遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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魔王様がストラクRで復活!始めて持ったデッキがこれだったので凄く懐かしくて嬉しいです。チラ見がガン見になるのだろうか、魔王様の種族はまだ迷子なのか……大丈夫かなぁ?


第121話 カードの死神

シティ、評議会のビルにて、関係者達と共にモニターを見つめる赤馬 零児の姿があった。

視線の先にあるのはたった今デュエルに勝利したデュエルチェイサー227の姿。彼は徳松とのデュエル中、このシンクロ次元に存在する筈の無い融合モンスターを召喚して来た。

 

これは――一体何を意味しているのか、彼個人がアカデミアに繋がっているのか、それとも――彼が所属する、セキュリティがアカデミアと繋がっているのか、少なくとも関係無いとは言えないだろう。側に控える月影に目を配らせ、無言で語りかける。月影も察したのか、コクリと頷き、その場から姿を消す。

さて――鬼が出るか、蛇が出るか、どちらにせよ、面倒な事になりそうだ。

 

――――――

 

一方、フレンドシップカップ、サーキットにて、1回戦第1試合、チームサティスファクションVSチームセキュリティのデュエルはセカンドホイーラー、鬼柳 京介とファーストホイーラー、デュエルチェイサー227の対決に入る。

セキュリティ側のフィールドには『リジェクト・リボーン』によって蘇生され、効果が無効になったシンクロモンスター、『ゴヨウ・キング』と『守備封じ』効果を持つポリスモンスター、『サムライソード・バロン』が1体ずつ。

2枚の永続魔法、自軍モンスターが破壊された場合、1枚ドローする『補給部隊』に、今現在、戦士族モンスターの攻撃力を800アップしている『一族の結束』。そしてターンが強制終了される事を見越してセットされたカードが1枚。

LPは1000と言う中々の布陣だ。

 

対してサティスファクションのフィールドは徳松が残したセットカードが1枚だけ。LPは4000、手札5枚からスタートするとは言え、少しこころもとない所だ。

辛い場合であるが、この男は鬼柳 京介。充分に巻き返せる。ライディングデュエルは得意とする所では無いが、愛用のD-ホイール、ギガントLの馬力でセキュリティのD-ホイールを軽く追い越し、デュエルディスクから1枚のカードを引き抜く。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

まずはセットカードの確認を。徳松が残してくれたカードだ。有効活用するならばまず効果を見なければならない。セットカードに目を通し――僅かに鬼柳の目が見開かれ、口端が吊り上がる。

 

「最高の土産だぜ、徳松のオヤジ……!俺は魔法カード、『暗黒界の取引』を発動!互いに1枚ドローし、1枚捨てる。リバースカード、オープン!魔法カード、『手札抹殺』!」

 

「む……!」

 

発動される徳松のカード、それは考えられるカードの中でもこの状況で発動するには最高の1枚だ。鬼柳は直ぐ様5枚のカードを墓地に送り、新たな5枚を手札に加える。

これで鬼柳の扱う『インフェルニティ』に必要な墓地アドバンテージを幾らか稼ぐ事が出来た。

 

「さて、準備は整ったか……!俺は手札の『インフェルニティ・デストロイヤー』を捨て、『ダーク・グレファー』を特殊召喚!」

 

ダーク・グレファー 守備力1600

 

現れたのは『戦士ダイ・グレファー』をダーク化した漆黒の剣士だ。目を赤く充血し、その手に握った剣は妖しく閃いている。闇属性モンスターを扱うデッキでは優秀なモンスター。このように手札で腐った上級を切る事も出来、鬼柳は重宝している。

 

「『ダーク・グレファー』の効果発動。手札の『インフェルニティ・リベンジャー』を捨て、デッキの『ヘルウェイ・パトロール』を墓地に。カードを1枚セット、墓地の『ヘルウェイ・パトロール』を除外し、手札から『インフェルニティ・デーモン』を特殊召喚!」

 

インフェルニティ・デーモン 守備力1200

 

いきなり手札満足、呼び出されたのは山羊のような津の、オレンジの鬣を伸ばし、額に緑の宝玉を、首の周りに巨大なリングを囲い、ローブを纏った悪魔だ。『インフェルニティ』において最重要カードであり、3積み必須と言って良い。

 

「来たか……!」

 

