遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

145 / 202
今回から1週間投稿に戻ります。……戻れるだろうか。休みすぎてどうやって週間投稿してたか分からねぇや。


第140話 追われるってのは気分が良い

日が沈み、暗くなった夜のシティにて、ネオンや照明の光がサーキットに揃う二組のチームを照らす。いよいよフレンドシップカップ1回戦も最終試合に入る。

 

挑むのは赤帽子を被った凄腕のデュエリスト、ダニエルもとい、コナミをリーダーとした風魔 月影、トニーのチーム噴水広場仲良し連合。

迎え撃つは白い帽子を被った、コナミと同じ姿をした青年、通称白コナミをリーダーとしたキング、ジャック・アトラスを擁するチーム。チームメンバーの内2人が正体不明、そしてキングが在籍するこのチームは今大会の優勝候補となっている。

 

榊 遊矢に敗北したとは言え、彼の実力は本物だ。偽物なのだが。そんな事も知らぬ観客はジャックの試合とあって誰1人席を離れる事無く、サーキットを食い入るように見つめている。ジャックを最後の試合に回すのはこうして客を帰さない為の計略だろうか。

 

スタートラインにファーストホイーラーである月影がD-ホイールを停止させ、その背後に漆黒と赤に染まったホイール・オブ・フォーチュン、ホイール・オブ・フォーチュン・Dに搭乗したジャック・アトラス・Dが並ぶ。最初から全開と言う事か、月影は警戒心を高める。

 

「まさか1回戦からキングに当たるとは……だがこの月影、負けるつもりは毛頭ない!」

 

「良い気概だ。そうでなくてはつまらん。今宵は月が良く映える。お前も月の字を名に持つなら、この太陽を引き立てるよう、面白い芸を見せろ、忍の者よ」

 

戦意を剥き出しにし、ジャックに堂々と挑戦状を叩きつける月影。対するキングはそれもまた良しと獰猛な笑みを見せ、月影を見下す。

そして――サーキットが光の粒子に包まれ、その光景が変化する。雷鳴轟く、漆黒の伏魔殿。魔王、ジャック・アトラス・Dに相応しき悪魔城の迷宮へと。アクションフィールド『伏魔殿ー悪魔の迷宮』に生まれ変わった。

 

『さぁ、1回戦最後の試合がいよいよ始まる!勝者は王者か?それとも忍者か?準備は良いー?3、2、1!』

 

「「ライディングデュエル、アクセラレーション!!」」

 

ドシュンッ、風を切り、2機のD-ホイールが発進する。悪魔の呻き声が飛び交う城の中、コーナーをいち早く切ったのは勿論、ジャック・アトラス・Dだ。彼の愛機は従来のホイール・オブ・フォーチュンよりも大幅に馬力を上げている。彼自身のライディングテクニックもあり、コーナーの取り合いにおいて月影に勝ち目はないだろう。

 

「不覚……!」

 

「当然の結果だ。悲観する事はない。俺は『トリック・デーモン』を召喚!」

 

トリック・デーモン 攻撃力1000→1500

 

現れたのは『デーモン』デッキのキーカードである悪魔の髑髏を被り、蛇のような髪を振るう小柄な少女。アクションフィールドの効果で悪魔族の攻撃力は500アップする。決して安くはない数値。月影にとって厳しい闘いになりそうだ。

 

「そして永続魔法、『補給部隊』を発動!『デーモンの将星』を特殊召喚!」

 

デーモンの将星 攻撃力2500→3000

 

お次は雷を纏った『デーモン』の将。攻撃力3000となり、彼のエース、『レッド・デーモン』と並ぶモンスターとなった。

 

「その後、『トリック・デーモン』を破壊、『トリック・デーモン』の効果で『デーモンの将星』をサーチし、『補給部隊』の効果でドロー!」

 

ジャック・アトラス・D 手札3→4

 

損失を抑える見事なプレイング。これでジャックの手札は4枚まで回復した。流石はキングと言った所か、プレイングに無駄がない。

 

「カードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

ジャック・アトラス LP4000

フィールド『デーモンの将星』(攻撃表示)

『補給部隊』セット1

手札3

 

「拙者はスケール1の『黄昏の忍者ージョウゲン』と、スケール10の『黄昏の忍者ーカゲン』でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

