蒼紅の決意 Re:start   作:零っち

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『笑美…』

「いつまでそのままなんだよ?」

 

いつもの目付きの悪さが嘘みたいに情けない顔になってしまっている。

 

きっと私のことを傷つけてしまってないかと考えているのだろう。

 

それだけ私のことを大事に思ってくれているんだと思っても良いのだろうか?こんな汚い私を。

 

…もしそうだとしても私は知っている。それが、私の望んでいる想いではないこと。

 

柴崎さん。

 

蒼ちゃん。

 

私は同じのようで違う彼に、どちらの彼にも恋をしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私と柴崎さん、そして千里さんは幼馴染み。

 

もうすぐ幼稚園に入園というタイミングで柴崎さんが私の家の隣に引っ越してきた。

 

お父さんが旅人だとか考古学者だとかで引っ越しを繰り返していたらしい。

 

その引っ越しがたまたまこの町、そして隣の家だった。

 

柴崎さんはお父さんと一緒に引っ越しの挨拶に来た。

 

そのお父さんというのが、何とも言葉にしにくい豪快な人で、自分が取ってきたという謎のお土産のことで長話になっていた。

 

すると当然、私と柴崎さんで遊んでなさいということになる。

 

子供というのは不思議なもので、この時点の私と柴崎さんは今では考えられない程に社交性が高く、すぐに仲良く遊んでいた。

 

入園式の日には二人で手を繋いで幼稚園に行った。

 

…昔はそんなことを恥ずかしげもなく出来た。

 

入園してしばらくすると千里さんとも知り合い、いつも3人でいるようになった。

 

私と柴崎さんがくだらないことで喧嘩をすれば大人びていた千里さんが仲裁してくれた。

 

私たちは小学校でもいつも3人で行動していた。

 

少子高齢化の煽りを受けたのか、そもそもクラスが2つしか存在しないため、なんとか6年間クラスが別れることもなかった。

 

6年間ずっと、私はこの2人と共に過ごしていた。

 

男子だとか女子だとか、そんなことは深く考えてはいなかった。

 

この頃もまだ柴崎さんは普通に男子のグループに混ざれていたので、私も当然そこに属していた。

 

サッカーもすればドッヂボールもした。

 

柴崎さんは持ち前の眼の力で華々しく活躍していた。

 

今思い返せばこの頃にはもう淡い恋心を抱いていた気がしなくもない。

 

けれど、もしそうだとしても、それは無意識で、無自覚で、あまりにも幼いものだった。

 

実は幼稚園を卒園するまでに、何度か柴崎さんのお父さんの仕事の都合でまた引っ越しをしかけていた。

 

しかしあまりにも必死に嫌がる柴崎さんを見て私の両親と柴崎さんのお父さんの間で、お父さんが仕事から帰ってくるまでは柴崎さんが私の家に泊まる、もとい住むということになったこともあった。

 

好きな男の子と一つ屋根の下。

 

普通ならドキドキするもののはず。

 

でも幼少からそれが普通になっていた私は、その普通には当てはまらなかった。

 

好きな男の子だけど、それ以前に家族のような存在。

 

好きな男の子と一緒に住んでいるけど、それを恋と認知せず、ただただ仲睦まじく過ごしていた。

 

男だとか女だとか、そういうことを考えず過ごしていた。

 

きっとこういう背景があったことも私が男女や色恋について疎く、無知なことに拍車をかけていたのだと思う。

 

そうして起きたのが、あの出来事だった。

 

3人揃って地元の中学校に入学し、またしても2人に引っ付いて回っていた。

 

それは私にとって当たり前だった。今までそうしてきて、これからだってそうするつもりだった。

 

私にとって2人の隣にいるのは当然のことだった。

 

2人と話す男子の輪の中に加わることにも何の疑問も覚えなかった。

 

笑いかけ、触れあい、時間を共有する。

 

それが悪意の対象になるなんて、これっぽっちも想像出来なかった。

 

事の発端は中学二年のある日、柴崎さんと割りと中の良かった男子から呼び出され、告白されたことだった。

 

柴崎さんとよく一緒にいたから、ある程度仲が良かったとは思っていたけど、まさか自分に好意があるなどとは夢にも思っていなかった。

 

いや、正しく形容するのならば、この時の私は誰かが私に恋をするだなんて考えたこともなかった、と言うべきだ。

 

だから断った。

 

『恋愛とか考えてなくて…ごめんね!本当にごめんなさい!』とか、こんな風な断り方をした。(この時の私は基本的にこんな普通の感じだった)

 

とは言っても、たとえ恋云々を理解していたとしても告白には応えなかっただろう。

 

まあそんなことはどうでも良いのだけれど。

 

とにかくこの告白を契機として、あの出来事が私に降りかかってきた。

 

