遊戯王ARC―V TAG FORCE VS   作:鉄豆腐

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何もかも初めてです。頑張ります。


プロローグ

何故こんな事になったのだろう? トレードマークの赤帽子を被り直し、少年は左腕に嵌めた"デュエルディスク"を構える。年は15といったところか、汗が頬を伝う。焦ってはいない、むしろ口角を吊り上げ楽しんでいる様子が見てとれる。そんな彼の上空を爆音が駆ける。真紅のバイク。いやバイクと融合した"デュエルディスク"、"Dーホイール"その主である青年は赤帽子を視界に入れた途端、急ブレーキし対面するように停止する。

 

「……」

 

ヘルメットの奥に隠れた瞳が赤帽子をとらえる。言葉は交わさない、両者共、言葉より深く語り合えるものがある。

 

「――飛翔せよ――」

 

青年の背後に美しき白の竜が現れる。煌めく両翼を広げ咆哮する。

 

――キュオオオオオ――

 

竜の雄叫びには今凛々しさはない。そこにあるのは赤帽子と青年の対立への悲痛の音。

 

「…ッ!シューティング・ソニック!!」

 

それを察したのか青年は唇を噛み締め、振り払うように命を下す。風が集束され竜より放たれる。空気が熱を帯び赤帽子に迫る。絶体絶命、しかし。

 

「!?」

 

竜のブレスは光の壁に阻まれる。何をした――青年が思考し赤帽子の前に現れた悪魔を捉える。

 

「クリボー…」

 

赤帽子を救ったのは毛むくじゃらの小さな悪魔。その手により危機を防いだ赤帽子は今度は此方の番だとばかりにデッキに右手を添え、1枚のカードを引き抜こうとした――その時。

 

「ネオスを召喚!!」

 

一筋の光が赤帽子の側を通る。赤帽子は後方へ飛び光をかわす。その身に纏う光を散らし、姿を現したのは白銀の英雄、勇猛さ、力強さを感じさせる戦士は赤帽子の頭上をくるりと舞い、その主の傍に降り立つ。栗色の髪をし赤い制服を纏った快活さを感じさせる少年。彼は赤帽子と目を合わせ顔を悲痛に歪める。

 

「悪ぃけど」

 

本当に申し訳なさそうに。

 

「お前を倒す」

 

ドウッと少年の戦士が地を蹴り、赤帽子にむかい手刀を下ろす。上等だ。そう言わんばかりに赤帽子は口角を吊り上げ伏せていたカードを発動する。

 

「ッ!?それは!?」

 

少年が驚愕する中、そのカードの名を口にする。

 

――『超融合』――

 

赤帽子の背後の空間がひび割れ、光の渦が発生する。渦の圧倒的な力を前に竜と戦士は容易く呑まれてしまう。渦より暴風が吹き荒れ、青年と少年はその風の前に顔をしかめる。風の英雄が生まれし、その時。

 

「ホープ剣スラッシュ!!」

 

『この瞬間、速攻魔法『虚栄巨影』を発動!』

 

英雄が切り裂かれた。

 

――!?――

 

赤帽子が初めてその顔を驚愕に染める。現れし乱入者は2人と1体、1人は海老のような髪型をした片目に特徴的なバイザーを着けた少年、その顔はしてやったりと口元が弧を描いている。

 

もう1人は人の形をした人と言えるのかと怪しい者。肌はクリアブルー、金と透明のオッドアイ、身体中謎の紋様、果てはフワフワと少年の周りを浮いている。宇宙人や幽霊と言った方が納得出来るであろう者、少年同様その顔はどこか得意気だ。

 

そんな彼等が繰り出す者は機械的な翼を広げた白と金の腰に二刀を携えた皇。左肩に描かれた紋様は39と見える。

 

――3体1…いや4体1か――

 

そんな圧倒的不利の中でさえ赤帽子はどこか楽しげだ。彼は考える、こんなにも楽しいデュエルはいつ以来か。

 

―大人へと成長しだした少年と共にこの世の闇と闘った時か、それとも闇となり少年と闘った時か―

 

―絆を信じるDーホイーラーと未来をかけ英雄と闘った時か、それとも英雄の隣でDーホイーラーと闘った時か―

 

―どんな時でも挑戦し続けた少年とその魂の片割れと共に異世界の皇と闘った時か、それとも皇となり2人と闘った時か―

 

今までのどのデュエルも色褪せてしまう程のデュエルに興奮を隠せず、勢いよくドローする。

 

