遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

12 / 202
アニメが新OP、EDに変わりましたね。
自分の好みにストライク・バーストです。
そしてバレットさん復活……バレットが大活躍。ですなプロフェッサー?


第11話 アリガトウオレノデッキ

「コナミが道場破りに?」

 

コナミが舞網チャンピオンシップの出場を賭け、道場破りと言う色々間違った手段を取っている頃、遊勝塾では遊矢が柚子の説明を受けていた。朝のトレーニングの後と言う事であり、遊矢の手には冷えたスポーツドリンクが握られている。

 

「まっさかぁ!コナミお兄ちゃんがそんな事する訳……あるかもしれない」

 

この場に居合わせたアユが自身の後輩であるコナミをフォローしようと……した。一応。アユも途中から自信が無くなったのだろう。確かにコナミならやりかねない。と。実際、今この時にコナミはソリティア野郎と共にソリティア野郎達に挑んでいた。

 

「…………不安だな…………」

 

「ええ……そうだ!遊矢お願いっ!コナミを探してきて!」

 

両手を合わせ、遊矢に頼み込む柚子。一方で遊矢は明らかに困った顔をしている。

 

「ええぇー……、コナミの行動範囲なんて謎過ぎるからなぁ」

 

「どうせ今日は試合ないから良いじゃない。私はお昼ご飯作らなきゃいけないし……」

 

「あー……分かったよ。流石に看板持ってきたらマズイからなぁ」

 

頬を掻き、仕方ないか、と項垂れる遊矢。果たしてコナミを見つけ出す事は出来るのだろうか?現在、コナミが満足ジャケットを着ている事を考えれば、見つけない方が幸せなのではないだろうか?

 

――――――――

 

「俺達の想いを受け止めるぅ?」

 

時は戻り、コナミと刃。黒門とねねによるアクションタッグデュエルは佳境に入っていた。黒門達の場には『暗黒界の門』によって攻撃力3000となった『暗黒界の龍神グラファ』が1体、コナミ達の場には『幻獣の角』により攻撃力を増した『XX-セイバーガトムズ』が光の剣を地面に突き刺して仁王立ちし、その両隣には『XX-セイバーガルセム』と『E・HEROブレイズマン』が存在し、暗き渓谷の上空には星屑を散りばめながら『閃光竜スターダスト』が舞っている。圧倒的な不利。そう自覚したからこそ唇を噛み、コナミを睨めつける。確かに不利な状況だ。だが戦況の方は今は置いてもいい。

 

今はこの男が何を言っているのか聞かねばなるまい。コナミと名乗り、自分達の縄張りに、道場破りを宣言した赤帽子の男。憎き刃の手を取り、自分達と対峙する男。この男は宣言した。

迷うならカードを取れ――俺は迷ってなどいない。

悩むからこそデュエルに臨め――俺は悩んでなどいない。

カードが答えを出してくれる――答えなんて望んじゃいねぇ。

俺が欲しいのは――、欲しい、ものは――、一体、何だ――?

そこまで思考し、頭を振る。違う。奴の言葉に惑わされるな。何が全て受け止める。だ。

 

「ふざけんな……!やってみやがれ!出来るもんならなぁ!」

 

黒門の口より無意識に言葉が放たれる。それはまるで、何かに切望しているような、すがっているような声だった。

 

「バトルだ。ガトムズでグラファに攻撃!」

 

人並み外れた脚力で地を蹴り、闇のように暗い崖を跳躍する白銀の剣士。その勢いを利用し、光の太刀が振るわれる。それを迎え撃とうとグラファが地を蹴り、翼を広げ飛行する。

 

「罠発動!『ヘイト・バスター』!自分フィールドの悪魔族モンスターが攻撃対象となった時、攻撃モンスターと共に破壊し、攻撃モンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える!」

 

「スターダストの効果、発動!自分フィールドのカード1枚に破壊耐性を与え――」

 

「させるか!リバースカード、オープン!『禁じられた聖杯』!モンスターの効果を無効にし、攻撃力を400ポイント上げる!」

 

閃光竜スターダスト 攻撃力2500→2900

 

