雷鳴轟く魔王の居城と化したサーキットにて、その主たるジャック・アトラス・Dの笑い声が木霊する。3対3のアクションライディングチームデュエル。見事に彼等に先制されてしまった。ファーストホイーラーである月影も健闘したものの、彼の圧倒的とも言えるパワーデュエルに捩じ伏せられてしまった。
月影は白煙を上げるD-ホイールを何とか動かせ、ピットまで辿り着く。後はセカンドホイーラーたるトニーに任せるしかない。
「すまぬ、コナミ殿、トニー殿。拙者が不甲斐ないばかりに……!」
「いや、良くやってくれた。かなり消耗させられただろうしな。相手もジャックをファーストホイーラーに置いていると言う事は好き勝手暴れてこちらの戦力を削るつもりなんだろう。ここで止めたい。頑張れトニー、お前なら出来る」
「お前、俺の何を知ってるの?」
ポン、とD-ホイールに跨がり、準備をするトニーの肩に手を置くコナミ。だが彼等は会ったばかり。トニーが半眼で馴れ馴れしくするコナミを睨むのも無理はない。
「言われなくたってやってやるさ。シンジ達は遊矢って奴に任せたみたいだし、目標を見失っちまったけど、ジャックには一泡吹かせてやりたいからな」
「その意気だトニー」
「お前、俺の何なの?」
自嘲するように笑うトニーの肩にポン、と手を置くコナミ。馴れ馴れしい奴である。トニーは何なんだろうコイツ、と呆れながらD-ホイールを発進させ、ジャック・Dのホイール・オブ・フォーチュン・Dへと追い縋る。
「「ライディングデュエル、アクセラレーション!!」」
始まるジャックとトニーのデュエル。手負いの竜を相手に、されどトニーは全力で立ち向かう。相手はジャック・アトラスだ。後少しでLPを削り取れるとは言え、油断は出来ない。
「俺のターン、ドロー!俺は速攻魔法、『手札断札』を発動!互いに手札を2枚捨て、2枚ドロー!『ゾンビ・マスター』を召喚!」
ゾンビ・マスター 攻撃力1800
現れたのはボロ布のような衣服を纏った銀髪の青年。自身も不死の肉体となった死霊使いだ。このカードを見るに、トニーのデッキはアンデット族デッキなのだろう。墓地肥やしや蘇生手段が多く、展開力に長けるデッキだ。反面、ジャックを相手にするならば打点に不安が残り、展開力が逆に『レッド・デーモン』の効果の的になりかねない。
「効果発動!手札を1枚捨て、墓地の『午頭鬼』を特殊召喚する!」
午頭鬼 攻撃力1700
次は牛の頭を持つ黒い鬼。雄々しい肉体を見せつけるように現れ、『ゾンビ・マスター』の隣に並ぶ。少しずつ、展開力が上がる。
「『午頭鬼』の効果!デッキからアンデット族モンスター、『ゾンビキャリア』を墓地に送る!『ゾンビキャリア』の効果発動!手札1枚をデッキトップに戻す事で蘇生!」
ゾンビキャリア 守備力200
今度は人やゴリラ、馬に蜥蜴等のパーツを組み合わせた醜いキメラのゾンビだ。シンクロ中心のアンデット族において、これ以上ないキーカードで、優秀なチューナーだ。今では少々主戦力から外れる事もあるが、それども自己蘇生が可能なチューナー、弱い事はない。
これでフィールドにレベル4のモンスター2体とレベル2のチューナーが1体、レベル6か10のシンクロが可能となった。
「レベル4の『ゾンビ・マスター』と、『午頭鬼』に、レベル2の『ゾンビキャリア』をチューニング!シンクロ召喚!『炎神ー不知火』!」
炎神ー不知火 攻撃力3500
シンクロ召喚、現れたのはいきなりのレベル10、炎で作られた馬に跨がった整った顔立ちに白髪の武者。攻撃力は何と3500、『レッド・デーモン』をも越える数値だ。これは何とも頼もしい。
「そして『午頭鬼』の効果発動!墓地の『ゾンビ・マスター』を除外し、手札から『地獄の門番イル・ブラッド』を特殊召喚!」
