遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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環境で混ぜ物デッキが出回ってるの見たり混ぜ物デッキ書いてると自分も使いたくなって作ってしまう。そして事故る。


第128話 三幻魔

サーキットでは遊矢達とシンジ達によるライディングチームデュエルが、シティ内ではユートと隼が万丈目と三沢を迎撃する中、ここ――治安維持局周辺でも、語られる事の無いデュエルが行われていた。1人は風魔 月影。ランサーズの隠密機動役を担う縁の下の力持ちだ。彼は零児からの指令により、治安維持局を調査しようとしたのだが――偶然か必然か、周辺にいた治安維持局の者であろう黒マントの男と対峙する事となった。その灰色の瞳は月影を逃すまいと彼を無機質に射抜き、冷徹に、機械的に月影を追い詰めていく。

 

「ぐっ――!」

 

「……効果発動」

 

フワリ、と彼のモンスターが翼を広げて空中に飛翔、凄まじいスピードでフィールドを駆け抜け、刃を振るって月影のモンスターを切り裂く。一撃必殺、守備力で勝っていた月影のエースモンスター。『黄昏の忍者将軍-ゲツガ』が容易く崩れ落ちる。これで月影のフィールドのモンスターは0、LPも彼のモンスターの攻撃力に上回られている。

 

「……攻撃」

 

そして今――凶刃が、月影の喉元へ迫る。

 

――――――

 

黒咲 隼VS三沢 大地、レジスタンス、ランサーズとアカデミア、エクシーズ次元と融合次元のデュエリストによる、シンクロ次元で繰り広げられるデュエルは、現在一方的な展開を向かえていた。

かたやモンスター0、手札0、唯一ある2枚のセットカードも発動を封じられた状態。かたや攻守4000の圧倒的な力を振るう悪魔と上級モンスター、そしてバトルフェイズを終了させる永続罠とワンサイドゲーム待ったなしの状況。

 

そんな中、隼はデッキトップからカードを引き抜き、反撃の準備を整える。引いたカードを確認、これならば――隼はたった今手札に加えたカードをデュエルディスクに差し込み、賭けに出る。この1枚で、どこまで出来るか。

 

「魔法カード、『命削りの宝札』を発動!手札が3枚になるようにドローする!」

 

黒咲 隼 手札0→3

 

この状況ではありがたい1枚だ。隼の手札に3枚のカードが渡り、確認、またもありがたい。無駄になるカードが1枚も無い。デッキが彼の翼となり応えてくれている。自分も応えるべきだ。デッキが諦めていない以上、本人が諦める訳にはいかない。引いた3枚をフルに活用する。

 

「モンスターをセット、カードを2枚セットし、ターンエンド!」

 

黒咲 隼 LP3200

フィールド セットモンスター

セット4

手札0

 

「フム……俺のターン、ドロー!フィールド魔法、『失楽園』を発動!これで俺の三幻魔は相手の効果の対象とならず、効果で破壊されなくなる」

 

「耐性付与か……」

 

ドーム内に巨大な枯れ木が生え、フィールドが冷たい闇に包まれる。三幻魔への強力な耐性付与、非常に不味い流れだ。戦闘面で凶悪な性能を誇るハモンが効果にも強くなってしまった。時が経つ程に不利になるのは隼。早期の決着を、と思っても手数が足りない。

 

「そして俺のフィールドに三幻魔が存在する事で2枚ドロー!」

 

「何っ!?」

 

三沢 大地 手札0→2

 

しかも『失楽園』の効果はこれだけにおさまらない。耐性に加え、三幻魔の存在を条件とした1ターンに1の『強欲な壺』効果、間違いない、このカードは早々に除去しなければならない。

 

「バトルだ!ダイオーキシンでセットモンスターを攻撃!」

 

「ッ!」

 

「ハモンでダイレクトアタック!」

 

セットモンスターが撃破され、がら空きとなった所にハモンの落雷が降り注ぐ。凄まじい勢いでこちらに向かう高圧電流、隼はそれを足飛びにかわしながらデュエルディスクにセットしたカードを発動する。

