遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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第145話 人々は彼等を

「オレのターン、ドロー!」

 

続くコナミVS白コナミ。月下の魔王城と化したサーキットにて続くライディングデュエルでの死闘。状況はコナミの圧倒的――不利。

フィールドのカードは『セイヴァー・スター・ドラゴン』の効果で草の根絶やさず全滅。一方の白コナミは『スターダスト・ドラゴン』の進化形、アクセルシンクロモンスター、『シューティング・スター・ドラゴン』と『バスター・モード』へと変わった『スターダスト・ドラゴン/バスター』と言うとんでもない布陣を構えている。

ここから手札2枚だけでどうするかが問題だ。相手フィールドには『/バスター』がいる為、発動しても通るのは1枚だけ。つまりどちらも『/バスター』の効果を使わせるようなカードでなければならない。

 

「魔法カード、『貪欲な壺』を発動!」

 

「させん!『/バスター』をリリースし、効果を無効!」

 

「2枚目だ。『貪欲な壺』を発動!」

 

「チッ!」

 

2枚連続で『貪欲な壺』。成程これならば『/バスター』の効果を使っても結果は変わらなかったか。それとも1枚でも無効に出来た事を喜ぶべきか。

 

「墓地の『オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン』、『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』、『オッドアイズ・アブソリュート・ドラゴン』、『No.39希望皇ホープ』、『E・HEROブレイズマン』をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

ダニエル 手札1→3

 

「魔法カード、『死者蘇生』を発動!俺が呼び出すのは――『セイヴァー・スター・ドラゴン』!」

 

セイヴァー・スター・ドラゴン 攻撃力3800

 

「ッ!やってくれる……!」

 

コナミが発動した『死者蘇生』により、白コナミの墓地に眠る『セイヴァー・スター・ドラゴン』が浮上する。やはり『スターダスト』系列は奪われる運命から逃れられないと言う事か。目には目を、歯には歯を。思いもよらぬ攻略を見せるコナミ。

 

「更に『刻剣の魔術師』を召喚!」

 

刻剣の魔術師 攻撃力1400

 

「『セイヴァー・スター・ドラゴン』の効果により、『シューティング・スター・ドラゴン』の効果を奪う!バトル!『セイヴァー・スター・ドラゴン』で『シューティング・スター・ドラゴン』へ攻撃!」

 

夢の対決、救世の力を継ぐ『セイヴァー・スター・ドラゴン』と未来を想う力の結晶である『シューティング・スター・ドラゴン』が向かい合い、夜空に白い軌跡を描いてぶつかり合う。

走る流星、『シューティング・スター・ドラゴン』が5体に分裂、怒濤の連続攻撃で応戦するも――『セイヴァー・スター・ドラゴン』が自身を眩く発光させてオーロラを消し去り、矢の如く一直線に『シューティング・スター・ドラゴン』に突き進んで貫く。

軍配が上がったのは救世の竜だ。

 

「『刻剣の魔術師』で『カードガンナー』へ攻撃!」

 

「1枚ドロー!」

 

白コナミ 手札2→3

 

続く刻剣の一閃により、白コナミのモンスターが全滅。これで互角、勝負は分からなくなってきた。が――。

 

「だが、『セイヴァー・スター・ドラゴン』はエクストラデッキに、『/バスター』はフィールドに戻る……!」

 

そう、エンドフェイズ、日が沈み、月が昇るように、入れ替わり様に『セイヴァー・スター・ドラゴン』は消え、『スターダスト・ドラゴン/バスター』が戻って来る。そうなれば有利なのは白コナミの方だ。

 

「忘れたのか?刻剣の効果を!」

 

「……?刻剣は自身と他のモンスターを除外する……まさか――っ!?」

 

「そう、効果で除外出来るのは、敵味方関係無く、そしてコントロールが奪われたモンスターがフィールドに戻る際、その前の時点のコントローラーの下だ!」

 

刻剣と『セイヴァー・スター・ドラゴン』、自身と相手のカードを使ったまさかのコンボが炸裂する。これで『セイヴァー・スター・ドラゴン』は完全にコナミの戦力となった。切り崩すのは面倒そうだ。

 

「ターンエンドだ」

 

スターダスト・ドラゴン/バスター 攻撃力3000

 

ダニエル LP1400

フィールド

手札1

 

「俺のターン、ドロー!くく……良いぞ……!そうでなくちゃ面白くない!だが良いのか?フィールドがお留守だぞ?」

 

「さて、どうかな?」

 

そう、『セイヴァー・スター・ドラゴン』を御したのは良いも、そのお蔭でコナミのフィールドはがら空き。モンスターどころか身を守るバックも存在しない。対する白コナミには『/バスター』と言う強力なモンスターが存在している。相変わらず不利なのは火を見るよりも明らかだ。

 

「フン、終わってくれるなよ?魔法カード、『マジック・プランター』!『ステイ・フォース』をコストに2枚ドロー!」

 

白コナミ 手札0→2

 

「バトル!『/バスター』でダイレクトアタック!」

 

