ぼっちと九人の女神たちの青春に、明日はあるか。 作:スパルヴィエロ大公
(これからも)ご指導ご鞭撻、よろしゅうな!
……某yaggy風の復帰の御挨拶でございます。
いやー、たったこれだけの文章書くのに一か月以上もかかるとは思わなんだ。
ファイナルライブも終わってしまったよ……。生ライブ、一度は見たかったなあ。
まあ、ともあれ、復帰回ということで短めですが、生温かい目で見てやってください。
あとシリアスはもう当分やりません。ここでは。
正直辛いのよね……(´・ω・`)
辛いからと言って逃げるな、逃げずに立ち向かえ。道徳の授業やスポ根漫画ではお決まりの根性論だ。
今も昔も、人はやたらとこの手の根性論を持て囃す。何故だろうか。
例えば、漫画やアニメの主人公。何事にも毅然と立ち向かっていくやつの方が、何でもすぐ諦めて屁理屈ばかりこねる奴より人気が出る。
そりゃあ、カッコいいものな。自分より腕っぷしの強い奴にボコられても、バスケやサッカーで強豪校に敗れても、夢破れても何度でも這い上がり再挑戦する奴ってのは。
確実に絵になる。ならないはずがない。
そんな理想のヒーロー像を見て、皆自分もこうありたいものだと夢想するわけだ。
そして理想に感化され過ぎた奴は、他者に対して、特に諦めの早い奴に対して、意気地がないと責め嘲る。
そういう奴ほど自分が同じ立場に置かれたら百万遍の言い訳を並べ立てて正当化したがるくせに。
子供に対してやたら干渉する偉そうな大人がいい例だ。だから俺は基本的にこの手の根性論が嫌いなのだ。
"諦めずにチャレンジ"して、人から碌な評価ももらえずただ小馬鹿にされるだけだった経験則もあってのことだが。
俺は面倒事には立ち向かわず逃げようとしてきた。それが変わったのが―――あの文実の場だ。
口だけ達者で、自分は何一つ行動しない屑どもが、勤勉な奴らを踏み台にする。しくじったら被害者面をして同情を買おうとする。
そんな奴らが文化祭を率い、グダグダにしていくことに腹が立った。だから俺は行動を起こした。
無残に失敗したが。
でもそれは過去のこと。もう新天地を見つけてそれなりに上手くやれているのだから、もういいではないか。
そう思っていたら、ある日突然その過去話を聞き出された。やむを得ず、正直に告白した。
責められると思った。蔑まれると思っていた。
だが、違った。
―――逃げればええって、言ってるやろ!君が傷つく姿見て、おんなじように傷つく人やっているんや……!
―――ひどいことに巻き込まれて、傷つくの、見たくない。かわいそうな人を見る目で、見たくない……!
彼女らはこう言ったのだ。俺のやったことを、全て聞き、理解したうえで。
言われなくても分かっているが、俺のやったことは、結局はただの反抗と暴言でしかない。周りの連中からすれば。
どんな理屈を用いても正当化することはできないだろう。おまけに最後は失敗したというオチまで付いている。
ましてや女子連中が、男の俺がやったこの破壊行為を軽蔑しない訳がない。
だが、あいつらはそうしなかった。
ただ否定するのではなく、俺が傷つき恥を晒す姿を見て、嘲り軽蔑することはしたくない。
そう言った。
例え俺が今までμ'sにどれだけ尽くしていようがこんなことをしでかしたと分かれば一瞬で信頼関係も立ち消えになる、そう覚悟していた。
だが、まだあいつらは俺を対等な存在として見てくれている。仲間だと思ってくれている。
ありがたいとか申し訳ないとか、そんな言葉では片付けられない、何とも言えない気持ちになった。
それでも懇願されるままに、二度と馬鹿な真似はしないとは言ったが。
ただ、改めて、一つ分かったことがある。
俺如きが、ヒーローの如く義憤に駆られて無茶なことをしてはいけない。世界を背負った気になってはいけない。
自分が生きやすいように生きるのがいいのだと。
そう思って、少し心のしこりが取れたような気がした。
「……」
朝が来た。
……朝ドラのことじゃねえぞ、つーかもう終わったからなあれ。
前に小町にそう言ったらやけに大げさに驚いていた。びっくりポンってか。
女子中学生ならドラマの流行り廃りくらいは覚えておけよと言いたくなったが我慢した。ニュースとプリキュアしか見ていない愚兄に説教されたくはないだろうな。
さて、平日ならうげぇとブルーな気分になりながら支度をするところだが、今日は違う。
GWであり休日である。その事実を噛みしめ否応なしに心が軽くなる、嗚呼素晴らしきかな人生。
……まあ合宿に来ているので、いつものようにベッドで読書をするような優雅なことはやっていられんのだが。
悠長の言い間違い?いや違うぞ。
時計を見る。現在、6時52分。もうそろそろ高坂達も起きて下に降りてくる筈だ。
となれば、マネージャーの俺が朝食の支度をしなければいけない。問題はどんなレシピにするかだ。
材料はまだそれなりに残っているが、手間暇かけて和食フルコースなんて流石に俺も作れない。何より全員昨日ガッツリと肉料理を食い尚且つ寝不足という有様で胃が受け付ける訳がないだろう。
かといってコーンフレークと牛乳をドンとおいておしまいではテキトー過ぎる。
ということで、母ちゃん直伝の必殺技、"残り物には福がある"を使う。
レシピはスープリゾット。昨晩余っていたコンソメスープを活用し、米を鍋に入れて炊くだけ。
ただのご飯やお粥よりかはずっと食も進むし、疲れた胃にも問題ない。あとは付け合わせに濃いコーヒーでも沸かしておけば完璧だ。
「ふわぁ~、喉乾いた~……ってあれ!?比企谷くんもう起きてたの?」
と、いきなりキッチンに高坂来襲。……お前まだパジャマ姿なのかよ。
こちとら一応着替えた上にエプロン装備なのだが。逆に恥ずかしいというか損した気分だ。
このお子ちゃまめ、それに園田と南はどうした?