後日、柴崎さんや千里さんはおらず、ならばと思い女子の友達に話しかけた。

 

『あのさぁ…』

 

厳密に言えば話しかけようとした。

 

が、その友達は一瞬不快そうに目を細めただけで私の声には応えずどこかに行ってしまった。

 

当然違和感を覚えた。

 

あれ?何かしたっけ?と首を捻った。

 

が、その理由に思い至ることは出来ず、その時は帰ってきた柴崎さんと千里さんと話すことにした。

 

そしてその翌日、その違和感がなんなのか決定的に思い知らされることになった。

 

その日は体育の授業があり、種目はバレーボールだった。

 

この授業では初めに必ずペアを組み、トスやレシーブでラリーをすることになっていた。

 

『美穂ちゃーん』

 

いつも一緒にやっていた子に声をかけた。

 

すると、その子は少し後ろ髪を引かれるようにこちらを一瞥してから、すっと他の子の所に行ってしまった。

 

他の子に組もうって言われてたのかな?でも一言くらい言ってくれれば良いのになぁ、とその時までは考えていた。

 

けれど、そんな考えはすぐに楽観的だったと思い知らされる。

 

その後何人も何人も声をかけたが、全員美穂ちゃんと同じか、前日の子のように不快そうにするかだけで誰も私と組んでくれない。

 

そしてそんな私を見てクスクスと笑っている女の子達がいることに気づいた。

 

コソコソと何か言っているが途切れ途切れにしか聞こえない。

 

それでもその継ぎ接ぎの言葉を何とか埋めると

 

『いつも男子に良い顔してるから』

 

『ぶりっことか無理』

 

など、悪意を全面に出した言葉たちが浮き彫りになった。

 

困惑した。

 

男子に良い顔をした記憶など無いし、ぶりっこなんてものもした覚えはなかった。

 

今の私ならその言葉の五千倍の悪態を返すことが出来るが、あの頃の私は、ただ震えることしか出来なかった。

 

――――怖い。

 

その様子をおかしく思った先生が大丈夫かと声をかけてくれた。

 

私はとにかくこの場を離れたくて、体調が悪いから保健室に行かせて欲しいと頼んで授業を欠席した。

 

そして保健室のベッドに横になり、布団に潜り込んで必死に頭を巡らせた。

 

何かあんなことを言われる理由があったのかと。

 

考えれば考えるほど思い当たる節が無くて、その度に怖くなる。

 

今自分の陥ってる状況は何なのか。

 

理由もないのにこんなことになるのか。

 

怖くて怖くて震えていた。

 

そうしている内に授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。

 

どうしよう…戻るのが怖い…

 

そう思っていると、ガラガラッと扉が開かれる音がした。

 

そしてベッドを取り囲むカーテンが開けられる。

 

そこに居たのが、心配そうにこちらを見つめる柴崎さんだった。

 

『具合悪いんだって?大丈夫か?』

 

声からも私を労っていることがひしひしと伝わってくる。

 

その後ろからひょこっと千里さんも顔を覗かせる。

 

『顔色は悪くないね。風邪とかじゃないの?』

 

『あ…うん…』

 

不思議だった。

 

この2人の声を聞いて、顔を見たら、恐怖で凍りついていた心が日に照らされて溶けていくようだった。

 

『もう大丈夫』

 

『本当か?』

 

『無理しないでよ?』

 

『うん。本当にもう大丈夫だよ』

 

2人がいれば。

 

そう思えた。

 

実際、その日はもう体育の時のような感覚に陥ることなく過ぎていった。

 

しかし現実というのはそう生易しいものではなかった。

 

それから土日を挟み、そんなことがあったという記憶も若干薄らいでいた月曜日。

 

私はまた思い出すことになる。

 

恐怖を。

 

そして思い知らされる。

 

深い絶望を。

 

『何話してるのー?』

 

一限目を終えた休み時間にある男子達のグループが盛り上がっていたので、気になって柴崎さんや千里さんと話す前にそちらに話しかけた。

 

普通に、今まで通り。

 

『え、ああ…』

 

『ちょっとやめとけって』

 

『え?なに?』

 

その数人の男子の内、ある人はどう対応したものかと迷うような素振りを、ある人はあからさまに拒むような素振りを。

 

そして共通していることは、誰も私と目を合わそうとはしなかったことだ。

 

その様子に既視感を覚える。

 

体育の時の女子達の表情と仕草にとてもよく似ていたのだ。

 

『おい、どうしたんだ?』

 

『なんか様子が変だけど』

 

『柴崎、千里…』

 

私と男子達の間にある異様な雰囲気を感じ取ったようで柴崎さんと千里さんがこちらにやってきた。

 

話しかけられた男子達は全員がバツの悪そうな顔をして2人のことを交互に見ていた。

 