――永続罠発動『呪縛牢』――

 

音速で彼の前に現れるF1カーを思わせるモンスター、そして。

 

――『死者蘇生』――

 

死より蘇りしは先程青年が使役した白き竜、その竜は今は赤帽子の背後に顕現する。しかしそれだけでは終わらない。

 

――アクセル…シンクロ――

 

瞬間、彼とモンスター達の姿が消え、そして、キィィィィン、飛行機のような音が鳴り、赤帽子を背に乗せた竜が降り立つ。その姿は先程の竜に酷似しているがその存在感は増している。白と言うよりプラチナのような輝きを放つ体躯、戦闘機のような音速での飛行を可能とした翼、ヘルメットともとれる頭部、先程の竜が星屑とすればこちらは流星。背に乗った赤帽子が地に降り「効果発動」と呟く。

 

――1枚目、チューナーモンスター『ジャンク・シンクロン』、2枚目、チューナーモンスター『エフェクト・ヴェーラー』、3枚目、チューナーモンスター『クイック・シンクロン』、4枚目、チューナーモンスター『カメンレオン』、5枚目、チューナーモンスター『アンノウン・シンクロン』――

 

淡々と、機械的にデッキの上の5枚を捲る赤帽子。知る者からすればその光景はとんでもなくおかしいが、少年はさも当然のようにそれをやって見せた。

 

――スターダスト・ミラージュ――

 

無慈悲にも指示が下される。竜は天高く飛翔しその勢いのまま皇へとダイブする。瞬間、竜は輝き、五体に分身する。様々な色合いはまるでオーロラ、襲い来る流星は希望を砕かんとする。

 

「ORUを1つ使い効果発動!!」

 

『ムーンバリア!』

 

皇の周りを衛星のように囲んでいた光の1つが弾け飛ぶ。それと同時に皇は自ら翼を盾にし竜を防ぎ、竜の幻影は盾に当たると崩れ霧散する。だがこの程度では終わらない、襲い来る2体目の蜃気楼、しかし希望はまだ残っている。

 

「まだだ!もう1つのORUも使う!」

 

再び光が弾け、皇の翼が蜃気楼を霧散させる。残り3体。皇に迫る流星、光なき希望にそれを防ぐ術はなく、竜の滑空する衝撃で崩れ落ちる。希望は続かない、その時。

 

「罠発動!『くず鉄のかかし』!」

 

青年の声が響き、その名の通りのボロボロの屑鉄で作られたかかしが2人を守る。残り2体。先程までより強力な存在感を放つ分身が弾丸のようにその身を撃ち出す、初めてその攻撃が命中し2人のデュエリストの身を焦がす。

 

「ぐぅっ…!あっ!!」

 

『くっぅぅ…!!』

 

そして最後の一撃、これまでの幻とは違い本物の一撃。今、白銀の流星が希望を消し去る。

 

「まだだ!まだ終わってねぇ!かっとビングだ!俺!」

 

『罠発動!『エクシーズ・リボーン』!』

 

絶望より帰還せし希望の皇、1つの光を纏い再び竜の眼前に立ちはだかる。

 

「ムーンバリア!」

 

皇の白き両翼が竜を拒絶する。これで全ての攻撃は防がれた。

 

――速攻魔法発動――

 

かに思われた。

 

――『ダブルアップ・チャンス』――

 

彼の手より1枚のカードが発動される。皮肉にもそれは皇を、2人を何度も救ってきたカード。皇の翼により停止していた竜が身を震わせ動き出し、更に力を増した竜を前にひび割れ砕け散る皇、今、正に2人のライフが尽きようとした時、それは現れた。

 

『クリクリ~』

 

その場には似つかわしくない、可愛らしい鳴き声、その正体はすぐにわかった。先程赤帽子を守ったモンスター。

 

――『クリボー』…――

 

赤帽子がほうと息を吐く、続いて白き竜に異常が起こる。突如空間が歪み竜を呑み込む。赤帽子が後ろを振り向く。そこには学生服をマントのように羽織った少年と黒き魔導師がいた。少年から放たれしはまるで王のようなプレッシャーと高貴さ、そして、傍らの魔導師より攻撃が放たれる。

 

「黒―魔導!」

 

それを最後に少年は意識を手放した――。

 

 

 




小説って難しい。今回、デュエリスト、モンスターの名前を伏せていたりするのは仕様です。

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