蒼紅の決意 Re:start   作:零っち

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「ちっ、確かにこりゃ酷いな」

「おぉ~いみゆきちぃ!部活行こうぜぇ~い!」

 

一日の終わりであるSHRを終えるとすぐさまわたくしこと関根しおりはいつものようにいつものごとく、親友兼、伴侶兼、部活仲間兼、バンド仲間兼、相方である入江みゆきにそう呼び掛ける。

 

「うん、しおりん」

 

おぉ…見た?見ました?ちょっとはにかみながら、コクンと頷くみゆきち。かわゆすぅ!

 

思わず抱きつきたくなっちゃうよ!

 

「みゆきちぃ~!」

 

「きゃっ?!ちょっとなにしおりん?!」

 

はっ?!しまった!あまりの可愛さ故衝動を抑えきれなかった…!侮りがたしみゆきち…!

 

「くんかくんか」

 

「ちょっと嗅がないでよぉ~!」

 

う~んフレグランス。

 

病み付きになっちまうぜ、ぐえっへっへっへ。

 

「いい匂いだね…シャンプー変えた?」

 

「しおりんが嗅いでるの胸元でしょ!」

 

「バレたかぁ」

 

「バレるも何もないよ?!」

 

「でもやめない!」

「やめろ阿呆!」

 

「ぐへぇ?!」

 

後頭部にあまりにも強烈な一撃!

 

痛む頭を押さえるためにみゆきちから手を離してしまった。

 

すぐさまあたしから距離を取るみゆきち。

 

嗚呼…カムバックみゆきちぃ!

 

「ていうか誰じゃい!あたしの至福を邪魔する奴は?!」

 

「至福だかなんだか知らんが、ここが公衆の面前であることくらい考慮しろ馬鹿め」

 

むむ、このやたらと芝居がかったような偉そうなしゃべり方。

 

そして中性的でやけに顔のパーツが整ったお顔。

 

君は……

 

「直井くん!」

 

「大声で名前を呼ぶな」

 

ああん冷たひ。

 

「ふん、バカをするならもっと人のいないところでやれ。でないと僕や柴崎さんや音無さんまで同類かと思われるだろ」

 

「同類じゃん。馬鹿やろうよ。あ、匂い嗅ぐ?」

 

「嗅ぐわけがないだろう!」

 

「みゆきちのだよ…?」

 

「誰のでも嗅がん!」

 

「しょうがないなぁ、じゃあ柴崎くんのならどう?」

 

「…………………」

 

あちゃー、そこで黙っちゃうかぁ。この柴崎くん大好きっ子め。

 

みゆきちの魅力は柴崎くん以下と言いたいのか貴様ぁ。

 

安心してみゆきち。あたしのナンバーワンはオンリーワンなみゆきちだぜ?

 

「く、くだらん。もう行くからな」

 

恥になるようなことするなよ、と最後まで釘を刺しながら去っていく直井くん。

 

あたしのどこが恥なのかねぇ?こーんな美少女なのに、きゃは。

 

「しおりん…」

 

「ん?なにな…に…」

 

「…分かるよね…?」

 

「Oh…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面転換。

 

え?何があったのかって?

 

何もなかったよ?何もかもなくなりましたよ?

 

とにもかくにも部室に着いたあたしとみゆきち。

 

あたしのライフポイントは限りなく0に近いけど、まだまだ冒険は終わらないぜ!

 

「ちゅーっす!」

 

あたしたちGirls Dead Monster、通称ガルデモ(誰が言い始めたのかは知らない)の溜まり場…げふんげふん、もとい練習場となってる4階に駆け上がり元気に挨拶。

 

元気と可愛さが取り柄のしおりんだからね。

 

「遅いぞ関根」

 

この茶髪にポニーテールなイカした巨乳姉ちゃんはガルデモの鬼軍曹ことひさ子さん。

 

厳しいんだこれが。

 

まあ美人に罵られるのはそれはそれでいいけどね!