『笑美、なんかあったのか?』

 

『…わかんない』

 

一向に答えそうにない男子達に見切りをつけ、私に訊いてくれるのだが、当然私に何かがわかるはずもない。

 

『あのさ、女の子にこんな顔させちゃってるのに理由も話せないってどういう了見なわけ?』

 

『いや、それは…』

 

『それは、なんなの?』

 

当時から圧倒的な口の強さを誇っていた千里さんは、柴崎さんのような優しい訊き方をせず、威嚇するように問い詰める。

 

もしかしたら千里さんはこの時点である程度私の身に起こっている事に勘づいていたのかもしれない。

 

『だから…』

 

言葉に詰まり、いよいよその理由とやらを話してくれそうになった所で、休み時間終了のチャイムが鳴ってしまう。

 

『おーい、お前ら席につけー』

 

すぐに担当の教師も教室に入ってきてしまい、着席を余儀なくされる。

 

千里さんに詰問されていた男子は明らかに安堵の表情を浮かべ席につこうとしていた。

 

『あとできちんと聞かせてもらうから』

 

しかし千里さんのその一言でたちまち顔を曇らせていた。

 

私もどうすることも出来ないので、とりあえず着席しようと自分の席に戻ろうとした。

 

その途中、ボソリと、ともすれば聞き逃してしまいそうな小さな声で、しかし確実に私に向けられた言葉が耳に入ってきた。

 

『やっぱり男に頼るんだ。このビッチ』

 

ドクンと心臓が嫌な風に跳ね上がる。

 

『ちがっ…!』

『どうしたー?早く座れー』

 

反射的に言い返そうとしたが、それを教師に止められ、どうすることも出来ず席に戻る。

 

着席し、なんであんなことを言われたのか考えようとすると、またも後ろからボソッと囁かれる。

 

『良かったね、柴崎くんと千里くんに媚びといて』

 

その言葉は鋭く尖った茨のように私の心を刺してくる。

 

きっとそれが顔に出てしまっていたのだろう。周りの女子達が顔を見合わせてクスクスと嘲笑っていた。

 

なんで…?媚びてるってなに…?ビッチなんて言われるようなことしてないよ…?

 

頭の中でそんな疑問符ばかりが駆け巡る。

 

『すみません…保健室に行かせて下さい…』

 

そんな私には、ただ挙手をしてそう告げることしか出来なかった。

 

そのまま顔を上げず、足下だけを見て教室を出た。

 

顔を上げれば、皆が私を嘲笑っている。

 

そんな風に思ってしまった。

 

そしてまた昨日と同じように保健室のベッドで小さく、胎児のように丸まっていた。

 

フルフルと震え、静かに涙を流した。

 

泣き声を聞かれるのは嫌という羞恥心はさすがにこの頃もあったので、必死に奥歯を噛みしめて声を圧し殺していた。

 

そうしている内に眠ってしまい、起きた時にはもう昼休みに差し掛かろうという時間だった。

 

だからといってどうとも出来ない。

 

教室に帰るなんて選択は取れるはずもなかった。

 

かと言って、本当に体調が悪いわけでもないのに早退するのはダメだという妙な潔癖さもあったのだ。

 

とりあえず先生に声をかけられるまではこのままで居ようと考えてまたゆっくりと瞼を閉じた。

 

するとすぐに授業終わりのチャイムが鳴り、保健室の外が騒がしくなってくる。

 

その喧騒が、この時ばかりは助けになっていた。

 

静かだと変にさっきの事を思い出したり、考えたりしてしまうからだ。それに引きかえ、この喧騒はそういう思考を少し紛らわしてくれた。

 

そうして、少し精神的に落ち着いてきた時、ガラッと扉が開けられた。

 

そしてすぐに私の眠るベッドの周りのカーテンも開けられる。

 

『大丈夫…じゃねえよな今回は…』

 

恐らく涙で赤く腫れてしまっていたであろう私の顔を見て、柴崎さんは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。

 

千里さんはというと何も言わず、少し考えるように目を瞑っていた。

 

そしてゆっくりと瞼を上げ、保健の先生に向けこう言った。

 

『すみません。10分だけここを使わせてくれませんか?どうしても人に聞かれたくない話なんです』

 

『何を言ってるの。そんなのダメに決まってるでしょう。もし体調を崩した子が来たらどうするの?』

 

何が目的なのか分からなかったが、当然そんなことが認められるわけもなく、あえなく却下される。

 

『その時はすぐにやめます。お願いします』

 

しかし、その時の千里さんはあくまで食い下がらず、丁寧に頭を下げた。

 

柴崎さんは何をするつもりなのか知っているようで、千里さんの横で同じように頭を下げていた。

 

