数と言うのは分かりやすい力の一種だ。それも人数と言う数ならば尚更に。1人では出来ない事とも、2人でなら。それは遊矢自身、身をもって体験した事であり、目指すものであり、これ以上なく頼もしい力であった。それが今――遊矢の敵として襲いかかっている。
会場中の溢れかえらんばかりの観客、コモンズ達が爆音かと聞き間違える程の凄まじい声を張り上げ、眼前を走る相手――シンジ・ウェーバーにエールを送る。まるで遊矢が悪役にでもなったような光景だ。居心地が悪いと言うレベルではない。今この時、遊矢はコモンズの敵となったのだ。
「俺のターン、ドロー!魔法カード、『暗黒界の取引』。手札を交換、ドクロバット・ジョーカーとロングフォーン・ブルをリリースし、アドバンス召喚!『相克の魔術師』!」
相克の魔術師 攻撃力2500
遊矢が召喚したのは大剣を構えた『魔術師』だ。このカードが来てくれたのなら『エーリアン』の相手も少し楽となる。
「ペンデュラム召喚!『EMセカンドンキー』!」
EMセカンドンキー 守備力2000
次の現れたのはロバのモンスターだ。『相克の魔術師』をアドバンス召喚したのもこのカードを呼ぶ為のモンスターゾーンを空ける為。
「セカンドンキーの効果で『EMペンデュラム・マジシャン』をサーチ、バトル!『相克の魔術師』で必中のピンを攻撃!」
「くっ――!」
「更にファイア・マフライオの効果発動!俺のペンデュラムモンスターが相手モンスターを戦闘破壊した事で、そのペンデュラムモンスターの攻撃力を200アップし、リベンジャーに2回目の攻撃を行う!」
相克の魔術師 攻撃力2500→2700
古代遺跡コードA Aカウンター1→2
榊 遊矢 LP1000
フィールド『EMオッドアイズ・ミノタウロス』(守備表示)『EMファイア・マフライオ』(守備表示)『EMセカンドンキー』(守備表示)『EMギッタンバッタ』(守備表示)『相克の魔術師』(攻撃表示)
セット1
Pゾーン『EMギタートル』『EMレ・ベルマン』
手札1
「俺のターン、ドロー!スタンバイフェイズ、『「A」細胞増殖装置』の効果で『相克の魔術師』にカウンターを乗せる!」
相克の魔術師 Aカウンター0→1
「魔法カード、『暗黒界の取引』を発動。そしてミノタウロスのカウンターを2つ使い、墓地のリベンジャーを蘇生!」
EMオッドアイズ・ミノタウロス Aカウンター3→1
「A」細胞培養装置 Aカウンター2→3
エーリアン・リベンジャー 攻撃力2200
「リベンジャーの効果発動!」
EMオッドアイズ・ミノタウロス Aカウンター3→4
EMファイア・マフライオ Aカウンター2→3
EMセカンドンキー Aカウンター0→1
EMギッタンバッタ Aカウンター2→3
相克の魔術師 Aカウンター1→2
「チッ、バトル……と行きたい所だが、ここでモンスターを倒せば面倒な『EMペンデュラム・マジシャン』が呼ばれるからな……モンスターをセット、ターンエンドだ」
「ギッタンバッタの効果発動!」
「おっと、墓地の『ブレイクスルー・スキル』を除外し、無効にするぜ」
シンジ・ウェーバー LP800
フィールド『エーリアン・リベンジャー』(攻撃表示)セットモンスター
『「A細胞増殖装置」』『「A」細胞培養装置』『古代遺跡コードA』
手札0
「俺のターン、ドロー!速攻魔法、『ツイン・ツイスター』を発動!手札1枚を捨て、『古代遺跡コードA』と『「A」細胞増殖装置』を破壊!」
これで漸く『エーリアン』の供給源を断ち切った。後は『「A」細胞培養装置』だが――このカードは破壊されればAカウンターをばら撒く為、放置で構わない。Aカウンターを取り除き効果を発動するカードが無ければただの置物と化す。