 

「罠発動!『ピンポイント・ガード』!墓地のトリビュート・レイニアスに耐性を与え、蘇生する!」

 

RR-トリビュート・レイニアス 守備力400

 

現れたトリビュート・レイニアスの翼に掴まり、隼が空を飛んで雷から逃れる。これでこのターンは堪えた。今はこれだけで精一杯だ。

 

「カードを1枚セットし、ターンエンドだ」

 

三沢 大地 LP3000

フィールド『降雷皇ハモン』(攻撃表示)『進化合獣ダイオーキシン』(攻撃表示)

『心鎮壷』『強制終了』セット1

『失楽園』

手札1

 

このターンで三沢は三幻魔に耐性を与え、毎ターン『強欲な壺』をデメリット無しで発動可能な『失楽園』を得た。状況は悪化するばかり、このままでは詰め将棋、いや、詰めデュエルの如く隼の一手一手が塞がれていく。この男はそう言う男だ。

大きな武器を持っているからと慢心も油断もせず、相手の武器を1つ1つ奪い、確実に致命傷を通して来る。

 

厄介な相手だと言っても、彼等は運が良い。ユートならば相手を対象とする効果が多い為、三幻魔の攻略に手こずるだろうし、隼が万丈目と闘えば『おジャマ』によって展開が妨害される。首の皮1枚で繋がっている2人だった。

 

「俺のターン、ドロー!まだ、勝機はある……!罠発動!『R・R・R』!トリビュート・レイニアスを対象とし、デッキから同名モンスターを特殊召喚する!」

 

RR-トリビュート・レイニアス 守備力400

 

「効果でミミクリー・レイニアスを墓地に送り、除外、デッキから『RR-レディネス』をサーチ!」

 

これで生命線を確保した。後はまた分の悪い賭けに出る。

 

「魔法カード、『終わりの始まり』!」

 

「ほう……!」

 

隼が発動したカードを見て、三沢が興味深そうに目を見開く。このカードは墓地に闇属性モンスターが7体以上存在して発動出来、この内の5体を除外と言う重いコストを持つカードである。だが成程、彼のデッキならば高速で闇属性を墓地に落とし、発動条件を満たす事が可能だ。そしてその効果は――3枚ドロー。

 

「俺はファジー・レイニアス、インペイル・レイニアス、ネクロ・ヴァルチャー、ブースター・ストリクス、ブレイズ・ファルコンの5体を除外し、3枚ドロー!」

 

黒咲 隼 手札1→4

 

5体の魂が3枚のカードとなって隼の手に渡る。

 

「……引けんか……」

 

しかし、どうやら目当てのカードを引けなかったらしい。一応は何とかなるが――。

 

「『RR-アベンジ・ヴァルチャー』を召喚!」

 

RR-アベンジ・ヴァルチャー 攻撃力1700

 

2体のトリビュート・レイニアスの間に現れたのは茶色いボディの荒鷲、これでレベル4が3体、フォース・ストリクスを使い切った今、隼が取れる行動は1つのみ。

 

「3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!雌伏のハヤブサよ。逆境の中で研ぎ澄まされし爪を挙げ、反逆の翼翻せ!エクシーズ召喚!現れろ!『RR-ライズ・ファルコン』!」

 

RR-ライズ・ファルコン 守備力2000

 

ここで現れたのは青いボディに、身体の半分以上の爪を持ったランク4のエクシーズモンスター。多対一の状況で輝くが、生憎今は効果を使えない。

 

「更に手札の『RUM-ラプターズ・フォース』を捨て、ライズ・ファルコン1体でオーバーレイ・ネットワークを再構築!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!『RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド』!!」

 

RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド 守備力3000

 

ライズ・ファルコンがランクアップし、現れたのはレヴォリューション・ファルコンの新たな姿。必殺をその名に刻んだモンスターだ。このカードで逆転を狙う。

 