 

「そんなに怒ってやるなよひさ子。胸が膨らむぞ」

 

「怒るのと胸になんの因果関係が?!」

 

このド天然な仲裁を入れたのが我らがリーダーである岩沢さん。

 

んもう素敵すぎ。抱かれたい。

 

おっとよだれが…

 

「あーもう、とにかく集まったんならさっさと練習するぞ!」

 

「えぇ~あたしたちまだ来たばっかっすよ~?」

 

「それが嫌なら次から早く来い」

 

「そんな殺生なぁ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ひさ子さんにこってり絞られながらの練習が二時間くらい続きようやく休憩!

 

って言っても休憩終わったらもう下校するんだけどね。

 

だがしかぁし、こういう時間もバンドには大事なんだ。互いを知って、絆を深める。そうして音も共鳴しあうのさ…

 

「おいこら関根。お前また酷いアドリブ入れやがって」

 

「ふぅ…ひさ子さん、ちょっとあたしのこと勘違いしてません?」

 

「はぁん?」

 

やれやれ、困った子だな…あたしがただの考えなしの暴走娘だと思っているのかい?全く、口下手なあたしが悪いのかね…いや、だからその鋭い視線はしまってくれません?

 

「ただただ同じことを繰り返す…それが果たして効果的な練習になるでしょうか?いやならない!何故ならそれは漫然と焼き直しているだけにすぎないから!だから…だからあたしはあえてアドリブを入れて練習に刺激を…!」

 

「関根…」

 

ふふふ、分かってくれましたかひさ子さん。あたしのパーフェクトな思考を。

 

「そういうのはまともに弾けるようになってから言うもんだ…!なぁ…?!」

 

「いだだだだだだ?!ひさ子さん?!ひさ子さん?!」

 

指がぁ…!指が頭に食い込むぅ…!

 

畜生!詭弁だってバレちまったってのか!?

 

「下手な言い訳する前に反省しろバカ関根ぇ…!」

 

「はい!してます!反省してますから許してぇぇぇぇぇ!!」

 

「ひさ子、そろそろやめてやれって。見てみろ関根の顔。女の子がしていい顔じゃなくなってるぞ」

 

もう頭が飛び散る寸前に救いの光が!

 

その救世主は柴崎くん!なんと岩沢さんの片恋相手だ!

 

あれ?ここであたしを助けるってことはもしかしてフラグ建設してる?もしかしてもしかするとしおりんルート入ってる?!

 

ていうか女の子がしていい顔じゃないって今あたしどんな顔なの?

 

「ちっ、確かにこりゃ酷いな」

 

なんすかそのバラバラ死体を見た刑事みたいな台詞。あんたがしたんじゃないすか。

 

「た、助かったぁ~。柴崎くんありがとね~」

 

「いいけど…お前ちょっとは懲りろよ…何回同じ目にあえば気が済むんだ?」

 

「いいんだよ関根はそういうのが好きなんだ」

 

「そうなのか?」

 

「違いますよ!誰もマゾヒストだなんて言ってないですよ!」

 

さらっと適当なこと言うんだから岩沢さんには困っちゃうよ、全く。

 

「でもお前散々な言われ方した直井のこと気に入ってたしな…」

 

「なんだ貴様僕に罵られたいのか?」

 

「誰もそんなこと言ってないよ!でもしてくれるのなら甘んじて受けよう!」

 

「お前やっぱり…」

 

ああん引かないで、冗談だからぁ。そういうノリだからぁ。

 

もう、ちゃんと心配してくれる人はいないのかね!

 

「しおりん大丈夫?病院行く?」

 

「みゆきち…」

 

やっぱあんはんは天使やでぇ…

 

でもしおりん的には「大丈夫?おっぱい揉む?」って言って欲しかったな☆

 

「脳外科」

 

「酷い」

 

みゆきちが一番あたしのことをヤバイ奴だと思ってた。

 

「畜生そのお山揉ませろやぁぁぁぁ!!」

 

「い、いやぁぁぁぁ!」

 

「ぐへへへへここか?ここがええんか?」

 

「ちょっとやめてしおりん…!」

 

「あ」

 

「?」

 

しまったぜ…これは大失態だ。

 

あたしとしたことがなんてミスを犯しちまったんだ…

 

「みゆきちの場合お山じゃないね!更地か、良くて丘くらい!」

 

「お、丘…」

 

「……………~!」

 

んん?真っ先に大山先輩が反応しただと?

