遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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最近スマホの調子が悪い。そろそろ変えるかなぁ。


第120話 すまねぇ!

フレンドシップカップが開催されるサーキットにて、今正に、1回戦第1試合が始まろうとしていた。

対戦するのは鬼柳 京介、徳松 長次郎、柊 柚子が所属するチームサティスファクション。そしてセルゲイ・ヴォルコフ、デュエルチェイサー227、伊集院 セクトのチームセキュリティ。

先鋒は徳松とデュエルチェイサー227だ。彼等が定位置に着く中、ベンチで鬼柳と柚子が話し合う。

 

「まさかセクトが敵側になっちまうとはな……やりづらいったらありゃしねぇ……」

 

「でも鬼柳さん強いんでしょ?」

 

「まぁな!ってもここ最近セクトも強くなってる。油断は出来ないさ。それに――いや、これは良いか……」

 

「?でも徳松さんの実力が分からないのよね……」

 

うぅんと頬をポリポリと掻く柚子。そう、彼女と鬼柳は徳松と顔を合わせるのは今日が初めてなのだ。チーム分けがランダムなので仕方無いが。しかし、鬼柳としては徳松とは知り合いでは無いが――その実力は知っている。

 

「あのおっさんは強いさ、昔はエンジョイ長次郎って有名なプロデュエリストだったんだからな」

 

「プロ……」

 

「まぁ、相手も何か隠しているみたいだが……」

 

ジッ、と徳松の対戦相手であるデュエルチェイサー227、そしてセルゲイに視線を移す鬼柳。彼のデュエリストとしての勘が言っている、彼等2人が何かを持っていると。そしてそれは正解であり――ハズレでもある。鬼柳は気づかない、真に隠された、このデュエルの運命を別つ、もう1つのものを。

 

『さぁ、いよいよ始まるフレンドシップカップ1回戦第1試合!実況はこの私、メリッサ・クレール!』

 

『解説は私、MCだぁーっ!エキシビションマッチから盛り上がったフレンドシップカップ、今日はもっともっと盛り上げていこう!』

 

ワァァァァッ!と観客席から大声が上がり、試合も始まっていないのに熱が伝わっていく。やはり遊矢とジャックのデュエルが脳裏に浮かび上がり、期待を抱かずにはいられないのだろう。そしていよいよ、デュエル開始のランプが灯る。

 

『さぁ、皆さんご一緒に!3、2、1!』

 

「「ライディングデュエル、アクセラレーション!!」」

 

光の粒子がフィールドを覆い、景色が変わっていく。アクションフィールド、『クロス・オーバー・アクセル』。エキシビションマッチでも使われたフィールドだ。

徳松と227のD-ホイールが一気に駆け抜け、コーナーに迫る。ここを制した者が先攻を取る。しかしやはりと言うか、ライディングデュエルが初の徳松はフラフラと危うい走行を行い、227に追い抜かれてしまう。

先攻は227、ライディングデュエルでは経験がものを言う。とは言ってもライディングデュエル素人の遊矢がジャックに勝利したのだ、徳松も死ぬ気で食らいつこうとする。

 

「俺のターン!エンジョイ長次郎……俺も昔憧れたものだ、胸を借りるつもりで挑ませてもらう!永続魔法、『補給部隊』を発動し、俺はチューナーモンスター、『ジュッテ・ナイト』を召喚!」

 

ジュッテ・ナイト 攻撃力700

 

先攻を取った227が召喚したのは髷を結い上げ、眼鏡をかけた役人風のモンスター。手には十手、背中には提灯を負っており、セキュリティを代表するポリスモンスターのチューナーだ。シンクロ黎明期のカードだけあり、最近のカードには劣るが、プレイングで補う。

 

「そして戦士族モンスターが俺のフィールドに存在する事で『キリビ・レディ』を特殊召喚!」

 

キリビ・レディ 守備力100

 

次は火打石をカチカチと鳴らすタラコ唇が特徴的な少女のモンスター。これでチューナーと非チューナーが揃った。合計レベルは3、次なる手は勿論――。

 

「俺はレベル1の『キリビ・レディ』に、レベル2の『ジュッテ・ナイト』をチューニング!お上の力を思い知れ!シンクロ召喚!現れろ!『ゴヨウ・ディフェンダー』!」

 

ゴヨウ・ディフェンダー 攻撃力1000

 