月影の背後に黄金に輝く甲冑を纏い、鎖鎌を持った『忍者』と、筋骨隆々、腕に刃を装着した『忍者』が現れ、天空に光の魔方陣を結び、ペンデュラムによる三日月の軌跡を描く。これでレベル2から9のモンスターを同時に召喚可能、尤も、カゲンの誓約で『忍者』以外のモンスターのペンデュラム召喚は出来ないが。

 

「ほう、ペンデュラムか……」

 

「参る!ペンデュラム召喚!『忍者マスターHANZO』!」

 

忍者マスターHANZO 攻撃力1800

 

振り子の軌跡を描き、1本の輝く柱がフィールドに降り、黒き影が目にも止まらぬ速度で駆け抜ける。現れたのは『忍者』のキーカード。黒き衣を纏った『忍者』だ。

 

「HANZOの特殊召喚時、デッキより『黄昏の忍者将軍ーゲツガ』をサーチし、HANZOをリリース!由緒正しき風魔一族の真の力を思い知るが良い!アドバンス召喚!『黄昏の忍者将軍ーゲツガ』!!」

 

黄昏の忍者将軍ーゲツガ 攻撃力2000

 

そしてHANZOが変化し、登場したのは月影のエースモンスター。夕日と月が交わる旗を背に、月の飾りを模した兜、片眼を隠し、3本の腕で矛を握る『忍者』の将が今、フィールドに君臨し、軍配を振るう。

 

「それがお前のエースか」

 

「左様、拙者は永続魔法、『隠密忍法帖』を発動!手札の『忍者』モンスターを墓地に送り、デッキより永続罠、『機甲忍法ラスト・ミスト』をセットする。そしてゲツガの効果発動!このカードを守備表示に変更し、墓地の『黄昏の忍者ーシンゲツ』とHANZOを蘇生!」

 

黄昏の忍者ーシンゲツ 攻撃力1500

 

忍者マスターHANZO 攻撃力1800

 

ゲツガの命の下に、蘇るのは片眼を隠し、4本の腕で光の刃を振るう『忍者』とHANZOだ。

 

「HANZOの効果により、『白竜の忍者』をサーチ、そして2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!斬り結ぶ魂よ、降りよ!エクシーズ召喚!『機甲忍者ブレード・ハート』!」

 

機甲忍者ブレード・ハート 攻撃力2200

 

2体のモンスターが突如発生した渦に吸い込まれ、小爆発を起こし、赤い鎧を纏った『忍者』を呼ぶ。月影が零児より受け取った新たな力、エクシーズモンスターだ。

 

「ORUを取り除き、ブレード・ハートの2回攻撃を可能に!バトル!ブレード・ハートで将星に攻撃!カゲンのペンデュラム効果で1000、そしてアクションマジック、『オーバー・ソード』により500、ブレード・ハートの攻撃力をアップ!電磁抜刀カスミ斬り!」

 

機甲忍者ブレード・ハート 攻撃力2200→3200→3700

 

ジャック・アトラス・D LP4000→3300

 

ブレード・ハートがフィールドを駆け抜け、2刀の刃を手に将星の背後に回って切り裂き、フィールダメージでクルクルと回転するホイール・オブ・フォーチュン・D、ジャックはこれが当然と言わんばかりに涼しげに笑う。観客としても名物である。

 

『月影先制!このまま攻め込む!』

 

「そよ風が心地良いわ。『補給部隊』の効果でドロー!」

 

ジャック・アトラス・D 手札3→4

 

「ダイレクトアタック!」

 

「罠発動!『ピンポイント・ガード』!『トリック・デーモン』に耐性を与え、蘇生!」

 

トリック・デーモン 守備力0

 

「無駄だ!破壊は出来なくとも――ジョウゲンのペンデュラム効果で貫通ダメージを与える!」

 

「ほう……!」

 

ジャック・アトラス・D LP3300→1100

 

「フハハ……!」

 

ダメージを受け、より一層回転するホイール・オブ・フォーチュン・D。それでもジャックはまるでアトラクションのコーヒーカップを堪能するかのように愉快そうに笑う。

 

「カードを1枚セットし、ターンエンド」

 

風魔 月影 LP4000

フィールド『黄昏の忍者将軍ーゲツガ』(守備表示)『機甲忍者ブレード・ハート』(攻撃表示)

