遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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多分満足タウン編で鬼柳先生に対して言われた台詞。もう本当最近サブタイのネタが尽きてるなぁ……。


第107話 お願いします先生!

時は遊矢達が収容所へと更送される前に遡る。とある孤児院にて、コナミはツァンと共に龍亞と龍可に勝利し、柚子と再会を果たしたのだが――。

 

「やんのか、おおん?」

 

「調子に乗るなよバナナ頭ぁ……!」

 

そこでは――同じ顔同士、ユートとユーゴが額をぶつけ、睨み合っていた。

 

「ちょっ、やめなさいってば!ユ、ナッシュもユーゴも!」

 

ここで柚子が喧嘩を始めた2人を止めるべく、割って入る。こんな時、遊矢顔が2人いて、柚子がいる場合、何故か柚子のブレスレットが光輝いてどちらか1人がワープするのだが――今回は何故か、うんともすんとも反応しない。いや、一応微弱に光ってはいるのだが。一体どうなっているのと柚子が首を傾げる。

 

「だってこいつがリンを」

 

「だってこいつが瑠璃を」

 

「それ人違いだから!」

 

ムッと幼い子供のように頬を膨らませ、互いに互いを指差してだってだってと駄々を捏ねるユートとユーゴ。だが柚子は知っている。これは大きな勘違いだ。リンを拐ったのはユートでは無いし、瑠璃を拐ったのもユーゴでは無い。2人を拐ったのは同一人物なのだ。彼女はハァ、と溜め息を溢し、2人にその事を伝える。

 

「落ち着いて聞いて、リンを拐ったのも、瑠璃を拐ったのも、全部融合次元のユーリって奴なの」

 

「「な、何だってー!?」」

 

今明かされる衝撃の真実、全部ユーリって奴が悪いんだ、と言う柚子に2人がその表情を驚愕に染めて、目を見開き叫ぶ。

 

「ま、待ってくれ柚子、じゃあこいつは何なんだ、融合次元の手先じゃないのか?融合だと名乗っていたんだぞ?こいつから融合次元の手先と言う設定を取り上げると何が残る?ただの馬鹿じゃないか!」

 

「だから融合じゃねぇし、クッソ失礼だなお前ぇ!お前こそ何なんだよ!俺と同じ顔だし、幸薄そうなオーラ纏いやがって!」

 

またもや「ああん?」やら「おおん?」と唸り、額を擦り付けメンチを切り合う同じ顔。勘違いが解けた後でも馬が合わないのか、今にも喧嘩になりそうだ。頭が痛い、良い加減にして欲しいと柚子が割って入り、また説明フェイズに入る。一々面倒臭い奴等である。

 

「落ち着いて!2人共犠牲者なの!どんな関係性があるかはまだ分からないけど、次元で別れたそっくりさん!貴方達2人が争う必要は無いの!むしろ協力して融合次元と立ち向かわなきゃ!」

 

そう、ユートとユーゴは柚子の知る限り、大切な仲間を奪われたそっくりさんであり、強力なデュエリストだ。こんな所で争うよりも、協力してアカデミアに立ち向かい、リンと瑠璃を奪還する方が余程実になる。柚子は2人の手を取り、握手させる。

 

「あ、ああ、君がそう言うなら仕方無い。よろしく頼む」

 

「チッ、しゃあねぇ、わぁーったよ」

 

渋々と言った様子だが、手を取り、握手する2人。何とか和解は出来たようだ。取り敢えず目先の問題は解決したとホッと胸を撫で下ろす柚子だが――。

 

「おい、そろそろ手を放せ、気持ち悪い」

 

「あん?そっちこそ強く握るのやめろや」

 

何やら雲行きが怪しくなって来た。2人共顔は笑っているが、目が笑っていない。握手をした手もミシミシと不気味な音を鳴らしており、和解は表面上のものだったようだ。

 

「やんのかバナナ」

 

「やってやんよナス」

 

ああ分かった、この2人、リンと瑠璃、次元間の問題が無くとも――ただ単純に、相性が悪いのだ。何となく反りが合わない、性格が真逆、まるで水と油のように、磁石のS極同士のように、全くと言って良い程噛み合わない。

もう面倒臭い、どうにでもなーれ☆と言った様子で諦める柚子。放って置いても多分大丈夫だろう、これ以上は彼等の問題だ。

 

「言っておくが俺は忘れないぞ、貴様に消滅させられた事を……!」

 

「む、あれはまぁ、俺も悪かったが……お前が俺より弱いって事だろ」

 