 

ふむ…これは…

 

いやみゆきちの方は何となく分かってたけど…これはこれは…

 

「…ひさ子さん」

 

「おう」

 

「ん?あれ?どうしたの?」

 

え?急にそんなパイプ椅子なんて持って何かあるのかな?

 

まさかそれで殴るなんてないよね?そんなことしたらしおりん逝っちゃうよ~

 

「しおりん、バイバイ」

 

「これは入江のためなんだ、済まんな」

 

そんな椅子を振りかぶったら危ないっすよ?

 

どしたの?目も座ってるよ?椅子だけに。

 

「い、いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

またまた場面転換!

 

お次は下校中。

 

もちろんさっきのは軽いジョークで十八禁になっちゃうような残酷な描写はまるでなかったよ!

 

あたしが軽い貧血を起こしているけど、これはきっと元々そういう体質なの!

 

それはそうとさっきの大山先輩の感じ、気になる。

 

あたし、気になります!

 

「ねえみゆきち」

 

「何関根ちゃん」

 

わお、まさかの苗字呼びだ。

 

距離を感じるね。辛いよ悲しいよ。

 

しょうがないなぁ、ならば思わず呼び方を戻してしまうようなことを言わなきゃだね。

 

「大山先輩ってみゆきちに気があるよね」

 

「う、うぇぇぇぇぉぉ?!」

 

「驚き方凄いなぁ~」

 

キャラ崩壊はめっ!だぞ?

 

「し、しおりさん?!にゃ、なにを?!」

 

呼び方の変わり方がおかしすぎてこっちがなにをって言いたいくらいだけどねぇ。

 

「みゆきちぃ…君は気づかなかったのかい?大山先輩がみゆきちの胸に真っ先に反応したのを」

 

「ふ、ふぇ?!」

 

あざといなぁ、あざとい!でもそこがいい!この小悪魔大臣め!

 

「あたしは見逃さなかったぜ。大山先輩の目線!そして赤面を!」

 

「で、でもそんなの思春期だからかもしれないし…」

 

「いやいや、同じ思春期真っ盛りな柴崎くんなんて真顔でみゆきちの胸見てたよ?」

 

更地…ほぅ…面白い。みたいな目してたよ?

 

「そ、それはそれで嫌だよ…」

 

今さら胸を隠しても意味ないと思うなぁ。あの時隠してないとさ。

 

え?お前が言うなって?

 

あたしはいいのさ!相方だからね!

 

「とにかく!みゆきちのちっぱいに過剰反応するなんてこりゃ気があるとしか思えないよ!」

 

「大声で言わないで!」

 

おっと、こりゃ失敬。

 

「ていうかさぁ、みゆきちはどうなの?」

 

「え、え…?何がかな…?」

 

あちゃー…みゆきちは嘘が下手だなぁ~。

 

わざとらしく口笛なんて吹いちゃって、吹けてないけど。

 

そこも可愛いぞ!

 

もう控えめに言って結婚したい。

 

「好きでしょ、大山先輩のこと」

 

「やんばるくいな!」

 

「やんばるくいな?」

 

あの飛べない鳥のこと?

 

「噛んじゃった…そんなことないよ!」

 

「噛んだって次元じゃないよ?!」

 

ちょっとちょっとそういう噛み芸あたしの中の人の専売特許だよ?!

 

「と、とにかく違うから!好きとかそういうの分かんないし!私昔から人見知りで…特に男の人なんて怖かったから…」

 

「みゆきち…」

 

うん、知ってるよ。

 

みゆきちが色々悩んでたこと。

 

だって中学の頃からの親友だもんね。

 

「だから…余計なことしちゃダメだからね!」

 

「うん、分かった!」

 

あたしは誓うよ。

 

絶対にみゆきちの邪魔はしない。

 

「よーし!明日から色々頑張ろー!」

 

「しおりん?!話聞いてた?!」

 

聞こえない!あたしにはみゆきちの心の声しか聞こえないぜ!

 

大山先輩と仲良くなりたい!ってね!

 

 




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