早速シンクロ召喚、『ジュッテ・ナイト』が光の輪となって弾け飛び、『キリビ・レディ』が1つの星となって輝く。並ぶ星は3つ、輪によって包まれ、一筋の閃光が星を貫き、フィールドに現れたのは白化粧に赤い模様、歌舞伎の隈取りをした岡っ引きのモンスター。

布陣を固めるにはお誂え向きの『ゴヨウ』モンスターだ。レベル、ステータスは低いが、その効果は実に強力。

 

「『ゴヨウ・ディフェンダー』の効果!自分フィールドに存在するモンスターが地属性、戦士族のシンクロモンスターのみの場合、エクストラデッキより2体目の『ゴヨウ・ディフェンダー』を特殊召喚する!」

 

ゴヨウ・ディフェンダー 攻撃力1000

 

「更に今特殊召喚したディフェンダーの効果で3体目を特殊召喚!」

 

ゴヨウ・ディフェンダー 攻撃力1000

 

『一気に3体のシンクロモンスターを展開!やはりセキュリティエリート部隊、デュエルチェイサーの名は伊達では無い!』

 

一気に大量展開、これぞ『ゴヨウ・ディフェンダー』の強みだ。そしてこのモンスターには相手から攻撃を受ける際、このカード以外の地属性、戦士族のシンクロモンスターの数×1000攻撃力をアップする効果がある。これで攻撃力は3000、簡単には手出しは出来ない。

 

「ほう、やるじゃねぇか兄ちゃん」

 

「元プロに褒められるとは光栄だな、俺は永続魔法、『強欲なカケラ』を発動し、ターンエンドだ」

 

デュエルチェイサー227 LP4000

フィールド『ゴヨウ・ディフェンダー』(攻撃表示)×3

『補給部隊』『強欲なカケラ』

手札1

 

「俺のターン、ドロー!さぁ、楽しもうじゃねぇか……!俺は魔法カード、『花合わせ』を発動!デッキより『花札衛-松-』、『花札衛-芒-』、『花札衛-柳-』、『花札衛-桐-』の4体を特殊召喚!」

 

花札衛-松- 攻撃力100

 

花札衛-芒- 攻撃力100

 

花札衛-柳- 攻撃力100

 

花札衛-桐- 攻撃力100

 

『227に負けじとこちらも展開!エンジョイ長次郎、復活なるか!?』

 

1枚のカードで一気に4体を特殊召喚、徳松の展開力も227には負けていない。フィールドに『ナチュル・コスモビート』が、『ハリケーン』が、『テンタクル・プラント』が描かれた巨大な花札型のモンスターが現れ、カカンッ、と甲高い音を響かせて横に繋がっていく。

 

「さぁて行くぜ!まずは松をリリース、『花札衛-萩に猪-』を特殊召喚!」

 

花札衛-萩に猪- 守備力1000

 

松に代わり、フィールドに現れたのは猪型のモンスター、『ボアソルジャー』の姿が描かれた種札と呼ばれる種類の花札だ。

 

「荻に猪の特殊召喚時、1枚ドローする!」

 

徳松 長次郎 手札4→5

 

「引いたカードは『花札衛-柳に小野道風-』。よって荻に猪の効果で『ゴヨウ・ディフェンダー』を1体破壊!」

 

「くっ、『補給部隊』の効果でドロー!」

 

デュエルチェイサー227 手札1→2

 

「おめぇさんもドローかい?良いカードは引けたか?俺は柳をリリースし、チューナーモンスター、『花札衛-柳に小野道風-』を特殊召喚!」

 

花札衛-柳に小野道風- 攻撃力2000

 

お次は『花札衛』のエース、『花札衛-雨四光-』と『引きガエル』の2体が描かれた『花札衛』のチューナーモンスター。

 

「柳に小野道風の効果でドロー!」

 

徳松 長次郎 手札4→5

 

「引いたカードはおっと残念、『花積み』、よって墓地送りだ。だけど止まらねぇぞ!芒をリリースし、『花札衛-芒に月-』を特殊召喚!」

 

花札衛-芒に月- 攻撃力2000

 

「効果でドロー!」

 

徳松 長次郎 手札3→4

 

「ドローカードは『花札衛-桐に鳳凰-』!桐をリリースし、特殊召喚!」

 

花札衛-桐に鳳凰- 攻撃力2000

 