『…分かったわよ。10分だけ、それと他に誰か来たらすぐにやめる。これだけは譲れないからね』

 

その誠意が伝わったようで、一応の念押しをしてから教室を去っていった。

 

それを見て千里さんはベッドの側に片膝をついて私の目線に合わせる。

 

『笑美、今から何が起きてるのか全部話す。だけど絶対に声を荒らげちゃダメだ。そうすればあの先生が入ってくる。わかった?』

 

まるで幼い子供に言い聞かすような話し方だった。

 

いつもならそんなこと言われなくても出来るだとか反発もしていたかもしれない。

 

しかし、いつになく真剣なその眼差しに口をキュッと引き締めてただ頷く。

 

『よし。じゃあ蒼、気休めだけど手握っててやってよ』

 

『ああ。ほら』

 

千里さんに促されて繋がれた柴崎さんの手。

 

昔はよく繋いでいたが、さすがに中学生にもなれば、男女なんて関係ないと思っていようともそんな機会はめっきりなくなっていくもので、久しぶりに繋いだその手は昔の記憶にある柔らかく小さいものでなく、ゴツゴツとした大きなものに変わっていた。

 

まざまざと感じられたその変化に、こんな状況で私は初めてドキッとした。

 

『じゃあ話すよ』

 

しかし今はそんなことを思っている場合では無かったのですぐに千里さんの話に耳を傾けた。

 

纏めるとこういうことらしい。

 

まず私たちのクラスには元々私を良く思っていない女子が数人居たらしい。しかしそれは時々話題に上がって妬むような陰口を叩く程度のものだったという。

 

それが今の状況に陥った理由は、至極単純なものだった。

 

私が先日告白された男子のことを好きだった子がそのグループに居たのだという。

 

それだけ?と思うだろう。しかし本当にそれだけらしい。

 

私が告白され、断り、それを耳にした彼を好きだったその子がそのグループで『色目使っといて告白されたら振るなんて調子に乗りすぎだ』と怒り心頭になって愚痴っていたらしい。

 

そして他の子達ももちろんそれに賛同した。

 

そんな会話がヒートアップし続け、ついにある女子から提案されたらしいのだ。

 

『アイツハブっちゃおうよ』

 

そんな幼稚で馬鹿げた提案に他の子達も次々と乗り、彼女達はまず自分達以外の女子を仲間につけることにした。

 

得てしてこういう類いの嫌がらせを思い付く人種というのは、所謂スクールカースト上位の人間が多い。

 

なので、女子達を味方につけることに時間はかからなかった。

 

と、千里さんは言っていたが、私はここに付け足したい事がある。

 

恐らくその途中から仲間になったいった女子達の中に少なくない数の子達は、柴崎さんと千里さんに好意を抱いていたはずだ。

 

そんなことを自分で言うのは憚られたのだろう。

 

しかし確実にそういう層が居たはずだ。

 

千里さんはやや童顔ではあるが整った顔立ちをしているし、柴崎さんは目付きの悪さにさえ慣れれば、贔屓目無しにもイケメンの部類に入る。

 

そんな2人だ。人気がないはすがない。

 

事実、良く格好いいだとか好きだとか言っている子達を見たことがある。

 

そんな子達にとって私は邪魔でしかないだろう。

 

時間がかからなかった要因としてはこんなところだろう。

 

そして起きたのが、体育の時のあの出来事だ。

 

いつも組んでいた美穂ちゃんは逆らえず無視するしかなかったのだろう。

 

それについてはしょうがないと今でも思っている。彼女は大人しい子だったし、他の女子全員を敵に回してまで私を守る義理もなかっただろう。

 

そうして見事に私を孤立させ、混乱させ、それを見て楽しんだ彼女らはその時はある程度満足したらしい。

 

だが、次の時間には既に柴崎さんと千里さんによって元気づけられた私が笑っていて、それがまた気にくわなかったのだという。

 

だから次は男子に目をつけた。

 

まず私に告白した男子を味方につけたらしい。

 

当時の私はそんな風に思ったりしたことは無かったのだが、今思えば彼はナルシストとまではいかないが、自分に自信があるタイプの人間だった。

 

実際顔が良い方で、性格も悪くはなかったし、女子からの人気もそこそこあった。

 

そんな彼だからこそ私に振られたという事実は若干ではあるが屈辱なものだったのだと思う。彼からすれば落としたと思っていた相手に振られてしまったのだから。

 

だからその屈辱から来る燻りのようなものを鎮めるための行為として至って軽い気持ちで彼女らに協力した。

 

私が男遊びをしている等の根も葉もない噂を流し、それが伝言ゲームの要領で色んな形になって伝わっていった。

 

男遊びというざっくりとした内容のものが、男をその気にさせて賭けをしてるだとか、肉体的な意味での男遊びだというように、ドンドン噂に尾ひれがついていった。

 

