「俺のターン、ドロー!たっぷりと礼をさせてもらおう!まずは『切り込み隊長』を召喚!」
切り込み隊長 攻撃力1200
多くのデュエリストがぶつかり、火花を散らすフレンドシップカップ。2回戦第2試合、今対決していたのはチームランサーズ、チームセキュリティ、互いのチームのセカンドホイーラー、セレナとデュエルチェイサー227だ。現状は227のピンチ。
セレナのフィールドには強力な融合モンスターが4体、対する227はモンスターこそいないものの、先のターンで稼いだ手札がある。ここからが勝負所だ。
「召喚時、手札より『ソード・マスター』を特殊召喚!」
ソード・マスター 守備力0
二刀流の戦士が戦場に駆けつけ、隣に剣士が並ぶ。これでシンクロの準備が整った。
「まだ行くぞ!手札のモンスターを捨て、手札から『パワー・ジャイアント』を特殊召喚!」
パワー・ジャイアント 攻撃力2200 レベル6→5
「まだまだ!墓地の『グローアップ・バルブ』の効果!デッキトップをコストに蘇生する!」
グローアップ・バルブ 守備力100
次は宝石を身体中に散りばめた巨人とギョロギョロと目を蠢かせる植物だ。流れるようなプレイング。デュエルチェイサーの称号は伊達ではない。
「さぁ、行くぞ!レベル3の『切り込み隊長』に、レベル3の『ソード・マスター』をチューニング!シンクロ召喚!『ゴヨウ・ガーディアン』!!」
ゴヨウ・ガーディアン 攻撃力2800
「もう一丁!レベル5の『パワー・ジャイアント』に、レベル1の『グローアップ・バルブ』をチューニング!荒ぶる獣の牙持て捕獲せよ!シンクロ召喚!『ゴヨウ・プレデター』!」
ゴヨウ・プレデター 攻撃力2400
フィールドに現れたのは守護者と捕食者の『ゴヨウ』モンスター。岡っ引きと、マスクを被り、獣の牙を見せる役人だ。シンクロモンスターが2体、とは言えこのままではセレナに勝てない。
「魔法カード、『ミラクルシンクロフュージョン』!墓地のディフェンダー2体を除外し、融合を行う!融合召喚!出でよ、荘厳なる捕獲者の血統を受け継ぎし者!『ゴヨウ・エンペラー』!!」
ゴヨウ・エンペラー 攻撃力3300
更にここで融合召喚、現れたのは厳かなる玉座に腰かけた幼き皇帝。『ゴヨウ』系列を継いだモンスターだ。攻撃力3300、破格の数値だが、舞獅子姫には一歩届かない。
「だがそれでも――」
「届かないなら、届かせる!永続魔法、『連合軍』!効果は知っているな?」
ゴヨウ・エンペラー 攻撃力3300→3900
ゴヨウ・ガーディアン 攻撃力2800→3400
ゴヨウ・プレデター 攻撃力2400→3000
これで、227のモンスターがセレナのモンスターを超えた。
「面倒な……!」
「ここからが本番だ!バトル!『ゴヨウ・プレデター』で、『月光舞豹姫』へ攻撃!」
「罠発動!『ダメージ・ダイエット』!このターンのダメージを半分に!」
セレナ LP3600→3500
力を増した『ゴヨウ・プレデター』が鋭い牙を剥き出しにして唸り声を上げ、十手を振るって舞豹姫を打ち倒す。更に左腕で虚空を砕き、墓地に繋がる次元の渦を作り出し、十手を投げ込んで舞豹姫を引っ張り出す。
「戦闘破壊した事で、舞豹姫のコントロールを得て蘇生!ただし、与えるダメージは半分になるがな」
「こちらも罠発動!『月光輪廻舞踊』!『月光黒羊』と『月光紅狐』をサーチ!」
月光舞豹姫 攻撃力2800
「そのまま舞豹姫で舞猫姫へ攻撃!速攻魔法、『禁じられた聖杯』!舞猫姫の攻撃力を400アップし、効果を無効にする!」