「手札0での特殊召喚効果により、俺はデッキから『インフェルニティガン』をサーチ!発動!このカードを墓地に送り、墓地の『インフェルニティ・ネクロマンサー』と『インフェルニティ・リベンジャー』を蘇生!」

 

インフェルニティ・ネクロマンサー 守備力2000

 

インフェルニティ・リベンジャー 守備力0

 

1枚のカードにより、鬼柳の墓地からローブを纏い、骸骨の頭部を持ち、緑の鬣を伸ばし悪魔と呪いのガンマン人形のモンスターがフィールドに呼び出される。

 

『いきなり大量展開!手札0この威力!これがハンドレスコンボなのか!?』

 

『これで鬼柳のモンスターは4体、ここからどう出る!?』

 

手札0の状況にも関わらず、通常召喚権を使わず、4体ものモンスターをフィールドに揃える。これこそが鬼柳 京介のハンドレスコンボ。その爆発力は凄まじい。

 

「まずはレベル4の『デーモン』とレベル3のネクロマンサーに、レベル1のリベンジャーをチューニング!漆黒の帳下りし時、冥府の瞳は開かれる。舞い降りろ闇よ!シンクロ召喚!出でよ、『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』!!」

 

ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン 攻撃力3000

 

早速シンクロ召喚、3体のモンスターの代わりとして呼び出されたのは漆黒の体躯に百の眼を開いた邪悪な竜。攻撃力は3000、元々の数値では『ゴヨウ・キング』を越えているものの、『一族の結束』の効果が有る限り、『ゴヨウ・キング』の攻撃力は3600、敵わない。

 

「噂に聞くループコンボのパーツか、そのモンスターでどうする?」

 

「墓地のネクロマンサーを除外し、『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』はそのカード名と効果を得る!『インフェルニティ・デーモン』を蘇生!」

 

インフェルニティ・デーモン 攻撃力1800

 

「効果でデッキから『インフェルニティ・ミラージュ』をサーチ、召喚!」

 

インフェルニティ・ミラージュ 攻撃力0

 

現れたのは赤い鬣を伸ばし、ローブを纏った不気味な民族人形のようなモンスター。『インフェルニティ』にはこのような西武風のモンスターが多い。

 

「更にミラージュを墓地に送り、墓地の『インフェルニティ・リベンジャー』と『インフェルニティ・デストロイヤー』を特殊召喚!」

 

インフェルニティ・リベンジャー 守備力0

 

インフェルニティ・デストロイヤー 攻撃力2300

 

更なる展開、フィールドに呼び込まれたのは先程シンクロの素材に使用されたばかりのリベンジャーと剛腕を持つ大悪魔。これで鬼柳のモンスターゾーンが埋まった。とは言っても『インフェルニティ』にとってモンスターゾーンが埋まってしまう事は正直動きが鈍くなってしまう為、避けたい所なのだが。

 

「続けて行くぜ、レベル4の『ダーク・グレファー』と『デーモン』に、レベル1の『インフェルニティ・リベンジャー』をチューニング!破壊神より放たれし聖なる槍よ、今こそ魔の都を貫け!シンクロ召喚!『氷結界の龍トリシューラ』!!」

 

氷結界の龍トリシューラ 攻撃力2700

 

連続シンクロ、大量展開からフィールドに呼び出されたのは『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』と並ぶ第2の満足龍、トリシューラ。とある世界を凍結寸前まで追い込み、暴れたその力は強大だ。銀色の鱗に青い体躯、3つの首を唸らせ、絶対零度の息を吐く氷の龍。

鬼柳自身も何とか手に入れたレアカードであり、このカードの登場に会場が沸き起こる。

 

「トリシューラのシンクロ召喚時、テメェのフィールドの『ゴヨウ・キング』、そして墓地の『ゴヨウ・エンペラー』を除外!」

 

「チィッ!」

 

トリシューラの3つ首が動き、氷弾を放って227のエースカードと切り札を凍結させる。このデュエルは墓地を共有する為、『ゴヨウ・エンペラー』の蘇生を封じたいと考えたのだろう。今回は使用されなかったが、手札も合わせ、対象を取らない3枚のカードを除外する効果。その力は絶大だ。

 

「バトル!トリシューラで『サムライソード・バロン』へ攻撃!」

 

デュエルチェイサー227 LP1000→700

 

「ぐっ――!『補給部隊』の効果でドロー!」

 