次はその名の通り、スピリットモンスター、『鳳凰』の姿が描かれた『花札衛』。次々と飛び出る『花札衛』。止まらないドローラッシュこそエンジョイ長次郎の武器だ。遺憾無く発揮されている。

 

「効果でドロー!」

 

徳松 長次郎 手札3→4

 

「引いたカードは『花札衛-松に鶴-』。ここで打ち止めかねぇ。魔法カード、『打ち出の小槌』を発動し、手札を交換、俺はここで永続魔法、『一族の結束』を発動!俺の墓地は戦士族一色!よって俺のフィールドの戦士族モンスターは攻撃力を800アップ!」

 

花札衛-荻に猪- 攻撃力1000→1800

 

花札衛-芒に月- 攻撃力2000→2800

 

花札衛-柳に小野道風- 攻撃力2000→2800

 

花札衛-桐に鳳凰- 攻撃力2000→2800

 

『大幅に攻撃力アップ!227、どう堪えるか!?』

 

更に全体強化を与える事で準アタッカークラスの『花札衛』モンスターの攻撃力が『ゴヨウ』ラインまで上がる。セキュリティも型無しだ。

 

「バトル!『花札衛-芒に月-』で『ゴヨウ・ディフェンダー』へ攻撃!」

 

「させん!アクションマジック、『大脱出』!バトルフェイズを終了する!」

 

「チッ」

 

襲い来る『花札衛』軍団による攻撃を回避する為、227が空中に浮かぶアクションマジックを手に取りデュエルディスクに叩きつける。見事な手腕だ、ライディングテクニックでアクションデュエルを物にしている。ここでコースは外へと移り、ハイウェイへ、2人はレーンを駆け、更に進んでいく。

 

「メインフェイズ2、柳に小野道風の効果でこのカードとシンクロ素材3体をレベル2に変更し、レベル2となった『花札衛-荻に猪-』、『花札衛-芒に月-』、『花札衛-桐に鳳凰-』に、レベル2の『花札衛-小野道風-』をチューニング!涙雨!光となりて降り注げ!シンクロ召喚!出でよ!『花札衛-雨四光-』!!」

 

花札衛-雨四光- 攻撃力3000→3800

 

シンクロ召喚、4体のモンスターを素材とし、フィールドに現れたのは秋雨の長次郎としての彼のエースカード、傘を差し、着物を纏った美丈夫だ。攻守共に高く、効果も実に強力なモンスターの登場、227も警戒を露にする。

 

「秋雨は卒業したが……こいつも俺と闘って来たモンスターだ。俺はカードを1枚セットし、ターンエンド」

 

徳松 長次郎 LP4000

フィールド『花札衛-雨四光-』(攻撃表示)

『一族の結束』セット1

手札1

 

『両者共に1ターン目を終了!戦況としては徳松選手が上か!?』

 

『やはりエンジョイ長次郎の名は伊達では無い!』

 

「攻守3000越えのモンスターか……俺のターン、ドロー!」

 

「この瞬間、雨四光の効果で相手に1500のダメージを与える!」

 

デュエルチェイサー227 LP4000→2500

 

「ぐっ――!?だ、だが『強欲なカケラ』にカウンターが乗る……!」

 

強欲なカケラ 強欲カウンター0→1

 

雨四光の傘より針の雨が降り注ぎ、227の身体を焦がす。これこそが雨四光の効果。相手のドローフェイズに1500、LPの半分近くを削る特大のバーンだ。

 

『何と1500のバーン!豪快だぁーっ!』

 

「放って置く訳にはいかないな!そのモンスター、確保する!チューナーモンスター、『トラパート』を召喚!」

 

トラパート 攻撃力600

 

現れたのはハットを被り、舌を出したマスコットのようなモンスターが上下に2体繋がったチューナーだ。『ジュッテ・ナイト』と並ぶポリスモンスターの1体、これで227はレベル5か8のシンクロモンスターへ繋げる事が可能となった。

 

「俺はレベル3の『ゴヨウ・ディフェンダー』2体に、レベル2の『トラパート』をチューニング!お上の威光の前にひれ伏すが良い!シンクロ召喚!『ゴヨウ・キング』!!」

 

ゴヨウ・キング 攻撃力2800

 