「墓地の『虹クリボー』を蘇生!」

 

虹クリボー 守備力100

 

コナミの危機に駆けつけたのは角を持った1頭身の謎生物。『クリボー』系列のモンスターだ。現れたは良いも、直ぐ様『/バスター』に破壊される。

 

「耐えたか……モンスターとカードをセット、ターンエンドだ」

 

白コナミ LP3000

LP『スターダスト・ドラゴン/バスター』(攻撃表示)セットモンスター

セット1

手札3

 

「オレのターン、ドロー!フィールドに『セイヴァー・スター・ドラゴン』が戻る。速攻魔法、『リロード』。手札を交換。バトル!『セイヴァー・スター・ドラゴン』で『/バスター』へ攻撃!」

 

白コナミ LP3000→2200

 

『シューティング・スター・ドラゴン』の次は『/バスター』を、再び『スターダスト』の進化体が向かい合い、2つのほうき星が夜空で激突。火花を散らす。しかしやはり、救世の力を得た『セイヴァー・スター・ドラゴン』。アクセルシンクロモンスターが敵わなかった存在に『/バスター』が敵う筈も無く、胸を貫かれて砕け、夜空で星屑が散り、月光を浴びて雪のように煌々と輝く。

これで二大エースを撃破。コナミは『セイヴァー・スター・ドラゴン』を保持したままとなり、一気にペースを掴んだ。

 

「『/バスター』の効果で、『スターダスト・ドラゴン』を蘇生!!」

 

スターダスト・ドラゴン 攻撃力2500

 

「メインフェイズ2、『セイヴァー・スター・ドラゴン』と『刻剣の魔術師』を除外。カードを1枚セットしてターンエンドだ」

 

「罠発動。『貪欲な瓶』墓地のカードを5枚デッキに戻し、ドロー」

 

白コナミ 手札3→4

 

ダニエル LP1400

フィールド

セット1

手札0

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『手札抹殺』。手札を交換。バトル!『スターダスト・ドラゴン』でダイレクトアタック!シューティング・ソニック!」

 

「罠発動!『次元幽閉』!『スターダスト』を除外!」

 

「チッ、速攻魔法、『神秘の中華なべ』!『スターダスト』をリリースし、攻撃力をLPに変換!」

 

白コナミ LP2200→4700

 

「カードを2枚セットし、ターンエンドだ」

 

白コナミ LP4700

フィールド

セット2

手札1

 

「オレのターン、ドロー!魔法カード、『ペンデュラム・ホルト』!2枚ドロー!」

 

ダニエル 手札0→2

 

「バトルだ!『セイヴァー・スター・ドラゴン』でダイレクトアタック!」

 

「罠発動!『聖なるバリアーミラーフォースー』!攻撃表示モンスターを全て破壊!」

 

「チッ、やらせん!『セイヴァー・スター・ドラゴン』をリリースし、無効にし、相手フィールドのカードを全て破壊!」

 

カッ、と白コナミのフィールドが輝き、攻撃を反射して『セイヴァー・スター・ドラゴン』を討とうとするも、その光を吸収した『セイヴァー・スター・ドラゴン』が白コナミのフィールドを呑み込む。無効には出来たが、『セイヴァー・スター・ドラゴン』と言う戦力を失ってしまった。

 

「そして破壊された『運命の発掘』の効果で墓地のこのカードの数だけドローする!墓地には2枚、よって2枚ドロー!」

 

白コナミ 手札1→3

 

更に『セイヴァー・スター・ドラゴン』の効果を逆利用してのドロー。やはり持ち主。自身のカードの特性を良く知っている。

 

「刻剣でダイレクトアタック!」

 

「手札の『バトル・フェーダー』を特殊召喚し、バトルフェイズを終了する!」

 

バトル・フェーダー 守備力0

 

現れたのは鐘を鳴らす小さな悪魔。『速攻のかかし』と共に手札誘発での攻撃中断を兼ねる優秀なモンスターだ。

 

「カードを2枚セットしてターンエンドだ」

 

ダニエル LP1400

フィールド『刻剣の魔術師』(攻撃表示)

セット2

手札0

 

「俺のターン、ドロー!『ジャンク・シンクロン』を召喚!」

 

ジャンク・シンクロン 攻撃力1300

 

現れたのは所々へこんだオレンジ色のボディを持ち、背にバックパクを負ったモンスターだ。彼のデッキでも代表的なチューナーである。

 

「召喚時、墓地のレベル2以下のモンスター、『ドッペル・ウォリアー』を蘇生!」

 

ドッペル・ウォリアー 守備力800

 

続けて登場したのは光線銃を手にした黒い戦士。何故かブレるように2体に見えるモンスターだ。

 

「レベル2の『ドッペル・ウォリアー』に、レベル3の『ジャンク・シンクロン』をチューニング!集いし星が新たな力を呼び起こす。光差す道となれ!シンクロ召喚!出でよ、『ジャンク・ウォリアー』!!」

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300

 

