ぼっちと九人の女神たちの青春に、明日はあるか。   作:スパルヴィエロ大公

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ランキング入り・・・だと・・・。
サブタイがおかしくなってるのも多分そのせい。ともあれ、ありがとうございます。

今回はあまり話が進みません。あと前回と打って変わってシリアスになったり。
さっさとのんたんもエリチも入れて9人全員揃えないと・・・。


第十二話 悪しき過去は変えられない。気に病むなら、今を生き、未来を変えろ。

自由と責任はワンセット。

一人暮らしにも同じことが言える。

 

なにせ掃除洗濯炊事、全て自分で賄うのである。特にメシは朝と夜の2回、それを毎日だ。

幸い家に居る頃からしょっちゅうこき使われていたので一定のレベルでこなせてはいる。が、毎日となるとやはりキツい。

だが一日洗濯をサボれば翌日着ていく清潔なワイシャツがない。ただでさえマイナス感情を買いやすいぼっちは、最低でも清潔感は保たねばならない。

メシも同様。米、味噌汁、カレー、素うどん。人並みにできるのはそれくらいだ。あとのおかずはスーパーで揃えるしかなく、これを安く済ませるのには神経を使う。

血眼になってスーパーのセールで御惣菜を買い漁る母ちゃんの心情が、今ようやく理解できた気がする。

・・・でも冷蔵庫がパンパンになるほど買うのは止めてください、腐るんで。エコの精神に反するんで。

 

とまあ、色々と一人暮らしは大変だ。

加えて俺の場合・・・自由であるのかも疑わしい。定期的に家に連絡を入れるように念を押されていて、怠れば説教・小遣いカット。

引っ越し当日に連絡を入れたら「忙しいからまた後で掛けろ」と言ってきたくせに、次の日連絡しなかったら「なぜ電話してこない!」だ。

ならメールで済ませようと提案したら「何かやましいことでもあるのか」と疑られる始末。

・・・さっさと結婚して主夫になりてえ。我が家は色々と理不尽過ぎる。

あ、でもそうなると俺の嫁さんがいびられたりとか苦労しそうだな・・・まだ見ぬ嫁を気遣う俺、ポイント高くね?

 

『―――ごーみーいーちゃーん!死んでないならさっさと返事ー!』

 

・・・うう。

なんか妹まで理不尽になってるまであるし。泣きたいぜ。

誰か胸を貸してくれ、膝でも許す。

 

「死んだとか軽々しく言うな、バチ当たるぞ」

 

『お兄ちゃんが?いやいや、その強靭な精神力で簡単に死ぬと申しますかな?あり得ませんぞwww』

 

「・・・ネラー口調止めろ、ポイント低いから」

 

まさか材木座にでも吹き込まれたんじゃないだろうな?なら本当に死んでもらって転生して異世界に行ってもらおうか。

それならあいつも本望だろう・・・いや、嘘だから。あいつがそう簡単に小町と連絡取れる訳ないし。

 

さておき、両親が忙しいと電話は小町が応対することになる。というかここ最近ずっとそうだ。

連絡しろと言う癖に実際にしてやるとつっけんどんな両親より、まだ小町の方が話していて気分が楽だ。

流石千葉の兄妹、絆は伊達じゃない。

 

『それにしてもー、お兄ちゃんがいつの間にか女の子を引っかけてー、イチャコラしていただなんてー・・・。

これはもう、小町ポイントMAXだねぃ!』

 

「いやむしろ引っかけられた側だから。反対だから。あとイチャコラはしてないから」

 

『はいはい、言い訳はポイント低いよー。男なら潔く認めて交際してハーレム作っちゃおうねー』

 

「アホこけ」

 

それなんてイッセーさんですか、ワンサマーさんですか。それともシドーくんですか。

大事なことなので3つ言いました。

そこまで嫌われていないらしいのは認める・・・というか実際そうなのだが、清い交際に発展するとか、それは多分ない。

言うまでもなく、俺はただの協力者だ。高坂も、南も、園田も、西木野も・・・その協力に対して感謝してくれて、だからそれなりに打ち解けた態度を取って"くれる"。

それだけだ。

 

別に悪くはない。俺とて人に頼られ、感謝されるのは嬉しい。

だが勘違い男になってまた恥を晒すのはうんざりだ。

相手は不快になり、俺はまた黒歴史を刻む。どっちも不幸になる。それはもう終わりにしたい。

 

今のままの関係を保つ。それが最善。

 

『ま、ともあれこれでお兄ちゃんの将来のお嫁さん候補が増えるし!