プスー、と手を口にあて、笑うユーゴを見て、ついにユートがカチンと来て堪忍袋の緒が切れる。もう我慢ならない、このバナナ頭を何としてでも叩きのめさなければこの怒りは晴れないだろう。

 

「上等だ、デュエルだ!」

 

「おっ、やんのかやんのか?良いぜぇー、四の五の言わずにそっちの方が手っ取り早い!勝負だ!」

 

こうなったら決着はデュエルで着ける。それこそがデュエリストの流儀、デュエル万能、迷ったらデュエル。ユーゴもデュエル脳なのでこの案には乗り気だ。だが不味い。デュエルとなってしまえば――また負けた方が消滅となる可能性がある。そればかりは駄目だと柚子が止めようと慌てふためく。

 

「ちょっ、それは――」

 

「お願いしやす、ダニエル先生」

 

「Come on」

 

ズザァッ、思わぬ展開に古いギャグ漫画のように転ぶ柚子。ここでまさかの代打の登場。ユートがコナミの肩をポンと叩き、それを受けたコナミがスタンバってましたとばかりに、まるで格ゲーキャラの如く風船ガムをクッチャクッチャプクーと噛んで膨らませ、穴空きグローブを装着した手をコキコキと鳴らす。

 

「なっ、お前それでも男か!何でそこでコナミ……のそっくりさんが出て来るんだよ!」

 

これには流石のユーゴも顔を真っ赤にして怒り狂う。それもそうだろう、この流れなら明らかにユートとユーゴの対決となる筈だ。だが――ユートとしては、自分が闘う訳にはいかない。何故なら今、彼の手元には本来のデッキが無いのだ。あるのは拾ったカードで作られたデッキ、これでは余りにも心許無く、他の者のデッキを借りてもやはり慣れたデッキには及ばない。この2つの方法を取ってユーゴに勝てる可能性は0に近い。この少年に負ける事はユートのプライドが許さない。ユートは彼の実力だけは認めているのだ。

 

「おやおやぁ、負けるのが怖いのか?」

 

「あぁん!?んな事ねぇよ!誰がこんなニート……のそっくりさんに負けるかよ!」

 

そして彼を乗らせるには挑発に限る。単細胞の彼はこの通り熱くなり、話を逸らしているのにも気づかない。計画通り、かかったなアホが!とほくそ笑むユート。実に悪い顔をしている。

 

「と言う訳だ、頼むぞダニエル。勝利以外は許さん」

 

「OK、Boss」

 

一体何様なのか、コナミに頼んでおいて偉そうにドヤるユートに対してもコナミは黙って従う。コナミもデュエル脳、デュエルが出来れば何だって良い生粋のデュエル馬鹿なのだ。こうして――割りとどうでも良い理由で、コナミとユーゴ、2人実力者がぶつかり合う。

 

「「デュエル!!」」

 

先攻はコナミ、彼はデッキから5枚のカードを引き抜き、戦術を練る。相手はシンクロ次元の遊矢と言って良いが、恐らくその戦法、戦術は大きく違う。ユートはコナミと同じような墓地発動を主とした戦術を取るらしいが――彼はどんな戦術を繰り出して来るのか、まずは相手の出方を伺う。

 

「オレのターン、オレは『貴竜の魔術師』と『竜脈の魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!」

 

「これがペンデュラムか……!」

 

コナミのデュエルディスクの両端に2枚のカードが設置され、その間に虹色の光が灯る。同時に彼の背後に光の柱が2本出現、その中の『魔術師』が音叉と短剣を振るい、天空に線を結び、魔方陣を描き出す。

 

「揺れろ、光のペンデュラム、天空に描け魂のアーク!ペンデュラム召喚!『E・HEROブレイズマン』!『V・HEROヴァイオン』!」

 

E・HEROブレイズマン 守備力1800

 

V・HEROヴァイオン 守備力1200

 

現れる2体の『HERO』。1体は炎の鬣を伸ばした赤の『HERO』ともう1体は頭部がカメラとなった紫の『HERO』だ。どちらも『HERO』モンスターの中では優秀なモンスターである。

 

「ブレイズマンの効果で『置換融合』をサーチ、ヴァイオンの効果でデッキから『E・HEROシャドー・ミスト』を墓地に送る。シャドー・ミストの効果で『E・HEROエアーマン』をサーチ!最後にヴァイオンの効果で墓地のシャドー・ミストを除外し、2枚目の『置換融合』をサーチ!」