そしてここで巧妙だったというか、強かだったのが、絶対に柴崎さんと千里さんには言うなと情報をコントロールしたところだ。

 

柴崎さんと千里さんは絶対にそんな噂を聞けばたちまち否定するどころかそんな噂を流し始めたやつを捜しかねないと考えたようだ。

 

それは正解だった。

 

事実千里さんは半日もせずにここまでの情報を集めてきたのだから。

 

もしすぐに千里さんや柴崎さんの耳に入っていたら今日のようなことにはならなかっただろう。

 

その判断は敵ながら正確なものだったと言える。

 

それによってその日、彼女らの望んでいた結果が生まれた。

 

いくつか私の推測等も混じってはいるが、大体こういうことになるらしい。

 

千里さんも人伝いなので本当の真相なのかは分からないが、限りなく真実に近いもののはずだった。

 

が、それを聞けたからといって事態が好転するわけでもない。

 

ただ自分の置かれている状況だけは理解できた。

 

いや、その時の私からすれば、理解してしまったとでも言うべきかもしれない。

 

『笑美…』

 

『……………』

 

私を労る二人の視線に応えることが出来なかった。

 

無理もないだろう。今の話を聞けば、その時の私の味方は柴崎さんと千里さんだけということになる。今考えればそれだけでも充分なものだとも思えるが、当時の私は今の私と違い、素直で単純だった。

 

だから、この二人が居ればとは思えなかった。

 

思い至れなかった。

 

とにかく学校に居る他の皆が私の敵なのだと絶望してしまった。

 

『笑美、大丈夫だ。皆には俺たちがその噂はデマだって言ってやるから』

 

『…いや、無駄だろうね。それを全員に言って回るのは現実的に難しいし、仮にやったとしても1度回った噂を消すっていうのは簡単なものじゃない』

 

『………じゃあ…もう…』

 

『お前なぁ!』

 

『ここで気休めを言って何になる?後でまた辛い思いするのは誰だよ?』

 

『――っ、だからって…!』

 

『そこまで!』

 

二人の意見が衝突し、柴崎さんが声を荒げ出したところで外に待機していた保健の先生がそれを聞いて入ってきてしまった。

 

『…何の話をしてたのかは分からないけど、遊佐さん、あなたはもう帰りなさい。顔色が悪いわ』

 

『………はい』

 

『なら俺たちが付き添います』

 

『駄目。風邪や熱があるわけじゃないし、それは認められない。あなたたちは授業に出なさい』

 

『でも!』

 

『蒼、迷惑かけちゃ駄目だよ。ここを使わせてくれただけでも感謝してもしきれないんだから。…一人でも帰れるよね?』

 

ここで首を横に振れるほどの図々しさや余裕は私にはなかった。

 

黙って1度だけ頷いた。

 

『鞄とかは僕たちが後で持って帰るから、チャイムが鳴ってから出来るだけ人目の少ないところから帰るんだよ』

 

『………うん』

 

そうして、千里さんに言われた通りチャイムが鳴り生徒達が教室に戻ってからひっそりと家に帰った。

 

家に着くと、先生が何と言ったのかは分からないが、母が心配そうな顔で待っていた。

 

何を訊かれても大した言葉を返せず、その日はとにかく布団に潜り込み、夕飯も食べずにずっと蹲っていた。

 

今後のことを考えると不安で堪らなかった。

 

今日だってきっと私が帰った後、クラスの何人かは喜んでいるんだと思うと、そんな人達のいる学校生活を送っていけるのかと怖くなった。

 

その恐怖は、体育の後に柴崎さん達を見た時のように溶けていってはくれなかった。

 

クスクスと笑う彼女らの顔が、声が、ねっとりと心を支配していった。

 

次の日、私は学校を休んだ。

 

両親には体調が悪いままだと嘘をついた。

 

心配そうに私を見る2人に心が傷んだけど、学校へ行く恐怖と天秤にかけるとあっさりと恐怖が上回っていった。

 

きっと今日も彼女達はそんな私を想像して笑っている。クスクスクスクスと昨日や、体育の時のように。

 

思い出せば思い出すほど、その光景は歪んで、醜くなっていった。

 

これまで毎日楽しくてしょうがなかったあのクラスが、今はもう思うだけで苦痛を感じるものになってしまった。

 

そして、そう感じてから1度逃げてしまうと、もう駄目だった。

 

私の足と心は竦みきってしまった。

 

柴崎さんと千里さんがお見舞いに来てくれていたが、顔を合わせることも出来なかった。

 

2人を見ると嫌でもクラスのことを思い出してしまうから。

 