月光舞猫姫 攻撃力2400→2800
「そして『ゴヨウ・エンペラー』の効果により、元々のコントロールが相手となるモンスターが相手モンスターを戦闘破壊した事で、その相手モンスターを蘇生、コントロールを得る!」
月光舞豹姫 攻撃力2800→3000
月光舞猫姫 攻撃力2400
次々と奪われ、227の強力な戦力となるモンスター達、最悪だ。
ついにセレナの牙城が崩れ去る。最強のモンスター、舞獅子姫の撃破。この結果は227にとってもセレナにとっても大きい。幸いなのは舞獅子姫は融合召喚でしか特殊召喚不可能の為、コントロールが奪われない事か。
「続けて『ゴヨウ・エンペラー』で舞獅子姫へ攻撃!」
セレナ LP3500→3300
「くあっ――!」
『ゴヨウ・エンペラー』の口から火炎が放たれ、舞獅子姫を呑み込む。ついにセレナの牙城が崩れ去る。最強のモンスター、舞獅子姫の撃破。この結果は227にとってもセレナにとっても大きい。
幸いなのは舞獅子姫は融合召喚でしか特殊召喚不可の為、コントロールが奪われない事か。
そしてがら空きの所へ――。
「舞猫姫でダイレクトアタック!」
舞猫姫の踵落としが突き刺さる。
セレナ LP3300→3250→2050
「ぐあっ!」
「最後だ!『ゴヨウ・ガーディアン』でダイレクトアタック!」
「させん!アクションマジック、『回避』!」
「逃れたか……ターンエンドだ!」
デュエルチェイサー227 LP600
フィールド『ゴヨウ・エンペラー』(攻撃表示)『ゴヨウ・ガーディアン』(攻撃表示)『ゴヨウ・プレデター』(攻撃表示)『月光舞豹姫』(攻撃表示)『月光舞猫姫』(攻撃表示)
『補給部隊』『補充部隊』『連合軍』セット1
手札0
「私のターン、ドロー!私は墓地にある2枚の『置換融合』の効果発動!このカードを除外し、墓地の『月光舞獅子姫』をエクストラデッキに戻してドローする!」
セレナ 手札4→5→6
「そしてペンデュラム召喚!『月光狼』!『月光虎』!『月光紅狐』!」
月光狼 攻撃力2000
月光虎 攻撃力1200
月光紅狐 攻撃力1800
「魔法カード、『死者への手向け』!手札を捨て、『ゴヨウ・エンペラー』を破壊!」
『ゴヨウ・エンペラー』が破壊された事で、彼のフィールドへ移った2対の『ムーンライト』モンスターに異常が起こる。
「『ゴヨウ・エンペラー』がフィールドを離れた事により、モンスターのコントロールは元々の持ち主へと戻る……!『補給部隊』の効果でドロー!」
デュエルチェイサー227 手札1→2
ゴヨウ・ガーディアン 攻撃力3400→3200
ゴヨウ・プレデター 攻撃力3000→2800
「カードを2枚セット、バトル!」
「アクションマジック、『大脱出』!バトルを終了!」
「チ、メインフェイズ2、私は手札の『月光黒羊』を捨て、デッキから『融合』をサーチ!発動!フィールドの『月光舞豹姫』と『月光狼』、『月光狼』で融合!融合召喚!『月光舞獅子姫』!!」
月光舞獅子姫 攻撃力3500
セレナの想いに応え、再び彼女の切り札がフィールドに帰還する。威風堂々、凛々しい姿をした獣の女王。重い素材に関わらず、このカードを何度も呼び出せるのがペンデュラムの利点であり、彼女の腕前だ。
「ターンエンド」
セレナ LP2050
フィールド『月光舞獅子姫』(攻撃表示)『月光舞猫姫』(攻撃表示)『月光紅狐』(攻撃表示)
セット2
Pゾーン『涅槃の超魔導剣士』『月光狼』
手札0
「俺のターン、ドロー!モンスターをセット、バトル!『ゴヨウ・ガーディアン』で『舞猫姫』へ攻撃!」