地獄の門番イル・ブラッド 攻撃力2100
更に展開、囚人服に足枷をつけた巨大な人型モンスターがフィールドに現れる。チャックの中から巨大な顔が覗いており、恐怖を煽られる。
「バトル!炎神で『レッド・デーモン』に攻撃!」
「墓地の福音を除外し、破壊を防ぐ!」
ジャック・アトラス・D LP1350→850
武者が跨がる炎馬が蹄を鳴らして駆け、若武者が鋭い白刃を振るい、赤い魔竜を地面に叩きつける。肩口からバッサリと切り裂かれ、血飛沫が宙を舞う。後残り、850――。この我儘王者の好きにさせてなるのかとトニーが奮闘する。
「カードを1枚セットし、ターンエンド!」
トニー LP4000
フィールド『炎神ー不知火』(攻撃表示)『地獄の門番イル・ブラッド』(攻撃表示)
セット1
Pゾーン『黄昏の忍者ージョウゲン』『黄昏の忍者ーカゲン』
手札0
「俺のターン、ドロー!俺は『戦慄の凶皇ージェネシス・デーモン』を妥協召喚!」
戦慄の凶皇ージェネシス・デーモン 攻撃力1500→2000
「墓地の『ヘル・エンプレス・デーモン』を除外し、セットカードを破壊!」
「罠発動!『因果切断』!手札のアクションマジックを捨て、『レッド・デーモン』を除外!」
「ほう……中々どうしてやるものだ。魔法カード、『アドバンスドロー』!凶皇をリリースし、2枚ドロー!」
ジャック・アトラス・D 手札1→3
「更に俺は速攻魔法、『デーモンとの駆け引き』を発動!レベル8以上の自分モンスターが墓地に送られたターン、デッキより『バーサーク・デッド・ドラゴン』を特殊召喚する!さぁ、ゲストの登場だ!血に誘われし飢えた竜よ!舞台に駆け上がれ!」
バーサーク・デッド・ドラゴン 攻撃力3500
強者の血肉を貪り食い、フィールドに現れたのは肉を削ぎ落とした黒き骨の体躯と翼を持つ不気味なモンスター。本来であればジャック・Dのカードではなく、伝説のデュエリストを苦しめたモンスター。だが――彼のデッキとの相性から、プラシドがジャックに授けたカードだ。
「バトルだ!『バーサーク・デッド・ドラゴン』でイル・ブラッドへ攻撃!貪り食らえ!知性なき竜よ!」
トニー LP4000→2600
「ぐっ――!」
狂気の竜が暴れ狂い、トニーのフィールドで構える門番に掴みかかり、死肉にも関わらず牙を突き立て、バリバリと食らい、咀嚼する。何ともおぞましい光景だ。あのジャック・アトラスがこのようなカードを使うとは。
「更に炎神へ攻撃!この瞬間、アクションマジック、『フレイム・チェーン』を発動!炎神の攻撃力を400ダウン!」
「アクションマジック、『ダメージ・バニッシュ』!戦闘ダメージを0に!」
炎神ー不知火 攻撃力3500→3100
「良き力だ。俺はカードを2枚セットし、ターンエンドだ。この瞬間、『バーサーク・デッド・ドラゴン』の攻撃力は500下がる」
バーサーク・デッド・ドラゴン 攻撃力3500→3000
ジャック・アトラス・D LP850
フィールド『バーサーク・デッド・ドラゴン』(攻撃表示)
『補給部隊』セット2
手札0
「くそっ、俺のターン、ドロー!こんなモンスターまでいたなんて……!魔法カード、『命削りの宝札』を発動!3枚ドロー!」
トニー 手札0→3
「モンスターをセット、永続魔法、『強欲なカケラ』と『補給部隊』を発動し、ターンエンドだ」
トニー LP2600
フィールド セットモンスター
『強欲なカケラ』『補給部隊』
手札0
Pゾーン『黄昏の忍者ージョウゲン』『黄昏の忍者ーカゲン』
手札0
「俺のターン、ドロー!バトルだ!『バーサーク・デッド・ドラゴン』でセットモンスターへ攻撃!」
「セットモンスターは『スケープ・ゴースト』!リバース効果で4体の『黒羊トークン』を特殊召喚する!更に『補給部隊』の効果でドロー!」