シンクロモンスターを使用してのシンクロ、雨四光と同じくレベル8で現れたのは白い髷と化粧、赤い隈取りをし、日本刀を握った『ゴヨウ』系最強のモンスターだ。しかし残念ながら攻撃力2800のこのモンスターではまだ雨四光には届かない。

 

「更に永続魔法、『一族の結束』を発動!効果は知っているな?」

 

ゴヨウ・キング 攻撃力2800→3600

 

「念には念をだ、速攻魔法、『サイクロン』!アンタの『一族の結束』を破壊!」

 

「何ィ!?」

 

自身のモンスターを強化しつつ、相手の強化を絶つ堅実なプレイング。これにより雨四光と『ゴヨウ・キング』の攻撃力が逆転する。幾ら強固な耐性を誇る雨四光とは言え、攻撃力で越えられては仕方無い。

 

「バトル!『ゴヨウ・キング』で雨四光へ攻撃!この瞬間、『ゴヨウ・キング』の効果で地属性、戦士族シンクロモンスターの数×400攻撃力をアップ!」

 

ゴヨウ・キング 攻撃力3600→4000

 

「なら俺も――手札から『花札衛-桜に幕-』を捨て、雨四光の攻撃力を1000アップする!」

 

「何だと!?」

 

花札衛-雨四光- 攻撃力3000→4000

 

ダメステ良いっすか?妙な幻聴と共に徳松が手札より桜に幕を捨て、迎撃に出る。これでどちらのモンスターも攻撃力4000、強力なシンクロモンスター同士がぶつかり、火花を散らす。

 

『ゴヨウ・キング』が日本刀を振るい、雨四光が鉄を仕込んだ傘で防ぎ、そのまま回転させて針の雨を射出、『ゴヨウ・キング』が身を翻してかわし、宙でクルリと舞いながら縄付き十手を投擲、傘を奪おうとするも、雨四光が腕を突き出して傘を守る。しかし『ゴヨウ・キング』も負けてはいない。ぐいっと縄を引き、雨四光を釣り上げ、日本刀を一振りし--雨四光の胸を切り裂く。だが雨四光もまた、傘を折り畳み、槍のようにして『ゴヨウ・キング』の胸に突き立てている。

 

相撃ち――エースカード対決は互角、2体のシンクロモンスターは光の粒子となって消える。

 

「流石だな……!俺のエースを道連れにもっていくとは……『補給部隊』の効果でドロー!」

 

デュエルチェイサー227 手札0→1

 

「カードを1枚セットし、ターンエンドだ」

 

デュエルチェイサー227 LP2500

フィールド

『補給部隊』『一族の結束』『強欲なカケラ』セット1

手札0

 

『見事なエース対決!いやぁとても見応えがあります!』

 

『王道だからな、有利なのは徳松選手、ここでモンスターを呼べばがら空きの所にダメージが与えられる!』

 

「俺のターン、ドロー!速攻魔法、『魔力の泉』!アクションフィールドも合わせ、4枚ドローし、2枚捨てる!」

 

徳松 長次郎 手札0→4→2

 

「へへっ、楽しいねぇ!墓地の『花積み』を除外し、墓地より桜に幕を回収!そんでこいつの効果発動!デッキから1枚ドローし、そのカードが『花札衛』だった場合、こいつを特殊召喚する!エンジョイ!」

 

徳松 長次郎 手札3→4

 

「引いたカードは『花札衛-柳-』!よって特殊召喚!」

 

花札衛-桜に幕- 攻撃力2000

 

「更にレベル10以下の『花札衛』が存在する事で、柳も特殊召喚!」

 

花札衛-柳- 守備力100

 

「柳の効果、墓地の柳をデッキに戻し、シャッフル!そしてドロー!」

 

徳松 長次郎 手札2→3

 

「こりゃ良いぜ。俺は柳をリリース、『花札衛-牡丹に蝶-』を特殊召喚!」

 

花札衛-牡丹に蝶- 攻撃力1000

 

『花札衛』特有のドローラッシュ、現れたのはデュアルモンスター、『炎妖蝶ウィルプス』が描かれたチューナーだ。『花札衛』はチューナーが少ない為、このカードか柳に小野道風のどちらかを引き込めるかが鍵となる。

 

「効果でドロー!」

 

徳松 長次郎 手札2→3

 

「ムッ、『花積み』かい、墓地に送るが……俺は続いて桐を特殊召喚!」

 