 

サーチを繰り返し、一気に手札を回復、これでペンデュラムカードの使用分の消費を取り戻した。見事なカード捌き、サーチにデッキ圧縮にユーゴが舌を巻く。

 

「そして2体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!我が戦いはここから始まる、白き翼に望みを託せ!現れろNo.39!エクシーズ召喚!『希望皇ホープ』!」

 

No.39希望皇ホープ 攻撃力2500

 

コナミの眼前に星を散りばめた渦が広がり、2体の『HERO』が光となって飛び込み、一気に集束、小爆発が起こり、辺りに白煙が吹き荒れる。そして――中より煌めく白刃がスッ、と現れ、煙を裂き、登場したのは希望の皇。傷一つ無い金色の鎧を纏い、純白の翼を広げ、腰には2刀の剣、右肩に39の赤き紋様を走らせた騎士が、雄々しく吠える。

 

「『クリバンデット』を召喚!」

 

クリバンデット 攻撃力1000

 

次に現れたのは黄色いスカーフと眼帯を身に付けた、一頭身の目付きが鋭い毛むくじゃらのモンスターだ。コナミのデッキにおいて墓地落としにサーチと貢献してくれる優秀なモンスターであり、何度も世話になっている。

 

「ターンエンド。この瞬間、『クリバンデット』をリリース、デッキトップから5枚を捲り、『マジカルシルクハット』を手札に加え、それ以外を墓地へ」

 

ダニエル LP4000

フィールド『No.39希望皇ホープ』(攻撃表示)

Pゾーン『貴竜の魔術師』『竜脈の魔術師』

手札4

 

「俺のターン、ドロー!成程、確かに少しはやるようだな……俺は魔法カード、『強欲で貪欲な壺』を発動!デッキトップから10枚のカードを除外し、2枚ドロー!」

 

ユーゴ 手札4→6

 

「魔法カード、『打ち出の小槌』を発動し、手札を交換!『SRベイゴマックス』を特殊召喚!」

 

SRベイゴマックス 守備力600

 

ユーゴのターンに移り、彼が召喚したのは『スピードロイド』の必須カード、複数のベーゴマが連結し、蛇のようになったモンスターだ。デッキに1枚しか投入出来ない為、初手に引き込めたのは大きい。

 

「ベイゴマックスの効果で『SRタケトンボーグ』をサーチし、そのまま特殊召喚!」

 

SRタケトンボーグ 守備力1200

 

続けて現れたのはベイゴマックスと共に『スピードロイド』の中核を成す、竹トンボが変形して小型ロボットとなったモンスターだ。召喚権、手札消費を最小限に抑え、2体のモンスターの展開、見事なものだ。

 

「そしてタケトンボーグをリリース、デッキから『SR-OMKガム』を特殊召喚!」

 

SR-OMKガム 守備力800

 

タケトンボーグと入れ替わりに現れたのはチューインガムが変形し、人型ロボットとなった白いモンスターだ。レベル1のチューナーモンスター。だとすれば次に来るのはシンクロモンスターか。

 

「レベル3のベイゴマックスにレベル1のOMKガムをチューニング!幾千の顔を持つ迷宮の影よ、その鋭き刃で闇を切り裂け!シンクロ召喚!『HSR快刀乱破ズール』!」

 

HSR快刀乱破ズール 攻撃力1300

 

OMKガムが1つのリングとなって弾け飛び、ベイゴマックスを包み込む。更に一筋の閃光がリングを貫き、眩き光がフィールドを覆い尽くす。風と刃が白き光景を裂き、中より姿を見せたのはマフラーを靡かせ、右腕の剣を振るう仮面の騎士。攻撃力は下級アタッカーにも劣るが――切れ味は抜群だ。

 

「OMKガムの効果!シンクロ素材となった事でデッキトップを墓地に送り、そのカードが『スピードロイド』モンスターの場合、このカードを素材としたシンクロモンスターの攻撃力を1000アップする!墓地に送られたカードは――『SR電々大公』!」

 

HSR快刀乱破ズール 攻撃力1300→2300

 

見事目当ての『スピードロイド』を引き当て、ズールの攻撃力が爆発的に上がる。同時にここから先のユーゴのデュエルは、更なる加速を約束された。

 

「俺はここで『SRダブルヨーヨー』を召喚!」

 

SRダブルヨーヨー 攻撃力1400

 

現れたのは騎士兜のような物体から雷が走り、金属つきのホイールと繋がったヨーヨーのモンスター。

 