デュエルチェイサー227 手札0→1

 

トリシューラの3つのアギトに冷気が集束、巨大な氷の塊を作り出し、弾丸として撃ち出し、バロンに襲いかかる。氷はバロンに着弾、冷気が広がり、パキパキと凍てつかせる。

 

「デストロイヤーでダイレクトアタック!」

 

デュエルチェイサー227 LP700→0

 

そして――デストロイヤーの剛腕が227へ振り抜かれ、爆発したかのような轟音が響き渡る。

一気に決着、徳松によってLPが削られているとは言え、1ターンで勝利を奪う。これにはベンチに戻った徳松も苦笑いだ。

 

『見事勝利!これで2対2に持ち込んだ――!』

 

「さて……次はセクト、か……」

 

鬼柳 京介 LP4000

フィールド『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』(攻撃表示)『氷結界の龍トリシューラ』(攻撃表示)『インフェルニティ・デストロイヤー』(攻撃表示)

セット1

手札0

 

後方でスモークを上げる227がセカンドホイーラー、伊集院 セクトにバトンタッチし、彼が黒いD-ホイールに搭乗して駆け、鬼柳へ迫る。流石にギガントLの性能には敵わないのか、追い抜く事は出来ないが――追い縋る事は出来る。何の因果か、チームサティスファクションのメンバーである彼がセキュリティのメンバーとして、敵として立ち塞がる。鬼柳をアニキと呼び慕う彼が、デュエルを挑んで来る。その事実に、鬼柳の表情が僅かに歪む。

 

『セカンドホイーラー、セクト発進!チームサティスファクション同士の対決だぁー!』

 

「……アニキ……」

 

「来いよセクト……大会に参加した以上、いずれこうなる事は分かってたんだ。ここではお前と俺は敵、容赦する事はねぇ」

 

その表情に影を差したセクトに対し、鬼柳は非情に徹する。いや、非情にならなければ、鬼柳自身まともに闘える自信が無いのだ。セクトはそれを汲んだのか、コクリと頷き、2人が正面を見据える。

 

「「デュエル!!」」

 

鬼柳のターンが強制的に終了し、セクトのターンへ。彼はデッキから5枚のカードを引き抜き、デュエルに徹する。

 

「俺のターン、ドロー!俺は魔法カード、『ブラック・ホール』を発動!フィールド上のモンスターを全て破壊!」

 

「カウンター罠、『インフェルニティバリア』!その発動を無効にし、破壊!俺にこいつがあるのを忘れたか!」

 

セクトが『ブラック・ホール』によって一気に形勢逆転を狙うも、鬼柳が持つカウンター罠によって封殺される。『インフェルニティ』モンスターが存在する場合、モンスター、魔法、罠を無効にし、破壊する強力な効果だ。最大の利点はこのカードも『インフェルニティ』カードの為、簡単にサーチが可能と言う事なのだが。

 

「魔法カード、『手札抹殺』!」

 

「ほう……」

 

セクトの手札から4枚のカードが墓地に送られ、新たに4枚が手札に運ばれる。これでセクトの墓地は肥えた。だが彼のデッキは昆虫族が主体、墓地に昆虫族が送られた事で227が置いていった『一族の結束』の効果が失われ、魔法、罠ゾーンが圧迫される。

 

「モンスターを1体、カードを2枚セットしてターンエンドだ」

 

伊集院 セクト LP4000

フィールド セットモンスター

『補給部隊』『一族の結束』セット3

手札1

 

モンスターとカードをセットし、ターンエンド。随分と消極的であるが、仕方無いと言える。何しろ鬼柳のフィールドには攻撃力2500オーバーのモンスターが2体もいるのだ。まずは下準備と言った所か。

 

「どうしたセクト!お前のデュエルはそんなものか!俺のターン、ドロー!」

 

続いて鬼柳のターンに移り、彼がデッキから1枚のカードを引き抜く。同時に2人はサーキットから出て、ハイウェイへ。シティを駆け抜け、速度を上げる。

 

「カードを1枚セット、バトル!『インフェルニティ・デストロイヤー』でセットモンスターへ攻撃!」

 

「墓地の『プリベントマト』を除外し、このターンの効果ダメージを0に!これでデストロイヤーの効果ダメージは防がれた!そしてセットモンスターは『共鳴虫』!破壊された事でデッキから攻撃力1500以下の昆虫族モンスター、『共鳴虫』をリクルート!『補給部隊』の効果でドロー!」