そんな日々が数日経ち、もう体調を言い訳にするのは難しくなり、これはおかしいと思った両親は私に理由を訊ねてきた。

 

そうなると訳を話さないわけにはいかなくなり、思い出すのも苦痛なあの瞬間とそんなことになった理由全てを包み隠さず吐露した。

 

当然両親は怒ってくれた。父親は学校に乗り込んで先生と話すと言ってくれたが、私はそれを拒絶した。

 

そうすれば確かに表立っての行為は無くなるかもしれない。

 

けれど、私を嫌う彼女達の心は変わらないし、一時でも噂を信じた男子達はそういう風に私を見てくる。

 

それはもうどうしようもなかった。

 

だからやめてもらった。

 

代わりに学校を休ませてほしいと頼んだ。せめて私がもう行けると思えるまで待ってと泣いて頼んだ。

 

両親は迷いながらもそれを承諾してくれた。

 

それによって、私の心は幾ばくか軽くなった。

 

だが、それでも現状は変わらない。

 

基本的にはベッドで布団に潜り込んで必死にクラスのことを思い出さないようにし、思い出してしまった時には泣き、時に吐いてしまうような時もあった。そして毎日お見舞いに来てくれる柴崎さん達には顔も見せず帰ってもらう。

 

そんな鬱屈とした日々。

 

それが1ヶ月程過ぎたある日、急に私の部屋の鍵が開けられた。

 

部屋の鍵と言っても、小銭で開けられてしまうような申し訳程度の軽い鍵だった。

 

それでも今まで開けられることはなかった。

 

しかし開いた。

 

ゆっくりと引かれた扉の向こうにはここ1ヶ月程見ることのなかった愛しい幼馴染みがいた。

 

『蒼…ちゃん…』

 

『…よう』

 

下手くそにはにかみながら、そう言う。

 

無自覚ながら愛しく思っていた彼。その笑顔。

 

―――だけどその時の私には堪えられなかった。

 

『いやぁ!!』

 

拒絶の言葉を叫び枕を投げつける。

 

思い出してしまうのだ。愛しい彼には私の記憶の全てと密接に繋がってしまっていたから。

 

もちろん全ての記憶の中には楽しいものもたくさんある。むしろそちらの方が圧倒的に多いはずだった。

 

けれど彼と最後に会った時は私の精神状態が最悪な時。

 

そのためこの心の準備も出来ていないタイミングでの彼との対面は私にあの時の気持ちを一瞬でフラッシュバックさせたのだ。

 

『おっと』

 

しかし彼はそんな私の攻撃などものともせず枕を受け止めた。

 

『落ち着いてくれ。急に来たのは俺が悪かった。だけど今日はどうしても話がしたかったんだ』

 

『いや、いや、いやぁぁぁぁ!!』

 

私の異様な取り乱し方に面を食らっていたはずだが、少しでも私を刺激しないよう平静に呼びかけてくれた。

 

しかし私の震えは止まらず、そのまま全ての情報を遮断しようという風に耳を塞ぎ、布団の中に逃げ込んだ。

 

『嫌なの…帰って…!』

 

更に拒絶を上乗せして、追い払おうとする。

 

『…何が嫌なんだ?』

 

しかし彼は帰らなかった。

 

動じることなく、ゆっくりと落ち着いた声で問いかけてきた。

 

それほどの声量ではなかったのにその声は塞いでいたはずの私の耳にはっきりと届いた。

 

彼のこの対応は当時の年齢的に考えても、相当大人なものだった。

 

しかし、私は彼のその対応に幼稚にも喚き散らすことしか出来なかった。

 

『全部!全部嫌なの!』

 

『全部って?』

 

『全部は全部だもん!』

 

『…俺も、か?』

 

『……え?』

 

今まで何も考えず即答していた私は、そこでは答えることが出来ず、ただ聞き返すことしか出来なかった。

 

『その全部には、俺も入ってるのか?』

 

布団に潜り込んでいて、顔は見えていなかったのに、何故かはっきりと彼の表情が目に浮かんだ。

 

一点の疑いもない真っ直ぐな表情が。

 

『それは…』

 

『俺だけじゃない。全部ってことは悠も、笑美のお父さんとお母さんも嫌いってことになる…お前の言う全部ってそういうことなのか?』

 

『そんな…わけ、ない…!』

 

いつまでも布団の中に隠れている私にいっそ挑発するように質問してくる。

 

私はそれにまんまと釣られるようにがばっと布団を撥ね退けた。

 

その時見えた表情はさっき思い描いていたものと寸分違わず同じものだった。

 

『蒼ちゃんも悠ちゃんもパパもママも嫌いになるわけない!大好きだよ!!』

 

私がそう声を張り上げると、彼は真剣な顔つきを1度解き、相好を崩す。

 