「召喚時、墓地のOMKガムを蘇生!」

 

SR-OMKガム 守備力800

 

「そして自分フィールドにモンスターが特殊召喚された事で手札の『SR56プレーン』を特殊召喚!」

 

SR56プレーン 攻撃力1800

 

更なる展開、青空に飛び立ったのは赤と黄のボディが鮮やかな、ゴムが動力の飛行機だ。次々と姿を見せる『スピードロイド』モンスター。これこそがシンクロデッキの十八番、高速召喚で相手を置き去りにする。

 

「特殊召喚時、『希望皇ホープ』の攻撃力をターン終了まで600ダウン!」

 

No.39希望皇ホープ 攻撃力2500→1900

 

「チッ――!」

 

ここに来ての攻撃力ダウンに舌打ちを鳴らすコナミ。ユーゴのモンスターの攻撃力はそう高くない、だからこそこうして倒されやすくするのは実に厄介極まりない。

 

「レベル4のダブルヨーヨーにOMKガムをチューニング!その躍動感溢れる剣劇の魂。出でよ、『HSRチャンバライダー』!」

 

HSRチャンバライダー 攻撃力2000

 

2回目のシンクロ召喚、現れたのは刀を模したバイクの下半身を持つ、二刀流の侍のモンスター。そしてシンクロ素材にOMKガムが使用された事で、またしてもあの効果が発動される。

 

「OMKガムの効果!デッキトップは――『SRバンブーホース』!」

 

HSRチャンバライダー 攻撃力2000→3000

 

2連続成功、しかも2体とも墓地発動効果を持ったモンスターだ。コナミの運も余程だが、こうした賭けに対し、ユーゴはとことん強い。突発的な運ならコナミも越えるだろう。

 

「まだだぜ!墓地の電々大公を除外し、墓地のOMKガムを蘇生!」

 

SR-OMKガム 守備力800

 

3度フィールドに蘇るOMKガム。噛めば噛む程味が出る。ガムだと言うのにスルメのようなモンスターだ。それに1体のモンスターをここまで酷使して過労死させる腕前。流石はシンクロ次元のデュエリストかとコナミが舌を巻く。

 

「レベル5の56プレーンにレベル1のOMKガムをチューニング!十文字の姿持つ魔剣よ。その力で全ての敵を切り裂け!シンクロ召喚!現れろ、『HSR魔剣ダーマ』!」

 

HSR魔剣ダーマ 攻撃力2200

 

3連続シンクロ召喚、現れたるはけん玉のような形状をした妖しく光る魔剣のモンスター。とんでも無い展開力、圧倒的なスピードがコナミに牙を剥き襲いかかる。

 

「デッキトップを墓地に!『SR赤目のダイス』だ!」

 

HSR魔剣ダーマ 攻撃力2200→3200

 

こちらも3連続で当たり、スロットならば777が決まっている所だ。それ程ステータスが高くなかったシンクロモンスターもこれで強力なモンスターへと成長した。

 

「バトル!ズールで『ホープ』へ攻撃!こいつは特殊召喚したモンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時、攻撃力を倍にするぜ!」

 

「させるか!『ホープ』のORUを1つ取り除き、攻撃を無効に!ムーンバリア!」

 

ズールが音を残して高速でフィールドを移動し、『ホープ』に向かって剣を差し出す。しかし『ホープ』は百戦錬磨の戦士。自身の翼を盾として前に出し、その剣を防いでみせる。

 

「やるな!チャンバライダーで追撃!」

 

「それも防ぐ!ムーンバリア!」

 

だが『ホープ』はエクシーズモンスター。効果使用にはORUを使わなければならず、その数には限界がある。攻撃は決して無駄にならない。今度はチャンバライダーが刀を模したバイクでフィールドを駆け、二刀流で『ホープ』へ襲いかかり、『ホープ』がもう片翼も盾とする。

 

「これでもうORUはねぇ!追撃だ!チャンバライダーは2回攻撃が出来る!」

 

「ORUが無い『ホープ』が攻撃対象となった事で自壊する!」

 

「ならダイレクトアタックだ!」

 

「墓地の『光の護封霊剣』を除外し、ダイレクトアタックを防ぐ!」

 

攻撃無効、強固な盾を砕き、チャンバライダーがついに本丸に到達し、その刀を振るう。しかし次の瞬間、コナミの右手に光の剣が形成され、チャンバライダーを切り飛ばす。盾の次は剣、これではこれ以上進みようが無い。

 