「罠発動!『デストラクト・ポーション』!『月光紅狐』を破壊し、その攻撃力分LPを回復!更に紅狐が効果で墓地に送られた事で、『ゴヨウ・ガーディアン』の攻撃力をターン終了時まで0にする!」
セレナ LP2050→3850
ゴヨウ・ガーディアン 攻撃力3200→0
「だがモンスターが減った事でバトルは巻き戻る。『ゴヨウ・プレデター』で舞猫姫へ攻撃!墓地の『ブレイクスルー・スキル』を除外し、舞猫姫の効果を奪う!」
セレナ LP3850→3450
「効果でコントロールを奪う!」
月光舞猫姫 守備力2000
「カードを1枚セット、ターンエンドだ」
デュエルチェイサー227 LP600
フィールド『ゴヨウ・ガーディアン』(攻撃表示)『ゴヨウ・プレデター』(攻撃表示)『月光舞猫姫』(攻撃表示)セットモンスター
『補給部隊』『補充部隊』『連合軍』セット2
手札0
「私のターン、ドロー!ペンデュラム召喚!『月光狼』!『月光虎』!」
月光狼 攻撃力2000
月光虎 守備力800
「カードを1枚セットし、バトルに入る!『月光狼』がモンスターゾーンに存在する限り、私の『ムーンライト』モンスターは貫通効果を得る!『月光舞獅子姫』で舞猫姫へ攻撃!」
「罠発動!『レインボー・ライフ』!アクションマジックを捨て、このターンのダメージを回復に変換する!」
デュエルチェイサー227 LP600→2100
227の周囲に虹色のバリアが発生し、降り注ぐ火花が恵みの雨と化す。こちらもセレナに負けじとLPを回復して来た。面倒なものだ。少しでも早く倒して後続のユーゴを楽にさせたいと言うのに。
「だが舞獅子姫が攻撃したダメージステップ終了時、貴様のフィールドに特殊召喚されたモンスターを全て破壊!」
「『補給部隊』の効果でドロー!」
デュエルチェイサー227 手札0→1
「セットモンスターに追撃、メインフェイズ2、『月光狼』のペンデュラム効果を使い、墓地の舞豹姫、舞猫姫、黒羊を除外し、融合!融合召喚!『月光舞獅子姫』!!」
月光舞獅子姫 攻撃力3500
「ターンエンドだ」
セレナ LP3450
フィールド『月光舞獅子姫』(攻撃表示)×2『月光狼』(攻撃表示)『月光虎』(守備表示)
セット2
Pゾーン『涅槃の超魔導剣士』『月光狼』
手札0
「俺のターン、ドロー!カードを1枚セット、ターンエンドだ!」
デュエルチェイサー227 LP2100
フィールド
『補給部隊』『補充部隊』『連合軍』セット2
手札1
「私のターン、ドロー!万策尽きたか?バトル!『月光舞獅子姫』でダイレクトアタック!」
「罠発動!『リジェクト・リボーン』!バトルフェイズを終了し、墓地の『ゴヨウ・ガーディアン』と『トラパート』を特殊召喚!」
ゴヨウ・ガーディアン 攻撃力2800→3200
トラパート 守備力600
「しつこい奴だ……!ターンエンド!」
セレナ LP3450
フィールド『月光舞獅子姫』(攻撃表示)×2『月光狼』(攻撃表示)『月光虎』(守備表示)
セット2
Pゾーン『涅槃の超魔導剣士』『月光狼』
手札1
「俺のターン、ドロー!レベル6の『ゴヨウ・ガーディアン』に、レベル2の『トラパート』をチューニング!お上の威光の前にひれ伏すが良い!シンクロ召喚!『ゴヨウ・キング』!!」
ゴヨウ・キング 攻撃力2800→3000
シンクロ召喚、『ゴヨウ・ガーディアン』が更なる進化を遂げ、現れたのは『ゴヨウ・エンペラー』と双璧を為す、『ゴヨウ』モンスター達を統べる王。
そして――。