『隠密忍法帖』セット2

Pゾーン『黄昏の忍者ージョウゲン』『黄昏の忍者ーカゲン』

手札1

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「永続罠、『機甲忍法ラスト・ミスト』!『忍者』モンスターが存在する場合、相手が特殊召喚したモンスターの攻撃力は半分になる!」

 

「栓なき事……と一笑にふしたいが、それは少々厄介だな。『デーモンの将星』を特殊召喚!」

 

デーモンの将星 攻撃力2500→3000→1500

 

「『トリック・デーモン』を破壊し、『戦慄の凶皇ージェネシス・デーモン』をサーチ、『補給部隊』の効果でドロー!」

 

ジャック・アトラス・D 手札5→6

 

「そして元々の攻守を半減し、『戦慄の凶皇ージェネシス・デーモン』を妥協召喚!」

 

戦慄の凶皇ージェネシス・デーモン 攻撃力1500→2000

 

そして魔王城に君臨するのは紫の巨躯を持ち、肩や背中から角を伸ばし、膝に髑髏と赤い宝石を埋め込まれた魔剣を握る創世の魔王だ。

 

「凶皇の効果!墓地の将星を除外し、ラスト・ミストを破壊!更にアクションフィールド、『伏魔殿ー悪魔の迷宮』の効果発動!凶皇を対象とし、それ以外の悪魔族モンスター、将星を除外、デッキより対象と同じレベルの『デーモン』を呼び出す!来い!2体目の凶皇!」

 

戦慄の凶皇ージェネシス・デーモン 攻撃力3000→3500

 

「永続罠、『忍法分身の術』を発動!ゲツガをリリースし、デッキより『忍者マスターHANZO』を2体リクルートする!」

 

忍者マスターHANZO 攻撃力1800×2

 

「特殊召喚時、効果でゲツガと『機甲忍者アース』をサーチ!」

 

「そう来るか、魔法カード、『アドバンスドロー』!1体目の凶皇をリリースし、2枚ドロー!」

 

ジャック・アトラス・D 手札4→6

 

「速攻魔法、『手札断札』を発動。互いに手札を2枚入れ替える。凶皇の効果により、『トリック・デーモン』を除外し、カゲンを破壊!バトルに入る!凶皇でブレード・ハートを攻撃!」

 

風魔 月影 LP4000→2700

 

「ぐぬっ……!これしき……!」

 

凶皇の魔剣の一撃が迷宮ごとブレード・ハートを一刀両断し、ダメージが月影を襲う。鋭い攻撃であるが、まだまだ月影の有利だ。

 

「メインフェイズ2、カードを2枚セットし、ターンエンドだ」

 

ジャック・アトラス・D LP1100

フィールド『戦慄の凶皇ージェネシス・デーモン』(攻撃表示)

『補給部隊』セット2

手札3

 

「拙者のターン、ドロー!永続魔法、『冥界の宝札』を発動!HANZO2体をリリースし、アドバンス召喚!『白竜の忍者』!」

 

白竜の忍者 攻撃力2700

 

ドロンと2体の『忍者』が煙と消え、中より裂いて現れたのは光の東洋龍を連れた中性的な顔立ちのくノ一だ。上級『忍者』の中でもゲツガに続き、優秀な効果を持っており、攻防において立ち回れる。

 

「『冥界の宝札』の効果で2枚ドロー!」

 

風魔 月影 手札2→4

 

「分身の術をコストに、魔法カード、『マジック・プランター』!2枚ドロー!」

 

風魔 月影 手札3→5

 

「そしてカゲンをセッティング!ペンデュラム召喚!『黄昏の忍者将軍ーゲツガ』!!『黄昏の中忍ーニチリン』!」

 

黄昏の忍者将軍ーゲツガ 攻撃力2000

 

黄昏の中忍ーニチリン 攻撃力2300

 

続け様、怒濤の勢いで2体の『忍者』が姿を見せる。月と太陽、黄昏時の『忍者』だ。

 

「ゲツガの効果!守備表示に変更し、2体のHANZOを蘇生!」

 

忍者マスターHANZO 攻撃力1800×2

 

「効果で『機甲忍者アクア』を2枚サーチする!そして『隠密忍法帖』の効果発動!アクアを墓地へ送り、2枚目のラスト・ミストをセットする!まだまだ!2体のHANZOでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!『機甲忍者ブレード・ハート』!」