「そう来たか……へっ、俺はこれでターンエンドだ!」

 

ユーゴ LP4000

フィールド『HSR魔剣ダーマ』(攻撃表示)『HSRチャンバライダー』(攻撃表示)『HSR快刀乱破ズール』(攻撃表示)

手札3

 

「オレのターン、ドロー!ペンデュラム召喚!『刻剣の魔術師』!『E・HEROエアーマン』!」

 

刻剣の魔術師 攻撃力1400

 

E・HEROエアーマン 攻撃力1800

 

立ち塞がる強敵。ユーゴの超高速シンクロによりピンチに陥るコナミ。だが彼とて負けてはいない、直ぐ様振り子の召喚法で逆転を狙う。フィールドに現れる。剣を持った少年、『魔術師』とファンの翼を伸ばした青い『HERO』。この2体で窮地を覆す。

 

「エアーマンの効果で2体目のブレイズマンをサーチ、召喚!」

 

E・HEROブレイズマン 守備力1800

 

「効果で最後の『置換融合』をサーチ、発動!フィールドのエアーマンとブレイズマンで融合!融合召喚!『E・HERO GreatTORNADO』!」

 

E・HERO GreatTORNADO 攻撃力2800

 

コナミの背後で青とオレンジの渦が発生し、その中へエアーマンとブレイズマン、風と炎の『HERO』2体が飛び込み、混ざり合う。これこそが『HERO』の真骨頂、力を合わせ、新たな『HERO』を生み出す。渦より凄まじい突風が吹き荒れ、ユーゴのフィールドへと襲いかかる。風は『スピードロイド』達を巻き上げて竜巻となり、その中を裂いて、空に現れたのは黒いマントを靡かせた風の『HERO』。コナミが最も信頼する融合モンスターがフィールドを駆ける。

 

「融合召喚時、相手モンスター全ての攻撃力を半減する!タウン・バースト!」

 

HSR魔剣ダーマ 攻撃力3200→1600

 

HSRチャンバライダー 攻撃力3000→1500

 

HSR快刀乱破ズール 攻撃力2300→1150

 

「ぐっ――!」

 

「バトル!GreatTORNADOでズールへ攻撃!」

 

「ズールの効果で攻撃力を倍に!」

 

「だが倍になっても2300!スーパーセル!」

 

HSR快刀乱破ズール 攻撃力1150→2300

 

ユーゴ LP4000→3500

 

GreatTORNADOがその手に風を集束して球体状のエネルギーを形成し、球が幾つもの鎌鼬に別れてズールを切り刻む。いくら剣の達人であるズールとは言え、風の刃まで切り裂けない。パズルのようにバラバラになって破壊される。

 

「刻剣でチャンバライダーへ攻撃!墓地の『スキル・サクセサー』を除外し、攻撃力を800アップ!」

 

「こっちも戦闘を行うダメージステップ開始時、攻撃力を200アップ!」

 

刻剣の魔術師 攻撃力1400→2200

 

HSRチャンバライダー 攻撃力1500→1700

 

ユーゴ LP3500→3000

 

今度は刻剣とチャンバライダーの剣戟が木霊する。鋭き剣と二刀による斬撃が甲高い音色を響かせ、その速度を上げていく。加速、加速、加速。白い剣閃が走っては弾け、火花を散らす。このままでは拉致が空かない。刻剣が舌打ちを鳴らし、身体ごと捻り、回転して剣を振り抜く。チャンバライダーの二刀のガードを跳ね上げ――好機と見た刻剣が返しの刃で切り裂く。強力な斬撃を受け、チャンバライダーが吹き飛んで破壊される。

 

「チッ、だがチャンバライダーが墓地へ送られた事で除外されている『SR電々大公』を手札に!」

 

「メインフェイズ2、刻剣とダーマを次のオレのスタンバイフェイズまで除外、カードを1枚セットし、ターンエンドだ」

 

「この瞬間、墓地に送られたズールの効果で墓地の『SRベイゴマックス』を回収するぜ」

 

「リカバリーも充分と言う訳か、ダニエル、油断するな!」

 

「合点だBoss」

 

ダニエル LP4000

フィールド『E・HERO GreatTORNADO』(攻撃表示)

セット1

Pゾーン『貴竜の魔術師』『竜脈の魔術師』

手札2

 