「相克でリベンジャーに攻撃!『EMオッドアイズ・ミノタウロス』の効果発動!そしてファイア・マフライオの効果を使い、セットモンスターに追撃!」
相克の魔術師 攻撃力2500→1900→2500→2700
「チッ、『エーリアン』がやられたか……!」
榊 遊矢 LP1000
フィールド『EMオッドアイズ・ミノタウロス』(守備表示)『EMファイア・マフライオ』(守備表示)『EMセカンドンキー』(守備表示)『EMギッタンバッタ』(守備表示)『相克の魔術師』(攻撃表示)
セット1
Pゾーン『EMギタートル』『EMレ・ベルマン』
手札1
「俺のターン、ドロー!墓地の『シャッフル・リボーン』を除外し、培養装置をデッキに戻し、ドロー!」
シンジ・ウェーバー 手札1→2
「来たか……!さぁ、行くぞ!コモンズの皆!これが俺達の革命だ!」
『オオオオオッ!シンジ!シンジ!シンジ!』
ドローカードを目を配らせ、シンジが右手を振り上げてコモンズ達を先導する。凄まじいカリスマだ。彼の言葉が、意志が、これだけの人々の心を突き動かしている。素直に凄いと遊矢は尊敬する。
だが――チラリと視線を観客席に移せば、トップス達は怯え、コモンズの子供も不安そうにしている。
シンジの言う事は間違ってないのかもしれないし、仕方無いものだ。何かに不満を持ち、多くの仲間と共に変えようとする。それは素晴らしい事であり、歴史を見ても起こるべくして起こるもの。だが――その結果、待ち構えているものを想像し、遊矢の表情が僅かに歪む。
「魔法カード、『一斉蜂起』!相手フィールドにモンスターが存在する場合、その数だけ墓地のレベル4以下の『B・F』を蘇生する!」
「ッ!俺のフィールドのモンスターは、5……!」
「そうだ!蜂は群れを成し、小さくとも、俺達1人1人の毒針を合わせ巨大な敵をも打ち倒す!さぁ、コモンズ達よ!今こそ立ち上がれ!」
『オオオオオッ!!』
『ちょっとちょっとー!これフレンドシップカップなんですけどー!』
「来い!アルバレスト3体!ピン1体!『B・Fー毒針のニードル』1体!」
B・Fー早撃ちのアルバレスト 攻撃力1800×3
B・Fー必中のピン 守備力300
B・Fー毒針のニードル 守備力800
ペンデュラムも驚愕の、一気に5体の大量展開。まさかこんな形でこちらのペンデュラムを逆手に取って来るとは思ってもみなかった。流石にこれは不味い。
「行くぞ!レベル4のアルバレストに、レベル2のニードルをチューニング!その羽で爆風を巻き起こし、その一刺しで真実の道を切り拓け!シンクロ召喚!来い、『B・Fー突撃のヴォウジェ』!」
B・Fー突撃のヴォウジェ 攻撃力2500
シンクロ召喚、漸くシンジが本来の力を出し、召喚されたのは青い甲殻を纏った槍を構える蜂の兵士。
「バトル!ヴォウジェで相克へ攻撃!ヴォウジェの効果で相克の攻撃力を半減する!」
相克の魔術師 攻撃力2500→1250
「罠発動!『ガード・ブロック』!ダメージを0にし、1枚ドロー!」
榊 遊矢 手札1→2
ヴォウジェが高速で羽ばたき、相克に肉薄、そのまま槍の一刺しで相克を倒す。だが遊矢も負けまいとダメージをドローに書き換える。
「2体のアルバレストでギッタンバッタへ攻撃!カードを1枚セット、ターンエンドだ!」
シンジ・ウェーバー LP800
フィールド『B・Fー突撃のヴォウジェ』(攻撃表示)『B・F早撃ちのアルバレスト』(攻撃表示)×2『B・Fー必中のピン』(守備表示)
セット1
手札0