黒羊トークン 守備力0×4
トニー 手札0→1
黒炎を纏った魔竜が雄叫びを上げ、鋭い爪をセットモンスターめがけて振るう。と、その時、セットモンスターである『スケープ・ゴースト』にスカリと爪が空振る。霊体であると言う事だろう。当たりはしても煙のように溶けるのみ。そのまま4体に分裂し、魔竜を惑わす。
レベル1、闇属性、攻守0とステータスと効果に恵まれたチューナーだ。フィールドに残ればレベル2から5のシンクロモンスターに繋げられる。
「迷える子羊か、ならば俺が導いてやろう、竜の腸にな!『バーサーク・デッド・ドラゴン』は全てのモンスターに攻撃が出来る!死肉を貪れ!」
だが、トニーがこのモンスターで『黒羊トークン』を壁とし、次のターンに繋ごうとした策も見事看破され、全てのトークンが『バーサーク・デッド・ドラゴン』に食われてしまう。最悪だ。これで再びトニーのモンスターが0となった。
「これで終われると思うなよ?貴様が相手にしているのら、キング・オブ・キングなのだからな!永続罠、『闇次元の解放』!復活せよ!『レッド・デーモン』!!」
炎魔竜レッド・デーモン 攻撃力3000
「ここで……!」
「『レッド・デーモン』でダイレクトアタック!」
「ッ、アクションマジック、『回避』!」
「くく、どこまでもつかな?貴様も俺を楽しませてくれ。ターンエンドだ。『バーサーク・デッド・ドラゴン』の攻撃力がダウンする」
バーサーク・デッド・ドラゴン 攻撃力3000→2500
ジャック・アトラス・D LP850
フィールド『炎魔竜レッド・デーモン』(攻撃表示)『バーサーク・デッド・ドラゴン』(攻撃表示)
『補給部隊』『闇次元の解放』セット1
手札1
「俺のターン、ドロー!このドローの瞬間、『強欲なカケラ』に強欲カウンターが1つ乗る!」
強欲なカケラ 強欲カウンター0→1
「俺はモンスターをセット、カードをセットし、ターンエンドだ」
トニー LP2600
フィールド セットモンスター
『強欲なカケラ』『補給部隊』セット1
Pゾーン『黄昏の忍者ージョウゲン』『黄昏の忍者ーカゲン』
手札0
「随分と消極的だな。俺のLPは残り850、攻め時だぞ?そちらが来ないなら――こっちから行ってやろう!俺のターン、ドロー!カードをセット!やれ、『バーサーク・デッド・ドラゴン』!セットモンスターに攻撃!」
「セットモンスターは『カードガンナー』!破壊された事でドロー!『補給部隊』の効果でもう1枚ドロー!」
トニー 手札0→1→2
「『レッド・デーモン』でダイレクトアタック!」
「永続罠発動!『デプス・アミュレット』!手札を1枚捨て、相手モンスター1体の攻撃を無効に!」
「ほう?速攻魔法、『神秘の中華なべ』!『バーサーク・デッド・ドラゴン』をリリースし、攻撃力2500をLPに変換する!」
「何だって……!?くそっ……!」
ジャック・アトラス・D LP850→3350
ここでジャックが最早これ以上弱体化しては使い物にならないと判断したのか、『バーサーク・デッド・ドラゴン』をLPに変換する。LPが回復し、3350。折角月影が削ったLPが……とトニーが悔しさと申し訳なさで唇を噛み締める。
「ターンエンドだ」
ジャック・アトラス・D LP3350
フィールド『炎魔竜レッド・デーモン』(攻撃表示)
『補給部隊』『闇次元の解放』セット1
手札1
「俺のターン、ドロー!『強欲なカケラ』にカウンターが乗る!」
強欲なカケラ 強欲カウンター1→2
「そしてカウンターが2つ乗ったカケラを墓地に送り、2枚ドロー!」
トニー 手札2→4
「魔法カード、『手札抹殺』を発動し、『終末の騎士』を召喚!」
終末の騎士 攻撃力1400
「効果発動!効果発動!デッキから『ゾンビキャリア』を墓地に!そして『ゾンビキャリア』の効果でカード1枚をデッキトップに戻し、蘇生!」