 

機甲忍者ブレード・ハート 攻撃力2200

 

「ORUを1つ使い、『白竜の忍者』の2回攻撃を可能とし、バトルに入る!」

 

「この瞬間、罠発動!『闇の閃光』!凶皇をリリースし、このターン特殊召喚されたモンスターを全て破壊!」

 

「させぬ!ニチリンの効果!手札のアクアを捨て、このターン、『忍者』と『忍法』カードに戦闘、効果破壊耐性を与える!」

 

「これを越えて来るか……面白い……!」

 

「『白竜の忍者』で、ダイレクトアタック!」

 

「罠発動!『威嚇する咆哮』!」

 

相次ぐカードの応酬が炸裂し、息もつかせぬデュエルを演出する。風魔 月影、ジャック・アトラス・Dを相手にここまで食い下がるとは。観客も予想外の善戦に盛り上がり、ジャック・Dもニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

 

『何てハイレベルなデュエルでしょう!どちらも一歩たりとも譲りません!』

 

『だが現状は月影の有利!その布陣は鉄のように硬い!』

 

「ターンエンド」

 

風魔 月影 LP2700

フィールド『黄昏の忍者将軍ーゲツガ』(守備表示)『黄昏の中忍ーニチリン』(攻撃表示)『機甲忍者ブレード・ハート』(攻撃表示)『白竜の忍者』

『隠密忍法帖』『冥界の宝札』セット1

Pゾーン『黄昏の忍者ージョウゲン』『黄昏の忍者ーカゲン』

手札2

 

MCの言う通り、現在の月影のフィールドは堅牢な城のように強固になっている。『忍者』を蘇生するゲツガに、戦闘、効果破壊耐性、攻撃力アップを付与するニチリン、2回攻撃付与のブレード・ハート、更には魔法、罠に破壊耐性付与の『白竜の忍者』により、ペンデュラムまでも守られ、セットカードは特殊召喚したモンスターの攻撃力を半減するラスト・ミスト。更に更にぃ、墓地にはダイレクトアタックを無効にするアクアが2枚。一切相手の関与を受け付けないと言わんばかりの戦略だ。

だがこの男はキング、ジャック・アトラス・D。ナチュラルボーンキングは面白いと笑みを浮かべ、圧倒的な力で捩じ伏せる。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「永続罠、『機甲忍法ラスト・ミスト』を発動!」

 

「心が踊る。流石は忍びと言った所か、芸達者な男よ。褒美として、特等席で、このジャック・アトラス・Dの!空前絶後のエンターテイメントをお見せしよう!俺は『レッド・スプリンター』を召喚!」

 

レッド・スプリンター 攻撃力1700→2200

 

現れたのは炎の鬣を持つ黒馬。自身のフィールドにモンスターが存在しない時こそ、真価を発揮する。

 

「効果で墓地から『レッド・リゾネーター』を特殊召喚!」

 

レッド・リゾネーター 守備力200

 

次は音叉とステッキを振るう、黒炎のローブを纏った小悪魔。ジャックのデッキを代表するチューナーモンスターであり、汎用レベル2チューナーの中ではかなり優秀なカードだ。

 

「特殊召喚時、『白竜の忍者』の攻撃力分、LPを回復!」

 

ジャック・アトラス・D LP1100→3800

 

この『レッド・リゾネーター』が、ジャック戦において厄介だ。召喚時は『切り込み隊長』と同じ展開効果。特殊召喚ならば敵味方問わず強力なモンスターの攻撃力をLPに変換する回復する。臨機応変で優秀なモンスター。このカードが存在する限り、ジャック相手に長期戦は禁物となる。

 

「レベル4の『レッド・スプリンター』に、レベル2の『レッド・リゾネーター』をチューニング!シンクロ召喚!『レッド・ライジング・ドラゴン』!」

 

レッド・ライジング・ドラゴン 攻撃力2100→1050

 

シンクロ召喚。『レッド・リゾネーター』が音叉を鳴らすと共にその小さな体が2つの光のリングとなって弾け飛び、『レッド・スプリンター』を包み込んで閃光が炸裂する。中より姿を見せたのは、炎に包まれた悪魔竜。彼のエース、『レッド・デーモン』の姿を模したようなモンスターだ。