「俺のターン、ドロー!魔法カード、『ペンデュラム・ターン』!ギタートルのスケールを10に変更!永続魔法、『補給部隊』を発動!ペンデュラム召喚!『EMペンデュラム・マジシャン』!『相克の魔術師』!」
EMペンデュラム・マジシャン 守備力800
相克の魔術師 攻撃力2500
ついに現れる『EM』のキーカード、『EMペンデュラム・マジシャン』。このカードが登場したからには遊矢のデュエルは本領を発揮する。
「『EMペンデュラム・マジシャン』の効果発動!レ・ベルマンとこのカードを破壊し――」
「させねぇよ!カウンター罠、『大革命返し』!その発動を無効にし、除外する!」
しかし残念ながらそうはいかない。シンジはペンデュラムの特性を見抜き、魔法、罠を破壊するカードを積んだように、同時に遊矢のデッキで最も強力なこのカードにも対策を取っていたのだ。
「革命しようって奴が入れるカードかよ……!」
「それだけお前を買っているって事だ」
「嬉しくないっ!ぐぬぬ、ミノタウロスを攻撃表示に変更!バトル!ミノタウロスでアルバレストへ攻撃!」
「アクションマジック、『回避』!」
「相克でピンへ攻撃!ファイア・マフライオの効果を使い、ヴォウジェへ追撃!」
相克の魔術師 攻撃力2500→2700
「ターンエンドだ」
榊 遊矢 LP1000
フィールド『EMオッドアイズ・ミノタウロス』(攻撃表示)『EMファイア・マフライオ』(守備表示)『EMセカンドンキー』(守備表示)『相克の魔術師』(攻撃表示)
『補給部隊』
Pゾーン『EMギタートル』『EMレ・ベルマン』
手札0
「俺のターン、ドロー!速攻魔法、『魔力の泉』!4枚ドローし、2枚捨てる!」
シンジ・ウェーバー 手札0→4→2
「『B・Fー連撃のツインボウ』を特殊召喚!」
B・Fー連擊のツインボウ 攻撃力1000
「そして『ホップ・イヤー飛行隊』を召喚!」
ホップ・イヤー飛行隊 攻撃力300
「レベル3のツインボウに、レベル2の『ホップ・イヤー飛行隊』をチューニング!蜂出する憤激の針よ、閃光と共に天をも射抜く弓となれ!シンクロ召喚!現れろ!『B・Fー霊弓のアズサ』!」
B・Fー霊弓のアズサ 攻撃力2200
再びのシンクロ召喚で現れたのはヴォウジェと対を成すような桃色の身体を持つ弓矢に雷を纏わせた人型の女王蜂。
「バトル!アズサでミノタウロスに攻撃!」
「アクションマジック、『ダメージ・バニッシュ』!ダメージを0に!『補給部隊』でドロー!」
榊 遊矢 手札0→1
アズサの弓より放たれた電光の矢がセカンドンキーを貫き、硝子のように砕け散る。
「アルバレストでセカンドンキーへ攻撃!アクションマジック、『オーバー・ソード』!アルバレストの攻撃力を500アップ!」
B・Fー早撃ちのアルバレスト 攻撃力1800→2300
シンジが出来るのはここまで。幾ら戦力を呼ぼうと遊矢のモンスターはペンデュラムの特性を持っている。一気に殲滅しない限り、その刃は届かない。どちらも手を出せない状況だ。
「ターンエンド」
シンジ・ウェーバー LP800
フィールド『B・Fー霊弓のアズサ』(攻撃表示)『B・Fー早撃ちのアルバレスト』(攻撃表示)×2
手札0
「俺のターン、ドロー!魔法カード、『成金ゴブリン』!相手のLPを1000回復させる代わりに1枚ドローする!」
榊 遊矢 手札1→2
シンジ・ウェーバー LP800→1800
「ペンデュラム召喚!『EMオッドアイズ・ミノタウロス』!『EMドクロバット・ジョーカー』!『EMインコーラス』!」
EMオッドアイズ・ミノタウロス 攻撃力1200