シンクロ召喚、白いマフラーを靡かせ、青いボディを煌めかせ1回転ターン、拳を突き出したのは戦士型のシンクロモンスターだ。コナミと白コナミ、最初の決戦で、コナミに引導を渡そうとしたカードだ。否が応でも緊張してしまう。

 

「シンクロ召喚時、レベル2以下のモンスターの攻撃力を吸収!それにチェーンし、『ドッペル・ウォリアー』は2体の『ドッペル・トークン』を生み出す!チェーンを処理、『ドッペル・トークン』の攻撃力を『ジャンク・ウォリアー』へ!パワー・オブ・フェローズ!」

 

ドッペル・トークン 攻撃力400×2

 

ジャンク・ウォリアー 攻撃力2300→3100

 

『ドッペル・トークン』より光が立ち上ぼり、『ジャンク・ウォリアー』に集約して力を与える。仲間との絆を受けて強くなる。小さな者でも力を合わせれば強い者を打ち倒せる事を体現した効果だ。

 

「バトル!『ジャンク・ウォリアー』で刻剣へ攻撃!」

 

「罠発動!『マジカルシルクハット』!」

 

「左のシルクハットへ攻撃だ!『スクラップ・フィスト』!」

 

「残念、外れだ!」

 

『ジャンク・ウォリアー』の拳がシルクハットを貫くも、虚しく外れる。しかし、刻剣の守備力、及びシルクハットの守備力は0。『ドッペル・トークン』での対処可能だ。

 

「2体の『ドッペル・トークン』で残るシルクハットを破壊!」

 

「『妖刀竹光』の効果で『黄金色の竹光』をサーチ!」

 

「カードを2枚セット、ターンエンドだ」

 

「罠発動!『転生の予言』!墓地から『貪欲な瓶』を2枚回収」

 

白コナミ LP4700

フィールド『ジャンク・ウォリアー』(攻撃表示)『ドッペル・トークン』(攻撃表示)×2『バトル・フェーダー』(守備表示)

セット2

手札0

 

「オレのターン、ドロー!魔法カード、『金満の壺』!エクストラデッキの『竜穴の魔術師』、『刻剣の魔術師』、『貴竜の魔術師』をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

ダニエル 手札1→3

 

「後少し、か――カードをセット、魔法カード、『命削りの宝札』を発動!3枚ドロー!」

 

ダニエル 手札0→3

 

「魔法カード、『アメイジング・ペンデュラム』!エクストラデッキの『竜穴の魔術師』と『竜脈の魔術師』を回収、セッティング!カードを2枚セット、ターンエンドだ!」

 

ダニエル LP1400

フィールド

セット4

Pゾーン『竜穴の魔術師』『竜脈の魔術師』

手札0

 

「俺のターン、ドロー!バトルだ!『ジャンク・ウォリアー』でダイレクトアタック!」

 

「罠発動!『聖なるバリアーミラーフォースー』!」

 

『ジャンク・ウォリアー』が再び攻撃を仕掛け、拳を突き出し、バーニアから火炎を吹いてコナミへと襲いかかる。しかしそれを見越していたコナミがセットカードをオープン、発生したバリアが衝撃を吸収、『ジャンク・ウォリアー』の眼前で放射、『ドッペル・トークン』ごと呑み込む。

 

「チッ、『ドッペル・トークン』を攻撃参加させたのは間違いだったか……!カードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

「罠発動!『貪欲な瓶』!『アメイジング・ペンデュラム』、『金満な壺』、『貪欲な壺』、『転生の予言』、『命削りの宝札』を回収、ドロー!」

 

ダニエル 手札0→1

 

白コナミ LP4700

フィールド『バトル・フェーダー』(守備表示)

セット3

手札0

 

「オレのターン、ドロー!罠発動!『貪欲な瓶』!5枚のカードを回収し、ドロー!」

 

ダニエル 手札2→3

 

「ペンデュラム召喚!『刻剣の魔術師』!『慧眼の魔術師』!『相生の魔術師』!『賤竜の魔術師』!『ジャンク・コレクター』!」

 

刻剣の魔術師 攻撃力1400

 

慧眼の魔術師 守備力1500

 

相生の魔術師 守備力1500

 

賤竜の魔術師 攻撃力2100

 

ジャンク・コレクター 守備力2200

 

「『ジャンク・コレクター』……!罠発動!『深黒の落とし穴』!レベル5以上の賤竜を除外!!」

 

「そう来たか。オレは『ジャンク・コレクター』と墓地の『エレメンタルバースト』を除外し、効果をコピー!」

 

「チッ、罠発動!『貪欲な瓶』!『ダメージ・ダイエット』!墓地の『スターダスト・ドラゴン』、『シューティング・スター・ドラゴン』、『カードガンナー』、2枚の『運命の発掘』を回収してドロー!このターン受けるダメージを半分にする!」

 

白コナミ 手札0→1

 

『ジャンク・コレクター』が光に包まれ弾け飛び、中より災厄が降り注ぐ。炎、水、風、地。4つのエレメントが炸裂、白コナミのフィールドを呑み込む。

 

