。痺れを切らしたのか、デュエルを無理矢理終わらせるこのカードの発動、227が驚愕するのも無理はない。

 

「俺はNEPTUNEを選択、そしてNEPTUNE以外の互いのフィールド、手札のカードを墓地に送り、その後、お前はデッキからモンスター1体を攻撃表示で呼ぶ。そして互いのモンスターを強制戦闘、プレイヤーのダメージを0にし、エンドフェイズ時、フィールドにモンスターが残っていた者が勝者となる」

 

これが『ラストバトル!』の効果。豪快で凶悪な効果だ。ギャラガーがフィールドに残すのは攻撃力5600のモンスター、227が勝つには、それ以上のモンスターを呼ばねばならないが――素の攻撃力が5600を越えるモンスターが、メインデッキに存在する筈もない。ギャラガーはそれを理解した上でこのカードを発動したのだ。

自らの勝利を確信したからこそ、ギャンブルに出た。だが――この勝負、227に勝機がある。このギャンブルを、ギャンブルとして成立させるジョーカーが。

 

「俺が呼ぶのは――『一撃必殺侍』!」

 

一撃必殺侍 攻撃力1200

 

現れたのは武者鎧を纏い、槍を手にした小さな侍。これが、227の出した、最後のカード。最後に選んだ運命のモンスター。

 

「攻撃力1200ぅ……?ハハッ!そんなモンスターで、俺様のNEPTUNEに勝てるとでも思ってんのか?お笑いだぜ!ヒャハハハハ!」

 

現れた小さなモンスターを見て、腹を抱えて馬鹿笑いするギャラガー。無理もない。彼が選んだのは、NEPTUNEに比べれば余りにも小さなモンスター。だが――。

 

「『一撃必殺侍』には――」

 

「んん?」

 

「戦闘時に発動する、効果がある」

 

「……あぁ?」

 

クルクルと天上よりある物体が降ってくる。黄金に輝く、円形の薄い物体……コインだ。それを視界におさめ、訝しむギャラガー。今更何をしようと言うのか、彼には理解出来ない。デュエルにどっぷり浸かった、デュエリストではなく、リアリストの為に。そんな彼に対し、227はコインを掴み、最後の効果を彼に説明する。

 

「ダメージ計算時、コイントスで裏表を当て、当たった場合、相手モンスターを破壊する効果が!」

 

「は……はぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

そう――これが、227が最後の最後で賭けた大博打、逆転の為の一手。ピシリとギャラガーの表情が固まり、余裕の笑みが崩れ去り、悲鳴にも似た驚愕の声が木霊する。

 

「俺が宣言するのは、裏だ」

 

「待てっつってんだろ!」

 

動揺を浮かべ、慌てふためくギャラガー。彼はこのデュエル、禁止カードを使えば必ず勝てると思っていたのだ。必ず勝てるルールを作り出していた筈なのだ。それが――2分の1の確率に変わってしまった。焦るギャラガー、だがデュエルは彼を待ってくれない、ソリッドビジョンのコインが弾かれ、宙でクルリと回転しながら、カラカラと地面に落ちて舞う。結果は――。

 

「お前は、自分がリアリストだと言った。だが俺は、俺達は――勝つか負けるか分からない、ギリギリの状況でも闘志を燃やす――」

 

裏。

 

「デュエリストだ」

 

勝敗は決まった。『一撃必殺侍』の眼がキラリと閃き、全身全霊を手に持った槍の穂先に込め、弾丸のようにNEPTUNEに向かい、真っ直ぐに突き進む。NEPTUNEも大鎌を振るい、迎撃に出るも――フワリ、まるで柳の如くかわされ、大鎌に乗り移った『一撃必殺侍』が駆け、その槍で心臓を穿つ。

崩れ落ちるNEPTUNE。フィールドに残ったのは、227のモンスター、『一撃必殺侍』のみ。ブンと槍を振るい、『一撃必殺侍』がニヒルに笑う。正に一撃必殺、プレイヤーをも葬る槍撃であった。

 

「ば、馬鹿なぁぁぁぁっ!?」

 

ギャラガー LP1000→0

 

ギャラガーのLPが削り取られ、0を刻むと共にデュエルディスクが火花を散らして爆発する。勝者、デュエルチェイサー227。揺るぎなき正義が、圧倒的な猛威を奮う禁断の力に、風穴を空ける。

違法デュエルディスク所持者、ギャラガー。デュエルによって確保。記録に残らず、実績にならず、誰にも知られずに終わる、裏方で行われていたデュエル。それでも、だとしても――このデュエルは227に、守るべきものを守り抜いた誇りを与える。

 

これがシティを守るセキュリティの新たな姿。227は進む。例えどんな敵が相手でも、正義と誇りを胸に、暖かい灯火に照らされた、笑顔溢れる未来へと、コモンズもトップスも関係ない、皆が肩を並べる光差す道へと。

 

「お前もきっと、再び日の光を拝めるさ。違いなんて、気づけたか気づけなかったかに過ぎないんだから。さぁ、行こう!このシティの新たな姿を見る為に、あいつ等が変えるシティを守る為に」

 

新しい朝が、彼等を待つ。

 

 


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