 

「シンクロ召喚時、墓地から『レッド・リゾネーター』を吊り上げる」

 

レッド・リゾネーター 守備力200

 

「刮目せよ!俺はレベル6の『レッド・ライジング・ドラゴン』に、レベル2の『レッド・リゾネーター』をチューニング!漆黒の闇を裂き天地を焼き尽くす孤高の絶対なる王者よ!万物を睥睨しその猛威を振るえ!シンクロ召喚!『炎魔竜レッド・デーモン』!!」

 

炎魔竜レッド・デーモン 攻撃力3000→1500

 

そして――ジャック・アトラス・Dの絶対的信頼を受けるエースモンスターが君臨する。悪魔の角を伸ばし、巨大な翼で天を覆う、赤黒の体躯を誇る魔王竜。身体に走る赤のラインが、月光の下で映える。

 

「スカーライトではない……!?」

 

『おおっと、このモンスターは一体何だ!?ジャックの新たなエースでしょうか!?』

 

「攻撃力が半分になっているのが残念だ。俺は『シンクローン・リゾネーター』を特殊召喚!」

 

シンクローン・リゾネーター 守備力100

 

「そしてレベル8の『レッド・デーモン』に、レベル1の『シンクローン・リゾネーター』をチューニング!深淵の闇より解き放たれし魔王よ!その憤怒を爆散させよ!シンクロ召喚!『炎魔竜レッド・デーモン・アビス』!!」

 

炎魔竜レッド・デーモン・アビス 攻撃力3200→1600

 

更に進化、『レッド・デーモン』が進化の階段を駆け上がり、巨大な体躯、鋭い角、そして腕に斧のような刃を伸ばした『レッド・デーモン』へと生まれ変わる。だがそれでもラスト・ミストがある限り、弱体化からは逃れられない。

 

「『シンクローン・リゾネーター』の効果で墓地の『レッド・リゾネーター』をサルベージ!アビスの効果でラスト・ミストを無効に!」

 

「しかしそれでは遅いのではないか?既にアビスは半減している!」

 

「痛い所を突いてくるわ、こやつめ。フハハ。魔法カード、『打ち出の小槌』。手札を交換。安心しろ手はある!魔法カード、『復活の福音』!墓地のレベル8のドラゴン族モンスター、『炎魔竜レッド・デーモン』を蘇生!!」

 

炎魔竜レッド・デーモン 攻撃力3000

 

再びフィールドに舞い戻る魔王竜。これで2体の竜が揃った。凄まじい威圧感だ。アビスも半減していると言うのに冷や汗が止まらない。

 

「効果発動!このカード以外の攻撃表示のモンスターを全て破壊する!真紅の地獄炎!」

 

「させん!手札の『忍者』を捨て、ニチリンの効果発動!『忍者』と『忍法』を守る!」

 

「『補給部隊』の効果でドロー!」

 

ジャック・アトラス・D 手札1→2

 

「そう、そうするしかない。貴様の手札が尽きるまで、何度でも焼き尽くしてくれるわ!」

 

『レッド・デーモン』が腕を振るうと共に獄炎が地より噴き出し、『忍者』を焼き尽くそうと津波の如く襲いかかるが――ニチリンが額の飾りを発光させ、光のバリアで破壊を防ぐ。

 

「バトル!『炎魔竜レッド・デーモン』でブレード・ハートを攻撃!極獄の裁き!」

 

風魔 月影 LP2700→1800

 

『レッド・デーモン』のブレスがブレード・ハートに襲いかかり、僅かに鎧を溶かし、月影にダメージを与える。如何に耐性を与えられても攻撃力では『レッド・デーモン』が上、ダメージが無効に出来ない以上、こうなる事は必然だ。

 

「魔法カード、『死者蘇生』!蘇れ!アビスよ!!」

 

炎魔竜レッド・デーモン・アビス 攻撃力3200

 

そして再びアビスが『レッド・デーモン』の隣に並ぶ。ただでさえ強力な『レッド・デーモン』に無効化効果を持たせたカード。攻めにも守りにも転じれるこのカードは早めに処理しておきたいカードだ。

 

「速攻魔法、『魔力の泉』。貴様のフィールドの表側表示の魔法、罠の数6枚ドローし、俺のフィールドの表側表示の魔法、罠の数3枚を墓地へ」

 