「装備魔法、『妖刀竹光』を刻剣に装備、リバースカード、オープン!『黄金色の竹光』!2枚ドロー!もう1枚だ!」

 

ダニエル 手札1→3→4

 

「『ジェット・シンクロン』を召喚!」

 

ジェット・シンクロン 攻撃力500

 

「レベル4の『相生の魔術師』に、レベル1の『ジェット・シンクロン』をチューニング!シンクロ召喚!『ジェット・ウォリアー』!」

 

ジェット・ウォリアー 攻撃力2100

 

「ここで『ジェット・ウォリアー』だと?」

 

「更にオレは手札を1枚捨てる事で、墓地の『ジェット・シンクロン』を蘇生!」

 

ジェット・シンクロン 守備力0

 

「レベル4の『慧眼の魔術師』に、レベル1の『ジェット・シンクロン』をチューニング!シンクロ召喚!『アクセル・シンクロン』!」

 

アクセル・シンクロン 守備力2000

 

『ジェット・ウォリアー』の出現の後、フィールドに登場したのは赤と白、紅白のボディを持つD-ホイールを模したモンスターだ。『フォーミュラ・シンクロン』と同じシンクロチューナー。と言う事は――。

 

「会得していたか……!」

 

「往くぞ!クリアマインド!」

 

カッ、コナミが帽子の奥の眼を輝かせ、疾風を纏い、グラファ号Rの受ける空気抵抗を少しずつずらしていく。まるで身体がブレ、分身しているような光景。そして――。

 

「レベル5の『ジェット・ウォリアー』に、レベル5の『アクセル・シンクロン』をチューニング!星流れる痕に紡がれる全ての想い…!絆と共にこの世界を満たさん!アクセルシンクロ!」

 

『まっ、また消えたぁーっ!?』

 

フッ、とコナミとD-ホイールの姿が空気に溶けるように消え、またも会場がどよめく。そして次の瞬間、白コナミの背後よりコナミが現れ、双翼の下を潜り抜け、黄金に輝く竜が連れられる。

『スターダスト』に似た流線状のボディは見るだけでその進化形態なのだと確信させられる。これが、コナミのアクセルシンクロモンスター。そして、現状彼が誇る最強のモンスターだ。

 

「光来せよ!『真閃光竜スターダスト・クロニクル』!」

 

真閃光竜スターダスト・クロニクル 攻撃力3000

 

「黄金の『スターダスト』……それがお前のアクセルシンクロか……!」

 

「そうだ、これがオレの、オレ達の絆の証!」

 

胸を張り、誇らしそうに白コナミに言い放つコナミ。そう、コナミにとってのこのカードは過去と今、多くの仲間達との絆があったからこそ生まれたカードであり、未来を切り開くシンクロモンスター。

 

「絆……」

 

「装備魔法、『白銀の翼』をクロニクルに装備!まだ行くぞ!永続魔法、『魂を吸う竹光』!『妖刀竹光』を装備した刻剣に対し発動!」

 

「ッ、そのカードは――!?」

 

コナミが1枚のカードをデュエルディスクに叩きつけた瞬間、刻剣が握る妖刀から夥しい量の瘴気が解き放たれ、取り憑いた魂が蠢き、呻く。

このカードの発動を見て、白コナミが帽子の奥の眼を見開いて驚愕する。そう、このカードはコナミが『ジャンク・コレクター』と『エレメンタルバースト』の次に持つ奥の手。それが今、白コナミを倒す為に発動される。

 

「『マジカルシルクハット』、『エレメンタルバースト』、『ジャンク・コレクター』、『竹光』のターボ。全て、この為か……!今この時の為の布石か!」

 

「そうだ!全ては今に集束する!バトルだ!『真閃光竜スターダスト・クロニクル』で、ダイレクトアタック!流星煌閃撃ッ!」

 

「ぐっ、おぉぉぉぉっ!?」

 

白コナミ LP4700→3200

 

『真閃光竜スターダスト・クロニクル』が黄金の体躯を震わせ、光を纏って白コナミへと特攻、貫き、D-ホイールと合体した白コナミが大きく回転しながらガタガタと揺れる。まるで胴体がもげるかと思うような思い一撃。白コナミが息を切らす中、更なる追撃が襲いかかる。

フ、と機体を持ち直す白コナミの頭上に影が差し、ハッと見上げればそこにいたのは、鍵のような形状をした剣と瘴気を放つ妖刀、二刀流の少年『魔術師』だ。瞳より鈍い赤の光を放ち、二刀を振り上げ――。

 

「刻剣で、ダイレクトアタック!」

 

白コナミを切り裂く。

 

「ぬっ、がふっ……!」

 

白コナミ LP3200→2500

 

連続攻撃を受け、白コナミのLPが大きく削り取られる。それも充分にピンチだが、何よりも彼を追い込むのは妖刀が切り裂いた、傷跡の呪い。

 

「『魂を吸う竹光』により選択されたモンスターが相手に戦闘ダメージを与えた事で、次の相手のドローフェイズをスキップする!」

 