『…じゃあ全部じゃないな。だから改めて訊くぞ。何が嫌なんだ?』

 

『何が、って…』

 

今回は先程のように感情的にならず、しっかりと考える。

 

何か嫌なのか。

 

しかしそれを考えるのは学校に行かなくなって以来ずっと避けてきた。

 

考えると頭痛や吐き気が襲ってくるからだ。

 

『何が…何が…?』

 

1度は収まった発作のような拒絶感がぶり返してくる。

 

また喚き散らして逃げたくなりかけた時、ぎゅっと温かいものが私の手を包んだ。

 

『落ち着け。ゆっくりでいい』

 

それは彼の手だった。

 

更に彼は私の頭にぽんと手を置いた。

 

温かい…落ち着く…そういえばあの時もこうして握っててくれてたな…

 

彼の手の心地よさに無意識に目を瞑る。

 

そうしていると頭の痛みも吐き気も嘘のように引いていった。

 

『あたし…学校に行くのが嫌…』

 

『クラスの奴らに会いたくない、か?』

 

コクリと首肯で答える。

 

『あたし…もう皆と前みたいに居れない…皆…皆あたしを男遊びしてるって思ってる…』

 

『それは悠と俺で頑張って皆に誤解だって言って回った…けど、それじゃ駄目なんだよな?』

 

『うん…だって、心のどこかで絶対その事思い出しちゃうもん…それに、女子から嫌われてるのは変わらないし…だから、行きたくない…』

 

そう言うと、心なしか彼の手に力が込められた。

 

『…分かるよ。あー、いや、最近すげぇ分かったんだ…嫌われるって辛いよな』

 

『蒼ちゃん…?』

 

少し俯いて自嘲するようになんでもない、と彼は笑った。

 

この時私は私が学校に行っていない間に彼の周りに変化が起きていたことを知る由もなかった。

 

『ただ、白い目で見られたり嫌われたり、そういうことの辛さが本当の意味で分かったから、だから多少強引にでも俺はお前と話さなきゃって思ったんだ』

 

『なんで?』

 

『確かに嫌われることの辛さは尋常じゃない。だけど、それから逃げ続けていたら多分ずっとそのままになっちまう…それは駄目だって思う。辛さに勝つには立ち向かうしかないんだよ』

 

今度は心なしではなく、確かに握る力が強くなっていた。

 

『でも…一人は嫌だよ…』

 

『お前は一人じゃないだろ』

 

『なんで…?皆あたしのこと嫌いなのに…』

 

『俺が居る』

 

『え…?』

 

彼の言葉に虚を突かれ、更に畳み掛けるようにぎゅっと抱き締められる。

 

『俺は、どんな笑美でも嫌いになったりしない』

 

『――――っ』

 

ドクン、と心臓が跳ねた。

 

いや、跳ねるなんて軽いものじゃなかった。

 

それは天変地異のように私の心臓を激しく乱していく。

 

顔はドンドン熱くなっていき、手は震え、吐息が漏れる。

 

生まれて初めての感覚だった。

 

これが何なのか分からなかった。

 

でもこの心の高ぶりは、どこかで感じたことがある気がした。

 

そしてそれは唐突に私の中に理解されることになった。

 

彼の質問によって。

 

『もちろん、悠だっている。なあ、笑美は俺達が嫌いか?』

 

『…………すき、だよ』

 

そう答えた瞬間に、私の頭の中で全ての歯車が噛み合った。

 

……ああそっか、好きだったんだ…

 

そう、理解した。

 

理解したその時、私の頭の中に異変が起きた。

 

『う…ぁぁぁぁぁぁぁぁ?!』

 

『お、おい?!』

 

今まで何かで蓋をされていた記憶が滝のように奔流してくる。

 

――――男を憎んでいたあの頃。

 

―――――ゆりっぺさん達と出逢い、記憶を塞いだこと。

 

――――――少しの感情を失い、それでも楽しく騒いでいたこと。

 

―――――――そして、柴崎さんに出逢い、恋をしたこと。

 

『―――美!!笑美!!』

 

『はっ!?』

 

『おい…大丈夫か?』

 

『え…ええ…大丈夫…です…』

 

『……です?』

 

『あ、いや、大…丈夫…』

 

唐突に意識があの世界の私と混ざり合ったことにより口調が定まらなかった。

 

そんな私を怪訝そうに、あるいは心配そうに見る彼の顔を見た。

 

……ああ、柴崎さんだ…

 

………違う。

 

違う違う違う違う違う!これは蒼ちゃんで柴崎さんじゃない!?