剣は確かに悪魔の体を貫く。しかし最期の足掻きか、悪魔は凄まじい遠吠えと共に剣士を抱き、暗き谷底に堕ちていく。そして姿が見えなくなった時、轟音と共に爆発し、熱風がコナミ達の頬を撫でる。

 

コナミ&刀堂 刃 LP3700→600

 

「くっ!スターダストで攻撃!流星閃撃(シューティング・ブラスト)!」

竜よりブレスが放たれる。星の光を凝縮したようなそれは速度を高め、黒門に迫る。

 

「クソッ!アクションカードは……!」

 

焦燥し、何処かにカードは落ちていないかと、辺りを見渡す黒門。無い。カードが何処にも無い。ここで終わるのか?竜のブレスが目の前まで迫ったその時。

 

「アクションマジック!『ブラインド・ブリザード』!バトルフェイズを終了させます!」

 

少女の声が暗き渓谷に響き渡る。それと同時に黒門の前を吹雪が駆け、閃光を遮った。

 

「……光……焔……?」

 

即座に背後を振り返り、自分を助けたであろう少女を見る。本当に先程までの少女と同一人物なのだろうか?目を疑うのも無理は無い。背を縮こまらせ、震えていた彼女はピン、と背を伸ばしており、弱々しく涙目だった顔は眉を吊り上げ凛々しいものとなっている。あれは誰だ――?少なくとも自らの知る少女ではない。今までの光焔 ねねではない。

 

「覚悟は決まったか――オレはターンエンドだ」

 

コナミ&刀堂 刃 LP600

フィールド 『閃光竜スターダスト』(攻撃表示) 『E・HEROブレイズマン』(守備表示) 『XX-セイバーガルセム』(攻撃表示)

Pゾーン 『竜脈の魔術師』 『竜穴の魔術師』

手札0(コナミ) 手札1(刃)

 

口元を緩め、少女を見るコナミ。少女はコナミに答えるように胸元に手を当て、言葉を放つ。

 

「私は――私は迷ってました。本当に刀堂さんが裏切ったのか――?でも迷うだけで答えを捜そうとはしませんでした」

ゆっくりと唇を動かし、自分のデュエルディスクに目を落とす。恐らくあの主に素直ではないカードの事を思っているのだろう。その表情は自嘲気味なものだ。

 

「私は悩んでました。昔は仲の良かった3人が何でこんなにいがみ合っているんだろう。って、でもそれが何故か。なんて求めようともしなかった」

 

伏せられた瞳が前を向く。今までとは違う、自らの道を見据えた眼。陰を作り、迷い、悩んだ少女はもう、そこにはいない。そこにあるものは日溜まりのような穏やかな笑顔。少女は自らに課した糸を見事、断ち切った。

 

「答えを出します。受け止めてくださいっ!コナミさん!ドロー!」

 

影が伸び、光が導く。

 

「速攻魔法!『神の写し身との接触』を発動します!手札の『デーモン・イーター』ちゃんと『シャドール・ビースト』ちゃんを融合!融合召喚!『エルシャドール・シェキナーガ』さん!」

 

エルシャドール・シェキナーガ 攻撃力2600

 

キリキリと壊れた時計のような音を立て、聖樹の玉座に腰掛けた巨大な修道女が大地に降り立つ。『暗黒界の門』を優に超える機械仕掛けの女神にコナミ達が息を飲む。

 

「『シャドール・ビースト』ちゃんの効果で1枚ドロー!」

 

光焔 ねね 手札4→5

 

「『シャドール・リザード』ちゃんを召喚し、装備魔法『魂写しの同化』を装備!」

 

シャドール・リザード 攻撃力1800

 

「『魂写しの同化』の効果!装備モンスターである『シャドール・リザード』ちゃんと手札の『稲荷火』ちゃんで融合!融合召喚!『エルシャドール・エグリスタ』さん!」

 

エルシャドール・エグリスタ 攻撃力2450

 

暗き渓谷が真紅に染まる。現れたのは先の『エルシャドール・シェキナーガ』にも劣らぬ巨体を誇る紅蓮の騎士。頭部には金色の竜が吠え、背の影糸が真紅に燃え、まるで蝶の羽根のごとき美しさを感じさせる。