「魔法カード、『ミラクルシンクロフュージョン』!墓地の『ゴヨウ・プレデター』と『ゴヨウ・ディフェンダー』を除外し、融合!融合召喚!『ゴヨウ・エンペラー』!!」
ゴヨウ・エンペラー 攻撃力3300→3700
ゴヨウ・キング 攻撃力3000→3200
再びフィールドに現れる『ゴヨウ』の皇帝。切り札級のモンスター2体が揃った事により、セレナが舌打ちを鳴らして227のフィールドを睨む。攻撃力も『連合軍』の効果でセレナのモンスターを超えている。
「バトル!『ゴヨウ・キング』で『月光舞獅子姫』へ攻撃!この瞬間、『ゴヨウ・キング』の効果で攻撃力を400アップ!」
ゴヨウ・キング 攻撃力3200→3600
セレナ LP3450→3350
『ゴヨウ・キング』が腰元の鞘から美しい波紋を広げる日本刀を引き抜き、十手との二刀流で舞獅子姫を相手に果敢に攻める。舞獅子姫も妖しく閃く鶴来を振るって応戦するも、縄付き十手を投擲され、剣をグルグルと絡めてそのまま取り上げられ、隙を突かれて切り裂かれる。
「『ゴヨウ・キング』の効果発動!このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し、墓地に送った場合、相手モンスター1体を選んでコントロールを得る!この効果は対象を取らない効果だ!さぁ、いただこうか!『月光舞獅子姫』!」
「ッ、対象を取らない、コントロール奪取……!」
更に『ゴヨウ・キング』が十手をもう1体の『月光舞獅子姫』に投げつけ、縄で拘束して自軍に引き込む。舞獅子姫は隼の『RRーアルティメット・ファルコン』と違い、完全な効果耐性を持っていない。あくまで対象にならない効果と効果破壊耐性のみ。それでも充分強力なのだが――今はこうして僅かな隙を突かれ、最悪とも言って良い状況を作り出した。切り札である舞獅子姫を奪われたのだ。頼もしいカードが敵に回るとそれだけでも恐ろしい。
「舞獅子姫で『月光狼』へ攻撃!」
「速攻魔法、『異次元からの埋葬』!舞豹豹と彩雛、蒼猫を除外ゾーンから墓地に戻す!」
セレナ LP3350→1850
「ぐっ――!」
「舞獅子姫の効果でお前の特殊召喚されたモンスターを全て破壊!」
「『月光虎』の効果で墓地の、『ムーンライト』モンスター、蒼猫を蘇生!」
月光蒼猫 守備力1200
「チッ、舞獅子姫で2回目の攻撃!」
「蒼猫の効果で3体目をリクルート!」
「『ゴヨウ・エンペラー』の効果で蒼猫のコントロールを得る!」
月光蒼猫 攻撃力1600
月光蒼猫 守備力800
「そして蒼猫の効果で『月光舞獅子姫』の攻撃力を倍に!」
月光舞獅子姫 攻撃力3500→7000
「と言ってももう攻撃は出来んがな」
自身の切り札の連続攻撃を受け、見る見る内に戦力を削ぎ取られるセレナ。『月光蒼猫』と『月光虎』のお蔭で何とか凌いではいるが、どこまでもつか。
「蒼猫で蒼猫に攻撃!」
「蒼猫の効果で『月光狼』をリクルート!」
「『ゴヨウ・エンペラー』の効果ぁ!」
月光蒼猫 攻撃力1600
月光狼 守備力1800
「『ゴヨウ・エンペラー』で『月光狼』へ攻撃!」
「うっ……!」
「そしてこいつの攻撃が残っている。やれ、蒼猫!」
セレナ LP1850→250
「ぐっ、うっ――!」
強力な飛び蹴りが炸裂し、セレナのLPが大きく削り取られる。残るLPは3桁、このままでは少々不味い。だが一体、切り札級3体を相手にどうすればいいのか。
「ターンエンドだ!」
デュエルチェイサー227 LP2100