「エクシーズ召喚時、ダイオーキシンを破壊!攻撃力分バーンダメージを与える!」

 

「永続罠、『メタモル・クレイ・フォートレス』!効果は知ってるな?特殊召喚し、ダイオーキシンを装備!」

 

メタモル・クレイ・フォートレス 攻撃力1000→3800

 

しかし――これも回避、武器が1つ壊される。折角隠していた手も初見で封じられてしまった。隼は舌打ちを鳴らし、カードをデュエルディスクに差し込む。

 

「カードを2枚セットし、ターンエンド」

 

黒咲 隼 LP3200

フィールド『RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド』(守備表示)

セット4

手札0

 

「俺のターン、ドロー!『失楽園』の効果でドロー!」

 

三沢 大地 手札2→4

 

「速攻魔法、『ツイン・ツイスター』!手札を1枚捨て、『心鎮壷』の対象になった2枚を破壊!」

 

「破壊されたカードで『運命の発掘』の効果でドロー!」

 

黒咲 隼 手札0→1

 

「む……まぁ良い…2枚目の登場だ……!」

 

「ッ、まさか……!?」

 

ニヤリ、三沢が不敵に笑い、手札の1枚を見せつけるように翳す。まさか、こんなにも早く引き込んだと言うのか、隼の表情に動揺が走り、ギリ、と歯軋りが鳴る。

 

「フィールドの永続罠3枚を墓地に送り――来い!『神炎皇ウリア』!!」

 

神炎皇ウリア 攻撃力0→7000

 

そしてそれは、地に堕ちる。雷に並ぶは、神の炎。真っ赤な巨大な体躯でとぐろを巻き、薄い羽を広げる深紅の竜。幻魔の2柱目が君臨する。その攻撃力は――。

 

「7000……だと……!?」

 

並び立つハモンをも越え、7000。隼のアルティメット・ファルコンの倍の数値である。

 

「ウリアたんは墓地の永続罠の数1000の攻撃力を得るのだ」

 

「ウリアたん……!?」

 

三沢がドヤ顔でウリアをたん呼びすると共に赤い竜が『WRYYYYYYY!!』と雄々しく吠える。これのどこがたんなのだろうか。

 

「更にウリアたんの効果!左のセットカードを破壊!」

 

「ならば発動……出来ない…!?」

 

「残念だが、この効果にチェーンは不可能!トラップディストラクション!」

 

ウリアのアギトから放たれる、超高熱、高密度の火炎弾が隼のセットカードを封じ、爆発させる。幻魔の威光の前には如何なる抵抗も無意味。消し炭になったカードを見て、隼が舌打ちを鳴らす。

 

「バトルだ!ハモンでレヴォリューション・ファルコンへ攻撃!」

 

再び頭上よりハモンの雷が降り注ぎ、進化したハヤブサまでもが黒焦げにされる。だが――これが、隼の狙い。地に落とされても、革命のハヤブサは飛翔する。

 

「ハモンの効果で相手に1000のダメージを与える!」

 

「レディネスは使わん!が、エアレイドの効果!エクストラデッキからレヴォリューション・ファルコンを呼び、このカードをORUにする!エクシーズ・チェンジ!『RR-レヴォリューション・ファルコン』!!」

 

黒咲 隼 LP3200→2200

 

RR-レヴォリューション・ファルコン 攻撃力2000

 

黒焦げになったエアレイドがパキリとひび割れ、中よりレヴォリューション・ファルコンが新生する。その上に飛び移る隼。このカードならば特殊召喚した三幻魔を牽制出来る。

 

「カードを1枚セットし、ターンエンド」

 

三沢 大地 LP3000

フィールド『神炎皇ウリア』(攻撃表示)『降雷皇ハモン』(攻撃表示)

セット1

『失楽園』

手札0

 

「俺のターン、ドロー!バック除去まで加わったか……レヴォリューション・ファルコンの効果!ORUを1つ取り除き、全体攻撃を可能に!バトルだ!レヴォリューション・ファルコンで幻魔に攻撃!反逆の狼煙、今こそ上げろ!」