雪乃さんとか由比ヶ浜さんと別れちゃったのは残念だけど、期待してるからねー』

 

・・・・。

 

 

―――人の気持ち、もっと考えてよ・・・!

 

 

はぁ・・・。

いかん、何を考えてるんだ俺は。過ぎたことをくよくよ考えるなと言うじゃないか。

 

「・・・バカだな、俺は」

 

『んー?言われなくても小町、お兄ちゃんがおバカさんなのはよーく知ってるよ?

愚兄を見捨てない妹、うん、ポイント高いっ!』

 

「あーはいはい、ありがとうよ愛してるぜ小町。母ちゃんにもよろしく言っといてくれ」

 

『ほいさっさー』

 

・・・なんかますます小町が適当キャラになってきた気がする。将来が心配だ。

 

「さて、さっさと作り置きのカレーを食べるか」

 

流石に明日には食えなくなるからな。あれをお残しすると2000円ほどドブに捨てることになるし。

こんな時まで現実的かつ計画的な俺、マジポイント高い。

 

 

「よっしゃよっしゃ、海未ちゃんええでー!そのままスマイル、スマイルや」

 

「は、はいぃ・・・」

 

「アカンアカン、引きつっとる!やり直し!」

 

さて、翌日。

放課後になってμ'sのPVを制作することになった。勿論今日は本格的な撮影には入っていないが。

 

「で・・・なんで副会長がここにいるんすか」

 

「ん?比企谷くん、何か言うたかな♪」

 

「・・・いえ別に」

 

もっとも、聞かなくても理由はとうに分かっている。

矢澤が動画の編集に詳しい人材として連れてきたのだ。・・・今までのやり取りを見ていると、むしろ監督に向いていそうだが。

 

先日の生徒会での出来事云々は別として、やはりこの女性は苦手だ。

こちらの被害妄想かもしれないが、見つめられるとどうにも居心地が悪い。

何か、こちらの心を見透かされているみたいな。陽乃さんと対面したときと同じ気分を味わう。

 

デジャヴ。

 

それは大抵、ぼっちにとっての危険信号。

だから、できるだけ関わりたくない。仮に向こうに、悪意がないのだとしても。

 

「・・・ちょっと?ぼーっとしてないで、ちゃんとチェックしなさいよ」

 

ふと、矢澤のお叱りで我に返る。

仕方ないだろ、ぼっちは誰とも話せないから自然に一人で考え込む癖がつくんだよ。自己完結自己解決、なんと素晴らしきリサイクル。

 

「ああ悪い・・・どんな感じだ?」

 

「そうね、まー大体型はできたし・・・あとはとにかく踊ってもらって、それを撮影する。それだけね」

 

なら俺要らないじゃん。

 

「・・・随分あっさりだがそれでいいのか?南のドレスも使わないで制服って、勿体ない気もするんだが」

 

「アンタね・・・校門をバックにあの白ドレスって、全然似合わないでしょ。

ちゃんとした舞台用意するなら別だけど、それだと余計な費用もかかっちゃうし、今回はデビューってこともあるし・・・。

安く抑えて、同時にしっかり音ノ木坂ブランドってことをアピールする。これが得策よ」

 

・・・案外、しっかり考えてるんだな。

まるで自分も昔やっていたかのように・・・いや、違うか。

こいつもある種ドルオタだし、調べてるうちにお仕事のことにも詳しくなったとかその類だろう。

 

「分かった、ただお前と小泉と星空に西木野はどうすんだ?今回は何も出番がないが」

 

「出番?にこは希と撮影指揮、あの3人はアシスタント。

何も問題ないでしょ」

 

見ると、小泉と西木野は機材の調整を東條副会長から教わっている。一方、星空はニコニコと高坂達に飲み物を配っていた。

・・・なんか出番取られたみたいだな。ますます俺要らない子だわ。

 

「ビシッとしてよね?せっかく真姫ちゃんも加入してくれたってのに、そんなんじゃ士気下がるわよ」

 

「・・・あいよ」

 