 

共鳴虫 守備力1300

 

伊集院 セット 手札1→2

 

セットされていたのは青いコオロギのようなモンスター。鈴の音を放ち、同種のモンスターを呼び出す。同族をリクルートする比較的優秀な壁モンスター。これでセクトはこのターン、鬼柳の猛攻を堪えられる。リクルートモンスターの利点は複数の攻撃を堪えられ、デッキの圧縮、限られたステータス内なら好きなモンスターを引っ張って来れる事にあるだろう。

 

「リクルートモンスターか、トリシューラで追撃!」

 

一瞬、僅かに安堵した表情となる鬼柳だが、直ぐ様引き締め、追撃に移る。

 

「3体目の『共鳴虫』を呼び出す!」

 

共鳴虫 守備力1300

 

トリシューラが氷弾を撃ち出し、2体目の『共鳴虫』を凍てつかせるも、3体目がフィールドに現れ、セクトへの道を遮る。実に面倒だ。次々と新手がやって来る。

 

「『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』で攻撃!インフィニティ・サイト・ストリーム!」

 

「『共振虫』を呼ぶ!」

 

共振虫 守備力700

 

ギョロリ、『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』が百の眼で『共鳴虫』を睨み、漆黒のブレスを放って消し炭とする。コオロギが最後に呼び出したのは鈴虫をモチーフとしたモンスターだ。『共鳴虫』と似た名前から同じような効果だろうと想像出来る。

 

「ターンエンドだ」

 

鬼柳 京介 LP4000

フィールド『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』(攻撃表示)『氷結界の龍トリシューラ』(攻撃表示)『インフェルニティ・デストロイヤー』(攻撃表示)

セット1

手札0

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「罠発動!『針虫の巣窟』!デッキトップから5枚を墓地に!」

 

「俺は永続罠、『リビングデッドの呼び声』を発動!墓地の『共鳴虫』を蘇生!」

 

共鳴虫 攻撃力1200

 

「『共鳴虫』と『共振虫』をリリース!アドバンス召喚!『ポセイドン・オオカブト』!」

 

ポセイドン・オオカブト 攻撃力2500

 

現れたのはセクトのエースモンスター、ネプチューンオオカブトをモチーフとし、甲殻を思わせる白い鎧、巨大な2本角を伸ばした兜を纏った甲虫騎士。とは言えその攻撃力は2500、鬼柳のモンスターには敵わない。

 

「『共振虫』の効果により、『デビルドーザー』をサーチ、更にリビングデッドをコストにリバースカード、オープン!魔法カード、『マジック・プランター』!2枚ドロー!」

 

伊集院 セクト 手札2→4

 

「まだまだ!墓地の『共振虫』と『共鳴虫』を除外、『デビルドーザー』を特殊召喚!」

 

デビルドーザー 攻撃力2800

 

更に展開、ここで現れたのは昆虫族の中でも特に有名で代表的な大型モンスター。2体の昆虫族を墓地から除外するが、逆に言えばそれだけで攻撃力2800を特殊召喚出来る。地よりピンク色の巨大な百足が飛び出し、D-ホイールに並走するように這い回る。

 

「大型モンスターが2体か……!」

 

「除外された『共振虫』の効果で『地獄百足』を墓地に送る!更に墓地の『共鳴虫』を除外、『ジャイアントワーム』を特殊召喚!」

 

ジャイアントワーム 攻撃力1900

 

今度は『デビルドーザー』を小型化した下級モンスター。緑色をした百足のカードだ。それにしても凄まじい展開。やはり彼もチームサティスファクションのメンバーと言う事か。

 

「更にフィールドに2体以上昆虫族が存在する事で、手札のチューナーモンスター、『地獄針幼虫』を特殊召喚!」

 

地獄針幼虫 守備力600

 

次はレベル2のチューナーモンスター。同種族がフィールドに2体いれば特殊召喚出来る。昆虫族では優秀なチューナーだ。

 

「チューナー……!」

 

「行くぜ……レベル4の『ジャイアントワーム』に、レベル2の『地獄針幼虫』をチューニング!闇と闇重なりし時、冥府の扉は開かれる。光無き世界へ!シンクロ召喚!出でよ、『地底のアラクネー』!」

 

地底のアラクネー 攻撃力2400

 