ゾンビキャリア 守備力200
「フィールド魔法、『アンデット・ワールド』を発動!フィールドと墓地のモンスターは全てアンデット族となる!」
トニーのフィールドゾーンにフィールド魔法が張り替えられ、魔王城の壁も腐敗し、より恐ろしさが増す。これで実質、アクションフィールドの効果は封じられ、ジャックの優位さはなくなった。ここからはトニーの舞台だ。死者が悪魔に襲いかかる。
「レベル4の『終末の騎士』に、レベル2の『ゾンビキャリア』をチューニング!シンクロ召喚!『デスカイザー・ドラゴン』!!」
デスカイザー・ドラゴン 攻撃力2400
現れたのはトニーのエースモンスター。生前の覇気はそのままに、肉が腐敗し、死して尚闘う死皇帝竜。胸には赤いコアを、骨の鎧を纏い、破れた翼を広げて帝王が蘇る。
「特殊召喚時、相手の墓地のアンデット族モンスターを自分フィールドに特殊召喚する!来い、『炎魔竜レッド・デーモン・アビス』!」
炎魔竜レッド・デーモン・アビス 攻撃力3200
「俺に牙を剥けるか、『レッド・デーモン』よ……面白い、それもまた良し。前から見る雄姿は中々のもの……アンデットとなっているのがアレだがな」
トニーのフィールドに獄炎が昇り、中より進化した『レッド・デーモン』がアンデット化して現れる。強力な切り札も奪われてしまえばそれまでだ。
「バトルだ!アビスで『レッド・デーモン』へ攻撃!」
「手札の『ブルータル・レッド』を墓地に送り、『レッド・デーモン』に戦闘、効果破壊耐性を与え、その後攻撃力を1000アップする」
ジャック・アトラス・D LP3350→3150
炎魔竜レッド・デーモン 攻撃力3000→4000
互いのフィールドに別たれた炎魔竜が拳に炎を纏い、魔王城と化したサーキットでぶつかり合う。凄まじいド迫力、圧倒的なパワーデュエルに観客が盛り上がる。これこそがジャックのデュエルに求められるものだ。
「アビスの効果で『スケープ・ゴースト』を蘇生!」
スケープ・ゴースト 守備力0
「破壊は出来なかったか……ターンエンド!」
トニー LP2600
フィールド『デスカイザー・ドラゴン』(攻撃表示)『炎魔竜レッド・デーモン・アビス』(攻撃表示)『スケープ・ゴースト』(守備表示)
『補給部隊』『デプス・アミュレット』
Pゾーン『黄昏の忍者ージョウゲン』『黄昏の忍者ーカゲン』
『アンデット・ワールド』
手札0
「俺のターン、ドロー!『レッド・デーモン』の効果発動!」
「アビスの効果で無効にする!」
『レッド・デーモン』が腕を振るい、獄炎で全てを焼き払おうとするも、アビスが強引に腕を掴み、頭を抑え、地に叩きつけて動きを封じる。効果は封じた。しかし――。
「攻撃は封じられん!バトルだ!『レッド・デーモン』で『デスカイザー・ドラゴン』へ攻撃!」
「墓地の『仁王立ち』を除外し、攻撃を『スケープ・ゴースト』に移行!『補給部隊』の効果でドロー!」
トニー 手札0→1
「チッ、カードをセット、ターンエンドだ」
ジャック・アトラス・D LP3150
フィールド『炎魔竜レッド・デーモン』(攻撃表示)
『補給部隊』『闇次元の解放』セット2
手札0
「俺のターン、ドロー!アビスで『補給部隊』を無効化し、速攻魔法、『サイクロン』!『闇次元の解放』を破壊!バトルだ!アビスでダイレクトアタック!」
「罠発動!『リジェクト・リボーン』!相手モンスターのダイレクトアタック時、墓地のシンクロモンスターとチューナーを蘇生する!来い、『レッド・ワイバーン』!『シンクローン・リゾネーター』!」
レッド・ワイバーン 攻撃力2400
シンクローン・リゾネーター 守備力100
「くっ、流石に固いな……アビスの効果を取っておくべきだったか……ターンエンド!」