EMドクロバット・ジョーカー 攻撃力1800
EMインコーラス 攻撃力500
「バトル!インコーラスでアルバレストへ攻撃!インコーラスの効果で『EMスライハンド・マジシャン』をリクルートし、『補給部隊』の効果でドロー!」
EMスライハンド・マジシャン 攻撃力2500
榊 遊矢 手札2→3
インコーラスの自爆特攻で現れたのは赤い衣装に白い仮面、下半身が水晶になったマジシャンだ。遊矢のデュエルで何度も活躍したこのカードならば――。
「ミノタウロスでアルバレストへ攻撃!」
「アクションマジック、『回避』!」
「スライハンド・マジシャンでアズサへ攻撃!」
「墓地の『仁王立ち』を除外、アルバレストへ攻撃を絞る!」
「ッ!なら相克でアルバレストへ攻撃!ミノタウロスの効果発動!」
B・Fー早撃ちのアルバレスト 攻撃力1800→1200
シンジ・ウェーバー LP1800→500
「ハッ、届かなかったな!」
「ッ、メインフェイズ2、スライハンド・マジシャンの効果で手札を1枚捨て、アズサを破壊!」
「チッ!」
榊 遊矢 LP1000
フィールド『EMスライハンド・マジシャン』(攻撃表示)『EMオッドアイズ・ミノタウロス』(攻撃表示)『EMドクロバット・ジョーカー』(攻撃表示)『EMファイア・マフライオ』(守備表示)『相克の魔術師』(攻撃表示)
『補給部隊』
Pゾーン『EMギタートル』『EMレ・ベルマン』
手札2
「俺のターン、ドロー!アルバレストを守備表示に、カードを1枚セットし、ターンエンドだ」
シンジ・ウェーバー LP500
フィールド『B・Fー早撃ちのアルバレスト』(守備表示)
セット1
手札0
「俺のターン、ドロー!スライハンド・マジシャンの効果で手札のアクションカードを捨て、アルバレストを破壊!」
「罠発動!『裁きの天秤』!それを待ってたんだ!俺のフィールド、手札は2枚、お前のフィールドには9枚のカード、よって7枚ドロー!」
シンジ・ウェーバー 手札0→7
『シンジ7枚のドロー!とんでもない回復力だ!』
「くっ、ターンエンドだ……!」
榊 遊矢 LP1000
フィールド『EMスライハンド・マジシャン』(攻撃表示)『EMオッドアイズ・ミノタウロス』(守備表示)『EMドクロバット・ジョーカー』(攻撃表示)『EMファイア・マフライオ』(攻撃表示)『相克の魔術師』(攻撃表示)
『補給部隊』
Pゾーン『EMギタートル』『EMレ・ベルマン』
手札3
「俺のターン、どうだ遊矢!俺はコモンズ達の未来を賭けて闘ってるんだよ!トップス達を引き摺り落とすまで、俺は、俺達は止まらねぇ!」
「……っ!」
トップスへの、格差社会への怒りを胸にシンジは叫ぶ。当然の怒りかもしれない、だけど――彼に、そんな事をさせてはいけない。
「それが――それがトップスと同じ事をするって分かっても、お前はやるのか?」
「……ああ、そうだ」
肯定、遊矢の問いかけに対し、シンジは僅かに目を見開いた後、キュッと細めて頷く。そう、シンジは全て、承知した上で革命を起こそうとしているのだ。革命の結果が、トップスと同じ事になろうと言う事も、結局、中身は変わらないと言う事も。
「何でだ……何で分かっていて……!」
「それでも、変わるんだよ……!99%の犠牲が、1%になる!良い方向に変わるんだ!多くの子供が貧しい思いをしなくて済む!罪なき人が、頑張っている奴が報われるんだ!」
たった1%、1%の犠牲に目を瞑れば、このシティは確実に変わるだろう。そして彼等には瞑る事が出来る。出来てしまう。トップス達に日々不満を持つコモンズは、今までのツケが回って来ただけだと、トップスを見捨てる。だがその行為だけを見逃せば、シンジは間違っていない。