チャンバライダーとズールの効果でシンクロで消費した手札を回復し、次の展開に備えるユーゴを見て、ユートが目付きを鋭くしてコナミへ檄を飛ばす。3体のシンクロを除去したとは言え、油断は出来ない。コナミの場にはGreatTORNADO1体だけと心許無く、ユーゴの実力ならば直ぐに取り戻せると考えてだ。何故なら彼の手札には自分フィールドにモンスターが存在しない場合、特殊召喚出来、サーチ効果を持ったベイゴマックスが握られている。

 

「俺のターン、ドロー!先制はされちまったが……ここからが本番だぜ!魔法カード、『手札断札』!互いに2枚、手札を捨てて2枚ドロー!更に魔法カード、『カップ・オブ・エース』!コイントスを行い、表なら俺が、裏ならテメェが2枚ドロー!よっしゃ表!2枚ドロー!」

 

ユーゴ 手札4→6

 

「俺はベイゴマックスを特殊召喚!」

 

SRベイゴマックス 守備力600

 

「効果でタケトンボーグをサーチ、特殊召喚!」

 

SRタケトンボーグ 守備力1200

 

またもやベイゴマタケトンコンビ。この2体による展開力は流石としか言えないレベルだ。召喚権を使わず、手札を1枚しか消費せず、チューナーと非チューナーを揃えるのだから強力にも程がある。

 

「タケトンボーグをリリース、『SR赤目のダイス』をリクルート!」

 

SR赤目のダイス 守備力100

 

次に登場したのは赤い目を光らせたサイコロのモンスターだ。レベル1、低ステータスのチューナー、どう出て来るか、ベイゴマックスと合わせ、ズールを出してもGreatTORNADOには届かず、これならば少々賭けになってもOMKガムを出した方が良かったのではとコナミが思考するが――。

 

「赤目のダイスの効果!ベイゴマックスのレベルを6に!」

 

SRベイゴマックス レベル3→6

 

「レベル6と1、大型が来るか……!」

 

「気をつけろダニエル!奴のエースが来るぞ!」

 

「へへっ、気をつけたって無駄だぜ!レベル6のベイゴマックスにレベル1の赤目のダイスをチューニング!その美しくも雄々しき翼翻し、光の速さで敵を討て!シンクロ召喚!現れろ、『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』!!」

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン 攻撃力2500

美しきミントグリーンの透明な双翼を広げ、青と白のカラーリングの竜が雄々しき咆哮と共に尾を靡かせ、天空へ飛翔する。これがユーゴのエースモンスター。その美しくも雄々しい、口上通りの姿を見て、コナミが見惚れてほう、と息をつく。

 

「ふつくしい……」

 

そしてエースモンスターだけあり、このモンスターには強力な効果がある。デッキによっては詰みかねない効果が、その体躯に宿っている。

 

「気をつけろ、そのモンスターはレベル5以上のモンスター効果無効、レベル5以上のモンスター1体を対象とするモンスター効果の無効、そしてこの2つで破壊したモンスターの攻撃力吸収効果を持っている」

 

「対モンスターと言う事か、厄介な」

 

徹底的な対モンスター効果モンスター。それこそが『クリアウィング』の実体だ。優秀なモンスター効果が増え、除去も任せる中ではこれ程までには厄介な効果は無い。

 

「そう言うこったな!『SRシェイブー・メラン』を召喚!」

 

SRシェイブー・メラン 攻撃力2000

 

ここで召喚したのはブーメランが変形し、奇妙な形のロボットとなったモンスター。攻撃力2000、下級モンスターにしては強力な数値だ。

 

「シェイブー・メランの効果!このカードを守備表示にし、GreatTORNADOの攻撃力を800ダウン!」

 

E・HERO GreatTORNADO 攻撃力2800→2000

 

「墓地の電々大公を除外し、墓地のOMKガムを蘇生!」

 

SR-OMKガム 守備力800

 

「レベル4のシェイブー・メランにレベル1のOMKガムをチューニング!シンクロ召喚!『HSRチャンバライダー』!」

 

HSRチャンバライダー 攻撃力2000

 

「OMKガムの効果!デッキトップを墓地へ、チッ、『スピードロイド』じゃねぇか。墓地のバンブー・ホースを除外し、デッキの『SR三つ目のダイス』を墓地へ!バトル!『クリアウィング』でGreatTORNADOへ攻撃!」

 

「罠発動!『マジカルシルクハット』!デッキの魔法、罠カード2枚とGreatTORNADOをセットし、シャッフル!」

 

『クリアウィング』がミントグリーンの双翼を大きく広げ咆哮、臨戦態勢に入った時、空かさずコナミがデッキより2枚のカードを引き抜いてフィールドに投擲する。ソリッドビジョンでセットされ、上空から降るシルクハットに隠され、シャッフルされる。