ここでシンクロ召喚、呼び出されるのは上半身が女性、下半身が蜘蛛となった異形のモンスター。このモンスターから放たれる力は『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』と同種のものだ。鬼柳が僅かに眉をひそめるが、直ぐに気を取り直す。

 

「アラクネーの効果で『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』をこのカードに装備!」

 

「ッ!」

 

表側表示のモンスターを装備カードとする効果。それにより鬼柳が操る満足龍の1体、『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』が吸収され、除去される。ドラゴン族、エースの装備に鬼柳は舌打ちを鳴らすが、エクシーズ次元民、そして彼は特にドラゴンキチでは無いのでおのれぇ、とはならない。彼は満族なのだ。彼を本当に動揺させるには、ハンドレスを封じる位やらねばならない。

 

「バトル!『デビルドーザー』でトリシューラを攻撃!」

 

鬼柳 京介 LP4000→3900

 

『デビルドーザー』がハイウェイのレーンを這い回り、トリシューラに襲いかかる。世界を凍結させる龍もその力を使った後ならばただのバニラモンスターだ。レベル9でも攻撃力は低い為、簡単に破壊される。

 

「『デビルドーザー』が戦闘ダメージを与えた事で、相手のデッキトップからカードを墓地に送る」

 

デッキ破壊効果が破壊されるも、その枚数は1枚のみ、鬼柳の『インフェルニティ』デッキに対しては逆に墓地肥やしを手助けしてしまう結果となる。

 

「どうした?それで終わりかセクト!」

 

「いいや、ここからだぜアニキ!『ポセイドン・オオカブト』でデストロイヤーへ攻撃!トライデント・スパイラル!この瞬間、速攻魔法、『ハーフ・シャット』!『インフェルニティ・デストロイヤー』にこのターン、戦闘破壊耐性を与える代わりに、攻撃力を半減する! 」

 

インフェルニティ・デストロイヤー 攻撃力2300→1150

 

鬼柳 京介 LP3900→2550

 

「ぐ、う――!成程な……!」

 

『インフェルニティ・デストロイヤー』が弱体化され事で鬼柳に大ダメージが入る。とは言えデストロイヤーも戦闘破壊耐性を持ったと考えられるが――このままでは鬼柳は大ダメージを受ける。その理由は――『ポセイドン・オオカブト』の効果。

 

「『ポセイドン・オオカブト』がモンスターを戦闘破壊出来なかった場合、続けて攻撃可能!更にこの効果を2回まで発動出来る!2回目の攻撃!」

 

「させるか!アクションマジック、『ブラインド・ブリザード』!バトルフェイズを終了!」

 

『地底のアラクネー』も合わせればとんでもないダメージとなる。鬼柳は宙に浮かぶアクションカードを掴み、海神の矛の前に氷の壁を作り出し、攻撃を防ぐ。あの鬼柳がこれ程までに追いつめられている。セクトの実力も侮れない。

 

「やるじゃねぇかセクト……!」

 

「へっ、俺はこれでターンエンドだ!」

 

伊集院 セクト LP4000

フィールド『ポセイドン・オオカブト』(攻撃表示)『地底のアラクネー』(攻撃表示)『デビルドーザー』(攻撃表示)

『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』『補給部隊』『一族の結束』

手札0

 

『伊集院選手、鬼柳に対し猛攻!これには鬼柳も堪らない!』

 

「俺のターン、ドロー!厄介なのはアラクネーか……俺は魔法カード、『暗黒界の取引』を発動!互いに1枚ドローし、1枚捨てる」

 

『おぉーっと鬼柳、引きが悪かったのか、カードを手札に運び切れない!』

 

手札が悪いのか、結果的に手札0へと終わり、一気にピンチに陥る鬼柳。その何時もの好戦的なデュエルとは違った姿にセクトが眉をひそめる。

 

「どう言うつもりだいアニキ?」

 

「さぁな、俺のハンドレスコンボは風の吹くまま気の向くまま、ここで負けりゃ、カードが俺を手放したって事さ」

 

これがカードの死神と呼ばれる男の戦術。破滅的で綱渡り。まさかアクションマジックを頼りにしているのかとセクトが睨むが――分からない、このデュエルがどう転ぶのか。

 

「俺は『インフェルニティ・デストロイヤー』を守備表示に変更し、ターンエンド」

 