そう、これこそが恐るべき『竹光』の効果。相手のドローを、即ち希望を砕くロック効果。同じドローロック効果を持ったカードが禁止になっている事からもその強力さと凶悪さが分かるだろう。

 

「お前がたった1枚のドローで全てを覆すなら、オレはそのドローを封じるまでだ!」

 

「成程な……くく、面白い……!」

 

ニヤリ、圧倒的な危機を前にして、白コナミは笑う。LPは風前の灯火。ふいは全滅。ドローも封じられたこの状況で、だ。勝つ手無しと思われるこの状況でだ。彼は――1枚のカードを翳し、邪悪な笑みを浮かべる。

 

「1ターン、遅かったな」

 

「ッ!」

 

それは『貪欲な瓶』で引いた、たった1枚の手札。彼は、この1枚だけで全てを覆すと言うのだ。

 

「いやはや、恐れ入る。このカードがなければ、俺は確実に勝機を失っていただろう」

 

「――ッ、カードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

ダニエル LP1400

フィールド『真閃光竜スターダスト・クロニクル』(攻撃表示)『刻剣の魔術師』(攻撃表示)

『妖刀竹光』『魂を吸う竹光』『白銀の翼』セット1

Pゾーン『竜穴の魔術師』『竜脈の魔術師』

手札0

 

デュエルモンスターズは、たった1枚のカードが運命を別つ。大袈裟と言えるかもしれないが、今しかと、この場の2人はそれを感じ取っていた。

 

「俺のターン、クク、ドローフェイズがスキップされる。俺は魔法カード、『終わりの始まり』!墓地の闇属性モンスター5体を除外し、3枚ドロー!」

 

白コナミ 手札0→3

 

一気に手札を勝ち取る白コナミ。これでドローフェイズのスキップと言うハンディキャップはなくなった。彼は獰猛な笑みを浮かべつつ、3枚のカードを翳す。

 

「貴様は進化した。俺と同じく、クリアマインドに辿り着くまでに。だがな――その進化、貴様だけの特権と思ったか?」

 

「ッ!まさかっ――!?」

 

ゾッ、コナミの背筋に冷たいものが駆ける。まるで背に蛇か何かが這うような感覚。いや、これは――圧倒的力を誇る龍にでも、鷲掴みにされているかのような――。

 

「俺は手札のモンスターを捨て、手札の『クイック・シンクロン』を特殊召喚!」

 

クイック・シンクロン 守備力1400

 

「『ダンディライオン』が墓地に送られた事で、2体の『綿毛トークン』を特殊召喚!」

 

綿毛トークン 守備力0×2

 

「そして『ジャンク・シンクロン』を召喚!」

 

ジャンク・シンクロン 攻撃力1300

 

「召喚時効果で『フォーミュラ・シンクロン』を蘇生!」

 

フォーミュラ・シンクロン 守備力1500

 

「俺はレベル1の『綿毛トークン』に、レベル3の『ジャンク・シンクロン』をチューニング!シンクロ召喚!『アームズ・エイド』!」

 

アームズ・エイド 攻撃力1800

 

現れたのは鋭い赤の爪を伸ばした黒い腕のモンスター。見た目通り、他のモンスターに装備する事で真価を発揮するカードだ。レベル4のシンクロモンスターである為、中継役にもなる。

 

「レベル1の『綿毛トークン』に、レベル5の『クイック・シンクロン』をチューニング!集いし絆が更なる力を紡ぎ出す。光差す道となれ!シンクロ召喚!轟け、『ターボ・ウォリアー』!」

 

ターボ・ウォリアー 攻撃力2500

 

次に現れたのは真っ赤なボディにリーゼントのような頭部。車を模した胸部に加え、鋭い爪を持ったシンクロ『ウォリアー』モンスターだ。

戦闘、耐性共に優秀なカードであり、これで白コナミのフィールドに3体のシンクロモンスターが揃った。

レベル6、『ターボ・ウォリアー』、レベル4、『アームズ・エイド』、レベル2のシンクロチューナー、『フォーミュラ・シンクロン』。ここから出される答えはやはり――アクセルシンクロをも越えた、シンクロの極み。

 

「速攻魔法、『非常食』!3枚のカードを墓地に送り、LPを3000回復!『妖刀竹光』の効果で、『竹光』をサーチ!更にクロニクルの効果で墓地の『スターダスト』を除外し、このカードに完全耐性を与える!」

 

ダニエル LP1400→4400

 

「さて、来るか……!」

 

「これが俺の全力!レベル6の『ターボ・ウォリアー』とレベル4の『アームズ・エイド』に、レベル2の『フォーミュラ・シンクロン』をチューニング!」

 

「と、飛んだぁっ!」

 

ゴウッ、白コナミが合体した機体から火炎を吹かせ、月を背に飛行、光を浴び、3体のシンクロモンスターが重なる。

 

「集いし星が1つになる時、新たな絆が未来を照らす!光差す道となれ!デルタアクセルシンクロォォォォォッ!!」

 