いつの間にちゃん付けかよ・・・。

やはり女の人間関係はすごい。てか怖い。

 

「よしっ!ほな、も一度1番の歌詞の動き、練習してみよか。

比企谷くん、花陽ちゃんに真姫ちゃん、カメラスタンバっといてやー!」

 

「は、はーい!」「オーケー、あと10秒待ってて!」

 

って、俺もか・・・。

頼むから知らないところで勝手に役目を押し付けないでほしい。ぼっちは以心伝心とかできないんで。

 

 

「比企谷くん、肉じゃができたでー」

 

「あ、はい、すんません・・・」

 

「?・・・なんで謝っとるんや、キミは」

 

「・・・いえ、すんません」

 

「ハイハイもうやめーや、ご飯がマズくなるで?」

 

皆さん、今何が起こっているかお分かりでしょうか。

・・・そうです、俺は今、東條副会長の家にお邪魔しています。

しかもご飯をゴチになっています。食費はちゃんと払ったけど。

 

撮影練習が終わり皆解散した後、スーパーに寄って夕飯のおかずを漁っていたらバッタリ遭遇。

「お、何ならウチでご飯食べん?」と言われて、無理矢理連行。

わーおまわりさーん、びじんでぐらまーなおねーさんにつれさられるー。・・・ダメだな、どう考えても逆に俺が疑われるまである。

 

二度あることは三度ある・・・その格言がとうとう現実になってしまった。

最初は高坂、練習の帰り道を共に。そしてこれまでの礼を言われる。次は西木野、帰りついでに進路相談。そして一緒に夢を追いかけてと告白(?)され。

さらに東條副会長と来た。これはもう、ただ飯を食うだけで終わりそうもないというのは容易に想像がつく。

あと何故か、人生における幸運を無駄に使い潰してる気がするんだが・・・。これから先どん底に落ちるとか止めてくれ、頼むから。

 

「前も言うたけど、そんな気ぃ遣わんでええよ。それにウチ、実質独り暮らしみたいなもんやから」

 

「・・・ご両親は何されてるんです?」

 

「おとんが転勤族でなー、今は北海道におるよ。で、おかんはその付き添い。

ウチも中学まではずーっと転校、転校の繰り返しでな・・・。ま、流石に高校は自分で決めたもんやからって、最後まで通わせたるって言うてくれて。

その代わり、最低限カネは出したるから自分で生活せえって言われたんやけどな」

 

「・・・なるほど」

 

我が家も似たようなもんだ。両親は共働きでいつも帰りが遅い。家事は物心ついた時から、小町と俺とでやってきた。

いい意味で捉えるなら人生経験させてもらったってことになるんだろうが。裏を返せば・・・家庭の食卓とか、そういうのは幼い頃の昔話だ。

ま、流石に休日は別だが。

 

「ま、そのことはええ。ささ、同じ独り身同士、ご飯食べよか」

 

「独身のアラフォー男女みたいに言わないでください」

 

主に平塚先生が泣くから。

あの人・・・せめていい相手が見つかってくれるよう祈るぜ。

 

「ふふ、そうつれなくせんで仲良うしよ?何なら今晩泊まっていってもええんよ・・・?」

 

「生徒同士でやったら大問題でしょうが」

 

「せやな☆」

 

くっ・・・俺を試そうなんてそうはいかないぞ。

 

ああ、煩悩まみれのバカ野郎だったら素直に喜んでいるシチュだろうに。

中途半端に賢い自分が恨めしい。

 

「ふぅ・・・それにしてもキミも穂乃果ちゃん達も、ずいぶん楽しそうやったなー」

 

「・・・なんですか急に」

 

「さっきの撮影。あんだけビシバシウチがミス指摘しても、みーんな笑顔でやってるんやもん。

キミだってなんだかんだ嫌そうには見えんしな。これなら協力し甲斐があるっちゅうもんや」

 

まあ、な。

あいつらは元より自発的にやっているのだし、特に高坂はポジティブシンキングを地で行く奴だ。

それが行き過ぎて地雷を踏みそうな気もしないではないが。

 

俺にしても、ここまでズブズブと付き合って、真剣なあいつらを見て、色々役割も当てられて。

足抜けなんてできそうにもない。

こりゃもう、将来も社畜としてガーガー馬車馬の如く働くんだろうな。やっぱりお先真っ暗じゃねーか・・・。

 

「「・・・・」」

 

ふと気が付くと、会話が止まっている。

ではと食事を再開しようとした時、副会長の手が止まっていることに気付く。

表情からも笑みが消えている。

 

・・・ああ、やっぱりか。

何か深刻な事情でもあって、それを俺に話そうってのか。

 

「・・・去年とは大違い。だからこそ、今度は上手くいって欲しいねん」

 

・・・去年?