鬼柳 京介 LP2550

『インフェルニティ・デストロイヤー』(守備表示)

手札0

 

「俺のターン、ドロー!バトルだ!」

 

「墓地の『光の護封霊剣』を除外し、ダイレクトアタックを防ぐ!」

 

「ッ!」

 

セクトのフィールドに存在するモンスターが戦闘体制を取ると共に鬼柳の場から3本の光輝く剣が飛び出し、降り注いで壁となる。思わずセクトがD-ホイールをよろめかせたが、何とか剣の間を縫って鬼柳を追跡する。この男も悪運が強い。

 

「だけどモンスターは別!『ポセイドン・オオカブト』でデストロイヤーを攻撃!」

 

「ッ」

 

「ターンエンドだ」

 

伊集院 セクト LP4000

フィールド『ポセイドン・オオカブト』(攻撃表示)『地底のアラクネー』(攻撃表示)『デビルドーザー』(攻撃表示)

『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』『補給部隊』『一族の結束』

手札1

 

「俺のターン、ドロー!反撃と行こうか!魔法カード、『貪欲な壺』!墓地の『氷結界の龍トリシューラ』、『ダーク・グレファー』、『花札衛-五光-』、『花札衛-雨四光-』、『花札衛-桐-』をデッキに戻し、2枚ドロー!」

 

鬼柳 京介 手札0→2

 

「カードを1枚セット、『インフェルニティ・ミラージュ』を召喚!」

 

インフェルニティ・ミラージュ 攻撃力0

 

「ミラージュを墓地に送り、『インフェルニティ・デーモン』と『インフェルニティ・ネクロマンサー』を蘇生!」

 

インフェルニティ・デーモン 攻撃力1800

 

インフェルニティ・ネクロマンサー 守備力2000

 

1枚のカードにより2枚のモンスターを蘇生、蘇生において『インフェルニティ』はトップクラスと言って良い。墓地を肥やし、蘇生の連続でアドバンテージを稼ぐ。まずは2体、この2体で続く2枚を稼ぐ。

 

「『デーモン』の効果で『インフェルニティ・ブレイク』をサーチ、セット!ネクロマンサーの効果で『インフェルニティ・リベンジャー』を蘇生!」

 

インフェルニティ・リベンジャー 守備力0

 

「レベル4の『デーモン』とレベル3のネクロマンサーに、レベル1のリベンジャーをチューニング!シンクロ召喚!『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』!!」

 

ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン 攻撃力3000

 

再びフィールドに舞い戻る百眼の竜。禍々しいオーラを放つこのモンスターを鬼柳は手懐け、更なる展開に繋ぐ。

 

「『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』の効果で墓地のミラージュを除外し、コピー!墓地に送り、『デーモン』とネクロマンサーを蘇生!」

 

インフェルニティ・デーモン 攻撃力1800

 

インフェルニティ・ネクロマンサー 守備力2000

 

「『デーモン』の効果で『インフェルニティバリア』をサーチ、セット!ネクロマンサーの効果でリベンジャー蘇生!」

 

インフェルニティ・リベンジャー 守備力0

 

「レベル4の『デーモン』とレベル3のネクロマンサーにレベル1のリベンジャーをチューニング!シンクロ召喚!『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』!!」

 

ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン 攻撃力3000

 

「ミラージュコピー!墓地に送り、『デーモン』とネクロマンサー蘇生!」

 

インフェルニティ・デーモン 攻撃力1800

 

インフェルニティ・ネクロマンサー 守備力2000

 

「『デーモン』の効果でバリアサーチ、セット!ネクロマンサーの効果でリベンジャー蘇生!」

 

インフェルニティ・リベンジャー 守備力0

 

「レベル4の『デーモン』とレベル3のネクロマンサーに、レベル1のリベンジャーをチューニング!死者と生者、ゼロにて交わりし時、永劫の檻より魔の竜は放たれる!シンクロ召喚!出でよ、『インフェルニティ・デス・ドラゴン』!!」

 

インフェルニティ・デス・ドラゴン 攻撃力3000

 

黒いスモークが鬼柳のフィールドに巻き起こり、中より鋭い爪が黒煙を切り裂き、身体中より紫電をスパークさせる魔竜が姿を見せる。刃のような角、ギョロギョロと不気味に蠢く眼、4本の腕に薄い羽を持ったドラゴンだ。