更に白コナミの身体が黄金に輝き、3体のシンクロモンスターが赤き竜となり、光を纏ってその姿を変える。『スターダスト・ドラゴン』と良く似た、月光を反射する白い巨躯、神々しいとも言える圧倒的な姿。そう、これが――シンクロの極み。

 

「進化の光、『シューティング・クェーサー・ドラゴン』ッ!!」

 

シューティング・クェーサー・ドラゴン 攻撃力4000

 

降臨せし光の竜。その姿に――全ての者が言葉を失い、見上げ、魅了される。

 

『……何、これ……』

 

「バトルだ。『シューティング・クェーサー・ドラゴン』で、『真閃光竜スターダスト・クロニクル』に攻撃!天地創造撃ザ・クリエーションバースト!」

 

『シューティング・クェーサー・ドラゴン』が掌に光を溜め、球体を生み出して『真閃光竜スターダスト・クロニクル』にぶつける。

そうして見るだけで2体のサイズの違いが分かる。圧倒的な巨躯を誇る『シューティング・クェーサー・ドラゴン』の前では『真閃光竜スターダスト・クロニクル』は蟻も同然。アクセルシンクロモンスターとデルタ・アクセルシンクロモンスターにはそれだけの差があるのだ。

光球に呑まれ、砕け散る『真閃光竜スターダスト・クロニクル』。そして衝撃波によってコナミのD-ホイールが浮いて吹き飛ぶ。とんでもないパワーだ。コナミは何とか姿勢を正し、危うげながらも着地する。

 

ダニエル LP4400→3400

 

「くっ、う……!『真閃光竜スターダスト・クロニクル』が相手に破壊された事で、除外されている『スターダスト』を特殊召喚する!」

 

「無駄だ。『シューティング・クェーサー・ドラゴン』は1ターンに1度、モンスター、魔法、罠の効果を無効にし、破壊する!そしてこのカードはチューナー以外に素材にしたモンスターの数まで攻撃が可能!『刻剣の魔術師』へ攻撃!」

 

ダニエル LP3400→800

 

2度目の攻撃も重く、『刻剣の魔術師』に命中したと思った瞬間に押し潰す。これでモンスターは0、『竹光』による攻略も不可となった。だがまだ勝機はある。コナミの眼は、闘志は死んでいない。『シューティング・クェーサー・ドラゴン』を前にしても――下がらない、諦めない。

 

「ターンエンドだ」

 

白コナミ LP2500

フィールド『シューティング・クェーサー・ドラゴン』(攻撃表示)

手札0

 

「オレのターン、ドロー!ペンデュラム召喚!『刻剣の魔術師』!『相生の魔術師』!『慧眼の魔術師』!『曲芸の魔術師』!」

 

刻剣の魔術師 守備力0

 

相生の魔術師 守備力1500

 

慧眼の魔術師 守備力1500

 

曲芸の魔術師 守備力2300

 

振り子の軌跡で現れる4体の『魔術師』ペンデュラムモンスター。『シューティング・クェーサー・ドラゴン』で無効に出来るのは効果のみ。ペンデュラム召喚は効果ではない為、無効にはならない。これで暫くの間凌げれば良いが、どこまでもつか。

 

「ターンエンドだ」

 

ダニエル LP800

フィールド『刻剣の魔術師』(守備表示)『相生の魔術師』(守備表示)『慧眼の魔術師』(守備表示)『曲芸の魔術師』(守備表示)

Pゾーン『竜穴の魔術師』『竜脈の魔術師』

手札2

 

「俺のターン、ドロー!今度は引き籠ったか、面倒な奴だ。俺はカードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

白コナミ LP2500

フィールド『シューティング・クェーサー・ドラゴン』(攻撃表示)

セット1

手札0

 

「オレのターン、ドロー!慧眼と相生の2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!『No.39希望皇ホープ』!」

 

No.39希望皇ホープ 攻撃力2500

 

「刻剣の効果でこのカードと『シューティング・クェーサー・ドラゴン』を除外!」

 

「――通す。『シューティング・クェーサー・ドラゴン』がフィールドから離れた事で、エクストラデッキから『シューティング・スター・ドラゴン』を呼ぶ!!」

 

シューティング・スター・ドラゴン 攻撃力3300

 

『シューティング・クェーサー・ドラゴン』と入れ替わりに現れたのはその一段階進化前の流星の白竜。刻剣の効果を無効にしてもまたペンデュラム召喚される上、フィールドを離れてもこのカードを呼べる為に通したのだろう。コナミとしても勝つならば『シューティング・スター・ドラゴン』をフィールドから退けなければならない。

 

「バトルだ!『ホープ』で『シューティング・スター・ドラゴン』へ攻撃!ORUを使い、無効、速攻魔法、『ダブル・アップ・チャンス』!『ホープ』の攻撃力を倍にし、再攻撃を可能に!」

 

No.39希望皇ホープ 攻撃力2500→5000

 

「『シューティング・スター・ドラゴン』の効果発動!このカードを除外、攻撃を無効に!」

 