 

「『シャドール・リザード』ちゃんの効果でデッキの『シャドール・ハウンド』ちゃんを墓地に送ります。ハウンドちゃんの効果でブレイズマンさんを攻撃表示に、更に『影依融合』を発動し、この瞬間『連続魔法』を発動!手札のアクションカードを捨てて、『連続魔法』の効果は『影依融合』と同じになります!そして相手フィールドにエクストラデッキから特殊召喚されたモンスターがいる場合、『影依融合』の素材にデッキのカードを含む事ができます!デッキの『デブリ・ドラゴン』ちゃんと『シャドール・ヘッジホッグ』ちゃんを融合!融合召喚!『エルシャドール・ウェンディゴ』ちゃん!」

 

エルシャドール・ウェンディゴ 守備力2800

 

影より跳ね出たのは装飾が施された、禍々しいイルカとイルカに乗った少女の人形。影の中をまるで海原と同じように泳ぐ姿はどこか不気味である。

 

「『シャドール・ヘッジホッグ』ちゃんの効果で『シャドール・ファルコン』ちゃんを手札に加えます!そしてデッキの『ギゴバイト』さんと『シャドール・ヘッジホッグ』ちゃんを融合!融合召喚!『エルシャドール・アノマリリス』さん!」

 

エルシャドール・アノマリリス 攻撃力2700

 

最後に登場したのはシェキナーガやエグリスタと並ぶ巨体を持つ、影の花。シェキナーガの修道女と同じ顔をした人形が氷の羽衣を纏い、影糸を伸ばしながら地に降り立つ。

 

ねねの周囲に並び立つ4体の融合モンスター。たった1ターンで4体ものエルシャドールを出して見せた。これが彼女の、光焔 ねねの全力。しかし、ここの道場の門下生は全員、ソリティアが好きなのだろうか?

 

「バトルです!『エルシャドール・アノマリリス』さんで『閃光竜スターダスト』さんに攻撃!」

 

宙を漂う影の花が閃光の竜に迫る。体格差は歴然。アノマリリスは両手より幾重もの影糸を伸ばし、閃光を貫かんとする。

 

「墓地の『超電磁タートル』を除外しバトルフェイズを終了させる!」

 

しかし、突如来襲する甲羅により影糸は屈折し思いもよらぬ方向へ直撃し、岩雪崩を起こす。

 

「ーっ!そんなカード、何時ー!?」

 

「へっ!最初の『手札抹殺』の時に俺が落として、温存しておいたのさ!」

 

「……あの時に……ふふっ、私はターンエンドです」

 

黒門 暗次&光焔 ねね LP2600

フィールド 『エルシャドール・アノマリリス』(攻撃表示) 『エルシャドール・シェキナーガ』(攻撃表示) 『エルシャドール・エグリスタ』(攻撃表示) 『エルシャドール・ウェンディゴ』(守備表示)

『強制接収』

手札0(黒門) 手札1(ねね)

 

「全く……ここの奴等はどいつもこいつもやりたい放題デュエルして、上品になんてできやしねぇ……でもまぁ、こんなもんか。我儘で貪欲で、泥臭くって、諦めの悪ぃ奴等ばっか!こんなところで終われっかよ!負けねぇぜ!暗次!ねね!」

 

皮肉気に呟き、それでも誇らしげに胸を張る刃。やはり、この少年はこの道場を裏切ってなどいない。この少年は自分の育ち、ライバルと研鑽した道場を愛しているのだろう。負けず嫌いな表情を見せ、大胆に宣言する。

 

「ドローッ!」

 

伝家の宝刀は、引き抜かれた。

 

「いっくぜぇ!『XX-セイバーフラムナイト』を召喚!」

 

XX-セイバーフラムナイト 攻撃力1300

 

「チューナーモンスター……!だけど『エルシャドール・エグリスタ』さんは1ターンに1度、特殊召喚を無効にできます!」

 

「そんなモン、ぶったぎってやるぜ!魔法カード『セイバースラッシュ』!自分フィールドの表側攻撃表示の『X-セイバー』モンスターの数だけ、フィールド上の表側表示のカードを破壊する!俺の場にいる『X-セイバー』は2体!お前の『エルシャドール・シェキナーガ』と『エルシャドール・アノマリリス』を破壊する!」