「……うす。
飯の用意できたから早く支度してこい。あと他の奴らも呼んできてくれ」
「え!?朝ご飯、作ってくれてたの!?」
見りゃ分かるだろ……。
まずは人の話を聞かんか、顔が近い少し離れろ。大体なんで寝起きからこうもテンションが高いんだこいつ。
いくら休日でも俺だってスイッチが入るのには結構な時間が掛かるというのに。アホな方が人生イージーモードというのも正しいのかもしれん。
大体、朝食の支度をするということがそんな不思議な事なんだろうか。今は男女共同参画社会なんだろ?
男が嫌い俺が手に触れたものなど食べたくないと言うなら別だが。
いや、それよりも、何よりも。
「マネージャーなんだから当たり前だ。……それに、寝る前にさんざんお前らには迷惑かけたしな」
そうだ。だから俺は、その分贖罪をする。
何もおかしいところはない。違うか?
そう言うと、高坂は一瞬ぽかんとして、次いで慌てて叫ぶ。
「あ……あれはっ!ほ、穂乃果たちが希ちゃんと比企谷くんが話してるの盗み聞きしちゃったからで……!」
―――バカ、止せ。
自分に非があるように話さないでくれ。
悪いのは俺でいい。実際そうなんだからな。
そして、俺は感謝しなくてはならない。そんな下種でも、お前らは受け入れてくれたのだから。
だから―――
……と、本来なら言うべきところだが。ここで俺の捻デレスキルがなぜか発動。
「んなこと気にしてたら、情報源の8割がたが盗み聞きの俺はとっくのとうに死刑だろ」
「……え?あ、あははは、は……?」
あははは。
「穂乃果、バカだから分かんなぁ~い☆彡」とでも言いたげな顔だな。でも本当は理解してるし唖然としてるってはっきり出てるぞ。
素直に軽蔑してくれた方がどれだけ楽か。だがぼっち気質が治らぬ以上この習性もまた当分治りそうにない。
しかしこれで高坂が俺から離れる口実は出来た。
正直パジャマ姿でいつまでも近寄られると色々と困る。色々と。
「とにかく、お前は気にしないで自分の支度をしてきてくれ。それと―――」
「……ううん!穂乃果も手伝うよっ、一緒に支度した方が早いからねっ」
はい?
さっきドン引きしたかと思えばもう立ち直っていやがる。今度はこっちがドン引きする番だぞ。
「いや、あのな」
「むー!穂乃果だって、す、少しは料理できるし……!
そっそれにっ、子供の時みたいに、お皿何枚も割ったりとか、し、しないんだからね!」
アウト。相変わらず誤魔化し方が下手だな……。料理する前から厨房に入れたらヤバいやつだ。
イギリス人とどっちがマシか判断に迷うところである。
「おい、いいから……」
「子ども扱いしないでよーっ!穂乃果だってやれば必ず、何事も為せば成る、だよ―――!」
「―――穂乃果!いい加減に、早く上に上がって着替えなさい!
そのだらしない格好で比企谷くんと鉢合わせたらどうするんで……」
その時、再びキッチンに客が現れる。目と目が合う~♪……と、誤魔化している場合ではなく。
俺は確信した。休日だからといって、平穏な朝が遅れるとは限らないのだと。
終わりです。前半と後半のテンションの落差が(ちょっと)アレだったかも?
次回は朝のドタバタ騒動の続きを少しやった後、恐らく二十九話の冒頭部分に戻る。そしてやっと本来の目的のラブライブの課題曲作り……の予定です。
大会が夏なのでひとつはまず夏メロ、というのはちょこっとお話ししましたが、「ユメノトビラ」の制作に行きつくまでの過程をどうするか。
そこを検討しているところです。そしておざなりにしてしまった八幡と穂乃果たちの関係の再構築も、もう一度しっかりと。
……さて、いつになるんだろうな……。Eテレで再放送始まるんでそのあたりには……就活め……。