「何も救われないだろ!そんなの上部だけだ!そんなのは駄目だ!何より、俺はお前にそんな事をして欲しくない!」
「ッ!遊……矢……!」
だけど、それでは駄目だと遊矢は吠える。それは嫌だと駄々をこねる。我が儘かもしれない、遊矢が分からず屋なのかもしれない。だけど。
「俺達を助けれくれた、優しいお前にそんな事をして欲しくない!友達に、自分がされて嫌だった事をして欲しくない!何かある筈なんだ、トップスもコモンズも、手を取り合える道が!許せとまでは言わないさ、だけど復讐なんて駄目だろう!?」
シンジ達は見ず知らずの遊矢達を文句も言わずに助けてくれる優しい青年だ。その優しさが、誰かを傷つける事になるなんて遊矢には堪えられない。友達にそんな事をして欲しくないのだ。決して許せとまでは言わない。だけど――出来る事なら、胸を張れる道を作って欲しい。
「そんな事が、出来ると思ってるのか!?」
「出来る!俺の友達だって、どうしようもない怒りを乗り越えて、前に進めたんだ!」
「ッ、だったら俺の、俺達の怒りもどうにかしてみやがれ!このシティの、99%の想いを!力で証明しろ!それがこのシティの――クソッタレたルールだ!手札の『D.D.クロウ』を捨て、テメェの墓地からギッタンバッタを除外!永続魔法、『補給部隊』を発動し、魔法カード、『一斉蜂起』!墓地より立ち上がれ!アルバレスト2体、ツインボウ、ニードル、ピン!」
B・Fー早撃ちのアルバレスト 攻撃力1800×2
B・Fー連擊のツインボウ 攻撃力1000
B・Fー毒針のニードル 守備力800
B・Fー必中のピン 守備力300
再び大量展開カード、『一斉蜂起』によって蘇る『B・F』モンスター達。たった1枚からこれなのだから恐れ入る。
「レベル3のツインボウに、レベル2のニードルをチューニング!シンクロ召喚!『B・Fー霊弓のアズサ』!」
B・Fー霊弓のアズサ 攻撃力2200
「ピンの効果で200のダメージを与える!この瞬間、アズサの効果で『B・F』が与える効果ダメージは倍になる!」
榊 遊矢 LP1000→600
「そして連擊のツインボウを特殊召喚!」
B・Fー連擊のツインボウ 攻撃力1000
「立ち塞がるなら誰だろうと容赦はしねぇ!行くぞ遊矢!レベル3のツインボウに、レベル5のアズサをチューニング!」
「シンクロチューナー……!?」
アズサが閃光と共にリングとなって弾け、ツインボウを包み込む。シンクロモンスターであり、チューナーモンスター。徳松も持っていた特殊なカードだ。シンジはそのシンクロチューナーでしか呼び出せぬ切り札をエクストラデッキから引き抜く。
「呼応する力、怨毒の炎を携え反抗の矢を放て!シンクロ召喚!『B・Fー降魔弓のハマ』!!」
B・Fー降魔弓のハマ 攻撃力2800
現れたのはシンジ・ウェーバーが誇る最強の切り札。緑の甲殻の鎧を纏い、弓矢より雷を迸らせる破魔の矢。人型をした蜂の戦士だ。
「バトル入り、終了。この瞬間、ハマの効果で戦闘ダメージが発生しなかったバトルフェイズ終了時、墓地の『B・F』の数×300のダメージを与える!」
「手札の『EMレインゴート』を捨て、効果ダメージを防ぐ!」
ピンの効果が通った事でシンジが迷う事なくハマの効果によって決着を狙うも、遊矢が温存していたレインゴートがバサリと覆い被さり、矢を弾く。
「チッ、カードを2枚セット、ターンエンドだ」
シンジ・ウェーバー LP500
フィールド『B・Fー降魔弓のハマ』(攻撃表示)『B・Fー早撃ちのアルバレスト』(攻撃表示)×2『B・Fー必中のピン』(守備表示)