「させる訳ないだろう、墓地の『ブレイクスルー・スキル』を除外し、『シューティング・スター・ドラゴン』の効果を無効にする!更に『スキル・サクセサー』を除外し、攻撃力アップ!ホープ剣マーズ・スラッシュ!」

 

No.39希望皇ホープ 攻撃力5000→5800

 

『ホープ』が両手に持った2刀、更に背から伸びる2枚の翼が剣となり、熱が灯ったように赤く発光、4刀流の剣技で流星竜に襲いかかる。

『シューティング・スター・ドラゴン』も4体に分身し、迎え撃つも――まず1体目、片刃の剣で赤く輝く流星を切り裂き、返す刃で2体目、緑色の流星を打ち落とす。その隙を突き、背後から黄色の光が明滅、一直線に突き進むも――背から伸びる剣に阻まれ、そのまま切り裂かれる。

そして4体目、一体どこにいるのかと『ホープ』が辺りを見渡す中、夜空に浮かぶ星が一際激しく輝き、急速に『ホープ』に近づく。

そう、この青いオーラを纏った流星そ本物の『シューティング・スター・ドラゴン』だ。空より落ちて『ホープ』に襲いかかり、『ホープ』が二刀の剣を交差させて防御する。

紙一重の所だった。直ぐ様『ホープ』は背の剣を使い、『シューティング・スター・ドラゴン』を切り裂き、撃退する。

 

「罠発動!『ガード・ブロック』!ダメージを0にし、1枚ドロー!」

 

白コナミ 手札0→1

 

「チッ、防いだか……ならカードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

ダニエル LP800

フィールド『No.39希望皇ホープ』(攻撃表示)『曲芸の魔術師』(守備表示)

セット1

Pゾーン『竜穴の魔術師』『竜脈の魔術師』

手札1

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『一時休戦』!互いに1枚ドローし、次のターン終了までダメージを0に!」

 

白コナミ 手札1→2

 

ダニエル 手札1→2

 

「ッ!……カードを2枚セット、ターンエンドだ」

 

白コナミ LP2500

フィールド

セット2

手札0

 

「オレのターン、ドロー!刻剣がフィールドに戻り、その効果でこのカードと『シューティング・クェーサー・ドラゴン』を除外!」

 

「罠発動!『ブレイクスルー・スキル』!そのモンスター効果を無効に!」

 

「手札のペンデュラムモンスターを捨て、竜脈のペンデュラム効果で『シューティング・クェーサー・ドラゴン』を破壊!」

 

「クェーサーの効果で無効!」

 

「速攻魔法、『大欲の壺』!除外されているモンスター3体をデッキに戻し、ドロー!」

 

ダニエル 手札1→2

 

「『貴竜の魔術師』を召喚!」

 

貴竜の魔術師 攻撃力500

 

「レベル5の『曲芸の魔術師』に、レベル3の『貴竜の魔術師』をチューニング!シンクロ召喚!『閃光竜スターダスト』!」

 

閃光竜スターダスト 攻撃力2500

 

再びフィールドに降臨する星屑を纏った閃光の竜。白コナミが持つ『スターダスト・ドラゴン』とは似て非なる決闘竜。もう何度目かも分からない登場だ。巨大な白竜。自身のもう1つの進化の可能性である『シューティング・クェーサー・ドラゴン』を睨み付け、主を守るように前に躍り出る。以前は大敗を喫したが、今回はそうはいかないと月に向かって吠え猛る。

 

「魔法カード、『一騎加勢』!『スターダスト』の攻撃力を1500アップ!」

 

閃光竜スターダスト 攻撃力2500→4000

 

「『スターダスト』の効果で自身に耐性を与え、バトルだ!『スターダスト』で、『シューティング・クェーサー・ドラゴン』へ攻撃!流星不死鳥突撃ッ!!」

 

「迎え撃て!天地創造撃ザ・クリエーションバーストッ!!」

 

『スターダスト』が双翼から火炎を吹かし、更に炎の尾を伸ばし、不死鳥のような姿となって『シューティング・クェーサー・ドラゴン』に向かい合い、『シューティング・クェーサー・ドラゴン』も赤き竜のオーラを纏って激突する。鬩ぎ合う2体の白竜。月下の中、2つの流星が交差し、二重螺旋を描く。空中で散る火花、厚い雲を引き裂き、明星が輝く。互いに拳にエネルギーを集束し、振り抜く。

瞬間、天がカッ、と閃き大爆発を起こす。そして残っていたのは――満身創痍になりながらも勝利の雄叫びを上げる『スターダスト』。あの『シューティング・クェーサー・ドラゴン』をも倒し、コナミが勝利にリーチをかけた。

 

「まさか『シューティング・クェーサー・ドラゴン』をも倒すとは……!」

 

「ターンエンドだ」

 

ダニエル LP800

フィールド『閃光竜スターダスト』(攻撃表示)『No.39希望皇ホープ』(攻撃表示)『刻剣の魔術師』(攻撃表示)

Pゾーン『竜穴の魔術師』

手札0

 