フィールド『ゴヨウ・エンペラー』(攻撃表示)『ゴヨウ・キング』(攻撃表示)『月光舞獅子姫』(攻撃表示)『月光蒼猫』(攻撃表示)×2
『補給部隊』『補充部隊』『連合軍』セット1
手札0
「私のターン、ドロー!魔法カード、『金満な壺』!墓地、エクストラデッキのペンデュラムモンスター3体をデッキに戻し、2枚ドロー!」
セレナ 手札1→3
「魔法カード、『ハーピィの羽帚』!お前の魔法、罠カードを破壊!これでバックはがら空き!」
「だがそれでも俺の戦力が上だ!」
「それはどうかな?」
「何っ!?」
勝ち誇る227に対し、セレナがニヤリと不敵な笑みを浮かべる。馬鹿な――この状況を覆すカードが、あると言うのかと227が怯む。
「お前は自分で私にチャンスを与えてしまったんだ!ペンデュラム召喚!『月光狼』!『月光虎』!」
月光狼 守備力1800
月光虎 守備力800
「速攻魔法、『死者への供物』!次のドローフェイズをスキップする代わりに、『ゴヨウ・エンペラー』を破壊!」
これがセレナの見いだした活路。最後の一手。確かに、コントロールを奪う『ゴヨウ』モンスターは強力だが、この『ゴヨウ・エンペラー』には大きなデメリットがある。そう、自身がフィールドを離れた場合、全てのモンスターのコントロールを、元々の持ち主に戻すと言う効果が。
「しまった――!」
ゴヨウ・キング 攻撃力3200→3000
これで、セレナのフィールドには2体の蒼猫と切り札である舞獅子姫が戻って来た。充分と言える戦力だ。
「バトル!舞獅子姫で、『ゴヨウ・キング』へ攻撃!」
デュエルチェイサー227 LP2100→1800
先程のお返しとばかりに舞獅子姫が鬣を逆立たせて地を蹴り、ひびを走らせ一瞬にして『ゴヨウ・キング』に肉薄、勢いのままに剣を『ゴヨウ・キング』に叩きつける。しかし『ゴヨウ・キング』も何とか反応し、日本刀と十手を重ね、ガキンと甲高い音を響かせて防ぐ。飛び散る火花、ギチギチと互いに押し引きを繰り返す中、舞獅子姫はじれったさを覚えたのか、舌打ちを鳴らしてその場で一回転。『ゴヨウ・キング』の脇腹に回し蹴りを食らわせ、怯んだ隙に鶴来を横薙ぎに一閃、『ゴヨウ・キング』を切り裂き、スッキリとした顔で剣についた血を振るう。
「くっ!」
「これでとどめだ!『月光舞獅子姫』で、ダイレクトアタック!」
デュエルチェイサー227 LP1800→0
剣が三日月の軌跡を描き、227のLPを削り取る。勝者、セレナ――。歓声が一際大きく降り注ぐ中、LPが0を刻む音を耳に入れ、227はデュエル最初、あの少年が呟いた一声に思いを馳せる。
(俺は――何の為に、セキュリティに、入ったんだろう……)
答えは最後まで、出る事はなかった。
『ついにセカンドホイーラーを倒し、王手をかけるチームランサーズ!チームセキュリティは後がない状況だぁーっ!』
そう、これでチームセキュリティの残るDーホイーラーは1人のみ。伊集院 セクト。元チームサティスファクションの1人にして、決闘竜を操るデュエリスト。相手にとって不足無し、セレナは鼻息をふんすと鳴らし、後方より来る彼に視線を移す。
「……む……」
そこにいたのは今までとは違い、漆黒の甲冑を纏い、黒のDーホイールに搭乗、最高に高めたフィールで、最強の力を手にしたセクトの姿。
「ヒヒヒ、ヒャハハハハハッ!まさか227は兎も角、セルゲイが倒されるとはなぁ!だがま、所詮アイツ等は俺に比べりゃムシケラも同然!良い気になってんじゃねぇぞ、その鼻っ柱へし折って、ぺしゃんこに踏み潰してやんよぉ!」