『補給部隊』セット2
手札3
「俺のターン、ドロー!手札を1枚捨て、スライハンド・マジシャンの効果でハマを破壊!」
「罠発動!『スキル・プリズナー』!ハマを狙うモンスター効果を無効に!」
「ならバトルで倒す!スライハンド・マジシャンでハマへ攻撃!」
「甘いね!底知れぬ闇に沈め!罠発動!『聖なるバリアーミラーフォースー』!」
「なっ!?」
度重なる遊矢の手を危うげなく対処するシンジ。手強い。『チキンレース』の効果もあって、2人の間には分厚い壁が存在し、遮っている。
「『補給部隊』の効果でドロー!」
榊 遊矢 手札2→3
「ペンデュラム召喚!『EMドクロバット・ジョーカー』!『EMインコーラス』!」
EMドクロバット・ジョーカー 守備力100
EMインコーラス 守備力500
「そして速攻魔法、『揺れる眼差し』!スケールを破壊し、ペンデュラムモンスター、『EMダグ・ダガーマン』をサーチ!『オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン』と共にセッティング!そしてダグ・ダガーマンの効果でレインゴート回収!カードを1枚セット、ターンエンド。この瞬間、『オッドアイズ』を破壊し、デッキの『EMモモンカーペット』をサーチする!」
榊 遊矢 LP500
フィールド『EMオッドアイズ・ミノタウロス』(守備表示)『EMドクロバット・ジョーカー』(守備表示)『EMインコーラス』(守備表示)『EMファイア・マフライオ』(守備表示)
『補給部隊』セット1
Pゾーン『EMダグ・ダガーマン』
手札2
「俺のターン、ドロー!魔法カード、『ワン・フォー・ワン』!手札のモンスターを捨て、デッキのレベル1モンスター、『グローアップ・バルブ』を特殊召喚!」
グローアップ・バルブ 守備力100
「レベル4のアルバレストに、レベル1の『グローアップ・バルブ』をチューニング!シンクロ召喚!『B・Fー霊弓のアズサ』!」
B・Fー霊弓のアズサ 攻撃力2200
「まだだ!デッキトップをコストに『グローアップ・バルブ』を蘇生!」
グローアップ・バルブ 守備力100
「レベル4のアルバレストとレベル1のピンに、レベル1のグローアップ・バルブをチューニング!シンクロ召喚!『B・Fー突撃のヴォウジェ』!」
B・Fー突撃のヴォウジェ 攻撃力2500
『B・F』シンクロモンスター、揃い踏み。強力な展開力により、シンジのフィールドで蜂が踊る。
「バトルに入り、終了。ハマの効果でダメージを与える!」
「レインゴートを捨て、ダメージを0に!」
「カードを1枚セット、ターンエンドだ」
シンジ・ウェーバー LP500
フィールド『B・Fー降魔弓のハマ』(攻撃表示)『B・Fー霊弓のアズサ』(攻撃表示)『B・F突撃のヴォウジェ』(攻撃表示)
『補給部隊』セット1
手札0
「俺のターン、ドロー!『EMモモンカーペット』をセッティング!」
「罠発動!『砂塵の大嵐』!スケールを破壊!」
「――!ならドクロバット・ジョーカーを攻撃表示に変更!バトル!アズサへ特攻!」
「墓地の『超電磁タートル』を除外、バトルフェイズを終了!甘いんだよ!俺達を倒そうなんざ!」
「それでもやるって決めたんだ!ターンエンド!」
榊 遊矢 LP600
フィールド『EMオッドアイズ・ミノタウロス』(守備表示)『EMドクロバット・ジョーカー』(攻撃表示)『EMインコーラス』(守備表示)『EMファイア・マフライオ』(守備表示)
『補給部隊』セット1
手札1