「罠発動!『貪欲な瓶』!墓地のカードを5枚回収し、1枚ドロー!」
ジャック・アトラス・D 手札0→1
トニー LP2600
フィールド『デスカイザー・ドラゴン』(攻撃表示)『炎魔竜レッド・デーモン・アビス』(攻撃表示)
『補給部隊』『デプス・アミュレット』
Pゾーン『黄昏の忍者ージョウゲン』『黄昏の忍者ーカゲン』
『アンデット・ワールド』
手札1
「俺のターン、ドロー!魔法カード、『地砕き』!」
「アビスで無効に!」
「速攻魔法、『魔力の泉』!5枚ドローし、3枚捨てる!」
ジャック・アトラス・D 手札0→5→2
「速攻魔法、『コズミック・サイクロン』!LPを1000払い、『アンデット・ワールド』を除外!」
ジャック・アトラス・D LP3150→2150
「そんな事をしてもアビスは戻らないぜ?」
「分かっている。俺はただ、本来の輝きを取り戻したまで。アビスも、俺のモンスターも!レベル6の『レッド・ワイバーン』に、レベル1の『シンクローン・リゾネーター』をチューニング!王者の叫びが木霊する!勝利の鉄槌よ、大地を砕け!シンクロ召喚!羽ばたけ、『エクスプロード・ウィング・ドラゴン』!」
エクスプロード・ウィング・ドラゴン 攻撃力2400
現れたのは後頭部を隕石のように膨張させたエイリアンのような翼竜だ。確かにこのモンスターのシンクロ条件はチューナー以外のドラゴン族モンスターが必要だ。『アンデット・ワールド』の影響下ではそれは不可能だろう。
「『シンクローン・リゾネーター』の効果で『レッド・リゾネーター』を回収!バトルだ!『エクスプロード・ウィング・ドラゴン』で『デスカイザー・ドラゴン』へ効果で!キング・ストーム!」
「させるか!『デプス・アミュレット』の効果で手札を1枚捨て、攻撃を無効に!」
「当然そうなるか。魔法カード、『七星の宝刀』を発動!エクスプロードを除外し、2枚ドロー!」
ジャック・アトラス・D 手札1→3
「カードを1枚セットし、ターンエンド」
ジャック・アトラス・D LP3150
フィールド
『補給部隊』セット1
手札2
「俺のターン、ドロー!魔法カード、『マジック・プランター』!『デプス・アミュレット』をコストに2枚ドロー!」
トニー 手札0→2
「良し……カードを2枚セット!バトルだ!アビスでダイレクトアタック!」
「させん。手札の『バトル・フェーダー』を特殊召喚し、バトルを終了する!」
バトル・フェーダー 守備力0
鐘を抱く悪魔が現れ、闘いを終幕させる音を鳴らす。どうにも固い守りだ。だがトニーのフィールドにはアビスがいる。敵に回せば厄介だが、味方となれば攻防こなせるこのカードは実に優秀で強力。これ以上に頼りになるものはない。
「ターンエンドだ!」
トニー LP2600
フィールド『デスカイザー・ドラゴン』(攻撃表示)『炎魔竜レッド・デーモン・アビス』(攻撃表示)
『補給部隊』セット2
Pゾーン『黄昏の忍者ージョウゲン』『黄昏の忍者ーカゲン』
手札0
「俺のターン、ドロー!リバースカード、オープン!『大欲な壺』!除外されている『炎魔竜レッド・デーモン』、『トリック・デーモン』、『戦慄の凶皇ージェネシス・デーモン』をデッキに戻し、1枚ドロー!」
「通す……!」
「フン、王を相手に許可を出すか。不遜な奴め」
ジャック・アトラス・D 手札2→3
「『レッド・リゾネーター』を召喚!」
レッド・リゾネーター 攻撃力600→1100
「『リゾネーター』が召喚された事で、手札の『レッド・ウルフ』を特殊召喚!」
レッド・ウルフ 守備力2200
これでジャック・Dのフィールドにレベル2のチューナーとレベル6の非チューナーが並んだ。恐らくは『レッド・デーモン』によるシンクロ召喚の突破が狙いか。