 

レヴォリューション・ファルコンは相手を対象に取る事無く、攻守を0にする効果を持つ。これならば――。

 

「甘いな!俺のデッキには、幻魔を呼ぶ為〟だけ〝のカードは存在しない!1枚1枚がお前を倒す切り札なのだ!永続罠、『デモンズ・チェーン』!レヴォリューション・ファルコンの効果と攻撃を封じる!」

 

しかし、これも三沢の予想通り、異次元から飛び出した鎖がレヴォリューション・ファルコンの翼を絡め取る。強い、巧い、彼の頭脳は隼の手を上回る。

 

「カードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

黒咲 隼 LP2200

フィールド『RR-レヴォリューション・ファルコン』(攻撃表示)

セット2

手札0

 

「それでも折れんか……良いデュエリストだ。俺も、全身全霊で応えよう!ドロー!ウリアの効果で中心のセットカード破壊!『失楽園』の効果でドロー!」

 

三沢 大地 手札1→3

 

「行くぞ、『幻銃士』を召喚!」

 

幻銃士 攻撃力1100

 

現れたのは小さな悪魔のモンスター。幻魔に仕える銃士だ。

 

「その効果で『銃士トークン』を2体生成!」

 

銃士トークン 守備力500×2

 

「3枚目だ、歯を食いしばれ……!」

 

「引くと思っていたさ、クソッタレめ……!」

 

ヴン、三沢が翳す手札の1枚より、青紫色のオーラが迸る。最早予想通りだ。ここで引き抜く彼はとんでもないの一言に尽きる。だがここまで来たのだ、どうせならば拝んでやろうでは無いか。最後の幻魔、三幻魔がフィールドに並び立つ光景を。

 

「3体の『銃士』をリリースし――来たれ!『幻魔皇ラビエル』!!」

 

幻魔皇ラビエル 攻撃力4000

 

天を裂いて、天使の名を語る魔皇は降臨する。禍々しくも雄々しく、逞しい青の巨体、その姿は正に、魔皇。四肢を振るい、翼を広げ、美しい後光を背に、巨神兵は君臨した。

並び立つ、炎の天空竜。雷の翼神竜。そして悪魔の巨神兵。圧巻、並の者ならば膝を折り、祈りを捧げてしまうような光景が、そこにはあった。

 

「……ここまで粘るとは思ってなかった」

 

「俺もだ、自分自身の諦めの悪さに、ちょっと引く」

 

3体もの幻魔を前に、尚も心を折らない隼に三沢は敬意を持つ。もしかすれば幻魔が無ければ――と考えるのは彼に失礼か。

 

「全力をも越え、お前を倒す!やれ、ハモン!レヴォリューション・ファルコンへ攻撃!」

 

「墓地のレディネスを除外し、ダメージを0に!」

 

神炎皇ウリア 攻撃力7000→8000

 

「ふん、そう来ると思っていた。ターンエンド」

 

三沢 大地 LP3000

フィールド『幻魔皇ラビエル』(攻撃表示)『神炎皇ウリア』(攻撃表示)『降雷皇ハモン』(攻撃表示)

『失楽園』

手札1

 

「俺のターン、ドロー!罠発動!『貪欲な瓶』!墓地のフォース・ストリクス、ライズ・ファルコン、レヴォリューション・ファルコン、エアレイド、アーセナル・ファルコンをデッキに戻し、1枚ドロー!」

 

黒咲 隼 手札2→3

 

「そして魔法カード、『RUM-ソウル・シェイブ・フォース』!LPを半分払い、墓地のレヴォリューション・ファルコンを蘇生し、オーバーレイ・ネットワークを再構築!勇猛果敢なるハヤブサよ。怒りの炎を巻き上げ、大地をも焼き尽くす閃光となれ!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!飛翔しろ!『RR-サテライト・キャノン・ファルコン』!」

 