「俺のターン、ドロー!魔法カード、『貪欲な壺』!墓地のアルバレスト2体、アズサ、ヴォウジェ、ゴルガーをデッキに戻し、2枚ドロー!」
シンジ・ウェーバー 手札0→2
「魔法カード、『ハーピィの羽帚』を発動!そして墓地の昆虫族モンスター2体を除外、『デビルドーザー』を特殊召喚!」
デビルドーザー 攻撃力2800
「バトル!『デビルドーザー』でドクロバット・ジョーカーへ攻撃!」
「手札の『クリボー』を捨て、ダメージを0に!」
「防ぐか、だけどまだまだ終わらねぇぞ!アズサでミノタウロスを、ヴォウジェでファイア・マフライオを、ハマでインコーラスを攻撃!」
猛攻撃、ここぞとばかりにシンジがモンスターに指示を出し、槍と弓矢によって遊矢のモンスターを薙ぎ払う。しかし遊矢も負けてはいない。インコーラスの効果を使い、危機を脱出する。
「インコーラスの効果で『EMジンライノ』をリクルート!」
EMジンライノ 守備力1800
「甘い!ハマは2回攻撃が出来るんだよ!」
「ッ!」
ところがハマが矢をつがえ、ジンライノへ雷を帯びたそれを放つ。これでモンスターは全滅。しかも――。
「ハマの効果でダメージを与える!」
「アクションマジック、『フレイム・ガード』!効果ダメージを0に!」
戦闘に加え、ハマの効果ダメージ。どちらか一方を通せば遊矢は負けてしまう。ならばどちらも避けねばならないと遊矢はD-ホイールで駆け抜け、アクションカードを掴み取り、防御する。
「しつけぇ野郎だ。ターンエンド!」
シンジ・ウェーバー LP500
フィールド『B・Fー降魔弓のハマ』(攻撃表示)『B・Fー霊弓のアズサ』(攻撃表示)『B・Fー突撃のヴォウジェ』(攻撃表示)『デビルドーザー』(攻撃表示)
『補給部隊』
手札0
「俺のターン、ドロー!シンジ……俺は決めたぞ!」
「あん?一体何を……」
「俺はこのシンクロ次元で大それた目的なんてなかった。ただ柚子を取り戻そうと、ランサーズの仲間を増やそうと思った。だけど今、このシンクロ次元でやるべき事が出来た!」
シンクロ次元で様々な事に触れ、多くの人と出会った。優しい人々と、歪んだ街。奥底で眠る格差社会への怒り。それを見て――何とかしたいと思った。
「俺はキングになる!このシティのキングになって、変えてやる!このシティを1つにしてやる!コモンズもトップスも、皆笑える未来を作ってやる!」
だから遊矢は決意した。このシティの人々が、皆揃って、胸を張って笑顔になれる未来を作ろうと。真っ直ぐで真摯な想い。それを見て、シンジが目を見開く。この少年はどこまで――。
「そんな事が、そんな事が出来ると思っているのか!?このシティには、コモンズには怒りが渦巻いている!お前のそれは俺達を否定しているんだぞ!いきなり仲良くなれって言って仲良く出来ると思ってんのか!?」
「思ってない!だけど多数の為に少数を犠牲のするのも納得出来ない!決してそれが間違ってるとは言えないけど、俺は難しくても、皆でいれる方が良い!少しずつでも、何日、何十日、何年かかっても、歩み寄って理解し合える方が良い!シンジ!お前は俺達にも優しくしてくれた!ならその優しさを、少しで良い、トップスに向けてくれ!」
「ッ!」
「コモンズもトップスも歩み寄ってくれ!優しさを優しさで返せる街を作るんだ!時には喧嘩したって良い!全部が全部そうはいかないかもしれない!当たり前の事だ!だけどせめて〟街〝を作ってくれ!暖かみのある、本当の街を!」