 

「デス・ドラゴンの効果により、アラクネーを破壊し、その攻撃力の半分のダメージを与える!インフェルニティ・デス・ブレス!」

 

伊集院 セクト LP4000→2800

 

『インフェルニティ・デス・ドラゴン』の頭部から黒雲が吹き出し、口の中へと吸い込んで黒い弾丸として放つ。消し飛び、腐敗するアラクネー。アラクネーには戦闘で破壊される際、装備モンスターを身代わりに出来る効果があるが、効果となっては無駄だ。残りは『ポセイドン・オオカブト』と『デビルドーザー』。『ハーフ・シャット』等でコンボを狙われない限り安泰だ。対策はしてあるが。

そして、『ワンハンドレッド・アイ・ドラゴン』の最後の効果が発動されるものの、不発に終わり、セクトのD-ホイールのモニターに鬼柳のデッキ情報が公開される。

 

「『補給部隊』の効果でドロー!」

 

伊集院 セクト 手札1→2

 

「ターンエンドだ」

 

鬼柳 京介 LP2550

フィールド『インフェルニティ・デス・ドラゴン』(攻撃表示)

セット4

手札0

 

「……やっぱ強いなアニキは……俺のターン、ドロー!速攻魔法、『サイクロン』!左のカードを破壊!」

 

「カウンター罠、『インフェルニティバリア』!その発動を無効にし、破壊!」

 

「魔法カード、『ソウルテイカー』!デス・ドラゴンを破壊!」

 

「2枚目のバリアで無効!」

 

「アクションマジック、『ハイダイブ』!『デビルドーザー』の攻撃力を1000アップ!」

 

「罠発動!『インフェルニティ・ブレイク』!『インフェルニティ・インフェルノ』を墓地から除外し、『デビルドーザー』を破壊!」

 

事如く一歩先を行かれ、全ての策が失敗に終わる。これこそが鬼柳 京介。バリアブレイクの布陣は簡単に越えられない。

 

「『補給部隊』の効果でドロー……」

 

伊集院 セクト 手札1→2

 

「『ポセイドン・オオカブト』を守備表示に変更し、ターンエンド」

 

伊集院 セクト LP2800

フィールド『ポセイドン・オオカブト』(攻撃表示)

『補給部隊』『一族の結束』

手札2

 

強い、強い、強い。知ってはいたが――やはり鬼柳は自分よりも遥かに強いデュエリストだ。精神面、戦術、運、全てがセクトの上を行く。だからこそセクトは鬼柳に憧れ、アニキと呼び慕う。だからこそセクトは――。

 

「……」

 

妬んで、しまう。

 

「俺のターン、ドロー!モンスターをセット!そしてデス・ドラゴンの効果により、『ポセイドン・オオカブト』を破壊し、1250のダメージを与える!」

 

「アクションマジック、『フレイム・ガード』!効果ダメージを0に、『補給部隊』の効果でドロー!」

 

伊集院 セクト 手札2→3

 

互いのエースが火花を散らす。『インフェルニティ・デス・ドラゴン』が頭部の器官から黒煙を噴出、吸い込んで禍々しいブレスへ変換し、海神の名を持つ甲虫騎士へと放ち、爆裂させる。

 

「罠発動!『強欲な瓶』!1枚ドロー!」

 

鬼柳 京介 手札0→1

 

「どうしたセクト!俺はカードを1枚セット、ターンエンドだ!」

 

鬼柳 京介 LP2550

フィールド『インフェルニティ・デス・ドラゴン』(攻撃表示)セットモンスター

セット1

手札0

 

上級モンスターによる布陣も容易く突破し、今度は鬼柳が猛攻を仕掛ける。とんでもない男だ。最早セクトに勝ち目はないか、観客達が鬼柳にエールを送り始めたその時――セクトの口元がニヤリと弧を描いて歪む。狂気を孕んだ禍々しい笑み。同時に彼の身体からどす黒い闘気が湯気のように上り、鬼柳が異様な光景に目を見開く。

 

「ッ!?セクト、お前――」

 

「アニキ……俺はアンタに憧れてた……その力に、その心に……思わず、妬んじまう位になぁっ!!」

 