 

私であり、私でなく、彼であり、彼でない。

 

急な記憶の回復は、私の頭に混乱を与えた。

 

あたしは私なのか、私はあたしなのか。

 

また蒼ちゃんは柴崎さんなのか、柴崎さんは蒼ちゃんなのか。

 

その区別がつけられない。

 

割りきれなかった。

 

『か、かえって…』

 

『笑美…?』

 

『今日は帰って!…私に時間を…ください…?』

 

『…分かった』

 

まだ口調が定まらず、頭の中ではぐるぐると2つの意識が巡っている。

 

だから彼がどんな顔をして分かったと言ったのかも気にしていられなかった。

 

『…あのさ、なんかよく分かんねえけど…頼れよ。それじゃな』

 

『……………』

 

バタン、と扉は閉められた。

 

『頼れ…』

 

彼が居なくなって独りになり、そう反芻する。

 

…優しい。本当に変わってない。

 

あの痛いほどの優しさ。

 

それが私を平静に戻した。

 

忙しなく回っていた2つの意識が、ゆっくりと停止していく。

 

あたしは…私。一緒なんだ。

 

彼もそう。蒼ちゃんは柴崎さん。

 

だけど、柴崎さんとしての記憶はない。

 

あの世界で私が恋した彼の記憶はない。

 

…けれど、変わっていなかった。相変わらず、失恋した身としては痛い優しさだった。

 

ならば良いじゃないか。彼は彼。生まれ変わっても変わらない。馬鹿が付くほどお人好しな彼なら、それはもう柴崎さんだ。

 

そう思うと、2つの意識は次第に重なりあっていった。

 

あの世界での私が、この世界でのあたしに加わっていく。

 

『私は…遊佐です』

 

好都合だった。

 

あの世界の私を手に入れたことによって、私はあの世界の私になることが出来た。

 

表情は無く、毒舌で、強い私を。

 

唯一の懸念材料の男性への恐怖や憎悪は柴崎さんによってほとんど無くなっていた。

 

今のこの私なら、彼の隣に居てもきっと妬まれたりはしない。

 

いや、むしろしてもらっても良いとさえ思えた。

 

そうすれば何倍にもして返してやると思えた。

 

ガチャッと扉を開け、下の階にいる両親に明日から学校に行くと告げた。

 

二人は驚いていた。急に感情を感じられなくなった私を見て。

 

しかし、何よりも学校に行くと言ったのが嬉しかったようで、詳しくは訊かれなかった。

 

私は安堵した。もし訊かれたとしても答えられない。前世などと言って誰が信じるというのか。

 

その日私は本当に久しぶりに安らかな睡眠をとることが出来た。

 

ここしばらく不安に押しつぶられそうになっていたことが嘘のようだった。

 

そして、朝がやって来た。

 

久方ぶりの安眠は私にスッキリとした目覚めを与えた。

 

本来ならまだ起きるには早い時間なのだが、私は朝食を素早く取り、支度を済まして足早に家を出た。

 

『おはようございます』

 

『…おは、よう…』

 

その理由は、彼を待ち伏せすることだった。

 

隣にある彼の家の前に陣取り、待ち構えていた。

 

『私はもう大丈夫です。ご心配をかけて申し訳ありませんでした』

 

『…笑美?なんか喋り方変じゃないか?』

 

そう言われると思っていた。こんな変化を見過ごす人間など居はしないだろう。

 

だから私は答える。

 

ただ淡々と。

 

『もう誤解を受けないよう極力感情を表に出さないようにしました…それと、私のことは今後遊佐と呼んでください』

 

正直これは言おうか言うまいか迷っていた。

 

本心では下の名前で読んで欲しいとも思う。けれど、これはケジメだ。

 

私はズルをしている。

 

弱い私は本来無い筈の前世の私を取り込むことによって強さを得た。

 

しかしそれは普通ならあり得ないこと。

 

この世界の私なら、きっと登校出来るようになるまでまだ時間がかかったはずだ。それを早めたこの前世の私というイレギュラーは、ズル以外のなにものでもないだろう。

 

だから私は少しでもフェアにしたかった。

 

何かを手に入れたのなら、何かを手放すべきだと、そう思った。

 

だから私は好きな人に名前で呼ばれる至福を手放すことにした。

 

『なんで、って訊いていいか?』

 

『…私はこれから恐らく笑う機会がほとんど失われるでしょう。なので、私に美しい笑みは似合わない。そう判断しました』

 

もちろん本当のことなど到底言えるわけもない。

 

だからそれっぽい御託を並べてみる。

 

きっと彼はそれを真に受けるだろうから。

 

『…そっか』

 

ほら、まるで何もかも自分のせいのような顔をする。

 

『はい。では行きましょう、柴崎さん』

 

『…そうだな。行こう』

 

でも私はそれに対して何も言わない。

 

そこにはそうすれば彼が私を気にしてくれるだろうという卑しい考えが働いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これが私が彼に恋するまでの、そして今に至るまでの物語。




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