黒咲 隼 LP2200→1100

 

RR-サテライト・キャノン・ファルコン 攻撃力3000

 

地より革命の灰色のハヤブサが蘇り、赤き炎に包まれその姿を変化させる。灰の翼はより巨大な白に、炎は赤を帯びて情熱的なものとなる。更に爆弾は緑色に輝くレーザーへと。前回彼等から勝利をもぎ取った猛禽が甲高い囀りを上げる。

 

「エクシーズ召喚時、相手の魔法、罠を全て破壊!」

 

「チェーン不可の羽帚……っ!」

 

サテライト・キャノン・ファルコンが翼を広げ、黒と白の砲塔から翡翠のレーザーを放って三沢のセットカード、そしてドームの中心にそびえ立つ朽ちた巨木を焼き尽くす。これで幻魔の耐性は消えた。

 

「サテライト・キャノン・ファルコンのORUを1つ取り除き、ハモンの攻撃力を墓地の『RR』の数×800ダウン!」

 

「手札のの『エフェクト・ヴェーラー』を捨て、サテライト・キャノン・ファルコンの効果を無効に!」

 

「魔法カード、『打ち出の小槌』!手札を交換、魔法カード、『RUMースキップ・フォース』!サテライト・キャノン・ファルコンを更に2つ上のランクへランクアップする!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!来たれ!『RRーアルティメット・ファルコン』!」

 

RRーアルティメット・ファルコン 攻撃力3500

 

「アルティメット・ファルコンの効果発動!」

 

幻魔皇ラビエル 攻撃力4000→3000

 

神炎皇ウリア 攻撃力7000→6000

 

降雷皇ハモン 攻撃力4000→3000

 

「アルティメット・ファルコンでハモンへ攻撃ィ!」

 

三沢 大地 LP3000→2500

 

「チッ!」

 

アルティメット・ファルコンの胸部に黒い球体が生み出され、黄金の幻魔に撃ち出し、破壊する。だがまだ2体残っている。油断は出来ない。

 

「カードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

黒咲 隼 LP1100

フィールド『RR-アルティメット・ファルコン』(攻撃表示)

セット2

手札0

 

「今のは危なかった……が、俺の方が上手だったようだな。俺のターン、ドロー!ウリアの効果でセットカードを破壊!魔法カード、『貪欲な壺』!墓地のモンスター5体をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

三沢 大地 手札0→2

 

「『折れ竹光』をウリアに装備し、魔法カード、『黄金色の竹光』を発動!2枚ドロー!もう1枚だ!」

 

三沢 大地 手札0→2→3

 

「バトルだ!ウリアでアルティメット・ファルコンを攻撃!ハイパーブレイズ!」

 

「罠発動!『ガード・ブロック』!ダメージを0にし、1枚ドロー!」

 

黒咲 隼 手札0→1

 

ウリアの炎がアルティメット・ファルコンに襲いかかり、隼をも呑み込もうとしたその時、アルティメット・ファルコンが彼を庇い、黒焦げとなった身体を更に破壊される。命を賭しても主を守るその姿に隼は感謝と謝罪を述べ、デッキからカードを引き抜く。

ギリギリの所で踏みとどまるが、既にデッドゾーン、敗北まで浸った状態だ。そして三沢の猛攻は終わらない。

 

「ラビエルで攻撃!天界蹂躙拳!」

 

ラビエルの拳に闇が纏われ、隕石の如き鉄拳が襲いかかる。弱体化しても攻撃力3000、LPが2倍あっても沈む一撃だ。これを受けては一堪りも無い、それとも全てを投げ出せば気持ち良くなるのか――。

 

「俺には……関係無い話だ!墓地の『光の護封霊剣』を除外し、ダイレクトアタックを防ぐ!」

 

だが、それでも隼は拒む。例え一時楽になろうと、それは後で死ぬ程後悔する道だ。もう間違えない、鉄の意志と鋼の強さで誘惑を断ち切り、仲間の待つ場所に突き進む。

 