花札衛-桐- 守備力100

 

「バトルだ!桜に幕でダイレクトアタック!」

 

「させん!罠発動!『リジェクト・リボーン』!バトルフェイズを終了し、シンクロモンスター、『ゴヨウ・キング』と『トラパート』を効果を無効にして特殊召喚!」

 

ゴヨウ・キング 攻撃力2800→3600

 

トラパート 守備力600

 

「防ぐか、カードを1枚セットし、ターンエンド!」

 

徳松 長次郎 LP4000

フィールド『花札衛-桜に幕-』(攻撃表示)『花札衛-牡丹に蝶-』(攻撃表示)『花札衛-桐-』(守備表示)

セット2

手札0

 

「俺のターン、ドロー!『強欲なカケラ』にカウンターが乗る!」

 

強欲なカケラ 強欲カウンター1→2

 

「カウンターが2つ乗ったこのカードを墓地に送り、2枚ドロー!」

 

デュエルチェイサー227 手札1→3

 

「フッ、来たか……魔法カード、『ミラクルシンクロフュージョン』!墓地の『ゴヨウ・ディフェンダー』2体を除外し、融合!融合召喚!出でよ、荘厳なる捕獲者の血を受け継ぎし者!『ゴヨウ・エンペラー』!!」

 

ゴヨウ・エンペラー 攻撃力3300→4100

 

ここでまさかの融合召喚、227の背後に青とオレンジの渦が広がり、2体の『ゴヨウ・ディフェンダー』を合わせ、現れたのは今までの『ゴヨウ』モンスターとは一風変わったモンスターだ。幼子のような小さな体躯を玉座に腰掛け、その名の通り、皇帝然としたカード、このカードの登場に徳松を含め、会場中の人間が驚愕する。

 

『何とデュエルチェイサー227、遊矢も使用した融合モンスターを召喚!まさかまさかの展開だぁーっ!』

 

『攻撃力4100、並のモンスターを寄せ付けない!』

 

「融合モンスターだとぉ……っ!?お前さん、まさか……!いや、聞くのはデュエルに勝ってからだ!」

 

「フッ、バトルだ!『ゴヨウ・エンペラー』で桜に幕に攻撃!」

 

「罠発動!『ガード・ブロック』!ダメージを0にして1枚ドロー!」

 

徳松 長次郎 手札0→1

 

『ゴヨウ・エンペラー』が口から炎を吐くと言う意外な攻撃法で『花札衛』を撃破するその瞬間、徳松は罠でバリアを作ってダメージを凌ぎ、新たなカードを手札に呼び込む。

 

「『ゴヨウ・エンペラー』の効果、このカードと元々の持ち主が相手となるモンスターが相手モンスターを戦闘破壊し、墓地へ送った時、そのモンスターを俺のフィールドに特殊召喚する!」

 

「俺のモンスターもだと!?」

 

花札衛-桜に幕- 攻撃力2000→2800

 

奪った相手モンスターにも『ゴヨウ』効果を付与する、強力なコントロール奪取。成程、相手モンスターを統べるその姿は正に皇帝の名に相応しい。

 

「さぁ、行け!桜に幕で牡丹に蝶へ攻撃!」

 

徳松 長次郎 LP4000→2200

 

「ぐっ――!」

 

「コントロールを奪う!」

 

花札衛-牡丹に蝶- 守備力1000

 

『ゴヨウ・エンペラー』の効果により、次々と奪われていく徳松のモンスター。今回チューナーを奪われたのは不味い事になった。次のターンでのシンクロが難しくなった。墓地にいればまだ手段があったが、相手の場にいるとそうはいかない。

 

「効果でドロー」

 

デュエルチェイサー227 手札2→3

 

「当然『花札衛』で無い為、墓地へ。メインフェイズ2」

 

「ッ」

 

227はメインフェイズ2へと移行する。何故――まだ『ゴヨウ・キング』の攻撃権が残っている。いや、その前に牡丹に蝶を攻撃表示で呼べば桐を破壊し、『ゴヨウ・キング』で止めを刺そうとする筈なのに――。

 

「桐の効果は知っている。いや、雨四光以外の『花札衛』の効果は、と言った所か。エンジョイ長次郎、貴方は元とは言えプロだ。昔使っていたカード位、俺は覚えている」

 

「有名なのも辛いねぇ……!」

 