 

二刀を持つガゼルの剣士が、金髪の少年戦士が剣を煌めかせ、巨大な修道女を切り刻む。正にジャイアント・キリング。小さな剣士達がその冴え渡る剣技をもって、影の人形を打破した。

 

「アノマリリスさんとシェキナーガさんの効果!墓地の『シャドール』魔法、罠カードを手札に加えます!私は『影依融合』と『神の写し身との接触』を手札に加えます!」

 

「まだまだぁ!バトルだ!『閃光竜スターダスト』で『エルシャドール・エグリスタ』を攻撃!」

 

「ッ!『エルシャドール・ウェンディゴ』ちゃんの効果!自分フィールドのモンスター1体を特殊召喚されたモンスターとの戦闘による破壊から守る!私は『エルシャドール・エグリスタ』さんを選択!」

 

閃光竜の息吹が真紅の騎士へと襲いかかる。強大な光の奔流は炎の人形を飲み込み、その身を焦がす。しかし騎士の影より跳ね出たイルカに乗った少女が杖を振るい、光を払う。

 

黒門 暗次&光焔 ねね LP2600→2550

 

「ちぃっ!肝心な奴が残っちまったか……!メインフェイズ2に移行し、レベル4の『XX-セイバーガルセム』にレベル3の『XX-セイバーフラムナイト』をチューニング!シンクロ召喚!『X-セイバーウルベルム』!」

 

X-セイバーウルベルム 攻撃力2200

 

現れたるは牛のような角を唸らせたマスクを被った荒々しき戦士。

 

「『エルシャドール・エグリスタ』さんの効果!特殊召喚を無効にし破壊します!」

 

しかし、エグリスタの背より伸びる影糸が戦士を雁字絡めにし、引き裂いてしまう。

 

「その後、手札の『シャドール』カードを墓地へ送ります。私は『シャドール・ファルコン』ちゃんを墓地へ送り、『シャドール・ファルコン』ちゃんの効果で自身をセットします。……何故シンクロ召喚を……?」

 

「LPが少ないのに、低攻撃力のモンスターを晒す奴がいるかよ」

 

「成程……」

 

「俺はブレイズマンを守備表示に、これでターンエンドだ。さぁ、お前の番だぜ?黒門」

 

コナミ&刀堂 刃 LP600

フィールド 『閃光竜スターダスト』(攻撃表示) 『E・HEROブレイズマン』(守備表示)

Pゾーン 『竜脈の魔術師』 『竜穴の魔術師』

手札0(コナミ) 手札0(刃)

 

黒門に向けて真剣な表情で語りかける刃。しかし、黒門は目を伏せ、微動だにしない。ただジッと地面を見つめ何かを考えている。

 

(俺は……、何がしたかったんだろうな……)

 

どうしてこうなってしまったのだろうと自嘲気な表情で薄く笑う。その顔に浮かぶのは後悔か、自責か。

 

(忘れちまってたぜ……ハッ!過去にすがった俺が昔の刃達の思い出を忘れるなんてな……そうだ、刃は裏切るような奴じゃねぇ……俺は馬鹿だな……だけど、だけどよ、刃)

 

少年の目から憎悪の色が消える。そこにあるのは紅蓮に燃え盛る激しき闘志。

 

「だからって負けられっかよ!俺だって負けず嫌いだ!勝って満足するしかねぇ!答えろ!答えてみろ!俺のカード!ドロー!!」

 

一陣の風が吹く。熱き闘志が左手に宿る。口の端を吊り上げ、高らかに、ドローした。

 

「最ッ高だぜ!俺達のデュエルはこれからだ!俺は『暗黒界の門』の効果で墓地のレイヴンを除外、ベージを捨てて1枚ドロー!」

 

黒門 暗次 手札0→1

 

「手札から捨てたベージの効果でこいつ自身を特殊召喚!」

 

暗黒界の尖兵ベージ 攻撃力1600→1900

 

「そして!ベージを手札に戻し、墓地より『暗黒界の龍神グラファ』を特殊召喚!」

 