「魔法カード、『貪欲な壺』を発動!墓地の『レッド・ワイバーン』、『バーサーク・デッド・ドラゴン』、『レッド・スプリンター』2体、『戦慄の凶皇ージェネシス・デーモン』をデッキに戻し、2枚ドロー!勿論貴様は通す、通さざるを得ない。そのセットカードが邪魔をせん限りな」
「……通す」
ジャック・Dの言う通り、ここで『貪欲な壺』を止めては来る『レッド・デーモン』の全体破壊が止められなくなる。仕方無く通さざるを得ない。
ジャック・アトラス・D 手札0→2
「レベル6の『レッド・ウルフ』に、レベル2の『レッド・リゾネーター』をチューニング!シンクロ召喚!『炎魔竜レッド・デーモン』!!」
炎魔竜レッド・デーモン 攻撃力3000
「焼き尽くせ!効果発動!」
「アビスの効果で無効に!」
「バトルだ!『レッド・デーモン』で『デスカイザー・ドラゴン』へ攻撃!」
「罠発動!『攻撃の無敵化』!『デスカイザー・ドラゴン』に破壊耐性を与える!」
トニー LP2600→2000
「ぐうっ……!」
炎がトニーを包み込み、ダメージがLPを削り取る。だが『デスカイザー・ドラゴン』は守り切った。このカードが破壊されればアビスも破壊されてしまう。何がなんでも守り切らなければならない。
「カードを2枚セットし、ターンエンドだ」
ジャック・アトラス・D LP3150
フィールド『炎魔竜レッド・デーモン』(攻撃表示)『バトル・フェーダー』(守備表示)
『補給部隊』セット2
手札の0
「俺のターン、ドロー!フィールド魔法、『アンデット・ワールド』発動!」
「罠発動!『砂塵の大嵐』!『アンデット・ワールド』と『補給部隊』を破壊!」
「アビスの効果で無効に!」
「チッ!」
ジャック・Dのフィールドに発生した砂嵐がトニーに襲いかかるも、アビスの剛腕から放たれる火球が霧散させる。これでまたもやフィールドのモンスターはアンデット族となった。ジャック・Dのシンクロモンスターは素材にドラゴン族や悪魔族を求めるカードが存在する為、このフィールドは中々厄介と言える。
「バトル!アビスで『レッド・デーモン』へ攻撃!」
「罠発動!『陰謀の盾』!『レッド・デーモン』に装備し、1ターンに1度の戦闘耐性を与え、戦闘ダメージを0にする!」
「ならこいつでどうだ!罠発動!『バスター・モード』!『デスカイザー・ドラゴン』をリリースし、デッキから『デスカイザー・ドラゴン/バスター』を特殊召喚!!」
デスカイザー・ドラゴン/バスター 攻撃力2900
眩き閃光が死皇帝竜を包み込み、バキバキとおとを鳴らし、その骨格をより強靭に、より強大に進化させる。恐ろしい鬼火を引き連れ、フィールドに君臨したのは胸部を髑髏のように変化させ、黒き翼を広げる死の王者。『/バスター』、シンクロモンスターの新たなステージが今、奮われる。これこそがトニーの切り札。その勇姿は『レッド・デーモン』にも劣らない。
『トニー勝負に出る!大型モンスターの登場だぁーっ!!』
「『デスカイザー・ドラゴン』がフィールドを離れた事でアビスが破壊され、『補給部隊』の効果でドロー!」
トニー 手札0→1
「そして『/バスター』の効果発動!互いの墓地のアンデット族を任意の数だけ自分フィールドに蘇生する!来い、『炎神ー不知火』!『レッド・リゾネーター』!『黄昏の中忍ーニチリン』!」
炎神ー不知火 攻撃力3500
レッド・リゾネーター 守備力200
黄昏の中忍ーニチリン 攻撃力2300
進化した竜の雄叫びの下、互いの墓地から精鋭がトニーのフィールドへと目覚める。正に死者の軍勢。数多の追撃がジャックに襲いかかる。
「『/バスター』で『レッド・デーモン』を攻撃!」
「やらせん!アクションマジック、『回避』!」