プロであったが故、知られる、と言う事がここに来て徳松の首を絞める。成程、これは中々に辛い。とすれば、まともに通じるのは地下で新たに得たカード達、秋雨の長次郎のとしての彼か。まさかここに来てあの頃が役に立つとは、分からないものだ。

 

「俺はレベル3の桜に幕に、レベル2の『トラパート』をチューニング!地獄の果てまで追い詰めよ!見よ!清廉なる魂!シンクロ召喚!出でよ、『ゴヨウ・チェイサー』!」

 

ゴヨウ・チェイサー 攻撃力1900→3000

 

奪ったモンスターを利用し、更にシンクロ召喚、現れたのは十手を握り、徳松のモンスターを睨む追跡者。自身の効果と『一族の結束』の効果で攻撃力を大幅に上げ、3000ラインまで辿り着く。これは厄介だ。

このままでは次々と徳松のモンスターが奪われ、彼の布陣を強固なものにしていく。しかも『花札衛』は戦士族、彼の『一族の結束』でパワーアップされてしまう。

面倒な事だ、徳松は227を追い、コースを一周、再びサーキットに戻る。

 

「大ピンチって訳か……!」

 

「カードを2枚セット、ターンエンドだ」

 

デュエルチェイサー227 LP2500

フィールド『ゴヨウ・エンペラー』(攻撃表示)『ゴヨウ・キング』(攻撃表示)『ゴヨウ・チェイサー』(攻撃表示)『花札衛-牡丹に蝶-』(守備表示)

『補給部隊』『一族の結束』セット2

手札0

 

「俺のターン、ドロー!ここでこのカードかい、俺もツイてるねぇ!魔法カード、『超こいこい』!!」

 

「来たか――!」

 

発動されたのはエンジョイ長次郎、奇跡のドローの象徴とも言える魔法カード。徳松はこの1枚で逆転を狙う。

 

「見せてやるよ、奇跡のドロー!自分のデッキより3枚を捲り、その中の『花札衛』を効果を無効にし、レベルを2に変更、召喚条件を無視して特殊召喚!さぁまずは1枚目!どちらさんもご一緒にぃ!こいこい、こいこい――!」

 

『ここに来てエンジョイ長次郎、奇跡のドローに賭ける!さぁ、どう出るか!こいこい、こいこい――!』

 

こいこい、こいこい。と――会場全体がエンジョイ長次郎の奇跡のドローを期待し、声を上げる。ここで引かねば逆転は無い。何より――引かねば男が廃る。

 

「エンジョイ!『花札衛-萩に猪-』!」

 

花札衛-萩に猪- 守備力1000 レベル7→2

 

まず1枚――カカンッ、と音を鳴らし、桐に繋がる。

 

「さぁ、次だ!こいこい、こいこい――!」

 

『こいこい、こいこい!』

 

「エンジョイ!『花札衛-紅葉に鹿-』!」

 

花札衛-紅葉に鹿- 守備力1000 レベル10→2

 

2枚目、後1枚、後1枚で逆転への布石が完成する。

 

「3枚目!こいこい、こいこい――!」

 

『こいこい、こいこい!』

 

「エンジョイ!『花札衛-牡丹に蝶-』!」

 

花札衛-牡丹に蝶- 守備力1000 レベル6→2

 

3枚目――これで3枚の『花札衛』を見事引き当て、猪鹿蝶が完成する。とんでもない豪運、正に奇跡のドロー。エンジョイ長次郎、地上にて完全復活に会場から声援が巻き起こる。

 

「だが呼べるのは猪鹿蝶か雨四光、それではこの状況は打破出来ん!」

 

「おいおい、何を勘違いしてるだい兄ちゃん、俺は墓地の『花積み』を除外し、墓地の松を回収、召喚!」

 

花札衛-松- 攻撃力100

 

「効果でドロー!引いたカードは――『シャッフル・リボーン』か、墓地に送るぜ。そしてリバースカード、オープン!魔法カード、『下降潮流』!桐のレベルを3に変更!」

 

花札衛-桐- レベル12→3

 

「まさか――5体によるシンクロか!」

 

「その通りよ!俺はレベル3となった桐、レベル2となった萩に猪と紅葉に鹿、レベル1の松にレベル2の牡丹に蝶をチューニング!その神々しきは聖なる光。今、天と地と水と土と金となりて照らせ。シンクロ召喚!『花札衛-五光-』!!」