ゴウッ、闘気はセクトのD-ホイールへと絡み付き、ホイールから黒い羽を噴出する。何だ、これは――誰もが驚く中、セクトの眼が黒く濁り、その癖獲物を狙う獣の如く爛々と輝き、憎悪の怒号が木霊する。これは、この感情は――羨望と、嫉妬。劣等感が剥き出しとなって鬼柳に牙を剥く。

 

「どうせアンタも俺の事を見下してんだろ!?俺なんかじゃアンタに勝てねぇってな!」

 

「何を――!」

 

「分かるんだよ!さっきから俺に気を使って、アンタが本気じゃ無い事位!手を抜いてる事位!」

 

「ッ!」

 

被害妄想、大暴走、あれだけ鬼柳を慕っていたセクトが人が変わったように鬼柳に罵詈雑言を放ち、デッキより1枚のカードを引き抜く。描かれる黒のアーク。溢れ出る瘴気に身を任せ、セクトは反撃に出る。

 

「『地獄毒蛾』を召喚!」

 

地獄毒蛾 攻撃力1300

 

現れたのはレベル3、毒の鱗粉を振り撒く蛾のモンスターだ。

 

「『地獄毒蛾』の効果!手札の同名モンスターを効果を無効にし、特殊召喚!」

 

地獄毒蛾 守備力100

 

「更に『地獄針幼虫』を特殊召喚!」

 

地獄針幼虫 守備力600

 

呼び出されるチューナーモンスター。これで合計レベルは、8。セクトのエクストラデッキから漆黒の光が伸び、3体のモンスターが光となって弾け飛ぶ。

 

「レベル3の『地獄毒蛾』2体に、レベル2の『地獄針幼虫』をチューニング!魔神を束ねし蠅の王よ!ムシズの走る世界に陰りを!シンクロ召喚!『魔王龍ベエルゼ』ッ!!」

 

魔王龍ベエルゼ 攻撃力3000

 

そして、魔王が姿を見せる。6つの星を2つのリングが包み込み、漆黒の光が貫き、粒子が飛び散る。中よりうねり出たのは2頭の黒竜、裸の女を磔とした異形と呼ぶに相応しく、魔王の名を刻んだモンスター。圧倒的な力を感じさせる、鬼柳が持つ『煉獄竜オーガ・ドラグーン』と同種の決闘竜。その姿に観客が押し黙り、あの鬼柳でさえ息を呑む。

 

「……この、モンスターは……!?」

 

「ヒヒヒ、ヒャハハハハ!これが力だ!俺の力!潰せ!壊せ!踏みにじれ!俺を認めろ!助けを求めろ!バトル!ベエルゼでデス・ドラゴンへ攻撃!魔王の赦肉祭!」

 

ベエルゼが不気味に蠢き、鬼柳のエースモンスターへ迫る。全てを貪り、食らおうとする漆黒の暴竜。鬼柳はそれを止めるべく、リバースカードを発動する。

 

「罠発動!『聖なるバリア-ミラーフォース-』!攻撃表示の相手モンスターを破壊!」

 

「残念だったなぁ!ベエルゼは効果で破壊されねぇ!」

 

「くっ、だが2体の攻撃力は同じ!」

 

「だからぁ?ベエルゼは戦闘でも破壊されねぇんだよ!」

 

「何ッ!?」

 

戦闘、効果で破壊されない強固な耐性を誇る弩級のモンスター。そのとんでもない効果、そして攻撃力の一撃を食らい、デス・ドラゴンが崩れ落ちる。更にセクトが鬼柳に迫り、黒い翼で切り裂いて鬼柳を追い抜く。これは――機体性能が、上がっている。

 

「ぐっ、墓地の『インフェルニティ・リベンジャー』の効果でこいつを蘇生し、レベルをデス・ドラゴンと同じにする!」

 

インフェルニティ・リベンジャー 守備力0 レベル1→8

 

「カードを1枚セット、ターンエンド。ヒヒヒヒヒ、ヒャハハハハハ!」

 

伊集院 セクト LP2800

フィールド『魔王龍ベエルゼ』(攻撃表示)

『補給部隊』『一族の結束』セット1

手札0

 

襲い来る悪意、セクトの魔の手。今まで絆を繋いで来た相手の憎悪を受け、鬼柳は果たして――。

 

 




セクトのキャラの掘り下げが充分に出来ていないのでかなり強引で突然だったと思います。申し訳ありません。1回で良いからデュエルさせとくべきだったなぁと反省。とっちらかってるなぁ。

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