遊矢の目指す道は茨の道だ。だけど放っておけないと思ってしまった。優しい人々が笑って過ごせる街が作りたいと思った。このシティは見せかけだけの街だ。格差社会と言う巨大な壁がコモンズとトップスと言う、本来1つである筈のものを分けている。遊矢はそれを壊す。そして99%でも、1%でもなく、100%を作り出そうとしている。
「遊……矢……」
彼の必死の慟哭は、ほんの少し、僅かな人数だが、コモンズとトップス、関係なくその心を動かせる。このままじゃいけないと、突き動かされる想い。今はまだ、弱くて少ない。シンジに賛同するコモンズよりもずっと小さな灯火だ。だが――何時かきっと、未来を見せてくれる炎だった。
「これが俺の、革命の道だ!魔法カード、『貪欲な壺』!墓地の『EMスライハンド・マジシャン』、『EMロングフォーン・ブル』、『EMセカンドンキー』、『EMハンマーマンモ』、『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』をデッキに戻し、2枚ドロー!」
榊 遊矢 手札0→2
「まだだ!魔法カード、『ペンデュラム・ホルト』!2枚ドロー!」
榊 遊矢 手札1→3
「『調律の魔術師』を召喚!」
調律の魔術師 攻撃力0
現れたのは遊矢がサムから預かったチューナーモンスター。白い法衣を纏った桃色の髪の『魔術師』少女。生憎ジャックには返せなかった為、遊矢のデッキに投入されたままだが――それが勝敗を分ける。
「召喚時、相手のLPを400回復し、俺は400ダメージを受ける!」
シンジ・ウェーバー LP500→900
榊 遊矢 LP600→200
「そして――速攻魔法、『超カバーカーニバル』!デッキより『EMディスカバー・ヒッポ』をリクルートし、3体の『カバートークン』を特殊召喚!」
EMディスカバー・ヒッポ 攻撃力800
カバートークン 守備力0×3
発動されたのはどこからでもディスカバー・ヒッポを呼び、可能な限りトークンを生み出す強力なカード。本来防御に使うカードであるが――遊矢は攻めに使う。
「フッ、呼び出したのが攻撃力800のカバか!それじゃあ俺のモンスターには届かねぇ!」
「お前がやった事だぜ?一人一人の声は小さくとも――合わせれば、どこまでも届く!装備魔法、『団結の力』!ディスカバー・ヒッポへ装備!」
「ッ!それは――!」
「装備モンスターは、自軍フィールドのモンスターの数×800、攻撃力をアップする!」
EMディスカバー・ヒッポ 攻撃力800→4800
「これが俺の、答えだ!行け、ディスカバー・ヒッポ!ハマへ攻撃!」
一人の力は小さくとも、皆と共になら。ディスカバー・ヒッポが仲間達の力を受け取り、爆発的に攻撃力をアップ。強靭な脚で地を蹴り跳躍、ハマに勢い良く降下し、突撃する。
「俺の……負けか……」
シンジ・ウェーバー LP900→0
『決着ゥー!激闘を制したのは、チームランサーズ、榊 遊矢ー!』
決着、紙吹雪が舞う中、白煙を吹き、停止するシンジのD-ホイールに遊矢が歩み寄る。
「シンジ」
「……そんな顔すんな。俺達は全力で闘った。その結果が、お前の勝ちで、俺の負けだ。……なぁ、遊矢」
へへ、とシンジは恥ずかしそうに鼻頭を指で擦り、遊矢と向き合う。
「このシティは、変わるのか?」
「変えるよ、俺達の手で」
「そっか……託したぞ、遊矢」
ガシリ、とシンジは両手で遊矢の右手を包み込み、夢を託し、地下へ去っていく。シンジ・ウェーバー、敗退。遊矢は握り締めた拳を見つめながら――決心する。
何となくで空いた時間でハカメモ二次創作のプロットを練ってたんですけど紛失しました。南無。デジマーケット会長が主人公とかそんなんだったと思います。相棒はキメラモン。完全に悪役ですねハイ。