 

花札衛-五光- 攻撃力5000

 

5体のモンスターを使用してのレベル10シンクロモンスターのシンクロ召喚、超弩級要素満載で現れたのは攻撃力5000のモンスター。このカードこそ徳松の真の切り札。美しい波紋を広た日本刀を振るこの武者が、逆境を切り裂く。

 

「ならばそれを貰おう!俺は『ゴヨウ・エンペラー』の効果発動!『ゴヨウ・チェイサー』をリリースし、そのモンスターのコントロールを得る!」

 

「おいおいそいつはねぇだろ、アクションマジック、『透明』!このターン、五光は相手の効果の対象とならず、効果を受けない!」

 

「チッ!」

 

五光を奪おうと手を伸ばす227を払いのけ、押し通す徳松。危うい所だった。五光は魔法、罠は無効に出来るが、モンスター効果は無効に出来ない。アクションマジックを手に入れて良かったと心底安堵する。

 

「バトルだ!」

 

「罠発動!『威嚇する咆哮』!」

 

「五光の効果で無効にするぜ!そのまま『ゴヨウ・エンペラー』に攻撃!」

 

カチャリ、五光が手に持った日本刀を振るい、捕獲者の皇帝へと襲いかかろうとしたその時――。

 

「罠発動!『聖なる鎧-ミラーメール-』!『ゴヨウ・エンペラー』の攻撃力を、五光と同じにする!」

 

「何ぃ!?」

 

ゴヨウ・エンペラー 攻撃力4100→5000

 

227が残る罠を使い、『ゴヨウ・エンペラー』に鏡面の輝きを持った鎧が纏われ、相撃ちに持ち込む。エース対決の次は切り札対決。雨四光の時の仕返しとばかりに自身を切り裂く日本刀を掴み、『ゴヨウ・エンペラー』が炎を吐き迎撃する。光の粒子に消える2体のモンスター。

だが2人は息つく暇なく次の手に出る。

 

「『ゴヨウ・エンペラー』の効果で牡丹に蝶のコントロールは戻り、『補給部隊』の効果でドロー!」

 

「俺も五光の効果でエクストラデッキから雨四光を特殊召喚!!」

 

花札衛-雨四光- 守備力3000

 

デュエルチェイサー227 手札0→1

 

「メインフェイズ2、墓地の『シャッフル・リボーン』を除外し、牡丹に蝶をデッキに戻してドロー!」

 

徳松 長次郎 手札0→1

 

「カードを1枚セット、ターンエンドだ」

 

徳松 長次郎 LP2200

フィールド『花札衛-雨四光-』(攻撃表示)

セット1

手札0

 

古参の元プロデュエリストとセキュリティによる激突。そのデュエルは予想以上に熱く、目まぐるしい展開を見せる。

 

誰が彼等がこれ程までのデュエルをすると予想しただろう、227は『ゴヨウ・キング』や融合モンスターである『ゴヨウ・エンペラー』、2体の最上級『ゴヨウ』で徳松を翻弄し、かと思えば徳松は5体によるシンクロ、レベル10、攻撃力5000と言う超弩級のシンクロモンスターを呼び出し、華々しいエースと切り札の相撃ちが演舞のように披露される。

 

玄人同士の2人だが、強力なモンスターの激突とエンターテイメントと呼ぶに相応しいデュエル。読み合いもある、バーン、コントロール奪取の搦め手もある。

だが――それを差し引いても、デュエルモンスターズの王道を往く。フィールドに残っているのは互いのエースモンスターのみ。両者切り札を失った今、果たして勝者はどちらになるのか。

 

「フ、貴方と闘えて良かった……」

 

「俺もだぜ兄ちゃん、トップスの奴で話の分かる奴がいるとはな……!」

 

『両者共にデュエルを通し友情が芽生えています!これこそフレンドシップカップの真の形!シティは1つ!皆友達!』

 

デュエルを通し、227と徳松。トップスとコモンズの壁を越えて友情が生まれる。まだ本当にトップスとコモンズが分かり合えるものでは無いのかもしれないが――今確かに、この2人は絆で繋がれた――。

 

「行くぜエンジョイ長次郎!」

 

「来な!」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「これはチーム戦!最後まで、俺に出来る事を全力でやるぜ!雨四光の効果!」

 