暗黒界の龍神グラファ 攻撃力2700→3000

 

少年の想いに答えるように、谷底より黒き龍が旋回し、帰還する。肉食恐竜の頭蓋の兜、3本のうねる角、刺々しい肉体、そして、頼もしき背中。漆黒の翼を広げ、主と門を背に、雄々しき叫びを上げる。

 

「……俺は……馬鹿だ。仲間を信じようとしなかった。憎しみで目が眩んでいたのは俺の方だ。それどころかねねにまで当たって……すまなかったな、ねね」

 

頬を掻き、恥ずかしそうに謝罪する黒門。その顔にはもう何の陰りも無い。あるのは晴れやかな、荷を下ろしたような少年の顔。

 

「私こそすいません。暗次君も、刃君も……」

 

「そうだな……刃、すまなかった。そして、グラファ……」

 

自分の仲間に向かい謝罪し、自らの分身へとへと向き直る黒門。

 

「俺はもう、仲間を見捨てない。お前のように、全力で仲間を守って見せる。1度は間違った俺だけど、共に、闘ってくれ!」

 

口元を緩め、真剣に語りかける黒門。ソリッドビジョンに何を--?と彼の行動を馬鹿にするような人物は此処には一人もいない。何故なら。

 

--オオオオォォォォ!!--

 

彼に応えるように、黒き龍が遠吠えを上げたからだ。地が響き、天が震えるような激しくも、優しい音。それだけで、少年は救われた。

 

「もう、迷いも、悩みもない。カードが答えてくれたから、だから全てを出す。受け止めて貰うぜ?刃、コナミ」

 

「へっ!かかってこい!暗次!」

 

「バトルだ!『暗黒界の龍神グラファ』で『閃光竜スターダスト』に攻撃!」

 

黒き翼を翻し、滑空するように、地面を抉り取りながら進む龍神。野太い腕を伸ばし、白き竜の脚を鷲掴みにし、牙を突き立てる。

 

「『閃光竜スターダスト』の効果により、自身に1ターンに1度の破壊耐性を与える!」

 

白き竜に薄い膜状のバリアが張られ、龍神に対抗するようにブレスを放つ。竜と龍の対決は遥か上空にまで上り、互いに身を削り合う。グラファが爪を振るえば、スターダストが翼を刃のように使い切り裂き、スターダストがブレスを放てば、グラファがその身を弾丸のように撃ち出す。そしてグラファの刺々しい尾が振るわれ、強烈な打撃音と共にスターダストが渓谷にぶつかり、岩雪崩にその身が埋もれてしまう。

 

コナミ&刀堂 刃 LP600→100

 

「更に『エルシャドール・エグリスタ』で『E・HEROブレイズマン』を攻撃!」

 

エグリスタの背の影糸がまるで矢の雨の如くブレイズマンに降り注ぎ、身を焦がす。これでコナミ達の場に残るモンスターは『閃光竜スターダスト』のみとなった。

 

「俺はこれでターンエンド。さぁ、今度はテメェの番だ。コナミ!お前の全力!受け止めてやるぜ!」

 

黒門 暗次&光焔 ねね LP2550

フィールド『暗黒界の龍神グラファ』(攻撃表示) 『エルシャドール・エグリスタ』(攻撃表示) 『エルシャドール・ウェンディゴ』(守備表示) セットモンスター

『強制接収』

手札2(黒門) 手札1(ねね)

 

楽しそうに笑い、コナミを見据える黒門。黒門だけではない。ねねが、刃が、期待を含んだ瞳でコナミを見つめる。ならば答えて見せよう。そう示すようにデッキに手を置き、勢い良くドローする。

 

「オレのっ、ターンッ!」

 

その瞬間、瓦礫より光が弾け、『閃光竜スターダスト』が復活する。まだ闘える。そう言わんばかりの咆哮を受け、コナミが指示を飛ばす。

 

「バトル!『閃光竜スターダスト』で『暗黒界の龍神グラファ』に攻撃!」

 

「なっ!?」

 