ジャック・アトラス・D 手札0→6→3

 

「魔法カード、『暗黒界の取引』。手札を交換。速攻魔法、『リロード』。更に手札を交換。ターンエンドだ」

 

ジャック・アトラス・D LP3800

フィールド『炎魔竜レッド・デーモン』(攻撃表示)『炎魔竜レッド・デーモン・アビス』(攻撃表示)

『補給部隊』

手札1

 

『ジャック見事なプレイング!たった1枚のカード、アビスで月影を牽制する!』

 

『攻撃力も高く、ペンデュラム効果も無効にされる訳だ!これは月影、辛いか!』

 

その通り、月影にかかったプレッシャーは大きい。例えカゲンとニチリンの効果で攻撃力をアップしても、ニチリンの時点で止められる。1度の破壊耐性を与える『復活の福音』が墓地にある以上、破壊は出来ず、次のターン、ニチリンで防ごうとアビスで無効にされる。かと言ってアビスを倒しても、残った『レッド・デーモン』が全体破壊を行う。考え抜け――どうにかする方法を――。

 

「拙者のターン、ドロー!魔法カード、『アームズ・ホール』!装備魔法、『風魔手裏剣』をサーチ!白竜に装備!攻撃力を700アップ!」

 

白竜の忍者 攻撃力2700→3400

 

「ほう……そう来たか」

 

「ブレード・ハートの効果により、ORUを取り除き、白竜に2回攻撃権を与える!」

 

「そちらを止めよう、アビスの効果で無効!」

 

「バトル!白竜でアビスへ攻撃!」

 

「『復活の福音』を除外し、防ぐ」

 

「だがダメージは受けてもらう!」

 

ジャック・アトラス・D LP3800→3600

 

白竜による攻撃がアビスの腹部に叩き込まれ、ズザザと土煙を巻き上げ飛び退く。これで破壊耐性はなくなった。どちらを処理すべきか、無効のアビスか、破壊の『レッド・デーモン』か。

 

「アビスだ!損失はゲツガで取り戻せる!ニチリンで攻撃!カゲンのペンデュラム効果で攻撃力を1000アップ!」

 

黄昏の中忍ーニチリン 攻撃力2300→3300

 

ジャック・アトラス・D LP3600→3500

 

「ふむ……賢明にして大胆……良いだろう、俺も『補給部隊』の効果でドロー!」

 

ジャック・アトラス・D 手札1→2

 

「ブレード・ハートで自爆特攻!」

 

「む、アクションマジック、『回避』!攻撃を無効に!」

 

「ターンエンドだ!」

 

風魔 月影 LP1800

フィールド『黄昏の忍者将軍ーゲツガ』(守備表示)『黄昏の中忍ーニチリン』(攻撃表示)『機甲忍者ブレード・ハート』(攻撃表示)『白竜の忍者』(攻撃表示)

『風魔手裏剣』『隠密忍法帖』『冥界の宝札』『機甲忍法ラスト・ミスト』

Pゾーン『黄昏の忍者ージョウゲン』『黄昏の忍者ーカゲン』

手札1

 

「俺のターン、ドロー!『レッド・デーモン』の効果発動!焼き尽くせ!」

 

「手札に『忍者』カードはない。白竜と共に墓地に送られた『風魔手裏剣』の効果で相手に700のダメージを与える!」

 

「『補給部隊』の効果でドロー!」

 

ジャック・アトラス・D LP3500→2800 手札2→3

 

「かゆいわ」

 

一刀両断。『レッド・デーモン』が手刀を振り下ろすと共に地面より溢れ出したマグマが月影のモンスターを破壊する。残るはゲツガ1体のみ。だが『レッド・デーモン』とゲツガの攻守は同じだ。

 

「カードを1枚セットし、ターンエンドだ」

 

ジャック・アトラス・D LP2800

フィールド『炎魔竜レッド・デーモン』(攻撃表示)

『補給部隊』セット2

手札2

 

「拙者のターン、ドロー!魔法カード、『手札抹殺』!手札を交換、ゲツガを攻撃表示に変更し、効果発動!墓地のHANZOを――」

 

「永続罠発動!『デモンズ・チェーン』!」

 

「ッ!?」

 