デュエルチェイサー227 LP2500→1000

 

最後のターンとなる事を覚悟し、徳松が残る力を振り絞り、もう1枚の相棒、雨四光のバーンで227のLPを削り取る。これで残るLPは1000、自分に出来る事はここまでだ。

 

「見事――俺は『サムライソード・バロン』を召喚!」

 

サムライソード・バロン 攻撃力1600→2400

 

姿を見せたのは幾つもの刀を持った侍のモンスター。準アタッカー級の攻撃力も『一族の結束』で帝ラインに引き上げられる。このカードも破壊しておきたかったが――仕方無い、鬼柳には悪いが、彼ならば何とか出来るだろうと徳松は考える。初対面だが、それでも分かる程に彼は強い。徳松のデュエリストとしての嗅覚がそう言っているのだ。

 

「バロンの効果で雨四光を攻撃表示に変更、カードを1枚セット!」

 

「――へっ……!」

 

「バトル!『ゴヨウ・キング』で雨四光へ攻撃!」

 

徳松 長次郎 LP2200→1600

 

「がっ――!」

 

『ゴヨウ・キング』が十手を投げ、雨四光を縛り上げて日本刀を一振りして切り裂く。最早強化カードも無い。破壊されてしまうが、『リジェクト・リボーン』の効果で『ゴヨウ・キング』の効果が無効となっているのが幸いか。残したセットカードを鬼柳が上手く活用してくれると信じるのみ。

 

「バロンでダイレクトアタック!」

 

徳松 長次郎 LP1600→0

 

ファーストホイーラー対決、軍配が上がったのは227だ。とは言え徳松も健闘した。セーフティが下り、スモークがモクモクと上るD-ホイールを最後まで走らせ、徳松は鬼柳にバトンを繋ぐ。

 

『ファーストホイーラー、制したのは227だぁーっ!あのエンジョイ長次郎に退けを取らない見事な戦術!しかし徳松選手も健闘しました!』

 

『セカンドホイーラーは何と伝説のチームサティスファクションのリーダー、鬼柳 京介!相手はLP1000とは言え、強力な布陣が整っている!ここからどう巻き返すのか!?』

 

「すまねぇ鬼柳の兄ちゃん。『一族の結束』を残しちまった」

 

「安心しな、徳松のオッサンの分まで満足させてやる。最高のSatisfactionを観客席に届けてやるぜ!」

 

既に準備は完了しているのか、愛用のD-ホイール、ギガントLに搭乗しながらエンジンを唸らせ、鬼柳が猛スピードでスタートを切り、先行する227に迫る。凄まじいスタートだ。見る見る内に距離を縮め、227に並ぶ。風に靡くコート、鬼柳はヘルメットのバイザー奥の目を細め、ニヤリと笑い、227を挑発する。

 

「ホイーラーが変わった為、俺のターンは強制的に終了する」

 

デュエルチェイサー227 LP1000

フィールド『ゴヨウ・キング』(攻撃表示)『サムライソード・バロン』(攻撃表示)

『補給部隊』『一族の結束』セット1

手札0

 

「鬼柳 京介……デュエルギャングを狩るデュエルギャング、チームサティスファクションのリーダーであり、セキュリティでも簡単に手を出せない要注意人物か。相手にとって不足はない!このまま押し切る!」

 

「俺を知ってるのか、だけどそいつぁいただけねぇ。手負いのお前じゃ、死神を殺す事は出来ねぇよ!さぁ、行くぜ!たっぷり満足していきな!」

 

鬼柳がデッキから5枚のカードを引き抜き、227へと挑戦状を叩きつける。ここから始まるはチームサティスファクション、リーダー、死神と呼ばれる優勝候補のデュエリストのデュエル。万全とも言える布陣に、鬼柳はどのように切り込んでいくのか――。

 

「「ライディングデュエル、アクセラレーション!!」」

 

伝説が、フィールドを駆ける。

 

 




次回予告

始まったシンクロ次元最強の男、鬼柳のデュエル。彼は得意のハンドレスソリティアコンボで果敢に攻めるが――。

次回の沢渡
遊矢がジャックに勝った事でランサーズメンバーが盛り上がって彼をチヤホヤし、そこに子分3人も混ざるものだから彼は嫉妬してフテ寝してしまう。だがそれでも気づかれない沢渡。そんな彼が取った行動は果たして!?

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