ゴウッ、暗黒のオーラを身体から噴出し、血走った眼でセレナを睨むセクト。凄まじいフィールだ。確かにこの男、あのセルゲイをも超えた実力を手にしたように見える。大粒の汗を額から流すセレナ。だが、彼女とて負ける気はない。せめて一太刀浴びせ、自身の切り札と遊矢の残したペンデュラムはユーゴに託して見せる。
「俺様のターン、ドロー!魔法カード、『ナイト・ショット』!セットカードを破壊!そして『地獄毒蛾』を召喚!」
地獄毒蛾 攻撃力1300
「効果発動!手札の同名カードを特殊召喚!」
地獄毒蛾 攻撃力1300
「更にフィールドに昆虫族モンスターが2体以上存在する事で、手札の『地獄針幼虫』を特殊召喚!」
地獄針幼虫 守備力600
「チューナーか……!」
これでレベル3のモンスターが2体と、レベル2のチューナーが1体、合計レベルは8。『地獄針幼虫』が闇属性である事も含めれば、この後登場するモンスターと、自ずと答えが出て来る。
「さぁ、行くぜぇ!レベル3の『地獄毒蛾』2体に、レベル2の『地獄針幼虫』をチューニング!魔神を束ねし蠅の王よ!ムシズの走る世界に陰りを!シンクロ召喚!『魔王龍ベエルゼ』!!」
魔王龍ベエルゼ 攻撃力3000
現れたのは蠅を思わせる胸部に、両肩から赤黒の竜を伸ばし、悲鳴を上げる女が磔となった異形のモンスター。決闘竜の1体にして、圧倒的な力を誇る暗黒の竜。これこそが伊集院 セクトのエースモンスター。攻撃力こそ舞獅子姫に劣るが――このモンスターは、舞獅子姫を正面から打ち倒す能力がある。
「確かにお前の舞獅子姫は強力なモンスターだが――生憎、俺様のベエルゼとはとことん相性が悪かったようだなぁ?」
「ッ!」
「ま、そのモンスターは後だ。俺様はカードを1枚セット、バトルだ!ベエルゼで『月光蒼猫』へ攻撃!魔王の赦肉祭!」
セレナ LP250→0
「ぐ、あぁぁぁぁっ!?」
ベエルゼの双頭に暗黒の瘴気が集まり、ブレスとして放たれ、セレナを呑み込む。0を刻むLP、これで互いにラストホイーラー同士の対決にまで漕ぎ着けた。
黒き竜の使い手、伊集院 セクトと、白き竜の使い手、ユーゴ。親友にして、敵同士の2人、最早断たれたとも言って良い絆を持つ2人の対決だ。鬼柳の為、セクトの為、チームの為、そして何より、自分自身の為に。ユーゴは幼馴染みと共に作り上げたDーホイールを疾駆させ、セクトに挑む。
「セクトォォォォォッ!!」
「来たか、ユーゴ……!」
興奮気味に猛々しく吠え、凄まじい速度で自身の背を追うユーゴに対し、ニヤリと敵意を含んだ笑みを浮かべ、彼を見下すセクト。
「テメェをぶっ倒して、正気に戻してやるぜ!」
「正気ぃ?俺は今だって正気だぜ?これが本当の俺様だ!つーかよぉ、今聞き捨てならねぇ事を言いやがったか?俺をぶっ倒すだの何だの……ふざけてんじゃねぇぞムシケラがぁっ!!力の差がまだ分からねぇのか!?俺様を見下ろしてんじゃねぇぞ!丁度良い、鬼柳共々、テメェは気に食わなかったんだ……当たり前のように俺を下に見るお前がなぁッ!」
「上等だぜ……小難しい事並べるよりも、そっちの方が分かりやすい、充分だよなぁ!ケンカの理由なんざ、気に食わねぇってだけでよぉっ!」
互いに火がついたように闘争心を剥き出しにし、睨み合う。元よりケンカっ早く短気なユーゴだ。遊矢と同じような真似をする気はない。彼は彼らしく――男は拳で語る。その方が単純で分かりやすいではないか。
「「ライディングデュエル、アクセラレーション!!」」
2つのDーホイールがサーキットで交差する中、ユーゴはデッキより5枚のカードを引き抜く。