 

「右のシルクハットへ攻撃!旋風のヘルダイブスラッシャー!」

 

『クリアウィング』がその翼に激しき風を逆巻かせ、一直線に突き進んでシルクハットを切り裂く。中身は――外れだ。

 

「チャンバライダーで真ん中のシルクハットへ攻撃!この瞬間、攻撃力を200アップ!」

 

HSRチャンバライダー 攻撃力2000→2200

 

二刀の刃を振るい、チャンバライダーがシルクハットを切り裂く。中身は――GreatTORNADO、だがチャンバライダーとGreatTORNADOの好守は同数値、破壊には至らない。返しの刃が無ければ、だが。

 

「2回目の攻撃!」

 

HSRチャンバライダー 攻撃力2200→2400

 

もう1度二刀が振るわれ、風を引き裂き、GreatTORNADOの喉元を貫く。永続的に続く攻撃力アップ。2回攻撃で毎ターン400アップ、放置すれば化け物になるだろう。尤もコナミがそこまで放置するとは限らないが。

 

「バトルフェイズ終了時、破壊された『妖刀竹光』の効果で『黄金色の竹光』をサーチ!」

 

「手札の『D.D.クロウ』を捨て、テメェの墓地から『ブレイクスルー・スキル』を除外!カードを2枚セットし、ターンエンド!」

 

ユーゴ LP3000

フィールド『クリアウィング・シンクロ・ドラゴン』(攻撃表示)『HSRチャンバライダー』(攻撃表示)

セット2

手札2

 

「オレのターン、ドロー!」

 

「罠発動、『針虫の巣窟』!デッキトップから5枚のカードを墓地へ!」

 

「スタンバイフェイズ、刻剣とダーマが戻り、墓地の『置換融合』を除外し、GreatTORNADOをエクストラデッキに戻して1枚ドロー!」

 

ダニエル 手札4→5

 

「装備魔法、『妖刀竹光』を刻剣に装備!魔法カード、『黄金色の竹光』を発動!2枚ドロー!引いた中にもう1枚だ!2枚ドロー!」

 

ダニエル 手札3→5→6

 

『竹光』によるドローターボで一気に手札補充、爆発的な回復力だ。このドローギミックは侮れない。

 

「速攻魔法、『揺れる眼差し』!ペンデュラムカードを破壊し、お前に500ダメージを与え、ペンデュラムカード、『慧眼の魔術師』をサーチ!」

 

ユーゴ LP3000→2500

 

「2体の『慧眼の魔術師』でペンデュラムスケールをセッティング!破壊して『竜穴の魔術師』と『賤竜の魔術師』をセッティング!ペンデュラム召喚!『竜脈の魔術師』!『貴竜の魔術師』!2体の『慧眼の魔術師』!」

 

「セッティング時、手札の『増殖するG』を捨て、相手が特殊召喚する度にドローする!」

 

竜脈の魔術師 攻撃力1800

 

貴竜の魔術師 守備力1400

 

慧眼の魔術師 守備力1500×2

 

ユーゴ 手札0→1

 

幾度も揺れ動く振り子の軌跡、眩き光の柱がコナミのフィールドに降り注ぎ、光を散らして4体の『魔術師』がフィールドに現れる。これでフィールドには5体の『魔術師』モンスター。これだけでは届かないが、ペンデュラムはスタートラインに過ぎない。

 

「レベル4の『慧眼の魔術師』にレベル3の『貴竜の魔術師』をチューニング!シンクロ召喚!『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』!!」

 

オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン 攻撃力2500

 

ユーゴ 手札1→2

 

目には目を、シンクロにはシンクロを。コナミがユーゴに対抗し、フィールドに登場したのは2色の虹彩を輝かせた真紅の竜。大地を踏み砕き、力強い咆哮が放たれる。

 

「『ジェット・シンクロン』を召喚!」

 

ジェット・シンクロン 攻撃力500

 

『クリアウィング』で妨害されればメテオバーストは破壊される。効果を発動せずに、そのままコナミが召喚したのは青と白のカラーリングのジェットエンジンを模したモンスターだ。このカードもまたチューナー。ユーゴには劣るだろうが、コナミも連続シンクロで対抗する。

 

「レベル3の刻剣、レベル4の慧眼にレベル1の『ジェット・シンクロン』をチューニング!星海を切り裂く一筋の閃光よ!魂を震わし世界に轟け!シンクロ召喚!『閃光竜スターダスト』!!」