「炎神で『レッド・デーモン』を攻撃!更に『黄昏の中忍ーニチリン』で『バトル・フェーダー』へ攻撃!この瞬間、ペンデュラムゾーンの2体の効果発動!攻撃力を1000アップし、貫通ダメージを与える!」
「くっ、『レッド・デーモン』の破壊時、『補給部隊』の効果でドロー!そしてアクションマジック、『ダメージ・バニュシュ』で『バトルフェーダー』との戦闘ダメージを0にする!」
ジャック・アトラス・D 手札0→1
黄昏の中忍ーニチリン 攻撃力2300→3300
「アクションマジック、『セカンド・アタック』!とどめだ、炎神でダイレクトアタック!」
炎神が死の皇帝に飛び乗って魔王城を飛翔、死した者達の怨念を集束し、おぞましき声を放つ球をジャック・Dに向かって撃ち出す。ジャックのLPは2600。炎神の攻撃力は3500。これが通ればトニーの勝ち。この一撃で、勝負をイーブンに持ち込む。だが――。
「甘い!罠発動!『リジェクト・リボーン』!『レッド・デーモン』と『レッド・リゾネーター』を蘇生し、バトルを終了!」
大魔王は、倒れない。
炎魔竜レッド・デーモン 攻撃力3000
レッド・リゾネーター 守備力200
「くっ、メインフェイズ2、レベル6のニチリンに、レベル2の『レッド・リゾネーター』をチューニング!シンクロ召喚!『戦神ー不知火』!」
戦神ー不知火 攻撃力3000
「ターンエンド……『デスカイザー・ドラゴン/バスター』で呼び出したモンスターは破壊される……!」
トニー LP2000
フィールド『デスカイザー・ドラゴン/バスター』(攻撃表示)『戦神ー不知火』(攻撃表示)
『補給部隊』
Pゾーン『黄昏の忍者ージョウゲン』『黄昏の忍者ーカゲン』
『アンデット・ワールド』
手札1
「俺のターン、ドロー!魔法カード、『強欲で貪欲な壺』を発動!デッキトップから10枚除外し、2枚ドロー!」
ジャック・アトラス・D 手札1→3
「速攻魔法、『サイクロン』を発動!『アンデット・ワールド』を破壊!良い、良いぞ!実に心地良い!この熱気こそが俺を満足させる!褒美に見せてやろう!『レッド・デーモン』の更なる進化体を!レベル8の『レッド・デーモン』に、レベル2の『レッド・リゾネーター』をチューニング!泰山鳴動!山を裂き地の炎と共にその身を曝せ!シンクロ召喚!『炎魔竜レッド・デーモン・ベリアル』!!」
炎魔竜レッド・デーモン・デーモン 攻撃力3500
そして――現れたのはアビスの更にその先、『レッド・デーモン』の第3形態、灼熱の如き深紅の鎧を纏い、腕から斧を思わせる重量級の刃を伸ばした赤い魔王竜。アビスの上を行くモンスターの登場に、観客は驚愕しながらも盛り上がりを見せる。
アビスだけでも厄介だったのに、これは少々、いや、かなり不味い。一体どんな効果を持っているのか、トニーはゴクリと喉を鳴らし、緊張を張り巡らせる。
「ベリアル……!?」
「噛み締めるが良い、極上のエンターテイメントを!モンスターをセット、そしてベリアルの効果!セットモンスターをリリースし、墓地に眠る『レッド・デーモン』を呼び出す!我がフィールドで充分に猛威を奮え!『炎魔竜レッド・デーモン・アビス』!!」
炎魔竜レッド・デーモン・アビス 攻撃力3200
その効果は『レッド・デーモン』を蘇生し、統率する王の力。これでアビスまでもが蘇り、圧倒的な力でフィールドを支配する。
「アビスの効果で『補給部隊』を無効に、バトルだ!アビスで戦神を!ベリアルで『デスカイザー・ドラゴン/バスター』を攻撃!深淵の怒却拳!割山激怒拳!」
アビスとベリアルが地を削り、深淵を抉り取る一撃を、山を裂く一撃を拳に乗せ、トニーのモンスターに食らわせる。強力なダブルパンチ、その凄まじき拳圧力がトニーのD-ホイールにも襲いかかる。
トニー LP2000→1300→700