コナミの台詞にその場全員が目を見開く。コナミ達のライフはたった100。そんな状態なのに攻撃力で勝っているグラファに攻撃を仕掛けてきた。--何かある--この攻撃で終わらせる気だ--!そう感じ、瞬時にすぐ傍で輝くアクションカードに飛びかかり、光のプレートに叩きつける黒門。負けられない。デュエリストとしての本能が危機を感じたのだ。

 

「アクションマジック!『回避』!攻撃を無効にする!」

 

これで此方に突撃する流星は止まる--筈だった。

 

「信じていた。お前なら止めるだろうと。賭けだったが--オレ達の勝ちだ!速攻魔法!『ダブル・アップ・チャンス』!攻撃が無効となった時、そのモンスターの攻撃力を倍にし、もう一度攻撃出来る!更に墓地の『スキル・サクセサー』を除外し、スターダストの攻撃力を800ポイントアップする!」

 

閃光竜スターダスト 攻撃力2500→3300→6600

 

「流星不死鳥突撃(シューティング・フェニックス・アサルト)!!」

 

スターダストの翼が紅蓮の焔を帯び、その軌跡は赤き尾を作り上げる。その姿はまるで不死鳥。太陽の如き輝きを放つ竜は黒き龍神へ突撃し、減速する事なく背後の巨大な門を破壊する。

 

黒門 暗次&光焔 ねね LP2550→0

 

デュエル終了のブザーが鳴り響く。門より漏れし光は暖かく、優しいものだった--。

 

「……あー、負けちまったかぁ……」

 

フィールドが消え、木造の道場へと戻る。黒門はその場に仰向けに倒れ、悔しげな声を漏らす。そんな中、彼に手を伸ばす者が1人。

 

「俺達の勝ちだな。黒門」

 

刀堂 刃だ。彼は人懐っこい笑顔を親友に向け、勝利を誇る。そんな彼の手を拒まず、手を取り、立ち上がる。

 

「……なぁ、刃。何であの時、LDSに渡ったんだ?」

 

「あー……なんつーか……あの時、この道場、貧乏で潰れちまいそうでよ。LDSに移籍すりゃあ、出来る限りの願いを聞いてくれるっつーから……な」

 

恥ずかしそうに頬を掻きながら黒門の疑問に答える刃。そんな彼に黒門は「ハハッ」と笑い。

 

「お節介が」

 

「うるせぇ」

 

笑い合う2人。もう2人には、何の禍根も残ってない。昔のような、軽口を言い合える友達。そんな彼等を暖かく見つめるねね。そんな中、刃はふと思い立つ。

 

(コナミに、礼を言わなくちゃな)

 

そう思い、コナミの方へ笑顔で振り返り、固まった。

 

「ちょっ!やめてください!コナミさん!」

 

「何を言っている?元々こう言う約束だろう?」

 

そこには二階堂道場の看板を本気で、一点の曇りもなく、外しにかかるコナミとそれを止めようとする帝野がいた。

 

「話聞いてたのか、お前!?俺は道場を守ろうとしたんだぞ!?何で潰しにかかってんだ。コナミ!!」

 

「刃よ、オレは最初から道場破りに来たと言っていただろう?」

 

「言ってたけど、空気読め!丸く収まりかけてんのに、何でまた問題起こしてんだ!?」

 

目の前の異様な光景に思わず突っ込む刃。この赤帽子には情けも容赦もないのか。何故こんな奴に背中を預けたのかを疑問を抱いてしまう程だ。取り敢えず、何としてもコナミを止めようとした時、背後より黒門とねねが刃を制す。共にコナミを止めてくれるのか--刃が再び友情を感じたその時。

 

「コナミ、いや!コナミの兄貴!俺達を兄貴の子分にしてください!」

 

「お願いします!コナミさん!」

 

勢い良く頭を下げる2人の親友。刃がその言葉を理解するまで、数分の時間を要した。

 

------

 

時はコナミのデュエル中に遡る。柚子よりコナミの捜索を依頼された遊矢は裏通りで、漸くコナミを発見した。--発見したはいいのだが--。

 

「今度は逃がさないぞ、ユーリ。私とデュエルしてもらおう。瑠璃を、返せ」

 

(なんか……黒い……)

 




裏サイバー流「道場破りとか最低やな」

サイコ流「せやな」

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