 

閃光竜スターダスト 攻撃力2500

 

ユーゴ 手札2→3

 

『ジェット・シンクロン』の身体が光のリングとなって弾け、刻剣と慧眼を包み込み、一筋の閃光が貫く。天に8つ星が輝き、配置を変えて竜の星座を作り上げ、浮かび上がる。フィールドに降り立つ、星屑を纏う純白の竜。その美しさは『クリアウィング』にも劣らない。そして――この竜の姿に、観戦していたツァンと龍亞龍可、ユーゴが表情を驚愕に染める。

 

「『スターダスト』……だって……!?」

 

その姿、そしてその名、このカードは、この4人が知るデュエリストのカードと、驚く程酷似しているのだ。

 

「シンクロ素材となった『ジェット・シンクロン』と墓地に送られた『妖刀竹光』の効果で『ジャンク・コレクター』と『黄金色の竹光』をサーチ!」

 

リカバリーも万全、消費した手札を取り戻し、5枚まで回復。

 

「魔法カード、『モンスターゲート』!竜脈をリリースし、通常召喚可能なモンスターが出るまでデッキトップを墓地へ送る!1枚目!『仁王立ち』!2枚目!『オッドアイズ・グラビティ・ドラゴン』!3枚目!『スキル・サクセサー』!4枚目!『シャッフル・リボーン』!5枚目!『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』!決まったな!出でよ、絶望の暗闇に差し込む、眩き救いの光!『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』!!」

 

オッドアイズ・セイバー・ドラゴン 攻撃力2800

 

ユーゴ 手札3→4

 

ここで終わらない。賭けになるが、上級モンスターを呼び出す為、コナミがデッキを削ってモンスターを呼び出す。現れたのは最も欲しかった1枚、白銀の鎧を纏い、背より金色の剣を伸ばした2色の虹彩の竜。これで――『クリアウィング』討伐の準備は整った。

 

「賤竜のペンデュラム効果でエクストラデッキの慧眼を回収、竜穴のペンデュラム効果で捨て、セットカードを破壊!」

 

「罠発動!『ハーフ・アンブレイク』!『クリアウィング』は戦闘破壊されず、『クリアウィング』を通して受けるダメージは半分になる!」

 

「バトル!『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』でチャンバライダーへ攻撃!」

 

「チャンバライダーの効果で攻撃力アップ――しない!?」

 

「メテオバーストがいる限り、バトルフェイズ中、相手はモンスター効果を発動出来ない!」

 

「なっ――ぐ――!」

 

ユーゴ LP2500→2100

 

『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』がその口から光のブレスを放ち、チャンバライダーを消し炭にする。応戦しようにもメテオバーストが地面に炎を流し込み、チャンバライダーの下へと走り、炎の鎖となって身動きを封じられた上で、だ。

これならばバトルフェイズ中、『クリアウィング』は無力化する。まずはこのカードを除去するべきだとユーゴが頭を回す。お陰でチャンバライダーや三つ目のダイスの効果も使えない。後者はメインフェイズで使用すれば良いが、不意を突けなくなるのが痛い。

 

「『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』の効果で『クリアウィング』を破壊!」

 

「墓地の『復活の福音』を除外し、『クリアウィング』の破壊を防ぐ!」

 

「メテオバーストでダーマへ攻撃!」

 

ユーゴ LP2100→1800

 

続いてダーマにメテオバーストが襲いかかり、炎に包まれた尾でダーマが吹き飛ばされ、破壊される。これで残ったのはエースである『クリアウィング』のみ。

 

「ターンエンドだ」

 

ダニエル LP4000

フィールド『オッドアイズ・セイバー・ドラゴン』(攻撃表示)『オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン』(攻撃表示)『閃光竜スターダスト』(攻撃表示)

Pゾーン『竜穴の魔術師』『賤竜の魔術師』

手札4

 

まだまだ続く、コナミVSユーゴ、2人のデュエル。現段階で優勢なのはコナミだ。LPやモンスターがリードする彼に対し、ユーゴはどのような手で対抗するのか――。

 

 

 

 

 

 




柚子ちゃんのブレスレットが反応しないのはユート君側の覇王成分のほとんどが遊矢君の方に移行し、そのまま分裂したのが原因です。何時までもそっくりさんが顔を合わせられないのはアレですし。
まぁ、ユートとユーゴは何も無くても仲が悪いんですが。

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