「クク、これ程楽しいデュエルは久し振りだ……!俺は墓地の『ヘルウェイ・パトロール』を除外し、手札の『暗黒の召喚神』を特殊召喚!」

 

暗黒の召喚神 攻撃力0

 

「そしてこのカードをリリースする事で、デッキの『降雷皇ハモン』を特殊召喚!!」

 

降雷皇ハモン 守備力4000

 

再び現れる雷の幻魔。これで三幻魔が揃い立つ。折角倒したのにこれではキリがない。

 

「カードを1枚セット、ターンエンド!」

 

三沢 大地 LP2500

フィールド『幻魔皇ラビエル』(攻撃表示)『神炎皇ウリア』(攻撃表示)『降雷皇ハモン』(守備表示)

『折れ竹光』セット1

手札1

 

ニヤリと好戦的な笑みを浮かべ、三沢がターンを終了する。三幻魔の力を持ってしても押し切れず、諦める事無く果敢に立ち向かう黒咲 隼。これ程のデュエリストは早々いないだろう。だからこそ、この男と出会い、闘える事を誇りに思う。

三沢 大地は天才とも言って良いデュエリストだ。並外れた頭脳と精神力が生み出す数々の戦術はこれまでに多くのデュエリストを打ち倒して来たものだ。しかし――だからこそ、彼と対等に渡り合えるデュエリストは少ない。爽やかなデュエルを行える相手がいない、知恵を絞り、勇気を振るって闘えるデュエリストがいない。

 

だが目の前の相手はどうだ?高度な駆け引き、泥臭い根性、肉を切らせて骨を断つ戦術、そのどれもが三沢を楽しませてくれる。次はどう来る?彼の一手一手を潰す一方的な手にも負けずに突き進む彼は、正に三沢が望んでいた好敵手。

 

この時をずっと、待っていた。この相手から、勝利をもぎ取る時を。必ず勝つ、三沢は自慢の知能を張り巡らせ、ボロボロの姿でデュエルディスクを構える隼を迎え撃つ。そして――隼の指先が、デッキトップに添えられる。

 

「行くぞ、三沢 大地、これが正真正銘、ラストターンだ」

 

「来い、黒咲 隼。如何なる手も打ち砕いてやる」

 

スッ、と互いの目が細められる。お互いにこれがラストターンなのは分かっている。だが、隼のラストターンか、三沢のラストターンなのかはまだ分からない。その答えを出す為にも――隼はデッキから、1枚のカードを引き抜く。

 

「かっとビングだ、俺!俺のターン、ドロー!」

 

「来るか……!」

 

「魔法カード、『貪欲な壺』!墓地のシンギング・レイニアス、トリビュート・レイニアス、ファジー・レイニアス、インペイル・レイニアス、ペイン・レイニアスをデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

黒咲 隼 手札1→3

 

黒咲 隼、最後のドロー、光の軌跡が宙を舞う。ここで引かねば負ける。だが――仲間を信じ、デッキを信じ、デュエルを楽しむ彼の事をデッキが裏切る事等あり得ない。

 

「ありがとう――さぁ、見せてやる!レジスタンスの仲間と、ランサーズの仲間、多くの絆が俺にくれた力を!カードを1枚セット、墓地のスキップ・フォースと『RR』モンスターを除外し、レヴォリューション・ファルコンを蘇生!」

 

「させるか!手札の『D.D.クロウ』を捨て、レヴォリューション・ファルコンを除外!」

 

「魔法カード、『RUM-ソウル・シェイブ・フォース』!LPを半分払い、アルティメット・ファルコンを2つ先のランクのエクシーズモンスターへと、ランクアップさせる!」

 

「な――ランク12だと!?」

 

正に想定外、ここに来て初めて三沢の計算が狂う。黒咲 隼、最大の切り札であるアルティメット・ファルコンの更なる進化。限界を越えたランクアップに驚愕する。そして、隼の墓地より黒と黄金の日輪が昇り、赤く輝いて紅蓮の炎と風を纏う。その姿、正しく不死鳥。