ああ、最初に生徒会に顔出したとき、スクールアイドル復活ッ!とか言ってたな。

その時何があったのかは、まあ関係ない。少なくとも俺が知る必要は全くない。

 

「・・・何も興味なさそうな顔しとるね。普通は何があったとか聞くもんやない?」

 

「過去の事を聞かされても、俺はどうにもできないですよ」

 

「まあそれはそうやけど、ちょっとだけでも聞いて?

・・・にこっちのことなんやけどな」

 

そこで副会長は話し出す。

ぽつりぽつりと、落ちる水滴の様に。

 

だがその水滴は、やがて連なって、大きな流れと化す。

 

それを俺は、遮ることができない。

 

 

【side:にこ】

 

「ふぅ・・・明日も天気は晴れ、撮影には問題なさそうね・・・」

 

インターネットで天気予報をチェックし、にこはほっとため息をつく。

 

明日は特別に、昼休み前の授業1時間分を撮影に使う許可を教師から出してもらった。

時間帯としては丁度いい。放課後に日が沈みかけてから撮るのでは、デビューソングのイメージが台無しだからだ。

ハレの舞台、という言葉に掛けている訳ではないけれど、やはり太陽の出ている時が一番いい。

 

というか、自分は晴れているときが一番好き。

自分の気分の問題だけど・・・やっぱりこの条件は譲れない。

 

 

「・・・あの時は、曇りだったしね」

 

 

―――嘗てラブライブの1回戦に出たとき。

あの日はどんよりとした曇り空で。

皆、急に不安になりだして。リーダーの自分はただ叱咤することしかできなくて。それが却って混乱を生んで。

 

そして、落ちた。

対戦相手のスクールアイドルに大差を付けられて。皆の士気も、それまでの努力も、何もかもが無残に崩壊していった。

"Sakura Five!"は、わずか2、3か月の活動で終わった。

 

たった一度の失敗であっさりと投げ出したメンバー達にも腹が立つが、何より許せなかったのが、他ならぬ自分自身。

ただひたすらに厳しく指導し、皆を引っ張っていくのが正しいのだと思い込んでいた。

 

その間違いに気づかされたのが、μ's―――3人の女子と1人の男子―――と会ったとき。

以前からこっそりと練習風景を見ていたが、3人ともいかなる時も、泣き言一つ吐いたりしない。

素人にしては厳しい練習メニューをこなしているのに、笑い合いながら取り組んでいる。

 

そしてあの男子。

ぱっと見では、目つきも感じも悪そうな、よくいる嫌な奴にしか見えなかった。

実際、たまたまアイドルグッズショップで会った時の、あのつっけんどんな応対。

そんな人間に協力させて、うまくいくはずがない。

 

・・・そう、思っていたのに。

 

笑顔こそ見せていなかったけれど、3人と話し、共に練習に付き合うあいつの姿は、どこか楽しそうに見えた。

いつものつまらなそうな表情ではなかった。

そして、真剣だった。

 

何故なのか分からないけど、自分もそれに感化されて、あの4人を助けたいと考えたのだと思う。

自分のような惨めな失敗を味わわせたくない。アイドルに失望して、辞めてほしくない。

 

「―――お姉さま?ご飯の準備ができましたよ」

 

「あ・・・ごめんねこころ、すぐ行くわ!」

 

神さまが、この世にもしいるんなら。

 

自分のためじゃなくて、あいつらのために、その手を差し伸べてやって。

あいつらが、輝けるように。

 

日記の結びにそう記して、にこは部屋を後にした。

 

 

 




次回、のんたん加入編。
・・・あったっけ、そんなん。アニメで?

あと近日、俺ガイル短編集を別に始めようかと思ってます。
いくつかの話は本作の設定を流用してたり。
も少しかかりそうですが、乞うご期待。

・・・明日でコミケ最終日だぁぁぁ!(泣)

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