ゲツガの効果により、再び優位に立とうとした月影だが、逆に効果発動の為に攻撃表示にしなければならないと言う隙を突かれ、異次元の渦より鎖が飛び出し、ゲツガを絡み取って動きを封じる。最悪の展開だ。損失を取り戻す?それを知って尚、ジャック・Dが放置してくれる等。考えが甘かった。ジャック・Dは眠そうな眼で月影へ視線を移し、片手をハンドルの上に乗せ、頬杖をつく。

 

「それは飽きた。もっと他の芸を見せてみよ」

 

「ッ!言ってくれる……!魔法カード、『アドバンスドロー』!ゲツガをリリースし、2枚ドロー!」

 

風魔 月影 手札0→2

 

「更に墓地の『シャッフル・リボーン』を除外し、『冥界の宝札』をデッキに戻し、1枚ドロー!」

 

風魔 月影 手札2→3

 

「ペンデュラム召喚!『黄昏の忍者ージョウゲン』!」

 

黄昏の忍者ージョウゲン 攻撃力2000

 

「バトルだ!ジョウゲンで『レッド・デーモン』へ攻撃!カゲンのペンデュラム効果発動!」

 

「そこまでして相撃ちか、涙ぐましいな。良いだろう」

 

黄昏の忍者ージョウゲン 攻撃力2000→3000

 

ジョウゲンの決死の特攻が炸裂し、『レッド・デーモン』の胸部に風穴が空き、ジョウゲンが攻撃の反動で崩れ落ちる。

 

「『補給部隊』の効果でドロー!」

 

ジャック・アトラス・D 手札2→3

 

「カードを1枚セットし、ターンエンド!『シャッフル・リボーン』のデメリットで手札を除外」

 

風魔 月影 LP1800

フィールド

『隠密忍法帖』『機甲忍法ラスト・ミスト』セット1

Pゾーン『黄昏の忍者ージョウゲン』『黄昏の忍者ーカゲン』

手札0

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、『マジック・プランター』!『デモンズ・チェーン』をコストに、2枚ドロー!」

 

ジャック・アトラス・D 手札3→5

 

「速攻魔法、『ツイン・ツイスター』!手札を1枚捨て、『隠密忍法帖』とラスト・ミストを破壊する!」

 

「ぐっ――!」

 

これでラスト・ミストをサーチ出来る『隠密忍法帖』を破壊、ラスト・ミスト自身も砕け散った。攻撃力半減がなくなり、ジャック・D本来のパワーデュエルを思う存分振るう事が可能となった。解き放たれし魔物が獰猛に笑みを浮かべ、牙を剥く。

 

「『レッド・スプリンター』を召喚!」

 

レッド・スプリンター 攻撃力1700→2200

 

「墓地の『レッド・リゾネーター』を蘇生!」

 

レッド・リゾネーター 守備力200

 

「スプリンターの攻撃力分回復!」

 

ジャック・アトラス・D LP2800→5000

 

やはりこの効果は厄介だ。ダメージを入れても入れてもこの『リゾネーター』がある限り、直ぐ様取り戻す。ジャック・Dを倒す方法はワンショットキル位のものだろうが――パワーデュエルばかりと思われるジャック・Dはその実、防御に関しても優れている。そこまで至る道は苦難だろう。遊矢がジャックを倒せたのも対策を行い、自分のデュエルを伸ばし、ペースを掴んだ上で運が良かったから。奇跡に奇跡を重ねた結果だ。格上である事は変わらない。しかも――彼等は知らないが、このジャック・アトラス・Dはジャック・アトラスの更に上を往く。

 

「レベル4の『レッド・スプリンター』にレベル2の『レッド・リゾネーター』をチューニング!赤き魂、ここに1つとなる!王者の雄叫びに震撼せよ!シンクロ召喚!現れろ、『レッド・ワイバーン』!」

 

レッド・ワイバーン 攻撃力2400

 

現れたのは魔王竜の忠実な僕である、真紅のに染まった翼竜だ。後頭部から火炎を吹かし、けたたましい雄叫びを放つ。

 

「バトル!『レッド・ワイバーン』でダイレクトアタック!」

 

「罠発動!『聖なるバリアーミラーフォースー』!『レッド・ワイバーン』を破壊!」

 