「ぐっ、うぅぅぅぅっ……!『/バスター』の効果で『デスカイザー・ドラゴン』を蘇生!戦神の効果で『ゾンビ・マスター』を墓地に戻す!」
デスカイザー・ドラゴン 攻撃力2400
「ベリアルの効果で墓地の『シンクローン・リゾネーター』とデッキの『グローアップ・バルブ』を特殊召喚。アビスの効果で墓地の『レッド・リゾネーター』を蘇生!」
シンクローン・リゾネーター 守備力100
グローアップ・バルブ 守備力100
レッド・リゾネーター 守備力200
「『レッド・リゾネーター』の効果でベリアルの攻撃力分、LPを回復!」
ジャック・アトラス・D LP3150→6650
「これこそが本物のデュエル!俺はこれでターンエンドだ!」
ジャック・アトラス・D LP6650
フィールド『炎魔竜レッド・デーモン・ベリアル』(攻撃表示)『炎魔竜レッド・デーモン・アビス』(攻撃表示)『シンクローン・リゾネーター』(守備表示)『レッド・リゾネーター』(守備表示)『グローアップ・バルブ』(守備表示)
『補給部隊』
手札1
「俺のターン、ドロー……!」
強い――月影を倒し、彼が健闘して、消耗させたのにも関わらず、ジャック・Dの実力は未だ底無し。セカンドホイーラーであるトニーまでも倒そうとしている。
トニーの手札に、この逆境を覆すカードは――無い。ならばせめて、出来る限りの最高の布陣をダニエルに託す。それしか出来ないのが悔しいが――このまま無駄に防御を固めるよりも、ダニエルが奇襲をかけられる方が何倍も良いだろう。
「『ゾンビキャリア』を召喚!」
ゾンビキャリア 攻撃力400
「カードを1枚セット、バトルだ!『ゾンビキャリア』でベリアルに攻撃!」
「……ほう、良いだろう、この覚悟、しかと受け取った!迎え撃て!ベリアル!貴様の一撃で、勇敢なるデュエリストに手向けの花を!」
並々ならぬ覚悟を込め、トニーが小さなモンスターに攻撃命令を下し、それを受け取った『ゾンビキャリア』が圧倒的強者に挑み――火炎を纏った拳に、砕かれる。
トニー LP700→0
『トニー!特攻ーっ!と言う事は、自動的にラストホイーラー、ダニエルにターンが回る!全ての望みを託したバトン!怒濤の2連勝を刻むジャックへ挑む!圧倒的な不利を抱えるチーム噴水広場仲良し同盟はどう出るのか!』
「すまねぇ……!俺が不甲斐ねぇばかりに……!」
トニーがチームメイトの下に戻り、ヘルメットを外し、目を伏せながら謝罪する。出来る限りの事はしたが、それでもジャック・D達の優位には変わらない。2体の『レッド・デーモン』に、6650のLP。厳しい状況だ。
「そんな事はない。お前は良くやってくれた……月影もトニーも、後は俺に任せろ。全部ひっくり返してやる……!諦めるのはまだ早い、勝つんだ!」
それでもコナミは諦めない。月影が、トニーが、彼等から受け取ったバトンを握り締め、赤帽子を深く被り直し――相棒、グラファ号Rに跨がり、フィールドを駆ける。3対1、こんな不利な状況でも、諦めなかった者がいたのだ。諦めなかった者を知っているのだ。ならばコナミも諦めない。
「来たな、赤帽子……邪魔するようで悪いが、ラストホイーラーまで辿り着けると思うな。俺が全て、食らい尽くす!」
「その台詞、そのまま返す!」
漆黒に彩られた魔王城にて、黒の機体がぶつかり合う。
「「ライディングデュエル、アクセラレーション!!」」
トニー君とか言う奈落使い。視聴者の間では奈落のトニーとして知られる彼ですが、素材が厳しいアンデット・スカル・デーモンを3体並べる程の強者なんですよね。
今回は奈落もデーモンも使えなかったんですが。
シンクロ次元のアンデット使いと言う事で魔妖とか良かったかもしれません。SDRも出てますし。
今回はその2つが出る前に書き終えてる話なんですが。
なんかこう……悲しくない?