「俺のターン、ドロー!楽しいデュエルも、これで終わりだ。貴様は言ったな?アクセルシンクロが絆の証だと!」

 

「!」

 

「だが俺からすれば、貴様の束ねた絆は脆い!」

 

「何だと……!?」

 

ギリッ、白コナミの挑発とも言える言葉を受け、コナミが歯を食い縛って怒りを見せる。それもそうだろう、コナミにとって今まで築いた絆を否定される事は、自身の否定にも近い。だがそれでも、白コナミは言う。

 

「これが真の絆だ!罠発動!『集いし願い』!!」

 

「その、カードは――ッ!?」

 

発動されたこのデュエル、最後のカード。それを見てコナミが表情を驚愕に染める。このカードこそ、『シューティング・クェーサー・ドラゴン』をも越える、白コナミ最強の切り札。

 

「自分の墓地にドラゴン族のシンクロモンスターが5種類以上存在する事で、エクストラデッキから『スターダスト・ドラゴン』をシンクロ召喚扱いで呼び出し、このカードを装備する!飛翔せよ!!」

 

スターダスト・ドラゴン 攻撃力2500

 

こちらも再び現れる星屑の竜。そしてその姿はどんどん巨大化していき――。

 

「装備モンスターの攻撃力は、墓地のドラゴン族シンクロモンスターの攻撃力の合計分アップする!」

 

スターダスト・ドラゴン 攻撃力2500→30200

 

「攻撃力……」

 

『30200……!?』

 

圧倒的、暴力的な数値へと膨れ上がる。ジャンク・アトラス・D、クロウ・ゴーストと力を集結させた最強の『スターダスト』。これこそ彼の、彼等の絆の力。

 

「墓地の『ブレイクスルー・スキル』を除外し、『ホープ』の効果を無効にする!」

 

「バトルだ!『スターダスト・ドラゴン』で、『閃光竜スターダスト』を攻撃!シューティング・スパイラル・ソニック!!」

 

「――ッグ、アァァァァッ!?」

 

ダニエル LP800→0

 

光に呑まれ、コナミがD-ホイールごと吹き飛び、コナミの身体が自チームのピットに叩きつけられ、コナミの口から言葉にならぬものが漏れる。そのまま壁に預けた背がズルズルと力なく擦り、落ちていく。痛みさえ感じず、歪む視界の中、白コナミがD-ホイールを停止、分離してツカツカとこちらに歩む姿を捉える。

 

負けた、完全に、この男に、このチームに。こうなってしまえば自身に訪れるものは――充分に分かっている。だがジッとしている場合ではない。コナミの予想通りならば、今出来る手を打たなければ、この化け物は止められなくなる。

 

「コナ、ダニエル殿!無事でござるか!?」

 

月影が目に見える焦りを浮かべ、コナミに駆け寄り、彼を守るように白コナミの眼前に立つ。

 

「月……影」

 

「コナミ殿、大丈夫か!?」

 

「違うな、俺こそがコナミだ。そいつはただの紛い物、弱き者にはコナミは相応しくない」

 

「何を……!」

 

ニヤリ、不敵な笑みを浮かべ、白コナミが鼻を鳴らす。コナミには彼の言わんとしている事は分かる。だが今は彼よりも――コナミは懐よりゴソゴソと何かを取り出し、月影へと突き出す。

 

「構うな、月影。オレの事はもう良い、お前はこれを――」

 

取り出したのは1枚のカード。コナミはこれを託すべき相手を考え――辿り着く。きっと彼が、そうなるだろうと思って。コナミは月影にカードの使い方と、渡すべき相手を耳打ちし、ここから去るように託す。

 

「――ッ!任された……!」

 

コナミの覚悟を受け、月影はその姿を消す。トニーには悪い事をした。と考えながら、白コナミ――自身に視線を移す。

 

「話は済んだか?言い残した事も」

 

「……ハッ、優しい事だな。あぁ――言い残す事か、なら、お前にくれてやる」

 

「?」

 

フ、と薄く笑みを浮かべ、コナミは不敵に彼に言い放つ。

 

「貴様は――」

 

そう言ってコナミは強がるように笑みを浮かべる。対する白コナミは、口を固く結び、コナミの首を掴み上げ、人目に触れぬようにベンチの壁に叩きつける。そしてコナミは、まるでユーゴに敗北した時のユートのように光に包まれ、粒子と共に消え行く。

 

「……戯れ言だな……ああ、そうだ。俺も貴様に言っておこう、最後に刻め、貴様を倒した、俺達のチーム名を」

 

『フレンドシップカップ、1回戦最終試合、長きに渡る激闘を制したのは――』

 

メリッサの声と共に、白コナミはその台詞を放つ。その、チーム名を。

スピードの中で進化した、ライディングデュエルに命を賭ける、D-ホイーラー達の名を。

 

「チーム、ネオ5D's」

 

呟きは、誰もいない虚空に消えていく――。




アニメなら次回からチームネオ5D'sが主人公面でOPに参加する頃です。

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