「足掻くか……『補給部隊』の効果でドロー!」

 

ジャック・アトラス・D 手札2→3

 

「カードをセット。どこまでもつかな?ターンエンドだ」

 

ジャック・アトラス・D LP5000

フィールド

『補給部隊』セット1

手札2

 

「拙者のターン、ドロー!ペンデュラム召喚!『黄昏の忍者ージョウゲン』!『黄昏の中忍ーニチリン』!」

 

黄昏の忍者ージョウゲン 攻撃力2000

 

黄昏の中忍ーニチリン 攻撃力2300

 

「バトル!ニチリンで攻撃!カゲンのペンデュラム効果発動!」

 

黄昏の中忍ーニチリン 攻撃力2300→3300

 

「ぐっ――!永続罠発動!『銀幕の鏡壁』!貴様の攻撃モンスターの攻撃力を半分にする!」

 

黄昏の忍者ーニチリン 攻撃力3300→1650

 

ジャック・アトラス・D LP5000→3350

 

ニチリンが掌に気を集め、円盤上の刃、ソーサーにして投擲、ジャック・Dのホイール・オブ・フォーチュン・Dにぶつかり、激しく回転する。危うく腰がもげかけそうになった。

 

「ジョウゲンでダイレクトアタック!」

 

黄昏の忍者ージョウゲン 攻撃力2000→1000

 

ジャック・アトラス・D LP3350→2350

 

「おぉぉぉぉっ!?」

 

『月影猛攻ーっ!意地を見せる!流石のジャックもこれには堪らないか!?』

 

『残りは2350!削り切れるか!?』

 

続け様のジョウゲンの鎖鎌がLPを刈り取る。残り2350、隙が見えて来たが、ここで逃したのは辛い。

 

「ターンエンドだ!」

 

風魔 月影 LP1800

フィールド『黄昏の忍者ージョウゲン』(攻撃表示)『黄昏の中忍ーニチリン』(攻撃表示)

Pゾーン『黄昏の忍者ージョウゲン』『黄昏の忍者ーカゲン』

手札0

 

「俺のターン、ドロー!スタンバイフェイズ、『銀幕の鏡壁』のライフコストを払う!」

 

ジャック・アトラス・D LP2350→350

 

「クク、血沸き肉踊るわ……!これこそがデュエル!己の確固たる信念をぶつけ合い、今まで闘った記憶をさらけ出す!駆け引き、戦略、運を総動員する究極にして至高のエンターテイメント!これが俺の求めたもの!もっと味わわせてもらうぞ!貴様等全員、骨の髄までしゃぶり尽くしてくれるわ!」

 

『ジャック大胆にも3人抜きを宣言!果たして誓約は果たされるか!』

 

「魔法カード、『マジック・プランター』!銀幕を捨て、2枚ドロー!」

 

ジャック・アトラス・D 手札2→4

 

「魔法カード、『手札抹殺』!手札を全て捨て、その分ドロー!墓地へ送られた『髑髏顔天道虫』の効果で1000回復!」

 

ジャック・アトラス LP350→1350

 

「俺は奴とは違うんでな!全員引き摺り出してやろう。魔法カード、『復活の福音』!舞い戻れ!我が魂!『炎魔竜レッド・デーモン』!!」

 

炎魔竜レッド・デーモン 攻撃力3000

 

「効果発動!その身を我が竜に捧げよ!」

 

蘇った赤き悪魔の獄炎が『忍者』を食らうように呑み込む。剥き出しの状態――防ぐ手立ては、ある。

 

「ダイレクトアタック!」

 

『墓地のアクアを除外し、攻撃を無効に!』

 

「アクションマジック、『オーバー・ソード』!『レッド・デーモン』の攻撃力を500アップし、攻撃は無効化されない!」

 

炎魔竜レッド・デーモン 攻撃力3000→3500

 

風魔 月影 LP1800→0

 

しかし――ジャックは更に上を往く。紅蓮の炎が月影を呑み込み、LPが0を刻む。勝者、ジャック・アトラス・D。魔王が今、蹂躙の音を踏み鳴らす――。

 




少々迷いましたが月影のエクストラデッキにブレード・ハート追加。これでノーエクストラは沢渡さんだけになりました。なのに何で沢渡さんって半端なエクストラありなデュエリストより強いんだろ……?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。