 

「我が魂のハヤブサよ!揺るぎない信念と、深き慈愛の心で、堅牢なる最後の砦となりて降臨せよ!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!現れろ!『RR-ファイナル・フォートレス・ファルコン』!!」

 

黒咲 隼 LP1100→550

 

RR-ファイナル・フォートレス・ファルコン 攻撃力3800

 

炎が翼を舐め上げ――姿を見せし、最後のハヤブサ。巨大なワインレッドの身体からブースターと砲塔を伸ばし、先端に黄金の鳥のオブジェクトを設置した、要塞の名に相応しき切り札。

これが隼がレジスタンスとランサーズの絆を経て生み出した、反逆と慈愛、2つの側面を持った、全てを受け入れた末のカード。悠然と輝く光を背に、隼は無言で力強く立つ。

 

「これが、お前の……!」

 

「この瞬間、罠発動!『ディメンション・スライド』!エクシーズ召喚した場合、セットしたターンでも発動出来、モンスターを特殊召喚した際、相手の表側表示モンスター1体を除外する!ウリアを除外!」

 

「何っ!?ウリアたんが……!?」

 

ファイナル・フォートレス・ファルコンの砲塔が傾き、ウリア目掛けてレーザーが発射、異次元へと穴を開き、ウリアを押し退ける。これで一番厄介な打点の高いウリアを除去した。かなりショックを受け、悲しそうにする三沢を無視し、隼は次の手へ移る。

 

「ファイナル・フォートレス・ファルコンのORUを1つ取り除き、除外された『RR』モンスター全てを墓地に戻す!最後だ!装備魔法、『ビッグバン・シュート』をファイナル・フォートレス・ファルコンに装備!攻撃力を400アップし、貫通効果を与える!」

 

RR-ファイナル・フォートレス・ファルコン 攻撃力3800→4200

 

「バトル!ファイナル・フォートレス・ファルコンでハモンへ攻撃!」

 

「永続罠、『スピリット・バリア』!モンスターが存在する場合、自分の戦闘ダメージを0にする!」

 

ファイナル・フォートレス・ファルコンが飛翔し、ハモンの全身から放たれる雷を避け、青白く輝くレーザーを撃ち出して迎撃する。2体目の幻魔、撃破。しかし、三沢の前に半透明のバリアが展開し、彼には届かない。

 

「ファイナル・フォートレス・ファルコンがモンスターを戦闘破壊した事で墓地のアルティメット・ファルコンを除外し、もう1度攻撃権を得る!ラビエルへ攻撃!」

 

ならば届くまでやるまでだ。再びファイナル・フォートレス・ファルコンが起動、猛スピードでラビエルに迫り、巨腕を掻い潜ってレーザーを発射し、破壊。凄まじき轟音と砂煙を上げ、最強の幻魔が地に沈む。これで3体の幻魔を撃破した。吹き荒れる爆風。しかしこれで同時に隼の手も尽きた――。

 

「だがダメージは無い!」

 

「何を、勘違いしている――?」

 

かに、思われた。

 

「ファイナル・フォートレス・ファルコンの効果は!1ターンに、2度使える!サテライト・キャノン・ファルコンを除外!」

 

爆風を裂き、渦の中心より、ファイナル・フォートレス・ファルコンが現れ、三沢の眼前で砲塔を向け、停止する。

 

「――一手、及ばなかったか……」

 

一筋の閃光が、三沢のLPを撃ち抜く。たった1度の一手先が、勝敗を分けた。

 

三沢 大地 LP2500→0

 

勝者、黒咲 隼。彼はソリッドビジョンのモンスター達が消える中、三沢に歩み寄り、その肩を掴む。あの時、チャンピオンシップにて、この男と闘った時から僅かな違和感があった。その違和感は、確信に変わり――。

 

「答えろ」

 

彼の口から、放たれる。

 

「貴様は、アカデミアの手先では無いな?」




アーミタイル「……」

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